説明

多重記述符号化のための方法及び装置

本発明は、情報信号の多重記述符号化に使用されるインデックス割当て行列の設計に使用する方法及び装置に関するものである。当該インデックス割当て行列のバンド幅は、情報信号についての記述を送信可能な通信チャネルの伝送状態に関する伝送状態情報に依存して選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムにおける多重記述符号化の分野に関するものであり、特に、多重記述符号化に使用されるインデックス割当て行列の設計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
あらゆる通信システムには、送信端から受信端へ伝送される情報が、伝送中に失われるリスクが存在する。そのような喪失を補償するために、ダイバーシチが導入されることが多く、それにより2つ以上の独立したチャネルで情報が送信される。このような独立のチャネルは、例えば、2つ以上の異なる伝送パスを使用すること、及び、2つ以上の異なる時点に又は異なる周波数で情報を送信することの、少なくとも何れかによって実現され得る。
【0003】
通信インタフェースにダイバーシチを使用することによって、当該インタフェースを介して送信される冗長な情報の量は、一般的に増加するであろう。伝送帯域幅は、通信インタフェース上の少量のリソースであることが多いため、送信される情報の冗長度を可能な限り低く保つことが一般的に望まれる。これに対処すべく、多重記述符号化(MDC:multiple description coding)と称される技術が開発されており、それにより、複数の記述のうちの任意のサブ集合からソースの推定値を得ることができるように、情報源が2つ以上の異なる記述へ符号化される。その後、当該異なる記述は、複数の通信インタフェースについての異なるチャネルを介して、ダイバーシチを使用して送信される。当該異なる記述は、パケット損失確率が大きいシナリオでは、冗長度が大きくなるように、相互に類似するよう選択され得る一方で、パケット損失確率が小さいシナリオでは、冗長度がより小さくなるように、相互に大いに異なるよう選択され得る。
【0004】
MDCに従って動作する符号化器の設計法に関する問題は、多数の刊行物において扱われている。非特許文献1では、MDC符号化器の設計に関する反復的な方法が開示されており、当該方法はLloydアルゴリズムの一般化に基づいている。中央量子化器が設計され、当該中央量子化器のセルが異なる2つのサイド符号化器(side coder)のセルにマッピングされる。この論文では、中央量子化器の複数のセルを異なるサイド符号化器のセルへマッピングすることによってインデックス割当て行列を埋める、異なる2つのアルゴリズムが記述されている。これらの異なるアルゴリズムは、線形インデックス割当てアルゴリズム、及びネスト型(nested)インデックス割当てアルゴリズムと称される。
【0005】
MDC符号化器の設計に関する非特許文献1によって記述される方法は、反復法を用いた、インデックス割当て行列の最適化を含む。MDC符号化器のこのような反復的な最適化は、大きな処理能力を必要とする。より少ない処理能力で実行可能なインデックス割当て行列の設計法が望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】V.A. Vaishampayan,“Design of multiple description scalar quantizers(多重記述スカラー量子化器の設計)”, IEEE Transactions on Information Theory, vol.39, pp.821-834, May 1993.
【非特許文献2】T. Berger-Wolf and E. Reingold,“Index assignment for multichannel communication under failure(障害下におけるマルチチャネル通信用のインデックス割当て),”IEEE Transactions on Information Theory, vol.39, pp.821-834, May 1993.
【非特許文献3】C. Tian and S. Hemami,“Universal multiple description scalar quantization: analysis and design(汎用多重記述スカラー量子化:解析及び設計),”IEEE Transactions on Information Theory, vol.50, pp.2089-2102, 2004.
【非特許文献4】J. Balogh and L.A. Csirik, “Index assignment for 2-channel quantization(2チャネル量子化用のインデックス割当て),”IEEE Transactions on Information Theory, vol.50, pp.2237-2751, 2004.
【発明の概要】
【0007】
本発明と関係がある問題は、インデックス割当て行列の設計に必要な処理能力をいかにして低減するかに関する問題である。
【0008】
この問題には、情報信号の多重記述符号化に使用するインデックス割当て行列を設計する方法によって対処する。本方法は、情報信号についての記述を伝送可能な通信チャネルの伝送状態に関する伝送状態情報に依存して、インデックス割当て行列に関するバンド幅を選択するステップを含むことを特徴とする。
【0009】
本問題には、さらに、情報信号の多重記述符号化に使用されるインデックス割当て行列の設計に使用する装置と、コンピュータ・プログラム製品とによって対処する。本発明の装置は、インデックス割当て行列のバンド幅を示す信号を生成するバンド幅選択ユニットを備える。バンド幅選択ユニットは、情報信号についての記述を伝送可能な通信チャネルの伝送状態を示す伝送状態情報を受信する入力部を有する。バンド幅選択ユニットは、さらに、伝送状態情報に依存してバンド幅を示す信号を生成する。バンド幅選択ユニットは、さらに、バンド幅を示す信号を出力する出力部を有する。
【0010】
インデックス割当て行列のバンド幅は、行列のバンド(帯)の測度であり、2次元の場合の正方行列については、当該行列のゼロ以外の要素が限定された、隣接する対角線の数として定義され得る。2以上の次元において、非正方行列についてバンド幅を同様に定義することができる。あるいは、バンド幅について代替的な定義を使用してもよい。
【0011】
本発明の方法及び装置によって、インデックス割当て行列の設計に必要となる処理能力及び処理時間の少なくとも何れかを、大幅に低減することが達成される。行列のバンド幅は伝送状態情報に依存して選択されるため、コストのかかるシミュレーションは必要ない。
【0012】
いったんバンド幅が選択されると、インデックス割当て行列の設計は、インデックス割当てアルゴリズムに従って実行され得る。ここで、当該インデックス割当てアルゴリズムは、例えば、先行技術の従来技術のインデックス割当てアルゴリズムであってもよい。
【0013】
本発明によって、インデックス割当て行列の設計に必要な処理能力が大幅に低減されるため、伝送インタフェースにおける暗号化(暗号化解除)に使用されるインデックス割当て行列を、低処理コストで再設計することができる。多重記述符号化に従った符号化器又は復号器の動作に関するインデックス割当て行列の最適な設計は、符号化器が動作している伝送状態に依存する。大部分の通信システムにおける伝送状態は、時間とともに変化するため、そのような変化する伝送状態に対して、インデックス割当て行列をオンライン形式で適応させるのを可能にすることが望ましい。低処理コストの本発明の方法及び装置によって、伝送状態に対するこのようなオンライン適応処理を効率的に実行することができよう。
【0014】
本発明の一態様において、バンド幅を選択するステップは、多項式の根を決定するステップを含み、多項式の係数は、伝送状態情報に依存して定義される。多項式の根を見出すためには少数の処理ステップが必要とされるのみであるため、この実施形態は処理能力について効率的である。
【0015】
本発明の別の態様において、バンド幅を選択するステップは、伝送状態の候補値のテーブルに対応する情報と、それに対応する適切なバンド幅の値とを格納するメモリにアクセスするステップを含む。この実施形態において、バンド幅を選択する当該ステップは、バンド幅が選択される伝送状態情報と、メモリに格納された伝送状態の候補値とを比較するステップと、メモリに格納された情報に従って、バンド幅を選択するステップとをさらに含む。
【0016】
本発明は、例えば、様々な通信システムの、符号化器及び復号器の少なくとも何れかに適用することができよう。本発明を通信システムにおいてオンライン形式で適用する場合、通信システム内のノードから伝送状態情報を受信することが有益であろう。本発明はまた、異なる伝送状態における多重記述符号化用のインデックス割当て行列に適したバンド幅を決定する装置にも適用できよう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ダイバーシチが使用される通信システムの概略図である。
【図2】情報信号xについての異なる2つの記述を使用した多重記述符号化に従って動作する符号化器及び復号器を概略的に示す図である。
【図3a】例示的な中央量子化器によって実行されるマッピングを示す図である。
【図3b】分解能制約型の中央量子化器によって実行されるマッピングを示す図である。
【図3c】エントロピー制約型の中央量子化器によって実行されるマッピングを示す図である。
【図4】インデックス割当て行列の一例を示す図である。
【図5】本発明に係る方法を概略的に示す図である。
【図6a】図5の方法におけるステップのうちの1つの実施形態をより詳細に示す図である。
【図6b】図5の方法におけるステップのうちの1つの実施形態をより詳細に示す図である。
【図6c】図5の方法におけるステップのうちの1つの実施形態をより詳細に示す図である。
【図7】バンド幅選択ユニットを備える装置を概略的に示す図である。
【図8a】バンド幅選択ユニットの一実施形態を概略的に示す図である。
【図8b】バンド幅選択ユニットの一実施形態を概略的に示す図である。
【図9】インデックス割当て行列を設計する行列設計ユニットに接続されたバンド幅選択ユニットを備える装置を概略的に示す図である。
【図10】ネスト型インデックス割当て用のインデックス割当て行列(左)及び対応するサイド・セル・パターン(右)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明及びその利点をより完全に理解するために、以下では、添付する図面と併せてなされた以下の記述について言及する。
【0019】
図1には、第1の通信ノード105及び第2の通信ノード110を含む通信システム100を概略的に図示する。第1の通信ノード105及び第2の通信ノード110は、ダイバーシチを使用するインタフェース115上で相互に通信することができる。インタフェース115は、任意のn>1個の通信チャネル120を有していればよく、図1では、インタフェース115が異なる3つの通信チャネル120(j)を含むことを示している。第1の通信ノード105及び第2の通信ノード110の両方は、典型的には、送信ノード及び受信ノードとして動作し得る。しかしながら、本発明の記述を簡略化するために、以下では、第1の通信ノード105を送信ノード105として記述し、第2の通信ノード110を受信ノード110として記述する。送信ノード105は符号化器125を含み、受信ノード110は復号器130を含む。
【0020】
多重記述符号化に従って動作するシステムによって、任意の数の記述が使用され得る。しかしながら、本発明の説明を簡略化するために、以下では、異なる2つの通信チャネル120を介して送信される、異なる2つの記述を使用するシステムに関して、本発明を説明する。さらに、本説明は主として対称のケースを中心とし、情報信号がマッピングされ得る候補値(possible values)の数は、損失確率wと同様、両方の記述について同一である。しかしながら、本発明が、情報信号に関する任意の数の記述に一般化され得るとともに、非対称のケースにも一般化され得ることは、理解されるべきである。
【0021】
図2に、情報信号xに関する異なる2つの記述を使用する多重記述符号化に従って動作する符号化器125及び復号器130を概略的に図示する。図2の符号化器125は、確率密度関数p(x)を有する情報信号xを受信する、入力部200を有する。符号化器125は、中央量子化器205をさらに有し、中央量子化器205は、情報信号xのサンプルを中央量子化器インデックスkにマッピングする。ここで、k∈{1, .... ,r}であり、rは中央量子化器のセルの数であって、即ち、中央量子化器205の量子化レベル数である。中央量子化器205のマッピングは、α0(x)と表される。
【0022】
図3aに、例示的な中央量子化器205によって実行されるマッピングについて図示する。量子化される情報信号xによって表されるスカラーソースの候補値を、図3aの軸305に沿って示す。図3aに記述する中央量子化器205は、r個のセル300を有する。中央量子化器の各セル300は、インデックスkが付され、軸305に沿ってセル境界[tk、tk+1)を有する。ここで、kは1とrとの間の整数値であり、tはセル境界のベクトルである。中央量子化器セル300(k)は、中央量子化器が中央量子化器インデックスkにマッピングする情報信号xの候補値を表す。k番目の中央量子化器セル300(k)の長さΔkは、Δk=tk+1−tkである。長さΔkは、多くの場合、セル300(k)の範囲(extent)Δkと称される。各中央量子化器セル300は、関連する再構成点x^kを有し、x^kは実数である。再構成点x^kは、中央量子化器インデックスkの受信に応じて、xの対応サンプルを再構成するための復号器130によって使用される値に対応し、以下ではこれを中央再構成点x^kと称する。
【0023】
中央量子化器205は、典型的には、エントロピー又は分解能(resolution)の何れかの制約の下で動作する。中央再構成点x^kの数が制約されると、中央量子化器205の分解能が制約される。分解能制約型の中央量子化器205の場合、全ての中央量子化器セル205は同一の確率を有し、同一のビット数を使用して各中央量子化器インデックスkが符号化される。従って、分解能制約型の量子化器は、固定レートで動作する。等しい確率の状態は、量子化される情報信号xの値を表す実軸305に沿った可変のセル範囲を使用することによって、実現され得る。分解能制約型の中央量子化器205は、例えば、遅延の影響を受けやすい通信サービスに対して使用できることが有益である。
【0024】
平均レートRaverageを固定すると、中央量子化器205のエントロピーが制約される。従って、平均レートRaverageを特定の時間にわたって固定する限り、瞬時的なレートRは時間とともに変動し得る(エントロピー制約型の中央量子化器は、一般にバッファを必要とし、当該特定の時間は、バッファのサイズに依存する)。エントロピー制約型の中央量子化器205の場合、全ての量子化セル300の範囲Δは同一である。これは、量子化される情報信号xが一様でない確率密度関数を有する通常の状況では、異なる中央量子化器セル300間で確率が変動することを意味する。ビット割当てを最適化するためには、可変長の符号語が好ましくは使用されるべきであり、これはいわゆるエントロピー符号化(例えば、ハフマン符号化、算術符号化等)によって得ることができる。エントロピー制約型の中央量子化器205は、典型的には、一定の遅延が許容され得る通信サービスに使用される。
【0025】
図3bに、分解能制約型の中央量子化器205のマッピングを概略的に図示する。ここで、異なる中央量子化器セル300は、異なる範囲Δkを有し、異なる中央量子化器セル300内に収まる情報信号xの値の確率pは、一定である。インデックスkを記述する符号語の長さbは、各セルについて同一である。図3cに、エントロピー制約型の量子化器205のマッピングを図示する。ここで、異なる中央量子化器セル300は、同一の範囲Δを有し、量子化器セル300(k)内に収まる情報信号xの値の確率pkは、異なる量子化器セル300間で変動する。インデックスkを記述する符号語の長さbkは、異なるセル300間で変動し、符号語kが高い確率を有するほどその長さbkは短くなる。
【0026】
図3に図示する中央量子化器205は、エントロピー制約型の量子化器であり、当該量子化器は高速の意味で最適であって、即ち、中央再構成点x^kは、次式のように各セル300の中央に存在する。

