説明

多量体マルチエピトープインフルエンザワクチン

【課題】本発明は、インフルエンザに対する既知のワクチンの、高担体対抗原比および高アジュバント対抗原比の有害作用を含む欠点を克服するインフルエンザワクチンを提供する。
【解決手段】本発明は、多量体マルチエピトープペプチドをベースとしたワクチンに関する。詳細には、本発明は、インフルエンザに対する防御免疫を誘発する、多量体マルチエピトープペプチドをベースとしたワクチンの使用に関する。本発明によれば、前記多量体マルチエピトープポリペプチドは、単離ポリペプチドとして、もしくは融合タンパク質として組換えにより、もしくは複数の合成ペプチドを連結することによって合成により生産でき、または外部アジュバントと混合もしくはそれと共に製剤化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量体マルチエピトープペプチドをベースとしたワクチンに関する。詳細には、本発明は、インフルエンザに対する防御免疫を誘発する多量体マルチエピトープペプチドをベースとしたワクチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(マルチエピトープワクチン)
B細胞エピトープ、T−ヘルパー細胞エピトープ、および細胞毒性Tリンパ球エピトープはすべて、これらの2つの免疫応答において重要な役割を果たすことが知られている。明らかに、効果的なワクチン接種のためには、広域スペクトルかつ持続性の、液性および細胞性応答が誘導されるべきである。インフルエンザウイルスおよびヒト免疫不全ウイルスなどの突然変異率が高いウイルスに対する、広域スペクトルかつ効果的なワクチンはまだない。
【0003】
抗原用量と、その特異的B細胞応答の効率との間には、密接な関係がある。様々な量のエピトープペプチドと結合した同量の担体タンパク質からなる、化学的に結合した担体タンパク質およびエピトープペプチドの系を用いた研究で、エピトープ密度がTヘルパー細胞依存性のIgG応答に劇的に影響を及ぼすことが示されている(非特許文献1)。非特許文献2は、インフルエンザウイルスのM2タンパク質のM2eペプチドエピトープの様々な数のコピー(1、2、4、8、および16コピー)を保有するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質で免疫化したマウスおよびウサギの液性応答に対するエピトープ密度の陽性効果を観察した。同じ研究で、致死的攻撃アッセイにより、高エピトープ密度を有する前記融合タンパク質では、高生存率と緩徐な体重減少とが引き起こされることが示された。
【0004】
マルチエピトープワクチン、すなわち1以上のエピトープを含むワクチンが、多種多様な適用のために開発されている。その例の非網羅的なリストには、例えば、特許文献1に開示の、連鎖球菌性細菌に対する組換え多価ワクチン;特許文献2に開示の、寄生体Plasmodium falciparumの生活環の異なる段階に由来するペプチドを含む単一タンパク質を含む、マラリアの処置用のワクチン;特許文献3に開示の、前立腺幹細胞抗原エピトープを含むポリペプチドを含む、抗腫瘍免疫原性の組成物;ならびにHIV(特許文献4)、風疹ウイルス(特許文献5参照)、およびC型肝炎ウイルス(特許文献6)に対するマルチエピトープ抗ウイルスワクチンが含まれる。
【0005】
特許文献7は、被検者での免疫応答を刺激するために使用される、病原体関連分子パターン(PAMP)と、インフルエンザウイルスタンパク質のエピトープとを含む、組成物、融合タンパク質およびポリペプチドを開示する。PAMPは、宿主における先天免疫応答を始動させることができる、すなわちアジュバントとして作用する、微生物に認められる分子モチーフ(例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質)である。いくつかの実施形態で、前記融合タンパク質には、M2eインフルエンザエピトープの多重コピーが含まれる。特許文献8は、1以上のPAMPと、フラビウイルスタンパク質の多重エピトープとを含む、類似の融合タンパク質およびポリペプチドを開示する。
【0006】
(インフルエンザ)
インフルエンザは、それらの抗原決定基に従って分類される3つの主なサブタイプ、インフルエンザA、BおよびCのウイルスによって引き起こされる疾病である。インフルエンザビリオンは、核タンパク質(NP)と密に会合し、かつ基質タンパク質(M1)により裏打ちされ、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)という2つの主要表面糖タンパク質抗原を保有するリポタンパク質エンベロープによって囲まれる、一本鎖RNAゲノムからなる。HAおよびNA糖タンパク質は最も変化を受けやすく、例えば、H1N1またはH3N2のような異なるインフルエンザウイルスサブタイプの基盤を提供する、HAの16の免疫クラスと9の異なるNAクラスとがある。インフルエンザAウイルスは、異なるHNサブタイプ間で高度に保存された、付加的な膜貫通糖タンパク質、M2を有する。M2遺伝子は、ビリオン細胞表面上で四量体として発現される、96〜97のアミノ酸を有するタンパク質をコード化する。これは、約24の細胞外アミノ酸、約19の膜貫通アミノ酸、および約54の細胞質残基で構成される(非特許文献3)。
【0007】
インフルエンザAおよびBウイルスは、ヒトにおけるインフルエンザの最もありがちな原因である。インフルエンザには、罹患および大量死さえも含む計り知れない健康問題に加えて、経済的意味合いを伴う公衆衛生に対する莫大な影響がある。感染は、無症候から軽度の上気道感染および気管気管支炎を経て重度の、時として致死的なウイルス肺炎までの範囲にわたり、軽度、中度または重度でありうる。インフルエンザウイルスには、ワクチン調製の課題となる2つの重要な免疫学的特徴がある。第1は、表面糖タンパク質内で数年毎に起こる遺伝的変化に関わり、これは「抗原ドリフト(抗原連続変異)」と称される。この抗原性変化で、既存のワクチンにより誘発される抵抗性を回避するウイルスが産生される。大きな公衆衛生の問題の第2の特徴は、インフルエンザウイルス、特にインフルエンザAウイルスが、遺伝材料を交換して合併できることである。「抗原シフト(抗原不連続変異)」として知られるこのプロセスの結果、両方の親ウイルスと異なる新しい株が生じ、これは致死的な汎発性株となる可能性がある。
【0008】
(インフルエンザウイルス抗原およびワクチン生産)
インフルエンザウイルスのための免疫化は、ウイルスの抗原変異によって、また呼吸粘膜への感染の限定によって制限される。現在利用可能なインフルエンザワクチンは、不活性ウイルス全体、細菌細胞の表面上に提示されるウイルスタンパク質、またはウイルスの抗原決定基を保有するフラゲリンのいずれかに基づくものである。HAは、強い免疫原であり、かつ異なるウイルス株の血清学的特異性を規定するうえで最も重要な抗原である。
【0009】
HA分子(75〜80kD)は、複数の抗原決定基を含み、そのいくつかが、異なる株において配列変化している領域にあり(株特異的決定基)、またその他は多くのHA分子で保存された領域にある(共通決定基)。これらの変化に起因して、インフルエンザワクチンは、少なくとも数年毎に改変する必要がある。
【0010】
多くのインフルエンザ抗原、およびそれらから調製されたワクチンが、当該技術分野で既知である。特許文献9は、アミノ酸の多量体または破傷風毒素などの好適な巨大分子担体に付着させた、HAの抗原断片に対応する合成ペプチドからなるインフルエンザウイルス感染に対するワクチンを開示している。
【0011】
本願発明者らの数名にかかる特許文献10は、フラゲリンのアミノ酸配列のおよびインフルエンザウイルスHAまたはNPのエピトープの少なくとも1つのアミノ酸配列を含む少なくとも1つの組換えタンパク質、またはこのキメラタンパク質の凝集体を含む、複数の異なるインフルエンザウイルス株に対する合成組換えワクチンを教示する。この取り組みの後に、3つのエピトープに基づく合成組換え抗インフルエンザワクチンが、マウスで有効性が高いことが見出された。その例証されたワクチンは、HA 91−108エピトープ(H3株すべてで保存され、抗インフルエンザ中和抗体を誘発するHA由来のB細胞エピトープ)を、MHC限局性免疫応答を誘導するT−ヘルパーまたはCTL NPエピトープ(それぞれ、NP 55−69およびNP 147−158)の一方か両方、と共に含むフラゲリンキメラを包含していた。3つの前記キメラの組み合わせを含むワクチンは、ウイルスの感染に対して最高の防御をもたらすと考えられた。
【0012】
本願発明者らの数名にかかる特許文献11は、インフルエンザウイルスの少なくとも4つのエピトープを含む、ヒト合成ペプチドをベースとしたインフルエンザワクチンを教示し、当該インフルエンザウイルスエピトープはヒト細胞と反応性であり、当該エピトープは、
【0013】
(i)1つのB細胞ヘマグルチニン(HA)エピトープ;(ii)1つのT−ヘルパーヘマグルチニン(HA)または核タンパク質(NP)エピトープで、多くのHLA分子に結合できるもの;および(iii)少なくとも2つの細胞毒性リンパ球(CTL)核タンパク質(NP)または基質タンパク質(M)エピトープで、特に、特定の民族または人種群などの異なるヒト集団で最も高頻度に見られるHLA分子に限られるものを含んでいる。インフルエンザペプチドエピトープは、組換えサルモネラフラゲリン内で発現させることができる。ワクチンには、少なくとも4つのキメラポリペプチドの調製が必要であり、これに手間がかかってしまう。
【0014】
本願発明者らの数名にかかる特許文献12は、少なくとも2つのインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含む複数のキメラタンパク質を含む、系株間交差の長期防御を誘発できるワクチンを開示しており、ここで少なくとも1つのエピトープは、インフルエンザAウイルス基質タンパク質Mペプチドエピトープであり、第2のエピトープは、ヘマグルチニンHAペプチドエピトープである。この場合も、インフルエンザペプチドエピトープは、組換えサルモネラフラゲリン内で発現させることができる。
【0015】
哺乳類には、鞭毛抗原に対する後天性免疫応答があることが多い。しかし、動物において有効な用量の組換えフラゲリンインフルエンザには、ヒト被検者では、おそらくフラゲリン/抗原比が高いことに起因して、高熱を含む有害作用があることが、臨床データで示されている。高濃度のフラゲリンは、心臓に対して一過性の効果を有する疑いもある。
【0016】
このように、広い特異性をもって長時間持続する液性および細胞性応答を誘導できる、インフルエンザペプチドエピトープをベースとしたワクチンに対して未対処の要求がある。簡易化した生産および品質管理プロセスのワクチンに対する要求もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第6063386号明細書
【特許文献2】米国特許第6828416号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0056315号明細書
【特許文献4】国際公開WO01/24810号
【特許文献5】国際公開WO93/14206号
【特許文献6】国際公開WO01/21189号
【特許文献7】国際公開WO2006/069262号
【特許文献8】国際公開WO2006/078657号
【特許文献9】米国特許第4474757号明細書
【特許文献10】PCT国際公開WO93/20846号
【特許文献11】米国特許第6740325号明細書
【特許文献12】PCT国際公開WO2007/066334号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Jegerlehnerら,Eur J Immunol.2002,32:3305−14
【非特許文献2】Liuら,Vaccine.2004 23(3):366−71
【非特許文献3】Lambら,Cell.1985;40:627−633
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、インフルエンザに対する既知のワクチンの、高担体対抗原比および高アジュバント対抗原比の有害作用を含む欠点を克服するインフルエンザワクチンを提供する。本発明のワクチンは、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープの多重コピーを含むポリペプチドを含み、マルチな多様性の高密度ワクチンを提供する。本発明によれば、前記多量体マルチエピトープポリペプチドは、単離ポリペプチドとして、もしくは融合タンパク質として組換えにより、もしくは複数の合成ペプチドを連結することによって合成により生産でき、または外部アジュバントと混合もしくはそれと共に製剤化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の多量体ポリペプチドは、インフルエンザウイルスB細胞エピトープ、T−ヘルパーエピトープ、および細胞毒性リンパ球(CTL)エピトープの組み合わせを含有する。前記エピトープは、好ましくはヘマグルチニン(HA)ペプチド、基質タンパク質(M1およびM2)ペプチド、および核タンパク質(NP)ペプチドから選択される。前記エピトープは、いくつかのヒトインフルエンザサブタイプに対する実証可能な交差防御活性を有しており、細胞性および液性免疫応答を誘導するそれらの能力が向上していることで選ばれている。
【0021】
意外なことに、本発明にかかるいくつかの多量体ポリペプチドは、担体タンパク質に結合していないか、またはその一部となっていない場合であっても、免疫応答を誘発する活性があることが見出された。さらに、そのポリペプチドが担持する免疫原性エピトープが高密度かつ多様なことから、そのワクチンはアジュバントの必要性なしであっても、強い免疫応答を誘発する。加えて、単一ポリペプチド内に多数の異なる免疫原性エピトープを包含することで、生産手順および品質管理が円滑化する。
【0022】
第1の態様で、本発明は、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含む合成または組換えポリペプチドを提供し、各エピトープは単一ポリペプチド中に少なくとも2回存在する。本発明の文脈では、「多量体」ポリペプチドは、ポリペプチドのアミノ酸ストレッチの、必ずしも隣接しない複数のリピート(少なくとも2つ、典型的に少なくとも3つ以上)を含有するポリペプチドである。「多量体マルチエピトープ」の用語は従って、複数のエピトープの複数のリピートを含有するポリペプチドに関するものである。
【0023】
本態様によれば本発明は、交互連続重合構造(X...)にて、またはブロック共重合体構造(X(X(X...(Xにて配置された、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープの多重コピーを含む合成または組換えインフルエンザマルチエピトープポリペプチドを提供する。
【0024】
