説明

多軸ヘッド用搬送装置

【課題】多軸ヘッドを搬送するための搬送装置を、工作機械に対して精度よく位置合わせする。
【解決手段】工作機械10に装着される多軸ヘッド14には、ガイドピン38が設けられる。一方、多軸ヘッド14を搬送するための搬送装置12を構成する着脱機構54(進退ユニット)は、ガイドストッパ88a、88bが設けられた支持盤74を含む。支持盤74が工作機械10に向かって前進すると、ガイドピン38は、ガイドストッパ88a、88bに形成されたV字溝89内に進入する。なお、ガイドストッパ88a、88bの幅方向寸法は、ガイドピン38の直径に比して大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械から取り外された多軸ヘッド、又は工作機械に新たに取り付ける多軸ヘッドを搬送するための多軸ヘッド用搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される内燃機関のシリンダブロックやミッションケース等をはじめとする各種の構造部材は、例えば、複数個の工具を配設した多軸ヘッド(ギャングヘッドとも呼称される)を備える工作機械を用い、ワークに対する機械加工を施すことで作製される。
【0003】
工作機械は、例えば、前記工具を駆動する動力機構を備えた装置本体に対して多軸ヘッドが着脱可能に装着されることで構成される。この場合、多軸ヘッドは、ワークの種類や加工部位等に応じて交換される。
【0004】
この際には、着脱機構の作用下に多軸ヘッドが装置本体から脱着される。この種の着脱機構としては、本出願人が特許文献1において提案したものが例示される。すなわち、多軸ヘッドを着脱可能な装置本体と、その上方で交換用の複数の多軸ヘッドを貯留するストッカと、ストッカに貯留された多軸ヘッドを装置本体に対して着脱するための着脱機構とを一体的に配置した構成である。
【0005】
また、特許文献2では、装置本体と一体的に多軸ヘッドのストッカを設けた構成が開示されるとともに、特許文献3では、ストッカに貯留した多軸ヘッドを装置本体に対して交換する交換装置を設けた構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭63−31852号公報
【特許文献2】特開昭63−272410号公報
【特許文献3】特開昭63−295106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多軸ヘッドは、工作機械の所定位置に取り付けられている。このため、多軸ヘッドの交換作業を円滑且つ迅速に実施するべく、多軸ヘッドを搬送する搬送手段を前記所定位置の近傍に精度よく位置合わせさせることが望ましい。多軸ヘッドは、通常、工作機械に設けられた懸吊レールに摺動自在に取り付けられるが、搬送手段、ひいては多軸ヘッドが位置精度よく位置合わせされていると、懸吊レールからの多軸ヘッドの取り外し、又は、懸吊レールへの多軸ヘッドの取り付けが著しく容易となるからである。特に、交換作業を自動的に行う場合、機構や部材同士が干渉することが回避されるので、交換作業が円滑に進行する。
【0008】
このような観点から、搬送手段を工作機械に対して精度よく位置合わせすることが要請されている。
【0009】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、多軸ヘッドと、該多軸ヘッドを保持する支持盤とを精度よく位置合わせすることが可能であるために多軸ヘッドの交換作業を円滑に進行させることが可能であり、しかも、小型で簡素である多軸ヘッド用搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、複数個の工具が設けられ且つ第1係合部材を有する多軸ヘッドを搬送するための多軸ヘッド用搬送装置であって、
前記多軸ヘッドを保持するための支持盤を含む進退ユニットと、
前記進退ユニットを、前記多軸ヘッドを保持可能な位置で位置決めするための位置決め手段と、
を備え、
前記位置決め手段は、前記進退ユニットに設けられて前記第1係合部材に係合する第2係合部材を有し、
前記第1係合部材又は前記第2係合部材の一方はピンであり、且つ残余の一方に、前記ピンを挿入するための係合溝が形成され、
前記係合溝の開口が、前記ピンの幅方向寸法に比して大きく設定されることを特徴とする。
【0011】
この構成においては、第1係合部材と第2係合部材が相対的に位置ズレを起こしているときであっても、係合溝の開口の寸法がピンの幅方向寸法に比して大きいため、ピンが係合溝内に進入することが可能となる。係合溝に進入したピンは、最終的に、係合溝の底に到達する。
【0012】
多軸ヘッドは、通常、懸吊レールに摺動自在に支持されている。従って、ピンが係合溝に進入する過程、すなわち、第1係合部材と第2係合部材との位置合わせが進行する過程において、多軸ヘッドの姿勢が矯正される。これにより該多軸ヘッドを支持盤に対して正確に位置合わせすることができる。従って、工作機械の所定位置に対して多軸ヘッドを取り付けること、又は前記所定位置から多軸ヘッドを取り外すことが容易となる。
【0013】
すなわち、第1係合部材と第2係合部材を設け、これら第1係合部材及び第2係合部材を基準として支持盤の位置合わせを行うことにより、多軸ヘッドと支持盤とを精度よく位置合わせすることができる。
【0014】
しかも、第1係合部材と第2係合部材という簡素な構成によって位置合わせを行うことが可能であるので、多軸ヘッド用搬送装置の小型化や軽量化にも寄与する。
【0015】
