説明

多結晶シンチレータ及びその製造方法並びに放射線検出器

【課題】放射線検出器用のシンチレータにおいて、温度変化に対する安定性が高く、発光強度が高いとともに、X線照射停止後1〜300ms経過後の残光が小さなシンチレータを提供する。
【解決手段】発光元素としてのCeと、少なくともGd、Y、Al、Ga、RE及びOとを含有し、ガーネット結晶構造を有する多結晶シンチレータであって、一般式:(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12(ただし、REはPr、Dy及びErのうち少なくとも1種の元素であり、0<a≦0.15、0.2≦w≦0.5、0≦x≦0.5、0<y≦0.003、0.0003≦z≦0.0167、0.2≦u≦0.6、0≦s≦0.1)により表わされる組成を有し、Feの含有量が外割りで0.05〜1質量ppmであり、Siの含有量が外割りで0.5〜10質量ppmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線等の放射線を吸収し発光する多結晶シンチレータ及びその製造方法並びにこれを用いた放射線検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置の一つにX線CT(Computed Tomography)がある。このCTは扇状のファンビームX線を照射するX線管と、多数のX線検出素子を併設した放射線検出器とで構成される。この装置は、放射線検出器に向けてX線管からファンビームX線を照射し、1回照射を行うごとに断層面に対して例えば角度を1度ずつ変えていくことによってX線吸収データを収集する。その後、このデ−タをコンピュータで解析することによって断層面個々の位置のX線吸収率を算出し、その吸収率に応じた画像を形成するものである。
【0003】
放射線検出器としては、CdWO単結晶、(Y、Gd):Eu、Pr組成のセラミックス、GdS:Pr、Ce、F組成のセラミックス(以下GOS:Prと称する)等のシンチレータと、シリコンフォトダイオードを組み合わせたものが実用化されている。放射線検出器において、シンチレータはX線を吸収すると発光し、この光をシリコンフォトダイオードが検出する。シンチレータは、母材[例えばGdS:Pr、Ce、F中のGdS]中に添加された発光元素[例えばGdS:Pr、Ce、F中のPr]が作り出すエネルギ準位に応じた波長の光を出す。この波長が500nm以上の可視光である場合、シリコンフォトダイオードの検出効率が良いため、感度の高い放射線検出器となる。
シンチレータに要求される性能は、材料の均一性が高く、X線特性のばらつきが小さく、放射線劣化が小さく、温度等の環境の変化に対して発光特性の変化が少なく、加工性が良く、加工劣化が小さく、吸湿性及び潮解性がなく、化学的に安定であること等である。
【0004】
こうした放射線検出器においては、X線の吸収に応じてシンチレータが発する光の強度(発光強度)が高いほど高感度となる。発光強度を大きくするためにはX線を充分に吸収する必要がある。また、この吸収が小さいと、シンチレータを透過するX線量が増加し、シリコンフォトダイオードのノイズ源となり、S/N低下の一因となる。シンチレータを透過するX線量を減らすためにはシンチレータを厚くする必要があるが、そうすると、コストが増加する。従って、薄いシンチレータで充分なX線吸収をするためには、X線吸収係数が大きいことが必要である。また、シンチレータ中におけるこの光の透過率が低いと、発生した光が材料内で吸収されシリコンフォトダイオードまで届かなくなるため、実質的に発光強度は低下する。従って、シンチレータの発光強度を高くするためには、(1)X線の吸収係数が大きいこと、(2)発光する光の透過率が高いことが要求される。
【0005】
また、X線CTでは、解像度の向上のためにX線検出素子の小型化が必要であるだけでなく、X線被爆の低減と体動の影響を少なくするため走査時間の短縮が必要である。そのため各X線検出素子に入射するX線量が低減するので、X線検出素子は高い発光効率(大きな発光強度)を有する必要がある。さらに、X線検出素子の時間分解能を上げるために、X線照射停止後の発光(残光)ができるだけ短時間に減少することが必要である。このためには、発光の減衰時定数及び残光が小さいことが必要である。ここで、発光の減衰時定数とは、X線照射を停止し、発光強度がX線照射中の発光強度の1/eになるまでの時間であり、残光とは、X線照射を停止した後所定の時間経過後の発光強度とX線照射中の発光強度との比率で表す。減衰が完全に指数関数的であれば、減衰時定数が小さければ必然的に残光も低くなるが、実際には残光の減衰は指数関数的ではない。そのため、時間分解能の高い高性能のX線CTを得るためには、減衰時定数および残光が共に小さいシンチレータが必要となる。従来実用化されている各種シンチレータの発光強度と減衰時定数及び3ms後の残光を表1に示す。ここで、発光強度、減衰時定数及び残光は、シリコンフォトダイオード(浜松ホトニクス製S2281)を用いて測定したものである。発光強度は、GdS:Pr、Ce、Fの発光強度を基準(100%)としたときの相対値(%)である。残光は、X線照射中の発光強度を基準にしたときのX線照射停止後3ms経過後の相対値(ppm)である。
【0006】
【表1】

【0007】
上記シンチレータのうち、酸化ガドリニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウム及び酸化セリウムを主成分とするガーネット構造を有する多結晶セラミックスGdAlGa12:Ce(以下「GGAG:Ce」と称する。)は、発光元素のCe3+が5d準位から4f準位への遷移により発光するので発光強度が大きく、また減衰時定数が小さい。Gd、Ga、Al及びCeを含有するシンチレータは特許文献1〜3などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−246653号公報
【特許文献2】国際公開WO2008/093869号公報
【特許文献3】特開2010−261005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年の高性能X線CTにおいては、より解像度の高い断層面の画像を得るため、検出器を構成する各検出素子(ピクセル)の小型化が図られてきている。検出素子が小さくなると、入射するX線量は低下してしまうため、シンチレータにはより高い発光強度が求められる。また、人体の被爆線量を極力小さくするために、走査時間はさらに短くなる傾向にあり、X線照射を停止してから1〜300ms経過後のシンチレータの残光に対して厳しい要求が出され始めている。上記GGAG:Ce多結晶シンチレータは、Ce3+の発光を用いているため、発光の減衰時定数は100ns以下ときわめて小さい。しかしながら、この材料は、GdS:Pr、Ce、Fや(Y,Gd):Eu,Pr等の既存のシンチレータよりも発光強度が低く、残光が比較的大きいという問題があった。さらに、GGAG:Ce多結晶シンチレータは、X線で励起した場合の発光強度の温度係数が大きいという問題があった。温度係数が大きいと、X線照射による検出器の温度変化や室温変動により、シンチレータの発光特性が変化し断層像に影響を与えてしまう。本発明はこの温度特性の問題に鑑みてなされたものである。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するもので発光強度が大きく残光が小さいと共に、発光強度の温度係数が小さい多結晶シンチレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の多結晶シンチレータは、発光元素としてのCeと、少なくともGd、Y、Al、Ga、RE及びOとを含有し、ガーネット結晶構造を有する多結晶シンチレータであって、下記一般式:
