説明

多線条ケーブルカテーテル

本発明のバルーンカテーテル器具(400)は、近位部分と遠位部分とを有する多線条ケーブル管材を含む細長カテーテルシャフト(401)を備える。近位部分は、シャフトが開通した流体通路を提供することを可能にする、コーティングを備え、及び遠位部分のうちバルーン(406)の内部にある部分は被覆されないか、又はその他の方法でバルーンルーメンに開放していてもよく、それにより、流体がシャフトを通じてバルーンルーメンの中に通過することが可能である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医療用カテーテルに関し、より具体的には、血管内腔及び他の生体管腔において有用な医療用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用デリバリーカテーテルは、最小侵襲手術の技術分野において、患者の体内部位に流体及び器具を導入するためのものとして周知である。例えば、管腔狭窄のバルーン拡張(例えば、血管形成術又は胆管のバルーン拡張術などの手技におけるもの)、ステント留置、及び放射線不透過性の造影用流体の導入が、カテーテルの一般的な用途である。
【0003】
最も広く用いられている血管形成術の形態は、その遠位端に可膨張性バルーンを有する拡張カテーテルを利用する。冠動脈手技では、典型的には中空のガイドカテーテル又はワイヤガイドを使用することにより、脈管系を通じて狭窄の近傍の位置まで(例えば、プラークによって閉塞された冠動脈の動脈管腔まで)拡張カテーテルを案内する。医師は、蛍光透視法を用いて脈管系を通じ残りの距離に拡張カテーテルを案内し、最終的にバルーンが狭窄にまたがるように位置決めする。次に、カテーテルにある膨張ルーメンを通じて加圧流体をバルーンに供給することにより、バルーンを膨張させる。バルーンが膨張することによって動脈の管腔が拡がり、動脈を通じた許容可能な血流が回復する。場合によっては、バルーンと共に、又はバルーンに代えてステントが展開されることで、閉塞した動脈管腔が拡げられ、開存が維持され得る。
【0004】
好ましくは、血管内腔に使用されるカテーテルはいくつかの物理的特性を有し得る。拡張カテーテルの外形及びシャフトサイズは、非常に狭い狭窄に到達し、それを通り越えることができるものでなければならない。拡張カテーテルの各部はまた、特に冠動脈での使用向けに構成されたカテーテルでは、急な屈曲部又は蛇行性の通路に挿通するのに十分な可撓性も有しなければならない。血管内腔又は他の管腔を通じて効果的に撓曲して前進するカテーテルの能力は、一般に「カテーテルのトラッカビリティ」と称される。拡張カテーテルの別の重要な特徴は、その「プッシャビリティ」である。プッシャビリティには、カテーテルに沿った、その近位端からその遠位端までの長手方向の力の伝達が関わり、それによって医師は、脈管系又は他の管腔系及び狭窄を通じてカテーテルを押し込むことができる。効果的なカテーテルは、トラッカビリティ及びプッシャビリティの双方を有しなければならない。
【0005】
一般に用いられている2つのタイプの拡張カテーテルは、「ロングワイヤ」カテーテル及び「ショートワイヤ」カテーテルと称される。ロングワイヤカテーテルは、ワイヤガイドと共に使用するよう構成されたカテーテルの長さにわたってワイヤガイドルーメンが設けられているものであり、ワイヤガイドは、拡張される狭窄までの、及びそこを通り抜ける経路を確立するために初めに使用され得る。次に、そのワイヤガイド上に拡張カテーテルを前進させ、最終的にカテーテル上のバルーンを狭窄の範囲内で位置決めし得る。
【0006】
ショートワイヤカテーテルでは、ワイヤガイドルーメンはカテーテルの全長にわたって延在しないこともある。このタイプのカテーテルでは、ワイヤガイドルーメンは、バルーンの遠位端からカテーテルの遠位端と近位端との中間点までしか延在しない。このより短いルーメンだけが、カテーテルのなかでワイヤガイドと接触する唯一の部分である。時に、この第1のカテーテル及びバルーン、或いはそのどちらか一方を第2のカテーテルと交換することが望ましい(例えば、バルーンカテーテルを「外し換え」、その後ステント展開カテーテルに「付け換える」)。交換は好ましくは、第1のカテーテルを取り外す間、ワイヤガイドをその場に残しておき、それを第2のカテーテルのガイドとして用いることによって行われる。第1のカテーテルはワイヤガイドを伝って引き抜かれるか、又はその他の方法で取り出され、次に第2のカテーテルがワイヤガイド伝いに導入される。
【0007】
ショートワイヤカテーテルは、ワイヤガイドルーメンがカテーテルの全長にわたって延在するカテーテルと比べて交換がより容易であることが多い。これは、ワイヤガイドが「ロングワイヤ」構成ほど長くなくてよいためであり、「ロングワイヤ」構成は、医師又は助手がワイヤガイドを把持し続けられるよう(その好ましくない動き又はずれを回避するため)、患者の体外に延在するワイヤガイドの長さが、カテーテルのうちロングワイヤガイド上に延在する部分より長いことが要求される。ショートワイヤガイド構成のカテーテルはまた、ワイヤガイドルーメンがより短く、ワイヤガイドがずれる可能性が少なくなるため、装着及び交換作業中に生じる摩擦もより小さい。
【0008】
血管内腔で使用されるカテーテルは、典型的にはその各部分に沿って異なる物理的特性が要求される。例えば、近位端近傍ではプッシャビリティ及びトラッカビリティのため、ある程度の剛性が要求される一方、遠位端には高い可撓性が要求される。その長さ全体にわたって一様な特性を有するカテーテルは、近位方向に可撓性が高過ぎるか、又は遠位方向に剛性が高過ぎることが多いという欠点をもたらす。結果として、ほとんどのカテーテルシャフト(特に血管内カテーテル)は、シャフト長さに沿って多様な材料で作製される。例えば、カテーテルシャフトは、金属ハイポチューブで作製された剛性の近位部分と、硬質プラスチックで作製された中間部分と、より軟質のプラスチックで作製された遠位部分とを有し得る。この材料の組み合わせは、製造のコスト及び効率性の問題をもたらし、且つ接合部によって、構造的な破損(絡み、キンク、又はさらには分離など)の可能性があるという問題が生じると同時に、特殊な接続手段も要求される。別の例において、カテーテルシャフトはその長さの大部分がプラスチックで作製され得るが、剛性を高めるよう、当該長さの大部分を通じて補強ワイヤが配置される。あるロングワイヤカテーテルは、必要とされる剛性を保持するのに、中を通じて配置されたワイヤガイドにほぼ完全に頼るが、これは上記で考察される長さ及び扱い難さが問題となる。対照的に、ショートワイヤカテーテルの近位部は、ワイヤガイドに依存することなく十分な剛性を有しなければならない。
【0009】
ガイドワイヤルーメンがより短い拡張カテーテルについて、上記の所望の物理的特性を確保するためいくつかの異なる構造が提案され、用いられているが、これらの構造の各々はいくつかの欠点を招き易い。例えば、比較的可撓性の高い一体型プラスチック設計を有するショートワイヤカテーテルでは、ワイヤガイドがカテーテル本体を通じて延在するのは、カテーテルシャフトの遠位端の近傍のほんの短い一部分のみであるため、ワイヤガイド部分はカテーテルシャフトの残りの部分のプッシャビリティに寄与しない。結果として、かかるカテーテルの近位シャフト部分はコラム強度が低い。かかる構成では、バルーンが管腔内で操作されているときに、シャフト及びガイドワイヤが望ましくない撓み(例えば、もつれ(scissoring)、湾曲、座屈、キンク)を生じる傾向を有し得る。この望ましくない撓みによって、鋭角の縁端などの不規則な外表面が生じ得ることから、ひいては動脈又は他の管腔/ルーメン(例えば他の生体管腔又は内視鏡のワーキングルーメン)の内層が擦過されて傷付き得る。この望ましくない撓みはまた、カテーテルのプッシャビリティ及びトラッカビリティの低下にもつながる。この難点に対抗するため、公知の設計のなかには、ワイヤガイドルーメンの長さを延長したり、及びシャフトに追加的な補強材要素を提供したり、或いはそのどちらか一方を施すものもある。
【0010】