本発明にかかる合成または組換えインフルエンザマルチエピトープポリペプチドは、i.B(XZXZ...XB;およびii.B(XZ(XZ...(XBからなる群より選択され、ここで、Bは1〜4アミノ酸残基の任意の配列であり;nは各出現ごとに独立に2〜50の整数であり;mは3〜50の整数であり;X、X...Xの各々は4〜24アミノ酸残基からなるインフルエンザペプチドエピトープであり;Zは各出現ごとに1〜4アミノ酸残基の結合またはスペーサーであり;かつ前記ポリペプチド中のアミノ酸残基の最大数は約1000である。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、nは各出現ごとに独立に2〜50の整数であり;mは3〜15の整数であり;X〜Xの各々は4〜24アミノ酸残基からなるB細胞型エピトープ、T−ヘルパー(Th)型エピトープ、および細胞毒性リンパ球(CTL)型エピトープからなる群より選択されるインフルエンザペプチドエピトープであり;かつ前記ポリペプチド中のアミノ酸残基の最大数は約600である。
【0026】
他の実施形態によれば、前記インフルエンザペプチドエピトープは、ヘマグルチニン(HA)ペプチド、M1ペプチド、M2ペプチド、および核タンパク質(NP)ペプチドからなる群より選択される。
【0027】
いくつかの特有の実施形態によれば、mは9であり、かつnは3〜5の整数である。他の実施形態によれば、前記インフルエンザペプチドエピトープは、配列番号1〜配列番号82からなる群より選択される。
【0028】
いくつかの特有の実施形態によれば、前記インフルエンザペプチドエピトープは、表1に基づくエピトープE1〜E9から選択される。
【0029】
表1:インフルエンザペプチドエピトープE1〜E9
【表1】

【0030】
さらに具体的な実施形態によれば、前記インフルエンザペプチドエピトープは、HA 354−372(E1、配列番号82)、HA 91−108(E2、配列番号48)、M1 2−12(E3、配列番号25)、HA 150−159(E4、配列番号52)、HA 143−149(E5、配列番号51)、NP 206−229(E6、配列番号64)、HA 307−319(E7、配列番号59)、NP 335−350(E8、配列番号69)、およびNP 380−393(E9、配列番号70)からなる。
【0031】
さらに他の実施形態によれば、前記ポリペプチド配列は、配列番号84、配列番号86、および配列番号88からなる群より選択される。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、前記ポリペプチドは、以下の交互連続重合構造[E1E2E3E4E5E6E7E8E9]で配置される異なる9つのインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含み、ここで、nは3または5であり;E1はHA 354−372(配列番号82)、E2はHA 91−108(配列番号48)、E3はM1 2−12(配列番号25)、E4はHA 150−159(配列番号52)、E5はHA 143−149(配列番号51)、E6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70)である。
【0033】
他の実施形態によれば、前記ポリペプチドは、以下のブロック共重合体構造[E1E1E1−E2E2E2−E3E3E3−E4E4E4−E5E5E5−E6E6E6−E7E7E7−E8E8E8−E9E9E9]で配置される異なる9つのインフルエンザウイルスペプチドエピトープの3つのリピートを含み、ここでE1はHA 354−372(配列番号82)、E2はHA 91−108(配列番号48)、E3はM1 2−12(配列番号25)、E4はHA 150−159(配列番号52)、E5はHA 143−149(配列番号51)、E6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70)である。
【0034】
さらに他の実施形態によれば、前記ポリペプチドは、以下の交互連続重合構造[E1E2E3E4E5]で配置される異なる5つのB細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープの6つのリピートを含み、ここでE1はHA 354−372(配列番号82)、E2はHA 91−108(配列番号48)、E3はM1 2−12(配列番号25)、E4はHA 150−159(配列番号52)、E5はHA 143−149(配列番号51)である。
【0035】
他の実施形態によれば、前記ポリペプチドは、以下の交互連続重合構造[E7E8E9E6]で配置される異なる4つのT細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープの6つのリピートを含み、ここでE6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70)である。
【0036】
さらに他の実施形態によれば、前記ポリペプチドは、以下の交互連続重合構造[E7E8E9E6]で配置される異なる4つのT細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープの4つのリピートを含み、ここで、nは6であり、またここでE6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70)であって、さらにここで前記多量体ポリペプチドは担体タンパク質に融合される。
【0037】
さらなる実施形態によれば、前記ポリペプチドは、以下のブロック共重合体構造[E2E2E2E2E2E2−E1E1E1E1E1E1−E3E3E3E3E3E3−E4E4E4E4E4E4−E5E5E5E5E5E5−E6E6EE6E6E66−E7E7E7E7E7E7−E8E8E8E8E8E8−E9E9E9E9E9E9]で配置される異なる9つのインフルエンザウイルスペプチドエピトープの6つのリピートを含み、ここで、E1はHA 354−372(配列番号82)、E2はHA 91−108(配列番号48)、E3はM1 2−12(配列番号25)、E4はHA 150−159(配列番号52)、E5はHA 143−149(配列番号51)、E6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70)である。
【0038】
種々の実施形態で、前記ポリペプチドは、各エピトープの少なくとも2つのリピート、典型的には各エピトープの少なくとも3つのリピート、あるいは各エピトープの少なくとも4つのリピート、あるいは少なくとも5つのリピート、あるいは少なくとも6つのリピート、最大で各エピトープの少なくとも50のリピートを含む。免疫系への前記エピトープの曝露を向上させるために、これらエピトープは、好ましくはスペーサーによって離隔され、このスペーサーは、特定の実施形態によれば単一アミノ酸からなり、また他の実施形態によれば少なくとも1つのアミノ酸を含むかまたはペプチドである。好ましくは、前記スペーサーは、1〜4の中性アミノ酸残基からなる。
【0039】
特有の実施形態によれば、前記合成または組換えインフルエンザマルチエピトープポリペプチドは、交互連続重合構造(X...)で、またはブロック共重合体構造(X(X(x...(xで配置される複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープの多重コピーからなる。
【0040】
この本発明の態様のいくつかの実施形態で、前記多量体マルチエピトープポリペプチドは、少なくとも2つのインフルエンザペプチドエピトープを含み、ここで少なくとも1つは、B細胞型エピトープ、T−ヘルパー(Th)型エピトープ、および細胞毒性リンパ球(CTL)型エピトープからなる群より選択される。いくつかの実施形態で、前記インフルエンザペプチドエピトープは、ヘマグルチニン(HA)ペプチドエピトープ、基質タンパク質(M1またはM2)ペプチドエピトープ、および核タンパク質(NP)ペプチドエピトープからなる群より選択される。特定の好ましい実施形態で、前記ペプチドエピトープは、表1に基づくエピトープE1〜E9からなる群より選択される。
【0041】
種々の例証的な実施形態を提供するが、これには表1から選択されるエピトープが含まれ、ここで各エピトープに対するリピートの数は同じかまたは異なり、またここで前記ポリペプチドは、交互連続重合構造またはブロック共重合体構造で配置することができる。「交互連続重合」構造という用語は、ポリペプチドに含まれる全てのエピトープの単一コピーが連続して配置され、かつこの配置がリピートの数と同じ回数、連続して繰り返されることを意味する。例えば、ある交互連続構造で多量体マルチエピトープポリペプチドが3つのエピトープX、XおよびXの4つのリピートを含むとすると、そのポリペプチドは以下の重合構造:X−X−X−Xを有し、これは[Xとも表される。「ブロック共重合体」構造という用語は、ポリペプチドに含まれる単一エピトープのすべてのコピーが隣接して配置されることを意味する。例えば、あるブロック共重合体構造で、3つのエピトープX、XおよびXの4つのリピートを含む類似の多量体マルチエピトープポリペプチドは、以下の重合構造:X−X−Xを有し、これは[A]−[B]−[C]とも表される。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、前記スペーサーの少なくとも1つのアミノ酸は、そのポリペプチドのセグメントの特異的なコンホメーションを誘導する(例えば、プロリン残基)。
【0043】
さらに他の実施形態によれば、前記スペーサーは切断可能配列を含む。1つの実施形態によれば、その切断可能なスペーサーは、細胞内酵素によって切断される。さらなる特有の実施形態によれば、前記切断可能なスペーサーは、プロテアーゼ特異的切断可能配列を含む。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、前記多量体ポリペプチドは好ましくは担体融合タンパク質と接合しておらず、かつ担体融合タンパク質を欠いている。他の実施形態で、本発明のポリペプチドはさらに、担体配列を含んでもよく、すなわち、前記ペプチドエピトープが担体ポリペプチドの配列内に挿入されるか、または担体配列に結合される。いくつかの実施形態によれば、前記多量体ポリペプチドは、担体配列を含む組換え融合タンパク質として生産される。
【0045】
いくつかの特有の実施形態で、前記担体配列は細菌のフラゲリンまたはその一部分である。特定の実施形態で、前記マルチエピトープポリペプチドは、フラゲリンの超可変領域内に挿入され、これにより多量体マルチエピトープポリペプチドを含む組換えフラゲリン融合タンパク質が形成される。他の実施形態で、前記ポリペプチドは、担体タンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端部分に融合される。
【0046】
別の態様によれば、本発明は前記インフルエンザマルチエピトープポリペプチドをコード化する、単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、前記単離されたポリヌクレオチド配列は、配列番号84、配列番号86、および配列番号88からなる群より選択されるポリペプチド配列をコード化する。
【0048】
特有の実施形態によれば、前記単離されたポリヌクレオチド配列は、配列番号83、配列番号85、および配列番号87からなる群より選択される配列を含む。
【0049】
さらに別の態様によれば本発明は、交互連続重合構造(X...)で、またはブロック共重合体構造(X(X(x...(xで配置される複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープの多重コピーを含む、少なくとも1つの合成または組換えインフルエンザマルチエピトープポリペプを含む、インフルエンザに対する被検者の免疫化用のワクチン組成物を提供する。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、前記ワクチン組成物は少なくとも2つのこのようなポリペプチドを含む。いくつかの実施形態によれば、前記ワクチンは2つのポリペプチドを含み、ここで第1ポリペプチドは複数のB細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープを含み、かつ第2ポリペプチドは複数のT細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープを含む。特有の実施形態によれば、前記第1ポリペプチドはポリペプチドクレーム18[E1E2E3E4E5](ここでE1はHA 354−372(配列番号82)、E2はHA 91−108(配列番号48)、E3はM1 2−12(配列番号25)、E4はHA 150−159(配列番号52)、E5はHA 143−149(配列番号51)である)であり、;かつ前記第2ポリペプチドはポリペプチド[E7E8E9E6](ここでE6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70))であるか、または前記ポリペプチド[E7E8E9E6](ここでnは6であり、またE6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70)である)を含む融合担体タンパク質である。
【0051】
本発明の別の態様は、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含む、多量体マルチエピトープポリペプチドを含む、被検者の免疫化用のワクチンを提供する。いくつかの実施形態で前記ワクチンは、各エピトープの少なくとも3つのリピート、あるいは各エピトープの少なくとも4つのリピート、あるいは少なくとも5つのリピート、あるいは少なくとも6つのリピートを含む。いくつかの実施形態で、前記エピトープはスペーサーによって離隔され、このスペーサーは、単一アミノ酸、または少なくとも2つのアミノ酸のペプチドであってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態で、前記ワクチンは少なくとも2つのインフルエンザペプチドエピトープを含み、ここで少なくとも1つのエピトープは、B細胞型エピトープ、T−ヘルパー(Th)型エピトープ、およびCTL型エピトープからなる群より選択される。いくつかの実施形態で、前記インフルエンザペプチドエピトープは、ヘマグルチニン(HA)ペプチドエピトープ、M1ペプチドエピトープ、M2ペプチドエピトープ、およびNPペプチドエピトープからなる群より選択される。好ましい実施形態で、前記ペプチドエピトープは、前記表1のエピトープE1〜E9からなる群より選択される。
【0053】
1つの実施形態で、前記ワクチンは、交互連続重合構造[E1E2E3E4E5E6E7E8E9]に従って配置される9つのエピトープE1〜E9の3つのリピートを含む。別の実施形態で、前記ワクチンは、交互連続重合構造[E1E2E3E4E5E6E7E8E9]に従って配置される9つのエピトープの5つのリピートを含む。さらに別の実施形態で、前記ワクチンは、ブロック共重合体構造[E1]−[E2]−[E3]−[E4]−[E5]−[E6]−[E7]−[E8]−[E9]に従って配置される9つのエピトープの3つのリピートを含む。
