説明

大動脈弁回復装置及びこれによる治療方法

本発明は、大動脈瘤、動脈解離、リウマチ性大動脈疾患大動脈弁輪部拡張症などの疾患と大動脈弁閉鎖不全症がある場合、大動脈弁膜の正常機能を回復させるように設計された大動脈弁回復装置である。本発明は、大動脈弁輪の直径を固定するため、大動脈内腔に挿入される(1)バンド型内側固定子(リング型内側固定子でもあり得る)と、前記内側固定子を支持するため、大動脈の外面に挿入される(2)内側フェルト固定子とからなる大動脈弁輪整形装置を提供する。また、本発明は、上行大動脈移行部に挿入される(1)リング型内側固定子と、前記内側固定子を支持するため、前記上行大動脈移行部の外面に挿入される(2)外側フェルト固定子とからなる上行大動脈移行部整形装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は大動脈弁回復装置に係り、より詳しくは大動脈瘤、動脈解離、リウマチ性大動脈疾患大動脈弁輪部拡張症などの疾患と大動脈弁閉鎖不全症がある場合、大動脈弁膜の正常機能を回復させるように設計された大動脈弁回復装置に関するものである。
[背景技術]
心臓には血液流を前方に案内する四つの弁膜がある。心臓の左側には、左心房及び左心室間に位置する僧帽弁と、左心室と大動脈間に位置する大動脈弁とがある。これら二つの弁は、全身に伝達される酸素化された血液を肺から心臓の左側を通して大動脈に流入するように導く。心臓の右側には、右心房と右心室間に位置する三尖弁と、右心室と肺動脈間に位置する肺動脈弁膜とがある。
【0002】
これら四つの心臓弁は、自らは何のエネルギーも消費しなく何の活発な収縮作用もしないという点で完全受動的構造である。これらは、両側面間の圧力差により開くか又は閉じる可動性弁膜葉からなる。前記僧帽弁及び三尖弁は心臓の左側と右側の心房及び心室間に位置しているため、房室弁とも呼ばれる。前記僧帽弁には二つの弁膜葉があり、前記三尖弁には三つの弁膜葉がある。前記大動脈弁及び肺動脈弁はその弁膜葉の形状がみんな略半月状を有するため、半月状弁膜尖と呼ばれる。前記大動脈弁及び肺動脈弁は三つの弁膜尖を持っている。
【0003】
心臓弁は先天性又は後天性弁障害により異常構造及び作用の影響を受けることができる。先天性弁異常は生まれた時に生命を危うくするか、又は中年又はその以後までに潜伏していることができる。後天性弁疾患はリウマチ熱、退行性障害、感染又は外傷などの条件によりたびたび発生する。
【0004】
動脈解離により深刻な大動脈弁閉鎖不全症が発生することができるが、この場合大動脈弁の交換術が必要である。また、リウマチ性又は退行性弁膜疾患の結果としても深刻な大動脈弁閉鎖不全症が発生し得る。この場合、これまで大動脈弁の交換術に使用される人造弁は二通りに大別できる。その一つは機械的弁で、チタンハウジングに入れたピロリチック炭素材(pyrolitic carbon material)からなり、ほかの一つは組織弁で、動物の組織からなった弁である。通常使用される組織弁としては、縫合挿入を容易にするため、外部縫合縁(sewing rim)を有するチタン骨格が使用される。前記弁物質としては、グルタルアルデヒドで処理された牛の心膜又は豚の大動脈弁を使用することができる、このような機械的弁又は組織弁は、損傷した大動脈弁を除去した後、患者の大動脈輪に挿入して使用することができる。
【0005】
しかし、機械的弁の挿入後に血栓合併症を防止するため、一生のうちに抗凝固剤が必要である。抗凝固剤を使用しても、患者は依然として出血性又は血栓合併症を被る。一方、組織弁は、前記合併症がなく、抗凝固剤を必要としないが、組織弁は、機械弁に比べ、相対的に耐久性が制限的である。よって、このような患者は将来再手術を必要とすることになる。このようなほかのタイプの人工弁の制限を克服するためには、耐久性ある大動脈弁回復術が好ましい。しかし、現在、大動脈弁整形術は特定状況でだけ使用可能なものと知られている。
【0006】
大動脈起始部は血液が流れる通路であるだけでなく、心臓の拍動によって基本直径の30%以上に大動脈直径を拡張し得る複雑な弾性構造である。前記構造はかなり高い血圧にも耐えるが、大部分の現存の大動脈弁整形術は機械的な圧力に抵抗し得なくて失敗するか又は再発する傾向がある。
【0007】