(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12
(ただし、REはPr、Dy及びErのうち少なくとも1種の元素であり、0<a≦0.15、0.2≦w≦0.5、0≦x≦0.5、0<y≦0.003、0.0003≦z≦0.0167、0.2≦u≦0.6、0≦s≦0.1)により表わされる組成を有し、Feの含有量が外割りで0.05〜1質量ppmであり、Siの含有量が外割りで0.5〜10質量ppmであり、X線で励起したときの30℃〜40℃における発光強度の温度係数が−0.15%/℃〜+0.15%/℃であることを特徴とする。
【0012】
本発明の多結晶シンチレータにおいて、前記aのより好ましい範囲としては、0.005≦a≦0.05である。
本発明の多結晶シンチレータにおいて、前記yのより好ましい範囲としては、0.0001≦y≦0.0015である。
本発明の多結晶シンチレータにおいて、前記zのより好ましい範囲としては、0.001≦z≦0.005である。
本発明の多結晶シンチレータにおいて、前記uのより好ましい範囲としては、0.35≦u≦0.55である。
本発明の多結晶シンチレータにおいて、前記sのより好ましい範囲としては、0.01≦s≦0.1である。
本発明の多結晶シンチレータにおいて、前記Feのより好ましい含有量は、外割りで0.05〜0.4質量ppmである。
本発明の多結晶シンチレータにおいて、前記Siのより好ましい含有量は、外割りで0.5〜5質量ppmである。
【0013】
本発明の多結晶シンチレータは、発光元素としてのCeと、少なくともGd、Y、Al、Ga、RE及びOとを含有し、ガーネット結晶構造を有する多結晶シンチレータであって(ただし、REはPr、Dy及びErのうち少なくとも1種の元素)、各元素の含有量は、質量%で、0<Gd≦48.5、5.8≦Y≦18.6、0≦Lu≦32.7、0.01≦Ce≦0.9、0<RE≦0.17、4.2≦Al≦14.6、7.9≦Ga≦25.4、0≦Sc≦3.01、20.5≦O≦26.1であって、合計100質量%であり、かつFeの含有量が外割りで0.05〜1質量ppmであり、Siの含有量が外割りで0.5〜10質量ppmであり、X線で励起したときの30℃〜40℃における発光強度の温度係数が、−0.15%/℃〜+0.15%/℃であることを特徴とする。
【0014】
上記多結晶シンチレータにおいて、各元素の好ましい含有量は、質量%で、0<Gd≦45.7、5.9≦Y≦17.5、0≦Lu≦30.8、0.05≦Ce≦0.25、0.01≦RE≦0.08、5.1≦Al≦11.2、13.8≦Ga≦23.5、0.24≦Sc≦2.88、20.9≦O≦24.9であって、合計100質量%であり、かつFeの含有量が外割りで0.05〜0.4質量ppmであり、Siの含有量が外割りで0.5〜5質量ppmである。
【0015】
本発明の多結晶シンチレータは、Bの含有量が外割りで10〜500質量ppmであることを特徴とする。
本発明の多結晶シンチレータは、平均結晶粒径が2〜20μmであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記した多結晶シンチレータを製造する方法であって、少なくともGd、Y、Al及びGaの各酸化物粉末と、Ceの酸化物粉末あるいは硝酸化物粉末と、Pr、Dy及びErのうち少なくとも1種の元素の酸化物粉末あるいは硝酸化物粉末と、からなる原料粉末をボールミル混合し、平均粒径を0.2〜0.7μmの混合原料粉となし、前記混合原料粉を仮焼することなく加圧成形し、酸素雰囲気中で1600〜1720℃で焼結することを特徴とする多結晶シンチレータの製造方法である。
【0017】
本発明は、前記何れかの多結晶シンチレータと、当該シンチレータの発光を検出するシリコンフォトダイオードとを有することを特徴とする放射線検出器である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の多結晶シンチレータ(以下、単にシンチレータと言う。)によれば、従来のGGAG:Ce系のシンチレータと比較し、発光強度が大きく、1〜300ms経過後の残光が小さく、さらに発光強度の温度係数の小さなシンチレータを提供できる。また、かかるシンチレータを用いた放射線検出器は、走査時間の短縮を通じて解像度の向上に寄与するほか、温度変化に対し安定した検出性能も発揮しうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】発光強度の温度特性評価方法を示す図である。
【図2】発光強度の温度特性の測定結果を示す図である。
【図3】本発明のシンチレータにおける、wと温度係数の関係を示す図である。
【図4】本発明のシンチレータにおける、xと温度係数の関係を示す図である。
【図5】本発明のシンチレータにおける、aと相対発光強度および3ms残光との関係を示す図である。
【図6】本発明のシンチレータにおける、zと相対発光強度および3ms残光との関係を示す図である。
【図7】本発明のシンチレータにおける、uと相対発光強度および3ms残光との関係を示す図である。
【図8】本発明のシンチレータにおける、sと相対発光強度および3ms残光との関係を示す図である。
【図9】本発明のシンチレータにおける、yと相対発光強度との関係を示す図である。
【図10】co-activatorイオンを用いた本発明のシンチレータの発光スペクトルを示す図である。
【図11】本発明のシンチレータのFe含有率と3ms残光との関係を示す図である。
【図12】本発明のシンチレータのSi含有率と3ms残光との関係を示す図である。
【図13】Al粉の真空熱処理温度とSi含有率及びBET値との関係を示す図である。
【図14】1400℃で真空熱処理したAl粉の粉砕時間とSi含有率及びBET値との関係を示す図である。
【図15】本発明の放射線検出器の構造の一例を示す図である。
【図16】図15におけるA−A断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施の形態に係わるシンチレータについて説明する。
本発明のシンチレータは、発光強度が大きく、残光が小さいとともに発光強度の温度係数を小さくしたものである。ここで、温度係数を改善するには、希土類イオンの主要成分であるGd3+を、これよりイオン半径の小さいY3+またはY3+及びLu3+で置換することで改善できることを新たに見出した。即ち、Gd3+イオン(イオン半径1.053Å)の一部をイオン半径の小さいY3+イオン(イオン半径1.019Å)またはY3+イオン及びLu3+イオン(イオン半径0.977Å)で置換することにより、当該GGAG:Ce系の格子定数は小さくなり、その結果、バンドギャップ(禁制帯のエネルギギャップ)は大きくなる。バンドギャップの拡大によりCe3+の励起準位と価電子帯との間のエネルギ差が大きくなり、エネルギ緩和が起こり難くなる。このため温度係数が低減される。しかし一方で、バンドギャップの拡大により、発光波長は短波長へシフトし、光検出器であるシリコンフォトダイオードからの出力は小さくなる(シリコンフォトダイオードは短波長側で感度が低下するため)。従って、温度係数の低減と発光強度を高めることは相反する関係にある。この点を考慮し本発明では、発光強度の低減を抑えながら、バンドギャップを拡大できるようなGGAG:Ce系シンチレータ、すなわち(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12の組成を見出したものである。
【0021】
本発明のシンチレータを構成する元素のうち、温度係数と発光強度の制御に効果があるYとLuの規定理由について説明する。
図2はGd3+をY3+またはY3+及びLu3+で置換した種々のシンチレータについて、30℃〜60℃の温度範囲における相対発光強度の変化を示す。ここで、相対発光強度は、30℃での発光強度を100%としたときの発光強度である。図2よりY3+またはY3+及びLu3+で置換しない場合(w=x=0のとき)は、相対発光強度の低減が大きいことが分かる。