【0027】
分解能制約型の中央量子化器205の場合、中央再構成点x^kは、ソースの確率密度関数p(x)による重み付けを用いて、次式のように算出され得る。

【0028】
図2に戻り、図2の符号化器125はさらに、2つのサイド符号化器210(1)及び210(2)を備え、これらは両方とも、中央量子化器の出力、即ち、マッピングα0(x)によって得られた中央量子化器インデックスk∈{1, .... ,r}を受信する。以下で第1のサイド符号化器210(1)と称されるサイド符号化器210(1)は、中央量子化器205からのインデックスkを、第1のサイド符号化器セルのインデックスk1にマッピングする。以下で第2のサイド符号化器210(2)と称されるサイド符号化器210(2)は、中央量子化器205からのインデックスkを、第2のサイド符号化器セルのインデックスk2にマッピングする。これらのマッピングを、それぞれα1(k)及びα2(k)と称する。第1のサイド符号化器210(1)のセル数をM1と表記し、第2のサイド符号化器210(2)のセル数をM2と表記する。即ち、中央量子化器インデックスkが第1のサイド符号化器210(1)によって受信される場合、第1のサイド符号化器210(1)は、このインデックスkを、第1のサイド符号化器セルのインデックスk1∈{1, .... ,M1}にマッピングする。一方で、同一の中央量子化器インデックスkが第2のサイド符号化器210(2)によって受信される場合、第2のサイド符号化器210(2)は、このインデックスkを、第2のサイド符号化器セルのインデックスk2∈{1, .... ,M2}にマッピングする。説明を簡略化するために、以下では、M1=M2=M、即ち、第1のサイド符号化器210(1)のセル数と第2のサイド符号化器210(2)のセル数とが同一で、MDC符号化器125が対称的であるものと仮定する。しかしながら、本発明は、Mji≠Mjjの場合の多重記述符号化に対して同様に適用可能である。
【0029】
図4に示すように、マッピングα1(k)及びα2(k)は、行列によって図示することができ、以下では、当該行列をインデックス割当て行列400と称する(n次元の場合、情報信号xが、インタフェース115を介して送信されるn個の異なる記述に符号化され、インデックス割当て行列400は、n次元行列となる)。図4のインデックス割当て行列400において、中央量子化器インデックスkの数は44個、即ち、r=44であるのに対して、サイド量子化器セルの数は、各サイド符号化器210について10個、即ちM1=M2=10である。サイド符号化器セルは、一般にαj-1(i)と表記され、ここで、jはサイド符号化器の識別子であり、iはサイド符号化器セルのインデックスkjの値を表す。図4では、インデックス4を有する第1のサイド符号化器のセルαj-1(i)、即ち、α1-1(4)が太線で示されており、これは集合{12, 13, 14, 16, 22}に対応する。従って、中央量子化器インデックスkが、この集合の何れかの値となる場合には、第1のサイド符号化器セルのインデックスは値4となり、k1=4である。中央量子化器インデックスkの、第1及び第2のサイド符号化器セルのインデックスk1及びk2へのマッピングは、サイド符号化器セルのインデックス対(k1, k2)を生じさせる。2次元の多重記述符号化において、サイド符号化器セルのインデックス対は、中央量子化器インデックスkを一意に定める。例えば、図4のサイド符号化器セルのインデックス対(4, 5)は、中央量子化器インデックス16を一意に定める。
【0030】
中央量子化器のセル数rが、サイド符号化器のセル数Mとともに既知である状況では、中央量子化器インデックスkのマッピングα1(k)及びα2(k)は、多数の異なる方法で行われ得る。以下でさらに検討するように、インデックス割当て行列400を埋める種々の方法は、インタフェース115の復号器側において復号された情報信号xに、種々の歪みを生じさせる。上述のように、V.A. Vaishampayanは、非特許文献1において、線形インデックス割当てアルゴリズム、及びネスト型(nested)インデックス割当てアルゴリズムが、一般に歪みの少ない良好な結果を生じさせることを示している。良好であることが同様に証明されている他のインデックス割当てアルゴリズムは、例えば、ヘリンボーン(herringbone)型のインデックス割当て(例えば非特許文献2を参照)、ねじれ型(staggered)インデックス割当て(例えば、非特許文献3を参照)、及び、Balogh型インデックス割当て(非特許文献4)である。図4のインデックス割当て行列400は、ヘリンボーン型インデックス割当てアルゴリズムによって生成されている。
【0031】
インデックス割当て行列400に関する、サイド符号化器のセル数M又は中央量子化器のセル数rの何れか(又は両方)を変更することによって、インデックス割当て行列400を使用する任意の伝送についての冗長度が変化する。それと同時に、ピュアな情報が送信されるレートである基本レートRbase
base=R−Rredundancy (2)
が変化する。ここで、Rは総レートであり、Rredundancyは冗長な情報の伝送に使用される、総レートRの一部である。
【0032】
再び図2に戻り、第1及び第2のサイド符号化器210(1)及び210(2)は、出力215(1)及び215(2)とそれぞれ称される出力215(j)に、それぞれ接続される。図2では、出力215(1)及び215(2)が2つの個別の出力であるように図示しているが、出力215(1)及び215(2)は、同一の物理的な出力215を、交互に使用してもよい(例えば、異なる時間に、又は異なる周波数で、同一の物理的な出力215からの送信を用いることによって、異なる論理的な出力215(1)及び215(2)が実現され得る)。出力215(1)及び215(2)は、インデックスk1及びk2を、インタフェース115のチャネル120(1)及び120(2)をそれぞれ介して符号化器130に送信する。
【0033】
図2の復号器130は、第1及び第2のサイド符号化器210(1)及び210(2)からそれぞれ信号を受信し、かつ、第1及び第2のサイド符号化器インデックスk1及びk2をそれぞれ取り出す、異なる2つの入力220(1)及び220(2)を有する。符号化器125の出力215(1)及び215(2)と同様に、入力220(1)及び220(2)は同一の、又は異なる物理的な入力220を使用してもよい。復号器130はさらに、中央復号器225と、第1のサイド復号器230(1)、及び第2のサイド復号器230(2)とを備える。入力220(1)は、受信したあらゆる第1のサイド符号化器セル・インデックスk1を、第1のサイド復号器230(1)と中央復号器225とに搬送する一方で、第2の入力220(2)は、受信したあらゆる第2のサイド符号化器セル・インデックスk2を、第2のサイド復号器230(2)と中央復号器225とに搬送する。中央復号器225は、中央量子化器インデックスkに対するインデックス対(k1, k2)のマッピングを実行する。典型的には、中央復号器225は、さらに、中央量子化器の再構成点x^kを判定し(式(1a)及び(1b)を参照)、中央復号器225が接続された中央復号器の出力235(0)へ、再構成点x^kを示す信号を出力する。中央量子化器インデックスkから再構成点x^kを判定するために中央復号器225によって実行されるマッピングを、β0(k1, k2)と表記する。サイド復号器230(j)は、受信側の符号化器セル・インデックスkjからサイド符号化器の再構成点x^kj(j)を判定し、サイド符号化器の再構成点x^kj(j)を示す信号を伝達する。サイド符号化器の再構成点x^kj(j)を判定する場合にサイド復号器230(j)によって実行されるマッピングを、βj(kj)と表記する。第1のサイド復号器230(1)は、第1のサイド復号器の出力235(1)に接続され、第2のサイド復号器230(2)は、第2のサイド復号器の出力235(2)に接続される(出力235は同一の、又は異なる物理的な出力を使用してもよい)。
【0034】
中央量子化器205及びサイド符号化器210がエントロピー制約型である場合、各サイド符号化器210は、エントロピー符号化器に接続されるのが有益であり、次いで出力215のうちの1つに対して接続されよう。その場合、復号器230は、2つのエントロピー復号器を備えるのが有益であり、各エントロピー復号器は、入力220(i)に接続され、サイド符号化器セルのインデックスkjを取り出す。
【0035】
図2の符号化器125及び復号器130は、異なる2つの記述を使用する多重記述符号化/復号に適合する。情報信号xについてのn個の記述が使用される場合、符号化器125は、n個のサイド符号化器120を含むであろう。受信され得る、可能性のある記述のサブ集合のそれぞれについて、好ましくは1つの復号器が存在すべきであるため、復号器130は、好ましくは(2n−1)個の復号器225/230を含むであろう。
【0036】
サイド符号化器セルのインデックス対における、第1及び第2のサイド符号化器インデックスk1及びk2の両方が、復号器130によって無事に受信された場合、中央復号器225は、適用可能なインデックス割当て行列400を使用することによって、サイド符号化器セルのインデックス対(k1, k2)に対応する中央量子化器インデックスkを取り出すことができる。取り出された中央量子化器インデックスkの値から、情報信号xについての対応する値として、中央再構成点x^kが得られる(図3aを参照)。
【0037】
妨害は、一般に、伝送インタフェース115において多かれ少なかれ高い頻度で生じ、インタフェース115における損失確率wは、一般に0ではない。サイド符号化器セルのインデックス対(k1, k2)のサイド符号化器インデックスのうち一方のみが受信されている場合、一般に、サイド符号化器セルのインデックス対(k1, k2)に対応する中央量子化器インデックスkを一意に判定することはできない。しかしながら、情報信号xの値に関する情報は、それでも、適用可能なインデックス割当て行列400によって得られる。例えば、図4に示すインデックス割当て行列400の例を参照すると、第1のサイド復号器230(1)が第1のサイド・セル符号化器インデックスk1=4を受信する場合には、中央量子化器インデックスの値は、集合{12, 13, 14, 16, 22}内に収まると判定することができる。サイド符号化器の再構成点x^i(j)(kj=iの場合)と称される、情報信号xについての再構成された値は、中央量子化器インデックスkがこの集合内に収まる条件下で得られよう。典型的には、サイド符号化器の再構成点x^i(j)は、この集合には収まらないものの、サイド符号化器セルαj-1(i)の範囲内には収まる。
【0038】
中央量子化器セル300とは対照的に、サイド符号化器セルαj-1(i)は、典型的には連続区間ではなく、不連続な区間の集合を含む。サイド符号化器セルの範囲は、区間

