説明

多重化通信システム、通信装置、通信制御方法及びプログラム

【課題】2系統の通信回線の一方を運用系の通信回線に設定し他方を予備系の通信回線に設定して、運用系の通信回線でデータの送受信を行う際に、使用していない予備系の通信回線が正常か否かを確認する。
【解決手段】データの通信を中継する2系統の通信中継装置であるMCH1、2と、そのうち1系統のMCHの中継によりデータの通信を行う通信装置であるAMC3、4、5と、を有している。各AMCは、2系統のMCH1、2のうち一方のMCHをデータの通信を中継に運用する運用系に、他方のMCHを予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定する切替部と、切替部によって指定された予備系のMCHから送信される回線検査信号を予備系のMCHに対して返送する返送部と、返送部における回線検査信号を監視することによって、予備系の通信回線が正常であるか否かを確認するsRIOと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重化通信システム、通信装置、通信制御方法及びプログラムに関し、更に詳しくは、2系統の通信回線を運用系及び予備系として切り替えながら通信を行う多重化通信システム、通信装置、通信制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
任意の通信装置と他の通信装置との間を通信回線で接続してデータの送受信を行う場合に、その通信回線に障害が発生したときにはデータの送受信ができない。このため、2系統の通信回線を設けてデータの送受信を行う多重化通信システムが知られている。このような多重化通信システムにおいては、いずれか1系統の通信回線によってデータの送受信を行い、その通信回線に障害が発生したときには、他の1系統の通信回線に切り替えてデータの送受信を継続する。
【0003】
図5は、2系統の通信回線を用いた関連技術における一般的な通信装置であるAMC(Advanced Mezzanine Card)の構成を示す概略ブロック図である。なお、AMCは、PCI(Peripheral Component Interconnect)に基づく産業用組込ボードや関連製品の利用を促進するために設立された業界団体であるPICMG(PCI Industrial Computer Manufacturers Group)によって開発された遠隔通信システム用の差込モジュールである。
【0004】
図5において、AMC規格の通信装置(以下、「AMC」という)100は、2系統の通信回線にそれぞれ接続される2系統のsRIO(serial Rapid IO)102、103及びAMC100全体を制御するCPU(Central Processing Unit)101を備えている。CPU101は、例えばsRIO102を用いて一方の通信回線を運用系に指定して、下り信号d1及び上り信号u1のデータ通信を行い、sRIO103に接続された通信回線を予備系に指定する。CPU101は、運用系の通信回線に障害が発生したときは、sRIO102からsRIO103に切り替えて、予備系の通信回線によって、下り信号d2及び上り信号u2のデータ通信を続行する。
【0005】
しかしながら、同一の仕様の2つのsRIO102、103を用いることは、導入費や保守費等のコストアップを招き、小型軽量化を図ることもできない。このため、近年、単一のsRIOと切替スイッチとを用いて運用系と予備系とを切り替える構成が開発された。
【0006】
図6は、関連技術における一般的な切替方式の通信装置であるAMC200の構成を示す概略ブロック図である。AMC200は、2系統の通信回線に接続された切替部203、共通のsRIO202、及びCPU201を備えている。
【0007】
図6においては、切替部203のポートCd、Cuは、実線で示すように、それぞれポートA1、B1に接続されている。したがって、運用系の通信回路から受信した下り信号d1は、ポートA1及びポートCdを経て、sRIO202に入力される。sRIO202からの上り信号u1は、ポートCu及びポートB1を経て、運用系の通信回路に送信される。
【0008】
sRIO202は、下り信号d1及び上り信号u1のデータ通信を行っていた運用系の通信回線に障害が発生したときは、切替部203によって予備系の通信回線に切り替えて、下り信号d2及び上り信号u2のデータ通信を続行する。
【0009】
すなわち、切替部203のポートCd、Cuは、点線で示すように、それぞれポートA2、B2に切り替わる。この後は、予備系から運用系に代わった通信回路から受信した下り信号d2は、ポートA2及びポートCdを経て、下り信号d1としてsRIO202に入力される。sRIO202からの上り信号u1は、ポートCu及びポートB2を経て、上り信号u2として新たな運用系の通信回路に送信される。
【0010】
しかしながら、図6に示した一般的な切替方式のAMC200を用いたシステムの場合には、予備系の通信回線がAMC200と切り離されるので、運用系の通信回線を使用している間は、予備系の通信回線が正常であるかどうかを確認することができない。このため、運用系におけるデータ通信を中断して予備系に接続を切り替えて通信回線が正常であるかどうかを確認しなければならない。
【0011】