ある設計では、カテーテルシャフトの近位部分の多くが金属管材(一般にハイポチューブと称される)で作製され、この管材は比較的小さい外径を維持しながらも、所望のプッシャビリティを提供する。カテーテルシャフトの遠位部分は、可撓性がより高い(一般にはプラスチックの)第2の管材である。ハイポチューブ設計を用いるショートワイヤカテーテルでは、ワイヤガイドをワイヤガイドルーメンに導入するための第1の開口部は、通常はハイポチューブ遠位端近傍のハイポチューブ中に設けられる。或いは、この第1の開口部は、第2の管材に、又はハイポチューブと第2の管材との間の接合部の近傍に設けられる。しかしながら、こうしたタイプのカテーテルは特定の欠点を呈する。ハイポチューブに第1の開口部を有すると、ショートワイヤカテーテルの利点が減じられる:ワイヤガイドはより長くなければならず、摩擦が低減されることによってもたらされる利点が小さくなる。前述の接合部又は第2の管材に第1の開口部を有すると、より可撓性の高い第2の管材の少なくともある部分はワイヤガイドによって支持されず、従ってコラム強度が不足するため、望ましくない撓み(例えば、キンク又は絡み合い)を生じる可能性がある。かかる望ましくない撓みは、血管内腔又はカテーテルに内蔵される他のルーメンに傷害を与え得るだけでなく、膨張ルーメン又はカテーテルの他のルーメンを遮断もし得るため、これは望ましくない。本発明では、アセンブリコストが増加する問題、及び同じカテーテルに半可撓性のハイポチューブ部分と、より可撓性の高い第2の管材部分との双方を有するカテーテルを製造及び使用することで生じる様々な機械的問題に対処する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7,117,703号明細書
【特許文献2】米国特許第9,589,227号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様において、本発明は、血管内腔又は他の生体管腔における使用に適合したカテーテル器具を提供し、これは、その長さの大部分について多線条ケーブル管材の構造を有し、且つショートワイヤ又はロングワイヤ構成での使用に適合している。本明細書において説明され、且つ特許請求される実施形態は、良好なプッシャビリティ及びトラッカビリティを有する多線条カテーテルシャフトを提供する。本発明の実施形態は、様々な用途(例えば、拡張型ステントの留置、狭窄のバルーン拡張)及び様々な手術部位における使用(例えば、血管、消化器)に適合し得る。
【0013】
本明細書の実施形態は、様々な最小侵襲外科処置(例えば、血管形成術又は胆管拡張を含む)における使用に適合し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】カテーテルの斜視図であり、カテーテルの遠位端の拡大詳細図を伴う。
【図1B】テーパ状カテーテル器具の斜視図であり、カテーテルの遠位端の拡大詳細図を伴う。
【図2】スリーブを備えるカテーテルシャフトの斜視図である。
【図3A】遠位延長部と膨張バルーンとを有するカテーテル器具の斜視図であり、カテーテルの遠位端にある機構の拡大詳細図を伴う。
【図3B】膨張バルーンを備えるカテーテル器具の斜視図である。
【図4A】遠位ワイヤガイドルーメン外部構造を有するカテーテル器具の斜視図であり、カテーテルの遠位端にある機構の拡大詳細図を伴う。
【図4B】遠位ワイヤガイドルーメン外部構造と膨張バルーンとを有するカテーテル器具の斜視図であり、カテーテルの遠位端にある機構の拡大詳細図を伴う。
【図4C】ワイヤガイドルーメン構造と装着部分とを有する遠位デュアルルーメン構造を備えるカテーテル器具の斜視図である。
【図5A】遠位延長部とワイヤガイドルーメン構造とを有するカテーテル器具の側面図を示す。
【図5B】遠位延長部とワイヤガイドルーメン構造とを有するカテーテル器具の側面図を示す。
【図5C】遠位ワイヤガイドルーメン外部構造と膨張バルーンとを有するカテーテル器具の側面図である。
【図6】遠位ワイヤガイドルーメン外部構造と膨張バルーンとを有するテーパ状カテーテル器具の側面図である。
【図6A】図6の詳細図であり、カテーテル器具のテーパ部分及び外部ワイヤガイドルーメンの縦断面図を示す。
【図6B】図6の詳細図であり、カテーテル器具の遠位部分の縦断面図を示し、カテーテルシャフトがバルーンと交わるところの機構の拡大詳細図を伴う。
【図6C】デュアルルーメン装着スリーブの横断面図である。
【図6D】図6Bの線6D−6Dに沿った横断面図であり、装着スリーブに取り囲まれたカテーテル器具の2つのルーメンを示す。
【図7A】カテーテル器具の別の実施形態の断面図を示す。
【図7B】カテーテル器具の別の実施形態の断面図を示す。
【図8】カテーテル器具のさらに別の実施形態の部分断面図を示す。
【図9】ワイヤガイドルーメンチューブを含む、さらに別のカテーテル器具の実施形態を表す。
【図9A】ワイヤガイドルーメンチューブを含む、さらに別のカテーテル器具の実施形態を表す。
【図9B】ワイヤガイドルーメンチューブを含む、さらに別のカテーテル器具の実施形態を表す。
【図9C】ワイヤガイドルーメンチューブを含む、さらに別のカテーテル器具の実施形態を表す。
【図9D】ワイヤガイドルーメンチューブを含む、さらに別のカテーテル器具の実施形態を表す。
【図9E】ワイヤガイドルーメンチューブを含む、さらに別のカテーテル器具の実施形態を表す。
【図10】さらに別のカテーテル器具の実施形態を示す。
【図10A】さらに別のカテーテル器具の実施形態を示す。
【図11】遠位ワイヤガイドルーメン構造と膨張バルーンとを有する多線条カテーテル器具の側面図である。
【図11A】図11の詳細図である。
【図11B】図11の詳細図である。
【図11C】デュアルルーメン装着スリーブの横断面図である。
【図11D】図11のカテーテル器具の横断面図を示す。
【図11E】図11のカテーテル器具の横断面図を示す。
【図11F】図11のカテーテル器具の横断面図を示す。
【図12A】本発明のカテーテルの一作製方法を示す。
【図12B】本発明のカテーテルの一作製方法を示す。
【図12C】本発明のカテーテルの一作製方法を示す。
【図12D】本発明のカテーテルの一作製方法を示す。
【図12E】本発明のカテーテルの一作製方法を示す。
【図12F】本発明のカテーテルの一作製方法を示す。
【図12G】本発明のカテーテルの一作製方法を示す。
【図12H】本発明のカテーテルの一作製方法を示す。
【図12I】本発明のカテーテルの一作製方法を示す。
【図12J】本発明のカテーテルの一作製方法を示す。
【図12K】本発明のカテーテルの一作製方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一態様において、本明細書に記載される多線条チューブカテーテルシャフトの実施形態は、様々な最小侵襲手術用途(例えば、内視鏡手技、例えば血管形成術などの中枢又は末梢心血管介入手技)における使用に適合し得る。
【0016】
図1A〜1Bは、多線条材料で製造され、且つ内部ルーメン102を有するシャフト101を備えた、カテーテル器具100の実施形態を示す。記載される多線条管材は、中心ルーメンを残して共に捩り合わされた複数のワイヤで作製される。かかる多線条管材は、例えば、朝日インテック(Asahi−Intecc)(カリフォルニア州ニューポートビーチ(Newport Beach,CA))から入手し得る。好適な多線条管材を製作する材料及び方法は、米国特許第7,117,703号(カトウ(Kato)ら)に記載され、その内容は参照によって本明細書に援用される。血管用カテーテル器具における多線条管材の使用については、米国特許第9,589,227号(ソンデルスコフ・クリント(Sonderskov Klint)ら;インディアナ州ブルーミントン(Bloomington,Indiana)のクック社(Cook Inc.)及びデンマーク国ビエベルスコフ(Bjaeverskov)のウィリアム・クック・ヨーロッパ(William Cook Europe)に譲渡済み)に記載され、これもまた、参照によって本明細書に援用される。本明細書で示される実施形態に例示されるとおり、本発明の好ましい多線条管材は単層のマルチフィラメント管材であり、ほぼ平行の線条の単一柱状層を備えるもので、当該技術分野で公知となって使用されている交差状に巻回された多線条管材又は編組みされた管材とは区別される。別の言い方をすれば、本発明の好ましい多線条管材はワイヤで撚られた中空のコイル本体を備え、これは、所定の環状ラインに従って撚られることで、中心の軸方向中空部分がルーメンを形成する可撓性の直線状チューブを形成する複数のコイル線要素を備える。加えて、本発明の好ましい多線条管材は、(例えば、加圧膨張流体が)効率的に流体連通するように構成された、流体の開通するルーメンを有する点で、多線条ワイヤガイドとは区別される。好ましい単層多線条管材は、事実上キンクの可能性が全くない、極めて望ましいプッシャビリティ及びトラッカビリティを提供する。単層管材は、内側又は外側にコーティングを備え得る。
【0017】