として定義することができ、j=1, 2はサイド符号化器の識別子であり、iはサイド符号化器セルのインデックスkjの値である。サイド符号化器セルの範囲は、時にサイド符号化器セルの直径と称される場合がある。
【0039】
サイド符号化器セルのインデックス対(k1, k2)のサイド符号化器インデックスのうちの一方のみが復号器130によって受信される場合、サイド符号化器セルのインデックス対によって表される情報信号xの推定値は、サイド符号化器の再構成点x^i(j)から得ることができ、これは次式のように判定することができる。

ここで、jはサイド符号化器の識別子であり、iはインデックス対についての受信側の符号化器セル・インデックスkjの値である。
【0040】
図4のインデックス割当て行列400を完全に埋める場合、量子化器セル300の数はM×Mとなる。これにより、両方のサイド符号化器インデックスk1及びk2が復号器130によって受信されると、基本レートRbaseは、この場合に最大となる。インデックス割当て行列400を完全に埋める場合、一方では冗長度が最小(0)となる。サイド符号化器セルのインデックスk1及びk2の一方のみが復号器130によって受信される場合、受信側の符号化器セル・インデックスkjを生じさせた中央量子化器インデックスkの不確定性は、この状況において高くなる。これは、サイド符号化器セルαj-1(i)における中央量子化器インデックスの数kがその最大値、即ち、Mに等しくなるためである。サイド符号化器セルのインデックスkjを生じさせた中央符号化器インデックスの不確定性は、さらに、中央量子化器インデックスkがサイド符号化器セルにマッピングされるパターンに依存し、当該不確定性は、サイド符号化器セルαj-1(i)の範囲が広い場合、その範囲が狭い場合よりも大きい。他の極限においては、インデックス割当て行列400の1つの対角線のみを埋めることによって、所与の総レートRについて、基本レートRbaseが最小となり、冗長度が最大となる。これは、中央量子化器インデックスkのそれぞれが、サイド符号化器インデックスのそれぞれによって一意に定まるためである。従って、中央量子化器セル300の数rを変更すること、及び、これらr個の中央量子化器セル300をサイド符号化器セルαj-1(i)へマッピングする方法を変更することによって、所与の数Mのサイド符号化器セルαj-1(i)について、冗長度と基本レートRbaseとの間のトレードオフが得られる。あるいは、所与の数rの中央量子化器セル300について、冗長度と基本レートRbaseと間で良好なトレードオフを得るために、サイド符号化器セルαj-1(i)の数Mを変更することができる。
【0041】
符号化器125の冗長度と分解能/エントロピーとは何れも、復号器130によって受信される情報信号xの歪みに影響する。伝送インタフェース115が安定し、送信されたパケットが伝送中にほとんど失われず、又は歪みを受けない状況において、高い基本レートRbase(高い分解能/大きなエントロピー)を得るためには、冗長度を低く保つことが望ましい。しかしながら、伝送インタフェース115が不安定である場合、基本レートRbaseを犠牲にしてより高い冗長度とすることが望ましい。
【0042】
通信チャネル120の安定性は、一般に時間とともに大きく変化するため、冗長度と基本レートRbaseと間のトレードオフを最新の伝送状態に適応させる可能性は、大いに望ましいであろう。インデックス割当て行列の最新の設計法(例えば、非特許文献1を参照)は反復に基づき、この場合、収束するまでに多数の反復回数が必要となる。このため、かかる方法には大きな処理能力が必要となる。従って、これらのインデックス割当て行列の設計法は、一般に、インデックス割当て行列についての、最新の伝送状態へのオンライン適応には適していない。
【0043】
一般に、インデックス割当て行列400は帯行列であり、当該行列のゼロ以外のエントリは対角線状の帯に限定され、当該対角線状の帯は、主対角線と、場合によっては、当該主対角線に対して何れかの側にさらなる対角線とを含む。本発明によれば、情報信号xの送信に使用されるインデックス割当て行列400のバンド幅vの関数として情報信号xのサイド符号化器歪みdjを記述する解析関数を用いて、冗長度と基本レートRbaseと間のトレードオフを特定の伝送状態について最適化することができる。インデックス割当て行列のバンド幅は、行列の帯の測度であり、2次元の場合の正方行列について、当該行列のゼロ以外の要素が限定される、隣接する対角線の数として定義することができる。2以上の次元において、非正方行列について類似のバンド幅vを定義することができる。Mji≠Mjjの場合のインデックス割当て行列400について、当該インデックス割当て行列400のバンド幅は、n次元ベクトルvを用いて表わされるのが有益であり、nは多重記述符号化に使用される記述の数である。ベクトルの成分vj(j=1, .... ,n)は、j番目の次元のインデックス割当て行列400のバンド幅vjを記述する整数である。
【0044】
あるいは、バンド幅vは、インデックス割当て行列400の典型的なサイド符号化器セルαj-1(i)の中央量子化器インデックスkの数として定義することができ、ここで「典型的な」サイド符号化器セルとは、行列の境界(「角」)から十分な距離のサイド符号化器セルを意味する。言い換えれば、バンド幅vは、インデックス割当て行列400のそれぞれ典型的な(角でない)行と列とにおける、ゼロ以外(例えば、線形インデックス割当てアルゴリズムは、ゼロの値となる要素を帯の範囲内に生成し得る。バンド幅vを判定するためには、かかる要素がゼロ以外の要素としてカウントされるべきである。)の中央量子化器インデックスkの数を表す。セル符号化器セルαj-1(i)の数Mが全てのサイド符号化器210について同一であるインデックス割当て行列400において、バンド幅vは、インデックス割当て行列400の帯における対角線の数を記述する。
【0045】
あるいは、インデックス割当て行列400のバンド幅vについて他の定義が使用されてもよい。
【0046】
異なるシナリオにおける多重記述符号化の、冗長度と基本レートRbaseとの間のトレードオフに関する最適化問題は、サイド符号化器の歪みdjの解析関数によって、非常に小さな処理能力コストで解決することができる。かかるシナリオには、例えば、以下のようなものがあるだろう。
A)特定の損失確率wについてのサイド符号化器セルのインデックスkjのエントロピーの制約を条件とした複合歪み(composite distortion)djの最小化
B)特定の損失確率wについてのサイド符号化器210(j)の分解能の制約を条件とした複合歪みdjの最小化
C)サイド符号化器セルのインデックスkjのエントロピーの制約、及びサイド符号化器歪みdjの制約を条件とした中央歪みd0の最小化
D)サイド符号化器210(j)の分解能の制約、及びサイド符号化器の歪みdjの制約を条件とした中央歪みd0の最小化
【0047】
さらなる最適化シナリオを考えることもできる。
【0048】
特定の伝送状態に対してインデックス割当て行列400を最適化するためには、一般に、かかる伝送状態に関する情報が必要である。かかる情報は、典型的には、情報信号xが伝送されるチャネルの品質に関係し、例えば、伝送チャネル120における損失確率w(シナリオA及びB)、サイド符号化器210(j)による伝送用の伝送チャネル120(j)において利用可能な平均レートR(j)average(エントロピーの制約は平均レートRaverageの制約と考えることができる)(シナリオA及びC)、又は、サイド符号化器210(j)による伝送用の伝送チャネル120(j)において利用可能な固定レートR(j)fixed(サイド符号化器120の分解能の制約、即ち、サイド符号化器セルの数Mの制約は、伝送チャネル120(j)において利用可能な固定ビット・レートの制約と考えることができる)(シナリオB及びD)に関係し得る。
【0049】
冗長度と基本レートRbaseとの間のトレードオフに関する最適化問題を解決するためには、中央歪みd0及びサイド符号化器歪みdjを記述する解析関数が非常に有用となる。複合歪みdjは、中央歪みd0とサイド符号化器歪みdjとの重み付け関数である(例えば、損失確率により重み付けする、以下の式(4)を参照)。以下から分かるように、サイド符号化器の歪みは、最適なインデックス割当て行列の帯の測度の観点で表現され得る。
【0050】
複合歪みdj
複合歪みdjは、特定の各サブ集合を受信する確率によって重み付けされる、受信機において受信され得る記述のサブ集合の全候補に起因して生じ得る歪みの総和である。2チャネルの対称的なケースについて、複合歪みdjは、所与の損失確率wについて次式のように(二乗誤差基準を使用して)表すことができる。
j=(1−w)20+2(1−w)wdj (4)
式(4)において、要素(1−w)2は、復号器130に無事に届く、両方のサイド符号化器セルのインデックス(k1、k2)の確率に相当し、2(1−w)wは、一方のサイド符号化器セルのインデックスkjのみが無事に届く確率に相当する。
【0051】
中央符号化器の歪みd0
高いレートを仮定、即ち、中央量子化器インデックスkに対応する中央再構成点x^kが、中央量子化器セル300(k)の中央部に存在するとの仮定(式(1)を参照)の下で、中央量子化器の歪みd0を次式のように表すことができる。