下記の特許文献1には、切替スイッチを用いて運用系と予備系とを切り替える多重化ハブが開示されている。特許文献1の多重化ハブにおいては、2系統のハブ間をケーブルで接続した相互監視を行っている。一方のハブから他方のハブに信号を送信し、応答信号を送信しないハブを待機系に設定する。待機系のハブはスイッチによって電気信号の送出が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−56693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の多重化ハブにおいても、予備系のハブからの電気信号の送出を停止するので、図6に示したAMC200の場合と同様、予備系の通信回線が正常であるか否かを確認することができない。このため、運用系の通信回線に障害が発生したときに、予備系の通信回路に切り替えても、正常なデータ通信を続行できるという保証が得られないという問題がある。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、2系統の通信回線の一方を運用系の通信回線に設定し他方を予備系の通信回線に設定して、運用系の通信回線でデータの送受信を行う際に、使用していない予備系の通信回線が正常か否かを確認することが可能な多重化通信システム、通信装置、通信制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するために、本発明の多重化通信システムは、
データの通信を中継する2系統の通信中継装置と、
1系統の通信中継装置の中継によりデータの通信を行う通信装置と、を有し、
前記通信装置は、
前記2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定する切替部と、
前記切替部によって指定された前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送する返送部と、
前記返送部における前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する制御部と、を備える、
ことを特徴とする。
【0016】
また、上述の目的を達成するために、本発明の通信装置は、
2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定する切替部と、
前記切替部によって指定された前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送する返送部と、
前記返送部における前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する制御部と、を備える、
ことを特徴とする。
【0017】
また、上述の目的を達成するために、本発明の通信制御方法は、
通信装置の切替部が、2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定し、
前記切替部によって前記予備系に指定された通信中継装置が、回線検査信号を前記通信装置に送信し、
前記通信装置の返送部が、前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送し、
前記通信装置の制御部が、前記返送部における前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する、
ことを特徴とする。
【0018】
また、上述の目的を達成するために、本発明のプログラムは、コンピュータに、
2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定する第1のステップと、
前記第1のステップによって指定された前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送する第2のステップと、
前記予備系の通信中継装置に対して返送される前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する第3のステップと、を実行させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、2系統の通信回線の一方を運用系の通信回線に設定し他方を予備系の通信回線に設定して、運用系の通信回線でデータの送受信を行う際に、使用していない予備系の通信回線が正常か否かを確認することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態における多重化通信システムの概要を示す図である。
【図2】図1の多重化通信システムに用いる通信装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】図2の切替部の内部構成を示すブロック図である。
【図4】図3の返送部における信号処理回路のブロック図である。
【図5】2系統の通信回線を用いた関連技術における一般的な通信装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図6】関連技術における一般的な切替方式の通信装置の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る多重化通信システム及びそのシステムに用いる通信装置について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態における多重化通信システム(デュアルファブリックシステム)の概要を示す図である。図1において、2つのMCH(MicroTCA Carrier Card)1、2は、それぞれ通信回線を介してデータ通信を中継する2系統の通信中継装置すなわち通信ハブである。また、3つのAMC3乃至5は、MCH1又はMCH2を介して互いにデータ通信を行う差込モジュールタイプの通信装置である。MCH1、2は、それぞれ各AMC3、4、5と独立して接続される。
【0023】
2系統のMCH1、2は、その一方が運用系の通信中継装置として指定され、他方は予備系の通信中継装置として指定される。いま、MCH1を運用系に指定し、MCH2を予備系に指定したとする。この場合には、AMC3乃至5は、MCH1を経由することにより、ピアツーピアの通信が可能である。MCH1に障害が発生したときは、各AMCは、MCH2に切り替えて通信を継続する。