大動脈弁の機能を保全するための3要素は、上行大動脈移行部(sinotubular junction)の適正直径維持、大動脈輪の適正直径維持、及び弁膜葉の状態がある。このような三つの要素を正常に維持して機能を回復させることにより、大動脈弁を整形、復元することができる。しかし、これまで施行してきた手術はこのような要求条件を全て満たすことができなかった。例えば、大動脈弁葉が形態学的に正常なマルファン症候群(Marfan syndrome)による上行大動脈瘤を回復させるのに効果的な方法として、人造血管内に大動脈弁葉を再び吊るすことが提示された(David T.E. ‘Aortic valve repair in patients with Marfan syndrome and ascending aorta aneurysms due to degenerative disease’ J. Card. Surg. 1994;9(2 Suppl):182-7)。しかし、このような方法は限定された状況にだけ適用することができる。その一つの欠点は、近位大動脈起始部の湾曲部を除去しなければならないことである。また、この方法は縫合糸がもろい水腫状の組織を通過するので、動脈解離において深刻な出血性合併症を引き起こし得る。
【0008】
マルファン症候群患者に適用可能なほかの外科的方法は、血管の一部を適当に裁断したもので動脈瘤の上行大動脈組織を交換することである(Sndro Gelsomino et al. ‘A short-term experience with the Tirone David I valve sparing operation for the treatment of aneurysms of the ascending aorta and aortic root’ Cardiovascular Surgery 2003;11(3):189-194; Kallenbach K. et al. ‘Results of valve-sparing aortic root reconstruction in 158 consecutive patients’ Ann. Thorac. Surg. 2002;74(6):2026-32)。しかし、この方法もこの患者の動脈解離又は単純動脈瘤でも出血しやすい。また、この方法もバルサルバ(Valsalva)の自然湾曲部の機能を除去しなければならない同一欠点を有する。
【0009】
これら方法と対照的に、機能障害の弁膜葉をグルタルアルデヒド固定された自分の心膜で交換することは大動脈弁閉鎖不全症の問題点を解決するように見えるが(Riyadh Cardiac Centre, Armed Forces Hospital, Kingdom of Saudi Arabia. ‘Aortic valve repair using bovine pericardium for cusp extension’ J. Thorac. Cardiovasc. Surg. 1988;96(5):760-4; Cosgrove D.M. et al. ‘Valvuloplasty for aortic insufficiency’ J. Thorac. Cardiovasc. Surg. 1991;102(4):571-6; Haydar H.S. et al. ‘Valve repair for aortic insufficiency: surgical classification and techniques’ Eur. J. Cardiothorac. Surg. 1997;11(2):258-65)、長期的には、次第に増加する上行大動脈移行部及び大動脈輪の直径により前記機能が影響されるので、弁膜接合が失敗することになる。
[発明の開示]
本発明は前記のような問題点を解決するためになされたもので、大動脈弁葉だけでなく大動脈起始部を含む周囲構造を変化させることにより、大動脈弁の正常機能を回復させることに目的がある。
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、大動脈弁輪の直径を固定するため、大動脈内腔に挿入される(1)バンド型内側固定子(リング型内側固定子でもあり得る)と、前記内側固定子を支持するため、大動脈の外面に挿入される(2)外側フェルト固定子とからなる大動脈弁輪整形装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、上行大動脈移行部(STJ)に挿入される(1)リング型内側固定子と、前記内側固定子を支持するため、前記上行大動脈移行部(STJ)の外面に挿入される(2)リング型STJ外側フェルト固定子とからなる上行大動脈移行部整形装置を提供する。
[発明の詳細な説明]
本発明による装置は、大動脈解離などで発生する大動脈弁の損傷又は単純大動脈弁閉鎖不全症の治療に使用され、上行大動脈移行部と大動脈弁輪の内径及び外径を固定させることで、これらの直径を正常化させて大動脈弁閉鎖不全症を治療することができる。