【0054】
さらに別の実施形態で、前記ワクチンは、ブロック共重合体構造[E1]−[E2]−[E3]−[E4]−[E5]−[E6]−[E7]−[E8]−[E9]に従って配置される9つのエピトープの6つのリピートを含む。
【0055】
本発明の別の態様は、多量体マルチエピトープポリペプチドの混合物を含むインフルエンザに対するワクチンであって、第1ポリペプチドは複数のB細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープを含み、かつ第2ポリペプチドは複数のT細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープを含むワクチンを提供する。前記マルチエピトープポリペプチドの各々は、担体タンパク質との融合タンパク質の一部であってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、本発明にかかる前記ワクチン組成物は、アジュバントを含有しない。他の実施形態によれば、前記ワクチンはさらにアジュバントを含む。
【0057】
医薬上許容できるアジュバントとして、限定しないが、油中水型エマルション、脂質エマルション、およびリポソームが挙げられる。特有の実施形態によれば、前記アジュバントは、Montanide(登録商標)、ミョウバン、ムラミルジペプチド、Gelvac(登録商標)、キチン微粒子、キトサン、コレラ毒素サブユニットB、Intralipid(登録商標)、およびLipofundin(登録商標)からなる群より選択される。現在好ましい実施形態によれば、前記アジュバントはMontanide(登録商標)である。
【0058】
いくつかの実施形態で、前記ワクチンは筋肉内、鼻腔内、経口、腹腔内、皮下、局所、皮内および経皮送達用に製剤化される。いくつかの実施形態で、前記ワクチンは鼻腔内に投与される。他の実施形態で、前記ワクチンは筋肉内に投与される。さらに他の実施形態で、前記ワクチンは皮内に投与される。
【0059】
さらなる実施形態による本発明は、交互連続重合構造(X...)で、またはブロック共重合体構造(X(X(x...(xで配置される複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープの多重コピーを含む、少なくとも1つの合成または組換えインフルエンザマルチエピトープポリペプを含むワクチン組成物を被検者に投与することを含む、被検者の免疫応答を誘導し、インフルエンザに対する防御を付与する方法を提供する。
【0060】
前記ワクチンの投与の経路は、筋肉内、鼻腔内、経口、腹腔内、皮下、局所、皮内、および経皮送達から選択される。好ましい実施形態によれば、前記ワクチンは、鼻腔内に、筋肉内にまたは皮内に投与される。
【0061】
インフルエンザに対する免疫化用のワクチン組成物の調製のための、本発明にかかるポリペプチドの使用もまた本発明の範囲に含まれ、ポリヌクレオチドの生産のための、本発明にかかる単離されたポリヌクレオチドの使用も同様である。
【0062】
本発明に開示される多量体ペプチドはすべて、組換えタンパク質、融合タンパク質として、また化学合成により生産することができる。従って、本発明の別の態様は、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含む多量体マルチエピトープポリペプチドを含む、組換えタンパク質を提供する。いくつかの実施形態で、前記ポリペプチドは、細菌フラゲリンの超可変領域内に挿入される。
【0063】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの多量体マルチエピトープポリペプチドと、少なくとも1つの付加的なポリペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態で、前記ポリペプチドは、細菌フラゲリンまたはその一部分と融合される。特有の実施形態で、ブロック共重合体構造[E1]−[E2]−[E3]−[E4]−[E5]−[E6]−[E7]−[E8]−[E9]に従って配置される9つのエピトープの6つのリピートを含む前記ポリペプチドは、細菌フラゲリンまたはその一部分と融合される。
【0064】
本発明の別の態様は、結合、アミノ酸、および少なくとも2つのアミノ酸を含むペプチドからなる群より選択されるスペーサーによって連結される、複数の合成ペプチドエピトープを含む、合成多量体ポリペプチドを提供する。
【0065】
本発明に含まれるのはさらに、インフルエンザに対する免疫化用の合成多量体ポリペプチドである。
【0066】
本発明のさらなる実施形態および利用可能性の全範囲は、以下に記載する詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の趣旨および範囲内での種々の変更および修飾が、本明細書の詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示唆はするが、例示のみに提供するものであることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1Aおよび1Bは、交互連続重合構造:(HA354−372−−−HA91−108−−−M1,2−12−−−HA150−159−−−HA143−149−−−NP206−229−−−HA307−319−−−NP335−350−−−NP380−393)で配置される9つのインフルエンザペプチドエピトープの5つのリピートを含む多量体ポリペプチドを示す。(A)多量体ポリペプチドを生産するために用いられる構築体のヌクレオチド配列(配列番号83);(B)Aのヌクレオチド配列によりコード化される多量体ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号84)。9つのエピトープの第1配列のエピトープに下線を付している。
【図2】図2Aおよび2Bは、ブロック共重合体構造:(HA354−372)−−−(HA91−108)−−−(M1 2−12)−−−(HA150−159)−−−(HA143−149)−−−(NP206−229)−−−(HA307−319)−−−(NP335−350)−−−(NP380−393)で配置される9つのインフルエンザペプチドエピトープの3つのリピートを含む多量体ポリペプチドを示す。(A)ポリペプチドを生産するために用いられる構築体のヌクレオチド配列(配列番号85)。(B)多量体ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号86)。第1エピトープの3つのリピートに下線を付している。
【図3】図3Aおよび3Bは、交互連続重合構造:(HA354−372−−−HA91−108−−−M1,2−12−−−HA150−159−−−HA143−149−−−NP206−229−−−HA307−319−−−NP335−350−−−NP380−393)で配置される9つのインフルエンザペプチドエピトープの3つのリピートを含む多量体ポリペプチドを示す。(A)ポリペプチドを生産するために用いられる構築体のヌクレオチド配列(配列番号87)。(B)多量体ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号88)。9つのエピトープの第1配列のエピトープに下線を付している。
【図4】図4は、2つの多量体ワクチン:#11および#14でワクチン接種したマウスの、インフルエンザウイルスのいくつかの株に対する細胞性免疫応答を示す。異なる2種の濃度の刺激性ウイルスに対する細胞性免疫応答を測定し、刺激性ウイルスとインキュベートしたリンパ球に対する増殖指数として示す。
【図5】図5は、高度致死用量のマウス適応性インフルエンザウイルスH3N2株(A/Texas/1/77)に対する多量体ワクチン#14の防御効果を示す。対照マウス(PBS)と比較した、ワクチン接種マウスの肺におけるウイルス力価の有意な低減によって、ワクチンの防御効果が示される。
【図6】図6Aおよび6Bには、ウイルスの攻撃からのマウスの防御におけるいくつかの多量体ワクチンの有効性を示す。多量体ワクチン#11、#12および#14の防御効果は、致死用量のマウス適応性インフルエンザウイルスH3N2株(A/Texas/1/77)での感染後の、対照(PBS)マウスと比較したワクチン接種マウスの高生存率(図6A)によって、ならびに対照(50%Gly/PBS)マウスと比較して有意に低い、ワクチン接種マウスの肺におけるウイルス量(図6B)によって示す。
【図7】図7では、50%グリセロールのPBS(#11、#12、および#14)中、またはフロイント不完全アジュバント(#11−IFA、#12−IFA、および#14−IFA)を用いたエマルション中の多量体構築体を含むいくつかのワクチンで、マウスの免疫化の有効性を比較する。異なるワクチンの防御効果、およびIFAの効果を、マウス適応性インフルエンザウイルスH3N2株(A/Texas/1/77)で攻撃した後の対照マウスと比較した、ワクチン接種マウスの生存率によって測定する。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明は、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含む多量体マルチエピトープポリペプチド、およびこれらのポリペプチドに基づくワクチンを提供する。本発明にかかるポリペプチドは、各エピトープの少なくとも2つのリピートを含む。好ましくは、本発明にかかるポリペプチドは、各エピトープの少なくとも3つのリピートを含む。本発明はまた、このようなポリペプチドに基づくワクチン、およびその使用方法も提供する。
【0069】
インフルエンザタンパク質に由来するペプチドエピトープが、インフルエンザに対するワクチンを調製するのに有用である。しかし、各ペプチド単独では免疫系にとってほとんど不可視であり、迅速に分解されて、不充分な免疫応答しか起こらない。免疫原性ペプチドの多重コピーが単一ポリペプチドとして免疫系に提示されると、エピトープ−特異的免疫応答の振幅が増強される。例えば、1つのインフルエンザペプチドエピトープの単一コピーを含む組換えフラゲリン融合タンパク質に基づくワクチンで、およそ1:28のエピトープ/フラゲリン比がもたらされる。いくつかのコピー各々に複数のエピトープを含むマルチエピトープワクチンを用いることによって、2:1までのエピトープ/フラゲリン比を得ることができる。本発明は、既知の構築体および構成と比較して免疫原性が増強された、多量体マルチエピトープポリペプチドを提供する。ポリペプチド各々は複数のエピトープを含み、ここで各エピトープは多重コピーで反復される。多重コピーまたは各エピトープのリピートは、各エピトープのブロックとして近接していてもよい。あるいは、複数のエピトープは特定の配列内に出現してもよく、ここで本配列は、ポリペプチド内で何度も反復される。多重エピトープのこれらの型の構成の両方が現在、被検者のインフルエンザに対して免疫を付与する上で、予測を超えた優れた結果を有することが示されている。
【0070】
(定義)
便宜のため、明細書、実施例および請求の範囲で使用する特定の用語を以下に説明する。
【0071】
「抗原提示」という用語は、動物の主要組織適合複合体クラスIもしくはクラスII分子(MHC−IまたはMHC−II)に、またはヒトのHLA−IおよびHLA−IIに関連する、細胞の表面の抗原の発現を意味する。
【0072】
「免疫原性」または「免疫原性の」という用語は、ある物質が免疫応答を刺激または誘発する能力に関する。免疫原性は、例えば、当該物質に対して特異的な抗体の存在を定量することによって測定される。抗体の存在は、例えばELISAアッセイなどの当該技術分野で既知の方法によって検出される。
【0073】
インフルエンザエピトープは、それらが誘発する免疫応答のタイプに応じ、B細胞型、T細胞型、またはB細胞およびT細胞型の双方として分類することができる。B細胞またはT細胞ペプチドエピトープの定義は明確でなく、例えば、あるペプチドエピトープは抗体生産を誘導できるが、同時にそのエピトープはヒトHLA分子への結合を可能とする配列を保有することができ、これによりCTLに到達可能となることから、その特定のエピトープに対してはB細胞およびT細胞の二重分類がなされる。「CTL」、「キラーT細胞」または「細胞毒性T細胞」は、ウイルスの感染および癌細胞に対する防御において機能する特異的外来抗原を保有する標的細胞を認識および溶解する分化T細胞の一群である。「Tヘルパー細胞」または「Th」は、特異的抗原によって刺激されるとB細胞およびキラーT細胞の活性化および機能を促進するサイトカインを放出する任意のT細胞である。
【0074】
「組換えフラゲリン融合タンパク質」という用語は、その配列内に埋め込まれたペプチドエピトープまたは多量体マルチエピトープポリペプチドを含むフラゲリンポリペプチドのこと、あるいはまた、そのN末端またはC末端のいずれかでペプチドエピトープまたは多量体マルチエピトープポリペプチドに融合されたフラゲリンポリペプチドの一部分のことである。
【0075】
本願明細書の「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列、およびその断片を称し、天然由来分子または合成分子を称する。
【0076】
本願明細書および本願請求の範囲において、「スペーサー」という用語は、ポリペプチド配列の末端の一方または2つのエピトープの間に存在してもよい、任意の化学的化合物を意味する。好ましくは、スペーサーは1〜4アミノ酸残基からなる。スペーサーは、酵素的手段によって切断されることができるか、または自然に分解しうる配列を含んでもよい。スペーサーは、ポリペプチドに有益なコンホメーションを強制または誘導してもよい。スペーサーは、プロテアーゼ特異的切断可能配列必要に応じてを含んでもよい。
【0077】
(ワクチンの調製に有用なペプチドエピトープ)
本発明の好ましい実施形態によれば、ペプチドエピトープは、HA、M1、M2、およびNPからなる群より選択されるインフルエンザタンパク質に由来するものである。エピトープはまた、それらの型(B細胞型、Th型、およびCTL型)に従って選択してもよい。
【0078】
なお、本願明細書に挙げるペプチドエピトープは、例示目的のみに提供することに注意すべきである。インフルエンザウイルスタンパク質は、分離株間で異なり、これにより各インフルエンザタンパク質に対して多重変異体配列が与えられる。従って、本発明は、1以上のアミノ酸置換、付加または欠失を有するペプチドエピトープを包含する。
【0079】
基質タンパク質M1は、インフルエンザウイルス粒子の主要な構造成分であり、脂質細胞由来のエンベロープの内層を形成する。ビリオン内部およびウイルス複製の後期の感染細胞に、M1タンパク質はウイルスのリボ核タンパク質(vRNP)と会合するが、これらはウイルスRNA分子、核タンパク質の多重コピー、およびそのウイルスRNAの端部を保持するウイルスのポリメラーゼの3つのサブユニットで構成される。M1のN末端ドメインとは、M1タンパク質の1から約20アミノ酸までのアミノ酸をいう。