ここで、p(xk)は、中央再構成点x^kにおいて評価されるソースの確率密度関数であり、△kは、中央量子化器セル300(k)の範囲である。
【0052】
漸近的な部分密度量子(asymptotic fractional density quanta)の概念を使用し、積分表現を用いて中央歪みを次式のように評価することができる。

ここで、

であり、△(x)は、再構成点に値xが与えられた場合の、中央量子化器セルの範囲の値を記述する関数である。ステップサイズと称され得る△(x)は、単位長当たりの再構成点(重心)xの局所的な密度に逆比例する関数である。式(6)は、中央歪みを容易に計算可能な値を用いた解析関数である。
【0053】
サイド符号化器の歪みdj
サイド符号化器の歪みdjを記述する解析関数は、以下から分かるように、以下の正当な仮定を設けることによって得ることができる。
1)ソースの確率密度関数は、インデックス割当て行列のサイド符号化器セルの範囲内で一定と近似することができる。あるいは、この仮定は、中央量子化器セルの範囲△kがサイド符号化器セルの範囲内で近似的に一定であるとの仮定として表すことができ、これを高レート仮定(high rate assumption)と称することにする。
2)サイド符号化器の歪みdjを推定することを目的として、インデックス割当て行列400のサイド符号化器セルαj-1(i)内における中央量子化器インデックスkのパターンが、パターン候補の集合のうちの1つであること、及び、異なるサイド符号化器セルのインデックスのパターンが、インデックス割当て行列400内で順序付けられることを仮定する。
【0054】
仮定2)は、サイド符号化器の歪みを推定するために設けられる。しかしながら、中央量子化器インデックスkのインデックス割当て行列400へのマッピングのような、他の目的には、この仮定は一般に使用されないだろう。
【0055】
仮定2)の特殊なケースは、サイド符号化器の歪みを推定することを目的として、サイド符号化器セルの範囲内のインデックスのパターンが、特定のサイド符号化器210について一定であるということを仮定するケースである。説明を簡略化するために、以下ではこの特殊なケースについて考慮する。
【0056】
サイド符号化器210(j)のサイド符号化器歪みdjは、次式によって与えられる。

ここで、

は、情報信号の値xから得られる、サイド符号化器210(j)についてのサイド符号化器再構成点である(式(3)を参照)。
【0057】
式(7)の積分については、容易に解析的に解くことができない。djの値は、先行技術においては、例えば非特許文献1において数値的な方法で導出されている。しかしながら、かかる数値的な方法は、高い処理能力を必要とする。
【0058】
仮定1)の採用
上述の仮定1)を採用することによって、式(7)は次式のように表わすことができる。

ここで、j=1, 2はサイド符号化器の識別子である。
【0059】
サイド符号化器セルαj-1(i)の最小中央量子化器インデックスkとして、mj(i)、即ち、mj(i)=min(αj-1(i))を導入し、

として表わされるインデックス割当て行列400のサイド符号化器セルαj-1(i)内の、中央量子化器インデックスkの正規化パターンとして、hj(i)を導入し、かつ、
情報信号xを、

に置き換えるとともに、サイド符号化器の再構成点x^i(j)

に置き換えることによって、次式を得る。

ここで、△iは、サイド符号化器セルαj-1(i)内の中央量子化器セル300の範囲である。
【0060】
単一のサイド符号化器セルαj-1(i)の歪みは、次式のように
表すことができる。

ここで、|hj(i)|は、集合hj(i)の濃度、即ち、サイド符号化器セルαj-1(i)におけるゼロ以外のインデックスの数である。
【0061】
y^i(j)に関して式(11)を微分することによって、サイド符号化器歪みdjに対する、一方のサイド符号化器セルαj-1(i)の寄与を最小にするy^i(j)に関する次式が生成される。

y^i(j)は、正規化されたサイド符号化器再構成点と考えることができる。対応するサイド符号化器再構成点の値は、

によって得ることができる(上記を参照)。
【0062】
式(12)を式(11)に代入することによって次式が生成される。

従って、式(13)を式(10)に代入することによって、次式のように、サイド符号化器歪みdjが最小化された式が得られる。

ここで、

であり、vは、インデックス割当て行列400のバンド幅である。上述のように、バンド幅vは、行列の境界から十分な距離にある、インデックス割当て行列の列又は行に含まれるゼロ以外の要素の数と考えることができよう。例えば、図4のインデックス割当て行列400の場合、v=5である。
【0063】
仮定2)の採用
式(15)おいて言及され得るように、量子化の係数

は、サイド符号化器セルのインデックスi(即ち、kj)に依存し、これは、インデックスの正規化パターンhi(j)が、一般に、インデックス割当て行列400内において1つのサイド符号化器セルから別のサイド符号化器セルに変化するためである。サイド符号化器セルαj-1(i)の数Mが大きい場合、この依存性は、サイド符号化器の歪みdjの計算を複雑にする。しかしながら、サイド符号化器セルのインデックスiの依存性は、サイド符号化器の歪みdjのためには無視することができ、これにより、インデックス割当て行列400のサイド符号化器セルの範囲内のインデックスの正規化パターンが、同一のサイド符号化器210(j)内において一定であると近似され得る。対称のケースについては、インデックスのパターンは、サイド量子化器インデックスjに依存しない。従って、インデックスhi(j)の正規化パターンは、式(15)において、iに独立のインデックスのパターンh(v)によって置き換えることができる。

h(v)は、インデックス割当て行列400の典型的なパターンであり、このパターンは、行列のバンド幅vに依存するとともに、異なるインデックス割当てアルゴリズム間で異なる。h(v)は、所与のバンド幅vについてサイド符号化器セルαj-1(i)の構成(geometry)を近似し、以下ではインデックスの平均パターンと称される。
【0064】
インデックスの平均パターンh(v)は、インデックス割当て行列400のバンド幅vに依存する。以下では、いくつかの異なるインデックス割当てアルゴリズムについて、インデックスの平均パターンh(v)を与える(式(19)〜(22)を参照)。
【0065】
式(14)及び(16)から、サイド符号化器歪みdjは、△iが小さいという高レートの仮定の下で、以下の積分によって近似され得ることが明らかである。

ここで、

であり、ステップサイズ△(x, v)は、バンド幅vを有するインデックス割当て行列400において、再構成点x^kが値xで与えられているとした場合の、中央量子化器セルの範囲△kを記述する関数である。言い換えれば、△(x, v)は、所与のバンド幅vに対する単位長当たりの再構成点(重心)の、局所的な密度に逆比例する。

は、量子化の係数と考えることができる。
【0066】
式(15)及び(17)は、ネスト型、線形、及びヘリンボーン型のインデックス割当てについて、同様に適用されることに留意すべきである。ねじれ型のインデックス割当ての場合、サイド符号化器の歪みdjは、次式のように表すことができる。

ここで、ねじれ型インデックス割当ての場合、バンド幅はv=2であるため、csは一定であり、かつ、

である。
【0067】
インデックスの平均パターンh(v)についての式を得るためには、線形、ネスト型、ヘリンボーン型、ねじれ型、及びBalogh型を含む大部分のインデックス割当てアルゴリズムについて、ほぼ全てのiに対して|hj(i)|=vであることを認識されたい(これは、v≪Mの場合、境界条件を無視できるためである)。インデックス割当て行列のパターンを検討することによって、いくつかの異なるインデックス割当てアルゴリズムに対し、以下の近似が適用できることがわかる。このような結果に到達し得る方法の一例については付録1に示している。
ヘリンボーン型のインデックス割当ての場合(奇数のv):

ここで、∪は2つの集合の和集合を表す。
ヘリンボーン型のインデックス割当ての場合(偶数のv):

ネスト型のインデックス割当ての場合:

において、

線形のインデックス割当ての場合:

において、

【0068】
式(19)〜(22)を式(16)に入れた場合、以下の式が得られる。
ヘリンボーン型のインデックス割当ての場合(奇数のv):

ヘリンボーン型のインデックス割当ての場合(偶数のv):

ネスト型のインデックス割当ての場合:

線形のインデックス割当ての場合:

ねじれ型のインデックス割当ての場合:
定数csは、

に等しい。
【0069】
式(23)〜(26)のうちの1つを式(17)へ挿入することにより、又は、式(27)を式(18)へ挿入することにより、バンド幅vに依存する、サイド符号化器の歪みdjの解析的な式が得られる。この式は、特定の伝送状態及び制約の下でvの最適値を得るために、式(6)によって与えられる中央歪みd0に関する解析的な式と組み合わせて、最適化シナリオにおいて使用され得る。
【0070】
サイド符号化器歪みdj、及び中央符号化器歪みd0の解析関数は、所与の設計問題への解を導出するために使用できることが有益である。ここで、その解は、インデックス割当て行列400のバンド幅vの値に対応する整数へ、実数かつ正の根が四捨五入され又は切り捨てられ得る多項式をもたらす、多項式の根を求める処理の観点で表現される。
【0071】
付録2において、最適な結果を得るためにバンド幅vの選択に使用される多項式は、インデックス割当て行列400が正方行列である場合、異なる最適化シナリオについて式(6)、(17)、(23)〜(26)から導出される。かかる計算の結果を以下に示す。複合歪みdjの解析式によって導出される他の解析関数は、適切なバンド幅vを決定するために代替的に使用され得る。
【0072】
A/B)エントロピー又は分解能の制約を条件とした複合歪みの最小化
サイド符号化器についてのインデックスのエントロピーに関する制約を条件とした、又は分解能の制約を条件とした、複合歪みdiの最小化は、以下の多項式を生じさせる(何れの最適化問題も同一の多項式をもたらす)。
ネスト型のインデックス割当ての場合:
5wv6−4wv5+8wv3−(37w+8)v2−36wv+96w=0 (28)
線形インデックス割当ての場合:
2wv6−(5w+4)v2+96w=0 (29)
ヘリンボーン型のインデックス割当ての場合(偶数v):
5wv4−2wv3−8wv+8w−8=0 (30)
ヘリンボーン型のインデックス割当ての場合(奇数v):
5wv5−2wv4−20wv2−(35w−8)v−18w=0 (31)
【0073】
このように、損失確率wの特定の値に関して表される特定の伝送状態について、インデックス割当て行列400のバンド幅vの値は、多項式(28)〜(31)のうちの1つの実数かつ正数の根から導出することができる。ここで、根は、四捨五入され、又は切り捨てられることで、バンド幅vに対応する整数になるであろう。
【0074】
多項式(28)〜(31)において、損失確率wは、複数の記述のうちの1つについてのサイド符号化器セルのインデックスkjに関する損失確率として表されるべきである。しかしながら、伝送状態を表現する場合、通信チャネル120を介して送信されるデータパケットの損失確率のような、通信チャネル120上の損失確率wを表す他の方法が使用されてもよい。損失確率wに関するこのような代替的な表現は、多項式(28)〜(31)の係数を決定することを目的として、サイド符号化器セルのインデックスkjの損失確率へ容易に変換され得る。
【0075】
最適化シナリオA)は、典型的には、特定の伝送遅延が許容可能であり、かつ、符号化器125がバッファを備えるシステムにおいて関心を引いており、当該バッファは、中央量子化器205及びサイド符号化器210(j)の少なくとも何れかに関する可変のビット・レートを、伝送チャネル120(j)上で利用可能な固定のビット速度へ適応させることに使用される。
【0076】
最適化シナリオB)は、典型的には、サイド符号化器210が有限の量子化レベル数を有し、かつ、損失確率wが既知であるか、又は推定され得るシステムにおいて関心を引いている。
【0077】
C)サイド符号化器歪み及び速度の制約を条件とした中央歪みの最小化
サイド符号化器210(j)に関するサイド符号化器歪みdj及び速度Rの制約を条件とした中央歪みd0の最小化は、以下の多項式を生じさせる。ここで、g=22(h(x)−R)であり、h(Χ)はソースの差分エントロピーであり、dsは最大限に許容可能なサイド符号化器歪みであり、dj<dsである。
ネスト型のインデックス割当ての場合(奇数のv):

線形のインデックス割当ての場合(奇数のv):

ヘリンボーン型のインデックス割当ての場合(偶数のv):

ヘリンボーン型のインデックス割当ての場合(奇数のv):

【0078】
このように、サイド符号化器210(j)の、特定の利用可能な平均ビット・レートRaverageについて表された特定の伝送状態に対し、インデックス割当て行列400のバンド幅vの値は、特定の最大のサイド符号化器歪みdsについて、多項式(32)〜(35)のうちの1つの実数かつ正数の根から導出され得る。根は、四捨五入され、又は切り捨てられることで、バンド幅vに対応する整数となるであろう。
【0079】
最適化シナリオC)は、典型的には、サイド符号化器210のエントロピーが制約されており、かつ、複数の記述のうちの1つのみが受信される場合に対して再構成の品質に要求条件が存在する場合、即ち、粗すぎる再構成が望ましくない場合において、関心を引いている。最適化シナリオC)によって、1つの記述のみが受信される場合に、保証された最低品質を提供する符号化器/復号器を設計することができる。
【0080】
D)サイド符号化器歪み及びサイド符号化器セルの数Mの制約を条件とした中央歪みの最小化
サイド符号化器歪みdjの制約、及びサイド符号化器セルの数Mの制約を条件とした中央歪みd0の最小化は、以下の多項式を生じさせる。ここで、

である。
ネスト型のインデックス割当ての場合(奇数のv):

線形のインデックス割当ての場合(奇数のv):

ヘリンボーン型のインデックス割当ての場合(偶数のv):

ヘリンボーン型のインデックス割当ての場合(奇数のv):

【0081】
サイド符号化器セルの数Mの最適値は、サイド符号化器インデックスkjが送信される伝送チャネル120(j)における利用可能な固定のビット・レートに依存する。従って、サイド符号化器セルの数Mの制約は、伝送チャネル120(j)における利用可能な固定のビット・レートの制約と考えることができる。このように、特定のサイド符号化器セルの数Mについて表された、又は伝送チャネル120(j)における固定の利用可能なビット・レートRfixedとして表された、特定の伝送状態に対し、インデックス割当て行列400のバンド幅vの値は、特定の最大のサイド符号化器歪みdsについて、多項式(36)〜(39)のうちの1つの実数かつ正数の根から導出され得る。既に整数でない場合、根は、四捨五入され、又は切り捨てられることで、バンド幅vに対応する整数となるであろう。
【0082】
最適化シナリオD)は、典型的には、サイド符号化器210の分解能が制約されており、かつ、複数の記述のうちの1つのみが受信される場合に対して再構成の品質に要求条件が存在する場合、即ち、粗すぎる再構成が望ましくない場合において、関心を引いている。最適化シナリオD)によって、1つの記述のみが受信される場合に、保証された最低品質を提供する符号化器/復号器を設計することができる。
【0083】
概要
特定のインデックス割当てアルゴリズムに適したバンド幅vの値を得るために、多項式(28)〜(39)のうちの1つから得られた根を四捨五入した場合、又は切り捨てた場合、当該特定のインデックス割当てアルゴリズムは、さらに、バンド幅vに制約を加えることがあり、典型的には、バンド幅vが偶数又は奇数の何れであるという制約を加えることがある。切り捨て又は四捨五入は、このようなさらなる制約を考慮に入れることが有益である。さらに、ここで考慮されるインデックス割当てアルゴリズムは、一般に、バンド幅vが1より大きいことを必要とする(v=1の場合、同一の情報が全てのサイド符号化器210によって送信される)。
【0084】
しかしながら、伝送状態が非常に劣悪な場合のような特定の状況下において、伝送リソースの最も有益な使用法は、実際に最大限の冗長度を使用することである可能性があり、それにより、適用可能な多項式は、1つのみのゼロ以外の要素が、インデックス割当て行列400の各列又は各行に使用されるべきであることを示唆する根を有する。本発明の実装において、バンド幅vが1に等しくなるべきであることを指示することによって、各列又は各行に1つのみのゼロ以外の要素(最大限の冗長度)をもたらす特定のインデックス割当てアルゴリズムが適用される。あるいは、バンド幅vが1に等しくなるべきであるという指示が与えられた場合、適用されるインデックス割当てアルゴリズムに適したバンド幅vの値(好ましくは、当該特定のインデックス割当てアルゴリズムに対して適用可能なvに関する最小値)が選択されるであろう。
【0085】
いくつかの設計シナリオについて、バンド幅vとして使用することが可能な根が存在しない場合があり、即ち、バンド幅vがゼロに等しくなることを示唆しない正数かつ実数の根が全く存在しないことがある。使用可能な根が存在しないことは、典型的には、設計シナリオの制約が厳しすぎることを示唆する。その場合、制約を変更し、又は、バンド幅vに関する最小の使用可能な値を使用する等の、適切な手段が利用され得る。
【0086】
図5は、本発明によるインデックス割当て行列の設計法を概略的に図示する。ステップ500で、伝送状態情報を受信する。通信ネットワーク内のノードにおいて本方法がオンラインの状況で実行される場合、通信ネットワーク内の別のノードから、又は、当該ノード内の伝送状態判定ユニットから、伝送状態情報が受信され得ることが有益である。伝送状態と最適バンド幅vとの関係を判定するために本方法がオフラインで実行される場合、伝送状態情報は、例えば、メモリ、外部ソース、又は内部プロセスから受信され得る。
【0087】
ステップ503で、設計対象のインデックス割当て行列400のバンド幅vは、インデックス割当て行列400を用いた符号化の対象となる情報信号xが伝送されるチャネル120(j)の伝送状態に関する伝送状態情報に依存して選択される。このような伝送状態情報は、例えば、損失確率wに関する情報、利用可能な平均ビット・レートRaverage、利用可能な固定ビット・レートRfixed、サイド符号化器歪みdsの制約、又は中央歪みd0の制約を含み得る。伝送状態情報は、例えば、通信ネットワーク100内のネットワーク・ノード、又は運用・管理ノード(Operation and Management node)によって受信されてもよく、かつ、通信ネットワーク100内の最新の状況に基づいていてもよく、又は、例えば、それ以前の経験から導出されていてもよい。
【0088】
好都合なバンド幅vが選択されている場合、ステップ505に入り、当該選択されたバンド幅vを有するインデックス割当て行列400が既知のアルゴリズムによって設計される。即ち、サイド符号化器210(j)のサイド符号化器セルαj-1(i)の数Mjが既知である場合、中央量子化器セル300の数rがバンド幅vから決定され、その逆も同様である。r個の中央量子化器インデックスkは、次に、選択されたインデックス割当てアルゴリズムに従って、インデックス割当て行列内に割り当てられ得る。中央再構成点x^kは、サイド符号化器の再構成点x^i(j)と同様、上述のように決定され得る。
【0089】
図6aでは、バンド幅vを選択するステップ503の実施形態についてより詳細に図示する。図6に図示したステップ503の実施形態において、ステップ503は、ステップ600〜615を含む。ステップ600で、サイド符号化器歪みdjを判定するために、サイド符号化器セルαj-1(i)におけるインデックス・パターンが、インデックス割当て行列400内でおおよそ一定であることを仮定し、即ち、インデックス・パターンが、サイド符号化器セルのインデックスkjの値iに対しておおむね独立であることを仮定する(式(19)〜(22)を参照)。ステップ605で、高レート近似、即ち、ソースの確率密度関数p(x)が、インデックス割当て行列400のサイド符号化器セルの範囲内で一定であるものと近似され得ることが、仮定される(式(8)を参照)。ステップ610で、サイド符号化器歪みdjに関する解析式が、ステップ600及び605においてなされた仮定の下で決定される(式(17)を参照)。ステップ615で、特定の最適化シナリオに対して好都合なインデックス割当て行列400のバンド幅vが、サイド符号化器歪みdjの解析式と伝送状態情報とを使用して選択される(式(28)〜(39)を参照)。
【0090】
図6aのステップ600で、サイド符号化器歪みdjを推定することを目的として、サイド符号化器セルαj-1(i)内の中央量子化器インデックスkのパターンが、インデックス割当て行列400内で一定であることが仮定される。これは、上記の仮定2)に関する特殊なケースである。一般的なケースでは、インデックス割当て行列400のサイド符号化器セルαj-1(i)内の中央量子化器インデックスkのパターンが、可能性のあるパターンの集合のうちの1つであると仮定され、かつ、異なるサイド符号化器セルのインデックス・パターンが、インデックス割当て行列400内で順序付けられていると仮定される。以下では、図6aを参照する場合、ステップ600に関する一般的なケース及び特殊なケースの両方を参照する。
【0091】
図6aは、多重記述符号化理論に対してなされた独創的ないくつかの仮定を示しており、これらの仮定は、バンド幅vの適切な値、又は最適な値が解析関数を用いて得られる点で、インデックス割当て行列の設計を簡略化することが、明らかとなっている。サイド符号化器歪みに関する解析関数を得る他の方法も考えられ得る。
【0092】
一方で、図6bは、適切な又は最適なバンド幅vに到達するために解析関数(このケースでは多項式)を解く方法を示す。
【0093】
図6bの方法は、図5のステップ503の実施形態を図示する。図6bは、ステップ620〜630を含む。ステップ620で、適切なバンド幅vを選択するために使用される多項式が、伝送状態情報に依存して決定される(例えば、式(28)〜(39)を参照)。式(28)〜(39)の多項式は、図6のステップ600〜610の方法を使用して全て導出している。あるいは、他の適切な多項式を使用してもよい。ステップ625で、ステップ620において決定される多項式に関する使用可能な根が決定される。ここで、使用可能な根は、実数かつ正数の根であり、好ましくは1より大きい根である。ステップ630で、この使用可能な根からバンド幅vが選択される。最も単純なケースは、バンド幅が、ステップ625で決定された根の、四捨五入された値、又は切り捨てられた値として与えられる場合である。しかしながら、一部のケースでは、上述のように、インデックス割当て行列の設計に使用するインデックス割当てアルゴリズムは、バンド幅vに制限を与えることがあり、その場合、ステップ630の選択では、このような制限が考慮されることが有益であろう。
【0094】
図6a及び図6bに図示したバンド幅vを選択する実施形態は、送信ノード105及び受信ノード110の少なくとも何れかにおいてオンライン形式で実行することができよう。その場合、最新の伝送状態を反映する伝送状態情報は、通信システム100内の別のネットワーク・ノードから、送信/受信ノードによって受信されることが有益であろう。あるいは、当該選択処理は、種々の伝送状態に適したバンド幅vに関する図6a及び図6bの方法に従ってオフラインで実行することができる。このようなオフライの選択処理の結果は、送信ノード105及び受信ノード110の少なくとも何れかについてアクセス可能であり、例えば、テーブル又はその他の任意の適切な記録フォーマットに格納され得る。表1にはこのような結果の一例を示し、最適かつ許容可能なバンド幅vが、異なる損失確率wの値に対して与えられている。このようなテーブルにおける損失確率wの値は、離散値、又は値の範囲の何れかで表され得る。
【0095】
【表1】

