説明

多重嵌合伸縮軸

【課題】高い強度を備えた伝達軸を用いて、耐久性の高い多重嵌合伸縮軸を提供する。
【解決手段】第1伝達軸の回転を、第1伝達軸の第1被係合部に係合された第1係合部により第2伝達軸に伝達させるようにし、かつ、第2伝達軸の回転を、第2伝達軸の第2被係合部に係合された第2係合部により第3伝達軸に伝達させるとともに、第1伝達軸の第1雄ネジを、第1移動パイプの第1ナット部にネジ嵌合し、第2伝達軸の第2雄ネジを、第2移動パイプの第2ナット部にネジ嵌合し、さらに、第3伝達軸の第3雄ネジを、第3移動パイプの第3ナット部にネジ嵌合し、第1伝達軸の回転を、第2伝達軸及び3伝達軸に伝達するとともに、第1、第2、及び第3移動パイプを軸方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重構造の筒状物を繰り出し、又は、収容することによって全長を変更可能な伸縮軸に関する。
【背景技術】
【0002】
使用状況に応じて任意の高さに配置し直すことが要求される機器として、例えば、カメラ、マイク、照明、スピーカがある。これらの機器を、昇降させ、かつ、その位置で固定することができるよう支持するために、各種の支持装置が提案、実現されている。
【0003】
従来の支持装置のうち、簡便な操作で迅速に高さを変更でき、かつ、確実に対象物を支持できるものとして、多重構造の筒状物を繰り出し、又は、収容することによって全長を変更可能な伸縮軸があった。
【0004】
例えば特許文献1記載の伸縮ポール装置は、中空の固定パイプの内側に第1の移動パイプが、中空の第1移動パイプの内側に第2移動パイプが、中空の第2移動パイプの内側に第3の移動パイプが、それぞれ組込まれ、かつ、各移動パイプは、移動パイプ回転止めにより、各パイプに対して相対的に回転を制限せしめるとともに軸方向の移動を自由とされている構成を備えている。
【0005】
この伸縮ポール装置では、第1の伝達軸が中空の第2軸の中空部の内側に組込まれ、第1軸の回転が、第1軸端に固定した軸回転伝達キーにより第2軸に伝達されるようにし、また、第2の伝達軸が中空の第3軸の中空部の内側に組込まれ、第2軸の回転が、第2軸端に固定した軸回転伝達キーにより第3軸に伝達できるようにすることで、最初の駆動軸である第1の伝達軸に回転が与えられる際に、第2軸及び第3軸に回転が伝達されるように構成されている。
【0006】
さらに、第1の伝達軸は、固定パイプに対して軸方向移動が固定され、第2の伝達軸は、第1の移動パイプに固定されたエンドプレートに回転自由に保持され、第3の伝達軸は、第2の移動パイプに固定されたエンドプレートに回転自由に保持されており、第1の伝達軸の外周部に形成された雄ネジが、第1の移動パイプに固定されたナット部にネジ嵌合され、第2の伝達軸の外周部に形成された雄ネジが、第2の移動パイプに固定されたナット部にネジ嵌合されるとともに、第3の伝達軸の外周部に形成された雄ネジが、第3の移動パイプに固定されたナット部にネジ嵌合されることにより、最初の駆動軸である第1の伝達軸に回転が与えられると第1の移動パイプを軸方向に移動させるとともに、第2の伝達軸に回転を伝達して第2の移動パイプを軸方向に移動させ、かつ、第3の伝達軸に回転を伝達して第3の移動パイプを軸方向に移動させるように構成されている。このような構成により、任意の高さを得るための使い勝手のよいコンパクトな伸縮ポールを得ることができる。
【特許文献1】特許第3637414号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の伸縮ポール装置では、軸回転伝達キーを挿通固定するために第1軸及び第2軸に開口を形成しなければならないため、伸縮時に大きな力のかかる第1軸及び第2軸の強度が低下するおそれがある。また、軸回転伝達キーを第1軸及び第2軸の端部に固定することから、伸縮ポール装置を伸ばしていくときのストロークの長さが制約される。
【0008】