【0080】
基質タンパク質M2は、液胞内部の核タンパク質複合体と基質との解離を引き起こす水素イオンチャンネルである。このイオンチャンネルは、ウイルスRNAが感染細胞の核に入り、ウイルスの複製を開始することを可能にするゲノムを遊離する。アマンタジンおよびリマンタジンなどのインフルエンザに対する治療物質は、M2活性を妨害することによって作用する。インフルエンザBは、NBとして知られるカウンターパートタンパク質を有し、M2とNBとの間に配列類似性はないが、両者とも膜貫通タンパク質であり、同様の機能を共有しうる。インフルエンザAウイルスの膜貫通タンパク質であるM2タンパク質の細胞外ドメインは、すべてのインフルエンザA株でほぼ不変である。M2のN末端ドメインは、その膜貫通ドメインに対してN末端のアミノ酸配列をいう。
【0081】
表2に、本発明にかかる多量体ポリペプチドの調製のために使用してもよいM1およびM2ペプチドエピトープの例示リストを提供する。
【0082】
表2:M1およびM2ペプチドエピトープ
【表2−1】

【表2−2】

【0083】
核タンパク質(NP)は、インフルエンザA、BおよびCウイルス間を識別する特異的抗原の群の1つである。HAとは対照的に、NPは高度に保存されており、全インフルエンザAウイルスで94%保存されている。インフルエンザAウイルスNP特異抗体は、ウイルス中和活性を有していないが、NPはすべてのタイプのAウイルス(Townsend,J Exp Med 1984 160(2):552−63)と交差反応性がある細胞毒性Tリンパ球(CTL)に対する重要な標的である。CTLは、インフルエンザNP分子の鎖状領域に対応する短い合成ペプチドを認識する。
【0084】
ヘマグルチニン(HA)は、インフルエンザエンベロープに埋め込まれた三量体糖タンパク質である。これは宿主細胞へのウイルスの付着および侵入に関与する。HAに対する抗体は、ウイルスの感染性を中和する。この分子の抗原変異は、インフルエンザの頻発発生に、および免疫化による感染の制御不全に関与している(AdaおよびJones,Curr Top Microbial Immunol 1986;128:1−54)。
【0085】
インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼは、3つのポリメラーゼ(P)タンパク質PB1、PB2およびPA(1:1:1の比で存在)で構成されるヘテロ複合体である。インフルエンザ病原性におけるそれらの役割は、完全には解明されていない。HA、NP、PB1およびPB2ペプチドエピトープの非限定例を表3に列挙する。
【0086】
表3:HA、NPおよびPBペプチドエピトープ。
【表3】

【0087】
(キメラまたは組換え分子)
「キメラタンパク質」、「キメラポリペプチド」または「組換えタンパク質」は、互換的に使用され、ポリペプチドに作動可能に連結されたインフルエンザ多量体ポリペプチドをいい、このポリペプチドは、ペプチドエピトープ由来元のポリペプチド以外のものである。本発明の多量体マルチエピトープポリペプチドは、それ自体またはキメラタンパク質として、発現ベクター中での発現により調製することができる。1以上のインフルエンザペプチドエピトープを含むキメラまたは組換えタンパク質を生産する方法は、当業者に既知である。1以上のインフルエンザペプチドエピトープをコード化する核酸配列は、宿主細胞における増殖および発現用のポリヌクレオチド構築体の調製のための発現ベクターの中へ挿入することができる。多量体マルチエピトープポリペプチドなどの、いくつかのエピトープの多重リピートを含むポリペプチドをコード化する核酸構築体は、小ポリヌクレオチド構築体で、それらの3’および5’端に適正化制限部位をライゲーションにより調製できる。
【0088】
非限定例で、本発明のキメラポリペプチドは、インフルエンザペプチドエピトープと、以下のポリペプチド:フラゲリン、コレラ毒素、破傷風毒素、オボアルブミン、結核熱ショックタンパク質、ジフテリアトキソイド、呼吸器多核体ウイルス由来のタンパク質G、髄膜炎菌由来の外膜タンパク質、水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質、熱帯熱マラリア原虫抗原グルタミン酸リッチタンパク質、メロゾイト表面タンパク質3またはウイルスエンベロープタンパク質の1つとのキメラを含む。
【0089】
本願明細書の「発現ベクター」および「組換え発現ベクター」という用語は、特定の宿主細胞における発現用の組換えペプチドエピトープの発現に必要な、所望かつ適切な核酸配列を含むDNA分子、例えばプラスミド、フラゲリンまたはウイルスをいう。本願明細書の「作動可能に連結した」とは、少なくとも2つの配列の機能的連結をいう。「作動可能に連結した」に含まれるのは、プロモーターと第2の配列(例えば、本発明の核酸)との間の連結で、プロモーター配列が第2の配列に対応するDNA配列の転写を開始および媒介するものである。
【0090】
前記ペプチドエピトープの転写に必要な調節領域は、発現ベクターによって提供することができる。遺伝子発現に必要な調節領域の精密な性質は、ベクターおよび宿主細胞間で変動しうる。一般的に、RNAポリメラーゼに結合でき、かつ作動可能に結合した核酸配列の転写を促進することのできるプロモーターが必要である。調節領域は、転写および翻訳の開始に関わるような、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等といった5’非コーディング配列が含まれてもよい。コーディング配列に対して3’の非コーディング領域は、ターミネーターおよびポリアデニル化部位などの転写終結調節配列が含まれてもよい。翻訳開始コドン(ATG)も、提供してもよい。
【0091】
ベクターのクローニング部位に核酸配列をクローン化するために、適切な適合性制限部位を提供するリンカーまたはアダプターを、核酸の合成の際に添加する。例えば、所望の制限酵素部位を所望の制限酵素部位を含有するプライマーを用いたPCRの使用によるDNAの増幅によって、DNAの断片を導入できる。
【0092】
多量体マルチエピトープポリペプチドをそれ自体、または組換え融合タンパク質として発現および生産するために、調節領域に作動可能に結合したペプチドエピトープ配列を含む発現構築体を、適切な宿主細胞内に直接導入することができる。使用しうる発現ベクターとしては、限定しないが、プラスミド、コスミド、ファージ、ファージミド、フラゲリンまたは修飾ウイルスが挙げられる。典型的に、このような発現ベクターは、適切な宿主細胞におけるベクターの増殖のための複製の機能性起点、所望の遺伝子配列の挿入用の1以上の制限エンドヌクレアーゼ部位、および1以上の選択マーカーを含む。
【0093】
前記発現ベクターおよび多量体ポリペプチドを含む組換えポリヌクレオチド構築体は次いで、複製および発現されることができる場所である細菌宿主細胞内に移すべきである。これは、当該技術分野で既知の方法によって成し遂げることができる。発現ベクターは、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物およびヒトから由来してもよい、適合可能な原核または真核宿主細胞と共に使用される。
【0094】
1つの非限定例によれば、その発現ベクターは、例えば米国特許第6130082号に開示のごときフラゲリンベクターである。他の具体的な実施形態によれば、前記プラスミドベクターはfliCフラゲリン遺伝子を独特の制限部位と共に含み、ここで多量体ポリペプチドはフラゲリンの超可変領域の内部に挿入されて、マルチエピトープポリペプチドを含むその組換えフラゲリン融合タンパク質は鞭毛欠損変異種サルモネラまたは大腸菌において発現される。この組換えフラゲリン融合タンパク質を発現する宿主細胞は、生ワクチンとして製剤化できる。
【0095】
(多量体ポリペプチドの生産)
ひとたび宿主細胞により発現されれば、前記多量体ポリペプチドは、数多くのタンパク質精製法によって望ましくない成分から分離することができる。このような方法の1つでは、組換えタンパク質にてポリヒスチジンタグを使用する。ポリヒスチジンタグは、組換えタンパク質に付加される(N末端またはC末端での付加が多い)、少なくとも6つのヒスチジン(His)残基に存する。ポリヒスチジンタグは、大腸菌または他の原核性発現系において発現される、ポリヒスチジンタグ化組換えタンパク質のアフィニティー精製のために使用されることが多い。細菌細胞は遠心によって収集し、得られる細胞ペレットは物理的手段により、または界面活性剤またはリゾチームなどの酵素を用いて溶解できる。この段階で未加工溶菌液は、細菌由来のいくつかの他のタンパク質のうち、組換えタンパク質を含み、NTA−アガロース、HisPur樹脂またはタロン(Talon)樹脂などの親和性媒体とインキュベートされる。これらの親和性媒体には、ミクロモルの親和性で前記ポリヒスチジンタグが結合する、ニッケルまたはコバルトのいずれかの金属イオンが結合している。この樹脂は次いでリン酸緩衝液で洗浄して、コバルトまたはニッケルイオンと特異的に相互作用しないタンパク質を除去する。洗浄効率は、20mMイミダゾールの添加によって高めることができ、タンパク質はその後、通常150〜300mMイミダゾールで溶出される。前記ポリヒスチジンタグはその後、制限酵素、エンドプロテアーゼまたはエキソプロテアーゼを用いて除去してもよい。ヒスチジンタグ付きタンパク質の精製用のキットは、例えばQiagenから購入できる。
【0096】
別の方法は、組換えポリペプチドが原核生物にて発現されると形成しうるタンパク質の不活性な凝集体である、封入体の生産によるものである。cDNAは翻訳可能なmRNAを正しくコードしうるものの、得られるタンパク質は正しく折り畳まれていない場合があり、または追加したペプチドエピトープの疎水性で、その組換えポリペプチドが不溶性になってしまう場合がある。封入体は、当該技術分野で周知の方法によって簡単に精製される。封入体の精製のための種々の手順が、当該技術分野で既知である。いくつかの実施形態で、前記封入体は遠心により細菌溶菌液から回収され、界面活性剤およびキレート剤で洗浄して、凝集した組換えタンパク質から可能な限り多くの細菌タンパク質を除去する。可溶性タンパク質を得るために、洗浄後の封入体を変性剤で溶解させて、遊離したタンパク質をその後、希釈または透析によって徐々に変性剤を除去することにより再び折り畳む(例えば、分子クローニング:実験室マニュアル、第3版、Sambrook,J.およびRussell,D.W.,2001;CSHL Pressに記載のとおり)。
【0097】
あるいは、組換えフラゲリン融合タンパク質は、無傷の鞭毛を形成する能力を保持している。無傷の鞭毛を精製するための種々の手順が、当該技術分野で既知である。1つの実施形態で、細菌の、フラゲリン欠損非運動性親株によって発現される前記組換えフラゲリン分子は、機能性の鞭毛を生産する。
【0098】
(ワクチン製剤)
本発明のワクチンは、マルチエピトープポリペプチド、またはマルチエピトープポリペプチドおよび任意にアジュバントを含む組換え融合タンパク質を含む。ワクチンは、多くの異なる形態の1つでの投与用に製剤化することができる。本発明の1つの実施形態によれば、ワクチンは鼻腔内に投与される。そのワクチン製剤は、任意の簡便な方法で鼻のリンパ組織に適用してもよい。しかし、これを液体流または液滴として鼻孔の壁に適用することが好ましい。鼻腔内組成物は、例えば、点鼻剤、噴霧剤のような液状形態に、または吸入に好適な粉末として、クリームとして、またはエマルションとして製剤化できる。組成物は、アジュバント、賦形剤、安定剤、緩衝剤、または保存剤などの種々の添加剤を含むことができる。
【0099】
直接の適用のために、ワクチン組成物は、好ましくは点鼻剤またはエアロゾルの形態にてポリペプチドまたは組換え融合タンパク質を分配するのに適切な容器で供給される。特定の好ましい実施形態で、前記ワクチンは粘膜送達、特に鼻腔内送達用に製剤化される(Arnonら,Biologicals.2001;29(3−4):237−42;Ben−Yedidiaら,Int Immunol.1999;11(7):1043−51)。
【0100】
本発明の別の実施形態で、投与は経口により、ワクチンは、例えば錠剤の形態でまたはゼラチンカプセルまたはマイクロカプセルに入れて提示してもよい。
【0101】
さらに別の実施形態で、前記ワクチンは非経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態で、前記ワクチンは、大量接種用に、例えばジェットインジェクターまたは単回使用カートリッジでの使用のために製剤化される。さらに別の実施形態によれば、投与は筋肉内による。
【0102】
さらに別の実施形態によれば、投与は皮内による。ワクチンを皮内に沈着させるように特別に設計した針が、例えばとりわけ、6843781号および7250036号に開示のように当該技術分野で既知である。他の実施形態によれば、投与は無針インジェクターを用いて行われる。
【0103】
これらの様式の製剤は、当業者にとって一般的な知識である。
【0104】
リポソームは、抗原送達および提示のための別の送達システムを提供する。リポソームは、リン脂質、および抗原または他の産物を被包できる、典型的には水性の中心を取り囲む他のステロール類で構成される、二分子膜ベシクルである。リポソーム構造は汎用性が高く、多くの型がナノメートルからミクロメートルのサイズ、約25nmから約500μmの範囲にある。リポソームは、皮膚および粘膜表面に治療薬を送達するのに効果的であることが見出されている。リポソームは、例えば、表面膜内に特異抗体を取り込ませることによって標的な送達用にさらに修飾でき、または細菌、ウイルスもしくは寄生体を被包するように改変できる。平均生存時間または無傷リポソーム構造の半減期は、例えばポリエチレングリコールなどの特定のポリマーの封入で延ばすことができ、インビボの放出の延長を可能とする。リポソームは、単層または多層でありうる。
【0105】
ワクチン組成物は、抗原または抗原/アジュバント複合体をリポソーム中に被包してリポソーム被包抗原を形成し、そしてそのリポソーム被包抗原と疎水性物質を含む担体の連続相とを混合することにより製剤化しうる。抗原/アジュバント複合体を第1工程で使用しない場合は、リポソーム被包抗原に、リポソーム被包抗原および担体の混合物に、または担体をリポソーム被包抗原と混合する前に担体に、好適なアジュバントを添加してもよい。そのプロセスの順序は、用いたアジュバントのタイプに依存しうる。典型的には、ミョウバンのようなアジュバントを用いる場合、アジュバントと抗原とを最初に混合して抗原/アジュバント複合体を形成し、その後リポソームで抗原/アジュバント複合体の被包を行う。得られるポソーム被包抗原は次いで、担体と混合する。「リポソーム被包抗原」という用語は、文脈に応じて、抗原単独の被包、または抗原/アジュバント複合体の被包を言及してもよい。これにより、アジュバントと抗原との間の密接な接触を促進し、そして少なくとも部分的に、アジュバントとしてミョウバンを用いた場合の免疫応答の原因となりうる。別のものが使用される場合、抗原を先ずリポソーム中に被包してもよく、得られるリポソーム被包抗原は次いで、疎水性物質中のアジュバントに混合される。