【0012】
大動脈弁閉鎖不全症の原因としては、上行大動脈移行部(STJ)の直径増加、大動脈弁輪の直径増加、弁膜葉の変性などがある。このうち、上行大動脈移行部の直径増加の場合と、弁膜輪の直径増加の場合は、上行大動脈移行部の直径と弁膜輪の直径を正常化させることで、大動脈弁閉鎖不全症を効果的に治療することができる。
【0013】
以下、本発明の好ましい実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1aは本発明によるバンド型の大動脈弁輪内側固定子の斜視図、図1bは本発明によるリング型の大動脈弁輪内側固定子の斜視図、図1cは本発明によるバンド型又はリング型の大動脈弁輪内側固定子の断面図、図2は本発明によるバンド型の大動脈弁輪外側フェルト固定子の斜視図、図3aは本発明によるリング型のSTJ内側固定子の斜視図、図3bは本発明によるリング型のSTJ内側固定子の断面図、図4は本発明によるリング型のSTJ外側フェルト固定子の斜視図である。
【0015】
本発明による大動脈弁回復装置は、大動脈弁輪の直径を一定に維持する(1)構成部と、上行大動脈移行部の直径を一定に維持する(2)ほかの構成部とからなる。それぞれの構成部は、大動脈内腔の内側で直径を維持する(1)内側固定子と、大動脈内腔の外側で内側固定子を支持するように設計された(2)外側固定子とからなる。
【0016】
図1及び図2に示すように、前記大動脈弁輪整形装置は大動脈内腔内で大動脈弁輪の直径を一定に維持するバンド型又はリング型内側固定子12と、大動脈内腔の外側でこれを支持するバンド型外側フェルト固定子14とからなる。
【0017】
前記内側固定子12は弁輪の直径を一定に維持するように設計されたもので、フレキシブルな材質からなり、大動脈弁輪の筋肉層部分を除いた繊維層のみを固定するバンド形態で使用されるようになっている。しかし、大動脈弁輪の筋肉層部が拡大した場合は、弁輪の円周全体を共に固定させるリング型内側固定子12の形態で使用することができる。
【0018】
また、前記内側固定子12の縫合糸が通過する部位は、内側固定子と大動脈弁の内腔表面間で縫合板の通過及び密着性を強化するため、その周囲の厚さより薄くなり、中央に点線で表示されている(図1c、図3b)。リング型固定子の場合は、円周の3等分点に位置表示マークがあるので、正確な方向を決めることができる(図1b、図3a)。バンド型固定子の場合は、弁輪の繊維層部のみを固定し、筋肉層部は動けるように残すためのもので、バンドの長さが表示されて、外側におよそ2mmだけさらに延長させて、挿入を容易にする(図1a)。
【0019】
大動脈壁の外側に位置する前記外側フェルト固定子14は内側固定子12と対をなして、内側固定子を支持しながら大動脈弁輪の直径を一定に維持させる。この外側固定子はその両端からおよそ2mmだけ離れて垂直に表示される(図2)。
前記内側固定子12と外側フェルト固定子14は、生物学的に比活性のポリエステル、ポリテトラフルオロエチレンなどの材料、及びポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリプロピレンなどを含むほかのタイプの合成繊維から製造される。
【0020】
図3及び図4によると、前記STJ整形装置は、大動脈の内腔でSTJの直径を固定するリング型内側固定子22と、上行大動脈のSTJの外側でこれを支持するリング型外側フェルト固定子24とからなる。前記STJ整形装置はリング型のみでなっており、大動脈にSTJレベルで大動脈の壁を内外側で支持する支持構造物を提供する。
【0021】
STJ内側固定子22は、弾力性のある合成繊維又は生体物質から製造される。弁輪の内側固定子12の如く、縫合糸が通過する内側STJ固定子部位は上下周囲より薄く形成され、固定子が大動脈壁に密着する構造になっている(図3b)。前記薄い部分は、易くて正確な縫合を可能にするため、中央に点で表示されている。また、このリング型固定子にも円周の3等分点を表示するマークが垂直に明らかに表示される(図3a)。
【0022】
前記STJ整形装置の外側フェルト固定子24は前記内側固定子22と対をなし、STJの直径を一定に固定させる役割をするもので、大動脈壁の外側壁にSTJで挿入される。内側固定子の如く、このフェルト固定子も円周を3等分点を表示するマークが垂直に形成されている(図4)。このSTJ外側フェルト固定子は、周囲の組織に酷く付着することを防止するため、ほかの合成繊維又は生体物質で覆われることができる。
【0023】
本発明による大動脈弁回復装置を用いる外科手術法は次のようである。