ここで、進退ユニットは、支持盤の下方に配置され、該支持盤と同一方向に前進又は後退する基盤をさらに含むものであることが好ましい。この場合、基盤又は支持盤の一方に、斜面が形成されたカムを設けるとともに、残余の一方に、カムの斜面で摺動する摺動部材を設ける。従って、支持盤は、前記斜面に沿って摺動部材が摺動することで上昇又は降下する。
【0016】
この上昇又は降下の際に、工作機械に対して多軸ヘッドを取り外したり、又は取り付けたりすること、換言すれば、交換を行うことが可能となる。すなわち、多軸ヘッド用搬送装置は、交換装置を兼ねることになる。
【0017】
従って、本発明によれば、交換機構を含む多軸ヘッド用搬送装置を、十分に簡素化することが可能となる。これにより、多軸ヘッド用搬送装置の小型化及び軽量化を図ることもできる。
【0018】
なお、カムに対して摺動する摺動部材は、第2のカムであってもよいが、極めて容易に摺動することから、ローラが一層好適である。
【0019】
この構成においては、支持盤が上昇したときに該支持盤を上昇位置に維持させるためのロック機構を設けることが好ましい。このロック機構の作用下に支持盤が上昇した状態で位置決めされるので、例えば、上昇した支持盤で多軸ヘッドを工作機械から取り外した直後に支持盤が降下して多軸ヘッドが工作機械に再取り付けされてしまうことが回避される。
【0020】
そして、多軸ヘッドに第1保持用係合部を設けるとともに、支持盤に第2保持用係合部を設けることが好ましい。この場合、第1保持用係合部に対して第2保持用係合部が係合すると、多軸ヘッドが支持盤上で位置決め固定される。このため、多軸ヘッドが支持盤から脱落することを防止することができるので、多軸ヘッドを搬送することが容易となる。
【0021】
以上において、進退ユニットの前進又は後退は、作業者が手作業で(換言すれば、手動操作によって)行うようにしてもよいが、進退機構を設け、この進退機構の作用下に自動的に行うようにしてもよい。この場合、多軸ヘッドを容易に搬送することができる。
【0022】
なお、進退機構は、ラック・アンド・ピニオンと、ピニオンを回転動作させるための回転付勢手段とを含むものとして構成することができる。
【0023】
多軸ヘッド用搬送装置には、さらに、多軸ヘッドを搬送可能な搬送台車と、工作機械に設けられた交換テーブルとを含めるようにしてもよい。この場合、支持盤を含む進退ユニットを、搬送台車から交換テーブルに、又はその逆に移動させるようにすればよい。
【0024】
この構成において、ラック・アンド・ピニオンを含む進退機構を設ける場合には、例えば、ピニオン及び回転付勢手段を進退ユニットに設け、且つラックを前記搬送台車及び前記交換テーブルの双方に設けるようにすればよい。これにより、進退ユニットが搬送台車から交換テーブルに、又はその逆に移動することが容易となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、多軸ヘッドに設けられた第1係合部材と、搬送装置に設けられた第2係合部材とで位置合わせを行うようにしている。第1係合部材又は第2係合部材に形成された係合溝の開口の寸法が、第2係合部材又は第1係合部材の残余の一方であるピンの幅方向寸法に比して大きく設定されているので、第1係合部材と第2係合部材が相対的に位置ズレを起こしているときであっても、ピンが係合溝内に進入することが可能となる。係合溝に進入したピンが係合溝の底に到達することによって多軸ヘッドの姿勢が矯正されるので、該多軸ヘッドと支持盤とが正確に位置合わせされる。従って、工作機械の所定位置に対して多軸ヘッドを取り付けること、又は前記所定位置から多軸ヘッドを取り外すことが容易となる。
【0026】
しかも、第1係合部材と第2係合部材という簡素な構成によって位置合わせを行うことが可能であるので、多軸ヘッド用搬送装置の小型化や軽量化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】工作機械と、本発明の実施の形態に係る多軸ヘッド用搬送装置とを併せて示した模式的斜視構成図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】前記多軸ヘッド用搬送装置の要部概略縦断面側面図である。
【図4】着脱機構の一部切欠断面斜視図である。
【図5】前記多軸ヘッド用搬送装置の要部概略平面一部断面図である。
【図6】図5に示すガイドストッパ(第2係合部材)とガイドピン(第1係合部材)とを拡大して示す要部拡大一部断面図である。
【図7】ガイドストッパがガイドピンに当接して停止した場合を拡大して示す要部拡大一部断面図である。
【図8】図3から支持盤が上昇した状態を示す要部概略縦断面側面図である。
【図9】第1ブラケット及び第2ブラケットが昇降案内用部材である昇降案内用ポストに案内されながら上昇する状態を模式的に示す要部概略縦断面側面図である。
【図10】図8から支持盤が一層上昇し、多軸ヘッドが懸吊レールから取り外された状態を示す要部概略縦断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る多軸ヘッド用搬送装置につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1は、工作機械10と、本実施の形態に係る多軸ヘッド用搬送装置(以下、単に搬送装置とも表記する)12とを併せて示した模式的斜視構成図である。ここで、搬送装置12は、工作機械10に着脱自在に装着される多軸ヘッド14を交換ないし搬送するためのものである。
【0030】
先ず、工作機械10につき説明する。
【0031】
