説明

多重効用缶式蒸留水製造装置の熱水殺菌方法

【課題】簡単な付加的手段を備えることにより、通常は従来のように蒸留水を製造することができ、しかも殺菌時には装置内の供給水接液部を熱水で殺菌することができる多重効用缶式蒸留水製造装置の熱水殺菌方法を提供する。
【解決手段】供給水の予熱手段と、予熱した供給水から純蒸気を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた純蒸気の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備える多重効用缶式蒸留水製造装置において、予熱器と第1蒸発缶とを接続する配管途中から分岐して供給水入口配管の基端部へと戻る熱水殺菌循環配管を設け、予熱器で加熱した供給水を用いて供給水接液部を熱水殺菌出来るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多重効用缶式蒸留水製造装置の熱水殺菌方法に関し、更に詳しくは複数の竪形蒸発缶とその付属機器等から構成される多重効用缶式蒸留水製造装置、その熱水殺菌方法に関する。例えば各種医薬品の製造工場や医療現場では、GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)や日本薬局方に適合した蒸留水が求められる。本発明はかかる蒸留水を製造するための多重効用缶式蒸留水製造装置の熱水殺菌方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のような多重効用缶式蒸留水製造装置として、供給水の予熱手段と、予熱した供給水から純蒸気を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた純蒸気の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところが、かかる従来の多重効用缶式蒸留水製造装置には、配管が極めて複雑であって、その製作に手間がかかり、また操作が厄介というだけでなく、供給水入口配管、及び構成する機器の供給水接液部に殺菌が不充分な箇所、更には殺菌がされない個所が存在するため微生物による汚染を除くことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開昭60−051588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、簡単な付加的手段を備えることにより、通常は従来のように蒸留水を製造することができ、しかも殺菌時には、供給水入口配管、及びコンデンサを含む第1蒸発缶供給水入口までの供給水接液部を高温供給水で殺菌することができる熱水殺菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決する本発明は、供給水の予熱手段と、予熱した供給水から純蒸気を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた純蒸気の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備える多重効用缶式蒸留水製造装置において、熱水殺菌循環配管を設け、供給水を供給水入口配管に戻すようにして成ることを特徴とする多重効用缶式蒸留水製造装置に係る。
【0007】
また本発明は、前記の本発明に係る多重効用缶式蒸留水製造装置の熱水殺菌方法であって、予熱器と第1蒸発缶とを接続する配管途中から分岐して供給水入口配管の基端部へと戻る熱水殺菌循環配管を設け、予熱器で加熱した供給水を、熱水殺菌循環配管、元の供給水入口配管、供給水ポンプ、第1コンデンサ、排熱回収器及び予熱器の経路で循環させて供給水の接液部を熱水殺菌することを特徴とする多重効用缶式蒸留水製造装置の熱水殺菌方法に係る。
【00088】
本発明に係る多重効用缶式蒸留水製造装置(以下、単に本発明に係る装置という)も、従来の多重効用缶式蒸留水製造装置と同様、供給水の予熱手段と、予熱した供給水から純蒸気を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた純蒸気と水滴とを分離する気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備えている。気水分離手段としては各蒸発缶の下流側に気水分離器を接続することもできるし、また各蒸発缶の下部室に気水分離機構を設けることもできる。本発明の装置は、予熱器と第1蒸発缶とを接続する配管途中から分岐して供給水入口配管の基端部へと戻る熱水殺菌循環配管を設け、高温供給水を元の供給水入口配管の経路で循環させて供給水の接液部を熱水殺菌するように成っている。
【0009】
本発明の装置では、これを用いる通常の蒸留水製造時には、熱水殺菌循環配管を機能させず、供給水は予熱器を通過した後すべて第1蒸発缶に供給するが、詳しくは後述するように、その熱水殺菌時には、予熱器で加熱した供給水の全量若しくはその一部を供給水入口配管の管路へ循環させることにより、この管路を熱水殺菌する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、予熱器と第1蒸発缶とを接続する配管途中から分岐して供給水入口配管の基端部へと戻る熱水殺菌循環配管の付設という簡単な付加的手段により、通常は従来のように蒸留水を製造することができ、しかも熱水殺菌時には、供給水入口配管、コンデンサ、排熱回収器等も含めて装置内の第1蒸発缶供給水入口の基端部までの供給水接液部を高温の供給水で殺菌することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 本発明の装置、及び熱水殺菌手段を例示する全体の系統図。