【0024】
大動脈弁輪の直径増加により大動脈弁閉鎖不全症が発生した場合、大動脈の内腔内に内側固定として作用する大動脈弁輪内に所望寸法に大動脈輪の直系を減少させるためのバンド型又はリング型の固定子12を挿入し、前記大動脈内腔の外部には、前記内側固定子12を支持するように、バンド型外側フェルト固定子を配置する。二つの固定子が大動脈弁輪を内外側で挿入された大動脈弁輪の直径を正常化させることにより、大動脈弁閉鎖不全症を治療することができる。
【0025】
同様な方法により、STJ内側固定子が上行大動脈のSTJで大動脈の内腔に挿入される。STJ外側固定子は大動脈の外側表面に挿入されてSTJ内側固定子を補強する。前記二つのSTJ固定子の挿入によりSTJで大動脈の直径を正常化することにより、大動脈弁閉鎖不全症を効果的に矯正することができる。
【0026】
前記大動脈弁輪の直径とSTJの直径が共に増加して発生した大動脈弁閉鎖不全症の場合は、前述したように、両方で共に起始部を矯正することで矯正することができる。さらに、両方のレベルで大動脈起始部を修繕することにより、治療されていない部分の弛緩による大動脈弁閉鎖不全症の再発を効果的に防止することができる。
【0027】
いろいろの疾患により発生する大動脈弁閉鎖不全症は以降に記述する大動脈弁と起始部を保存する整形方法により矯正可能である。本発明の整形方法は大動脈弁閉鎖不全症の原因によって多少変化できるが、これら全てを含む。大動脈弁閉鎖不全症又は大動脈解離のない大動脈流の場合、矯正過程は単に上行STJレベルで一対のリング型の大動脈固定子を挿入することにより実行される。
【0028】
しかし、マルファン症候群の如く、上行大動脈瘤及び深刻な大動脈弁閉鎖不全症が同伴する大動脈弁輪部拡張症の場合には、上行STJレベルで一対のリング型固定子を挿入するとともに大動脈弁輪レベルで一対のバンド型固定子を挿入させることにより整形過程を実行する。
【0029】
前記説明に基づき、本発明の整形方法を大動脈弁輪レベルでのバンド型固定子の挿入手術法と、STJレベルでのリング型固定子の挿入手術法の二つの部分に区分する(図5a)。
【0030】
A.手術方法−大動脈弁輪レベルでのバンド型固定子の挿入過程(図5b)
大動脈弁輪レベルで使用される固定子は、大動脈の内外側で使用される一対のバンド型の弾性固定子からなる。そのうち、内側固定子は大動脈弁直列部の左心室流出路の繊維層部に挿入され、外側固定子は大動脈弁輪の外側面の大動脈壁に対向する位置に挿入され、大動脈壁部を二つのリング物質帯間に介在させる。
【0031】
バンド型内側固定子の理想的長さは、(1)比較的一定である左心室流出路の筋肉部の長さを測定し、(2)実際の大動脈弁表面積を測定することにより決定される。この長さは大動脈弁輪のおよそ半分である。内側固定子のサイズが決定されると、その内側固定子を前述した位置に当て、二重アームの17mm#3−0ポリプロピレン縫合糸の一アームを内側固定バンドの左冠状動脈端に通過させ、これをさらに心臓の左冠状動脈葉下端の筋繊維連結部で大動脈弁輪を通して通過させる。前記二重アームの他アームをおよそ5mmの間隔で内側固定子に通過させ、前記縫合糸を固定子と大動脈弁輪に通過させて、いわゆる水平マットリス縫合をなす。
【0032】
内部固定子を以上のような方法で左冠状動脈端から右冠状動脈端まで大動脈弁輪の繊維層部に密着させるためには、およそ四つないし五つの水平マトリックス縫合が必要である。一旦、前記全ての縫合が出来上がると、外部バンド固定子が挿入される。前記対応する外部バンド固定子は、水平マトリックスポリプロピレン縫合が位置する大動脈弁輪の外側面に対して測定される。ポリプロピレン水平マトリックス縫合のそれぞれのアームは外部バンド固定子の個別位置を通過する。すべての縫合アームが通過すると、ニードルを切断し、内側及び外側固定子が大動脈弁輪と大動脈壁に固定されるように結紮する。
【0033】
B.手術方法−STJレベルでのリング型固定子の挿入過程(図5c)
STJに挿入される固定子はリング型で、内側固定子と外側固定子からなる。リング型固定子、特に内側固定子はSTJのレベルで大動脈の内径を正常に固定させるもので、その理想的なサイズは大動脈弁輪の筋肉部及び大動脈弁表面区域のサイズによって決定される。正常の大動脈起始部の形状は、STJでの直径が基部のおよそ10〜20%小さい円錐形である。
【0034】