工作機械10は、ワークWが搬送される搬送ライン16の近傍に配設され、前記ワークWに対して所定の機械加工を施すための多軸ヘッド14を複数個(本実施の形態では6個)具備する。各多軸ヘッド14には、複数個の工具18が図示しない回転駆動源の作用下に回転動作可能に設けられる。通常、工具18としてはドリルやリーマ、タップ等が選定され、この場合、ワークWに対しては穿孔加工が施される。また、ワークWとしては、例えば、内燃機関を構成するシリンダブロックやシリンダヘッド、又はミッションを収容するミッションケース等が挙げられる。
【0032】
工作機械10は、インデックスモータ20を中心として放射状に延在する複数本(本実施の形態では6本)のアーム22を有し、前記多軸ヘッド14の各々は、各アーム22の先端に支持される。後述するように、アーム22は、インデックスモータ20の作用下に、該インデックスモータ20を中心として所定の角度で旋回する。
【0033】
要部拡大図である図2に示すように、工作機械10には、アーム22の下方で上下2段に設置されて多軸ヘッド14を懸吊する円環状の懸吊レール24a、24bが設けられる。一方、多軸ヘッド14の背面には、懸吊レール24a、24bのそれぞれに係合するフック部26a、26bが設けられる。
【0034】
なお、図3に示すように、フック部26aには一対の摺動ローラ28a、28bが設けられる。同様に、フック部26bには一対の摺動ローラ30a、30bが設けられる。従って、多軸ヘッド14は、上下左右の合計4箇所に設けられたフック部26a、26b、及び摺動ローラ28a、28b、30a、30bを介して、懸吊レール24a、24bに対し、摺動可能に係合される。この状態においては、多軸ヘッド14の上面中央に設置された直方体状の被係止片32が、アーム22の先端に設けられた一対の係止部材34a、34b間に係止される(図2参照)。ここで、図2においては、図1に示されるヘッドカバー35を省略している。
【0035】
被係止片32と係止部材34a、34bとの間には若干の遊びがあり、このため、多軸ヘッド14を、この遊びの範囲で懸吊レール24a、24bに沿って摺動させることが可能である。
【0036】
前記インデックスモータ20は、アーム22、ひいては各多軸ヘッド14を懸吊レール24a、24bに沿って旋回させ、これにより所定位相に割り出すインデックス機構を構成する。
【0037】
すなわち、インデックスモータ20が付勢されると、その回転駆動力によってアーム22が所定の角度(例えば、60°ごと)で間欠的に旋回する。上記したように、多軸ヘッド14に設置された被係止片32がアーム22に設けられた係止部材34a、34bに挟まれているため、アーム22が旋回することに追従して多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bに沿って旋回する。これにより、図1に示すように、複数個の多軸ヘッド14中の所望の1個を、ワークWに臨む加工位置(加工位相)に割り出すことができる。同時に、該多軸ヘッド14と180°離間した別の多軸ヘッド14が、交換位置(交換位相)に割り出される。
【0038】
このように構成される工作機械10は、基本的には公知のものであるが、本実施の形態においては、図3に示すように、多軸ヘッド14の下端部から突出して鉛直下方に延在する4個の係合突起部36(第1保持用係合部)と、該係合突起部36に比して一層長尺な2個のガイドピン38(第1係合部材)とが設けられる。これら係合突起部36及びガイドピン38は、双方とも略円柱形状をなす。
【0039】
次に、搬送装置12につき説明する。この場合、搬送装置12は、図1及び図2に示すように、工作機械10に設けられた交換テーブル40と、多軸ヘッド14を搬送可能な搬送台車42とを備える。
【0040】
図示しない支持フレームに支持された交換テーブル40は、前記交換位相に配置される。この交換テーブル40には、摺動溝43がそれぞれ形成された第1案内レール44a、44bと、第1ラック46とが設けられる。なお、第1ラック46は、第1案内レール44aの上端面に接合されている。
【0041】
搬送台車42は、図示しないストッカと交換テーブル40との間を往復するとともに、この際、ストッカと交換テーブル40との間で多軸ヘッド14を受け渡しする。すなわち、ストッカには、予備の多軸ヘッド14が複数個保管されている。ワークWに対して機械加工を施すに際し、工作機械10に予め装着された多軸ヘッド14ではなく、ストッカに保管された予備の多軸ヘッド14が必要であるときには、搬送台車42によって予備の多軸ヘッド14が交換テーブル40まで搬送される。
【0042】
ここで、搬送台車42は、無人搬送車(自動搬送車)である図示しないAGV(Automated Guided Vehicle)に連結・牽引される。AGVに対しては、図示しない制御回路から制御信号が送信される。この制御信号を受けたAGVが所定の経路を自動走行することに追従して、搬送台車42がストッカから交換テーブル40に向かって、又はその逆方向に走行する。AGVは、搬送台車42と一体的に構成するようにしてもよい。
【0043】
この搬送台車42は、移動用ローラ48(図1参照)が設けられた4本の脚部50と、該脚部50によって支持された天板52とを有する。この中の天板52には、多軸ヘッド14を工作機械10に対して着脱するための着脱機構54(進退ユニット)が設けられる。
【0044】
図2に詳細を示すように、天板52には、第2案内レール56a、56bが設けられる。これら第2案内レール56a、56b同士の幅は、第1案内レール44a、44b同士の幅に合致する。また、第2案内レール56aの上端面には、第2ラック58が接合される。第2ラック58のピッチは、第1ラック46のピッチに合致する。