図1Aでは、外径107はシャフト101の長さに沿ってほぼ同じである。図1Bに示される実施形態では、近位端104が遠位端106より大きい外径を有する。このカテーテルシャフト101は、遠位端106のより小さい外径108に向かって縮径する。縮径していることから、いくつかの形でシャフト101の可撓性が高まり得る。例えば、カテーテルシャフト101の外径が小さくなることによって可撓性が高まる。カテーテルシャフト101のうちより小さい直径の部分は、より大きい直径の部分と比べて可撓性が高い。このように縮径していることで、カテーテルシャフト101の壁の厚さもまた薄くなる。或いは、カテーテルの内径のなかでテーパ加工を用いてもよく、これはシャフト101の外径を変えることなく、壁厚を薄くすることによって可撓性を高める。テーパ加工の傾斜度及び位置は、カテーテルシャフト101に所望される用途によって決まる。例えば、代替的実施形態において、直径に多段階的又は漸進的な差があってもよく、それによりカテーテルの長さ全体を通じて程度の異なる可撓性が付与される。例えば、冠動脈で使用されるカテーテルシャフト101は、全体のサイズ及び可撓性の双方について、典型的には胆管で使用されるカテーテルシャフト101より小さい直径が有利である。研削加工又は他の好適な加工を用いることで、所望の用途に適するように外径を低減し得る。外径を低減すると、器具の外形が低減されることによる追加的な利点が提供される。カテーテルシャフト101又はその一部分の可撓性はまた、線条の本数を増やしたり、又は減らしたりすることによっても変えることができる。一態様において、本明細書に記載される実施形態はまた、より剛性の高い近位端からより可撓性の高い遠位端に徐々に移行し、且つ構造的完全性を損なう急な移行部のない、カテーテルシャフトの長さの大部分にわたって一貫した構成材料を有するカテーテルシャフトも提供する。
【0018】
カテーテルシャフト101のさらなる実施形態は、カテーテルシャフト101の少なくとも一部分について、内表面及び外表面、或いはそのどちらか一方の上にコーティングを備える。コーティングは、カテーテルの摩擦の低減、可撓性、及びルーメン102の封止のうちの1つ又は複数の特性を付与又は改善するように選択される。ルーメン102を封止すると、例えば、拡張バルーンに膨張流体を導入したり、又は薬効物質若しくは放射線不透過性の造影用流体を導入したりするために、そのルーメンを使用することができる。
【0019】
コーティングは、図2に示されるとおり、例えばシース又はスリーブ202であってもよい。様々な代替的実施形態において、シース202は、押出しスリーブ、シュリンクチューブ、押出しオーバージャケット、又はディップコートを含み得る。シース202は、好ましくは熱硬化性材料又は熱可塑性材料であり、例えば、HDPE、PTFE、PET、ポリエステル又はポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリウレタン、ポリイミド、ポリオレフィン、ナイロン、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。コーティングは、例えば、オーバーエクストルージョン(over−extrusion)、浸漬コーティング、溶融融着、又は熱収縮によって塗着され得る。例えば、PETシュリンクチューブ202は、直径の小さいカテーテルシャフト201に対して高い剛性を提供するという利点を有する。他方で、より高い可撓性が望ましい、より大きい直径のカテーテルシャフト201では、PEBAシュリンクチューブ202が用いられ得る。スリーブ202の材料の種類はまた、他のカテーテル構成部品を補足するように選択されてもよい;例えば、ナイロン製のスリーブ202は、ナイロン製の拡張型部材、例えばバルーン又はバスケットなど、及びナイロン製のワイヤガイドルーメン、或いはそのどちらか一方とより良好に結合及び相互作用し得る。コーティング材料、線条のサイズ及び本数、並びに直径の選択によって、所望の機能特性を提供するようにカテーテルシャフト201のショア硬さを操作することが可能である。
【0020】
図3A〜3Bは、多線条シャフト301を含むバルーンカテーテル300の実施形態を示す。図3Aの実施形態において、カテーテルシャフト301は遠位延長部302を有し、その上に膨張バルーン304が装着されている。遠位延長部302は、コーティングに使用される材料(HDPE、PTFE、PEBA、PET、ポリウレタン、ポリイミド、ポリオレフィン、ナイロン、又はそれらの任意の組み合わせ)と同類の材料で形成されてもよく、シャフト301より高い可撓性であり得るシャフト部分を提供する。図3Aの詳細な部分図で明確に分かるとおり、延長部302は、多線条カテーテルシャフト301の膨張ルーメン306から連続する膨張ルーメン306を囲い込む。延長部302はまた、ワイヤガイドルーメン308も囲い込む。例示されるロングワイヤ構成のカテーテル300では、ワイヤガイドルーメンは多線条カテーテルシャフト301の近位端から延在し、遠位端にある膨張バルーン304を通じて延在する。
【0021】
図3Bに示される実施形態は、カテーテルシャフト301の遠位端に直接配置された膨張バルーン304を有する。多線条カテーテルシャフト301の膨張ルーメン306は、膨張バルーン304に開口している。ワイヤガイドルーメン308はバルーン304の内部を横断し、カテーテルシャフト301のワイヤガイドルーメン308が膨張バルーン304の遠位点まで続く。図示されるとおり、拡張型ステント312がバルーン304の周囲に配置され得る。代替的実施形態において、バルーン以外の拡張型部材(例えば、バスケット)が、カテーテルシャフト301の遠位端の近傍に配置されてもよい。かかる実施形態は、場合により拡張型部材を貫通するワイヤガイドを有し得る。カテーテル300は、その近位端に膨張ルーメン306と流体連通するポート310を有する。代替的実施形態において、ポート310はガイドワイヤルーメン308へのアクセスを提供する。ポート310は、他の実施形態に備わっても、及びカテーテル300上の他の位置に備わってもよい。別の代替的実施形態において、カテーテルシャフト301は2つのポート310を有し、膨張ルーメン306及びワイヤガイドルーメン308の各々への別個のアクセスを提供する。他の代替的実施形態において、ポート310は、造影用流体などの別の流体の導入に有用であり得る。
【0022】
図4A〜4Bは、多線条チューブバルーンカテーテル器具400の実施形態を示し、これは多線条シャフト401を含み、且つ、貫通配置されたワイヤガイドルーメン404を有するカニューレ402の形態の、遠位方向に配置されたショートワイヤガイドルーメン外部構造をさらに含む。図4Aでは、カニューレ402は、接着剤を使用して多線条カテーテルシャフト401の遠位端408に取り付けられている。代替的な取付け手段としては、例えば、強制対流加熱、高周波加熱、超音波溶接、及びレーザボンディングが挙げられる。或いは、収縮管材を製作補助材として使用することにより、カニューレ402の多線条カテーテルシャフト401に対する圧迫及び融着を促してもよい。収縮管材は、カニューレ402がカテーテルシャフト401に接続された後、取り除かれて廃棄されてもよく、又は接続された構造の一部として残ってもよい。多線条カテーテルシャフト401がコーティングを有する場合、カニューレ402はそのコーティングに結合されてもよく、又はカテーテルシャフト401と直接結合されてもよい。熱収縮管材、例えばPEBAが、アセンブリ全体にわたって塗着されてもよく、これによりアセンブリの強度が増す。図4Bに示される実施形態において、カニューレ402は多線条管材で製造される。膨張バルーン406がカテーテルシャフト401の遠位端408に装着される。カテーテルシャフト401の膨張ルーメン405は、膨張バルーン406の内部に開口している。カニューレ402は膨張バルーン406を通じて延在し、その遠位端に延長部407を有する。ワイヤガイドルーメン404は、カニューレ402及びその延長部407の長さを貫通して延びる。図示されないが、バルーン406の周囲に拡張型ステントが配置され得ることは理解されなければならない。ワイヤガイドルーメン構造を提供するカニューレ402は、HDPE、PTFE、PEBA、PET、ポリウレタン、ポリイミド、ポリオレフィン、ナイロン、又はそれらの任意の組み合わせで形成され得る。一実施形態において、カニューレ402は、PTFEの内側ライナーと、PEBAの外側被覆とを含む。例えば、HDPE、PET、及びポリイミドなど、他の材料が内側ライナーとして用いられてもよい。
【0023】
図4Cでは、多線条カテーテルシャフト401の遠位端408にデュアルルーメン構造410が配置される。デュアルルーメン構造410の長さの一部分は、「8の字」の断面を有する。デュアルルーメン構造410の装着部分412はルーメン414を有する。カテーテルシャフト401の遠位端408が、ルーメン414内に嵌着される。ルーメン414は、カテーテルシャフト401の遠位端408によって完全に占有されてもよく、又は遠位端408を越えて同軸状に連続することで延長部を形成してもよい。装着部分412が延長部とされる場合、ルーメン414はシャフト401のルーメン420と流体連通する。デュアルルーメン構造410のワイヤガイド部分416は、そこを貫通して延びるワイヤガイドルーメン418を有する。デュアルルーメン構造410は、図4Aに示される実施形態について記載された取付け方法の1つを用いて、カテーテルシャフト401の遠位端408に取り付けられる。この実施形態において、デュアルルーメン構造のルーメン414は、カテーテルシャフト401のルーメン405と流体連通する。代替的実施形態において、装着部分412の一部分が、カテーテルシャフト401のルーメン420の中に装着される。
