説明

多色感熱記録材料

【課題】本発明は、低温と高温で互いに異なる色調に発色する多色感熱記録材料において、低温発色部と高温発色部との色分離がよく、高温環境下での地肌かぶりが少なく、しかも発色感度と画像保存性に優れた耐熱性多色感熱記録材料を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、互いに異なる色調に発色する二種以上の電子供与性染料前駆体と、該染料前駆体を加熱時発色させる電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた多色感熱記録材料において、該感熱記録層中に、該染料前駆体の少なくとも一種以上がビニル単量体を付加重合することにより得られる発色調節層を表面に有する粒子の形態で存在させ、且つ発色調節層を表面に有さない該染料前駆体として特定の赤系発色の染料前駆体を含有させ、更に特定の電子受容性顕色剤、特定の熱溶融化合物、特定融点範囲の脂肪酸アミド化合物とを含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境下での地肌かぶりが少なく、しかも発色感度と画像保存性に優れた耐熱性多色感熱記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、一般に支持体上に電子供与性の通常無色ないし淡色の染料前駆体と電子受容性顕色剤とを主成分とする感熱記録層を設けたもので、サーマルヘッド、熱ペン、レーザー光などで加熱することにより、染料前駆体と電子受容性顕色剤とが瞬時に反応して発色画像が得られ、記録装置が簡単で保守が容易なこと、騒音の発生がないことなどの利点により、計測記録計、ファクシミリ、プリンター、ATM/CD、コンピューターの端末機、POS用ラベル機、くじや乗車券、食券といった発券機など広範囲の分野で利用されている。
【0003】
このような感熱記録材料の用途は多様化及び高機能化が進み、感熱記録材料の多色発色化が要望されている。特に、多色感熱記録材料の利用分野としては、くじや乗車券といった各種チケットやラベル用途となることが多く、他の用途と比べ、感熱記録材料としても高い性能が要求される。つまり、多色感熱記録材料としての低温発色画像部と高温発色画像部との色分離性の良いことに加えて、記録速度の高速化に合わせて高感度発色であること、様々な環境条件に対しても発色画像を劣化させ難くするために耐光性、耐薬品性といった画像保存性が良いこと、中でも、暖房装置、アイロンといった熱源付近での保管や電子レンジでの使用にも耐えられるべく、80〜100℃近辺の高温における地肌かぶり(以下、耐熱地肌かぶりと称す)の防止が強く望まれている。ところで、多色感熱記録材料としての発色色調としては、低温発色が赤色、高温発色が黒色となる場合に多くの用途がある。
【0004】
多色感熱記録材料には、支持体に高温で発色する感熱記録層と低温で発色する感熱記録層を順次積層した感熱記録層が別々の層に分離された多層構造のもの(例えば、特許文献1参照。)や、高温または低温で発色する素材の、少なくともいずれか一方が、溶解または乳化した油性液体としてマイクロカプセル内に隔離され、低温発色、高温発色の色分離を行うという、発色層が単層構造を有するもの(例えば、特許文献2参照。)が代表的な例として挙げられる。しかし、多層構造のものは、色分離性や発色感度が不十分であり、生産コストも高いという欠点がある。一方、マイクロカプセルによる単層構造のものは、取扱い時の圧力や摩擦によりカプセルが破壊されて地肌着色が発生する欠点がある。
【0005】
一方、マイクロカプセル内に油性液体を使用しない方法、即ち染料前駆体を固体カプセルの状態で用いる方法として、本出願人は先に、異なる色調に発色する2種以上の染料前駆体の少なくとも1種以上を、不飽和炭素結合を有する化合物で重合した発色調節層で覆い、電子受容性顕色剤を特定する多色感熱記録材料(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照。)を開示している。このとき、発色調節層で表面が覆われて粒子の形態で存在する染料前駆体は、発色開始温度が高温側へシフトするため、これは高温発色の染料前駆体となり、一方、高温発色とは発色色調が異なり、発色調節層を表面に有さない染料前駆体は、低温発色の染料前駆体となる。
【0006】
また、高温発色と低温発色の色分離がよく、画像保存性のよい多色感熱記録材料を得る方法として、電子受容性顕色剤として、サリチル酸誘導体と特定のジフェニルスルホン酸系の顕色剤を用いる方法(例えば、特許文献3参照。)、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノールと、特定のジフェニルスルホン誘導体を併用する方法(例えば、特許文献5参照。)が提案されている。しかし、これらの方法では、電子受容性顕色剤の酸強度が強いこと、さらには、顕色剤の極微細粒子に由来する耐熱地肌かぶりの悪化を招く。
【0007】
そこで、多色感熱記録材料における耐熱性の対策として、電子受容性顕色剤として、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−{3−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニル}ウレアを用いたり(例えば、特許文献6参照。)、電子受容性顕色剤として、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−{3−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニル}ウレアと、熱溶融化合物として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールとを用いる(例えば、特許文献7参照。)と、耐熱性とともに色分離性を付与させることができるが、これらの提案では、低温発色部、高温発色部ともに、十分な発色感度は得られず、改善の余地があった。即ち、互いに異なる色調に発色する二種以上の染料前駆体、染料前駆体を発色させる電子受容性顕色剤、発色感度を高める熱溶融化合物といった個々の性能とこれらの最適な組み合わせについて、更に十分な検討を要した。
【特許文献1】特開昭54−97048号公報
【特許文献2】特開平8−282115号公報
【特許文献3】特開平11-301118号公報
【特許文献4】特開2000−158822号公報
【特許文献5】特開2001−138638号公報
【特許文献6】特開2002−127612号公報
【特許文献7】特開2004−284262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低温と高温で互いに異なる色調に発色する多色感熱記録材料において、低温発色部と高温発色部との色分離がよく、高温環境下での地肌かぶりが少なく、耐熱性の高い、しかも発色感度と画像保存性に優れた多色感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、先に本出願人が開示した、電子受容性顕色剤として、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−{3−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニル}ウレアと、熱溶融化合物として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールとを用いる処方(特許文献7参照。)について、より深い検討を重ねた結果、課題を解決することができる本発明の多色感熱記録材料を発明するに到った。