【0045】
着脱機構54は、上端面の幅方向両端部に側方スライダ60が設けられた基盤62を有する。側方スライダ60は、前記第2案内レール56a、56bに形成された摺動溝64に対して摺動可能に係合されており、このため、基盤62は、第2案内レール56a、56bに案内されながら移動することが可能である。
【0046】
着脱機構54の一部切欠断面斜視図である図4に示すように、基盤62の上端面には、略円柱形状をなす昇降案内用ポスト66a、66b(昇降案内用部材)が立設される。昇降案内用ポスト66aには第1ブラケット68が昇降可能に冠着され、昇降案内用ポスト66bには第2ブラケット70が昇降可能に冠着される。すなわち、第1ブラケット68、第2ブラケット70において、昇降案内用ポスト66a、66bを臨む下端面には、鉛直上方に向かって陥没した係合用凹部72がそれぞれ形成されており、昇降案内用ポスト66a、66bの先端部は、それぞれ、係合用凹部72に摺動可能に係合されている。
【0047】
係合用凹部72は、第1ブラケット68、第2ブラケット70の軸線方向に沿って延在する溝として形成することが好適であるが、昇降案内用ポスト66a、66bを摺動可能に挿入することが可能な有底穴であってもよい。
【0048】
後述する支持盤74が最下方に位置するときには、昇降案内用ポスト66a、66bの先端底面は、係合用凹部72の天井面に当接していてもよいが、若干離間していてもよい。なお、係合用凹部72の深さ(開口から天井面までの距離)は、支持盤74が最上方に位置するときに昇降案内用ポスト66a、66bの先端部が係合用凹部72から離脱しないように設定される。
【0049】
基盤62の略中央部には、工作機械10を臨む側に斜面76が形成されたカム78が設けられる。なお、斜面76は、工作機械10に近接する側から離間する側となるに従って上昇するように形成されている。以下、工作機械10に近接する側を「前方」、離間する側を「後方」と指称する。
【0050】
カム78の後方には、進退用モータ80(図2参照)と、該進退用モータ80の回転軸及びギアトレイン(いずれも図示せず)の作用下に回転動作するピニオン82とが、ハウジング84に収容された状態で配設される。すなわち、進退用モータ80は、ピニオン82を回転動作させるための回転付勢手段である。
【0051】
進退用モータ80は、前記制御回路に対し、無線通信を介して信号の授受が可能である。又は、図示しない信号線を介して進退用モータ80を前記制御回路に電気的に接続するようにしてもよい。
【0052】
ピニオン82の一部はハウジング84から露呈し、第2ラック58に噛合している。以上の進退用モータ80、ギアトレイン、ピニオン82、第2ラック58及び第1ラック46により、基盤62を前方又は後方に移動させるための進退機構が構成される。なお、第1ラック46及び第2ラック58と、ピニオン82とがラック・アンド・ピニオンを構成することはいうまでもない。
【0053】
基盤62の上端面には、さらに、図示しないシリンダが設置される。このシリンダのロッド86(図3参照)は、カム78の斜面76の幅方向に沿って伸縮する。後述するように、このロッド86は、支持盤74を上昇位置に維持するロック機構として機能する。
【0054】
基盤62の上方には、支持盤74が配置される。この支持盤74の前方端面には、図4及び図5に示すように、2個のガイドストッパ88a、88b(第2係合用部材)が設けられる。
【0055】
図5から諒解されるように、ガイドストッパ88a、88bの各々には、前方から後方に向かって陥没するように、係合溝としてのV字溝89が形成されている。換言すれば、V字溝89は、前方に向かうにつれて幅方向寸法が大きくなるように拡開している。V字溝89の幅方向寸法W1は、開口で最大であり、且つ前記ガイドピン38の幅方向寸法、すなわち、直径D1に比して大きく設定されている。
【0056】
図3〜図5に示すように、支持盤74の前方端部には、4個の係合孔90(第2保持用係合部)が厚み方向に沿って貫通形成されている。これら係合孔90は、前記係合突起部36を挿入するためのものであり、その直径は、係合突起部36(図3参照)の直径に比して若干大径である。
【0057】
支持盤74の後端部には、該後端部を始点として略中央に至るまで切欠92が形成されており(図4参照)、この切欠92の終点には、ローラ用連結プレート94を介して昇降用ローラ96(摺動部材)が設けられる。支持盤74の略鉛直下方に指向して突出した昇降用ローラ96は、前記カム78の斜面76に対向する。この昇降用ローラ96が基盤62の上端面、又はカム78に当接することにより、支持盤74が基盤62に支持される。
【0058】
支持盤74の幅方向両端部には、下端面に第3案内レール98a、98bが敷設されるとともに、上端面に第4案内レール100a、100bが敷設される。第3案内レール98a、98bには、鉛直上方に向かうに従って陥没した逆凹溝102がそれぞれ形成され、一方、第4案内レール100a、100bには、鉛直下方に向かうに従って陥没した凹溝104が形成される。
【0059】
第3案内レール98a、98bの逆凹溝102には、2個の下方スライダ106の上向凸部108が摺動可能に係合する。また、第4案内レール100a、100bの凹溝104には、2個の上方スライダ110の下向凸部112が摺動可能に係合する。すなわち、第3案内レール98a、98b及び第4案内レール100a、100bは、下方スライダ106及び上方スライダ110によって挟持されている。
【0060】