そこで本発明は、開口を形成することなく高い強度を備えた伝達軸を用いることにより、耐久性の高い多重嵌合伸縮軸を提供することを目的とする。また、ストロークの長さの制約が少ない多重嵌合伸縮軸を提供することが本発明のさらなる目的である。さらに、本発明の目的は、伝達軸を横方向へ押し出すモーメントの発生を抑えることができ、これにより信頼性を向上することのできる多重嵌合伸縮軸を提供することにある。また、本発明は、容易に分解してメンテナンスしやすいとともに、第1伝達軸でトルクを受ける長さを短くすることによってスペースを大きくとることなく大きなねじり剛性を確保することのできる多重嵌合伸縮軸を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の多重嵌合伸縮軸においては、中空の固定パイプと、固定パイプの内側に組込まれ、固定パイプに対する相対回転が制限されるとともに軸方向に移動可能な中空の第1移動パイプと、第1移動パイプの内側に組込まれ、第1移動パイプに対する相対回転が制限されるとともに軸方向に移動可能な中空の第2移動パイプと、第2移動パイプの内側に組込まれ、第2移動パイプに対する相対回転が制限されるとともに軸方向に移動可能な第3移動パイプと、固定パイプに対して軸方向移動が固定された第1伝達軸と、第1移動パイプに回転自由に保持された中空の第2伝達軸と、第2移動パイプに回転自由に保持された中空の第3伝達軸と、を備え、第1伝達軸を第2伝達軸の中空部の内側に組込み、第1伝達軸の回転を、第1伝達軸に形成された第1被係合部に係合され、第2伝達軸の軸端に支持された第1係合部により第2伝達軸に伝達させるようにし、かつ、第2伝達軸を第3伝達軸の中空部の内側に組込み、第2伝達軸の回転を、第2伝達軸に形成された第2被係合部に係合され、第3伝達軸の軸端に支持された第2係合部により第3伝達軸に伝達させることにより、第1伝達軸に回転が与えられる際に、第2伝達軸及び第3伝達軸に回転が伝達され、さらに、第1伝達軸の外周部に形成された第1雄ネジが、第1移動パイプに設けられた第1ナット部にネジ嵌合され、第2伝達軸の外周部に形成された第2雄ネジが、第2移動パイプに設けられた第2ナット部にネジ嵌合されるとともに、第3伝達軸の外周部に形成された第3雄ネジが、第3移動パイプに設けられた第3ナット部にネジ嵌合されることにより、第1伝達軸に回転が与えられると第1移動パイプを軸方向に移動させるとともに、第2伝達軸に回転を伝達して第2移動パイプを軸方向に移動させ、かつ、第3伝達軸に回転を伝達して第3移動パイプを軸方向に移動させることを特徴としている。
【0010】
本発明の多重嵌合伸縮軸において、第1係合部は、第1伝達軸の長手方向に沿って形成された第1被係合部に沿ってスライド可能に係合され、第2係合部は、第2伝達軸の長手方向に沿って形成された第2被係合部に沿ってスライド可能に係合されることが好ましい。
【0011】
本発明の多重嵌合伸縮軸において、第1被係合部は第1伝達軸の長手方向に沿って形成されたキースライド溝であり、第1係合部は第2伝達軸の軸端に支持された第1軸回転伝達キーであるとよい。この場合、第2被係合部を第2伝達軸の長手方向に沿って形成されたキースライド溝とし、第2係合部を第3伝達軸の軸端に支持された第2軸回転伝達キーとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多重嵌合伸縮軸は、中空の固定パイプと、固定パイプの内側に組込まれ、固定パイプに対する相対回転が制限されるとともに軸方向に移動可能な中空の第1移動パイプと、第1移動パイプの内側に組込まれ、第1移動パイプに対する相対回転が制限されるとともに軸方向に移動可能な中空の第2移動パイプと、第2移動パイプの内側に組込まれ、第2移動パイプに対する相対回転が制限されるとともに軸方向に移動可能な第3移動パイプと、固定パイプに対して軸方向移動が固定された第1伝達軸と、第1移動パイプに回転自由に保持された中空の第2伝達軸と、第2移動パイプに回転自由に保持された中空の第3伝達軸と、を備える。
【0013】