【0024】
図5A〜5Cは、多線条シャフト501を組み込み、且つショートワイヤガイド構成を有するバルーンカテーテル500の実施形態を示す。図5A〜5Bに示される実施形態は、各々、多線条シャフト501の同軸延長部502と、チューブ504の形態のショートワイヤガイドルーメン構造と、膨張バルーン506とを有する。同軸延長部502の可撓性は、多線条シャフト501と同じであっても、又は異なってもよい。図5Aに示される実施形態において、チューブ504の近位端508は、延長部502の多線条シャフト501との接合部の遠位側に配置される。チューブ504は延長部502に入り、バルーン506の遠位端を通じて延在する。従って、この実施形態はシャフトの遠位延長部(この場合、同軸延長部502)とワイヤガイドルーメン構造504とを含み、ワイヤガイドルーメン構造504の一部分は同軸状で遠位延長部内にあり、ワイヤガイドルーメン構造504の別の部分は遠位延長部の外側にあってそれに隣接している。
【0025】
図5Bに示される実施形態において、チューブ504の近位端508は、延長部502の多線条シャフト501との接合部の近位側に配置される。チューブ504は延長部502に入り、バルーン506の遠位端を通じて進む。従って、この実施形態はシャフトの遠位延長部(この場合、同軸延長部502)とワイヤガイドルーメン構造504とを含み、ワイヤガイドルーメン構造の一部分は同軸状で遠位延長部内にあり、ワイヤガイドルーメン構造504の別の部分はシャフトの外側にあってそれに隣接している。図5Cに示される実施形態は延長部を有しない。バルーン506は多線条シャフト501の遠位端に配置される。チューブ504の近位端508は、延長部502の多線条シャフト501との接合部より近位側に配置され、多線条シャフト501の外面に固着される。チューブ504はバルーン506の中央を通り抜け、バルーン506の遠位端を通じて進む。図5A〜5Cに示される実施形態の各々において、多線条シャフト501に沿ったチューブ504の近位端508の配置は、シャフト501の可撓性に影響を及ぼす。従って、他の実施形態において必要に応じて可撓性を増加させたり、又は低下させたりするには、この配置を変えることが有用である。
【0026】
図6は、多線条チューブを含む細長シャフト601を有するバルーンカテーテル600の一実施形態を示す。膨張バルーン602は遠位端の近傍に配置される。図6Aは、カテーテル600の中央部の拡大詳細図である。図6Aで明確に分かるとおり、シャフト601は外部ワイヤガイドルーメン604と内部膨張ルーメン606とを備える。図6Aに示されるとおり、この実施形態のカテーテルシャフト601は、PEBAコーティング603によって被覆される。コーティング603は、カテーテルシャフト601を導入する間の摩擦を低減し、膨張流体がシャフト601の壁を通じて膨張ルーメン606から漏れ出すのを防ぐ封止を提供する働きをする。同様に図6Aで分かるとおり、カテーテルシャフト601は、領域605に沿ってより小さい直径まで遠位方向に縮径している。
【0027】
図6Bは、バルーンカテーテル600の遠位部の拡大詳細図である。図6Bに示されるとおり、膨張ルーメン606は膨張バルーン602に開口しており、ワイヤガイドルーメン604は遠位端607までバルーン602を通じて延在する。図6Bは、バルーン602と2本のルーメン(604及び606)との間の関係をより明確に示す拡大された詳細な部分図を含む。この実施形態において、バルーン602及びワイヤガイドルーメン604は、PEBAシュリンクスリーブ608と共にシャフト601に装着される。図6Cに示されるとおり、スリーブ608の断面図は、装着前はほぼ8の字型を有する。スリーブ608は、2つの中心開口部(610及び612)を有し、それによってスリーブ608をワイヤガイドルーメン604及びシャフトに被せて装着することが可能となる。この実施形態において、バルーン602とワイヤガイド604とがスリーブ608と共にシャフト601に組み立てられた後、スリーブ608が加熱されて収縮し、シャフト601とバルーン602とワイヤガイド604とのアセンブリが形成される。図6Dは、図6Bの線6D−6Dに沿った横断面であり、完成した構成を図示する。スリーブ608はシャフト601までを形成し、膨張ルーメン606及びワイヤガイドルーメン604は開口したまま残す。
【0028】
ルーメン相互の連通は防止され得る。例えば、細長シャフト601の多線条チューブの壁は多孔質であってもよく、膨張ルーメン606内の膨張流体に及ぼされる圧力が、膨張流体をワイヤガイドルーメン604に押し込み得る。一態様に従えば、これは、例えばPTFE(他の材料が用いられてもよいが)などのライナーでワイヤガイドルーメン604をライニングすることによって防止され得る。さらに、ワイヤガイドルーメン604の近位ブリーチ部又は側面開口の真下にある細長シャフト601にわたって内側コーティング部分が設けられてもよい。内側コーティング部分は、例えばPEBAであってもよい。内側コーティング部分は、その部分の領域の可撓性を変えるように、例えば可撓性の急激な変化を回避するために組み込まれてもよい。一実施形態において、この部分の近位端は、テーパ部のおよそ中間で終端となり、その部分の遠位端は、ワイヤガイドルーメン604の近位ブリーチ部又は側面開口のすぐ遠位側で終端となる。別の態様に従えば、ルーメン相互の連通は、本質的に細長シャフト601の全長にわたってコーティング603を設けることによって防止することができ、続いてそのコーティング603及び細長シャフト601に被せてスリーブ608が設けられてもよい。さらに別の態様に従えば、ルーメン相互の連通は、単にスリーブ608の壁を厚くすることによって防止され得る。例えば、0.001インチ(0.025mm)の壁厚のコーティング603又はスリーブ608が十分であり得る。先述のとおり、コーティング603及びスリーブ608は、PEBA又は別の好適な材料であってよい。これらの原理は、ルーメンの1本に流体が送り込まれたり、又は注入されたりすることからそれが望ましいであろうときには、本発明の他の実施形態において組み込まれ得る。
【0029】
図7A〜7Bは、本発明の一態様に従うカテーテル器具700の一部分の断面図を示す。複数の線条702を含むシャフト壁が、内側コーティング701と外側コーティング703とを備え、第1のルーメン704と第2のルーメン706とを取り囲む。第1のルーメン702を通じてワイヤガイド708が延在し、第2のルーメン706を通じてステント展開シャフト710が延在する。図7Aに示されるとおり、このカテーテル器具700は、自己拡張型ステント714を収容する遠位延長部712を備える。図7Bは、ステント展開シャフト710によって第2のルーメン706からステント714を展開させるため押し出されたステント714を示す。ステント714を展開する前に、ワイヤガイド708は典型的には、ステント714の展開を妨害しないよう、シャフト壁又はルーメン704の中に引き込まれる。
【0030】
図8は、カテーテル器具800の別の実施形態の部分断面図を示し、これは自己拡張型ステント810を備える。カテーテル器具800は、第1の外側管状多線条本体804に取り囲まれた中心ルーメン802を有する。中心ルーメン802には、プッシャ806として使用される第2の内側多線条ケーブルチューブが同軸状に配置される。プッシャ806は突出した係合表面808を有し、これは、自己拡張型ステント810を中心ルーメン802から押し出したり、又は外側管状多線条本体804が近位方向に引かれるときにステント810を保持したりするためのものである。プッシャ806の遠位端にはテーパ状先端12が装着され、カテーテル器具800に外傷性が最小の前端面を提供する。ワイヤガイド814はプッシャ806の中心ワイヤガイドルーメン816を通じて延在する。場合により、外側管状本体804及びプッシャ806の側面を通じて開口部(図示せず)が設けられ、ワイヤガイド814が中心ルーメン802及びワイヤガイドルーメン816から中間位置で出ることを可能にし得る。自己拡張型ステント810は、使用者がプッシャ806を実質的にその場に保持しながら外側管状本体804を近位方向に引き込むと、展開されるように構成される。自己拡張型ステント810の周りから外側管状本体804が引き抜かれる間、プッシャ806の突出した係合表面808が自己拡張型ステント810を実質的にその場に保持する。ステント810が展開されると、プッシャ806及びワイヤガイド814は引き抜かれ、ステント810が展開された位置に残る。
【0031】
