説明

多芯型撚糸構造体

【課題】 全体として細径化され、しかも、コア群が安定化された配置状態を呈する多芯型撚糸構造体を提供する。
【解決手段】以下の撚糸構造部を含む多芯型撚糸構造体とする。
撚糸構造部:中心担持体(1)の外周に、同径のコア線(2)の2本(2a、2b)が間隔をおいて撚糸され、そして、これらコア線(2a、2b)と中心担持体(1)とで形成される間隙(3)内に、コア線(2a、2b)よりも細径のコア線(4)の3本(4a、4b、4c)が合撚状態で狭持されてなる撚糸構造部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細径化され、しかも安定な構造を呈する多芯型撚糸構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDカメラ用ケーブルとしては、外径の異なるコア線を含む多芯型撚糸構造体(以下、“ケーブル”と称することがある)が用いられる。特に、医療機器に採用されるケーブルにあっては、該ケーブルの外径が細いほど、患者の負担が軽減される。このために、ケーブル自身の細径化の要求が強くなってきている。
ところで、従来のケーブルは、図4に示すような撚り構造をとっていた。ここでは、同径のコア線(2)の2本(2a、2b)が間隔をおいて撚糸され、そして、これらコア線(2a、2b)と可撓性の中心担持体(1)とで形成される間隙(3)内に、コア線(2a、2b)よりも細径のコア線(4)の3本(4a、4b、4c)が、中心担持体(1)の外周に沿って並列状態で配置されている。したがって、上記の並列配置がケーブル細径化の妨げとなっていたことは否めない。また、この構造では、各コア線(4a、4b、4c)の直径が各コア線(2a、2b)の直径の2/3以下の場合、すなわち、両者コア線(2)とコア線(4)の外径差が大きい場合(2/3以下)、図5に示すように、コア線(4)が中心担持体(1)の方へ落ち込んでしまい撚り構造が崩れが生じる、てしまう、等、撚り構造が安定しないという問題も抱えていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の課題は、全体として細径化され、しかも、コア群が安定化された配置状態を呈する多芯型撚糸構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するには、コア線(2)と(4)との間の相対的張力関係と、コア線(4)の撚糸構造とが密接に関係していることを究明し本発明に到達した。
本発明によれば、以下の撚糸構造部を含む多芯型撚糸構造体が提供される。
撚糸構造部:中心担持体(1)の外周に、同径のコア線(2)の2本(2a、2b)が間隔をおいて撚糸され、そして、これらコア線(2a、2b)と中心担持体(1)とで形成される間隙(3)内に、コア線(2a、2b)よりも細径のコア線(4)の3本(4a、4b、4c)が合撚状態で狭持されてなる撚糸構造部。
【発明の効果】
【0005】
本発明の多芯型撚糸構造体にあっては、以下のような顕著な効果が奏される。
a.コア線(2a、2b)と中心担持体(1)とで形成される間隙(3)内にコア線(4a、4b、4c)を合撚状態で狭持しているため、並列状配列の従来構造に比べてよりも、撚糸構造体自体の細径化が実現できる。
b.コア線(2)とコア線(4)の外径差が大きい場合でも、上記の合撚状態により、コア線(4)が中心担持体(1)の方へ落ち込んでしまい撚り構造が崩れてしまうなどの撚り乱れが阻止され、安定した撚糸構造を呈するに至る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の多芯型撚糸構造体について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る多芯型撚糸構造体の一例を示す断面図である。
図2は、図1の部分拡大斜視図である。
図3は、本発明に係る多芯型撚糸構造体の製造工程の一例を示す斜視図である。
図4は、従来の多芯ケーブルの断面図である。
図5は、図4の多芯ケーブルの撚り崩れを示す断面図である。
【0007】
図1および図2において、(1)は中心担持体、(2)は、(2a)、(2b)、(2c)、(2d)からなるコア線、(3)は、コア線(2aと2b、または2cと2d)と中心担持体(1)とで形成される間隙、(4)は、コア線(2)よりも細径のコア線で、(4a)、(4b)、(4c)からなり、(c1)、(c2)、および(c3)はそれぞれに(4a)、(4b)、および(4c)の中心である。さらに、(5)は押えテープ、(6)はシールド層、(7)はシース層である。
