説明

大型クレーン

本発明は、大型クレーン(1)であって、走行軌道(7)を支承した2本のビーム(2)と、ビーム(2)を支持した2本の脚(3,4)と、走行軌道(7)に沿って動くよう設計された少なくとも1つの大型キャリッジ(5)及び少なくとも1つの小型キャリッジとを有し、大型キャリッジ(5)及び小型キャリッジは、ビーム(2)上を移動する際、これらが互いに横切ることができるよう構成されており、各ビーム(2)は、走行軌道(7)の少なくとも一部に沿って動いている際に高さ(H)が変化する外側断面を有することを特徴とするクレーン(1)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示する本発明は、大型クレーン、特に、船舶の建造中、造船所で用いられる大型クレーンに関する。かかるクレーンは、高い背丈にちなんでゴリアテクレーン(門形又は橋形クレーン)と通称されている。
【背景技術】
【0002】
図1及び図2に示されているように、何種類かの公知のクレーン200は、2本の脚203,204で支持された一定外側断面の2本の水平けた(ビーム)201を有している。一方が主トロリ205又は補トロリ206であり、少なくとも2つのトロリが、巻上装置及び吊り荷を支持することができるフックを支持し、ビーム上に配置された軌道に沿って動くことができる。トロリは、これらが互いに横切ることができるよう構成されており、それにより、建造中の船体の一部分を逆向きにすることができる。脚は、互いに同一ではなく、これらのうちの一方203は、「固定」脚と呼ばれ、水平ビームに固定され、他方の脚204は、「揺動」脚と呼ばれ、ジョイントによってビームに連結されている。脚は、クレーンを動かすために地上に置かれたレールに沿って動くことができる。
【0003】
図1及び図2に示されている例では、トロリ205,206は、ビーム201の上面に設置された軌道に沿って動くことができる。2つのトロリがこのように取り付けられているので、クレーンは、比較的強い風にさらされる。
【0004】
図3に示されている別の大型クレーン200は、軌道上で動くことができる2つのトロリ205,206を支承した単一の一定外側断面の水平ビームを有しており、2つのトロリはそれぞれ、ビーム201の上面上と、その下面の近くに位置したフック上とに位置している。かくして、この種の既存のクレーンでは、補トロリ206は、ビーム201の下方を走行し、主トロリ205は、ビーム201の上方を走行する。ビームの下で補トロリにより用いられる経路は、引き揚げ高さを減少させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大型クレーンは、時々互いに相反する場合のある仕様を満足させなければならない。
【0006】
第1に、クレーンは、十分な引き揚げ高さを可能にしなければならない。さらに、風に対する対抗に費やされる機械的動力の量は、引き揚げ高さが高くなればなるほど、それだけ一層増大する。
【0007】
さらに、クレーンは、費用効果が良く、しかも所要の安全上の保証を提供すると共に保守が容易でなければならない。
【0008】
相当な引き揚げ高さを提供する一方で非常に重い吊り荷を取り扱うことができる大型クレーンの要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、この要望に応えるものであり、この目的は、大型クレーンであって、
‐軌道を有する2本のビームと、
‐ビームを支承した2本の脚と、
‐軌道に沿って動くよう設計された、少なくとも1つの主トロリ及び少なくとも1つの補トロリとを有し、主トロリ及び補トロリは、軌道に沿って動いている間、互いに横切ることができるよう構成されている、大型クレーンにより達成される。
本発明によれば、この大型クレーンは、本発明の観点のうちの1つにより、各ビームが、軌道の任意の一部に沿って進むにつれ高さが変化する外側断面を有することを特徴としている。
【0010】