図9〜9Eはバルーンカテーテル器具900の一実施形態を示し、これは細長多線条チューブシャフト901を有し、且つワイヤガイドを用いたショートワイヤ適用における使用向けに構成されている。器具900の遠位端の近傍に膨張バルーン902が配置され、そこに封着されている。図9Aは、カテーテル900の中間部の拡大詳細図である。図9及び9Aに示されるとおり、カテーテル900は、内部シャフトルーメン906とワイヤガイドチューブ904に囲まれている外部ワイヤガイドルーメン904aとを備える。図9Aに示されるとおり、シャフト901はPEBA又は他のコーティング903で被覆され得る。一態様において、コーティング903は、カテーテルシャフト901を導入する間の摩擦を低減し、膨張流体がシャフト901の多線条壁を通じてシャフトルーメン906から漏れ出すのを防ぐ封止を提供するよう働き得る。当業者は、コーティング903がシャフト901の外面に配置されてもよく、又はシャフトルーメン906の内表面/ルーメン表面上にライニング/コーティングとして配置されてもよく、又はその双方であってもよいことを理解するであろう。同様に図9Aに図示されるとおり、カテーテルシャフト901は、狭まる移行領域905に沿ってより小さい直径まで遠位方向に縮径し、近位シャフト部分より可撓性の高い遠位シャフト部分を提供する。遠位側の可撓性が増すことで、蛇行性の通路にカテーテル器具900を送り進めることがより容易に可能となり得る。
【0032】
図9Bは、バルーンカテーテル900の遠位部の拡大詳細図である。図9Bに示されるとおり、シャフト901及びワイヤガイドルーメンチューブ904の双方が、バルーン902を通じて遠位端907まで延在する。シャフト901の遠位端には密閉先端909が提供されてもよく、これは好ましくは非侵襲性の遠位外形を有する。図9Cは図9Bの拡大された詳細な部分図を示し、バルーン902とワイヤガイドルーメン及びシャフトルーメン(904a及び906)との間の関係が説明される。シャフト901のうちバルーン902の内部にある部分はコーティング903を備えず、シャフト901の壁を形成する線条は流体密な遮断層を形成しない。結果として、矢印919によって示されるとおり、シャフトルーメン906は、そこに導入される膨張流体が、シャフト901の多線条壁のルーメン内部分(バルーン902のルーメンの中にある)を通過してバルーン902を膨張させることができるため、膨張ルーメンとして効果的に使用され得る。しかしながら、ワイヤガイドルーメンチューブ904は最も好ましくは、シャフトルーメン906又はバルーン902のルーメンと流体連通できないように構成される。具体的には、ワイヤガイドルーメンチューブ904は、シャフト901の壁を通過してバルーン902のルーメンに入り込む膨張流体がワイヤガイドルーメン904aを通じて漏れないように構成される。同様にこの実施形態に示されるとおり、バルーン902の長さを通じて延在するシャフト901が、バルーン902に長手方向の支持を提供し得る。
【0033】
同様にこの実施形態に示されるとおり、バルーン902及びワイヤガイドルーメンチューブ904は、シュリンクスリーブ908によってシャフト901に装着され得る。図9Dに示されるとおり、スリーブ908は、装着前はほぼ8の字型を有する。スリーブ908は2つの中心開口部(910及び912)を備え、それによってスリーブ908をワイヤガイドルーメンチューブ904及びシャフト901に被せて装着することが可能となる。この実施形態において、バルーン902とワイヤガイドチューブ904とがスリーブ908と共にシャフト901に組み立てられた後、スリーブ908が加熱されて収縮し、シャフト901とバルーン902とワイヤガイドチューブ904とのアセンブリが形成され得る。図9Eは、図9Cの線9E−9Eに沿った横断面図であり、完成した構成を図示する。スリーブ908はシャフト901の外表面までを形成し、シャフトルーメン906及びワイヤガイドルーメン904aは開口したまま残す。図9Aに示されるとおり、スリーブ908はワイヤガイドチューブ904を覆って、且つそれを近位方向に越えて延在し得る。従って、ワイヤガイドルーメン904aへのアクセスを提供するため、ワイヤガイド開口部914が削り抜かれるか、又は他の方法で設けられ得る。当業者は、スリーブを用いる代わりに、コーティング903が延在することでワイヤガイドチューブ904及びバルーン902、或いはそのどちらか一方に接触し、ワイヤガイドチューブ904及びバルーン902、或いはそのどちらか一方にコーティング903の封止を提供してもよく、又はワイヤガイドチューブ904及びバルーン902をシャフト901に固定する他の手段が本発明の範囲内で用いられてもよいことを理解するであろう。
【0034】
図10〜10Aはバルーンカテーテル器具1000の実施形態を示し、これは細長多線条チューブシャフト1001を有し、且つワイヤガイドを用いない使用向けに構成されている。一態様において、図10の実施形態は、送り進めるなかでワイヤガイドと同じように操作され得るように構成され得る。器具1000の遠位端の近傍に膨張バルーン1002が配置され、これは、内部シャフトルーメンコーティング1003と協働してバルーン1002の近位側の連続的に封止された長さのシャフトルーメン1006を形成する形でそこに封着されている。一態様において、コーティング1003は、膨張流体がシャフト1001の多線条壁を通じてシャフトルーメン1006から漏れ出すのを防ぐ封止を提供するよう働き得る。カテーテルシャフト1001は、近位方向よりも遠位方向に小さく縮径する直径を備えてもよく、望ましいプッシャビリティ及びトラッカビリティを維持しながら、近位シャフト部分より高い可撓性を有する遠位シャフト部分を提供する。
【0035】
図10Aは、バルーンカテーテル1000の遠位部の拡大詳細図である。図10Aに示されるとおり、シャフト1001は、バルーン1002を通じて遠位端1007まで延在する。従ってシャフトはカテーテルの全長にわたって延在し、−特にバルーン位置の周囲の−キンクを促進し得るいかなる分断部も回避し得る。シャフト1001の遠位端には密閉先端1009が提供されてもよく、これは好ましくは非侵襲性の遠位外形を有する。コーティング1003は、シャフト1001の近位長さにわたってシャフトルーメン1006の表面を実質的に被覆し、バルーン1002の近位端の近傍で終端となっており、従ってシャフト1001のルーメン内部分(バルーンの内部空間の中、その少なくとも一部はバルーン1002のルーメンを形成する)はコーティング1003を含まず、シャフト1001の壁の少なくとも当該部分を形成する線条は流体密な遮断層を形成しない。結果として、矢印1019によって示されるとおり、シャフトルーメン1006は、そこに導入される膨張流体が、シャフト1001の多線条壁を通過してバルーン1002を膨張させることができるため、膨張ルーメンとして効果的に使用され得る。当業者は、ルーメンのシャフトコーティング1003に加えて、又はそれに代えて、コーティングがシャフト外面に用いられてもよく、及びコーティングがシャフトの内表面及び外表面の双方に存在する場合、各コーティングが含む材料は他方のコーティングと同じであっても、又は異なってもよいことを理解するであろう。また、バルーン内にある遠位部分の全長が未被覆である必要はない;但し、チューブのこの遠位部分を通じた膨張流体の漏出が、バルーンの膨張を可能とするのに十分であることを条件とする。この実施形態において、シャフト1001はまた、バルーン1002に長手方向の支持も提供する。このシャフトは、バルーンの長手方向の長さ全体にわたって延在することが分かるであろう。バルーン1002内に配置されたシャフト部分は一対の放射線不透過性マーカー1017を備えてもよく、これは、使用者がバルーン1002の位置を蛍光透視鏡で見ることができるように構成される。好適な放射線不透過性マーカーとしては、スエージ加工された金属(例えば、ステンレス鋼、白金、金など)又はバリウム若しくは別の放射線不透過性材料が注入されたポリマーを挙げることができる。
【0036】
好ましい一実施形態において、外部ワイヤガイド構造のないバルーンカテーテル1000などのバルーンカテーテル器具は、ワイヤガイドと同じように機能し得るように製造され得る。具体的には、カテーテル1000は小さい外径を有し、急な屈曲部又は蛇行性の通路に挿通するのに十分な可撓性であり、且つそのように急激に屈曲したり、及び蛇行性であったり、或いはそのどちらか一方である経路にワイヤガイドと同じように送り進めるのに十分なプッシャビリティ及びトラッカビリティを有するため、別個のワイヤガイドの必要性がないように構成され得る。当業者は、各用途によって好ましい外径は異なり得るが、末梢血管での使用向けに構成されたカテーテルの実施形態の外径は約0.102〜0.140センチメートル(0.040〜0.055インチ)の範囲であってよく、且つカテーテルの実施形態の長さに沿って外径が異なってもよいことを理解するであろう。
【0037】