【0096】
送信ノード105及び受信ノード110の少なくとも何れかが、表1に示すような種々の伝送状態に対するバンド幅vの事前選択値にアクセスする場合、図5に示す方法のステップ503は、送信/受信ノード105/110において、与えられた伝送状態に対して適したバンド幅vをルックアップすることによって実行され得る。これを図6cに示す。
【0097】
図5のステップ503は、図6cに示すようにステップ635〜645を含む。ステップ635で、適切なバンド幅vに関連付けられた、格納された伝送状態に関する値にアクセスする。ステップ640で、適切なバンド幅が選択される伝送状態の値が、伝送状態の格納値と比較される。ステップ645で、当該比較処理において最も良好な候補(match)を提供する当該格納された伝送状態に対して関連付けられたバンド幅vが、適切なバンド幅vとして選択される。種々の最適化シナリオ及び種々のインデックス割当てアルゴリズムの少なくとも何れかのために、種々のテーブル/記憶装置を使用することができ、テーブル/記憶装置に格納された種々の値は、種々の多項式から得られるであろう。
【0098】
通信システム100における本発明の一実装において、ステップ505では、インデックス割当て行列400を設計するために、予め定められたインデックス割当てアルゴリズム(例えば、線形アルゴリズム、ネスト型アルゴリズム)が使用され得る。この実装では、特定の最適化シナリオについて、vの値を得るために、好ましくは、予め定められたインデックス割当てアルゴリズムに対応する予め定められた多項式(例えば、式(28)〜(39)によって与えられた多項式のうちの1つ)が使用され得る。このため、当該予め定められた多項式から得られたバンド幅vを有するインデックス割当て行列400は、当該予め定められたインデックス割当てアルゴリズムに従って設計されよう。
【0099】
本発明の別の実装では、使用されるインデックス割当てアルゴリズムは伝送状態に依存し得る。最適なインデックス割当てアルゴリズムは伝送状態に依存し、特に、最適なインデックス割当てアルゴリズムはバンド幅vの値に依存することが分かる。表2は、最適なインデックス割当てアルゴリズムを、種々のバンド幅vの値についてリストしている。
【0100】
【表2】