リング型内側固定子の円周には3等分点が表示されるが、この点はそれぞれの大動脈弁葉の合わせ目(commissure)と一致するものとして方向を決め、それぞれの合わせ目が大動脈の円周の3分の1の地点に位置する。各表示地点でSTJ内側固定に二重アームを有する#4−0ポリプロピレン縫合糸を通過させて、三つの等距離水平マトリックス縫合糸を位置させることで整形が開始される。ここで、STJ内側固定子を通過するそれぞれの縫合糸アームを合わせ目レベルで大動脈壁に連続的に通過させる。前記過程は残り合わせ目に対しても繰り返す。
【0035】
合わせ目レベルで大動脈壁を通過した3対の縫合糸の各アームはSTJ外側リング型固定子を通過し、二つのポリプロピレン縫合糸のアームはそれぞれの合わせ目でニードルを切断しないままで結紮される。
【0036】
一旦、前記結紮が完成されると、3地点でのSTJ内側及び外側リング固定子がそれぞれ大動脈の内皮と外膜表面に配置される。非冠状及び左冠状動脈弁葉間の合わせ目から始めて、ポリプロピレン縫合糸の一アームにて、大動脈の全円周に沿って連続水平マトリックス縫合を行う。前記縫合糸は、ニードルが外部リング、大動脈及び内部リング複合物の全てを通過するように位置される。
【0037】
連続水平マトリックス縫合で大動脈の円周を縫合した後、ポリプロピレン縫合糸の二つのアームを再び結紮する。二つのアームを結紮することで、STJ固定子挿入の第1段階が完成される。結紮の後、水平マトリックス縫合を完成するのに使用されたポリプロピレン縫合糸のアームに付着されたニードルを切断し、水平マトリックス縫合に使用されていないアームに付着されたニードルは残しておく。前記アームは結紮地点から始まる連続繰り返し縫合により初期の水平マトリックス縫合を強化させるのに使用される。前記縫合は止血を強化させ固定子の初期配置を補強するためのもので、大動脈の全円周にわたって延長される。
【0038】
一旦完成されると、前記縫合糸のアームは、初期水平マトリックス縫合に既に使用されたポリプロピレン縫合糸のアームと結紮される。整形が出来上がると、STJレベルで上行大動脈の切除部位が堅く補強される。冠状動脈心門(coronary ostia)に固定子の深刻な侵犯がないかを確認するため、挿入されたSTJ内側固定子の内腔面を丁寧に検査しなければならない。そして、遠位上行大動脈を、通常の方法で、連続ポリプロピレン縫合により、整形されたSTJ末端部上で縫合する。遠位上行大動脈を人工血管で取り替える場合、前記近位整形大動脈末端に血管を縫合させる。
【0039】
このような方式で大動脈弁の機能性を保存する利点としては、前述した手術方法の標準化が含まれる。前記洞構造が保存されるので、大動脈弁葉機能及びストレス分布を最適化する。したがって、元の大動脈弁葉の損傷が最小化するなどの好ましい長期間にわたる結果が期待される。元の洞構造を保存するほかの利点として、大動脈弁及び各洞を通してより流線型でより乱流の少ない血液流が通過することが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1a】本発明によるバンド型の大動脈弁輪内側固定子の斜視図である。
【図1b】本発明によるリング型の大動脈弁輪内側固定子の斜視図である。
【図1c】本発明によるバンド型又はリング型の大動脈弁輪内側固定子の断面図である。
【図2】本発明によるバンド型の大動脈弁輪外側フェルト固定子の斜視図である。
【図3a】本発明によるリング型の上行大動脈移行部(STJ)内側固定子の斜視図である。
【図3b】本発明によるリング型の上行大動脈移行部(STJ)内側固定子の断面図である。
【図4】本発明によるリング型の上行大動脈移行部(STJ)外側フェルト固定子の斜視図及び外側フェルト固定子の内部図である。
【図5a】本発明による装置を用いる挿入手術法を示す概略図である。
【図5b】大動脈弁輪レベルでのバンド型固定子の挿入過程を示す概略図である。
【図5c】STJレベルでのリング型固定子の挿入過程を示す概略図である。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
大動脈弁輪及び上行大動脈移行部の直径増加による大動脈弁閉鎖不全症の矯正に使用される大動脈弁回復装置において、
前記大動脈弁回復装置は、大動脈弁輪の直径を一定に固定するバンド型又はリング型の大動脈弁輪整形装置と、上行大動脈移行部の直径を一定に固定するリング型の上行大動脈移行部整形装置とからなることを特徴とする大動脈弁回復装置。
【請求項2】
前記大動脈弁輪整形装置は、大動脈内腔の内部から大動脈弁輪の直径を固定する内側固定子(12)と、前記大動脈内腔の外部から前記直径を支持する外側フェルト固定子(14)とからなることを特徴とする請求項1に記載の大動脈弁回復装置。
【請求項3】
前記内側固定子(12)と前記外側フェルト固定子(14)はバンド型又はリング型であることを特徴とする請求項2に記載の大動脈弁回復装置。