ここで、下方スライダ106及び上方スライダ110は、双方とも前記第1ブラケット68、前記第2ブラケット70に連結されている。このことから諒解されるように、支持盤74は、下方スライダ106及び上方スライダ110が連結された第1ブラケット68、第2ブラケット70が昇降案内用ポスト66a、66bに冠着されることによって、基盤62に支持されている。
【0061】
第1ブラケット68及び第2ブラケット70が昇降案内用ポスト66a、66bに沿って上昇又は降下すると、これに追従して下方スライダ106及び上方スライダ110も上昇又は下降し、さらに、下方スライダ106及び上方スライダ110によって第3案内レール98a、98b及び第4案内レール100a、100bが挟持された支持盤74が上昇又は下降する。
【0062】
本実施の形態に係る搬送装置12は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき説明する。
【0063】
工作機械10に装着された6台の多軸ヘッド14のうち、所定の多軸ヘッド14を交換する(取り外す)必要が生じると、先ず、前記制御回路からの信号、又は管理者による入力操作等に基づき、AGVの制御部に制御信号が発信される。この制御信号を受けたAGVは、多軸ヘッド14を保持していない搬送台車42を走行させ、交換テーブル40の先端に到達させる。これにより、搬送台車42の天板52と、交換テーブル40とが互いに当接して対向する。この際、図5に示すように、支持盤74に設けられたガイドストッパ88a、88bがガイドピン38、38に対向する位置となる。
【0064】
制御回路は、この間、インデックス機構を構成するインデックスモータ20を付勢することにより、アーム22を間欠的に旋回させる。この旋回に追従し、多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bに沿って旋回する。図2に示すように、多軸ヘッド14に設置された被係止片32が、アーム22に設けられた係止部材34a、34bに挟まれているからである。
【0065】
この旋回の結果、交換すべき多軸ヘッド14が交換位置(交換位相)に割り出される。このことを認識した制御回路は、インデックスモータ20を滅勢することでアーム22を停止させる。
【0066】
次に、AGVが、搬送台車42が交換テーブル40に到着したことを通知する信号を制御回路に送信する。この信号を受けた制御回路は、交換対象となる多軸ヘッド14が交換位相に割り出されていることを確認した上で、進退用モータ80を付勢する。これにより、前記ギアトレインを介してピニオン82が回転動作する。
【0067】
ピニオン82が第2ラック58に噛合しているため、ピニオン82が設けられた基盤62が工作機械10へ向かって前進動作を開始する。この際、側方スライダ60が第2案内レール56a、56bの摺動溝64に沿って摺動することにより、基盤62が第2案内レール56a、56bに案内される。
【0068】
進退用モータ80の駆動作用下に基盤62がさらに前進動作すると、基盤62及び支持盤74が搬送台車42の天板52から交換テーブル40に移る。基盤62が一層前進動作すると、ピニオン82が第2ラック58から離脱するとともに第1ラック46に噛合する。以降、ピニオン82が第1ラック46に沿って前進することに伴い、基盤62が継続して工作機械10側に前進する。
【0069】
基盤62がさらに前進すると、側方スライダ60は、第2案内レール56a、56bの摺動溝64から離脱して第1案内レール44a、44bの摺動溝43に係合する。従って、基盤62は、これ以降、第1案内レール44a、44bに案内される。
【0070】
支持盤74は、基盤62と同期して工作機械10側に前進する。下方スライダ106及び上方スライダ110が連結された第1ブラケット68、第2ブラケット70が、基盤62の上端面に立設された昇降案内用ポスト66a、66bに冠着されているからである。支持盤74は、図3に示すように、多軸ヘッド14の下方側に位置するまで前進する。
【0071】
このように、搬送装置12の着脱機構54は、ラック・アンド・ピニオンによって搬送台車42及び交換テーブル40を移動する、いわゆる自走式のものとして構成されている。
【0072】
搬送装置12においては、支持盤74のガイドストッパ88a、88bが最前方に位置する(図5参照)。このため、支持盤74が多軸ヘッド14の下方側の所定位置まで前進すると、ガイドストッパ88a、88bがガイドピン38に当接する。
【0073】
ここで、例えば、多軸ヘッド14の交換位相への割り出しが正確に行われていない場合、図6に仮想線で示すように、ガイドストッパ88a、88bに形成されたV字溝89に対し、ガイドピン38が相対的に位置ズレを起こす。従って、V字溝89の幅方向寸法W1をガイドピン38の直径D1と同等に設定した場合、図7に示すように、ガイドピン38がガイドストッパ88a、88bの先端に当接してV字溝89に進入しない懸念がある。
【0074】
これに対し、本実施の形態では、V字溝89の幅方向寸法W1をガイドピン38の直径D1に比して大きく設定するようにしている。従って、図6に示すようにガイドピン38が位置ズレを起こした場合であっても、ガイドピン38がV字溝89に進入し、該V字溝89の側壁に沿って案内されて該V字溝89の後方端である底に到達する。
【0075】