この構成においては、第1伝達軸を第2伝達軸の中空部の内側に組込み、第1伝達軸の回転を、第1伝達軸に形成された第1被係合部に係合され、第2伝達軸の軸端に支持された第1係合部により第2伝達軸に伝達させるようにし、かつ、第2伝達軸を第3伝達軸の中空部の内側に組込み、第2伝達軸の回転を、第2伝達軸に形成された第2被係合部に係合され、第3伝達軸の軸端に支持された第2係合部により第3伝達軸に伝達させることにより、第1伝達軸に回転が与えられる際に、第2伝達軸及び第3伝達軸に回転が伝達される。さらに、第1伝達軸の外周部に形成された第1雄ネジが、第1移動パイプに設けられた第1ナット部にネジ嵌合され、第2伝達軸の外周部に形成された第2雄ネジが、第2移動パイプに設けられた第2ナット部にネジ嵌合されるとともに、第3伝達軸の外周部に形成された第3雄ネジが、第3移動パイプに設けられた第3ナット部にネジ嵌合されることにより、第1伝達軸に回転が与えられると第1移動パイプを軸方向に移動させるとともに、第2伝達軸に回転を伝達して第2移動パイプを軸方向に移動させ、かつ、第3伝達軸に回転を伝達して第3移動パイプを軸方向に移動させることができる。
【0014】
本発明の多重嵌合伸縮軸は、上述のような作用効果を奏するものであり、特許文献1の伸縮ポール装置のように開口を形成することがないため、高い強度を備えた伝達軸を用いることにより、耐久性の高い多重嵌合伸縮軸を提供することができる。第1伝達軸の回転を、互いに固定されていない、係合部と被係合部との間で伝達できるため、ストロークの長さの制約を少なくすることができる。また、被係合部を溝状とする構造により、伝達軸を横方向へ押し出すモーメントの発生を抑えることができ、これにより伸縮動作の信頼性を向上することができる。さらに、係合部と被係合部が互いに固定されていないため、容易に分解してメンテナンスしやすいとともに、第1伝達軸でトルクを受ける長さを短くすることによってスペースを大きくとることなく大きなねじり剛性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る多重嵌合伸縮軸について図1〜図4を参照しつつ詳しく説明する。
本実施形態は、本発明を、4重に嵌合した伸縮軸に適用した場合の実施形態を示すものであるが、本発明は、実施形態に記載の4重嵌合伸縮軸には限られず、2重又は3重に嵌合した伸縮軸及び5重以上に嵌合した伸縮軸にも適用することができる。ここで、図1は、本実施形態に係る伸縮軸10の軸Oを通る面における断面図であり、第1軸回転伝達キー22b1を切断する面における断面図である。図2は伸縮軸10の軸Oを通り、図1の切断面と直交する面における断面図であり、第2軸回転伝達キー23b1を切断する面における断面図である。図3は、図2の部分拡大断面図である。図4は、各伝達軸の関係を示す斜視図であり、伸縮軸10のうち、固定パイプ11、第2移動パイプ13、第3移動パイプ14の図示を省略している。
【0016】
本実施形態に係る伸縮軸10(多重嵌合伸縮軸)は、固定パイプ11、第1移動パイプ12、第2移動パイプ13、第3移動パイプ14、第1伝達軸21、第2伝達軸22、及び第3伝達軸23を備える。伸縮軸10を構成する部材は、伸縮操作に耐えうる十分な剛性を備えた金属材料であることが好ましい。
以下に、各部材の詳細な構成について説明する。
【0017】
第1移動パイプ12は、中空の固定パイプ11の内側に組込まれる。第1移動パイプ12は、移動パイプ回転止めローラ(不図示)により、固定パイプ11に対して相対的に回転を制限されるとともに軸方向に移動可能となっている。また、第1移動パイプ12の軸方向端部の内側には、ベアリング(不図示)を介して第1エンドプレート12bが配置されている。
【0018】
第2移動パイプ13は、中空の第1移動パイプ12の内側に組込まれる。第2移動パイプ13は、移動パイプ回転止めローラ(不図示)により、第1移動パイプ12に対して相対回転を制限されるとともに軸方向に移動可能となっている。また、第2移動パイプ13の軸方向端部の内側には、ベアリング(不図示)を介して第2エンドプレート13bが配置されている。
【0019】
第3移動パイプ14は、中空の第2移動パイプ13の内側に組込まれる。第3移動パイプ14は、移動パイプ回転止めローラ(不図示)により、第2移動パイプ13に対して相対回転を制限するとともに軸方向に移動可能となっている。
【0020】