上記の多芯型撚糸構造体に特徴的なことは、図2に拡大して示すように、中心担持体(1)の外周に、同径のコア線(2)の2本(2a、2b)が間隔をおいて撚糸され、そして、これらコア線(2a、2b)と中心担持体(1)とで形成される間隙(3)内に、コア線(2a、2b)よりも細径のコア線(4)の3本(4a、4b、4c)が合撚状態で狭持されてなる撚糸構造部の存在である。
これにより、コア線(4a、4b、4c)が並列状態で配列されていた従来の構造に比べ、撚糸構造体自体の細径化が実現される。さらに、間隙(3)内の、コア線(4a、4b、4c)は合撚状態っで互いに拘束されているので、、コア線(2)とコア線(4)の外径差が大きい場合でも、これらコア線(4)が中心担持体の方へ落ち込んでしまうなどの撚り乱れが無くなり、安定した撚糸構造が保持される。
【0008】
上記の‘合撚状態’とは、3本のコア線(4a、4b、4c)が互いに接し且つそれらの各中心点(c1、c2、c3)を結ぶ仮想線が三角形を形成するような合撚状態を指す。この合撚状態で狭持された撚糸構造部は、図1の態様では2対存在している。勿論、この対数は、用いるコア線(2)、コア線(4)の本数に応じて、任意に調整すればよい。
【0009】
前述のように、本発明の多芯型撚糸構造体にあっては、コア線(2)と(4)との間の撚糸張力とコア線(4)の撚り構造とが密接に関係している。図1〜図2の例で言えば、中心担持体(1)、コア線(2a、2b)、およびコア線(4)の3本(4a、4b、4c)の間の張力関係が、中心担持体(1)>コア線(4a)>コア線(4b、4c)>コア線(2a、2b)を満足している。
【0010】
ここで、中心担持体(1)を構成する材料としては、綿、ガラス、あるいはポリエステル、アラミド繊維等からなる可撓性線状体を適宜使用すればよい。また、コア線(2)〜(4)には、電線、同軸ケーブル、チューブなどを最終用途に応じて適宜配すればよい。ここで、コア線(2)の外径をdとした場合、コア線(4)の外径は、(1/8〜2/3)d程度にあればよい。また、中心担持体(1)は、コア線(2)、(4)を撚り合せた際に生じる中心の隙間を埋める量を適宜選択して使用すればよい。
このようにして得られた多芯型撚糸構造体の外周には通常、押えテープ(5)、シールド層(6)、およびシース層(7)が順次被覆される。押えテープ(5)を構成する材料としては、紙、フッ素樹脂、ポリエステル、あるいは銅ポリエステル等のテープが好ましく採用される。また、シールド層(6)にはスズメッキ軟銅線、銀メッキ軟銅線、あるいはステンレス線等が好ましく採用される。さらに、シース層(7)には、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、フッ素樹脂、あるいはパーフルオロアルコキシアルカン等の樹脂の押し出し被覆層が好ましく採用される。勿論、これらの押えテープ(5)、シールド層(6)、およびシース層(7)の厚さも、ケーブルの細径化を考慮しながら調整される。一般には、押えテープ(5)は0.003〜0.3mm、シールド層(6)は0.02〜1.3mm、そして、シース層(7)は0.05〜2.0mmの範囲から適宜採択される。
【0011】
次に、図1に示した多芯型撚糸構造体の製造方法の一例について、図3を参照しながら述べる。
先ず、あらかじめ準備した中心担持体(1)、コア線(2)、および(4)を所望の撚り構造に合わせて撚り機の目板(8)の穴に通していき、それらを撚りダイス(9)で収束させる。このようなに配置状態でした後、撚りダイス(9)は固定しながら目板(8)を回転させて一括撚りを行い、裸の撚糸構造体を作成する。この際、中心担持体(1)とコア線(2)、(4)との撚り張力関係を、中心担持体(1)>コア線(4a)>コア線(4b、4c)>コア線(2a、2b)となるように設定する。
このようにして得られた裸の撚糸構造体の外周に、押えテープ(5)を巻き、次いでシールド層(6)を形成し、最後にシース層を押出し被覆して多芯型撚糸構造体を完成させる。
【実施例】
【0012】
以下、AWG40の導体を有するコア線(2)、(4)を配した多芯型撚糸構造体の製造を例にとって、本発明を具体的に説明する。
先ず、コア線(2)としてAWG40の内部導体を有する外径が0.26mmの同軸ケーブルを4本用意し、コア線(4)としてAWG40の導体を有する外径が0.14mmの電線を6本用意した。また、中心担持体(1)として外径が約0.2mmのガラス糸の束「ケブラー糸(デュポン製)」を用意した。次に、これらを、2本のコア線(2a、2b)と中心担持体(1)の間隙(3)内に3本のコア線(4a、4b、4c)を楔形に配置されるように、撚り機の目板(8)の穴に通し、続いて撚りダイス(9)に収束させた。てこのような配置状態で、撚りダイス(9)は固定しながら目板(8)を回転させて一括撚りを行い、裸の撚糸構造体を作成したする。このときの撚糸張力は、中心担持体(1)>コア線(4)>コア線(4)>コア線(2)として、図1に示すように、撚糸構造部の2対を形成した。