このようにしてガイドピン38がV字溝89に進入し、且つ該V字溝89の底に到達する最中に、多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bに沿って若干摺動する。その結果、多軸ヘッド14の姿勢が矯正される。すなわち、本実施の形態によれば、多軸ヘッド14にガイドピン38を設けるとともに、該ガイドピン38の直径D1よりも大きく開口したV字溝89が形成されたガイドストッパ88a、88bを支持盤74に設けるようにしているので、多軸ヘッド14を、支持盤74に対して正確に位置合わせすることができる。
【0076】
しかも、ガイドピン38とガイドストッパ88a、88bという簡素な構成によって位置合わせを行うことができるので、位置決め手段を設けたことに伴って搬送装置12の構成が複雑化することもない。すなわち、搬送装置12を簡素な構成とすることが可能であり、これにより、搬送装置12の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0077】
上記のようにしてガイドストッパ88a、88bがガイドピン38、38に当接すると、支持盤74が堰止された状態となる。このため、該支持盤74が停止する。
【0078】
その一方で、進退用モータ80が継続して付勢されることにより、基盤62が前進動作を続行する。なお、この際には、下方スライダ106及び上方スライダ110が第3案内レール98a、98bの逆凹溝102、第4案内レール100a、100bの凹溝104を摺動する。このため、基盤62は、支持盤74が停止しているにも関わらず前進可能である。
【0079】
同時に、図8に示すように、支持盤74に設けられた昇降用ローラ96がカム78の斜面76に沿って摺動するとともに、斜面76に案内されながら上昇する。その結果、支持盤74が基盤62から離間するように上昇する。なお、この際には、図9に示すように、第1ブラケット68及び第2ブラケット70が昇降案内用ポスト66a、66bに案内されながら上昇する。このため、支持盤74の上昇が妨げられることはない。
【0080】
基盤62が前進することに伴って支持盤74が上昇する途中で、係合突起部36が係合孔90に係合する。これにより、多軸ヘッド14が支持盤74に保持される。上記したように、多軸ヘッド14と支持盤74とが互いに対して正確に位置合わせされているため、係合孔90と係合突起部36との位置が合致している。従って、多軸ヘッド14を確実に支持盤74で保持することができる。
【0081】
基盤62がさらに前進することに伴って支持盤74が一層上昇すると、図10に示すように、これに追従して、支持盤74に保持された多軸ヘッド14も上昇する。その結果、フック部26a、26b(摺動ローラ28a、28b、30a、30b)が懸吊レール24a、24bから離脱する。換言すれば、多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bから取り外される。
【0082】
この際には、ロック機構が動作する。すなわち、前記シリンダのロッド86が伸張し、昇降用ローラ96と、カム78の斜面76との間に介在する。このロッド86が楔(ストッパ)として機能することにより、昇降用ローラ96が位置決めされる。すなわち、昇降用ローラ96が斜面76に沿って降下すること、ひいては多軸ヘッド14を保持した支持盤74が降下して多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bに再懸吊されることを防止することができる。
【0083】
次に、制御回路は、進退用モータ80を再付勢し且つその回転軸が逆向きに回転するように制御信号を発信する。これにより、ピニオン82が逆向きに回転し、交換テーブル40の第1ラック46に沿って相対的に後退する。その結果、基盤62が搬送台車42に向かって後退する。この際、支持盤74の昇降用ローラ96がロッド86によって押圧されるため、支持盤74は、多軸ヘッド14を保持し且つ上昇した位置にある状態で、基盤62と同期して後退する。
【0084】
なお、一時停止用の位置センサ(図示せず)を設け、該位置センサによって着脱機構54が所定の位置に後退したことが検出されたとき、該着脱機構54を一時停止させるようにしてもよい。この一時停止の最中に、前記シリンダのロッド86を収縮させるとともに昇降用ローラ96を斜面76に沿って降下させ、支持盤74を降下させ、この状態で、着脱機構54の後退を再開すればよい。
【0085】
搬送装置12は、ピニオン82が第1ラック46から第2ラック58に移ることにより、交換テーブル40から搬送台車42に移る。その後、ピニオン82が第2ラック58の所定の位置まで後退したとき、制御回路は、進退用モータ80を滅勢させる制御信号を発信する。これにより、搬送装置12が停止する。このようにして工作機械10から取り外された多軸ヘッド14は、必要に応じ、ストッカに搬送されて保管される。勿論、この際には、制御回路の制御作用下にAGVが駆動されるとともに、搬送台車42が交換テーブル40からストッカまで移動する。
【0086】
工作機械10に取り付けるべき新たな多軸ヘッド14は、支持盤74に保持された状態で、搬送台車42によってストッカから交換テーブル40まで搬送される。なお、支持盤74は、上記に準拠して既に上昇している。
【0087】
搬送台車42が交換テーブル40に対して近接し且つ対向すると、上記と同様に、制御回路の制御作用下に進退用モータ80が付勢される。これにより第2ラック58に噛合したピニオン82が回転動作を開始することに追従して、基盤62及び支持盤74が工作機械10側に向かって前進する。
【0088】