即ち、支持体上に、互いに異なる色調に発色する二種以上の電子供与性染料前駆体と、該染料前駆体を加熱時発色させる電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた多色感熱記録材料において、該感熱記録層中に、該染料前駆体の少なくとも一種以上が、ビニル単量体を付加重合することにより得られる発色調節層を表面に有する粒子の形態で存在し、且つ発色調節層を表面に有さない該染料前駆体として、赤系発色である3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドを単独、もしくは、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドと赤系発色である3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランとを併用して含有し、該電子受容性顕色剤として、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−{3−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニル}ウレアを含有し、熱溶融化合物として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと、融点が105℃以上、且つ145℃以下である脂肪酸アミド化合物とを含有し、且つ2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールに対して該脂肪酸アマイドを10〜100質量%有することすることにより、達成された。
【発明の効果】
【0010】
支持体上に、互いに異なる色調に発色する二種以上の電子供与性染料前駆体と、該染料前駆体を加熱時発色させる電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた多色感熱記録材料において、該感熱記録層中に、該染料前駆体の少なくとも一種以上がビニル単量体を付加重合することにより得られる発色調節層を表面に有する粒子の形態で存在し、且つ発色調節層を表面に有さない該染料前駆体として、多くの公知材料の中より上記特定の赤系発色である染料前駆体を選択することにより、染料前駆体自身の色調の鮮明さや画像保存性を高め、且つ、熱溶融化合物を、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと共に、既に公知であるが融点が105℃以上で、且つ145℃以下の脂肪酸アミド化合物との組み合わせとすることにより、従来ならば、複数の熱溶融化合物を混合すると融点降下等の理由で耐熱性の低下を伴った高感度化となってしまうところを、80〜100℃といった高温下でも耐熱地肌かぶりを発生させずに効率的な高感度化が達成された。以上の如く、本発明の処方は複数の公知材料により構成されるにも関わらず、色分離性に優れ、高温環境下でも地肌部を維持でき、且つ発色感度と画像保存性にも優れた品質を有しており、各種チケットやラベルといった高い品質が求められる利用分野において、優れた多色感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の内容を具体的に説明する。本発明の多色感熱記録材料は、感熱記録層中に、発色調節層で表面が覆われた形態を有した高温発色の電子供与性染料前駆体と、発色調節層で表面が覆われていない低温発色の電子供与性染料前駆体と、特定の電子受容性顕色剤と、特定の二つの異なる熱溶融化合物を含有させ、必要に応じて、その他感熱記録紙分野で従来より公知の接着剤、白色顔料、画像保存剤などを含有させた感熱記録層を、支持体上に形成させてなるものである。
【0012】
本発明において、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと共に含有する熱溶融化合物である、融点が105℃以上、且つ145℃以下である脂肪酸アミド化合物の具体例としては、ベヘン酸アミド(融点:110℃)、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド(融点:111℃)、N−ヒドロキシメチルベヘン酸アミド(融点:110℃)、エチレンビスステアリン酸アミド(融点:143℃)、エチレンビスベヘン酸アマイド(融点:141℃)、メチレンビスステアリン酸アミド(融点:143℃)、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド(融点:143℃)、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点:138℃)、N、N′−ジステアリルアジピン酸アミド(融点:144℃)、N、N′−ジステアリルセバシン酸アミド(融点:135℃)、エチレンビスオレイン酸アミド(融点:118℃)、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド(融点:119℃)、N、N′−ジオレイルアジピン酸アミド(融点:119℃)、N、N′−ジオレイルセバシン酸アミド(融点:115℃)等を挙げることができるが、本発明における融点が105℃以上、且つ145℃以下である脂肪酸アミド化合物は、これに限定させるものではなく、また必要に応じて2種類以上併用して使用することもできる。
【0013】
ところで、融点が105℃未満の脂肪酸アミド化合物の場合、発色感度の向上は得られるが耐熱性を著しく低下させ、一方、融点が145℃を越えた脂肪酸アミド化合物の場合、耐熱性は向上するものの、発色感度の低下が大きくなる。
【0014】
また、融点が105℃以上、且つ145℃以下である脂肪酸アミド化合物は、感熱記録層中に2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールに対して10〜100質量%含有させて使用する。使用量が10質量%未満では、その効果が殆ど発揮できず、100質量%より多いと発色画像の保存性が低下したり、過剰分の脂肪酸アミド化合物が感熱発色後に発色面に白い結晶体として析出する、いわゆる粉ふき現象により発色画像の濃度低下を引き起こす。
【0015】
本発明における、低温発色の染料前駆体として、好ましくは、赤系発色である3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドを単独で用いるか、または、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドと、やはり赤系発色である3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランとを併用し、且つ3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドに対して、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランを700質量%以下含有させて用いる。これにより、発色色調の調整を要望される場合が多い多色感熱記録材料に対して最適な品質設計とすることができる。
【0016】
即ち、上記の如く赤系染料前駆体を規定することにより、赤系だが2種類の異なる鮮明な発色色調の間で色調調整を可能とし、且つ優れた画像保存性を得ることができる。具体的には、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドでは、紫色に近い赤系発色が得られ、一方、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランでは、朱色に近い赤系発色が得られるが、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランについては、これを単独で用いると画像保存性で不十分となる為、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドと併用し、且つ3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドに対して、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランを700質量%以下とすることにより、紫色に近い赤色から朱色に近い赤色の間に色調を調整することが可能となる上、画像保存性を確保させることができる。