第1伝達軸21は、固定パイプ11の端部の内周に固定された振れ止めベアリング31によって、固定パイプ11に対して軸方向移動が固定されている。第1伝達軸21の外周部には、第1伝達軸21の長手方向に沿って、すなわち軸方向に平行に、第1被係合部としての第1キースライド溝21cが形成されている。
【0021】
第1伝達軸21は、第2伝達軸22の中空部の内側に組込まれる。中空の第2伝達軸22は、第1ナット部12a及び第1エンドプレート12bを介して、第1移動パイプ12に回転自由に保持されている。第2伝達軸22の軸端には、第1係合部としての第1軸回転伝達キー22b1が、第1フランジ部22aを介して支持されている。第1軸回転伝達キー22b1は、第1ベアリング22bの二つの対向する平面のうち、振れ止めベアリング31側の平面上において外方に突出するように形成されている。第1ベアリング22bは、第1フランジ部22aに重ね合わせられ、このときに、第1軸回転伝達キー22b1が、第1フランジ部22aの中空部から外側側へ向かうように凹設された孔部22a1内に収容される。このとき第2軸回転伝達キー23b1は、第2フランジ部23aの内周よりも内側に突出する。この第1軸回転伝達キー22b1は、第1伝達軸21の第1キースライド溝21cに対してスライド可能に係合する。この構成により、第1伝達軸21をその軸の周りに回転させると、この回転は、第1伝達軸21の第1キースライド溝21cに係合した第1軸回転伝達キー22b1により第2伝達軸22に伝達される。
【0022】
また、第2伝達軸22の外周部には、第2伝達軸22の長手方向に沿って、すなわち軸方向に平行に、第2被係合部としての第2キースライド溝22cが形成されている。この第2キースライド溝22cは、その延長線上に第1軸回転伝達キー22b1が来ないように配置する。
【0023】
第2伝達軸22は、第3伝達軸23の中空部の内側に組込まれる。固定パイプ11、第1移動パイプ12、第2移動パイプ13、第3移動パイプ14、第1伝達軸21、第2伝達軸22、及び第3伝達軸23は、各軸が伸縮軸の軸Oに一致するように配置される。中空の第3伝達軸23は、第2エンドプレート13bを介して、第2移動パイプ13に回転自由に保持されている。第3伝達軸23の軸端には、第2係合部としての第2軸回転伝達キー23b1が、第2フランジ部23aを介して支持されている。第2軸回転伝達キー23b1は、第2ベアリング23bの二つの対向する平面のうち、振れ止めベアリング31側の平面上において外方に突出するように形成されている。23bは、第2フランジ部23aに重ね合わせられ、このときに、第2軸回転伝達キー23b1が、第2フランジ部23aの中空部から外側側へ向かうように凹設された孔部23a1内に収容される。このとき第2軸回転伝達キー23b1は、第2フランジ部23aの内周よりも内側に突出する。この第2回転伝達キー23b1は、第2伝達軸22の第2キースライド溝22cに対してスライド可能に係合する。以上の構成により、第2伝達軸22をその軸の周りに回転させると、この回転は、第2伝達軸22の第2キースライド溝22cに係合した第2軸回転伝達キー23b1により第3伝達軸23に伝達される。したがって、最初の駆動軸である第1伝達軸21をその軸の周りに回転させると、この回転は第2伝達軸22に伝達されて第2伝達軸22をその軸の周りに回転させ、さらに第2伝達軸22の回転は第3伝達軸23に伝達されて第3伝達軸23をその軸の周りに回転させる。
【0024】
また、第1伝達軸21の外周部、第2伝達軸22の外周部、及び第3伝達軸23の外周部、には、第1雄ネジ21d、第2雄ネジ22d、及び第3雄ネジ23dが、それぞれ形成されている。なお、図4において第3雄ネジ23dは第3伝達軸23の長手方向の途中位置までしか螺設形成されていない表現になっている。これは当該ネジを省略して表現したものであり、第3伝達軸23の長手方向全体に形成されたものである。一方、第1移動パイプ12、第2移動パイプ13、及び第3移動パイプ14の軸方向端部には、第1ナット部12a、第2ナット部13a、及び第3ナット部14aがそれぞれ設けられている。第1ナット部12a、第2ナット部13a、及び第3ナット部14aは、回転止め部材41、42、43によって、第1移動パイプ12、第2移動パイプ13、及び第3移動パイプ14の振れ止めベアリング31側の端部にそれぞれ固定されている。第1ナット部12a、第2ナット部13a、及び第3ナット部14aの内周には、第1雄ネジ21d、第2雄ネジ22d、及び第3雄ネジ23dにそれぞれ対応する雌ネジが形成されている。