さらに、この外周に押えテープ(5)として、「銅ポリエステルテープ(樫の木製作所製)」を用いてで厚さ約0.01mmのテープ巻き層を形成し、その外周にφ0.05のスズメッキ軟銅線で厚さ約0.05mmの横巻シールド層(6)を形成した。最後に、ポリテトラフルオロエチレン樹脂「PFA(旭硝子製)」で押出し被覆をして厚さ0.1mmのシース層(7)を形成し、外径1.1mmの多芯型撚糸構造体を作成した。
【0013】
この多芯型撚糸構造体によれば、コア線(2a、2b)と中心担持体(1)とで形成される間隙(3)内にコア線(4a、4b、4c)を合撚状態で狭持しているため、並列配列の従来構造よりも撚糸構造体自体の細径化が実現できる。
また、コア線(2)とコア線(4)の外径差が大きい場合でも、上記の合撚状態により、並列配列の従来構造の場合に起こり得る、コア線(4)が中心担持体(1)の方へ落ち込んでしまい撚り構造が崩れてしまうなどの撚り乱れが阻止され、安定した撚糸構造を呈するに至る。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の撚糸構造体は、その外径が細径化されることから、細径化の要求が高い全ての多芯ケーブルに幅広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る多芯型撚糸構造体の一例を示す断面図である。
【図2】図1の部分拡大斜視図である。
【図3】本発明に係る多芯型撚糸構造体の製造工程の一例を示す斜視図である。
【図4】従来の多芯型撚糸構造体の断面図である。
【図5】図4の多芯ケーブルの撚り崩れを示す断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 中心担持体
2 コア線
3 間隙
4 コア線(2)よりも細径のコア線
5 押えテープ
6 シールド層
7 シース層
8 目板
9 撚りダイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心担持体(1)の外周に、互いに外径の異なるコア線(2、4)が巻きつけられ、その際、以下の撚糸構造部を含むことを特徴とする多芯型撚糸構造体。
撚糸構造部:中心担持体(1)の外周に、同径のコア線(2)の2本(2a、2b)が間隔をおいて巻きつけられ、そして、これらコア線(2a、2b)と中心担持体(1)とで形成される間隙(3)内に、コア線(2a、2b)よりも細径のコア線(4)の3本(4a、4b、4c)が合撚状態で狭持されてなる撚糸構造部。
【請求項2】
間隙(3)内に、3本のコア線(4a、4b、4c)が楔状に配置されている請求項1に記載の多芯型撚糸構造体。
【請求項3】
中心担持体(1)、コア線(2a、2b)、およびコア線(4)の3本(4a、4b、4c)の間の張力関係が、中心担持体(1)>コア線(4a)>コア線(4b、4c)>コア線(2a、2b)を満足する請求項2に記載の撚糸構造体。
【請求項4】
中心担持体(1)が、綿、ガラス、またはポリエステルからなる可撓性線状体で構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の多芯型撚糸構造体。
【請求項5】
コア線(2a、2b)が同軸ケーブルである請求項1〜4のいずれかに記載の多芯型撚糸構造体。
【請求項6】
コア線(4a、4b、4c)が電線である請求項1〜5のいずれかに記載の撚糸構造体。
【請求項7】
コア線(4a、4b、4c)の直径がコア線(2a、2b)の直径の2/3以下である請求項1〜6のいずれかに記載の多芯型撚糸構造体。
【請求項8】
コア線(2)およびコア線(4)の外周に押えテープ(5)が巻回されている請求項1〜7のいずれかに記載の多芯型撚糸構造体。
【請求項9】
押えテープ(5)が銅ポリエステルテープである請求項1〜8のいずれかに記載の多芯型撚糸構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−18736(P2007−18736A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195693(P2005−195693)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000226932)日星電気株式会社 (98)
【Fターム(参考)】