【0017】
本発明における、発色調節層を表面に有した形態で存在する高温発色の染料前駆体としては、感圧記録紙や感熱記録紙などに用いられる化合物を使用することができ、その発色色調としては、低温発色が赤系であるから、高温での色調が混色による暗色となるため、黒系色、緑系色、青系色のような暗色に発色する染料前駆体を1種以上、適宜組み合わせて使用する。具体的な例としては、例えば下記に挙げるものなどがあるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
黒系の電子供与性染料前駆体としては、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−カルボメトキシフェニルアミノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロペンチル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−4−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−4−トルイジノ)−6−メチル−7−(4−トルイジノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−(4−ブチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
【0019】
緑系の電子供与性染料前駆体としては、3−(N−エチル−N−n−ヘキシル)アミノ−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トリル)アミノ−7−(N−フェニル−N−メチル)アミノフルオラン、3−(N−エチル−N−n−プロピル)アミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−(N−エチル−N−n−プロピル)アミノ−6−クロロ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−(N−エチル−N−4−メチルフェニル)アミノ−7−(N−メチル−N−フェニル)アミノフルオラン、3−(N−エチル−4−メチルフェニル)アミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−(N−エチル−4−メチルフェニル)アミノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−(N−エチル−4−メチルフェニル)アミノ−6−メチル−7−(N−メチル−ベンジル)アミノフルオラン、3−(N−メチル−N−n−ヘキシル)アミノ−7−アニリノフルオラン、3−(N−プロピル−N−n−ヘキシル)アミノ−7−アニリノフルオラン、3−(N−エトキシ−N−n−ヘキシル)アミノ−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ペンチル−N−アリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ペンチル−N−アリル)アミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−クロロ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2−フルオロアニリノ)フルオラン、3−n−ジブチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2−クロロベンジルアニリノ)フルオラン、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3′−(6′−ジメチルアミノ)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ベンジルアミノ−フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(N−シクロヘキシル−N−ベンジルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(4−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エチルエトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−n−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−p−クロルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−p−メチルフェニルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(N−シクロヘキシル−N−ベンジルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3−トリフルオロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−エトキシアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロベンジルアニリノ)フルオラン、3−ジメチルアミノ−6−クロロ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアミノフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−n−オクチルアミノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2−フルオロアニリノ)フルオラン、3−[p−(p−アニリノアニリノ)アニリノ]−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−アニリノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−アニリノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ピロリジノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ピロリジノ−(7−シクロヘキシルアニリノ)フルオラン、3−ジベンジルアミノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン、3,7−ビス(ジベンジルアミノ)フルオラン、3−ジベンジルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、
【0020】
青系の電子供与性染料前駆体としては、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−アミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−エチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジ−n−ブチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジ−n−ペンチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジ−n−ヘキシルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジヒドロキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジクロロアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジブロモアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジアリルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジヒドロキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメトキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエトキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジシクロヘキシルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメチルエトキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルエトキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルブトキシアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメチルシクロヘキシルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジメトキシシクロヘキシルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ピロリジルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(3−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2,3−ジエトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−クロロ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(3−クロロ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ブロモ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(3−ブロモ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−n−プロピル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(3−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ニトロ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−アリル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ヒドロキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−シアノ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−シクロヘキシルエトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチルエトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−シクロヘキシルエチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−エチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−クロロインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−ブロモインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−エチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−プロピルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メトキシインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−エトキシインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4,7−ジアザフタリド、3−(1−エチル−4,5,6,7−テトラクロロ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−4−ニトロ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−4−メトキシ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−4−メチルアミノ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−4−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−クロロ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−ブロモ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−n−プロピル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−ブチル−2−インドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−n−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−ヘキシル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−ヘキシル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4,7−ジアザフタリド、3−(1−n−ノニル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メトキシ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エトキシ−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−フェニル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−n−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−n−ヘプチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−ノニル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−n−ヘキシルオキシフェニル)−4−アザフタリドなどが挙げられる。これらは、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0021】
また、機能性の染料前駆体として、近赤外領域に吸収を有するものがある。この染料前駆体を高温発色用の染料前駆体として単独または、他の染料前駆体と併用して用いると、高温発色画像が近赤外領域に吸収のある、近赤外ランプでの自動読み取りが可能な画像とすることが出来る。本発明にこの染料前駆体を用いると、可視領域のみに吸収のある画像、近赤外領域に吸収のある画像等の併用が可能となり、セキュリティ性の高い記録材料を得ることが出来る。
【0022】