また、図3にGd3+をY3+で置換した場合(w=0〜1)の30℃〜40℃の温度範囲における相対発光強度の温度係数(●で示す)と、焼結体の密度(▲で示す)のwに対する依存性を示す。尚、ここでいう温度係数は、図2において、30℃〜40℃の温度範囲の測定値を直線近似して求めた発光強度の温度に対する傾きである。尚、ここでは(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12の組成において、a=0.06、x=0.2、y=0.0003(REはDy)、z=0.006、u=0.45、s=0で一定とした。図3よりGd3+をY3+で置換しない場合(w=0)の温度係数は−0.28%/℃であるのに対し、wの値を増加させると温度係数は増加していき、w=0.2で−0.15%/℃まで増加し、温度係数としては低減することが分かった。その後も温度係数は増加するものの+0.15%/℃以内で収まっている。しかし一方で、wの増加とともに密度は低下し、その結果、X線吸収係数が小さくなりシンチレータを透過してしまうX線量が増加するという問題が生じる。本発明のシンチレータ組成においては、密度は5.7g/cm以上が好ましい。温度係数が±0%/℃に近く、かつ密度が高いと言う点から、wの上限としては0.5以下が好ましい。なお、wが0.2〜0.5の範囲において、発光強度の変化は認められなかった。
【0022】
次に、図4には、Gd3+をLu3+で置換した場合の30℃〜40℃の温度範囲における相対発光強度の温度係数(●で示す)と、相対発光強度(▲で示す)のxに対する依存性を示す。尚、ここでは(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12の組成において、a=0.06、w=0.3、y=0.0003(REはDy)、z=0.006、u=0.45、s=0で一定とした。図4よりGd3+をLu3+で置換しない場合(x=0)の温度係数は−0.28%/℃であるのに対し、xの値を増加させると温度係数は増加していき、x=0.2で−0.14%/℃まで増加し、温度係数としては低減することが分かる。ただし、xの増加とともに相対発光強度は低下する。温度係数が±0%/℃に近く、かつ相対発光強度が高いと言う点から、xの上限としては0.5以下が好ましい。また、Lu3+の原料となるLu2O3は非常に高価であり、コスト面からもx量は抑えるべきである。よって、Gd3+をLu3+のみで置換するよりも、Y3+と合わせて置換した方が好ましい。
以上の結果より、(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12組成において、組成物温度が30〜40℃の温度範囲における温度係数を−0.15%/℃から+0.15%/℃(温度係数は±0.15%/℃以内で、±0%/℃に近いことが好ましい)以内で、かつ密度及び発光強度の低下も小さいwとxの範囲は、0.2≦w≦0.5、0≦x≦0.5であることを見出した。この範囲でGdの一部をYまたはY及びLuで置換することにより、バンドギャップは拡大しつつ温度上昇による発光強度の低下が抑えられて、相対的に温度係数が改善される。
【0023】
温度係数の評価方法を図1に示す。試料(シンチレータ)温度は試料4に接触させたシース熱電対5により計測し、PID温度コントローラでフィルムヒーター1に流す電流を制御した。フィルムヒーター1を透過したX線を試料に照射し、試料温度が30℃〜40℃の各温度に対し、シリコンフォトダイオード6(浜松ホトニクス製S2281)を用いて試料4の発光強度を測定した。
【0024】
以下、本発明のシンチレータを構成する他の元素の規定理由について説明する。
シンチレータの発光は、X線励起により生成した電子と正孔が発光イオン(Ce3+)において結合することにより生じる。一方、残光は、電子及び正孔が一時的に結晶欠陥等に捕獲され、熱励起により開放されて発光イオンにおいて再結合することにより生じる。ガーネット結晶を有する多結晶シンンチレータは、主に希土類イオンが占有している8配位サイト、及び主にAl3+とGa3+が占有している6配位及び4配位サイトを有する。発光イオン(Ce3+イオン)は8配位サイトを占有するが、このサイトに空孔が生じると、X線励起で生成した電子が捕獲され、残光が増加する。そのため、0<aとすることにより空孔生成を抑制し、高い発光強度を得るとともに残光を低くすることができる。一方、aが大きくなりすぎると、シンチレータ中にガーネット構造と異なるペロブスカイト相(異相)のGdAlO等が形成されやすくなる。この異相は母材のガーネット相と屈折率が異なるため、ペロブスカイト相で光散乱が生じ、発光波長の光に対する透過率が低くなり、シンチレータの発光強度を小さくする。
【0025】
(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12の組成において、それぞれw=0.4、x=0、y=0.0003(REはDy)、z=0.0026、u=0.44、s=0.012で一定の場合について、相対発光強度及び3ms後の残光のaに対する依存性を図5に示す。相対発光強度は、最大値(この場合はa=0の場合の発光強度(100%))に対する割合(%)で表わす。なお、”j”ms残光は、X線照射停止からjミリ秒経過した後の発光強度を表わす(このjは、例えば、3、10、30又は300である。)。”j”ms残光の残光強度は、X線照射中の発光強度に対するX線照射停止から”j”ms経過した後の発光強度の比を表わし、単位はppm(百万分率)である。
a<0の場合、発光強度と残光の両方とも高い。a≧0となると、上記の通り8配位サイトの空孔が減少するので、残光が急激に低くなる。一方、aの増加に伴って相対発光強度は徐々に低下し、a=0.15の場合に相対発光強度はa=0の場合の80%となる。aが0.15よりも大きくなるとペロブスカイト相の生成により相対発光強度がさらに低下する。従って、相対発光強度の下限を80%とすると、残光が低く、かつ発光強度が高いシンチレータをもたらすaの上限は0.15となり、aがこれよりも大きくなると残光は低いものの、相対発光強度が80%よりも小さくなる。高い発光強度を得ると共に低残光とするには、図5の結果から、aを0.005〜0.05の範囲内にすることがより好ましい。
【0026】
zは発光元素であるCeの組成を決定する。(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12の組成において、a=0.005、w=0.4、x=0、y=0.0003(REはDy)、u=0.44、s=0.012で一定の場合について、相対発光強度及び3ms後の残光のz(Ce含有量)に対する依存性を図6に示す。相対発光強度は、最大値(この場合はz=0.003の場合の発光強度)を100%としたときの発光強度(%)である。図6に示されるように、0.0003≦z≦0.0167の範囲で相対発光強度が大きい。zが0.0003未満の場合、発光元素(Ce)の数が少なすぎるため、吸収したX線のエネルギを効率よく光エネルギーに変換することができない。またzが0.0167超えになると、Ce原子間の距離が小さすぎるため、エネルギーの回遊(いわゆる濃度消光)が起こり、相対発光強度がz=0.003の場合の80%より低下する。特に高い発光強度を得るには、図6の結果から、zを0.001〜0.005の範囲内にすることがより好ましい。
【0027】