【0024】
図2は、図1の多重化通信システムに用いる通信装置であるAMC3の構成を示す概略ブロック図である。図2に示すように、AMC3は、CPU6、sRIO7、及び切替部8を備えている。AMC4、5もAMC3と同じである。
【0025】
CPU6は、図には示していないが、プログラムメモリであるROM(Read Only Memory)、ワークメモリであるRAM(Random Access Memory)等を有するコンピュータである。CPU6は、ROMに記憶されているプログラムを実行して、下り信号d1及び上り信号u1のデータ通信を制御する。
【0026】
sRIO7は、Serial Rapid IO規格の通信方式を用いてCPU6から送信するデータを変換するSerDes(Serializer/Deserializer)の機能を有する。また、sRIO7は、運用系に指定されたMHC1と通信するためのPhysical Layer(物理層)及びTransport & Logical Layer(トランスポート及びロジカル層)の回路を構成する。また、sRIO7は、運用系のMHC1及び予備系のMHC2向けの切替部8のポートの接続を切り替える。また、sRIO7は、CPU6と接続されない予備系のMCH2から受信したデータを切替部8からその予備系のMCH2に返送させる機能を有する。
【0027】
なお、Serial Rapid IO規格の通信方式の代わりに、PCI(Peripheral Component Interconnect) Express又はEthernet(登録商標)の規格を用いた通信方式であってもよい。
【0028】
切替部8は、運用系のMCH1から下り信号d1を受信するポートA1、運用系のMCH1に上り信号u1を送信するポートB1を有する。また、切替部8は、予備系のMCH2から下り信号d2を受信するポートA2、予備系のMCH2に上り信号u2を送信するポートB2を有する。また、切替部8は、運用系のMCH1から受信した下り信号d1をsRIO7に送るポートCd、運用系のMCH1に送信する上り信号u1をsRIO7から受けるポートCuを有する。
【0029】
また、切替部8は、予備系のMCH2からポートA2に受信した下り信号d2をポートB2に入力して、予備系のMCH2に上り信号u2として折り返し返送するために、ポートA2とポートB2とを適宜接続する接続回路(図2においては実線の接続線)を有する。しかし、現在運用系のポートA1とポートB1とは、接続回路(図2では点線の接続線)は接続されていない。
【0030】
切替部8において、ポートCd、Cuは、図2において実線で示すように、それぞれ運用系の通信回線に接続されたポートA1、B1に接続されている。ポートCd、Cuは、運用系の通信回線に障害が発生したときに、図2において点線で示すように、予備系の通信回線に接続されたポートA2、B2に切り替えて接続される。また、運用系の通信回線に障害が発生したときには、ポートA1とポートB1とは、図2において点線で示すように、接続される。
【0031】
CPU6及びsRIO7は協働して、運用系の通信回線によるデータ通信の制御、運用系の通信回線と予備系の通信回線との切替制御、予備系の通信回線の状態の監視制御を行う制御部を構成する。なお、AMC3、4、5から見た通信回線は、伝送路及びMCH1、2を含むものとする。同様に、MCH1、2から見た通信回線は、伝送路及びAMC3、4、5を含むものとする。
【0032】
図3は、図2の切替部8の内部構成を示すブロック図である。図3における符号で図2の符号と同じものは、同一の構成を示している。ただし、ポートA1、B1、A2、及びB2は、それぞれ通信回線に直接接続された端子t0、運用系の端子t1、及び予備系の端子t2を有する切替スイッチを構成する。
【0033】
図3に示すように、運用系のポートA1、B1においては、端子t0が端子t1に接続されている。一方、予備系のポートA2、B2においては、端子t0が端子t2に接続されている。そして、運用系の通信回線に障害が発生したときは、sRIO7からの切替制御信号exによって、各ポートA1、B1、A2、及びB2の接続が切り替わる。
【0034】
さらに、図3において、運用系のポートA1の端子t2とポートB1の端子t2とが返送部9を介して接続されている。同様に、予備系のポートA2の端子t2とポートB2の端子t2とが返送部9を介して接続されている。
【0035】
運用系の返送部9は、現在、ポートA1の端子t0とポートB1の端子t0とを接続していない。運用系の返送部9は、運用系から予備系に切り替わったときに、ポートA1の端子t0とポートB1の端子t0とを接続する。これに対し、予備系の返送部9は、ポートA2の端子t0とポートB2の端子t0とを現在接続している。予備系の返送部9は、予備系のMCH2から送信されるデータを同じ予備系のMCH2に折り返し返送する回路であるので、図2に示したように、単純な接続線の構成でもよい。あるいは、返送部9は、増幅回路又は波形整形回路を有する信号処理回路の構成でもよい。あるいはまた、返送部9は、増幅回路及び波形整形回路の両方を有する信号処理回路の構成でもよい。
【0036】
本実施形態においては、各返送部9は、sRIO7によって制御される信号処理回路を構成する。ただし、sRIO7及びCPU6からなる制御部は、運用系の通信回線及びMCHを介して、他の通信装置との間でデータ通信を行っているので、通常の処理ルーチンの中では返送部9を制御することは困難であると考えられる。また、予備系の通信回線の監視は、頻繁に行う必要もないと考えられる。
【0037】