【0101】
バンド幅vの値を得るために、関心を引いている特定の最適化問題に対して、予め定められた多項式を使用することができ、その場合、取得されたバンド幅vの値について最適なインデックス割当てアルゴリズムを、表2に従って選択することができよう。あるいは、それぞれがインデックス割当てアルゴリズムに関連し、かつ、それぞれが関心を引いている最適化問題に関連する様々な多項式を解くことができよう。その場合、対応する多項式がvの最小値を与えるインデックス割当てアルゴリズムを、インデックス割当て行列400の設計に使用するインデックス割当てアルゴリズムとして選択することができよう。2つ以上の多項式/インデックス割当てアルゴリズムがvの最小値を生じさせる場合、バンド幅vに関する所与の値に対して好ましいインデックス割当てアルゴリズムが、インデックス割当て行列400の設計用に選択されることが有益であろう(表2を参照)。
【0102】
図7は、バンド幅選択ユニット705を備える装置700の概略図である。装置700は、例えば、符号化器、復号器、符号化器若しくは復号器を備えるユーザ装置、符号化器若しくは復号器を備えるネットワーク・ノード、又は、インデックス割当て行列400の、種々の伝送状態に対して最適なバンド幅vを計算するバンド幅計算デバイスであればよい。
【0103】
バンド幅選択ユニット705は、特定の伝送状態の下でインデックス割当て行列400に適したバンド幅を選択する。バンド幅選択ユニット705は、伝送状態情報を示す信号720を受信する入力部710と、適切なバンド幅vを示す信号725を出力する出力部715とを備える。
【0104】
図8aは、バンド幅選択ユニット705の一実施形態示す。図8aのバンド幅選択ユニット705は、多項式生成ユニット800と、根決定ユニット805と、出力信号生成ユニット810とを備える。多項式生成ユニット800は、入力部710に接続され、伝送状態情報を示す信号720を受信する。さらに、多項式生成ユニット800は、受信した伝送状態情報に基づいて、バンド幅の選択に適するであろう多項式を生成する。このような多項式は、例えば、式(28)〜(39)のうちの1つから導出できよう。この実施形態に係る本発明のいくつかの実装において、多項式生成ユニット800は、伝送状態情報に基づいて、例えば、同一の最適化シナリオであるが異なるインデックス割当てアルゴリズムに関連する2つ以上の多項式、同一のインデックス割当てアルゴリズムであるが異なる最適化シナリオに関連する2つ以上の多項式、又は、任意の多項式の集合のような、2つ以上の多項式を生成する。多項式生成ユニット800は、さらに好ましくは、多項式生成ユニット800によって生成される(単数又は複数の)多項式を示す信号を出力する。
【0105】
多項式生成ユニット800の出力部は、好ましくは、多項式生成ユニット800によって生成された多項式についての使用可能な根を決定する根決定ユニット805に接続される(使用可能な根は、本明細書において実数で、かつゼロよりも大きな根である)。根決定ユニット805は、バンド幅選択ユニット705の出力部715に接続される。本発明のこの実施形態についての一態様では、根決定ユニット805は、使用可能な根についての実際の値(actual value)を示す信号を生成する。その場合、バンド幅vの値は、バンド幅選択ユニット705の別の構成要素、又はインデックス割当て行列の設計に使用される別のデバイスの何れかによって、別の場所において根の値に基づいて選択され得る。後者の場合、バンド幅選択ユニット705から出力される信号725は、選択されたバンド幅vを明示的には示唆せず、むしろ、適切なバンド幅vが導出され得る根の値を示唆することによって、このような選択されたバンド幅vを黙示的な手法で示唆するであろう。この実施形態についての別の態様では、根決定ユニット805は、バンド幅vに対応する、根が四捨五入され、又は切り捨てられた値を示す信号を生成する。
【0106】
多項式生成ユニット800が、特定の伝送状態の値について2つ以上の多項式を生成する場合、出力信号725は、これらの多項式のそれぞれについてバンド幅vの値を示してもよい。あるいは、出力信号725は、好ましくは多項式がこの値を生じさせたについての情報とともに、最も有益なバンド幅vの値を示してもよい。
【0107】
図8bは、バンド幅選択ユニット705の代替的な実施形態を示し、バンド幅選択ユニット705は、メモリ815と称されるデータ記憶媒体815にアクセスし、そこに、関連するバンド幅vの値とともに、種々の伝送状態の値を蓄積する。メモリ815は、任意のタイプのデータ記憶媒体でよい。図8bには、メモリ815がバンド幅選択ユニット705の一部であるように示している。あるいは、メモリ815は、バンド幅選択ユニット705の外部にあるメモリであって、バンド幅選択ユニット705がアクセスするメモリであってもよい。この実施形態では、バンド幅選択ユニット705は、信号720で受信される伝送状態情報と、メモリ815に格納された種々の伝送状態の値とを比較するとともに、メモリ815内において、受信した伝送状態情報に最も良好にマッチする格納された伝送状態の値に関連付けられたバンド幅vの値を、バンド幅vとして選択する。
【0108】
図9は、行列設計ユニット900とバンド幅選択ユニット705とを備える装置700の実施形態を概略的に示す。バンド幅選択ユニット705の出力部715は、行列設計ユニット900の入力部に接続される。行列設計ユニット900は、インデックス割当て行列400についての適切なバンド幅vを示す信号725に依存して、インデックス割当て行列400を設計する。行列設計ユニット900の出力は、マッピング関数α1(k)及びα2(k)と、図2のサイド符号化器210及び復号器225/230についてのマッピング関数β0(k1, k2),β1(k1)及びβ2(k2)との、少なくとも何れかを決定するために使用される。図9の装置700は、例えば、符号化器125又は復号器130の制御ユニットの一部であってもよい。
【0109】
図9の構成は、特に、情報信号xの多重符号化に使用されるインデックス割当て行列400のバンド幅vを最新の伝送状態に合わせて適応させる本発明の適用に適している。
このような適用において、伝送状態情報を示す信号720は、例えば、運用・管理ノード、バンド幅選択ユニット705が送信ノード105の一部である場合における受信ノード110、バンド幅選択ユニット705が移動通信のユーザ装置の一部である場合における無線基地局等の、通信システム100における最新の伝送状態に関する知識を有するノードから発生することが有益である。より明示的な例は、以下のとおりである。損失確率wが、受信ノード110において推定され得るとともに、送信ノード105に伝達され得る。損失確率wが、ネットワーク・ノードにおいて推定され得るとともに、送信ノード105に伝達され得る。利用可能なビット・レートに関する情報が、送信ノード105によって判定され、又はネットワーク・ノードから送信ノード105に伝達され得る。記述を受信するユーザ、即ち、受信ノード110が、中央符号化器及びサイド符号化器の歪みを調整することを送信ノード105に要求してもよい。
【0110】
バンド幅vの選択より後の時間にインデックス割当て行列400の設計が実行される本発明の適用において、伝送状態情報を示す入力信号720は、例えば、バンド幅選択ユニット705が装置の一部を構成する装置700内部のプロセスから、手動で入力された値から、格納された値から、又は、最新の伝送状態及びそれ以前の伝送状態の少なくとも何れかに関する知識を有するノードから、発生し得る。
【0111】
送信ノード105及び受信ノード110の一方のみが伝送状態情報を受信する場合、伝送状態情報を示す信号、及び伝送状態情報に応じて選択されたバンド幅vの最適値を示す信号の少なくとも何れかが、好ましくは、送信ノード105及び受信ノード110の他方に送信されるべきである。このようにして、符号化器125及び復号器130の両方が、同一のインデックス割当て行列400に従って動作し、それにより、中央量子化器インデックスkのサイド符号化器インデックスMjへの同一のマッピングに従って動作することを確実にする。
【0112】
バンド幅選択ユニット705は、行列設計ユニット900と同様に、適切なコンピュータソフトウェア及びハードウェアの少なくとも何れかによって実装され得ることが有益である。
【0113】
上記では、本発明について、j=2及びM1=M2の場合における正方の割当て行列400関して説明してきたが、本発明は、あらゆるjの値について、Mji≠Mjjであるインデックス割当て行列を用いた情報信号xの符号化に大して、同様に適用することができる。その場合、それに応じて、上記で例を用いて提供した式の一部を修正しなければならない。例えば、インデックスの平均パターンh(v)は、jに依存してh(v)=h(j)(v)となるであろうし、その結果、好ましくは、システムに存在するであろう各サイド符号化器セルについて別々であると考えるべきである。さらに、好ましくは、複合歪みdjに寄与する、起こり得る歪みを正確に反映するように、コスト関数(式(4)を参照)を調整すべきである。
【0114】
同様に、上述の説明では、本発明について、中央量子化器インデックスkが異なる2つのサイド符号化器セルαj-1(i)にマッピングされる2次元符号化を、主として説明してきた。しかしながら、本発明は、3つ以上の記述を使用する多重記述符号化についても同様に良好に動作する。それに応じて、上記で提供した式の一部を修正しなければならない。例えば、インデックス割当て行列のバンド幅は、典型的には、バンド幅ベクトルvによって記述されるであろうし、式(16)に対応する解析関数は、各伝送チャネル120(j)について導出され得るであろう。しかしながら、同一のレートR及び同一の損失確率wがあらゆる伝送チャネル120(j)に適用される対称のケースにおいては、最適化問題を、バンド幅vのスカラー値を見出すことに変形させることは可能だろう。
【0115】
上記では、説明のために、スカラー・ソースxの符号化/復号に関して本発明を説明した。しかしながら、本発明はまた、ベクトル・ソースxの符号化/復号に対しても適用することができる。
【0116】
中央歪みd0及びサイド符号化器歪みdjについての解析式に関する上記の導出では、高レートの符号化を仮定した。しかしながら、レートは、上記の導出において正当化される当該高レートの仮定のために、特に速い必要はない。例えば、(分解能を制約型のケースにおいて)各サイド符号化器セルのインデックスkjが3ビットで表される場合に、高レートの家庭の適用は良好な結果を生じさせ、その結果、8*8個のエントリの、最大サイズのインデックス割当て行列400となる。典型的には、インデックス割当て行列400のサイズは、8*8より多い、例えば128*128個、又は256*256個のエントリである。
【0117】
本発明に係る多重記述符号化は、パケット損失確率がゼロではないパケット交換ネットワークを介した通話又は映像のような、音声情報及び視覚情報の少なくとも何れかの伝送用と、例えば、無線インタフェースを介した無線信号の伝送のような、信号のフェージングが問題となり得るシナリオにおける信号の伝送用とに、使用することが有益であろう。
【0118】
<付録1> インデックス割当て行列におけるインデックス・パターンの近似
以下では、ネスト型インデックス割当てアルゴリズムについて、平均インデックス・パターンh(v)を導出する。ネスト型インデックス割当てアルゴリズムは、説明用の例としてのみ使用され、平均インデックス・パターンh(v)は、任意のインデックス割当てアルゴリズムのために導出され得る。
【0119】
目的は、「平均」サイド量子化器セルの構成(geometry)に関する信頼性のある推定値を得るために、ネスト型インデックス割当てによって作成されるパターンを近似することである。当該近似は、サイド符号化器セル内の再構成点の最適位置を推定するために必要とされ、サイド符号化器歪みを判定する場合に使用される。サイド符号化器の再構成点の存在する場所の推定値、及び、それによりサイド量子化器歪みの妥当な推定値を得るために、サイド符号化器セルの構成に関する妥当な推定値を得るのに十分な精度を有するインデックス・パターンを記述する公式となる、多くの可能性のある近似が存在する。
【0120】
インデックスの正規化パターンは、インデックス割当て行列の特定の行(又は列)を考慮し、かつ、行内の最小要素を他の要素から減算することによって得られる整数のシーケンスであると考えられる。
【0121】
平均インデックス・パターンh(v)の近似を得るために、以下の仮定を行う。
1)インデックス割当て行列400におけるパターンは周期的に現れ、生じ得るパターンの数は有限であり、そのため、平均的なパターン又は典型的なパターンを考慮することに意味がある
2)本明細書では、対称のケースを考慮し、そのため、当該パターンは行と列に沿って同一であると仮定する。非対称のケースへの拡張は容易である。非対称かつ2チャネルのケースにおいて、近似は、インデックス割当て行列の全ての行と列とについて個別に行うことが有益であろう。
3)当該パターンは、インデックス割当て行列400のバンドを記述するパラメータに関して平均化及び表現され得る。
【0122】
図10では、ネスト型インデックス割当てについてのインデックス割当て行列(左)と、対応するサイド・セル・パターン(右)との一例を与える。
【0123】
図10の左側には、5つの対角線を有するネスト型インデックス割当てのインデックス割当て行列400を示す。同図の右側には、対応するサイド符号化器セル・パターンを示す。当該パターンは、インデックス割当て行列にわたって変化するものの、1つのサイド・セルから別のサイド・セルへ移行する場合にはほとんど同一であることが分かる。次に、複数のセルがインデックス割当て行列の複数の行によって表される、サイド符号化器を考える。次のステップにおいて、行列の角の境界効果を無視することに注意されたい。v=5の場合、次の複数のパターン{0, 2, 6, 8, 10}、{0, 3, 7, 8, 10}、{0, 4, 7, 8, 10}、{0, 3, 6, 8, 10}が現れる。パターンのシーケンスは周期的に現れる。さらに、連続的なパターンは、大きくは変化せず、これらのパターンの重心は、ほぼ同一の位置である。その結果、これらのパターンを平均化して、{0, 3, 6, 8, 10}を得ることができる。平均パターンは、整数の要素のみを含むべきである。平均パターンの要素が整数ではない場合、この要素は、好ましくは四捨五入され、又は切り捨てられるべきである。
【0124】
次に、インデックス割当て行列400のバンド幅vに関してかかるパターンを表現したい。
【0125】
異なるvの値について、かかる平均パターンを見出すことができる。例えば、ネスト型インデックス割当ての場合、以下のパターンがある。
a)v=3;{0, 1, 3}
b)v=5;{0, 3, 6, 8, 10}
c)v=7;{0, 5, 10, 15, 17, 19, 21}
d)v=9;{0, 7, 14, 21, 28, 30, 32, 34, 36}
e)v=11;{0, 9, 18, 27, 36, 45, 47, 49, 51, 53, 55}
【0126】
パターンを観察することによって、インデックス・パターンをvに関して表現することができる。平均インデックス・パターンh(v)と称される、この平均パターンを記述する一般式が次式のように得られる。

ここで、

である。なお、当該パターンは、vのみに依存する要素の集合として表されていることに注意されたい。
【0127】
<付録2> 様々な最適化シナリオ(2次元の対称的なケース)
歪みに関する以下の定義を使用する。
1)複合歪み(2次元の対称的なケース)
t=(1−w)20+2w(1−w)ds
2)中央歪みd0
3)サイド歪みds
【0128】
以下の式を使用してサイド量子化器のエントロピーの制約を表現する:
既知のpdf p(x)を有する連続的なソースについて、差分エントロピー