uはAlとGaの組成比を決定する。(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12の組成において、a=0.005、w=0.4、x=0、y=0.0003(REはDy)、z=0.0026、s=0.012で一定の場合について、相対発光強度及び3ms後の残光のu(Ga含有量)に対する依存性を図7に示す。相対発光強度は、最大値(この場合はu=0.5の場合の発光強度)を100%としたときの発光強度(%)である。図7に示されるように、0.2≦u≦0.6の範囲で相対発光強度が大きい。特にuが0.5のときに相対発光強度が最大となる。uが0.2未満の場合、またuが0.6よりも大きな場合は相対発光強度が低下し、残光が増加する。特に高い相対発光強度比(95%以上)を得るには、図7の結果から、uを0.35〜0.55の範囲内にすることがより好ましい。
【0028】
ScはAサイト(6配位)を占有し、発光強度を向上させ残光を低減させる添加元素である。Gaは+3価イオンである。しかし、+1価に価数変動しやすい性質を持つ。ガーネット構造中でGaが+1価になると(イオン半径はGa3+よりもGa1+の方が大きい)、このGaイオンは−2価にチャージしてしまい、発光強度を低下させ残光を増加させる。Sc3+のイオン半径は、Al3+及びGa3+のイオン半径よりも大きく、Aサイトを占有することで、Ga3+の価数変化を抑制するものと考えられる。
【0029】
sはScの組成を決定する。(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12の組成において、a=0.005、w=0.3、x=0.3、y=0.0003(REはDy)、z=0.0026、u=0.42で一定の場合について、相対発光強度及び3ms後の残光のs(Sc含有量)に対する依存性を図8に示す。相対発光強度は、s=0を100%としたときの発光強度(%)である。図8に示されるように、残光はScの微量添加で大きく減少し、sが0.03以上では変化がない。相対発光強度はsが0.05のときにピークとなり、sが大きくなるに従い減少する。これより、0≦s≦0.1としている。高い相対発光強度を得るとともに低残光とするには、図8の結果から、sを0.01〜0.1の範囲内にすることがより好ましい。
【0030】
発光強度向上に関しては、GGAG:Ce系のシンチレータに用いられているCe3+発光イオン(activator:賦活剤)にさらにPr3+、Dy3+及びEr3+の発光イオン(co-activator:共賦活剤)のうち少なくとも1種類以上を含有させることで、発光強度が向上することを新たに見出した。上述したように本発明のシンチレータでは、YまたはY及びLuの置換量を制御して温度係数の低減を図るが、このとき同時に発光強度の低減を抑制するために、このRE元素を加えることは効果的である。
【0031】
そこで、各種希土類イオンのco-activator含有原子比yと相対発光強度との関係を示す。(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12の組成において、a=0.005、w=0.4、x=0、z=0.0026、u=0.44、s=0.012で一定の場合について、相対発光強度のy(RE含有量)に対する依存性を図9に示す。相対発光強度は、y=0を100%としたときの発光強度(%)である。図9に示されるように、発光強度向上に効果のあるco-activatorイオンはPr3+、Dy3+、Er3+及びTm3+であることが分かった。ただし、Pr3+、Dy3+及びEr3+は残光に影響しないが、Tm3+は残光を大きく増加させてしまうため好ましくない。特性上最も好ましいco-activatorイオンはPr3+,Dy3+及びEr3+である。これらのco-activatorイオンにより相対発光強度は3〜7%向上するが、これによりX線CTの解像度も向上することが確認された。
【0032】
図10にPr3+、Dy3+及びEr3+のco-activatorイオンを用いたGGAG:Ce多結晶材の発光スペクトルを示す。いずれのイオンにおいても、Ce3+の4f−5d遷移に起因する540nmをピーク波長とする発光の強度(任意単位)が増加しており、Pr3+、Dy3+及びEr3+からCe3+にエネルギ移動を起こすことで発光強度が増加しているものと考えられる。
co-activatorイオンであるPr3+,Dy3+及びEr3+の原子比yは、0<y≦0.003が好ましく、co-activatorを含まない場合の発光強度を100%としたとき、発光強度が103%以上となる0.0001〜0.0015の範囲内にすることがより好ましい。
【0033】
本発明のシンチレータは、不可避的にFeとSiを含有するが、Feの含有量を0.05質量ppm以上、1質量ppm以下に制御し、Siの含有量は0.5質量ppm以上、10質量ppm以下に制御すべきである。
3ms後の残光に及ぼすFe含有量の影響を図11に示す。図11より、Fe含有量が1質量ppmを超えると3ms残光が許容レベルの800ppmを超えるので、Fe含有量の上限は1質量ppmであり、好ましくは0.4質量ppmである。ただし、シンチレータの合成に用いる原料粉(特にAl2O3粉)には既に1〜20質量ppmのFeが含まれているので、得られるシンチレータは不可避的にFeを含有する。原料粉中のFe含有量を低減するためには、例えば原料粉を真空中で熱処理する。しかし、原料粉のFe含有量を0.05質量ppm未満まで低減させるための高温での真空中熱処理を行うと、原料粉が固く凝集してしまうので、粉砕処理が必要となる。しかし、粉砕処理によるFeの混入は避けられないので、Fe含有量の下限値は事実上0.05質量ppmである。
【0034】
3ms後の残光に及ぼすSi含有量の影響を図12に示す。図12より、Si含有量が10質量ppmを超えると3ms残光は許容レベルの800ppmを超えるので、Si含有量の上限は10質量ppmであり、好ましくは5質量ppmである。しかし、シンチレータの合成に用いる原料粉(特にAl2O3粉)には既に10〜40質量ppm以上のSiが含まれているので、得られるシンチレータは不可避的にSiを含有する。原料粉中のSi含有量を低減するためには、例えば原料粉を真空中で熱処理する。しかし、原料粉のSi含有量を0.5質量ppm未満まで低減させるための高温での真空中熱処理を行うと、原料粉が粒成長を起こすとともに、固く凝集を起こしてしまう。原料粉の混合や仮焼粉を粉砕する場合、ボールミル粉砕にGGAGの主成分と同じAl製ボールが使用される。高純度のAlボールであっても、ボール中には10〜500質量ppmのSiが不可避的に含まれているので、Siが不可避的に混入し、原料粉のSi含有量が増加する。従って、Si含有量の下限値は事実上0.5質量ppmである。
【0035】
Al粉を真空中熱処理した場合の熱処理温度とSi含有量及びBET値との関係を図13に示す。熱処理温度の上昇とともにSi含有量は低下するが、粒成長のためにBET値も低下する。そのため、均一な焼結体を作製するために真空中熱処理後に原料粉を粉砕する必要がある。しかし、アルミナボールを用いて粉砕処理を行うと、Siが混入し含有量は増加する。Si含有量を最も低減できる1400℃の温度で真空中熱処理したAl粉をアルミナボールを用いて粉砕処理したときの粉砕時間とAl粉中のSi含有量及びBET値との関係を図14に示す。粉砕時間の増加とともにBET値は増加するが、Si含有量も増加する。異常粒成長のない均一な焼結体を得るためには原料粉のBET値を2m/g以上にする必要があるため、工業的量産のためにはSi含有量の下限値は0.5質量ppmである。なお、Si含有量を10質量ppm以下とし、BET値を2m/g以上とするためには、真空中の熱処理温度は1350〜1500℃が好ましく、粉砕時間は3〜30時間が好ましい。
【0036】
本発明のシンチレータは、原料粉の融点より低い温度で焼結する。多結晶シンチレータは、同じ組成の単結晶シンチレータより光透過率は劣るが、単結晶シンチレータのように結晶成長に長時間を要さないので製造効率が高く、低コストで工業的量産性に優れている。そして安価な放射線検出器を得ることができる。
【0037】
