説明

多階調フォトマスク、多階調フォトマスク用ブランク及びパターン転写方法

【課題】反射防止層の一部が欠損した場合であってもレジスト残膜厚の低下を抑制する。
【解決手段】 遮光部は、半透光膜、反射防止層を上層部に有する遮光膜が透明基板上にこの順に積層されてなり、反射防止層の一部が欠損したときであっても、遮光部の光学濃度がi線〜g線の範囲内の代表波長の光に対して3.0以上となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display:以下FPDと呼ぶ)等の製造に用いられる多階調フォトマスク、前記多階調フォトマスクの製造方法、及び前記多階調フォトマスクを用いたパターン転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばFPD用の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下TFTと呼ぶ)基板は、遮光部及び透光部からなる転写用パターンが透明基板上に形成されたフォトマスクを用い、例えば5回〜6回のフォトリソグラフィ工程を経て製造されてきた。近年、フォトリソグラフィ工程数を削減するため、遮光部、半透光部、及び透光部を含む転写用パターンが透明基板上に形成された多階調フォトマスクが用いられるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−189280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の多階調フォトマスクの遮光部は、透明基板上に半透光膜と遮光膜とがこの順に形成されてなり、半透光部は、半透光膜が透明基板上に形成されてなり、透光部は、透明基板が露出してなる構成とすることができる。又は、遮光部を構成する遮光膜の上層部には、反射防止層を形成することもできる。このような多階調フォトマスクは、上述のように例えばTFT基板等の被転写体上のレジストパターン形成に用いられる。具体的には、被転写体上のレジスト膜に多階調マスクを介して露光光を照射し、レジスト膜に多階調フォトマスクの転写用パターンを転写して部分的にレジスト残膜厚の異なるレジストパターンを形成する。
【0005】
例えば、被転写体上にポジ型レジストを塗布し、このレジスト膜に上記の多階調フォトマスクを用いて露光する場合、フォトマスクの遮光部に対応する被転写体上の領域では、露光光が実質的に到達せず、レジストを感光しないことが前提である。このため、該フォトマスクの遮光部は所定値以上の光学濃度をもつ必要がある。
【0006】
上記文献1には、透過率低減膜と透過率制御膜を合わせた光学濃度が3.0以上とされた、グレートーンマスク(多階調フォトマスク)が記載されている。しかしながら、本発明者の検討によると、これだけでは不十分であることが見出された。すなわち、多階調フォトマスクの遮光部における光学濃度が3.0以上であったとしても、この多階調フォトマスクにより転写を行うと、被転写体上のレジストパターンの遮光部に対応する領域内に、レジスト残膜が所定値よりも薄い部位が局所的に生じてしまうことがあった。すなわち、遮光部内に、露光光に対する遮光効果が他の領域より局所的に劣る箇所、つまり、所定波長の光に対する光学濃度が局所的に低下した箇所が生じてしまう場合があった。
【0007】
発明者等は、係る光学濃度の低下が、遮光部に形成された膜の部分的な欠損により起こり得ることを突き止めた。例えば、遮光膜の上層部に反射防止層を形成する際に層中に取り込まれた異物がのちに脱落することで、反射防止層の表面にピンホール状の窪み等が生じ、遮光部の光学濃度を局所的に低下させてしまうことを突き止めた。なお、多階調フォトマスクでは、遮光部と、半透光部(異なる露光光透過率を有する、複数の半透光部をもつ場合を含む)は、それぞれ、被転写体上に形成しようとするレジストパターンの残膜厚と相関をもっている。すなわち、フォトマスク上の各領域の露光光透過率が、設計どおりに制御され、これにより、形成されるレジストパターンの段差形状が制御されなければ、このレジストパターンを用いたエッチング加工が精緻に行えない。仮に、遮光部と半透光部の間の透過率差が所定量を下回れば、形成されるレジストパターンの所定の段差が得られず、液晶パネル基板等のパターン形成精度が得られない。このため、遮光部における光学濃度の低下はいわゆるバイナリフォトマスク以上に問題となり得る。
【0008】
そこで本発明は、多階調フォトマスクを用いた際に、被転写体上に形成するレジストパターンのレジスト残膜厚の制御性を向上させることが可能な多階調フォトマスク、該多階調フォトマスクの製造方法、及び該多階調フォトマスクを用いたパターン転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、遮光部、半透光部、及び透光部を含む所定の転写用パターンが透明基板上に形成された多階調フォトマスクであって、前記遮光部は、前記透明基板上に形成された半透光膜、及び遮光膜を含み、前記半透光部は、前記透明基板上に形成された前記半透光膜が露出してなり、前記透光部は、前記透明基板が露出してなり、前記遮光部を構成する前記遮光膜は、該遮光膜の表面側に形成された反射防止層を含み、前記反射防止層を除いた前記遮光部の光学濃度がi線〜g線の範囲内の代表波長の光に対して3.0以上となるように、前記遮光部に形成された膜素材と膜厚とが設定されている多階調フォトマスクである。