を見出すことができる。Ρ(kj)がサイド量子化インデックスkjの確率である場合(ここでjはサイド符号化器を特定する)、エントロピーの定義

を使用することによって、エントロピーの制約を以下のように表すことができる。

【0129】
以下の定式化を使用して分解能の制約を表現する:
対称のケースにおいて、各サイド量子化器は、正確にはM個の再構成点を有する。単一のサイド量子化インデックスを伝達するために使用されるレートをRとする。このことは、M=2Rであることを意味する。
【0130】
以下で種々の最適化シナリオを考慮する:
A)エントロピーの制約に従う複合歪みの最小化
形式的には、当該問題は、H=Rを条件として、
mindt (A2:2)
と記述し得る。ここで最小化が実行される。
【0131】
最適化問題は、以下のLagrangianを使用して最適化問題を次式のように書くことができる。

【0132】
以下のコスト関数についてのEuler-Lagrangeの方程式は、

であり、 △(x, v)はxに依存しないことが分かる。
【0133】
ネスト型、線形、及びヘリンボーン型のインデックス割当ての場合の方程式を解くことによって、次式を得る。

ねじれ型インデックス割当ての場合、
Δ=2h(X)-R-1 (A2:6)
これらの結果を使用して、複合歪みを次式のように書くことができる。

vについて上式を微分することによって、vについて最適化することができる。

いくつかの代数処理の後、詳細な説明の一変量多項式(28)〜(31)が得られる。
【0134】
B)サイド符号化器の分解能の制約を条件とした複合歪みの最小化
設計の問題は、以下のように定式化できる。

を条件として、
mindt(v, w) (A2:9)
この設計の問題は、次式のLagrangianの定式化に対応する。

これは次式のEuler-Lagrangeの方程式となる。

【0135】
△(x, v)について解くことによって、次式の結果が得られる。

中央符号化器の歪みは、

によって表すことができ、その結果、サイド符号化器の歪みの式は、

となる。
【0136】
考慮されるべきあらゆるインデックス割当てアルゴリズムについて、最適バンド幅vを導出することが可能である。以下の式を使用する。

ここで、

である。
【0137】
(A2:15)は、式(A2:7)と同一の構成を有する。このため、分解能制約型の場合について最適なバンド幅vを計算するための多項式は、エントロピー制約型の場合と同一であり、これらは詳細な説明の式(28)〜(31)によって与えられる。
【0138】
C)サイド符号化器の歪み及びサイド符号化器のエントロピーの制約を条件とした中央歪みの最小化
この設計の問題は、以下のように表すことができる。dsが許容可能な最大のサイド符号化器歪みである場合に、
j<ds, j=1,2
H=R
を条件として、
mind0 (A2:17)
【0139】
インデックス割当ては、正の単調増加関数である関数f(v)を特徴とすることを思い出す。f(v)が与えられると、(両方の両サイド符号化器について等しく)サイド歪みdjが詳細な説明の式(17)によって与えられ、中央歪みd0が詳細な説明の式(6)によって与えられる。前述の式を使用して、考慮される問題に対するEuler-Lagrangeの方程式を構築することができる。
このEuler-Lagrangeの方程式は、

であり、これは、最適シナリオA)のように、
Δ(x,v)=Δ(v)=定数 (A2:19)
を意味する。上記の結果をレート制約の方程式に代入することによって、次式を得る。

上記の結果は、サイド歪みの制約を解決することを可能にする。このサイド歪みの制約は、

となる。直前の方程式は、関数f(v)に依存する。不等号を等号に変更することによって、vついて最適化され得るvの関数を得るとともに、その結果、多項式となる。いくつかの異なるインデックス割当てアルゴリズムについて(A2:21)から得られた多項式は、詳細な説明の式(32)〜(35)によって与えられる。
【0140】
D)サイド歪み及びサイド量子化器の制約を条件とした中央歪みの最小化
この設計の問題は、以下のように表すことができる。
mind0 (A2:22)
ただし、
j<ds, j=1,2

を条件とする。
【0141】
このため、最適化される拡張された基準は、

である。対応するEuler-Lagrangeの方程式は、

である。最適化問題を解決することができ、次式がもたらされる。

ここで、

である。
【0142】
(A2:26)は、関数f(v)に依存する。不等号を等号に変更することによって、vについて最適化され得るvの関数を得るとともに、その結果、多項式となる。いくつかの異なる指標割当てアルゴリズムについて結果として生じる多項式は、詳細な説明の式(36)〜(39)によって与えられる。
【0143】
上記で検討した最適化シナリオにおいて、式(A2:2)、(A2:9)、(A2:17)及び(A2:22)によって表される歪みの最小化は、最適化シナリオに関するあらゆるマッピング関数(α0, α1, α2, β0...)の集合に対して実行されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報信号の多重記述符号化に使用されるインデックス割当て行列を設計する方法であって、
前記情報信号についての記述を伝送可能な通信チャネルの伝送状態に関する伝送状態情報に依存して、前記インデックス割当て行列に関するバンド幅を選択するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
バンド幅を選択する前記ステップは、
多項式の根を決定するステップを含み、
前記多項式の係数は、前記伝送状態情報に依存して定義されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インデックス割当て行列は、2次元の正方行列であり、
前記多項式は、
ネスト型インデックス割当ての場合、
5wv6−4wv5+8wv3−(37w+8)v2−36wv+96w
線形インデックス割当ての場合、
2wv6−(5w+4)v2+3w
偶数のvに関するヘリンボーン型インデックス割当ての場合、
5wv4−2wv3−8wv+8w−8
奇数のvに関するヘリンボーン型インデックス割当ての場合、
5wv5−2wv4−20wv2−(35w−8)v−18w
であり、
vは、前記インデックス割当て行列の前記バンド幅であり、
wは、前記インデックス割当て行列を用いて得られる前記情報信号についての複数の記述が伝送される通信チャネルにおける損失確率であること
を特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インデックス割当て行列のバンドの決定は、解析関数を用いて実行され、
前記解析関数は、以下の仮定の下に得られた、複数のサイド符号化器の歪みに関する解析的な推定値から導出され、
前記仮定は、
前記サイド符号化器の歪みを推定するために、前記インデックス割当て行列のサイド符号化器セルにおける複数のインデックスに関するパターンは一定であると近似できること、及び
前記複数のサイド符号化器の歪みについて高レートの近似を使用できること
を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記インデックス割当て行列は、2次元の正方行列であり、
前記解析関数は、以下の式、

から導出され、
vは前記バンド幅であり、

は量子化係数であり、
kは中央量子化器セルのインデックスであり、
h(v)はサイド符号化器セルの複数のインデックスに関する正規化パターンであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
バンド幅を選択する前記ステップは、
伝送状態の候補値のテーブルに対応する情報と、それに対応する適切なバンド幅の値とを格納するメモリにアクセスするステップと、
バンド幅が選択される前記伝送状態情報と、前記メモリに格納された前記伝送状態の前記候補値とを比較するステップと、
前記メモリに格納された前記情報に従って前記バンド幅を選択するステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
選択された前記バンド幅を前記インデックス割当て行列が有するようにするインデックス割当てアルゴリズムを用いて、前記インデックス割当て行列を設計するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
選択された前記バンド幅に依存して前記インデックス割当てアルゴリズムを選択するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記伝送状態情報は、伝送状態を示す少なくとも1つの信号として、通信ネットワーク内のノードから受信されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
多重記述符号化によって情報信号を符号化する方法であって、
前記情報信号についての、少なくとも異なる2つの記述を得るために、請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法に従って設計された前記インデックス割当て行列を、前記情報信号の表現に適用するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
多重記述符号化に従って符号化された情報信号を復号する方法であって、
前記情報信号についての、少なくとも1つの記述を受信するステップと、
前記情報信号の再構成値を得るために、請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法に従って設計された前記インデックス割当て行列に少なくとも1つの記述をマッピングするステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
情報信号の多重記述符号化に使用されるインデックス割当て行列の設計に使用する装置であって、
前記インデックス割当て行列のバンド幅を示す信号を生成するバンド幅選択ユニットを備え、
前記バンド幅選択ユニットは、
前記情報信号についての記述を伝送可能な通信チャネルの伝送状態を示す伝送状態情報を受信する入力部を有し、
前記伝送状態情報に依存して前記バンド幅を示す前記信号を生成し、
前記バンド幅を示す前記信号を出力する出力部を有すること
を特徴とする装置。
【請求項13】
前記バンド幅選択ユニットは、
前記伝送状態情報に依存して係数が定義された多項式を生成する手段と、
前記多項式の根を決定する手段と
を備え、
前記出力部は、前記多項式の根に依存して出力信号を生成すること
を特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記バンド幅選択ユニットは、
伝送状態の候補値のテーブルに対応する情報と、対応する適切なバンド幅の値とを格納するメモリにアクセスし、
受信された前記伝送状態情報と、前記メモリに格納された前記伝送状態の前記候補値とを比較し、
前記メモリに格納された情報に従って前記バンド幅を選択すること
を特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項15】
選択された前記バンド幅を前記インデックス割当て行列が有するようにするインデックス割当てアルゴリズムを用いて、前記インデックス割当て行列を設計する手段をさらに備えることを特徴とする請求項12乃至14の何れか1項に記載の装置。
【請求項16】
さらに、前記バンド幅に依存して前記インデックス割当てアルゴリズムを選択することを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記出力部は、さらに、前記バンド幅が選択された前記伝送状態を示す信号を出力することを特徴とする請求項12乃至16の何れか1項に記載の装置。
【請求項18】
請求項12乃至17の何れか1項に記載の装置を備える符号化装置。
【請求項19】
請求項12乃至17の何れか1項に記載の装置を備える復号装置。
【請求項20】
請求項18に記載の符号化装置、及び請求項19に記載の復号装置の少なくとも何れかを備えるユーザ装置。
【請求項21】
請求項18に記載の符号化装置、及び請求項19に記載の復号装置の少なくとも何れかを備えるネットワーク・ノード。
【請求項22】
請求項14乃至17の何れか1項に記載の装置であって、
前記入力部は、通信システム内のノードから前記伝送状態情報を受信することを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項13乃至18の何れか1項に記載の装置を備える通信システム。
【請求項24】
情報信号の多重記述符号化に使用されるインデックス割当て行列の設計に使用するコンピュータ・プログラムであって、
コンピュータに、前記情報信号についての記述を伝送可能な通信チャネルの伝送状態に関する伝送状態情報に依存して、前記インデックス割当て行列についてのバンド幅を選択させることを特徴とするコンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−541466(P2010−541466A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527907(P2010−527907)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050355
【国際公開番号】WO2009/045148
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】