ただし、Y3+及び/又はLu3+を含まないGGAG:Ce材と比較し、Y3+及び/又はLu3+を含み、その原子比が増加すると最適な焼結温度が高くなる。従って、十分に高い焼結温度でないと十分な焼結密度が得られず、多数の気孔が残存し、発光強度が低下してしまう。そのため製造方法も最適化を図る必要がある。最適な焼結温度を低下させる焼結助剤を検討した結果、発光強度及び残光に影響せずに焼結温度を低下させる焼結助剤としてB、HBO等のB化合物が最適であることが分かった。従来からBは発光強度を低下させる成分と考えられてきたので、Bの含有量はできるだけゼロにされてきた。しかし、本発明のシンチレータでは最適なB含有量があることが分かった。B含有量は10〜500質量ppm、より好ましくは10〜100質量ppmとなる量であれば、B化合物を焼結助剤として用いて良いことが分かった。B含有量が500質量ppm超えであると、結晶粒が大きくなり、シンチレータ内の気孔が増加し、光透過率が低下する。最適量のB化合物を焼結助剤として添加することにより、最適焼結温度は25℃〜100℃程度低下でき、発光強度の低減も抑えることができる。
【0038】
本発明のシンチレータの原料粉としては、酸化ガドリニウム、酸化イットリウム、酸化ルテチウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム及び酸化スカンジウムが、高純度の原料を低価格で入手できるため好ましい。発光イオンとなるCe3+、Pr3+、Dy3+及びEr3+の原料粉としては、これらの酸化物又は均一に分散し易い硝酸化物が好ましい。これらの原料粉はアルミナボールを用いたボールミルにより混合するが、混合原料粉の平均粒径は0.2〜0.7μmが好ましい。0.2μm未満であると加圧成形体の密度が十分に増加せず、焼結体の密度が低い。また、混合時間が長くなりアルミナボールからのFe、Siなど不純物の混入量が増加する。0.7μmを超えると焼結体の密度が低くなり、組成の均一性が低下して特性にばらつきが生じる。
【0039】
また、本発明のシンチレータの製造方法では混合した原料粉の仮焼は行わない。仮焼によりビッカース硬度(Hv)が1200超の硬いガーネット結晶の粉末となってしまい粉砕時のアルミナボールからの不純物の混入量が増加するためである。加圧成形は、一軸加圧成形又は一軸加圧成形と冷間静水圧成形の組合せにより行うことができる。焼結は、ガリウム成分が還元されやすいため、酸素中で行うのが望ましい。そして、焼結体の平均結晶粒径を2〜20μmとすることが好ましい。平均粒径が2μm未満だと、焼結が十分進まず結晶粒界に気孔が残ってしまう。また、平均粒径が20μmを超えると、焼結が進みすぎて結晶粒内に気孔が残ってしまい、やはり焼結体の密度が低下してしまう。そこで2〜20μmの平均結晶粒径を得る為の焼結温度は1600〜1720℃であり、1650〜1720℃がより好ましい。また、焼結時間は生産性を考慮して4〜20時間とすることが良い。
【0040】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、上記のシンチレータと、このシンチレータの発光を検出するシリコンフォトダイオードとを有する放射線検出器である。この放射線検出器は、X線CT、PET(Positron Emission Tomography)/CTなどの医療用の画像診断装置に搭載することが好適である。
上記シンチレータを用いた場合、X線に対し高感度で、応答性が高く、さらに安定性の優れた高性能の放射線検出器を得ることができる。
【0041】
この放射線検出器は、図15、図16に示すように、シンチレータとこのシンチレータの発光を検知するためのシリコンフォトダイオードとを備えた構成とすることができる。図15は放射線検出器の概略構成を示す斜視図、図16は図15におけるA−A断面図である。作製した放射線検出器は、1.2mmピッチで24個配列したスライスしたシンチレータ8と、配列したシンチレータ8の上面と側面にチタニアとエポキシ樹脂の混合材を塗布し硬化させてなる光反射膜9と、シンチレータ8の配列に対応し大きさが1mm×30mmでピッチが1.2mmで配列されるととともにシンチレータ8と受光面が正確に一致するよう位置決めした受光部を有しシンチレータ8とエポキシ樹脂で固定した24チャンネルシリコンフォトダイオード11と、24チャンネルシリコンフォトダイオード11が電気的に接続される配線基板10とで構成される。
【0042】
シリコンフォトダイオードとしては、高感度、高速応答で、かつ波長感度域が可視光から近赤外領域にあって本発明のシンチレータとのマッチングが良いことから、PIN型シリコンフォトダイオードを用いるのが望ましい。また、この放射線検出器に使用するシンチレータの厚さは、0.5〜5mmであることが望ましい。0.5mmよりも薄くなると発光出力の低下、漏洩X線の増加を招く。一方、5mmよりも厚くなると光透過率と発光強度が低下してしまうため好ましくない。漏洩X線が少なく、また高い発光出力が得られる高感度の放射線検出器を構成する観点からはシンチレータの厚さは、1.5〜4mmとすることが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明のシンチレータおよび放射線検出器は下記の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
容量1リットルの樹脂製ポットに、直径5mmの高純度アルミナボール1300g及びエタノール200ccとともに、アルミナボールからのAlの混入も考慮に入れて、表2の実施例1の組成になるように、Gd粉を106.57g、Y粉を16.66g、CeO粉を0.381g、Dy粉を0.02g、Al粉を42.67g、Ga粉を33.66g秤量し、合計200gの原料粉を入れた。なお、Fe及びSiの含有量を低減するため、Al粉については、予め真空中(10Pa以下)において1400℃で1時間の熱処理した後、12時間ボールミル粉砕したものを用いた。これらの原料粉を12時間湿式ボールミル混合した後、乾燥した。尚、湿式ボールミル混合後のアルミナボールの質量変化は0.06g、混合した原料粉の平均粒径は0.4μmであった。
【0045】
得られた混合原料粉を仮焼することなく、500Kg/cmの圧力で一軸プレス成形し、次いで3ton/cmで冷間静水圧プレスし、理論密度に対し54%の成形体を得た。この成形体をアルミナこう鉢に入れ、フタをして酸素中1700℃で12時間焼結し、理論密度に対し99.9%の焼結体を得た。この焼結体を内周スライサーで機械加工して、幅1mm、長さ30mm、厚さ2.5mmの板状多結晶シンチレータ試料を作製し、表面を光学研磨した。このシンチレータ中のFeとSiの含有量は、それぞれ0.3質量ppm、3質量ppmであった。また、シンチレータ(焼結体)の平均結晶粒径は6μmであった。
【0046】
測定手段は以下の通りである。
主成分の組成分析及びBの含有量は、ICP―AES(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法、パーキンエルマー製:OPTIMA-3300XL)により求めた。
Fe及びSiの含有量は、GDMS法(グロー放電質量分析法、VG Elemental社製:VG9000)により求めた。
原料粉の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA920)を用いて水中での平均屈折率を1.5として求めた。
また、シンチレータの平均結晶粒径は、試料を1300℃に加熱することで粒界をエッチングし、組織写真上に任意に引いた直線の単位長さ当たりの粒界の交点数から平均粒径を求めるコード法により求めた。
以下、第1の実施の形態例である実施例1〜20と、比較例1〜10の分析結果を表2に示す。また、この測定結果から求めた化学式を表3に示す。さらに、表4には、原料粉の平均粒径、焼結体の平均結晶粒径及びB含有量を示す。
【0047】
(実施例2)