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記反射防止層を除いた前記遮光膜の光学濃度と、前記半透光膜の光学濃度と、の総和がi線〜g線の範囲内の代表波長の光に対して3.0以上となるように、前記遮光膜及び前記半透光膜の膜素材と膜厚とが設定されている第1の態様に記載の多階調フォトマスクである。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記反射防止層を除いた前記遮光膜の前記光学濃度が前記光に対して3.0以上となる第1の態様又は第2の態様に記載の多階調フォトマスクである。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記遮光膜は、クロムを主成分とし、前記反射防止層は、酸素、窒素、または炭素を含むクロム化合物からなる第1の態様から第3の態様に記載の多階調フォトマスクである。
【0013】
本発明の第5の態様は、前記反射防止層は、前記反射防止層を除いた遮光膜の成膜に引き続き、同一の成膜チャンバにおいてスパッタ法により成膜されたものである第1の態様から第4の態様に記載の多階調フォトマスクである。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1の態様から第5の態様のいずれかに記載の多階調フォトマスク介し、被転写体上に形成されている被転写レジスト膜に露光光を照射することにより、前記被転写レジスト膜に前記転写用パターンを転写する工程を有するパターン転写方法である。
【0015】
本発明の第7の態様は、遮光部、半透光部、及び透光部を含む所定の転写用パターンを透明基板上に形成するための多階調フォトマスク用ブランクであって、前記透明基板上に、半透光膜と、クロムを主成分とする遮光膜とをこの順に積層し、前記遮光膜は、表面側に反射防止層を含み、前記反射防止層を除いた前記遮光膜の光学濃度と、前記半透光膜の光学濃度と、の総和が、i線〜g線の範囲内の代表波長の光に対して3.0以上となるように、前記遮光膜及び前記半透光膜の膜素材と膜厚とが設定されている多階調フォトマスク用ブランクである。
【0016】
本発明の第8の態様は、前記反射防止層は、酸素、窒素、または炭素のいずれかを含むクロム化合物からなる第7の態様に記載の多階調フォトマスク用ブランクである。
【0017】
本発明の第9の態様は、前記反射防止層は、前記反射防止層を除いた遮光膜の成膜に引き続き、同一の成膜チャンバにおいてスパッタ法により成膜されたものである第7の態様又は第8の態様に記載の多階調フォトマスク用ブランクである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る多階調フォトマスク、多階調フォトマスク用ブランク及び該多階調フォトマスクを用いたパターン転写方法によれば、反射防止層に生じやすい局所的な膜欠損が発生しても被転写体上の遮光部に対応する部分のレジスト残膜厚の低下を抑制でき、レジスト残膜厚の制御性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る多階調フォトマスクの部分断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る多階調フォトマスクを用いたパターン転写方法を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る多階調フォトマスクの製造工程のフロー図である。
【図4】(a)は、本発明の一実施形態に係る多階調フォトマスクにおいて反射防止層に欠損が生じた場合のパターン転写の様子を示す断面図であり、(b)は、従来例に係る多階調フォトマスクにおいて反射防止層に欠損が生じた場合のパターン転写の様子を示す断面図である。
【図5】従来例に係る多階調フォトマスクにおいて反射防止層に欠損が生じる様子を示す説明図であって、(a)は、反射防止層に異物が発生している様子を示す断面図であり、(b)は、反射防止層から異物が脱落した様子を示す断面図である。
【図6】(a)は、従来例に係る多階調フォトマスクにおいて反射防止層に欠損が生じた場合のパターン転写の様子を示す断面図であり、(b)は、参考例に係るバイナリマスクにおいて反射防止層に欠損が生じた場合のパターン転写の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る多階調フォトマスク10の部分断面図である。図2は、多階調フォトマスク10を用いたパターン転写方法を示す断面図である。図3は、本実施形態に係る多階調フォトマスク10の製造工程のフロー図である。
【0021】
(1)多階調フォトマスクの構成
図1に示す多階調フォトマスク10は、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)用の薄膜トランジスタ(TFT)基板の製造等に用いられる。ただし、図1は多階調フォトマスクの積層構造を例示するものであり、実際のパターンは、これと同一とは限らない。
【0022】