ある実施形態において、シャフトコーティング(ある場合)はPEBA以外の材料であってもよく、バルーンを装着するために用いられる装着スリーブの材料(例えば、HDPE、PTFE、PET、ポリウレタン、ポリイミド、ポリオレフィン、ナイロン、又はそれらの任意の組み合わせ)と同じ材料であっても、又は異なる材料であってもよい。本発明のバルーンカテーテルは、例えば図3Bに例示されるとおりの拡張型ステントと共に使用するのに適合し得る。上記の実施形態において、カテーテル器具を所望の部位まで前進させる/送り進める間に使用するための可撓性スタイレット(図示せず)が、膨張ルーメンを通じて挿入されてもよい。かかるスタイレットは、剛性及びプッシャビリティを高めることが望ましい状況(例えば、そのカテーテルが病変部にカニューレ挿入するために用いられている場合など)において、それらを高めるために用いられ得る。付形された(例えば、最高約70°の曲線形を備える)スタイレットを使用することによってもまた、使用者は、カテーテルシャフトの遠位端の形状を、例えば、より容易に分岐血管に向きをとり、送り進めることが可能となり得るように変えることが可能となり得る。好ましいスタイレットは、カテーテル器具の遠位端を越えずに延在する。
【0038】
別のバルーンカテーテル器具の実施形態1100が、図11〜11Gを参照して示される。カテーテル器具1100は、単層多線条チューブ1120を備える細長シャフト1107を備える。器具の遠位端の近傍に膨張バルーン1103が配置される。器具の近位端に隣接してハブ1140が配置される。図11Aは、器具1100の遠位〜中間部分の拡大詳細図であり、その器具をショートワイヤガイド構成で使用するために構成されたワイヤガイドルーメン構造1170の近位部分を含む拡大縦断面図を示す。ワイヤガイドルーメン構造1170は、シャフト1107の膨張ルーメン1101と実質的に平行に延在するワイヤガイドルーメン1172を備える。
【0039】
例示される実施形態において、シャフト1107の実質的に全長が、外層1150をコーティングとして備え得る。好ましいコーティングは、例えば、ポリエステル又はポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX(登録商標))などの熱可塑性ポリマーである。好ましいコーティングは、例えば血管を通じて器具を導入する間に低摩擦性を呈する望ましい潤滑特性を提供し得る。好ましいコーティングはまた、加圧膨張流体の漏出を防ぐように構成された(例えば、最高約8〜14atmの正常動作範囲における圧力下において、及び好ましくは、例えば、最高約27atm又はそれを超える、正常範囲を超過した圧力下での漏出を防ぐように構成された)流体密な封止も提供し得る。
【0040】
好ましいカテーテルシャフト1107は、より大きい近位外径(例えば、約0.122〜約0.132センチメートル(約0.048〜約0.052インチ)など)からより小さい遠位直径(例えば、約0.112〜約0.102センチメートル(約0.044〜約0.040インチ)など)まで縮径する。当業者は、より小さい遠位直径が、蛇行性通路に送り進めるときのトラッカビリティの向上をもたらすことを理解するであろう。
【0041】
図11B及び図11C(図11Bの拡大詳細図である)に示されるとおり、カテーテル器具1100の膨張ルーメン1101は、バルーン1103のバルーンルーメン1103aに開口し、それとの流体連通を提供する。ワイヤガイドルーメン1172を備えるワイヤガイドルーメン構造1170の遠位部分1170aもまた、バルーンルーメン1103aの中を通り、バルーン1103の遠位端を通じて遠位先端1104まで延在する。ワイヤガイドルーメン構造1170の遠位端部分1170aは好ましくは、極めて可撓性が高く(高いトラッカビリティ)、これは、特に蛇行性の通路を通じてワイヤガイド(図示せず)に沿って器具1100を送り込むうえで利点を提供し得る。図11Bはまた、器具1100に対するバルーン1103の取付けも示す。当業者は、本発明の範囲内の別の実施形態において、バルーン1103がチューブ1120に取り付けられ、遠位ワイヤガイドルーメン構造部分1170aが(バルーンルーメン1103aの)外側に、バルーン1103に隣接して延在するように構成されてもよいことを理解するであろう。
【0042】
図11Dは、デュアルルーメン熱硬化性スリーブ1105の横断面を示し、これはほぼ8の字型の断面を有し、且つ上側ルーメン1105aと下側ルーメン1105bとを備える。スリーブ1105は好ましくは、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル又はポリエーテルブロックアミド(PEBA)などの熱可塑性の結合材料か、又はワイヤガイドルーメン構造1170を形成し、それをチューブ1120に付着させるよう働くのに好適な熱可塑性材料を有する他の然るべきポリマー材料で製造される。図11E〜11F(その各々が、図11Aの線11E−11Eに沿った横断面図を表す)に図示されるとおり、スリーブ1105の上側ルーメン1105aはワイヤガイドルーメン1172を画定する。ワイヤガイドルーメン1172は、ワイヤガイドルーメンライナー1172aを備えてもよく、これは好ましくは、例えば、PTFE、ポリエチレン、ポリイミド、又は同様の材料などの、高強度の薄い壁を形成することができる潤滑性のポリマーで作製される。一態様において、ライナー1172aは、膨張ルーメン1101からチューブ1120の間隙を通じてワイヤガイドルーメン1172の中に流体が漏れるのを防ぐ働きをし得る。膨張流体が膨張ルーメンから漏れ出さないようにすることは好ましく、その少なくともの理由としては、実質的に開通した流体ルーメンが、バルーンの適切な膨張及び収縮に望ましい圧力及び流量で膨張流体を通過させるように要求されることが挙げられる。別の態様において、スリーブ1105のうちスリーブルーメン1105aと1105bとの間にある部分は、例えば約0.0025センチメートル(約0.001インチ)などの、膨張ルーメン1101とワイヤガイドルーメン1172との間でルーメンが相互に連通する可能性を最小限に抑えるのに望ましい厚さが設けられ得る。
【0043】
下側ルーメン1105bはチューブ1120を取り囲む。器具の外層コーティング1150がスリーブ1105の外面上に延在し、それを取り囲み得る。図11E〜11Fに示されるとおり、熱硬化性スリーブ1105は、加熱されることでワイヤガイドルーメン1172及びチューブ1120の周囲に形状が適合する。図11Eは、円形断面に形成されたスリーブ1105を示し、図11Fは、円形以外の断面に形成されたスリーブ1105を示す。器具1100が、造影用流体を注入し得るガイドスリーブ(図示せず)と共に使用される場合には、後者の構成が好ましく、これは円形以外の外形であることにより、造影用流体を環状断面のガイドシースルーメンを通じ、スリーブ1105の周囲を伝ってより容易に流動させることが可能となり得るためである。しかしながら、断面高さは断面幅と比べてそれほど大きい差がないことが好ましい。
【0044】
図11A及び図11G(図11Aの線11G−11Gに沿った横断面図である)を参照して、ワイヤガイド開口部1109が説明される。ショートワイヤ構成でのカテーテル器具1100の使用を促進するため、ワイヤガイドルーメン構造1170の近位端の近傍にワイヤガイド開口部1109が設けられる。ワイヤガイド開口部1109は、外層1150、スリーブ1105の上表面、及び(存在する場合)ワイヤガイドルーメンライナー1172aを貫通して開口を削り出すことによって形成され得る。この開口部1109により、例えば、遠位端1104からワイヤガイドルーメン1172を通じて送り込まれたワイヤガイド(図示せず)がそこから抜け出ることが可能となり得る。上記のとおり、器具1100をワイヤガイドにこのように装着することで、ワイヤガイドに沿った器具1100の迅速な導入及び交換、或いはそのどちらか一方が促進され得る。開口部領域におけるルーメンにまたがる漏出に対してさらなる防止策を提供するため、開口部1109に隣接したシャフト領域に沿ってシャフト1107の外周を囲むように追加的な遮断層1105cが設けられてもよい。遮断層1105cは好ましくは、例えば、ポリエーテルブロックアミド又は同様の材料などの、好ましくは膨張流体を透過させない高強度ポリマーで形成され得る。
【実施例】
【0045】
実施例1
【0046】
ワイヤガイド式バルーンカテーテル1200の例示的作製方法が、図12A〜図12Kを参照して説明される。当業者は、この実施形態及び他の実施形態が、本発明の範囲内で代替的方法を用いて製造され得ることを理解するであろう。図12Aに示されるとおり、多線条管状シャフト1202が提供され、これは、10本の線条が共にコイル状に巻かれることで、シャフトルーメン1206を画定するシャフト壁1204を形成する単層管状シャフトを備える。シャフト1202は近位端1202aと遠位端1202bとを備え、約0.127センチメートル(約0.05インチ)の近位外径から約0.102センチメートル(約0.04インチ)の遠位直径まで縮径する構造により、望ましいプッシャビリティ特性及びトラッカビリティ特性を有する。(注記:図12A〜図12Kは、本願の他の全ての図と同様に、一定の縮尺で描かれていないこともある)。次に、図12Bに示されるとおり、PEBA遮断層スリーブ1208がシャフト壁1204の遠位領域の周囲に置かれ、加熱されることでそれ(1204)を囲んで封止するように収縮する。