表2の実施例2の組成になるように、Gd粉を102.45g、Y粉を15.97g、CeO粉を0.110g、Dy粉を0.02g、Al粉を32.47g、Ga粉を48.93g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。
【0048】
(実施例3)
表2の実施例3の組成になるように、Gd粉を84.01g、Y粉を15.21g、Lu粉を13.40g、CeO粉を1.391g、Dy粉を0.02g、Al粉を22.82g、Ga粉を63.10g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。
【0049】
(実施例4)
表2の実施例4の組成になるように、Gd粉を91.81g、Y粉を16.42g、Lu粉を14.47g、CeO粉を0.375g、Pr12粉を0.037g、Al粉を42.95g、Ga粉を33.89g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。
【0050】
(実施例5)
表2の実施例5の組成になるように、Gd粉を64.47g、Y粉を24.40g、Lu粉を28.67g、CeO粉を0.744g、Dy粉を0.040g、Al粉を32.55g、Ga粉を49.06g秤量した。さらに、焼結温度を低温化するために焼結助剤としてB粉を0.02g添加した。焼結温度は25℃低温化し1675℃とした。以上の原料粉と焼結条件以外は実施例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。このシンチレータ中のBをICP―AES法で分析した結果、30質量ppm(表4参照)であった。
【0051】
(実施例6)
表2の実施例6の組成になるように、Gd粉を65.69g、Y粉を24.72g、Lu粉を29.04g、CeO粉を0.377g、Er粉を0.041g、Al粉を31.94g、Ga粉を48.14g及びB粉を0.02g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例5と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、B粉の添加により、焼結温度を25℃低温化することができた。
【0052】
(実施例7)
表2の実施例7の組成になるように、Gd粉を49.93g、Y粉を23.90g、Lu粉を42.11g、CeO粉を1.093g、Pr11粉を0.060g、Al粉を27.67g、Ga粉を48.80g、Sc粉を6.38g及びBを0.02g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例5と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、B粉の添加により、焼結温度を25℃低温化することができた。
【0053】
(実施例8)
表2の実施例8の組成になるように、Gd粉を50.47g、Y粉を23.97g、Lu粉を42.24g、CeO粉を0.731g、Dy粉を0.066g、Al粉を29.52g、Ga粉を48.95g、Sc粉を4.00g及びBを0.02g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例5と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、B粉の添加により、焼結温度を25℃低温化することができた。
【0054】
(実施例9)
表2の実施例9の組成になるように、Gd粉を25.76g、Y粉を32.67g、Lu粉を57.57g、CeO粉を0.373g、Erを0.068g、Al粉を32.48g、Ga粉を50.04g、Sc粉を0.98g及びB粉を0.08g秤量した。この原料粉を使用し、焼結温度を1650℃とした以外は実施例5と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、B粉の添加量を多くしたことにより、焼結温度を50℃低温化することができた。
【0055】
(実施例10)
表2の実施例10の組成になるように、Gd粉を25.74g、Y粉を32.67g、Lu粉を57.57g、CeO粉を0.374g、Pr12粉を0.086g、Al粉を32.48g、Ga粉を50.04g、Sc粉を0.98g及びB粉を0.08g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例9と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、B粉の添加により、焼結温度を50℃低温化することができた。
【0056】
(実施例11)
表2の実施例11の組成になるように、Gd粉を12.54g、Y粉を32.46g、Lu粉を71.50g、CeO粉を0.371g、Dy粉を0.094g、Al粉を32.27g、Ga粉を49.72g、Sc粉を0.98g及びBを0.08g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例9と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、B粉の添加により、焼結温度を50℃低温化することができた。
【0057】
(実施例12)
表2の実施例12の組成になるように、Gd粉を12.54g、Y粉を32.46g、Lu粉を71.50g、CeO粉を0.371g、Er粉を0.095g、Al粉を32.27g、Ga粉を49.72g、Sc粉を0.98g及びB粉を0.08g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例9と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、B粉の添加により、焼結温度を50℃低温化することができた。
【0058】
(実施例13)
表2の実施例13の組成になるように、Gd粉を12.91g、Y粉を41.87g、Lu粉を59.03g、CeO粉を0.383g、Pr12粉を0.126g、Al粉を33.31g、Ga粉を51.31g、Sc粉を1.01g及びBを0.08g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例9と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、B粉の添加により、焼結温度を50℃低温化することができた。wを0.5、xを0.4と大きな値にすることで、温度係数は−0.01%/℃まで小さくすることができた。
【0059】
(実施例14)
表2の実施例14の組成になるように、Gd粉を12.90g、Y粉を41.87g、Lu粉を59.03g、CeO粉を0.383g、Dy粉を0.138g、Al粉を33.31g、Ga粉を51.31g、Sc粉を1.01g及びB粉を0.08g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例9と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、B粉の添加により、焼結温度を50℃低温化することができた。
【0060】
(実施例15)
表2の実施例15の組成になるように、Gd粉を26.52g、Y粉を42.15g、Lu粉を44.56g、CeO粉を0.385g、Er粉を0.141g、Al粉を33.53g、Ga粉を51.65g、Sc粉を1.01g及びB粉を0.3g秤量した。この原料粉を使用し、焼結温度を1600℃とした以外は実施例9と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、B粉の添加により、焼結温度を100℃低温化することができた。
【0061】
(実施例16)