多階調フォトマスク10は、遮光部110、半透光部115、及び透光部120を含む所定の転写用パターンが透明基板100上に形成された構成を持つ。この多階調フォトマスク10は、透明基板上に半透光膜101及び遮光膜103が形成された多階調フォトマスク用ブランクを用い、半透光膜101及び遮光膜103にそれぞれ適切なパターニングを施して製造することができる。遮光部110は、半透光膜101、及び遮光膜103(遮光層102a及び反射防止層102b)が透明基板100上にこの順に積層されてなる。半透光部115は、透明基板100上に形成された半透光膜101が露出してなり、透光部120は、透明基板100が露出してなる。
【0023】
透明基板100は、例えば石英(SiO)ガラスや、SiO,Al,B,RO(Rはアルカリ土類金属),RO(Rはアルカリ金属)等を含む低膨張ガラス等からなる平板として構成されている。透明基板100の主面(表面及び裏面)は、研磨されるなどして平坦且つ平滑に構成されている。透明基板100は、例えば一辺が2000mm〜2400mm程度の方形とすることができる。透明基板100の厚さは例えば3mm〜20mm程度とすることができる。
【0024】
半透光膜101は、モリブデン(Mo)やタンタル(Ta)等の金属材料とシリコン(Si)とを含む材料からなる金属シリサイド化合物とすることができる。具体的には、例えばMoSix、MoSiN、MoSiON、MoSiCON、TaSix等からなる。半透光膜101は、フッ素(F)系のエッチング液(又はエッチングガス)を用いてエッチング可能なように構成されている。また、半透光膜101は、後述のクロム用エッチング液に対するエッチング耐性を有する。
【0025】
尚、本態様では、半透光膜が1つであるが、本発明の多階調フォトマスクは、半透光膜を複数有し、それぞれがパターニングされたものにも適用できる。すなわち、それぞれ異なった露光光透過率をもつ複数の半透光部をもつ多階調フォトマスクも、本発明の多階調フォトマスクに含まれる。その場合、各半透光部は、それぞれに必要な露光光透過率を満たし、エッチング加工性を考慮した素材と膜厚を選択することができる。
【0026】
遮光膜103は、後に詳述するように上層部に反射防止層102bを有している。反射防止層102bを除く遮光膜103部分(遮光層102a)は、クロム(Cr)またはクロムを主成分とするクロム化合物からなるクロム含有膜で構成されている。遮光膜103は、例えば硝酸第2セリウムアンモニウム((NHCe(NO)及び過塩素酸(HClO)を含む純水からなるクロム用エッチング液を用いてエッチング可能なように構成されている。この遮光層102aは、スパッタ法により成膜することができる。ターゲットを例えば金属クロムとし、スパッタリングガス(Arなど)を用いることができる。
【0027】
遮光膜103の表面側(遮光層102aの上)には、反射防止層102bが形成されている。反射防止層102bは、例えば酸化クロム(CrO)含有層、窒化クロム(CrN)含有層、炭化クロム(CrC)含有層等のクロム化合物からなる層である。反射防止層102bは、後述するように、遮光層102aの成膜に引きつづき、所定組成のクロム化合物(CrO、CrC,CrN等)を同一の真空チャンバ内で、連続的に積層することにより形成することができる。これにより、遮光膜103の表面に光反射抑制機能を持たせることができ、例えば多階調フォトマスク10によるパターン転写のときに転写光学系での多重反射等を抑制することが可能であるほか、多階調フォトマスク製造時の描画光の反射を抑えてパターニング精度を上げることができる。反射防止層102bは、上述のクロム用エッチング液を用いてエッチング可能なように構成されている。
【0028】
なお、上記のように、反射防止層102bを、遮光層102aと同一の金属を含有する素材とすれば、非常に有利である。成膜時に、同一の装置を連続的に使用し(ターゲットも同一)一工程で行えるほか、膜同士の密着性が良いことは言うまでもない。但し、課題もある。例えば、クロム系の膜上にクロム系の(かつ、組成の異なる)膜を積層すると、該成膜に用いた装置内には異物(パーティクル)が発生しやすい。成膜時には、被成膜基板のほか、チャンバ内部にも膜素材が付着する。組成の異なる膜を積層する場合には、チャンバ内部にも同様に組成の異なる膜素材が順次付着する。この場合、異なる素材による付着膜は、その素材同士の応力が異なることから、剥離しやすく、チャンバ内で異物となって落下したり浮遊したりしやすい。この異物は、被成膜体である基板上にも落下し、膜中に入ってしまう。この異物が後に脱離すると、その部分が例えばピンホール状の窪みとなり、遮光膜103中の欠損となってしまう。係る窪みの深さは欠損の原因や状況等によってまちまちであり、欠損部分の反射防止層102bの残膜厚にばらつきが生じてしまうこととなる。ここで「ピンホール状の窪み」とは、字義通りの略円形に空いた窪みに限らず、様々な形状の窪みを指す。
【0029】
遮光部110、半透光部115、および透光部120は、例えばi線〜g線の範囲内にある露光光に対し、それぞれ所定の範囲内の透過率を有するように構成されている。すなわち、遮光部110は当該光を遮光(光透過率が略0%)させ、透光部120は当該光を略100%透過させるように構成されている。そして、半透光部115は、例えば当該光の透過率を5%以上80%以下(十分に広い透光部120の透過率を100%としたとき。以下同様)、より好ましくは10%〜60%程度に低減させるように構成されている。これらの透過率は、便宜のためi線〜g線の範囲内の代表波長における透過率をもって示す場合もある。なお、i線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)とは、水銀(Hg)の主な発光スペクトルである。ここでいう代表波長とは、i線、h線、g線のうちいずれかの、任意の波長のことである。なお、より好ましくは、i線〜g線のすべての波長に対して、上記透過率を充足することが望ましい。