【実施例】
【0012】
図1にしたがって、本発明の熱水殺菌方法を説明する。図1に例示した本発明の装置では、第1蒸発缶70、第2蒸発缶80及び第3蒸発缶90を備え、第3蒸発缶90の下流側にコンデンサが接続されている。第1蒸発缶70、第2蒸発缶80及び第3蒸発缶90の各下部室には図示しない気水分離機構が内蔵されており、コンデンサは第1コンデンサ30とその下流側に接続された第2コンデンサ40とを備え、第2コンデンサ40の下流側にU字管部を有する蒸留水出口配管4が接続されている。供給水入口配管1は第1コンデンサ30へと接続されていて、冷却水入口配管8は第2コンデンサ40へと接続されている。第1コンデンサ30は排熱回収器50及び予熱器60を介して第1蒸発缶70の上部室70Aへと接続されている。
【0013】
予熱器60は蒸留水を製造するとき若しくは装置を熱水殺菌するときに使用する二重管板式多管円筒型熱交換器であり、供給水入口配管1の排熱回収器50と切替用の比例制御弁1Hとの間に配設し、予熱器60と比例制御弁1Hとの間には温度センサ1Gを配設する。装置の蒸気滅菌運転時に温度センサ1Gにより予熱器60で加熱された供給水を設定温度(例えば80〜165℃)に保持するため、加熱用蒸気入口配管2の蒸気止め弁2Bと第1蒸発缶70の蒸気入口との間より加熱器蒸気配管21を分岐し、ここには自動式開閉弁21Aと比例制御弁21Bとを配設して、予熱器60に加熱蒸気を供給し、温度センサ1Gと電気的に連係している比例制御弁21Bによって加熱蒸気量を調節する。予熱器60の蒸気ドレンノズルと排熱回収器50のノズルとの間に蒸気ドレン配管22を配設し、その間に蒸気トラップ22Aと逆止弁22Bとを介在させて、予熱器60で発生する蒸気ドレンを蒸気ドレン出口配管3から排出する。
【0014】
そして図1に例示した本発明の装置では、熱水循環配管13が設けられている。熱水循環配管13は比例制御弁1Hと温度センサ1Gとの間の供給水入口配管1から分岐し、逆止弁14C経て供給水入口配管1の基端部に戻るように配設されている。熱水循環配管13には、自動式開閉弁13B、圧力センサ13C及び逆止弁14Cが配設され、供給水入口配管1の供給水ポンプ1Bにて高温供給水を循環させるようになっている。高温供給水を循環させるときに圧力センサ13Cでの高温供給水戻り圧力が供給水元配管14の圧力を超えることが無いようにするため、供給水元配管14に圧力センサ14Dを配設し、常に供給水戻り圧力が供給水元配管14の圧力以下となるよう供給水ポンプ1Bをインバータ制御すると共に比例制御弁1Hの開度を調節する。
【0015】
図1に例示した本発明の装置では、供給水入口配管1の管路を高温(通常は80〜130℃)の供給水により熱水殺菌を行うときは、比例制御弁1Hは閉じ、自動式開閉弁13Bを開ける。そして予熱器60の加熱室60Bには加熱源となる蒸気が供給される。供給水元配管14の自動式開閉弁14Bが開けられ、供給水入口配管1から送入された供給水は、供給水ポンプ1B、圧力センサ1C、流量計1D、自動式開閉弁1E、流量調整弁1F、第1コンデンサ30、排熱回収器50,予熱器60の伝熱管、温度センサ1G、熱水殺菌循環配管13、自動式開閉弁13B、圧力センサ13C、逆止弁14C及び元の供給水入口配管1からなる熱水殺菌循環経路が構成される。
【符号の説明】
【0016】
1 供給水入口配管
2 加熱用の蒸気入口配管
3 蒸気ドレン出口配管
4 蒸留水出口配管
5 廃蒸留水出口配管
6 気体出口配管
7 飽和水出口配管
8 冷却水入口配管
9 冷却水出口配管
13 熱水殺菌循環配管
14 供給水元配管
15 外気入口配管
30 第1コンデンサ
40 第2コンデンサ
50 排熱回収器
60 予熱器
70 第1蒸発缶
80 第2蒸発缶
90 第3蒸発缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給水の予熱手段と、予熱した供給水から純蒸気を順次発生させる複数の蒸発缶と、発生させた純蒸気の気水分離手段と、気水分離した純蒸気を供給水及び冷却水で冷却して蒸留水とするコンデンサと、コンデンサに接続された外気導入手段とを備える多重効用缶式蒸留水製造装置において、供給水を予熱器で加熱して、予熱器と第1蒸発缶とを接続する配管途中から分岐して供給水入口配管の基端部へと戻る熱水殺菌循環配管を設け、予熱器で加熱した供給水を循環させて供給水接液部を熱水殺菌することを特徴とする多重効用缶式蒸留水製造装置の熱水殺菌方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−81737(P2013−81737A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235467(P2011−235467)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(597103573)株式会社イシン技研 (5)
【Fターム(参考)】