表2の実施例16の組成になるように、Gd粉を26.27g、Y粉を41.79g、Lu粉を44.19g、CeO粉を0.344g、Pr11粉を0.189g、Al粉を29.47g、Ga粉を49.23g、Sc粉を8.46g及びB粉を0.3g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例15と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、B粉の添加により、焼結温度を100℃低温化することができた。
【0062】
(実施例17)
表2の実施例17の組成になるように、Gd粉を54.26g、Y粉を34.16g、Lu粉を30.10g、CeO粉を0.351g、Dy粉を0.212g、Al粉を33.19g、Ga粉を46.71g、Sc粉を0.96g及びHBO粉を0.1g秤量した。焼結助剤としてHBOを添加し、焼結温度を1675℃とした以外は実施例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、HBO粉の添加により、焼結温度を25℃低温化することができた。
【0063】
(実施例18)
表2の実施例18の組成になるように、Gd粉を52.94g、Y粉を33.13g、Lu粉を29.19g、CeO粉を0.038g、Er粉を0.208g、Al粉を34.72g、Ga粉を48.78g、Sc粉を1.01g及びHBO粉を0.1g秤量した。この原料粉を使用した以外は実施例17と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、HBO粉の添加により、焼結温度を25℃低温化することができた。
【0064】
(実施例19)
表2の実施例19の組成になるように、Gd粉を106.57g、Y粉を16.66g、CeO粉を0.381g、Dy粉を0.02g、Al粉を42.67g、Ga粉を33.66g秤量した。湿式ボールミル混合時間を60時間とし、原料粉の平均粒径は0.2μmであった。この原料粉を使用した以外は実施例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、このシンチレータの平均結晶粒径は2μmであった。
【0065】
(実施例20)
表2の実施例20の組成になるように、Gd粉を106.57g、Y粉を16.66g、CeO粉を0.381g、Dy粉を0.02g、Al粉を42.67g、Ga粉を33.66g秤量した。湿式ボールミル混合時間を8時間とし、原料粉の平均粒径は0.7μmであった。この原料粉を使用し焼結温度を1720℃で24時間とした以外は実施例19と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、このシンチレータの平均結晶粒径は19μmであった。
【0066】
(比較例1)
表2の比較例1の組成になるように、Gd粉を125.26g、CeO粉を0.358g、Al粉を28.91g、Ga粉を44.54g、Sc粉を0.87g秤量した。Al粉は、真空熱処理は行わず、購入した原料をそのまま用いた。この原料粉を用いた以外は実施例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。このシンチレータ中のFeとSiの含有量は、それぞれ1.2質量ppm及び14質量ppmであった。以下、同様に分析した結果を表2に示す。比較例1のシンチレータはaが0.17と大きい。
【0067】
(比較例2)
表2の比較例2の組成になるように、Gd粉を119.78g、CeO粉を2.321g、Al粉を30.28g、Ga粉を46.65g、Sc粉を0.92g秤量した。この原料粉を用いた以外は比較例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。比較例2のシンチレータはzが0.02と大きく、Fe量が他の比較例よりもさらに多い。
【0068】
(比較例3)
表2の比較例3の組成になるように、Gd粉を114.44g、CeO粉を0.329g、Pr11粉を0.542g、Al粉を15.27g、Ga粉を68.49g、Sc粉を0.86秤量した。この原料粉を用いた以外は比較例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。比較例3のシンチレータはuが0.7と大きく、RE量も多い。
【0069】
(比較例4)
表2の比較例4の組成になるように、Gd粉を110.20g、Y粉を7.70g、CeO粉を0.352g、Dy粉を0.636g、Al粉を23.88g、Ga粉を47.15g、Sc粉を10.02g秤量した。この原料粉を用いた以外は比較例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。比較例4のシンチレータはsが0.13と大きく、RE量も多い。
【0070】
(比較例5)
表2の比較例5の組成になるように、Gd粉を111.52g、Y粉を7.79g、CeO粉を0.356g、Er粉を0.652g、Al粉を30.97g、Ga粉を47.72g、Sc粉を0.94g秤量した。この原料粉を用いた以外は比較例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。
【0071】
(比較例6)
表2の比較例6の組成になるように、Gd粉を112.16g、Y粉を7.79g、CeO粉を0.356g、Al粉を30.98g、Ga粉を47.72g、Sc粉を0.94g秤量した。この原料粉を用いた以外は比較例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。
【0072】
(比較例7)
表2の比較例7の組成になるように、Gd粉を56.27g、Y粉を52.98g、CeO粉を0.404g、Al粉を35.12g、Ga粉を54.10g、Sc粉を1.06g及び焼結助剤としてMgO粉を0.2g秤量した。Al粉は、あらかじめ真空中(10Pa以下)、1400℃で1時間の熱処理を行った後、12時間ボールミル粉砕したものを用いた。この原料粉を用いた以外は実施例1と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、MgO粉の添加により、焼結温度を25℃低温化することができた。
【0073】
(比較例8)
表2の比較例8の組成になるように、Gd粉を56.27g、Y粉を52.98g、CeO粉を0.404g、Al粉を35.12g、Ga粉を54.10g、Sc粉を1.06g及び焼結助剤としてSiO粉を0.2g秤量した。この原料粉を用いた以外は比較例7と同様の方法で、多結晶のシンチレータを作製した。尚、SiO粉の添加により、焼結温度を25℃低温化することができた。但し、Siの混入量が増大した。
【0074】
(比較例9)
表2の比較例9の組成になるように、Gd粉を106.57g、Y粉を16.66g、CeO粉を0.381g、Dy粉を0.02g、Al粉を42.67g、Ga粉を33.66g秤量した。この原料粉の平均粒径は0.1μmであり、湿式ボールミル混合時間を120時間とした以外は実施例1と同様の方法で、平均結晶粒径が1.5μmの多結晶のシンチレータを作製した。
【0075】
(比較例10)
表2の比較例10の組成になるように、Gd粉を106.57g、Y粉を16.66g、CeO粉を0.381g、Dy粉を0.02g、Al粉を42.67g、Ga粉を33.66g秤量した。この原料粉の平均粒径は0.9μmであり、湿式ボールミル混合時間を6時間とし、焼結温度を1720℃で24時間焼結した以外は実施例1と同様の方法で、平均結晶粒径が25μmの多結晶のシンチレータを作製した。
【0076】
次に、上記にて得られたシンチレータを用い、図15、図16に示す放射線検出器を作製した。この放射線検出器では、X線源7から出たX線の照射によりシンチレータ8が励起されて発光し、その光は24チャンネルのシリコンフォトダイオード11で検出され、よってシンチレータの特性が分かる。なお、シリコンフォトダイオードの電流出力を電圧に変換し、前記電圧を増幅するための電気信号増幅器は前記配線基板10に接続してある。