【0030】
また、反射防止層102bや、遮光膜103(遮光層102a及び反射防止層102b)、半透光膜101の各膜、及び係る膜より構成される遮光部110は、所定の光学濃度を有するように構成されている。例えば遮光部110の光学濃度は以下により定義される。すなわち、上述のi線〜g線の範囲内の代表波長の光の入射光の強度をIとし、上記光が遮光部110を(ごく僅かではあるが)透過した透過光の強度をIとしたとき、遮光部110の光学濃度ODは、OD=log10(I/I)で表わされる。本実施形態においては、反射防止層102bを有する遮光膜103、及び半透光膜101から構成される遮光部110の光学濃度ODは、上述のi線〜g線の範囲内の代表波長の光に対して3.0よりも充分大きな値となるように構成されている。このため、反射防止層102bの一部が欠損した場合であっても、当該欠損部分における遮光部110の光学濃度を上記光に対して少なくとも3.0以上とすることができ、より好ましくは、4.0以上の値に保つことができる。i線〜g線の範囲内のすべての波長光に対して、上記光学濃度を充足するのが望ましい。
【0031】
但し、欠損部分において反射防止層102bの残膜厚にばらつきが生じること(特に、反射防止層102bの残膜厚がゼロとなり得ること)を考慮に入れると、遮光部110の光学濃度は、反射防止層102bを除いた状態で3.0以上となるように構成されていることが好ましい。これを光学濃度の上記定義に従って表わすと、以下のとおりとなる。
【0032】
すなわち、上記光が反射防止層102bを除く遮光膜103(遮光層102a)を透過した透過光の強度をIとしたとき、反射防止層102bを除く遮光膜103の光学濃度ODは、OD=log10(I/I)で表わされ、上記光が半透光膜101を透過した透過光の強度をIとしたとき、半透光膜101の光学濃度ODは、OD=log10(I/I)である。そして、反射防止層102bを除く遮光膜102a、及び半透光膜101の全体での光学濃度ODは、OD=log10(I/(I+I))となり、これは光学濃度ODと光学濃度ODとの総和、つまり(OD+OD)=log10(I/I)+log10(I/I)である。上記のとおり、本実施形態においては、反射防止層102bを除く遮光膜103(つまり遮光層102a)の光学濃度ODと、半透光膜101の光学濃度ODと、の総和が、好ましくは3.0以上となるように構成されている。そしてさらに好ましくは、反射防止層102bを除く遮光膜103(遮光層102a)の単独での光学濃度ODが、3.0以上、好ましくは4.0以上となるように構成されている。
【0033】
以上のような構成とすることで、反射防止層102bの一部が欠損した場合であっても対応する部分のレジスト残膜厚の低下を抑制し、レジスト残膜厚の制御性を向上させることが可能となる。なお、上述の光学濃度の算出に用いる上記光の入射光の強度I及び各透過光の強度I、I、Iは、例えば分光光度計等の一般的な測定機器で測定することができる。
【0034】
また、光学濃度の上限は、膜厚が過度に厚くならない範囲とすることが好ましい。例えば、光学濃度が6.0以下であることが好ましい。遮光層102aの膜厚は、2000Å以下であることが好ましい。過度に膜厚が大きいと、エッチング時間がかかるうえ、ウェットエッチングを適用するとサイドエッチングが進むことから、パターンの線幅精度が劣化する。尚、本発明の多階調フォトマスク10では、遮光膜103と半透光膜101との間に他の機能をもつ膜が設けられても良い。例えば、半透光膜101の素材が、遮光膜103との間において十分なエッチング選択性をもたない場合には、遮光膜103と半透光膜101の間にエッチングストッパ層を設けても良い。例えば、半透光膜101がクロム系の化合物(クロムの酸化物、窒化物、炭化物など)を含む場合には、エッチングストッパ層として、これらとエッチング特性の異なる、SiO2や、金属(MoやTaなど)シリサイドの膜を使用することができる。
【0035】
(2)多階調フォトマスクによるパターン転写工程
図2に、多階調フォトマスク10を用いたパターン転写工程によって、TFT基板等の被転写体50に形成されるレジストパターン502pの部分断面図を例示する。レジストパターン502pは、被転写体50に形成されたポジ型レジスト膜502に多階調フォトマスク10を介して露光光を照射し、現像することにより形成される。被転写50は、基板500と、基板500上に形成された金属薄膜や絶縁層、半導体層などの任意の被加工層501とを備えており、ポジ型レジスト膜502は被加工層501上に均一な厚さで予め形成されているものとする。なお、被加工層501を構成する各層は、各層の上層のエッチング液(又はエッチングガス)に対して耐性を有するように構成されていてもよい。
【0036】