【0025】
第1雄ネジ21d、第2雄ネジ22d、及び第3雄ネジ23dを、第1ナット部12a、第2ナット部13a、及び第3ナット部14aの雌ネジにそれぞれ螺合するように、第1移動パイプ12、第2移動パイプ13、第3移動パイプ14、第1伝達軸21、第2伝達軸22、及び第3伝達軸23を配置すると、最初の駆動軸である第1伝達軸21に回転を与えることにより、第1雄ネジ21dと第1ナット部12aとの間の作用により、第1移動パイプ12は、第1伝達軸21に対して相対回転しつつ軸方向に相対移動する。また、第1伝達軸21の回転は、上述のように第2伝達軸22に伝達されることから、第2雄ネジ22dと第2ナット部13aとの間の作用により、第2移動パイプ13は第2伝達軸22に対して相対回転しつつ軸方向に相対移動する。さらに、第2伝達軸22の回転は第3伝達軸23に伝達されるため、第3雄ネジ23dと第3ナット部14aとの間の作用により、第3移動パイプ14は第3伝達軸23に対して相対回転しつつ軸方向に相対移動する。すなわち、第1伝達軸21を回転させることで、第1移動パイプ12、第2移動パイプ13、及び第3移動パイプ14が回転しつつ軸方向に移動し、これにより、伸縮軸10の全長を伸縮することができる。
【0026】
以上のように構成されたことから、上記実施形態によれば、次の効果を奏する。
(1)第1伝達軸21、第2伝達軸22、及び第3伝達軸23のいずれにも開口を形成することがないため、高い強度の伝達軸を実現することができ、これにより、伸縮軸10の耐久性を高めることができる。
(2)第1伝達軸21の回転を、それぞれ互いに固定されていない、第1キースライド溝21cと第1軸回転伝達キー22b1との間、第2キースライド溝22cと第1軸回転伝達キー23b1との間で伝達できるため、ストロークの長さの制約を少なくすることができる。
(3)第1キースライド溝21cと第1軸回転伝達キー22b1、又は、第2キースライド溝22cと第1軸回転伝達キー23b1、のようにスライド溝と突起状のキーとをスライド可能に係合する構造により、第1伝達軸21、第2伝達軸22、及び第3伝達軸23を横方向へ押し出すモーメントの発生を抑えることができ、これにより伸縮動作の信頼性を向上することができる。
(4)第1キースライド溝21cと第1軸回転伝達キー22b1との間、及び、第2キースライド溝22cと第1軸回転伝達キー23b1との間、がそれぞれ互いに固定されていないため、容易に分解してメンテナンスしやすい。また、第1伝達軸21でトルクを受ける長さを短くすることによってスペースを大きくとることなく大きなねじり剛性を確保することができる。
【0027】
以下に変形例について説明する。
上述の実施形態では、係合部として第1軸回転伝達キー22b1及び第2軸回転伝達キー23b1を、被係合部として第1キースライド溝21c及び第2キースライド溝22cを、それぞれ用いたが、これらに代えて、互いに固定されることなく係合し合任意の構成を用いることができる。例えば、スパイラルねじとこれに係合するピニオンを用いることができ、さらに、スパイラルねじとこれに噛み合うピニオンも採用可能である。なお前記実施例では、第1、第2、第3の3つの伝達軸21、22、23からなる多重嵌合伸縮軸10としているが、本発明はこのようなものに限定されず、こうした3つの伝達軸を備え、さらに4軸、5軸、あるいはそれ以上の伝達軸を備えた構造のものも含むものとする。
【0028】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る伸縮軸の軸を通る面における断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る伸縮軸の軸を通り、図1の切断面と直交する面における断面図である。