【0077】
上記の実施例1〜20の試料と比較例1〜10の試料について、X線照射による相対発光強度(GOS:Prシンチレータの発光強度を100%としたときの発光強度)と3ms経過後の残光、さらに、30℃〜40℃の温度範囲における発光強度の温度係数を測定した。相対発光強度と3ms経過後の残光の測定は、実施例1に示す放射線検出器を作製し、X線源としてタングステンターゲットのX線管を用い、管電圧120kV、管電流5mAの条件でX線を前記放射線検出器のシンチレータに照射して測定した。発光強度の温度係数の測定は、図1に示す方法により測定した。これらの評価結果を表4に示す。
【0078】
実施例1〜20では、発光強度は80%以上であり100%以上の例も多い、3ms経過後の残光は800ppm以下(高速走査X線CTに用いられるシンチレータの3ms経過後の残光上限値)にあり、特にFe量が抑えられた例では残光が小さくなっている。また、温度係数については発光強度を大きく残光を小さくバランスを取りながら−0.15%/℃以上にすることができている。特にRE元素を含み、焼結助剤としてB化合物を添加して発光強度の低減抑制手段を講じた実施例5〜18の特性が良い。
【0079】
一方、比較例1〜6では、wが本発明外であり、他の元素も外れていものがある。Fe及びSiの低減がされておらず、これらの結果から、発光強度、3ms経過後の残光及び温度係数と共に特性は悪い。例えば比較例6では、発光強度は80%以上となったが、3ms経過後の残光は800ppmよりもかなり大きくなった。また、比較例1〜5と比較例7〜10では、発光強度は80%を下回り、比較例1〜6と比較例8では、3ms経過後の残光は800ppmよりもかなり大きくなった。さらに、比較例1〜6では、温度係数は−0.15%/℃より小さい。比較例7〜8は、wの数値が上がり温度係数は−0.02%/℃となったが、比較例9では、ボールミル混合時間が長く、FeとSiの含有量が増加したため、発光強度が80%を下回り、3ms経過後の残光は800ppmよりも大きい。比較例10ではFe及びSiの含有量が抑えられた結果、3ms経過後の残光は800ppmよりもかなり小さくなったが、原料粉の平均粒径が大きいため焼結密度が上がらず、発光強度は80%よりも小さい結果となった。

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、X線等の放射線を吸収し発光するシンチレータ、それを用いた放射線検出器に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 フィルムヒーター
2 Cu製サンプルフォルダー
3 石英ガラス
4 シンチレータ
5 シース熱電対
6 シリコンフォトダイオード
7 X線源
8 シンチレータ
9 光反射膜
10 配線基板
11 シリコンフォトダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光元素としてのCeと、少なくともGd、Y、Al、Ga、RE及びOとを含有し、ガーネット結晶構造を有する多結晶シンチレータであって、
下記一般式:
(Gd1−w−x−y−zYLuRECe3+a(Al1−u−sGaSc5−aO12
(ただし、REはPr、Dy及びErのうち少なくとも1種の元素であり、0<a≦0.15、0.2≦w≦0.5、0≦x≦0.5、0<y≦0.003、0.0003≦z≦0.0167、0.2≦u≦0.6、0≦s≦0.1)により表わされる組成を有し、Feの含有量が外割りで0.05〜1質量ppmであり、Siの含有量が外割りで0.5〜10質量ppmであり、X線で励起したときの30℃〜40℃における発光強度の温度係数が−0.15%/℃〜+0.15%/℃であることを特徴とする多結晶シンチレータ。
【請求項2】
前記aが、0.005≦a≦0.05の範囲にある請求項1に記載の多結晶シンチレータ。
【請求項3】
前記yが、0.0001≦y≦0.0015の範囲にある請求項1又は2に記載の多結晶シンチレータ。
【請求項4】
前記zが、0.001≦z≦0.005の範囲にある請求項1〜3の何れか1項に記載の多結晶シンチレータ。
【請求項5】
前記uが、0.35≦u≦0.55の範囲にある請求項1〜4の何れか1項に記載の多結晶シンチレータ。
【請求項6】
前記sが、0.01≦s≦0.1の範囲にある請求項1〜5の何れか1項に記載の多結晶シンチレータ。
【請求項7】
前記Feの含有量が外割りで0.05〜0.4質量ppmである請求項1〜6の何れか1項に記載の多結晶シンチレータ。
【請求項8】
前記Siの含有量が外割りで0.5〜5質量ppmである請求項1〜6の何れか1項に記載の多結晶シンチレータ。
【請求項9】
発光元素としてのCeと、少なくともGd、Y、Al、Ga、RE及びOとを含有し、ガーネット結晶構造を有する多結晶シンチレータであって(ただし、REはPr、Dy及びErのうち少なくとも1種の元素)、各元素の含有量は、質量%で、
0<Gd≦48.5、5.8≦Y≦18.6、0≦Lu≦32.7、0.01≦Ce≦0.9、0<RE≦0.17、4.2≦Al≦14.6、7.9≦Ga≦25.4、0≦Sc≦3.01、20.5≦O≦26.1であって、合計100質量%であり、かつFeの含有量が外割りで0.05〜1質量ppmであり、Siの含有量が外割りで0.5〜10質量ppmであり、X線で励起したときの30℃〜40℃における発光強度の温度係数が、−0.15%/℃〜+0.15%/℃であることを特徴とする多結晶シンチレータ。
【請求項10】
請求項9に記載の多結晶シンチレータにおいて、各元素の含有量は、質量%で、0<Gd≦45.7、5.9≦Y≦17.5、0≦Lu≦30.8、0.05≦Ce≦0.25、0.01≦RE≦0.08、5.1≦Al≦11.2、13.8≦Ga≦23.5、0.24≦Sc≦2.88、20.9≦O≦24.9であって、合計100質量%であり、かつFeの含有量が外割りで0.05〜0.4質量ppmであり、Siの含有量が外割りで0.5〜5質量ppmであることを特徴とする多結晶シンチレータ。
【請求項11】
Bの含有量が外割りで10〜500質量ppmであることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の多結晶シンチレータ。
【請求項12】
前記多結晶シンチレータの平均結晶粒径が2〜20μmであることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の多結晶シンチレータ。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の多結晶シンチレータを製造する方法において、少なくともGd、Y、Al及びGaの各酸化物粉末と、Ceの酸化物粉末あるいは硝酸化物粉末と、Pr、Dy及びErのうち少なくとも1種の元素の酸化物粉末あるいは硝酸化物粉末と、からなる原料粉末をボールミル混合し、平均粒径を0.2〜0.7μmの混合原料粉となし、前記混合原料粉を仮焼することなく加圧成形し、酸素雰囲気中で1600〜1720℃で焼結することを特徴とする多結晶シンチレータの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜12の何れか1項に記載の多結晶シンチレータと、該シンチレータの発光を検出するシリコンフォトダイオードと、を有することを特徴とする放射線検出器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−184397(P2012−184397A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277895(P2011−277895)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】