多階調フォトマスク10を介してポジ型レジスト膜502に上述の露光光を照射すると、遮光部110では露光光が透過せず、また、半透光部115、透光部120の順に露光光の光量が段階的に増加する。そして、ポジ型レジスト膜502は、遮光部110、半透光部115のそれぞれに対応する領域で膜厚が順に薄くなり、透光部120に対応する領域で除去される。このようにして、被転写体50上に膜厚が段階的に異なるレジストパターン502pが形成される。
【0037】
レジストパターン502pが形成されたら、レジストパターン502pに覆われていない領域(透光部120に対応する領域)にて露出している被加工層501を表面側から順次エッチングして除去する。そして、レジストパターン502pをアッシング(減膜)して膜厚が薄い領域(半透光部115に対応する領域)を除去し、新たに露出した被加工層501を順次エッチングして除去する。このように、膜厚が段階的に異なるレジストパターン502pを用いることで、従来のフォトマスク2枚分の工程を実施したこととなり、マスク枚数を削減でき、フォトリソグラフィ工程を簡略化できる。ここでは、遮光部110、透光部120、半透光部115を有する3階調の多階調フォトマスク10を用いて説明したが、上述のとおり、透過率の異なる複数の半透光部をもつ4階調以上のフォトマスクにおいても、本発明は適用できる。
【0038】
本実施形態においては多階調フォトマスク10の遮光部110を、反射防止層102bの一部が欠損した場合であっても充分な光学濃度が得られるように構成したので、遮光部110に対応するレジストパターン502pの領域内に所定値よりもレジスト残膜の薄い部位が生じることを抑制することができる。
【0039】
(3)多階調フォトマスクの製造方法
続いて、本実施形態に係る多階調フォトマスク10の製造方法について、図3を参照しながら説明する。
【0040】
(多階調フォトマスク用ブランク準備工程)
まず、図3(a)に例示するように、透明基板100上に半透光膜101、表面側に反射防止層102bを有する遮光膜103がこの順に形成され、最上層に第1レジスト膜104が形成された多階調フォトマスク用ブランク10bを準備する。なお、第1レジスト膜104は、ポジ型フォトレジスト材料或いはネガ型フォトレジスト材料により構成することが可能である。以下の説明では、第1レジスト膜104がポジ型フォトレジスト材料より形成されているものとする。第1レジスト膜104は、例えばスリットコータやスピンコータ等を用いて形成することができる。
【0041】
また、多階調フォトマスク用ブランク10bを用意する際には、遮光部110における光学濃度等、各種光学特性が上述の条件を満たすように、膜素材及び膜厚を選定する。例えば遮光部110が備える反射防止層102bの一部が欠損した場合であっても、遮光部110の光学濃度が3.0以上、好ましくは4.0以上となるような多階調フォトマスク用ブランクを設計する。
【0042】
なお、反射防止層102bは、例えば多階調フォトマスク用ブランク10bを製造する工程において、遮光層102aの成膜と同一の装置を用いて積層することができる。例えばクロム(Cr)を主成分とする遮光層102aは、スパッタリング装置を用いたスパッタ法により、当該装置の成膜チャンバ内に配置したクロム(Cr)ターゲットをアルゴン(Ar)ガス等でスパッタすることによって成膜される。その後、CO等の酸素(O)源となるガスを導入することで、遮光層102aの上に例えば酸化クロム(CrO)を主成分とする反射防止層102bを連続的に積層することができる。成膜チャンバ内に導入する各ガスの流量や流量比、成膜時間や成膜温度等を変更することによって、形成される遮光層102aのクロム含有率や厚さを制御し、光学濃度を調整することができるほか、反射防止層102bのクロム含有率や厚さ、光反射抑制機能に係る特性等を制御することができる。例えば遮光部110にて所定の光学濃度を得るために遮光層102aの光学濃度を上げる場合、遮光層102aの厚さを厚くする手法等が考えられる。
【0043】
(第1レジストパターン形成工程)
次に、多階調フォトマスク用ブランク10bに対して、レーザ描画機等により描画を行い、第1レジスト膜104を感光させ、第1レジスト膜104に現像液を供給して現像を施し、遮光部110の形成領域を覆う第1レジストパターン104pを形成する。第1レジストパターン104pが形成された状態を、図3(b)に例示する。なお、遮光部110の形成領域とは、以降の工程において遮光部110が形成される予定の領域のことである。以下に述べる半透光部115の形成領域についても同様である。
【0044】
(第1エッチング工程)
次に、形成した第1レジストパターン104pをマスクとして、遮光膜103をエッチングして遮光膜パターン103pを形成する。反射防止層102bを含む遮光膜103のエッチングは、上述のクロム用エッチング液を、遮光膜103に供給して行うことが可能である。遮光膜パターン103pが形成された状態を、図3(c)に例示する。
【0045】
(第2レジスト膜形成工程)
そして、第1レジストパターン104pを除去した後、遮光膜パターン103p及び露出した半透光膜101を有する多階調フォトマスク用ブランク10b上の全面に、第2レジスト膜105を形成する。第1レジストパターン104pは、第1レジストパターン104pに剥離液等を接触させることで除去できる。第2レジスト膜105は、例えばスリットコータやスピンコータ等を用いて形成することができる。第2レジスト膜105が形成された状態を、図3(d)に例示する。