このような、近赤外領域に吸収を有する染料としては、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド、3−〔1,1−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3′−(6′−ジメチルアミノ)フタリド、3−〔p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ〕−6−メチルフルオラン、3−〔p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ〕−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(p−n−ブチルアミノアニリノ)−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−〔p−(p−アニリノアニリノ)アニリノ〕−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−p−(p−クロロアニリノ)アニリノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6,8,8−トリメチル−9−エチル−8,9−ジヒドロ−(3,2,e)ピリドフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6,8,8−トリメチル−8,9−ジヒドロ−(3,2,e)ピリドフルオラン、3′−フェニル−7−N−ジエチルアミノ−2,2′−スピロジ−(2H−1−ベンゾピラン)、ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−p−トリスルホニルメタン、3、7−ビス(ジメチルアミノ)−10−ベンゾイルフェノチアジン等が挙げられる。これらの電子供与性染料前駆体は必要に応じて単独、または2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0023】
本発明において、高温発色の染料前駆体の表面には発色調節層が被覆されているが、発色調節層で被覆するには、先にサンドミルやボールミル等にて分散した染料前駆体の分散液に、ビニル単量体と重合開始剤を添加し、必要に応じて加熱をして分散粒子の周りに発色調節層を形成させる方法を用いることができる。
【0024】
発色調節層を設ける染料前駆体粒子の分散液は、染料前駆体を乾式粉砕して分散媒中に分散する方法、染料前駆体を分散媒に混入し湿式粉砕する方法などにより得られる。粉砕する方法としては、任意の方法を用いることができる。染料前駆体の分散液中の染料前駆体粒子の粒径は、0.1μm以上20μm以下が好ましい。本発明において粒径がこの範囲である場合、効率よく発色調節層を設けることができ、また、該分散液の製造のしやすさ、多色感熱記録材料の印字性の面からも有利である。
【0025】
本発明において、染料前駆体の粒子を分散する分散媒としては、水系分散媒が好ましく用いられる。水系分散媒とは、水、または、水に相溶性のある有機溶媒と水との混合溶液であり、水に相溶性のある有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール等が挙げられるが、水に相溶性のある有機溶媒であれば特に限定はされない。染料前駆体の粒子を水系分散媒で分散した場合は、ビニル単量体を付加重合して染料前駆体粒子の表面に発色調節層を形成する際、染料前駆体粒子の分散安定性が良好であり、染料前駆体粒子間の凝集が発生しにくく、凝集による発色調節層の形成の妨害が起きにくい。
【0026】
ビニル単量体には、ビニル結合を1つ有する化合物と、ビニル結合を2つ以上有する化合物がある。そのビニル結合を2つ以上有する化合物の含有量を変化させることにより、発色調節層の感熱感度特性を自由に変化させることができる。ビニル結合を1つ有する化合物のみで重合したものに比べ、ビニル結合を2つ以上有する化合物を併用した発色調節層は、より強固な架橋構造が進み、感熱記録材料にしたときの発色開始温度を高温側にすることができる。ビニル結合を2つ以上有する化合物の併用比率は、ビニル単量体の全質量に対して1質量%以上70質量%以下、好ましくは、10質量%以上50質量%以下が良い。この範囲内であれば、発色開始温度などの発色特性を任意に調節できる。
【0027】
染料前駆体の分散粒子に対するビニル単量体の量は、0.5質量%以上2000質量%以下であることが好ましく、この範囲であれば、重合時の凝集も無く重合が進行し、発色調節層としての機能が十分に得られる。
【0028】
本発明におけるビニル単量体としては、公知の化合物が使用できるが、その内、一部または全部がメタクリル酸エステルである場合、メタクリル酸エステルとその重合体は、発色調節層を設ける染料前駆体分散粒子との接着性が良く、また水系分散媒への溶解性も適当であり重合性も良好であることから、付加重合により染料前駆体分散粒子の表面を効率よく被覆することが可能である。さらに発色開始温度などの発色特性を調節する機能にも優れており、本発明では特に好ましく用いられる。
【0029】
ビニル単量体を付加重合させるのに加える重合開始剤は、公知のものを用いることができ、重合反応の様式もラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合など特に限定されないが、ラジカル重合が特に好ましく用いられる。またその重合の際、必要に応じ系を加熱しても良い。重合開始剤の添加量については、ビニル単量体が付加重合を開始する量であれば、特に限定はされないが、付加重合を効率よく開始させるためには、ビニル単量体に対して0.001質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0030】
通常、多色感熱記録材料は、感熱記録層を構成する感熱記録成分を塗液の状態で支持体に塗布し、乾燥させることにより作製されるが、生産性、安全性の面から、塗液の溶媒/分散媒の主成分は水であることが多い。本発明における発色調節層を設けた染料前駆体粒子が、水系分散媒に分散していることは、該粒子を含有する多色感熱記録材料を作製する際、従来の感熱記録材料の塗液を作製する技術がそのまま適用でき、工業的に生産性の面からみても有利である。
【0031】
本発明の感熱記録層には、必要に応じて接着剤を添加してもよく、特に限定されないが、発色特性に与える影響がより少ないものが特に好ましい。
【0032】
接着剤の具体例としては、デンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、オキシベンゾイルポリエステル、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアリルスルホン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、スチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸3元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩またはアンモニウム塩、その他各種ポリオレフィン系樹脂などが挙げられ、これらは、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0033】
また、感熱記録層には、上記課題に対する所望の効果を阻害しない範囲で、発色画像部の保存性を高めるため、保存性改良剤として、例えば、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−(2,2−プロピリデン)ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メトキシ−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(5−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−クロロ−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−メトキシ−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、1−〔α−メチル−α−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α′,α′−ビス(4″−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4′−チオビス(3−メチルフェノール)、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′,5,5′−テトラブロモジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′,5,5′−テトラメチルジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、N,N′−ビス(2−ナフチル)−1,4−フェニレンジアミン、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リン酸ソーダ等を添加することもできる。