【0106】
実質的に水を含まないワクチン組成物を製剤化する際は、抗原または抗原/アジュバント複合体をリポソームで被包して、疎水性物質と混合する。疎水性物質中水のエマルションにてワクチンを製剤化する際は、抗原または抗原/アジュバント複合体を水性培地においてリポソームで被包し、その後この水性培地を疎水性物質と混合する。エマルションの場合、連続相中に疎水性物質を維持するために、リポソームを含有する水性培地を一定分量で疎水性物質に混合しながら添加してもよい。
【0107】
製剤のすべての方法で、疎水性物質と、または場合によっては水性培地との混合前に、リポソーム被包抗原を凍結乾燥してもよい。場合によっては、抗原/アジュバント複合体をリポソームによって被包し、その後凍結乾燥してもよい。他の場合に、抗原をリポソームによって被包し、その後アジュバントを添加し、次いで凍結乾燥して、外部アジュバント付き凍結乾燥リポソーム被包抗原を形成してもよい。さらに別の例では、抗原をリポソームによって被包し、その後アジュバントを添加する前に凍結乾燥してもよい。凍結乾燥は、アジュバントと抗原との間のより良好な相互作用を促進しえ、その結果、より有効なワクチンをもたらしうる。
【0108】
疎水性物質内へのリポソーム被包抗原の製剤化は、疎水性物質内でのリポソームのより均等な分布を促進するための、乳化剤の使用を含んでもよい。代表的な乳化剤は当該技術分野で周知であり、オレイン酸マンニド(Arlacel(商標)A)、レシチン、Tween(商標)80、Spans(商標)20、80、83および85が挙げられる。乳化剤は、リポソームの均一な分布を促進するのに有効な量で使用される。典型的には、疎水性物質の乳化剤に対する容量比(v/v)は、約5:1〜約15:1の範囲にある。
【0109】
微粒子およびナノ粒子は、ワクチン送達用のデポーとして作用する生分解性小球を用いる。他のデポー作用性アジュバントを凌ぐ、ポリマーミクロスフェアが有する主要な利点は、それらが極めて安全であり、かつ好適な縫合糸としてヒト医学での使用につき、および生分解性薬物送達システムとしての使用につき、米国の食品医薬品局により認可されていることである(Langer R.Science.1990;249(4976):1527−33)。共重合体加水分解の速度は非常によく特徴付けされており、これで次に、長期間にわたる抗原の徐放を伴う微粒子の製造が可能となる(O’Hagenら,Vaccine.1993;11(9):965−9)。
【0110】
微粒子の非経口投与は、特に長時間の徐放性が組み込まれていれば、持続性の免疫を誘発する。放出の速度は、様々な期間にわたって加水分解することになる多量体の混合物、およびそれらの相対分子量によって調節できる。理論による拘束は望まないが、大きな粒子はマクロファージ取り込みに応じられるようになる前に、より小さな粒子に破壊されなければならないので、異なる大きさの粒子(1μm〜200μm)の製剤化もまた、持続性の免疫学的応答に寄与しうる。このように、種々の粒子径を統合することによって単回注射ワクチンを開発でき、これにより抗原提示を長引かせ、家畜生産業者に多大な貢献がもたらされる。
【0111】
いくつかの適用では、アジュバントまたは賦形剤をワクチン製剤に含ませてもよい。例えば、Montanide(商標)(フロイント不完全アジュバント)およびミョウバンは、ヒトへの使用に好ましいアジュバントである。アジュバントの選択は、部分的にワクチンの投与の形態により決定されることになる。例えば、注射されないワクチン接種は、全体の投薬率向上および全体の価格低下をもたらすことになるであろう。投与の好ましい形態は、筋肉内投与である。投与の別の好ましい形態は、鼻腔内投与である。鼻腔内アジュバントの非限定例として、キトサン粉末、PLAおよびPLGミクロスフェア、QS−21、リン酸カルシウムナノ粒子(CAP)およびmCTA/LTB(突然変異コレラ毒素E112Kと、熱不安定性エンテロトキシンの五量体Bサブユニット)が挙げられる。
【0112】
使用されるアジュバントはまた、理論的には、ペプチドまたはタンパク質をベースとしたワクチンに対して既知であるアジュバントの任意のものであってもよい。例えば、ゲル状の無機アジュバント(水酸化アルミニウム/リン酸アルミニウム、Warrenら,1986;リン酸カルシウム、Relyvelt,1986);モノホスホリルリピドAなどの細菌アジュバント(Ribi,1984;Bakerら,1988)およびムラミルペプチド(Ellouzら,1974;AllisonおよびByars,1991;Watersら,1986);いわゆるISCOMSなどの粒状アジュバント(「免疫賦活性複合体」、MowatおよびDonachie、1991;Takahashiら,1990;Thaparら,1991)、リポソーム(Mbawuikeら,1990;Abraham,1992;PhillipsおよびEmili,1992;Gregoriadis,1990)および生分解性ミクロスフェア(Marxら,1993);IFAなどのアジュバントをベースとしたオイルエマルションおよび乳化剤(「フロイント不完全アジュバント」(Stuart−Harris,1969;Warrenら,1986)、SAF(AllisonおよびByars,1991)、サポニン類(QS−21など;Newmanら,1992)、スクアレン/スクアラン(AllisonおよびByars,1991);非イオン性ブロック共重合体などの合成アジュバント(ハンターら,1991)、ムラミルペプチド類似体(Azuma,1992)、合成リピドA(Warrenら,1986;Azuma,1992)、合成ポリヌクレオチド(Harringtonら,1978)およびポリカチオン性アジュバント(国際公開WO97/30721号)である。
【0113】
本発明の免疫原と共に使用するためのアジュバントとして、アルミニウムまたはカルシウム塩類が挙げられる(例えば、水酸化物またはリン酸塩類)。本願での使用に特に好ましいアジュバントは、Alhydrogel(商標)などの水酸化アルミニウムゲルである。リン酸カルシウムナノ粒子(CAP)は、Biosante,Incにより開発されているアジュバントである(Lincolnshire,I11)。対象の免疫原は、粒子の外側に被覆するか、または内部の内側に被包するかの、いずれかとすることができる[Heら,(November 2000)Clin.Diagn.Lab.Immunol.,7(6):899−903]。
【0114】
本発明の免疫原と共に使用される別のアジュバントは、エマルションである。企図されるエマルションとして、水中油型エマルションまたは油中水型エマルションが可能である。免疫原性キメラタンパク質粒子に加えて、このようなエマルションは、周知のごときスクアレン、スクアラン、ピーナッツ油等の油相と、分散剤とを含む。非イオン性分散剤が好ましく、このような材料としてはソルビタンのモノ−、およびジ−C12−C24−脂肪酸エステル、ならびにモノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタンおよびモノオレイン酸マンニドなどのマンニドが挙げられる。
【0115】
このようなエマルションは、例えば、スクアレン、グリセロールおよびモノオレイン酸マンニド(Arlacel(商標)A)などの界面活性剤と任意にスクアランとを、水相中でキメラタンパク質粒子と共に乳化させた油中水型エマルションである。油相の代替成分として、アルファ−トコフェロール、混合鎖ジグリセリド、およびトリグリセリド、ならびにソルビタンエステル類が挙げられる。このようなエマルションの周知の例としては、Montanide(商標)ISA−720、およびMontanide(商標)ISA 703(Seppic,Castres,France)が挙げられる。他の水中油型エマルションアジュバントとしては、国際公開WO95/17210号および欧州特許EP 0 399843号に開示のものが挙げられる。
【0116】
小分子アジュバントの使用も、本発明で企図される。本発明で有用な小分子アジュバントの1つの型は、米国特許第4539205号、米国特許第4643992号、米国特許第5011828号および米国特許第5093318号に記載の7−置換−8−オキソ−または8−スルホ−グアノシン誘導体である。7−アリル−8−オキソグアノシン(ロキソリビン)は、抗原(免疫原)特異的応答を誘導するのに特に効果的であることが示されている。
【0117】
有用なアジュバントとしては、モノホスホリルリピドA(MPL(登録商標))、3−デアシルモノホスホリルリピドA(3D−MPL(登録商標))、シアトルのCorixa Corp.(旧、Ribi Immunochem,Hamilton,Mont)製の周知アジュバントが挙げられる。このアジュバントは、細菌から抽出した3つの成分:モノホスホリルリピド(MPL)A、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)(MPL+TDM+CWS)を、2%スクアレン/Tween(商標)80エマルション中に含有している。このアジュバントは、英国特許GB 2122204B号に教示される方法によって調製することができる。
【0118】
他の化合物は、RC−529(商標)アジュバント{2−[(R)−3−テトラ−デカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−エチル−2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラ−デカノイル]−2−[(R)−3−テトラ−デカノイルオキシテトラデカノイル−アミノ]−p−D−グルコピラノシドトリエチルアンモニウム塩}の表記の下にCorixa Corpから入手可能なものなど、アミノアルキルグルコサミドホスフェート類(AGPs)と称されるMPL(登録商標)アジュバントに構造的に関連している。RC−529アジュバントは、Corixa Corpより入手可能な、RC−529SEとして販売されるスクアレン乳剤にて、およびRC−529AFのような水性製剤中にて入手可能である(米国特許第6355257号および米国特許第6303347号;米国特許第6113918号;および米国特許公開第03−0092643号を参照のこと)。
【0119】
企図されるさらなるアジュバントとして、CpGヌクレオチドモチーフを1回以上(プラス 隣接配列)含む、Coley Pharmaceutical Groupから入手可能な合成オリゴヌクレオチドアジュバントが挙げられる。QS21と命名され、Aquila Biopharmaceuticals,Inc.より入手可能なアジュバントは、南アメリカの木であるQuillaja Saponaria Molinaの樹皮由来のアジュバント活性を有する免疫学的に活性なサポニン画分(例えば、Quil(商標)A)であり、その生産の方法は米国特許第5057540号に開示されている。Quil(商標)Aの誘導体、例えばQS21(Quil(商標)AのHPLC精製画分誘導体、QA21としても知られる)、およびQA17などの他の画分も開示されている。Quillaja Saponaria Molinaサポニン類の半合成および合成誘導体も有用であり、米国特許第5977081号および米国特許第6080725号に記載のものなどがある。Chiron Corp.より入手可能なMF59という名前のアジュバントが、米国特許第5709879号および米国特許第6086901号に記載されている。
【0120】
ムラミルジペプチドアジュバントもまた企図され、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thur−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン[CGP 11637、nor−MDPと称される]、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル(dipalmityol)−s−n−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)エチルアミン[(CGP)1983 A、MTP−PEと称される]が挙げられる。いわゆるムラミルジペプチド類似体が、米国特許第4767842号に記載されている。
【0121】
他のアジュバント混合物として、3D−MPLおよびQS21の組み合わせ(欧州特許EP 0 671948 B1号)、3D−MPLおよびQS21を含む水中油型エマルション(国際公開WO95/17210号、PCT/EP98/05714号)、他の単体と共に製剤化された3D−MPL(欧州特許EP 0 689454 B1号)、コレステロール含有リポソーム中で製剤化されたQS21(国際公開WO96/33739号)、または免疫賦活性オリゴヌクレオチド(国際公開WO96/02555号)が挙げられる。SKB(現在、Glaxo−SmithKline)より入手可能なアジュバントSBAS2(現在、ASO2)は、QS21を含有し、また水中油型エマルション中のMPLもまた有用である。代替となるアジュバントとして、国際公開WO99/52549号に記載のもの、およびポリオキシエチレンエーテルの非粒状懸濁液(英国特許出願UK9807805.8号)が挙げられる。
【0122】
トール様受容体−4(TLR−4)に対する1以上のアゴニストを含有するMPL(登録商標)アジュバントなどのアジュバントもしくはRC−529(登録商標)アジュバントなどの構造的に関連する化合物、またはリピドA模倣物の単独使用もしくは非メチル化オリゴデオキシヌクレオチド含有CpGモチーフなどのTLR−9に対するアゴニストとの併用もまた任意である。
【0123】
別のタイプのアジュバント混合物は、米国特許第6113918号に記載のものなどのアミノアルキルグルコサミンホスフェート類をさらに含有する安定な油中水型エマルションを含む。アミノアルキルグルコサミンホスフェート類のうち、RC−529として知られる分子{(2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル 2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシ−テトラデカノイル]−2−[(R)−3—テトラデカノイルオキシテトラ−デカノイルアミノ]−p−D−グルコピラノシドトリエチルアンモニウム塩)}が最も好ましい。好ましい油中水型エマルションは、国際公開WO9956776号に記載されている。
【0124】
アジュバントは、そのアジュバント、宿主動物および免疫原で変動できるアジュバント量にて利用される。代表的な量は、免疫処置につき約1megから約1mgまでで変動可能である。当業者には、適切な濃度または量を容易に決定できることがわかる。
【0125】