そして、図示しない位置センサによって基盤62が所定の位置に到達したことが検出されると、前記シリンダが付勢され、ロッド86が収縮する。これにより昇降用ローラ96がロッド86から解放され、カム78の斜面76に沿って降下する。その結果、支持盤74が基盤62に接近するように降下する。この際には、第1ブラケット68及び第2ブラケット70が昇降案内用ポスト66a、66bに案内されながら降下するとともに、下方スライダ106及び上方スライダ110が第3案内レール98a、98bの逆凹溝102、第4案内レール100a、100bの凹溝104を摺動する(図2及び図9参照)。このため、支持盤74は、基盤62が停止しているにも関わらず前進可能である。
【0089】
支持盤74が前進すると、ガイドストッパ88a、88bのV字溝89にガイドピン38が進入する。上記と同様に、ガイドピン38がV字溝89の底に到達することにより多軸ヘッド14の姿勢が矯正され、その結果、多軸ヘッド14が工作機械10に対して正確に位置合わせされる。また、ガイドストッパ88a、88bがガイドピン38、38に当接するので、該支持盤74のそれ以上の前進が阻止される。
【0090】
また、支持盤74が降下しているので、該支持盤74に保持された多軸ヘッド14も降下する。その結果、フック部26a、26b(摺動ローラ28a、28b、30a、30b)が懸吊レール24a、24bに装着され、多軸ヘッド14が懸吊レール24a、24bに懸吊される。さらに、多軸ヘッド14の上面中央に設置された被係止片32が、アーム22の先端に設けられた係止部材34a、34b間に係止される(図2参照)。
【0091】
支持盤74がさらに降下することに伴って、係合突起部36が係合孔90から離脱する(図8参照)。これにより、多軸ヘッド14が支持盤74から解放される。以上により、多軸ヘッド14の交換が終了する。多軸ヘッド14が工作機械10に移されたため、搬送装置12は、いわゆる空状態である。
【0092】
次に、制御回路は、進退用モータ80(図2参照)を再付勢し且つその回転軸が逆向きに回転するように制御信号を発信する。これにより、ピニオン82が逆向きに回転し、交換テーブル40の第1ラック46に沿って相対的に後退する。その結果、基盤62が搬送台車42に向かって後退する。下方スライダ106及び上方スライダ110が連結された第1ブラケット68、第2ブラケット70が、基盤62の上端面に立設された昇降案内用ポスト66a、66bに冠着されているので、この際、支持盤74が基盤62に同期して後退する。
【0093】
搬送装置12は、第1ラック46から、搬送台車42の第2ラック58に移る。その後、ピニオン82が第2ラック58の所定の位置まで後退したとき、制御回路は、進退用モータ80を滅勢させる制御信号を発信する。これにより、搬送装置12が停止する。
【0094】
以上の交換作業を行う間、交換位相と反対側の加工位相に設定された多軸ヘッド14では、ワークWに対する加工が継続して行われる(図1参照)。すなわち、前記制御回路は、インデックス機構を回転制御して交換対象となる多軸ヘッド14を交換位相に割り出すとともに、加工を行うための多軸ヘッド14を加工位相に割り出す。換言すれば、加工に供する必要のある多軸ヘッド14と反対位相にある多軸ヘッド14を優先的に交換対象として選択する。これにより、交換作業中であってもワークWへの加工を継続することができるので、ワークWに対する加工効率、ひいてはシリンダブロックやシリンダヘッド、ミッションケース等の加工製品の生産効率が大幅に向上する。
【0095】
以上のように、本実施の形態では、懸吊レール24a、24bによって懸吊支持された多軸ヘッド14を、インデックス機構によって所定の交換位相に割り出すことが可能なようにして工作機械10を構成するとともに、この交換位相に、搬送台車42を連結配置するようにしている。このように交換テーブル40を工作機械10側に設けたことにより、搬送台車42に搭載した搬送装置12(着脱機構54)を工作機械10に対して容易に連結することができる。
【0096】
しかも、搬送装置12は、基盤62に設けられたカム78の斜面76に対し、支持盤74に設けられた昇降用ローラ96を摺動させるという簡素な構成により、多軸ヘッド14の交換、換言すれば、多軸ヘッド14の懸吊レール24a、24bに対する取り付け及び取り外しを行うことが可能である。すなわち、多軸ヘッド14の交換作業を、簡素な構成の搬送装置12によって容易に実行することができる。このため、搬送装置12の十分な簡素化、ひいては小型化及び軽量化を図ることができる。
【0097】
また、本実施の形態では、ラック・アンド・ピニオンによって着脱機構54を搬送台車42から交換テーブル40に、又はその逆方向に移動(自走)させるようにしている。このため、駆動力が大きなシリンダ等を設ける必要がない。このことも、搬送装置12の十分な簡素化、小型化及び軽量化に寄与する。
【0098】
その上、支持盤74に設けられたガイドストッパ88a、88bが、多軸ヘッド14に設けられたガイドピン38の相対的な位置ズレを吸収することが可能であるので、多軸ヘッド14を、支持盤74に対して精度よく位置合わせすることができる。このため、多軸ヘッド14を支持盤74によって確実に保持し、多軸ヘッド14を支持盤74ごと上昇又は降下することが容易に可能となる。
【0099】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0100】
例えば、支持盤74にカム78を設ける一方、基盤62に昇降用ローラ96を設けるようにしてもよい。この場合、カム78の斜面76を、前方から後方になるにつれて上昇するように設定すればよい。昇降用ローラ96に代替して第2のカムを設け、この第2のカムの斜面を、前記カム78の斜面76に沿って摺動させるようにしてもよい。
【0101】