【0034】
本発明において、感熱記録層を設ける支持体は透明、半透明、及び不透明のいずれであってもよく、紙、各種不織布、織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、セラミック紙、ガラス板など、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができる。
【0035】
本発明において、感熱記録層上に直接または他の層を介して1層以上の保護層を設けても良い。また、本発明において、感熱記録層と支持体の間に、平滑性、断熱性などを向上させるために中間層を設けても良い。中間層には、各種樹脂、有機顔料、無機顔料、各種中空粒子などを含有させることができる。
【0036】
本発明において、感熱記録層と支持体の間の層及び/または感熱記録層が設けられている面または、反対側の面に、電気的、磁気的、または光学的に情報が記録可能な材料を含む層やインクジェット記録層、熱転写受像層などを設けても良い。また、感熱記録層が設けられている面と反対側の面にカール防止や帯電防止などを目的としてバックコート層を設けても良く、さらに粘着加工などを行ってもよい。また、感熱記録層または保護層の表面にUVインキなどによる印刷などを行ってもよい。
【0037】
本発明の任意の各層には、機器マッチング性向上、白色度向上等の目的で、必要に応じて、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、多孔性合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト等の白色無機顔料、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等の単量体を主成分とする樹脂または、これらの単量体を主成分とする共重合樹脂等を殻とする有機中空粒子。特開平05−222108号公報にみる貫通孔を有する有機顔料、特開平10−217608号公報にみる開口部を有する有機顔料、その他に、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩、パラフィン、酸化パラフィン、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、カスターワックスなどのワックス類を、また、ジオクチルスルホこはく酸ナトリウムなどの分散剤、さらに界面活性剤、及び蛍光染料などを含有させることもできる。また、レーザー光による印字を行うために、多色感熱記録材料中の任意の層及び支持体に光熱変換材料を含有させることもできる。
【0038】
本発明における各層の形成方式については、特に限定されることなく、周知の技術を用いて形成することができ、例えば、エアーナイフコーティング、ブレードコーティング、バリバーブレードコーティング、カーテンコーティング等により各層を形成することができる。更に、表面平滑性を改良するために、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ブラッシング等の装置を利用することができる等、感熱記録材料製造に於ける種々の公知技術を用いることができる。感熱記録層の乾燥質量としては、2〜10g/m2が好ましく、また、感熱記録層と支持体の間に設ける中間層の乾燥質量としては、4〜10g/m2が好ましく、また、感熱記録層上の保護層の乾燥質量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。
【実施例1】
【0039】
以下の様にして、実施例1で使用する感熱記録材料を作製し、特性評価を実施した。
【0040】
(1)感熱記録層塗工液の調製
以下の通り調製した(A)〜(D)の分散液を、ダイノミル(シンマルエンタープライゼス社製)を用いて、各々、体積平均粒径1.0μmになるまで湿式粉砕した。
(A)高温発色用の黒発色染料前駆体分散液
10%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)社製、ゴーセランL3266)
85.0部
3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 85.0部
水 60.0部
(B)低温発色用の赤発色染料前駆体分散液
10%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)社製、ゴーセランL3266)
42.5部
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド
42.5部
水 30.0部
(C)電子受容性顕色剤分散液
10%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)社製、ゴーセランL3266)
100.0部
N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−{3−(4−メチルフェニルスルホニル
オキシ)フェニル}ウレア 100.0部
水 75.0部
(D)熱溶融化合物分散液
10%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)社製、ゴーセランL3266)
100.0部
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
70.0部
N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド(融点:110℃) 30.0部
水 75.0部
【0041】
(E)高温発色用の黒発色染料前駆体被覆液
A液230部を重合容器に移し、メタクリル酸メチル16部およびエチレングリコールジメタクリレート4部を加え攪拌しながら70℃に昇温した。これに重合開始剤である1%過硫酸カリウム水溶液24部を加えて、攪拌を続けながら6時間反応させた。次いで、これを室温まで冷却し、表面に発色調節層を設けた高温発色用の染料前駆体粒子の分散液E液を得た。
【0042】
下記成分からなる感熱記録層塗工液を調製した。
B液 115.0部
C液 275.0部
D液 275.0部
E液 274.0部
40%水酸化アルミニウム分散液 250.0部
20%非晶質シリカ 150.0部
50%ステアリン酸亜鉛分散液 90.0部
10%ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製NM−11)水溶液
800.0部
水 271.0部
【0043】
(2)中間層塗工液の調製
下記成分からなる中間層塗工液を調製した。
10%ヘキサメタリン酸ソーダ 10.0部
焼成カオリン(商品名:エンゲルハード社製アンシレックス) 100.0部
25%酸化でんぷん溶液 24.0部
48%SBRラテックス分散液 25.0部
水 105.0部
【0044】
(3)中間層の形成
得られた中間層塗工液を、50g/m2の上質紙にブレードコーターにて固形分塗布量が9g/m2となるように塗布乾燥して中間層を形成した。
【0045】
(4)感熱記録層の形成