【0046】
(第2レジストパターン形成工程)
次に、レーザ描画機等により描画を行い、第2レジスト膜105を感光させ、第2レジスト膜105に現像液を供給して現像を施し、遮光部110の形成領域及び半透光部115の形成領域をそれぞれ覆う第2レジストパターン105pを形成する。第2レジストパターン105pが形成された状態を図3(e)に例示する。
【0047】
(第2エッチング工程)
続いて、形成した第2レジストパターン105pをマスクとして半透光膜101をエッチングして半透光膜パターン101pを形成するとともに、透明基板100を部分的に露出させて透光部120を形成する。半透光膜101のエッチングは、フッ素(F)系のエッチング液(又はエッチングガス)を半透光膜101の露出した面に供給して行うことが可能である。第2エッチング工程が実施された状態を図3(f)に例示する。
【0048】
(第2レジストパターン除去工程)
そして、第2レジストパターン105pを除去する。第2レジストパターン105pは、第2レジストパターン105pに剥離液等を接触させることで除去できる。
【0049】
以上により、本実施形態に係る多階調フォトマスク10の製造が完了する。
【0050】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0051】
(a)本実施形態によれば、反射防止層102bの一部が欠損したときであっても、反射防止層102bが欠損した部分における遮光部110の光学濃度がi線〜g線の範囲内の代表波長の光に対して3.0以上となるように構成されている。これにより、反射防止層102bの一部が欠損した場合であっても対応する部分のレジスト残膜厚の低下を抑制でき、レジスト残膜厚の制御性を向上させることが可能となる。
【0052】
従来、多階調フォトマスクを用いて被転写体上のレジスト膜に転写を行うと、レジストパターンの遮光部に対応する領域内に所定値よりもレジスト残膜厚の薄い部位が局所的に生じてしまうことがあった。このとき、遮光部内には、露光光に対する遮光効果が遮光部内の他の領域より局所的に劣る箇所があった。すなわち、遮光部内の光学濃度を所定波長について測定すると、遮光部内に、所定波長、具体的にはi線〜g線の範囲内の光に対する光学濃度の局所的な低下がみられる箇所があった。
【0053】
発明者等は、係る光学濃度の低下が、遮光部が有する反射防止層の欠損により起り得ることを突き止めた。以下に、発明者等の調査により明らかになった内容について詳述する。
【0054】
図5に、従来例に係る多階調フォトマスク20が備える反射防止層202bに欠損が生じる様子を示す。図5の(a)は、反射防止層202bに異物250が発生している様子を示す断面図であり、(b)は、反射防止層202bから異物250が脱落した様子を示す断面図である。図5(a)に示すように、従来例に係る多階調フォトマスク20は、透明基板200上に半透光膜201、反射防止層202bを有する遮光膜203を備え、これらの膜が遮光部210、半透光部215、及び透光部220を含む転写用パターンを構成している。
【0055】
図5(a)に示す異物250は、例えば多階調フォトマスク用ブランクの製造工程における反射防止層202bの形成時に発生する。上述のように、例えば酸化クロムを主成分とする反射防止層を、クロム遮光層上に積層する場合のように、組成の異なる膜を同一の装置で積層する場合には、チャンバ内部にも同様に組成の異なる膜素材が順次付着する。この場合、異なる素材による付着膜は、その素材同士の応力が異なることから、剥離しやすく、チャンバ内で異物となって落下したり浮遊したりしやすい。この異物は、被成膜体である基板上にも落下し、膜中に入ってしまう。この異物250が後に脱離すると、その部分が例えばピンホール状の窪みとなり、遮光膜203中の欠損となってしまう。異物250は反射防止層202b内部に完全に埋没している場合や、異物250の一部あるいは全部が反射防止層202b表面に露出している場合等がある。反射防止層202bの一部に欠損を生じさせるのは、この異物が後に脱落する場合である。
【0056】
図5(b)に、このような異物250の脱落により反射防止層202bの一部が欠損した様子を示す。図5(b)に示すように、反射防止層202bの一部が欠損し、ピンホール状の窪み等が生じてしまうことがある。先述のように、係る窪みの深さや形はさまざまであり、欠損部分の反射防止層202bの残膜厚にはばらつきが生じてしまう。係る場合には、反射防止層202bの残膜厚がゼロのときも含む。
【0057】
次に、本実施形態と従来例とのそれぞれにおいて、反射防止層102b、202bに欠損が生じた場合のパターン転写の様子について、図4を用いて説明する。図4の(a)は、本実施形態に係る多階調フォトマスク10において反射防止層102bに欠損が生じた場合のパターン転写の様子を示す断面図であり、(b)は、従来例に係る多階調フォトマスク20において反射防止層202bに欠損が生じた場合のパターン転写の様子を示す断面図である。
【0058】