また、進退機構は、ピニオン82、第1ラック46及び第2ラック58からなるラック・アンド・ピニオンに限定されるものではなく、例えば、ボールねじ等であってもよい。進退機構を設けることなく、作業者が手作業によって着脱機構54を前進又は後退させるようにしてもよい。
【0102】
さらに、係合穴を第1係合部として多軸ヘッド14に形成するとともに、係合突起部36を第2係合部として支持盤74に形成するようにしてもよい。
【0103】
さらにまた、ガイドストッパ88a、88bを多軸ヘッド14に設けるとともに、ガイドピン38を支持盤74の先端に設けるようにしてもよい。この場合においても、ガイドストッパ88a、88bのV字溝89の開口の幅方向寸法をガイドピン38の直径に比して大きく設定すればよい。
【0104】
そして、昇降用ローラ96等の摺動部材を位置決めするためのロック機構は、例えば、基盤62又は支持盤74の一方に係合穴を形成するとともに、支持盤74又は基盤62の残余の一方に、前記係合穴に対して進退自在なピンを設けることで構成するようにしてもよいし、その他の機構であってもよい。また、ロック機構を設けることは特に必須ではない。
【0105】
いずれにおいても、搬送装置12は、交換テーブル40に設けるようにしてもよい。すなわち、搬送台車42は必須ではない。この場合、例えば、ストッカに保管された多軸ヘッド14をロボットで把持して搬送装置12に載置するようにすればよい。
【符号の説明】
【0106】
10…工作機械 12…多軸ヘッド用搬送装置
14…多軸ヘッド 18…工具
20…インデックスモータ 22…アーム
24a、24b…懸吊レール 26a、26b…フック部
36…係合突起部 38…ガイドピン
40…交換テーブル 42…搬送台車
44a、44b…第1案内レール 46…第1ラック
54…着脱機構 56a、56b…第2案内レール
58…第2ラック 60…側方スライダ
66a、66b…昇降案内用ポスト 68…第1ブラケット
70…第2ブラケット 74…支持盤
76…斜面 78…カム
80…進退用モータ 82…ピニオン
86…ロッド 88a、88b…ガイドストッパ
89…V字溝 90…係合孔
96…昇降用ローラ 98a、98b…第3案内レール
100a、100b…第4案内レール 106…下方スライダ
110…上方スライダ W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の工具が設けられ且つ第1係合部材を有する多軸ヘッドを搬送するための多軸ヘッド用搬送装置であって、
前記多軸ヘッドを保持するための支持盤を含む進退ユニットと、
前記進退ユニットを、前記多軸ヘッドを保持可能な位置で位置決めするための位置決め手段と、
を備え、
前記位置決め手段は、前記進退ユニットに設けられて前記第1係合部材に係合する第2係合部材を有し、
前記第1係合部材又は前記第2係合部材の一方はピンであり、且つ残余の一方に、前記ピンを挿入するための係合溝が形成され、
前記係合溝の開口が、前記ピンの幅方向寸法に比して大きく設定されることを特徴とする多軸ヘッド用搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の搬送装置において、前記進退ユニットは、前記支持盤の下方に配置され、前記支持盤と同一方向に前進又は後退する基盤をさらに備え、
前記基盤又は前記支持盤の一方に、斜面が形成されたカムが設けられるとともに、残余の一方に、前記カムの前記斜面で摺動する摺動部材が設けられ、
前記支持盤は、前記カムの前記斜面に沿って前記摺動部材が摺動することで上昇又は降下することを特徴とする多軸ヘッド用搬送装置。
【請求項3】
請求項2記載の搬送装置において、前記支持盤が上昇したときに該支持盤を上昇位置に維持させるためのロック機構を有することを特徴とする多軸ヘッド用搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の搬送装置において、前記多軸ヘッドに第1保持用係合部が設けられる一方、前記支持盤に第2保持用係合部が設けられ、
前記第1保持用係合部に対して前記第2保持用係合部が係合することで、前記多軸ヘッドが前記支持盤によって位置決め固定された状態で保持されることを特徴とする多軸ヘッド用搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の搬送装置において、前記進退ユニットを前進又は後退させるための進退機構をさらに備え、
前記支持盤は、前記多軸ヘッドを搬送する際、前記進退機構の作用下に自動的に前進又は後退することを特徴とする多軸ヘッド用搬送装置。
【請求項6】
請求項5記載の搬送装置において、前記進退機構が、ラック・アンド・ピニオンと、ピニオンを回転動作させるための回転付勢手段とを含むことを特徴とする多軸ヘッド用搬送装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の搬送装置において、前記多軸ヘッドを搬送可能な搬送台車と、前記多軸ヘッドが取り付けられる工作機械に設けられた交換テーブルとをさらに備え、
前記進退ユニットは、前記搬送台車から前記交換テーブルに、又はその逆に移動することを特徴とする多軸ヘッド用搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−240154(P2012−240154A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112093(P2011−112093)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】