(1)で調整した感熱記録層塗工液を、上記中間層上に固形分塗布量5g/m2となるように塗工、乾燥した後、この塗工紙をカレンダー処理して、ベック平滑度400〜600秒になるように仕上げ、実施例1の多色感熱記録材料を得た。
【0046】
作製した多色感熱記録材料を以下の評価に供した。
【0047】
評価1 [発色感度]
大倉電気(株)製印字テスト機(TH−PMD)を用いて、0.25mJ/dotの印可エネルギーで低温発色の赤色印字を、0.35mJ/dotの印可エネルギーで高温発色の黒色印字を行った。そのときの印字濃度をマクベス反射濃度計RD−918型を用いて測定した。このとき、赤色印字には赤用フィルターを、黒色印字には黒用フィルターを用いた。評価結果を表1に示す。
【0048】
評価2 [色分離性]
上記の如く2色印字したサンプルについて、赤発色と黒発色の色分離性を目視により観察し、赤発色に濁りがなく、色分離が明確なものを○、赤発色に黒発色がやや混じり、色分離性がやや不明瞭なものを△、赤発色に黒発色が混じり、不明確なものを×として評価した。評価結果を表1に示す。
【0049】
評価3 [100℃耐熱地肌かぶり]
(株)東洋精機製作所製熱傾斜試験機(HG−100)を用いて、熱スタンプを、100℃、1秒間、1kgf/cm2圧力で接触させ、その接触部の濃度を上記マクベス濃度計にて測定した。0.50OD以下ならば、感熱印字部との明確な濃度差が存在し、耐熱性は良好である。評価結果を表1に示す。
【0050】
評価4 [80℃耐熱地肌かぶり]
白紙サンプルを、80℃乾燥機中に24時間放置した後に、白紙部の濃度を上記マクベス濃度計にて測定した。0.20OD以下ならば、耐熱性は良好である。評価結果を表1に示す。
【0051】
評価5 [耐可塑剤性]
2色印字したサンプルについて、軟質塩ビフィルム(コクヨ製ソフトカードケース)をのせ、上から100g/cm2の荷重をかけ、40℃下で24時間放置し、処理前後の低温発色である赤色と高温発色である黒色の各々の画像部の濃度を上記マクベス濃度計にて測定し、画像部の残存率%[(曝露後画像部濃度/曝露前画像部濃度)×100]を求めた。数値が高い程、耐可塑剤性は良好である。評価結果を表1に示す。
【実施例2】
【0052】
熱溶融化合物分散液(D液)の組成中、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミドを、ベヘン酸アミド(融点:110℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【実施例3】
【0053】
熱溶融化合物分散液(D液)の組成中、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミドを、エチレンビスステアリン酸アミド(融点:143℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【実施例4】
【0054】
熱溶融化合物分散液(D液)の組成を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
10%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)社製、ゴーセランL3266)
100.0部
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
50.0部
N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド 50.0部
水 75.0部
【実施例5】
【0055】
熱溶融化合物分散液(D液)の組成を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
10%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)製、ゴーセランL3266)
100.0部
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
90.0部
N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド 10.0部
水 75.0部
【実施例6】
【0056】
低温発色用の赤色染料前駆体分散液(B液)の組成を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
10%ポリビニルアルコール水溶液(ゴーセランL3266)
42.6部
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド
5.4部
3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン 37.1部
水 30.0部
【実施例7】
【0057】
低温発色用の赤色染料前駆体分散液(B液)の組成を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
10%ポリビニルアルコール水溶液(ゴーセランL3266) 42.5部
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド
4.5部
3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン 38.0部
水 30.0部
【実施例8】
【0058】
低温発色用の赤色染料前駆体分散液(B液)の組成を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
10%ポリビニルアルコール水溶液(ゴーセランL3266) 42.5部
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド
21.0部
3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン 21.5部
水 30.0部
【0059】
比較例1
高温発色用の黒色染料前駆体被覆液(E液)の代わりに、被覆前の黒系染料前駆体分散液(A液)を使用した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【0060】
比較例2
低温発色用の赤色染料前駆体分散液(B液)の組成中、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドを、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランとした以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【0061】
比較例3
低温発色用の赤色染料前駆体分散液(B液)の組成中、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドを、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−メチルフルオランとした以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【0062】
比較例4
電子受容性顕色剤分散液(C液)の組成中、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−{3−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニル}ウレアを、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノールとした以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【0063】
比較例5