図4(b)に示すように、従来の多階調フォトマスク20では、反射防止層202bに欠損が生じた状態で被転写体60上のレジスト膜602に転写を行うと、反射防止層202bの欠損部分に対応する部分のレジスト膜602にも窪みが生じ、所定値より薄いレジストパターン602pが形成されてしまうことがあった。従来の多階調フォトマスク20においては、遮光部210に形成された膜全体の光学濃度を考慮して、多階調フォトマスク用ブランクの設計を行うことはあっても、反射防止層202bの一部に欠損が生じ得ること、欠損部分の反射防止層202bが薄くなると、その欠損部分において所定の光学濃度が得られないことについて知られていなかった。
【0059】
しかしながら本実施形態では、反射防止層102bの一部が欠損したときであっても、反射防止層102bが欠損した部分における遮光部110の光学濃度がi線〜g線の範囲内の代表波長の光に対して3.0以上、より好ましくは4.0となるように構成されている。したがって、図4(a)に示すように、欠損部分に対応するレジストパターン502pのレジスト残膜厚の低下を抑制することができ、レジスト残膜厚の制御性を向上させることが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態で示すような多階調フォトマスクにおいては、レジスト残膜厚制御は特に重要となる。このような、レジスト残膜厚制御の重要性について、図6を用いて説明する。図6(a)は、従来例に係る多階調フォトマスク20において反射防止層202bに欠損が生じた場合のパターン転写の様子を示す断面図である。つまり、図5(b)と略同様の図面であるが、図6(a)にはレジスト残膜厚の差D1が示されている。図6(b)は、参考例に係るバイナリマスク30において反射防止層302bに欠損が生じた場合のパターン転写の様子を示す断面図であり、同様にレジスト残膜厚の差D2が示されている。
【0061】
まず、図6(b)に示すバイナリマスク(バイナリフォトマスク)30において、反射防止層302bに欠損が生じた場合について説明する。図6(b)に示すバイナリマスク30は、透明基板300上に反射防止層302bを有する遮光膜303を備えるが、半透光膜を備えていない点が多階調フォトマスク10、20と異なる。バイナリマスク30が有する転写用パターンは遮光膜303(反射防止層302bと遮光層302a)により構成され、例えば遮光部310及び透光部320のみからなる。係るバイナリマスク30を用い、被転写体70上のレジスト膜702に転写を行うと、略均一なレジスト残膜厚を有するレジストパターン702pが遮光部310に対応する領域に得られる。但し、バイナリマスク30の反射防止層302bに欠損が生じた場合、図6(b)に示すように、レジストパターン702pにおいてもレジスト残膜厚の低下が生じることとなる。
【0062】
ここで、従来例に係る多階調フォトマスク20の遮光部210及び参考例に係るバイナリマスク30の遮光部310に生じる光学濃度の低下と、多階調フォトマスク20及びバイナリマスク30によりそれぞれ形成されるレジストパターン602p、702pとの関係について説明する。参考例に係るバイナリマスク30においては、反射防止層302bの欠損に起因して遮光部310の光学濃度が低下したとしても、透光部320の光学濃度との差は比較的大きいため、図6(b)に示すように、形成されるレジストパターン702pのレジスト残膜厚の差D2は比較的大きい。つまり、レジストパターン702pの被加工層に対するマスク効果には比較的余裕があるといえる。しかし、従来例に係る多階調フォトマスク20においては、反射防止層202bの欠損に起因して遮光部210の光学濃度が低下すると、もともと遮光部210の光学濃度と半透光部215の光学濃度とが近い値に設定されているため、図6(a)に示すように、形成されるレジストパターン602pのレジスト残膜厚の差D1はより小さくなってしまう。これにより、レジストパターン602pの遮光部210に対応する部分においては被加工層601に対するマスク効果が不十分となるおそれがある。このように、従来例に係る多階調フォトマスク20においてはレジスト残膜厚制御は参考例に係るバイナリマスク30の場合より重要であり、遮光部210における光学濃度の低下はより大きな弊害となりうる。
【0063】
(b)また、本実施形態によれば、反射防止層102bを除く遮光膜103(遮光層102a)の光学濃度と、半透光膜101の光学濃度と、の総和がi線〜g線の範囲内の代表波長の光に対して3.0以上となるように構成されている。さらに、好ましくは、反射防止層102bを除く遮光膜103の単独での光学濃度が上記光に対して3.0以上となるように構成されている。これにより、より確実にレジスト残膜厚の低下を抑制することができる。
【0064】
(c)また、本実施形態によれば、遮光層102aは、クロムを主成分とする膜からなり、反射防止層102bは、酸素、窒素、または炭素を含有するクロム化合物である。このように遮光膜103を構成することにより、遮光層102aの上に反射防止層102bを同一装置で連続的に形成して遮光膜103を作製することができ、比較的容易に積層構成とすることができる。その際、反射防止層102bや反射防止層102bを含む遮光膜103のクロム含有率や厚さ、光学特性を変更することができ、所望の膜素材や膜厚を有する遮光部110が形成された多階調フォトマスク用ブランク10bを選定することが可能となる。
【0065】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0066】