【図3】図2の部分拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る各伝達軸の関係を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10 伸縮軸(多重嵌合伸縮軸)
11 固定パイプ
12 第1移動パイプ
12a 第1ナット部
12b 第1エンドプレート
13 第2移動パイプ
13a 第2ナット部
13b 第2エンドプレート
14 第3移動パイプ
14a 第3ナット部
21 第1伝達軸
21c 第1キースライド溝(第1被係合部)
21d 第1雄ネジ
22 第2伝達軸
22a 第1フランジ部
22a1 孔部
22b 第1ベアリング
22b1 第1軸回転伝達キー(第1係合部)
22c 第2キースライド溝(第2被係合部)
22d 第2雄ネジ
23 第3伝達軸
23a 第2フランジ部
23a1 孔部
23b 第2ベアリング
23b1 第2軸回転伝達キー(第2係合部)
23d 第3雄ネジ
31 振れ止めベアリング
41 回転止め部材
42 回転止め部材
43 回転止め部材
O 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の固定パイプと、
前記固定パイプの内側に組込まれ、前記固定パイプに対する相対回転が制限されるとともに軸方向に移動可能な中空の第1移動パイプと、
前記第1移動パイプの内側に組込まれ、前記第1移動パイプに対する相対回転が制限されるとともに軸方向に移動可能な中空の第2移動パイプと、
前記第2移動パイプの内側に組込まれ、前記第2移動パイプに対する相対回転が制限されるとともに軸方向に移動可能な第3移動パイプと、
前記固定パイプに対して軸方向移動が固定された第1伝達軸と、
前記第1移動パイプに回転自由に保持された中空の第2伝達軸と、
前記第2移動パイプに回転自由に保持された中空の第3伝達軸と、を備え、
前記第1伝達軸を前記第2伝達軸の中空部の内側に組込み、前記第1伝達軸の回転を、前記第1伝達軸に形成された第1被係合部に係合され、第2伝達軸の軸端に支持された第1係合部により第2伝達軸に伝達させるようにし、かつ、前記第2伝達軸を前記第3伝達軸の中空部の内側に組込み、第2伝達軸の回転を、第2伝達軸に形成された第2被係合部に係合され、第3伝達軸の軸端に支持された第2係合部により第3伝達軸に伝達させることにより、第1伝達軸に回転が与えられる際に、第2伝達軸及び第3伝達軸に回転が伝達され、さらに、
前記第1伝達軸の外周部に形成された第1雄ネジが、第1移動パイプに設けられた第1ナット部にネジ嵌合され、前記第2伝達軸の外周部に形成された第2雄ネジが、第2移動パイプに設けられた第2ナット部にネジ嵌合されるとともに、前記第3伝達軸の外周部に形成された第3雄ネジが、第3移動パイプに設けられた第3ナット部にネジ嵌合されることにより、第1伝達軸に回転が与えられると第1移動パイプを軸方向に移動させるとともに、前記第2伝達軸に回転を伝達して第2移動パイプを軸方向に移動させ、かつ、前記第3伝達軸に回転を伝達して第3移動パイプを軸方向に移動させることを特徴とする多重嵌合伸縮軸。
【請求項2】
前記第1係合部は、前記第1伝達軸の長手方向に沿って形成された前記第1被係合部に沿ってスライド可能に係合され、前記第2係合部は、前記第2伝達軸の長手方向に沿って形成された前記第2被係合部に沿ってスライド可能に係合される請求項1に記載の多重嵌合伸縮軸。
【請求項3】
前記第1被係合部は前記第1伝達軸の長手方向に沿って形成されたキースライド溝であり、前記第1係合部は前記第2伝達軸の軸端に支持された第1軸回転伝達キーである請求項2に記載の多重嵌合伸縮軸。
【請求項4】

前記第2被係合部は前記第2伝達軸の長手方向に沿って形成されたキースライド溝であり、前記第2係合部は前記第3伝達軸の軸端に支持された第2軸回転伝達キーである請求項3に記載の多重嵌合伸縮軸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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