アジュバントをベースとした水中油型エマルションを含むワクチン組成物もまた、本発明の範囲に含まれる。油中水型エマルションは、例えば米国特許第7323182号に記載のものなど、代謝可能な油とサポニンを含みうる。この油とサポニンとは、例えば、1:1から200:1の間の比で存在する。
【0126】
いくつかの実施形態によれば、本発明にかかるワクチン組成物は、1以上のアジュバントを含有してもよく、実質的に無機塩イオンを含まない溶液またはエマルションとして存在することを特徴とし、ここで前記溶液またはエマルションは、ワクチンを等張または低張にすることができる、1以上の水溶性または水乳化可能物質を含有する。水溶性または水乳化可能物質は、例えば、マルトース、フルクトース、ガラクトース、サッカロース、糖アルコール、脂質、およびそれらの組み合わせからなる群より選択してもよい。
【0127】
本発明の製剤は、米国特許出願公開第2004/0077540号に記載のような、例えば上皮結合構造および/または生理を調節することにより粘膜上皮性傍細胞輸送を可逆的に増強する透過性ペプチドなどの、粘膜送達増強剤を任意に含みうる。
【0128】
本発明の多量体マルチエピトープポリペプチドは、いくつかの具体的な実施形態によれば、プロテオソームアジュバントを含む。プロテオソームアジュバントは、髄膜炎菌の外膜タンパク質の精製調製物、および他の細菌からの類似の調製物を含む。これらのタンパク質は、膜貫通タンパク質およびポリンとしてのそれらの役割を反映して、疎水性が高い。それらの疎水性タンパク質とタンパク質との相互作用により、適切に単離した場合、前記タンパク質は、約60〜100ナノメートルの直径の全体または断片化膜ベシクルからなるマルチ分子構造を形成する。このリポソーム様の物理的状態で、プロテオソームアジュバントがタンパク質担体として作用できるとともに、アジュバントとしても作用できるようになる。
【0129】
プロテオソームアジュバントの使用は従来技術で報告されており、「New Generation Vaccines」第2版、Marcel Dekker Inc,ニューヨーク、バーゼル、ホンコン(1997)193−206頁でLowell GHにより概説されている。プロテオソームアジュバントベシクルは、特定のウイルスとほぼ同じサイズであり、疎水性であってかつヒトでの使用に安全であると報告されている。前記概説は、徹底的な透析技術を用いて可溶化界面活性剤を選択的に除去すると形成される、プロテオソームアジュバントベシクルと種々の抗原との間の非共有複合体を含む組成物の製剤を報告している。
【0130】
本発明のポリペプチドは、疎水性部分を通じてプロテオソーム抗原ベシクルに任意に複合される。例えば、抗原は、脂肪酸アシル基などの脂質部分に接合される。このような疎水性部分は、多量体ポリペプチドに直接結合させてもよいし、あるいは、例えば1、2、3もしくは4つ、6つまで、または10のアミノ酸のものなどの短いスペーサーを用いて多量体ポリペプチドを脂肪族基に結合させることもできる。この疎水性アンカーは、プロテオソームアジュバントベシクルの疎水性膜に相互作用する一方で、一般的に親水性の抗原ペプチドを提示する。
【0131】
特に、疎水性アンカーは、多量体ポリペプチドのアミノ末端、またはカルボキシル末端近傍に付着した脂肪酸アシル基を含んでもよい。1つの例は、12の炭素鎖ラウロイル(CH(CH)10CO)であり、8、10、14、16、18、または20の炭素鎖長のアシル基を含むがこれらに限定しない、同様に働く任意の脂肪酸アシル基もまた、疎水性アンカーとして働くことができる。前記アンカーは、免疫強化スペーサーを用いてペプチド抗原に結合させてもよい。このようなリンカーは、ペプチドのコンホメーション構造の維持を補助しうる1〜10アミノ酸からなっていてもよい。
【0132】
2つの成分、すなわち、多量体ポリペプチドおよびプロテオソームアジュバントは、界面活性剤(1種または複数種)の選択された溶液中でそれら成分を混合し、次いでその界面活性剤(1種または複数種)を透析濾過/限外濾過法により除去することによって製剤化してもよい。一般的に、前記組成物に含まれるプロテオソームアジュバントの多量体ポリペプチドに対する比は、好ましくは1:1より高く、そして、例えば1:2、1:3、1:4、上限1:5、1:10または1:20(重量比)であってもよい。その2つの成分の、界面活性剤をベースとした溶液は、同じ界面活性剤または異なる界面活性剤を含有してもよく、また1以上の界面活性剤が、限外濾過/透析濾過に付される混合物中に存在していてもよい。好適な界面活性剤としてTriton、EmpigenおよびMega−10が挙げられる。他の好適な界面活性剤も、使用することができる。界面活性剤は、前記組成物を調製するのに使用される成分の可溶化時に働く。
【0133】
異なる多量体ポリペプチドを含むワクチンは、異なる数多くの抗原ペプチドをプロテオソームアジュバントと混合することによって生産できる。あるいは、2以上のプロテオソームアジュバント/抗原ペプチド組成物を生産して、引き続き混合することもできる。
【0134】
卵の中で生産される市販のインフルエンザワクチンは、ニワトリの卵に対して感受性の個体でアレルギーを誘導するが、多量体ワクチンは、免疫化前後のIgE力価により表されるような応答は誘発しなかった。
【0135】
抗原含有量は、引き起こされる生物学的効果によって最良となるように規定される。当然、測定可能な量の防御抗体の生産をもたらすのに充分な抗原を提示すべきである。ウイルスの生物学的活性の簡便な試験は、試験を行う抗原材料による、その防御抗体の既知の陽性抗血清を枯渇させる能力に関係する。その結果は、評価対象の抗原材料で種々の希釈率にてそれ自体前処置された既知抗血清で前処置された、病原性生物処置マウスに対するLD50(致死用量、50%)の負の対数にて報告される。高い数値は従って、その既知抗血清中の抗体を拘束し、よってその病原性生物に対する抗血清の効果を低減または排除して少量で致死的とする、抗原材料の含有量が高いことを反映する。最終製剤に存在する抗原材料は、未処置対照抗血清で処置した病原性生物から得られた結果と比較して、LD50の負の対数を少なくとも1、好ましくは1.4、増大させるのに充分なレベルであることが好ましい。抗血清対照および好適なワクチン材料に対して得られる絶対値は、当然ながら、選択した病原性生物および抗血清標準に依存する。
【0136】
専門家の文献、特に国際公開WO97/30721号に記載のように、以下の方法も理想的なワクチン製剤を得るために使用しうるものであり、所望の免疫応答を引き起こすことを意図する規定の抗原から始めて、第1工程でその抗原に合うアジュバントが見出される。次の工程で、本発明に定義するような種々の等張化物質、好ましくは糖および/または糖アルコール類を等張またはわずかに低張の濃度にて、抗原およびアジュバントの混合物に、その他は同じ組成で添加し、そしてその溶液をpH4.0〜10.0の範囲、特に7.4の生理的pHに調製することにより、ワクチンは至適化される。その後、第1工程で、従来の生理食塩水緩衝溶液と比較して抗原/アジュバント組成物の溶解性を向上させるであろう物質またはその濃度を求める。候補物質による溶解性特徴の向上が、当該物質がそのワクチンの免疫原性活性の増加をもたらすことができることの第1の指標である。
【0137】
細胞性免疫応答の増加に対する必要条件でありうるものの1つは、APC(抗原提示細胞)への抗原の結合の増加であるので、次の工程で当該物質がこの種の増加をもたらすかどうかの検討を行うことができる。使用される手順は、例えば、APCを蛍光標識化ペプチドまたはタンパク質、アジュバントおよび等張化物質とインキュベートするなど、アジュバントの定義に記載したものと同様であってよい。当該物質によってもたらされた、APCへのそのペプチドの取り込みまたは結合の増大は、スルーフローサイトメトリーを用い、従来の生理食塩水緩衝溶液中に存在するペプチドおよびアジュバント(単独、またはペプチド/アジュバント組成物で)と混合しておいた細胞との比較によって決定できる。
【0138】
第2工程で、その候補物質は、それらの存在でAPCへのペプチドの提示を増加できるかどうか、またその程度を検証すべくインビトロで検討してもよく、細胞上のMHC濃度は、国際公開WO97/30721号に記載の、ペプチドを試験するための方法を用いて測定してもよい。
【0139】
製剤の効率を試験する別の採用可能な方法は、インビトロモデル系によるものである。この方法では、APCをアジュバント、ペプチドおよび候補物質と一緒にインキュベートし、使用したペプチドを特異的に認識するT細胞クローンの相対活性化を測定する(Coliganら,1991;Lopezら,1993)。
【0140】
その製剤の効率は、免疫化された動物における「遅延型過敏」(DTH)反応を検出することにより、細胞性免疫応答によって任意に立証されてもよい。
【0141】
最後に、かかる製剤の免疫調節活性を動物試験にて測定する。
【0142】
本発明の多量体ペプチドおよびポリペプチドは、当該技術分野で既知の、ペプチド、ペプチド多量体およびポリペプチドの合成のための方法を用いて化学的に合成してもよい。これらの方法は一般的に、ペプチド合成の既知原理を基にしており、最も便宜的には、その手法は固相ペプチド合成の既知原理に従って実施できる。
【0143】
本願明細書の「ペプチド」は、ペプチド結合により連結されるアミノ酸の配列を示す。本発明にかかるペプチドは、4〜24アミノ酸残基の配列を含む。多量体ポリペプチドは、少なくとも2つのリピート、最多で50リピートのペプチドエピトープを含む。
【0144】
ペプチド類似体およびペプチド擬似体もまた、本発明の範囲に含まれ、さらに本発明のペプチドの塩類およびエステル類も包含される。本発明にかかるペプチド類似体は、少なくとも1つの非天然アミノ酸、および/または少なくとも1つの封鎖基をそのC末端またはN末端のいずれかに任意に含んでもよい。本発明のペプチドの塩類は、生理的に許容できる有機および無機塩類である。適切な「類似体」の設計は、コンピュータ支援としてもよい。
【0145】
「ペプチド擬似体」という用語は、本発明にかかるペプチドが、例えば、尿素結合、カーバメート結合、スルホンアミド結合、ヒドラジン結合、または他の任意の共有結合などの、少なくとも1つの非ペプチド結合を含むように修飾されていることを意味する。適切な「ペプチド擬似体」の設計は、コンピュータ支援としてもよい。
【0146】
本発明のペプチドの塩類およびエステル類は、本発明の範囲内に包含される。本発明のペプチドの塩類は、生理的に許容できる有機および無機塩類である。本発明のペプチドの機能性誘導体は、当該技術分野で既知の手段によって、残基またはN末端もしくはC末端基上の側鎖として生じる官能基から調製してもよい誘導体を網羅し、それらが医薬上許容できる状態でいる、すなわち、それらが前記ペプチドの活性を破壊せず、かつそれを含有する組成物に有毒性を付与しない限り、本発明に含まれる。これらの誘導体は、例えば、カルボキシル基の脂肪族エステル類、アンモニアまたは一級もしくは二級アミン類との反応により生産されるカルボキシル基のアミド類、アシル部分(例えば、アルカノイルまたは炭素環アロイル基)との反応によって形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、またはアシル部分との反応によって形成される遊離ヒドロキシル基(例えば、セリルまたはスレオニル残基のもの)の、O−アシル誘導体を含んでもよい。
【0147】
「アミノ酸」という用語は、好ましくは炭素骨格上に1,2−1,3−、または1,4−置換パターンにて、アミノ基およびカルボン酸基を有する化合物をいう。α−アミノ酸が最も好ましく、タンパク質に認められる20の天然アミノ酸(グリシン以外のL−アミノ酸である)、対応するD−アミノ酸、対応するN−メチルアミノ酸、側鎖修飾アミノ酸、タンパク質に認められない、生合成により入手可能なアミノ酸(例えば、4−ヒドロキシ−プロリン、5−ヒドロキシ−リジン、シトルリン、オルニチン、カナバニン、ジエンコル酸、β−シアノールアニン(cyanolanine))、および合成により誘導した、アミノ−イソ酪酸、ノルロイシン、ノルバリン、ホモシステインおよびホモセリンなどのα−アミノ酸を含む。β−アラニンおよびγ−アミノ酪酸は、それぞれ1,3および1,4−アミノ酸の例であり、また多くの他のものが当該技術分野で周知である。スタチン様イソエステル類(2つのアミノ酸を含むジペプチドで、アミノ酸中CONH結合がCHOHに置き換わったもの)、ヒドロキシエチレンイソエステル類(2つのアミノ酸を含むジペプチドで、アミノ酸中CONH結合がCHOHCHに置き換わったもの)、還元型アミドイソエステル類(2つのアミノ酸を含むジペプチドで、アミノ酸中CONH結合がCHNH結合に置き換わったもの)およびチオアミドイソエステル類(2つのアミノ酸を含むジペプチドで、アミノ酸中CONH結合がCSNH結合に置き換わったもの)もまた、本発明に有用な残基である。
【0148】
本発明で使用するアミノ酸は、市販のもの、または通例の合成方法によって入手可能なものである。特定の残基は、ペプチドに取り込むために特別な方法を必要とする場合があり、ペプチド配列への逐次的、多角的または収束的な合成アプローチが、本発明で有用である。天然にコードされたアミノ酸およびそれらの誘導体は、IUPAC規約に従う3文字のコードによって表される。示さない限り、L異性体を用いた。
【0149】
当業者に既知のごときアミノ酸の保存的置換が、本発明の範囲に含まれる。保存的アミノ酸置換としては、1つのアミノ酸を同じタイプの官能基または側鎖(例えば、脂肪族、芳香族、正荷電、負荷電)を有する別のものと置き換えることが挙げられる。これらの置換は、経口バイオアベイラビィティ、中枢神経系への侵入、特定の細胞集団への標的指向等を増強しうる。当業者は、単一アミノ酸またはコード化された配列中で少しの割合のアミノ酸を変更、付加または欠失させる、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加であって、その変更の結果、あるアミノ酸を化学的に類似したアミノ酸へと置換させるものが、「保存的に修飾された変異体」であることを認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表が、当該技術分野で周知である。以下の6つの群は各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含んでいる。1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0150】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をさらに十分に例証するために示すものである。しかし、それら実施例は、本発明の広い範囲をどのようにも限定するものとして理解されるべきではない。当業者であれば本発明の範囲を逸脱することなく、本願明細書に開示の趣旨に多くの変更および修飾を加えることを容易に案出することができる。
【実施例】
【0151】
(材料および方法)
(多量体マルチエピトープポリペプチド)