【0047】
次に、図12Cに示されるとおり、細長デュアルルーメンスリーブ1210が提供される。デュアルルーメンスリーブ1210は、下側ルーメン1212と上側(ワイヤガイド)ルーメン1214とを備える。スリーブ1210の上側ルーメン部分1214aは、スリーブ1210の下側ルーメン部分1212aを越えて遠位方向に延在する。図12Cは、シャフト1202のシャフト壁1204に装着されたデュアルルーメンスリーブ1210を示し、これは、遠位シャフト端1202bが下側ルーメン部分1212aの遠位端の近傍にくるまで、シャフト1202の遠位部分を下側ルーメン1212の中に摺動させることによって装着される。
【0048】
図12Dは、第1のマンドレル1218a上に提供されたPTFEワイヤガイドルーメンライナー1218を示す。ライナー1218は、その(1218)近位端が上側(ワイヤガイド)ルーメン1214の近位端に隣接するまで、上側(ワイヤガイド)ルーメン1214の中に送り込まれ得る。次に、図12Eに示されるとおり、管状PEBA熱可塑性シース1220が、シャフト1202の遠位領域の周囲にあるデュアルルーメンスリーブ1210の当該部分も取り囲むようにして、シャフト1202の全長を覆って送り込まれる。次に、図12Fに示されるとおり、アセンブリが加熱された後、シース1220がシャフト長さを囲んで収縮することにより、シャフト1202の長さに沿った、デュアルルーメンスリーブ1210をシャフト壁1204及びライナー1218に融着させる封止コーティング1220が形成される。熱収縮ステップの間、シャフト壁を通じて浸出する任意のコーティング材料によってシャフトルーメン1206が閉塞されないよう、第2のマンドレル1222がシャフトルーメン1206に通され提供される。
【0049】
次に、図12Gに図示されるとおり、上側(ワイヤガイド)ルーメン1214の近位端の近傍に、シース1220、スリーブ1210、及びライナー1218を貫通して切削されるか、又はその他の方法で切り込みが設けられることにより、ワイヤガイド開口部1230が削り出される。図12Hは、第1のマンドレル1218a(又は異なるマンドレル、図示せず)が、ワイヤガイド開口部1230のすぐ近位側にあるデュアルルーメンスリーブ1210の一部分を圧縮するようにしてワイヤガイド開口部1230を通じて送り込まれることを示す。圧縮領域は加熱され、図12Jに示されるとおり、実質的に融着することでワイヤガイド開口部1230の近位部分として近位傾斜表面1230aを形成する。
【0050】
図12Iに示されるとおり、バルーン1280の近位端は、スリーブ1210の上側ルーメン部分1214aがバルーン1280のルーメン1282及び遠位端を通じて延在するように、遠位シャフト端1202bに隣接してアセンブリに(好ましくはヒートシール又は等価な手段によって)取り付けられる。バルーン1280の遠位端は、ワイヤガイドルーメン1214を収容する、スリーブ1210の上側ルーメン部分1214aに(同様に、好ましくはヒートシール又は等価な手段によって)封着される。PTFEワイヤガイドライナー1218は、デュアルルーメンスリーブ1210の上側ルーメン部分1214aの遠位端まで完全に延在する必要はない。バルーン1280は圧縮されて折り畳まれてもよく、且つ図12Jに示されるとおり、そこに−必要に応じて−ステント1290が装着されてもよい。さらに、図12Kに示されるとおり、近位シャフト端1202aにハブ1295が装着され得る。この方法の別の実施形態において、多線条シャフトの遠位側にある当該上側ルーメン部分の長手方向形状は、図5Cに示されるものと同じように、当該多線条シャフト又は多線条シャフトと外側スリーブ1210との組み合わせの長手方向軸とほぼ一直線に並ぶように改造されてもよい。
【0051】
当業者は、上記の構造及び方法の他の実施形態及び変形例が本発明の範囲内で実践され得ることを理解するであろう。また、記載されている特徴、特に組み合わせは、具体的に記載又は参照されているもの以外の特徴の組み合わせでもまた有用であり得ることも認識されるであろう。従って、前述の詳細な説明は、限定ではなく例示と見なされるべきであることが意図され、本発明の範囲を定義するように意図されるのは、全ての等価物を含む以下の特許請求の範囲であると理解されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤガイドと共に使用するよう構成された医療用バルーンカテーテル器具であって、前記カテーテルが、
近位チューブ端と、遠位チューブ端と、それらの間に延在する長手方向チューブルーメンとを含む細長単層多線条チューブと、
前記遠位チューブ端に隣接して配置され、且つ前記遠位チューブ端を越えて遠位方向に延在するワイヤガイドルーメン構造であって、ワイヤガイドルーメンを含む構造と、
前記ワイヤガイドルーメン構造に隣接して配置された可膨張性バルーンであって、前記バルーンのルーメンが前記チューブルーメンと流体連通するように前記遠位チューブ端の近傍に取り付けられたバルーンと、
を含み、被覆された近位チューブ部分が前記近位チューブ端と前記バルーンルーメンとの間に流体連通する実質的に開通した経路を提供するようにして、前記チューブが構成される、カテーテル器具。
【請求項2】
前記ワイヤガイドルーメン構造が、前記バルーンルーメンの一部分を通じて延在する、請求項1に記載のカテーテル器具。
【請求項3】
前記被覆された近位チューブ部分のコーティングが、HDPE、PTFE、PET、ポリエステルブロックアミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリオレフィン、ナイロン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される材料を含む、請求項1又は2に記載のカテーテル器具。
【請求項4】
前記チューブルーメンと前記ワイヤガイドルーメンとの間の流体連通を防止するための手段をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカテーテル器具。
【請求項5】
流体連通を防止するための前記手段が、前記チューブの遠位部分の周囲に配置されたポリマーシースを含む、請求項4に記載のカテーテル器具。
【請求項6】
流体連通を防止するための前記手段がデュアルルーメンスリーブを含み、その一部が前記チューブの遠位部分の周囲に配置される、請求項4に記載のカテーテル器具。
【請求項7】
前記ワイヤガイドルーメン構造がデュアルルーメンスリーブを含み、前記スリーブが、前記ワイヤガイドルーメンと、それに実質的に平行なチューブを取り囲むルーメンとを含み、前記チューブを取り囲むルーメンが前記チューブの周方向遠位部分を実質的に包囲する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカテーテル器具。
【請求項8】
前記ワイヤガイドルーメン構造が、前記ワイヤガイドルーメン構造の近位端の近傍にワイヤガイド開口部をさらに含み、前記開口部が、ワイヤガイドの挿通を可能にするように構成される、請求項7に記載のカテーテル器具。
【請求項9】
前記チューブを取り囲むルーメンが、前記チューブの遠位部分外面に結合される、請求項7又は8に記載のカテーテル器具。
【請求項10】
前記バルーンの遠位端部分が、前記ワイヤガイドルーメン構造に封着され流体密な封止を形成する、請求項7〜9のいずれか一項に記載のカテーテル器具。
【請求項11】
前記ワイヤガイドルーメンが、前記ワイヤガイドルーメンの表面に対して同軸状に配置されたライニング層をさらに含む、請求項7〜10のいずれか一項に記載のカテーテル器具。
【請求項12】
前記ライニング層がPTFEを含む、請求項11に記載のカテーテル器具。
【請求項13】
前記バルーンから展開されるように構成された、バルーンを展開可能なステントをさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医療用バルーンカテーテル。
【請求項14】
ワイヤガイドと共に使用するよう構成された医療用バルーンカテーテル器具であって、前記カテーテルが、
近位チューブ端と、遠位チューブ端と、それらの間に延在する長手方向チューブルーメンとを含む細長単層多線条チューブと、
前記遠位チューブ端に隣接して配置されたデュアルルーメンスリーブ構造であって、第1のスリーブルーメンと第2のスリーブルーメンとを含むデュアルルーメンスリーブ構造と、
前記チューブルーメンと流体連通するバルーンルーメンを含む可膨張性バルーンと、
を含み、
前記第1のスリーブルーメンがワイヤガイドルーメンを含み、且つ前記遠位チューブ端を越えて遠位方向に延在し、