【請求項4】
前記内側固定子(12)の縫合糸通過部は、固定子が大動脈内腔壁にうまく密着するように、周囲部より薄く形成されることを特徴とする請求項2に記載の大動脈弁回復装置。
【請求項5】
前記リング型の内側固定子(12)及び外側フェルト固定子(14)は、固定子の方向を決定し得るように、その円周に三つの表示マーク(10)が等間隔で形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の大動脈弁回復装置。
【請求項6】
前記バンド型の内側固定子(12)及び外側フェルト固定子(14)は、大動脈弁輪の繊維層部のみを固定するため、両端に垂直表示マークが形成され、かつ固定を容易にするため、前記垂直線の外側におよそ2mmの余裕部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の大動脈弁回復装置。
【請求項7】
前記内側固定子(12)及び前記外側フェルト固定子(14)は、人体に無害な合成繊維又は生体物質から製造されることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の大動脈弁回復装置。
【請求項8】
前記上行大動脈移行部整形装置は、上行大動脈移行部の直径を固定するリング型の内側固定子(22)と、上行大動脈移行部の外部から前記直径を支持するリング型の外側フェルト固定子(24)とからなることを特徴とする請求項1に記載の大動脈弁回復装置。
【請求項9】
前記内側固定子(22)と前記外側フェルト固定子(24)はリング型に形成されるあることを特徴とする請求項8に記載の大動脈弁回復装置。
【請求項10】
前記内側固定子(22)の縫合糸通過部は、固定子が前記上行大動脈移行部の周囲壁にうまく密着するように、周囲部より薄く形成されることを特徴とする請求項8に記載の大動脈弁回復装置。
【請求項11】
前記リング型の内側固定子(22)及び外側フェルト固定子(24)は、固定子の方向を決定し得るように、その円周に三つの表示マーク(10)が等間隔で形成されることを特徴とする請求項8又は9に記載の大動脈弁回復装置。
【請求項12】
前記内側固定子(22)及び外側フェルト固定子(24)は、人体に無害な合成繊維又は生体物質から製造されることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項に記載の大動脈弁回復装置。
【請求項13】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の大動脈弁回復装置を用いて大動脈弁閉鎖不全症を治療する方法において、バンド型又はリング型の大動脈弁輪内側固定子(12)を大動脈内腔の内部に挿入し、前記大動脈弁輪外側フェルト固定子(14)を前記大動脈内腔の外部に位置させて前記大動脈弁輪内側固定子を支持し、大動脈弁輪の直径を正常化させることにより、大動脈弁閉鎖不全症を効果的に治療することを特徴とする大動脈弁閉鎖不全症の治療方法。
【請求項14】
請求項1又は請求項8ないし12のいずれか1項に記載の大動脈弁回復装置を用いて大動脈弁閉鎖不全症を治療する方法において、リング型のSTJ内側固定子を上行大動脈移行部の内部に挿入し、前記STJ外側フェルト固定子を前記上行大動脈移行部の外部に位置させて前記STJ内側固定子を支持し、上行大動脈移行部の直径を正常化させることを特徴とする大動脈弁閉鎖不全症の治療方法。

【図2】
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【図4】
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【図5a】
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【公表番号】特表2006−507911(P2006−507911A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501726(P2005−501726)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000694
【国際公開番号】WO2004/084770
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(504365582)サイエンシティ カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】