上述の実施形態では、酸化クロムを主成分とする反射防止層102bについて主に説明を行ったが、反射防止層102bはこれに限定されるものではなく、例えば窒化クロム(CrN)含有層、炭化クロム(CrC)含有層、酸窒化クロム(CrON)含有層等であってもよい。
【0067】
また上述の実施形態では、反射防止層102bの欠損が異物250の脱落により生じるものとしたが、欠損の原因はこの場合に限定されるものではない。上述したように反射防止層102bの形成途中のみならず、反射防止層102b形成後、例えば多階調フォトマスク10の製造工程等においても、反射防止層102bの一部が剥がれ、その部分に窪み等が生じて欠損となる場合がある。しかしこのような場合であっても、上述のように遮光部110において充分な光学濃度が得られる構成としたので、レジストパターンの上記欠損部分に対応するレジスト残膜厚が低下することを抑制することができる。
【0068】
また上述の実施形態では、多階調フォトマスクに本発明を適用する場合について説明したが、本発明は、例えば図6(b)に示すようなバイナリマスク30と同様の膜構成からなるフォトマスクや、後付けタイプの多階調フォトマスク等にも適用することができる。後付けタイプの多階調フォトマスクとは、多階調フォトマスクの製造工程において、例えば透明基板上に遮光膜パターンを形成した後に半透光膜を成膜(後付け)し、半透光膜パターンを形成するタイプの多階調フォトマスクのことである。
【符号の説明】
【0069】
10 多階調フォトマスク
100 透明基板
101 半透光膜
102a 遮光層
102b 反射防止層
103 遮光膜
110 遮光部
115 半透光部
120 透光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光部、半透光部、及び透光部を含む所定の転写用パターンが透明基板上に形成された多階調フォトマスクであって、
前記遮光部は、前記透明基板上に形成された半透光膜、及び遮光膜を含み、
前記半透光部は、前記透明基板上に形成された前記半透光膜が露出してなり、
前記透光部は、前記透明基板が露出してなり、
前記遮光部を構成する前記遮光膜は、該遮光膜の表面側に形成された反射防止層を含み、
前記反射防止層を除いた前記遮光部の光学濃度がi線〜g線の範囲内の代表波長の光に対して3.0以上となるように、
前記遮光部に形成された膜素材と膜厚とが設定されている
ことを特徴とする多階調フォトマスク。
【請求項2】
前記反射防止層を除いた前記遮光膜の光学濃度と、前記半透光膜の光学濃度と、の総和がi線〜g線の範囲内の代表波長の光に対して3.0以上となるように、前記遮光膜及び前記半透光膜の膜素材と膜厚とが設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の多階調フォトマスク。
【請求項3】
前記反射防止層を除いた前記遮光膜の前記光学濃度が前記光に対して3.0以上となる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多階調フォトマスク。
【請求項4】
前記遮光膜は、クロムを主成分とし、
前記反射防止層は、酸素、窒素、または炭素のいずれかを含むクロム化合物からなる
ことを特徴とする請求項1から請求項3に記載の多階調フォトマスク。
【請求項5】
前記反射防止層は、前記反射防止層を除いた遮光膜の成膜に引き続き、同一の成膜チャンバにおいてスパッタ法により成膜されたものである
ことを特徴とする請求項1から請求項4に記載の多階調フォトマスク。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の多階調フォトマスクを介し、被転写体上に形成されている被転写レジスト膜に露光光を照射することにより、前記被転写レジスト膜に前記転写用パターンを転写する工程を有する
ことを特徴とするパターン転写方法。
【請求項7】
遮光部、半透光部、及び透光部を含む所定の転写用パターンを透明基板上に形成するための多階調フォトマスク用ブランクであって、
前記透明基板上に、半透光膜と、クロムを主成分とする遮光膜とをこの順に積層し、
前記遮光膜は、表面側に反射防止層を含み、
前記反射防止層を除いた前記遮光膜の光学濃度と、前記半透光膜の光学濃度と、の総和がi線〜g線の範囲内の代表波長の光に対して3.0以上となるように、前記遮光膜及び前記半透光膜の膜素材と膜厚とが設定されている
ことを特徴とする多階調フォトマスク用ブランク。
【請求項8】
前記反射防止層は、酸素、窒素、または炭素のいずれかを含むクロム化合物からなる
ことを特徴とする請求項7に記載の多階調フォトマスク用ブランク。
【請求項9】
前記反射防止層は、前記反射防止層を除いた遮光膜の成膜に引き続き、同一の成膜チャンバにおいてスパッタ法により成膜されたものである
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の多階調フォトマスク用ブランク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−3152(P2012−3152A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139822(P2010−139822)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】