表1に列挙するインフルエンザウイルスペプチドエピトープE1〜E9のいくつかのリピートを含む多量体マルチエピトープポリペプチドの例を示す。それらポリペプチドは、アミノ酸と、スペーサーとしての短いペプチドを含んでいる。これらポリペプチドは、交互連続重合構造またはブロック共重合体構造で配置される。それらポリペプチドは、当該ポリペプチドをさらに操作するための種々の制限部位を含むポリヌクレオチド構築体から、発現ベクターでの発現によって調製される。そのポリヌクレオチド構築体は、商業的供給源から供給される。
【0152】
(ワクチン)
実施例1〜3に示す多量体マルチエピトープポリペプチドから調製したワクチンを、種々のマウス系統の免疫化研究に使用した。生産して試験した具体的なワクチンの例は、以下に示すとおりである。
【0153】
多量体#11は、実施例1に示す、交互連続重合構造[E1E2E3E4E5E6E7E8E9]で配置される9つのインフルエンザペプチドエピトープの5つのリピートを含む多量体ポリペプチドから作製する。
【0154】
多量体#12は、実施例3に示す、交互連続重合構造[E1E2E3E4E5E6E7E8E9]で配置される9つのインフルエンザペプチドエピトープの3つのリピートを含む多量体ポリペプチドから作製する。
【0155】
多量体#14は、実施例2に示す、ブロック共重合体構造[E1]−[E2]−[E3]−[E4]−[E5]−[E6]−[E7]−[E8]−[E9]で配置される9つのインフルエンザペプチドエピトープの3つのリピートを含む多量体ポリペプチドから作製する。
【0156】
(免疫化研究)
マウスの3種の系:非近交系(ICR)、近交系(BALB/c)、およびヒトHLA A* 0201分子に対してトランスジェニックな系(HLA A*0201)を、免疫化研究用や、いくつかの実験でウサギに対して使用した。使用したウイルスは、以下のもの:A/Texas/1/77、A/Wisconsin/67/05(WISC)、A/WSN/33(WSN)、B/Malaysia/2506/04(MAL)、A/California/07−2007、A/New Caledonia20/99(NC)、その他を含んでいた。すべての研究は、100μL中150megの多量体マルチエピトープポリペプチドの筋肉内投与で、両後肢に同様に投与して行った。
【0157】
(実施例1:交互連続構造で配置される異なる9つのエピトープを含むユニットの5つのリピートを備えた多量体ポリペプチド)
本実施例は、交互連続重合構造[E1E2E3E4E5E6E7E8E9]で配置される9つのインフルエンザペプチドエピトープの5つのリピートを含む多量体ポリペプチドの例である。推定分子量は、80kDである。
【0158】
この多量体ポリペプチドのアミノ酸配列を、ヒスチジンタグを含め、図1Bに示す。この多量体ペプチドを調製するのに用いるポリヌクレオチド構築体のDNA配列を図1Aに示す。
【0159】
(実施例2:ブロック共重合体構造で配置される異なる9つのエピトープの各々の3つのリピートを備えた多量体ポリペプチド)
本実施例にて、ブロック共重合体構造[E1]−[E2]−[E3]−[E4]−[E5]−[E6]−[E7]−[E8]−[E9]で配置される9つのインフルエンザペプチドエピトープの3つのリピートを含む多量体ペプチドを調製するのに用いるポリヌクレオチド構築体のDNA配列を図2Aに示し、対応するアミノ酸配列を図2Bに示す。推定分子量は、48kDである。
【0160】
(実施例3:交互連続構造で配置される9つのエピトープを含むユニットの3つのリピートを備えた多量体ポリペプチド)
本実施例は、交互連続重合構造[E1E2E3E4E5E6E7E8E9]で配置される9つのインフルエンザペプチドエピトープの3つのリピートを含む多量体ポリペプチドの例である。推定分子量は、48kDである。
【0161】
この多量体ポリペプチドのアミノ酸の配列を図3Bに示す。この多量体ペプチドを調製するのに用いるポリヌクレオチド構築体のDNA配列を図3Aに示す。
【0162】
(実施例4:細胞性免疫応答)
A/Texas/1/77、A/WisxWisc/67/05、A/California/07−2007、およびB/Malaysia/2506/04の株の、異なる2種の濃度の刺激性インフルエンザウイルスに対する細胞性免疫応答を評価した。トランスジェニックマウス(HLA A*0201に対する遺伝子組換え(transgenesys))マウスに、IFA(フロイント不完全アジュバント)に乳化した2種の多量体ワクチン:#11および#14を1回、ワクチン接種した。免疫化後7〜10日に、それらの脾臓およびリンパ節(LN)を取り出して、さらに前記のウイルスとインキュベートした。増殖は、チミジン取り込みによって測定し、刺激性ウイルスとインキュベートしたリンパ球に対する増殖指数として図4に示す。増殖は、300〜1300pg/mlの範囲で、IFN−ガンマ分泌と相関していた。この応答は、ウイルス感染を攻撃するための、より確実な免疫を付与することのできる、ワクチンに対するTh1細胞媒介免疫応答を示唆している。
【0163】
(実施例5:免疫血清による、免疫化抗原およびウイルスの認識)
交互連続重合構造[E1E2E3E4E5E6E7E8E9]で配置される9つのエピトープの5つのリピートを含む多量体マルチエピトープポリペプチド(多量体#11)で、またはブロック共重合体構造[E1]−[E2]−[E3]−[E4]−[E5]−[E6]−[E7]−[E8]−[E9]で配置される9つのエピトープの3つのリピートを含む多量体マルチエピトープポリペプチド(多量体#14)で、50%グリセロールのPBSに懸濁させたもの、もしくはアジュバントとしてIFAに懸濁させたものを用いて、または溶媒対照として50%グリセロールのPBSを用いて、ICRマウスを免疫化した。抗原ポリペプチド(それぞれ#11および#14)で免疫化したマウスの血清による、既知の防御インフルエンザエピトープHA 91−108およびM2 2−12、ならびにいくつかのインフルエンザウイルス(WISC、WSN、NC、およびMAL)の認識をELISAによって調べ、その結果を表4aおよび4bにまとめる。免疫前血清と2〜3週間の間隔で3回IM(筋肉内)免疫化した後の血清との間の力価における少なくとも4倍の上昇として、有意な認識を定義する。
【0164】
表4a:免疫前血清、および50%グリセロールのPBS中の多量体マルチエピトープポリペプチドで3回免疫化した後の血清の種々の抗原に対する力価の倍数評価(fold elevation)
【表4】

【0165】
表4b:免疫前血清、およびアジュバントとしてのIFA中の多量体マルチエピトープポリペプチドで3回免疫化した後の血清の種々の抗原に対する力価の倍数評価
【表5】

【0166】
両群とも免疫化抗原を高く認識することが示され、ペプチドHA 91−108およびM2 2−18は、#14で免疫化したマウスの血清によってのみ認識されたが、#11で免疫化したマウスからの血清では認識されなかった。
【0167】
正常ヒト血清は、多量体ワクチン候補物を認識することができ、このワクチンでヒト被検者を免疫化した後に誘発されるべき、潜在的な記憶応答が示唆された。#11および#14に対する4つのヒト血清の平均力価は、それぞれ6000および6400であった。
【0168】
(実施例6:H3N2 A/Texas/1/77での高度に致死的な攻撃に対する防御)
3週間の間隔で8匹のトランスジェニックマウスの群を3回、多量体#14ワクチンで、またはPBSで筋肉内に免疫化した。高度に致死的な用量(300LD50)のH3N2 A/Texas/1/77での攻撃感染は、最後の追加免疫の3週間後に与えた。マウスは、感染の5日後に屠殺した。感染に用いたウイルスが大量であったにも関わらず、図5に示されるように、マウス肺のウイルス力価の有意な低減が観察された。
【0169】
(実施例7:インビボ有効性研究)
2種のワクチン、すなわち50%グリセロールのPBSに、またはフロイント不完全アジュバントに懸濁した多量体ポリペプチドを、インビボで評価している。
【0170】
精製ワクチンをいくつかのマウスモデルで用いて、その有効性、作用の機構、および反復投与毒性検査に先駆けた予備的な毒性データを確立する。液性応答だけでなく、薬力学的研究も、いくつかのマウス系で実施する。ワクチンの評価に採用される1つの動物モデルが、HLA A* 0201に対するトランスジェニックマウスである。このモデルは、至適用量の決定用に、さらにはその作用機構を解明するための免疫応答の細胞パラメータ用にも使用される。
【0171】
(実施例8)
ワクチンの有効性を、ICRおよびトランスジェニック(HLA A* 0201)マウスを用いた予備研究で立証した。マウスに3週間の間隔で3回、アジュバント(IFA)と共に、およびIFAなしで、ワクチン#11、#12および#14を150meg/マウスの用量にて筋肉内へワクチン接種した。最後の免疫化の3〜4週間後に、マウスを300LD50のマウス適応性インフルエンザウイルスH3N2株(A/Texas/1/77)で感染させた。感染の後5日、生存率をモニターした。処置群と、IFAと共に、およびIFAなしで50%グリセロールのPBSにて免疫化した対照群とを比較した。
【0172】
ICRマウスにおいて300LD50感染後の生存率(図6A)は100%であったが、一方対照群(50%グリセロールのPBS)においては、20%の生存率が示された。
【0173】
それらの肺におけるウイルス量を、ワクチン#11および#14のみにつき、図6Bに詳細に示す。100%生存の群でのウイルス量は、対照群でのウイルス量よりも有意に低いことがわかった(p<0.05)。1群当たりのマウスの数が少ない(5匹のマウス)ため、統計解析は、フィッシャーの両側直接確率検定を用いて行った。5%以下のp値であれば、統計的に有意であると考えられる。データは、SAS(登録商標)バージョン9.1(SAS Institute,Cary,ノースカロライナ州)を用いて解析した。
【0174】
前記と同じワクチン接種および感染手順を用いて、PBS/50%グリセロール中のワクチンで免疫化したトランスジェニックマウス(図7)における生存に関しては、対照群で20%であったのに対し、#11および#14でのワクチン接種での生存率はそれぞれ、80%および60%であった。ワクチン#12は、このマウスモデルにおいても、また試験したアジュバント加(IFA)ワクチンでも防御性がなかった。この動物モデルでは、または少なくとも本研究では、アジュバントの添加は不必要で、むしろワクチン防御の潜在性を低減するらしいと考えられる。
【0175】
(実施例9:反復投与毒性)
反復投与毒性試験を、http://www3.niaid.nih.gov/daids/vaccine/Science/VRTT/06_SafetyTest.htm.に基づくプロトコルに従って、50%グリセロールのPBSに、またはフロイント不完全アジュバントに懸濁したワクチン#14(3つのブロックリピートでの多量体ワクチン)を用いて実施する。
【0176】
予備的な用量依存的毒性研究を、ICR非近交系マウスにて実施する。屠殺の各時点につき、各性別に対し1用量あたり3匹の動物を用いて、1、2および3回ワクチンを筋肉内投与した後の、それら動物の主要臓器の組織病理学的検査を行う。
【0177】
隔週で3回のワクチン接種を含む6週反復投薬にて用いる、臨床を意図とした最高用量は、その産物の毒性を査定するのに充分であると考えられ、2回の反復が可能となる。この研究には、生存中の(in−live)段階をモニターすることと、処置期間の間に認められる何らかの毒性効果が可逆的であったことを立証するために、免疫化後2日および2週間のすべての主要臓器の完全な組織病理学的検査、ならびに剖検を含む、毒性パラメータの完全な範囲をその後行うことが含まれる。
【0178】
(実施例10:第I/IIa相臨床試験)
この臨床研究の主な目的は、単回または二回の筋肉内投与後の予防的抗インフルエンザワクチンの安全性を調べることにある。この研究は、18歳から49歳までの年齢の健常なボランティアで、臨床背景制御下に行う。第2の目的は、多量体ワクチンの投与によって誘導される免疫原性を推定することにある。この第I/II相研究では、最も一般的な急性の有害作用を査定し、また副作用が高発生率で起こることなく患者が安全に取ることのできる用量の規模を調べる。
【0179】
(実施例11:市販のインフルエンザワクチンでの免疫化後に多量体ワクチンで免疫化したマウス血清における、抗ウイルス性応答)
HLA A* 0201に対するトランスジェニックマウスを市販の不活化インフルエンザワクチン(スプリットビリオン(split virion))BP Vaxigrip(登録商標)で第0、60、81日に3回、またはVaxigrip(登録商標)で第0日に免疫化して、多量体ワクチン#11、#12および#14でさらに2回(第60および81日に)免疫化した。免疫化の前(免疫前)、および最後の免疫化後に採血を実施した。いくつかのインフルエンザ株に対する抗体:H3N2:A/Wisconsin/67/05、A/Texas/1/77、A/California/07/2007、A/Fujian/411/2002、A/Moscow/10/99およびA/Panama/2007/99;H1N1:A/New Caledonia/20/99、A/WSN/33、A/PR8/34 B:B/Malaysia/2506/04、B/Lee/40を、集めた血清にて定量した。
【0180】
ヒトの単回免疫化を意図したVaxigrip(登録商標)で先ず免疫化した後、(A/Californiaに対する、力価の4倍上昇を除き)前記ウイルスすべてに対して、力価の有意な上昇はなかった。
【0181】
結果を表5Aおよび5Bに示す。類似の液性応答が立証された免疫化研究からの他のデータと比較して、Vaxigrip(登録商標)を用いた先行免疫化は、多量体製剤では、ウイルスに対する応答が有意に上昇しなかった。前記多量体ワクチンで2回免疫化した後は、免疫前後の力価に最高で8倍の上昇が観察された。PBSを投与した対照群は、すべてのウイルスに対して陰性であった。異なる多量体変異体の比較では、#14がウイルスに対する液性応答という点から最良の候補であった。
【0182】
表5A:H3N2
【表6】

t=力価、f=倍
【0183】
表5B:H1N1およびインフルエンザB
【表7】

t=力価、f=倍
【0184】
(実施例12:ペプチド合成)
代表的な固相ペプチド合成を用い、以下の材料:保護アミノ酸、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル−N−ヒドロキシスクシンイミド(Fmoc−OSu)、ブロモ−tris−ピロリドン−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBrop)、リンク(Rink)アミドメチルベンズヒドリルアミン(MBHA)ポリスチレン樹脂および多くの有機物(organic)でペプチドおよび多量体ペプチドを合成し、固相ペプチド合成(SPPS)用の支持体は、Nova Biochemicals(Laufelfingen,スイス)から購入した。Bis(トリクロロメチル)カーボネート(BTC)は、Lancaster(Lancashire,イギリス)から購入し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用のトリフルオロ酢酸(TFA)および溶媒は、Bio−Lab(Jerusalem,イスラエル)から購入した。