電子受容性顕色剤分散液(C液)の組成中、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−{3−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニル}ウレアを、3,3′−ジアリル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンとした以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例6
熱溶融化合物分散液(D液)の組成中、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド(融点:110℃)を配合せず、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを100.0部とした以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【0065】
比較例7
熱溶融化合物分散液(D液)の組成を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
10%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)製、ゴーセランL3266)
100.0部
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
95.0部
N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド 5.0部
水 75.0部
【0066】
比較例8
熱溶融化合物分散液(D液)の組成を、以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
10%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学工業(株)製、ゴーセランL3266)
100.0部
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
40.0部
N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド 60.0部
水 75.0部
【0067】
比較例9
熱溶融化合物分散液(D液)の組成中、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを配合せず、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミドを100.0部とした以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【0068】
比較例10
熱溶融化合物分散液(D液)の組成中、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミドを、ステアリン酸アミド(融点:100℃)とした以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【0069】
比較例11
熱溶融化合物分散液(D液)の組成中、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミドを、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド(融点:146℃)とした以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【0070】
比較例12
熱溶融化合物分散液(D液)の組成中、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを、2−ベンジルオキシナフタレンとした以外は、実施例1と同様にして多色感熱記録材料を作製し、評価1〜5を実施した。評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜8は、本発明内容を全て実施しており、発色感度、色分離性、100℃及び80℃の地肌耐熱性、画像部の耐可塑剤性等の何れの評価項目も優れていた。これに対し、黒色染料前駆体に発色調節層を有さない比較例1では、色分離性と地肌耐熱性が悪かった。また、本発明で規定しない電子受容性顕色剤を含有した比較例4、5、融点が105℃未満である脂肪酸アミド化合物を含有した比較例10、及び2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールの代わりに本発明で規定しない熱溶融化合物を含有した比較例12では、地肌耐熱性が悪かった。また、赤色染料前駆体として3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドを含有しない比較例2、3、及び2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを含有せず融点が105℃以上、且つ145℃以下である脂肪酸アミド化合物のみを含有した比較例9では、発色感度と耐可塑剤性が低かった。また、融点が105℃以上、且つ145℃以下である脂肪酸アミド化合物を含有しない比較例6、融点が105℃以上、且つ145℃以下である脂肪酸アミド化合物の含有量が本発明の規定外である比較例7、8、及び融点が145℃を越えた脂肪酸アミド化合物を含有した比較例11では、発色感度が低く、色分離性が悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、互いに異なる色調に発色する二種以上の電子供与性染料前駆体と、該染料前駆体を加熱時発色させる電子受容性顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた多色感熱記録材料において、該感熱記録層中に、該染料前駆体の少なくとも一種以上がビニル単量体を付加重合することにより得られる発色調節層を表面に有する粒子の形態で存在し、且つ発色調節層を表面に有さない該染料前駆体として、赤系発色である3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドを、該電子受容性顕色剤として、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−{3−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニル}ウレアを、熱溶融化合物として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと、融点が105℃以上、且つ145℃以下である脂肪酸アミド化合物を含有し、且つ2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールに対して該脂肪酸アミド化合物を10〜100質量%有することを特徴とする多色感熱記録材料。
【請求項2】
発色調節層を表面に有さない該染料前駆体として、赤系発色である3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドを単独で用いるか、または3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドとやはり赤系発色である3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランとを併用し、且つ、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドに対して、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオランを700質量%以下含有させて用いることを特徴とする請求項1記載の多色感熱記録材料。

【公開番号】特開2006−247864(P2006−247864A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63636(P2005−63636)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】