したがって、予備系の通信回線の監視は、通常の処理ルーチンから臨時的な処理ルーチンに遷移して行うことが望ましい。本実施形態においては、タイマ割込の割込処理によって予備系の通信回線の監視を行う。ただし、タイマ割込以外の他の割込処理や、割込処理以外の臨時的な処理ルーチンによって、予備系の通信回線の監視を行うようにしてもよい。
【0038】
図3において、sRIO7の入力ポートip1及びip2、出力ポートop1及びop2は、それぞれに対応する返送部9に接続されている。また、sRIO7の出力ポートexは、切替部8に接続されて、切替部8のポートA1、B1、A2、及びB2を構成する切替スイッチに切替制御信号exを与える。
【0039】
図4は、図3の予備系の返送部9における信号処理回路を示すブロック図である。図4において、増幅回路91は、ポートA2から入力される予備系のMCH2からの下り信号d2を増幅して出力する。すなわち、増幅回路91は、予備系の通信回線によって減衰した下り信号d2を増幅する。
【0040】
この下り信号d2は、通常の通信用の符号化されたデータでもよいが、予備系の通信回線を検査するという意味から、ここでは、符号化された「回線検査信号」という表現とする。通常、予備系のMCH2は、自身が予備系に指定されていることが分かっているので、予備系の通信回線の検査に最適な回線検査信号を送信する。
【0041】
整形回路92は、増幅された回線検査信号の波形を整形して、上り信号u2として予備系のMCH2に折り返し返送する。すなわち、整形回路92は、予備系の通信回線の誘導成分及び容量成分によって変形した回線検査信号を整形して返送する。
【0042】
復号回路93は、整形回路92から出力された符号化された回線検査信号を復号化して、単一のパルス信号として出力する。なお、回線検査信号の符号化及びその復号化については、多くの手法が考えられるが、本発明には直接関係しないので説明は割愛する。
【0043】
セット・リセット回路(SR回路)94は、例えば、双安定バイブレータ回路(又は、フリップフロップ回路)で構成されている。SR回路94は、端子Sに入力されるパルス信号のセット信号によって、端子Qがローレベルからハイレベルに変化する。また、SR回路94は、端子Rに入力されるパルス信号のリセット信号によって、端子Qがハイレベルからローレベルに変化する。
【0044】
図3に示したように、予備系の返送部9は、sRIO7の入力ポートip2及び出力ポートop2に接続されている。すなわち、図4において、SR回路94の端子Qは、sRIO7の入力ポートip2に接続され、SR回路94の端子RはsRIO7の出力ポートop2に接続されている。sRIO7は、タイマ割込によって、一定時間ごとにSR回路94の端子Qのレベルを入力ポートip2で監視して、端子Qがハイレベルのときは、出力ポートop2からSR回路94の端子Rにリセット信号を与える。
【0045】
すなわち、sRIO7は、一定時間ごとの割込によって、SR回路94の端子Qがハイレベルであることを検出することで、予備系の通信回線が正常であることを確認することができる。したがって、運用系の通信回線に障害が発生したときは、sRIO7は、切替部8に切替制御信号exを与えて、正常に機能している予備系の通信回線を運用系に切り替えることができる。
【0046】
一方、一定時間ごとの割込によって、SR回路94の端子Qがローレベルの状態を1回又は何回か検出したときは、予備系の通信回線に障害が発生したことを認識できるので、例えば、通信回線の保守・修理を行っている管理センター等にその旨を通知する。
【0047】
以上のように、上記実施形態によれば、多重化通信システムは、データの通信を中継する2系統の通信中継装置であるMCH1、2と、そのうち1系統のMCHの中継によりデータの通信を行う通信装置であるAMC3、4、5と、を有している。各AMCは、2系統のMCH1、2の一方のMCHをデータの通信を中継に運用する運用系に、他方のMCHを予備系に、与えられる切替制御信号exによって切り替えて指定する切替部8と、切替部8によって指定された予備系のMCHから送信される回線検査信号を予備系のMCHに対して返送する返送部9と、返送部9における回線検査信号を監視することによって、予備系の通信回線が正常であるか否かを確認するsRIO7と、を備える。
【0048】
したがって、2系統の通信回線の一方を運用系の通信回線に設定し他方を予備系の通信回線に設定して、運用系の通信回線でデータの送受信を行う際に、使用していない予備系の通信回線が正常か否かを確認することが可能になる。
【0049】
また、上記実施形態によれば、返送部9は、予備系のMCHから送信される回線検査信号に対して増幅処理及び波形整形処理を施して、予備系のMCHに返送する信号処理回路として、増幅回路91及び整形回路82を有する。また、AMCは、その信号処理回路から予備系のMCHに返送される回線検査信号を監視する信号監視手段として入力ポートip1、ip2を有する。
【0050】
したがって、AMCは、臨時的なタイマ割込等の割込処理によって入力ポートip1、ip2を監視して、予備系の通信回線が正常であるか否かを確認することができるので、他のAMCとの間の通常的なデータ通信に支障を及ぼすことがない。
【0051】
さらに、上記実施形態によれば、返送部9の信号処理回路は、予備系のMCHに返送する回線検査信号に応じて1の状態(ローレベルの端子Q)から他の状態(ハイレベルの端子Q)にセットされ、sRIO7からの出力信号(リセット信号)によって他の状態から1の状態にリセットされる双安定マルチバイブレータ回路(SR回路94)を有する。sRIO7の信号監視手段(入力ポートip1、ip2)は、双安定マルチバイブレータ回路の状態を監視する。
【0052】
したがって、極めて簡単な信号処理回路及び信号監視手段によって、予備系の通信回線が正常であるか否かを確認することができるので、開発コスト及び製品コストの低減、及び、システムの小型化・軽量化を図ることができる。