【0185】
有機化学用溶媒は、Frutarom(Haifa、イスラエル)から購入した。核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、Bruker AMX−300MHz分光計で記録した。質量スペクトルは、Finnigan LCQ DUOイオントラップ質量分析計にて実施した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Merck F245 60シリカゲルプレート(Darmstadt、ドイツ)で実施した。HPLC分析は、Vydac分析用RPカラム(C18、4.6X250mm、カタログ番号201TP54)を用いて実施し、Merck−Hitachi L−7100ポンプと、215nmで作動するMerck−Hitachi L−7400可変波長検出器とにて行った。移動相は、0.1%TFAを含む水に対応する溶媒Aと、0.1%TFAを含むアセトニトリル(ACN)に対応する溶媒Bとを用いた勾配系からなるものであった。この移動相は、0分から5分までは95%のAで開始し、その後5分から55分までに、5%から95%のBの直線勾配とした。この勾配は、さらに5分間、95%のBで保ち、その後60分から65分で、95%のAおよび5%のBに落とした。この勾配をさらに5分間、95%のAで保ち、カラムの平衡化を成し遂げた。移動相の流速は、1mL/分であった。ペプチド精製は、Vydac分取用RPカラム(C8、22×250mm、カタログ番号:218TP1 022)を用いて、逆相HPLC(RP−HPLC)(L−6200Aポンプ付属,Merck−Hitachi,日本)により実施した。分取HPLCはすべて、0.1%TFAを含む水に対応する溶媒Aと、0.1%TFAを含むACNに対応する溶媒Bとを用いた勾配系を用いて行った。
【0186】
本発明を詳しく記載しているが、当業者であれば多くの変更および修飾を加えることができると理解するはずである。従って本発明は、詳説した実施形態に限定されると理解すべきでなく、本発明の範囲および概念は以下の特許請求の範囲を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互連続重合構造(X...Xおよびブロック共重合体構造(X(X(X...(Xから選択される構成にて配置される、複数のインフルエンザウイルスペプチドエピトープの多重コピーを含む、合成または組換えインフルエンザマルチエピトープポリペプチド。
【請求項2】
i.B(XZXZ...XB;およびii.B(XZ(XZ...(XBからなる群より選択され、ここで、Bは1〜4アミノ酸残基の任意の配列であり;nは各出現ごとに独立に2〜50の整数であり;mは3〜50の整数であり;X、X...Xの各々は4〜24アミノ酸残基からなるインフルエンザペプチドエピトープであり;Zは各出現ごとに1〜4アミノ酸残基の結合またはスペーサーであり;かつ前記ポリペプチド中のアミノ酸残基の最大数は約1000である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
nは各出現ごとに独立に2〜50の整数であり;mは3〜15の整数であり;X〜Xの各々は4〜24アミノ酸残基からなるB細胞型エピトープ、T−ヘルパー(Th)型エピトープ、および細胞毒性リンパ球(CTL)型エピトープからなる群より選択されるインフルエンザペプチドエピトープであり;かつ前記ポリペプチド中のアミノ酸残基の最大数は約600である、請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記インフルエンザペプチドエピトープが、ヘマグルチニン(HA)ペプチド、M1ペプチド、M2ペプチド、および核タンパク質(NP)ペプチドからなる群より選択される、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項5】
mは9であり、かつnは3〜5の整数である、請求項4記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記インフルエンザペプチドエピトープが、配列番号1〜配列番号82からなる群より選択される、請求項5記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記インフルエンザペプチドエピトープが、HA 354−372(E1、配列番号82)、HA 91−108(E2、配列番号48)、Ml 2−12(E3、配列番号25)、HA 150−159(E4、配列番号52)、HA 143−149(E5、配列番号51)、NP 206−229(E6、配列番号64)、HA 307−319(E7、配列番号59)、NP 335−350(E8、配列番号69)、およびNP 380−393(E9、配列番号70)からなる群より選択される、請求項6記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記インフルエンザペプチドエピトープが、HA 354−372(E1、配列番号82)、HA 91−108(E2、配列番号48)、M1 2−12(E3、配列番号25)、HA 150−159(E4、配列番号52)、HA 143−149(E5、配列番号51)、NP 206−229(E6、配列番号64)、HA 307−319(E7、配列番号59)、NP 335−350(E8、配列番号69)、およびNP 380−393(E9、配列番号70)からなる、請求項6記載のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号84に示す、請求項8記載のポリペプチド。
【請求項10】
配列番号86に示す、請求項8記載のポリペプチド。
【請求項11】
配列番号88に示す、請求項8記載のポリペプチド。
【請求項12】
以下の交互連続重合構造[E1E2E3E4E5E6E7E8E9]で配置される異なる9つのインフルエンザウイルスペプチドエピトープを含み、ここで、nは3または5であり;E1はHA 354−372(配列番号82)、E2はHA 91−108(配列番号48)、E3はM1 2−12(配列番号25)、E4はHA 150−159(配列番号52)、E5はHA 143−149(配列番号51)、E6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70)である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項13】
以下のブロック共重合体構造[E1E1E1−E2E2E2−E3E3E3−E4E4E4−E5E5E5−E6E6E6−E7E7E7−E8E8E8−E9E9E9]で配置される異なる9つのインフルエンザウイルスペプチドエピトープの3つのリピートを含み、ここでE1はHA 354−372(配列番号82)、E2はHA 91−108(配列番号48)、E3はM1 2−12(配列番号25)、E4はHA 150−159(配列番号52)、E5はHA 143−149(配列番号51)、E6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70)である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項14】
以下の交互連続重合構造[E1E2E3E4E5]で配置される異なる5つのB細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープの6つのリピートを含み、ここでE1はHA 354−372(配列番号82)、E2はHA 91−108(配列番号48)、E3はM1 2−12(配列番号25)、E4はHA 150−159(配列番号52)、E5はHA 143−149(配列番号51)である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項15】
以下の交互連続重合構造[E7E8E9E6]で配置される異なる4つのT細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープの6つのリピートを含み、ここでE6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70)である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項16】
以下の交互連続重合構造[E7E8E9E6]で配置される異なる4つのT細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープの4つのリピートを含み、ここで、nは6であり、またここでE6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70)であって、さらにここで前記多量体ポリペプチドは担体タンパク質に融合される、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項17】
以下のブロック共重合体構造[E2E2E2E2E2E2−E1E1E1E1E1E1−E3E3E3E3E3E3−E4E4E4E4E4E4−E5E5E5E5E5E5−E6E6EE6E6E66−E7E7E7E7E7E7−E8E8E8E8E8E8−E9E9E9E9E9E9]で配置される異なる9つのインフルエンザウイルスペプチドエピトープの6つのリピートを含み、ここで、E1はHA 354−372(配列番号82)、E2はHA 91−108(配列番号48)、E3はM1 2−12(配列番号25)、E4はHA 150−159(配列番号52)、E5はHA 143−149(配列番号51)、E6はNP 206−229(配列番号64)、E7はHA 307−319(配列番号59)、E8はNP 335−350(配列番号69)、かつE9はNP 380−393(配列番号70)である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項18】
担体配列を更に含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記ペプチドエピトープが担体ポリペプチドの配列内に挿入される、請求項24記載のポリペプチド。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のインフルエンザマルチエピトープポリペプチドをコード化する、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項21】
配列番号84、配列番号86、および配列番号88からなる群より選択されるポリペプチド配列をコード化する、請求項20記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項22】
配列番号83、配列番号85、および配列番号87からなる群より選択される配列を含む、請求項20記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項1記載の少なくとも1つのポリペプチドを含む、インフルエンザに対して被検者を免疫化させるためのワクチン。
【請求項24】
第1ポリペプチドは複数のB細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープを含み、かつ第2ポリペプチドは複数のT細胞型インフルエンザウイルスペプチドエピトープを含む、請求項23記載のワクチン。
【請求項25】
前記第1ポリペプチドは請求項17記載のポリペプチドであり、かつ前記第2ポリペプチドは請求項18記載のポリペプチドである、請求項23記載のワクチン。
【請求項26】
前記第1ポリペプチドは請求項17記載のポリペプチドであり、かつ前記第2ポリペプチドは請求項19記載のポリペプチドである、請求項23記載のワクチン。
【請求項27】
さらにアジュバントを含む、請求項23記載のワクチン。
【請求項28】
前記アジュバントが、油中水型エマルション、脂質エマルション、およびリポソームからなる群より選択される、請求項27記載のワクチン。
【請求項29】
前記アジュバントが、Montanide(登録商標)、ミョウバン、ムラミルジペプチド、Gelvac(登録商標)、キチン微粒子、キトサン、コレラ毒素サブユニットB、Intralipid(登録商標)、およびLipofundin(登録商標)からなる群より選択される、請求項28記載のワクチン。
【請求項30】
前記アジュバントがMontanide(登録商標)である、請求項29記載のワクチン。
【請求項31】
被検者の免疫応答を誘導し、インフルエンザに対する防御を付与する方法であって、前記方法は、請求項23〜30のいずれかに記載のワクチンを前記被検者に投与することを含む方法。
【請求項32】
前記ワクチンの投与の経路が、筋肉内、鼻腔内、経口、腹腔内、皮下、局所、皮内、および経皮送達から選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記ワクチンが鼻腔内に投与される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記ワクチンが筋肉内に投与される、請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記ワクチンが皮内に投与される、請求項32記載の方法。
【請求項36】
インフルエンザに対する免疫化用の、請求項1〜19のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項37】
インフルエンザに対する免疫化用のワクチン組成物の調製のための、請求項1〜19のいずれかに記載のポリペプチドの使用。
【請求項38】
ポリペプチドの生産のための、請求項20〜22のいずれかに記載の単離されたポリヌクレオチドの使用。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−535026(P2010−535026A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518815(P2010−518815)
【出願日】平成20年8月3日(2008.8.3)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001062
【国際公開番号】WO2009/016639
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(510024961)ビオンドヴァックス ファーマシューティカルズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】