前記第2のスリーブルーメンが、前記遠位チューブ端に隣接したチューブ部分が配置されるチューブ結合ルーメンを含み、
コーティングが前記チューブ及び前記スリーブ構造の外表面を実質的に被覆し、且つ前記チューブルーメンに沿って前記近位チューブ端と前記バルーンルーメンとの間に開通する流体連通経路を提供し、
前記バルーンの近位部分が、前記チューブ及び前記スリーブ構造と接続され、且つ前記スリーブ構造の少なくとも一部分が前記バルーンルーメンを通じて延在するようにして、前記スリーブ構造に遠位方向に接続され、
前記第1のスリーブルーメンが、前記バルーンの遠位端を越えて遠位方向に延在し、及び、
ワイヤガイド開口部が、前記ワイヤガイドルーメンの近位部分に配置され、ワイヤガイドのための挿通路を提供するように構成される、カテーテル器具。
【請求項15】
コーティングが、HDPE、PTFE、PET、ポリエステルブロックアミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリオレフィン、ナイロン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される材料を含む、請求項14に記載のカテーテル器具。
【請求項16】
前記ワイヤガイドルーメンが、前記ワイヤガイドルーメンの表面に対して同軸状に配置されたライニング層をさらに含む、請求項14又は15に記載のカテーテル器具。
【請求項17】
前記バルーンから展開されるように構成された、バルーンを展開可能なステントをさらに含む、請求項14〜16のいずれか一項に記載のカテーテル器具。
【請求項18】
バルーンカテーテル器具の作製方法であって、
近位チューブ端と遠位チューブ端とを有し、それらの間にチューブルーメンが備わる細長多線条チューブを提供するステップと、
上側スリーブルーメンと下側スリーブルーメンとを有するデュアルルーメンスリーブを提供するステップであって、前記上側ルーメンが前記下側ルーメンより長い遠位長さを備える、ステップと、
前記遠位チューブ端が前記下側ルーメンの遠位端の近傍にくるまで前記遠位チューブ端を前記下側ルーメンに送り込むステップと、
管状シースを前記チューブ及び前記スリーブに被せて送り込み、それによって前記チューブ及び前記スリーブの少なくとも実質的に長手方向の部分を、双方とも前記管状シースのシースルーメンを通じて延在させるステップと、
前記シースが前記チューブ及び前記スリーブの周りにコーティングを形成するように、それらの周囲で前記シースを収縮させるステップと、
ワイヤガイド開口部を前記上側ルーメンの近位部分に削り出すステップと、
バルーンルーメンを有するバルーンを提供するステップと、
前記チューブルーメンが前記チューブルーメンと流体連通するように前記バルーンを前記チューブに取り付けるステップと、
を含む、方法。
【請求項19】
前記デュアルルーメンスリーブを提供する前のステップであって、前記チューブの遠位領域の周囲に配置される遮断層スリーブを提供することを含むステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記デュアルルーメンスリーブの前記上側ルーメンに管状ライナーを提供するステップをさらに含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記ワイヤガイド開口部を通じて送り込まれるマンドレルを提供するステップと、前記ワイヤガイド開口部のすぐ近位側の領域を圧縮して傾斜表面を形成するステップとをさらに含む、請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記下側ルーメンより長い遠位長さを備える前記上側ルーメンの一部分が、前記バルーンルーメンの一部分を通じて延在する、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
医療用バルーンカテーテルであって、
貫通する長手方向チューブルーメンと、被覆された近位部分と、被覆されていない遠位部分とを含む細長単層多線条チューブと、
前記被覆されていない遠位部分の周りに配置される可膨張性バルーンであって、前記バルーンのルーメンが前記被覆されていない遠位部分を実質的に含むように配置されるバルーンと、
を含み、前記被覆された近位部分が、前記被覆されていない遠位部分と流体連通する実質的に開通した経路を提供し、且つ、前記被覆されていない遠位部分が、前記チューブルーメンと前記バルーンルーメンとの間の流体連通を可能にするように前記チューブが構成される、医療用バルーンカテーテル。
【請求項24】
前記被覆された近位部分が、前記チューブの外表面上にコーティングを含む、請求項23に記載の医療用バルーンカテーテル。
【請求項25】
前記被覆された近位部分が、前記チューブルーメンの表面上に第1のコーティングを、及び前記チューブの外表面上に第2のコーティングを含む、請求項23又は24に記載の医療用バルーンカテーテル。
【請求項26】
前記第1のコーティングが、前記第2のコーティングと異なる材料を含む、請求項25に記載の医療用カテーテル。
【請求項27】
ワイヤガイドチューブをさらに含み、
前記ワイヤガイドチューブが前記多線条チューブと接続され、且つ、前記バルーンの近位側の位置から前記バルーンの前記遠位端の近傍の位置まで、前記多線条チューブと平行に実質的に長手方向に延在し、及び
前記ワイヤガイドチューブがワイヤガイドルーメンを含む、請求項23〜26のいずれか一項に記載の医療用バルーンカテーテル。
【請求項28】
前記ワイヤガイドチューブを前記多線条チューブに接続するスリーブをさらに含む、請求項27に記載の医療用バルーンカテーテル。
【請求項29】
前記バルーンから展開されるように構成された、バルーンを展開可能なステントをさらに含む、請求項23〜28のいずれか一項に記載の医療用バルーンカテーテル。
【請求項30】
カテーテル器具であって、
長手方向に貫通して延在するシャフトルーメンを含む細長単層多線条管状シャフトと、
前記シャフトの遠位端部分上に配置されるバルーンであって、ルーメン内シャフト部分が前記バルーンの内部空間を通じて実質的に長手方向に配置されるように配置されるバルーンと、
シャフト外表面部分及びシャフトルーメン内表面部分の少なくとも一方の上に配置されたコーティングであって、
前記被覆された表面部分が前記シャフトの流体密な封止を提供する、コーティングと、
を含み、前記コーティングが、前記シャフトルーメンと前記バルーンの前記内部空間との間の流体連通を可能とするように、前記ルーメン内シャフト部分上には実質的に延在しない、カテーテル器具。
【請求項31】
医療用バルーンカテーテルであって、
貫通する長手方向チューブルーメンと、近位部分と、遠位部分とを含む細長多線条チューブと、
前記遠位部分の周りに同軸状に配置された可膨張性バルーンであって、前記遠位部分が前記バルーンの長手方向全範囲にわたり長手方向に延在する、バルーンと、
を含み、前記チューブが、膨張流体を前記チューブルーメンに沿って前記バルーンまで通過させるように構成され、前記近位部分を通じた膨張流体の漏出は実質的になく、且つ、前記バルーンを膨張させるのに十分な前記遠位部分を通じた膨張流体の漏出はある、医療用バルーンカテーテル。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10】
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【図10A】
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【図11】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図12H】
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【図12I】
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【図12J】
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【図12K】
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【公表番号】特表2010−527259(P2010−527259A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508406(P2010−508406)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/006135
【国際公開番号】WO2008/143860
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(506326006)クック・インコーポレイテッド (27)
【Fターム(参考)】