【0053】
さらにまた、上記実施形態によれば、返送部9の信号処理回路は、予備系のMCHに返送する回線検査信号を一定の時間長のパルス信号に変換して、双安定マルチバイブレータ回路(SR回路94)に入力する信号変換回路(復号回路93)を有する。
【0054】
したがって、回線検査信号の信号フォーマットを分析することなく、予備系の通信回線が正常であるか否かを迅速に確認することができるので、sRIO7は、予備系の通信回線の確認のための負担が軽くなる。
【0055】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0056】
(付記1)
データの通信を中継する2系統の通信中継装置と、
1系統の通信中継装置の中継によりデータの通信を行う通信装置と、を有し、
前記通信装置は、
前記2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定する切替部と、
前記切替部によって指定された前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送する返送部と、
前記返送部における前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する制御部と、を備える、
ことを特徴とする多重化通信システム。
【0057】
(付記2)
前記返送部は、前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号に対して増幅処理及び波形整形処理を施して、前記予備系の通信中継装置に返送する信号処理回路を有し、
前記制御部は、前記信号処理回路から前記予備系の通信中継装置に返送される回線検査信号を監視する信号監視手段を有する、
ことを特徴とする付記1に記載の多重化通信システム。
【0058】
(付記3)
前記信号処理回路は、前記予備系の通信中継装置に返送する回線検査信号に応じて1の状態から他の状態にセットされ、前記制御部からの出力信号によって前記他の状態から前記1の状態にリセットされる双安定マルチバイブレータ回路を有し、
前記信号監視手段は、前記双安定マルチバイブレータ回路の状態を監視する、
ことを特徴とする付記2に記載の多重化通信システム。
【0059】
(付記4)
前記信号処理回路は、前記予備系の通信中継装置に返送する回線検査信号を一定の時間長のパルス信号に変換して前記双安定マルチバイブレータ回路に入力する信号変換回路を、さらに有する、
ことを特徴とする付記3に記載の多重化通信システム。
【0060】
(付記5)
2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定する切替部と、
前記切替部によって指定された前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送する返送部と、
前記返送部における前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する制御部と、を備える、
ことを特徴とする通信装置。
【0061】
(付記6)
前記返送部は、前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号に対して増幅処理及び波形整形処理を施して、前記予備系の通信中継装置に返送する信号処理回路を有し、
前記制御部は、前記信号処理回路から前記予備系の通信中継装置に返送される回線検査信号を監視する信号監視手段を有する、
ことを特徴とする付記5に記載の通信装置。
【0062】
(付記7)
前記信号処理回路は、前記予備系の通信中継装置に返送する回線検査信号に応じて1の状態から他の状態にセットされ、前記制御部からの出力信号によって前記他の状態から前記1の状態にリセットされる双安定マルチバイブレータ回路を有し、
前記信号監視手段は、前記双安定マルチバイブレータ回路の状態を監視する、
ことを特徴とする付記6に記載の通信装置。
【0063】
(付記8)
前記信号処理回路は、前記予備系の通信中継装置に返送する回線検査信号を一定の時間長のパルス信号に変換して前記双安定マルチバイブレータ回路に入力する信号変換回路を、さらに有する、
ことを特徴とする付記7に記載の通信装置。
【0064】
(付記9)
通信装置の切替部が、2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定し、
前記切替部によって前記予備系に指定された通信中継装置が、回線検査信号を前記通信装置に送信し、
前記通信装置の返送部が、前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送し、
前記通信装置の制御部が、前記返送部における前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する、
ことを特徴とする通信制御方法。
【0065】
(付記10)
コンピュータに、
2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定する第1のステップと、
前記第1のステップによって指定された前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送する第2のステップと、
前記予備系の通信中継装置に対して返送される前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する第3のステップと、を実行させる、
ことを特徴とするプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の多重化通信システム、通信装置、通信制御方法及びプログラムは、2系統の通信回線を運用系及び予備系に設定して、障害の発生に備えて適宜切り替えて使用するのに適している。
【符号の説明】
【0067】
1、2 MCH(通信中継装置)
3、4、5 AMC(通信装置)
6 CPU
7 sRIO
8 切替部
9 返送部
91 増幅回路
92 整形回路
93 復号回路
94 SR回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの通信を中継する2系統の通信中継装置と、
1系統の通信中継装置の中継によりデータの通信を行う通信装置と、を有し、
前記通信装置は、
前記2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定する切替部と、
前記切替部によって指定された前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送する返送部と、
前記返送部における前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する制御部と、を備える、
ことを特徴とする多重化通信システム。
【請求項2】
前記返送部は、前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号に対して増幅処理及び波形整形処理を施して、前記予備系の通信中継装置に返送する信号処理回路を有し、
前記制御部は、前記信号処理回路から前記予備系の通信中継装置に返送される回線検査信号を監視する信号監視手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の多重化通信システム。
【請求項3】
前記信号処理回路は、前記予備系の通信中継装置に返送する回線検査信号に応じて1の状態から他の状態にセットされ、前記制御部からの出力信号によって前記他の状態から前記1の状態にリセットされる双安定マルチバイブレータ回路を有し、
前記信号監視手段は、前記双安定マルチバイブレータ回路の状態を監視する、
ことを特徴とする請求項2に記載の多重化通信システム。
【請求項4】
前記信号処理回路は、前記予備系の通信中継装置に返送する回線検査信号を一定の時間長のパルス信号に変換して前記双安定マルチバイブレータ回路に入力する信号変換回路を、さらに有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の多重化通信システム。
【請求項5】
2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定する切替部と、
前記切替部によって指定された前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送する返送部と、
前記返送部における前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する制御部と、を備える、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項6】
前記返送部は、前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号に対して増幅処理及び波形整形処理を施して、前記予備系の通信中継装置に返送する信号処理回路を有し、
前記制御部は、前記信号処理回路から前記予備系の通信中継装置に返送される回線検査信号を監視する信号監視手段を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記信号処理回路は、前記予備系の通信中継装置に返送する回線検査信号に応じて1の状態から他の状態にセットされ、前記制御部からの出力信号によって前記他の状態から前記1の状態にリセットされる双安定マルチバイブレータ回路を有し、
前記信号監視手段は、前記双安定マルチバイブレータ回路の状態を監視する、
ことを特徴とする請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記信号処理回路は、前記予備系の通信中継装置に返送する回線検査信号を一定の時間長のパルス信号に変換して前記双安定マルチバイブレータ回路に入力する信号変換回路を、さらに有する、
ことを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
通信装置の切替部が、2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定し、
前記切替部によって前記予備系に指定された通信中継装置が、回線検査信号を前記通信装置に送信し、
前記通信装置の返送部が、前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送し、
前記通信装置の制御部が、前記返送部における前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する、
ことを特徴とする通信制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、
2系統の通信中継装置の一方をデータ通信の中継に運用する運用系に、他方を予備系に、与えられる切替制御信号によって切り替えて指定する第1のステップと、
前記第1のステップによって指定された前記予備系の通信中継装置から送信される回線検査信号を前記予備系の通信中継装置に対して返送する第2のステップと、
前記予備系の通信中継装置に対して返送される前記回線検査信号を監視することによって、前記予備系の通信回線が正常であるか否かを確認する第3のステップと、を実行させる、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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