本発明により、ビームの機械抵抗を、最も高い圧力下における場所において増大させることができる一方で、風への暴露を最小限に抑えることができる。というのは、ビームの外側断面は、受ける応力の小さい領域ではより弱くなる場合があるからである。
【0011】
2本のビームを設けることは、単一のビームを備えたクレーンよりも空気力学的に有利である。
【0012】
本発明の一実施形態では、ビームは、中央部分に最大高さを持つ外側断面と、脚に近づくにつれ高さが次第に減少する外側断面を有する。
【0013】
中央部分の長さは、例えば、ビームの全長の50%以上であるのが良い。
【0014】
最大高さの変化分Hは、例えば、ビームの全高の30%を超えるのが良い。
【0015】
各ビームは、他方のビームに向いた表面上に、補トロリのための軌道を支持する内ブラケットを保持しても良い。本発明のこの観点により、補トロリは、全てではないとしても少なくとも部分的に水平ビームにより隠され、したがって、補トロリの空気力学的形状は、比較的小さい。
【0016】
各ビームは、その外面上に、主トロリのための少なくとも1本の軌道を支持する外ブラケットを有しても良い。主トロリの一部分は、互いに向かい合ったビームの2つの表面間に位置決めされても良い。この場合、ビームにより隠されている主トロリの部分は、それ以上の風抵抗を何ら生じさせない。
【0017】
ビームの各々が内ブラケット及び外ブラケットを有する場合、現在公知のクレーンのビームの頂部で支持されている手すりを、空気抵抗を一段と減少させるようブラケットに沿って動かすのが良い。
【0018】
ブラケットは、ビームに沿って上方にほぼ半分のところに配置されるのが良い。軌道は、例えば、各ビームの全最大高さの1/3〜1/2の高さのところでビーム上に配置されるのが良い。
【0019】
各ビームの断面は、ビームが各々、例えば各ビームの幅の半分以上の曲率で、丸い上側形状を示している。この丸い形状により、空気力学係数が減少する。
【0020】
各ビームは、水平に近づくと、空気力学形状係数を減少させるように、丸い下側形状を有する。この下側形状の曲率は、例えば、各ビームの幅の半分以上であっても良い。
【0021】
ビームの空気力学的形状に起因して、乱流が減少し、それによりこの乱流により生じる腐食が減少し、かくして全体的保守費が減少する。
【0022】
また、ビームの空気力学的形状により、ビームの空気力学形状係数を減少させることができ、それによりビームの空気抵抗が減少する。
【0023】
各ビームは、好ましくは少なくとも下側半部に設けられた数本の筋かいを有する数個の隔壁を更に有するのが良い。
【0024】
各ビームは、各々が少なくとも上側半部上に設けられていて、ビームの外部に設けられたケーソンに垂直なプレートから成る数個の隔壁を更に有しても良い。各プレートは、マンホールを含んでいてもよい。各ビームは、本質的に互いに平行なプレートから成る数個の隔壁を有していても良い。
【0025】
2本のビームは、例えばビームの各側に共通の末端を形成するようこれらの末端のところが互いに結合されている。共通末端のこの部分は、上から見た場合、その自由末端に近づくと、薄くなるように見える場合がある。これは、クレーンの空気力学的有効性の増大にも寄与する場合がある。
【0026】
クレーンは、クレーンの脚のうちの一方、好ましくは固定脚上でクレーンの底部からビームまで動くことができる移動式キャビンを有していても良い。
【0027】
クレーンは、脚のうちの一方、好ましくは固定脚のベースのところに位置する給排水設備(洗面所)を有するのが良い。給排水設備は、旧式のものであって良く、化学的な形式のものでなくて良い。
【0028】
少なくとも一方の脚、好ましくは固定脚は、ビームの端から距離を置いたところに配置されるのが良い。この脚は、ビームの端部を脚、好ましくは固定脚に連結する少なくとも1本、好ましくは2本のストラットを有していても良い。
【0029】
ビームは、共有末端の少なくとも一部分に、移動式且つ引っ込み可能な保守用クレーンを収容することができるチャンバを有するのが良い。
【0030】
クレーンは、少なくとも1つの雨水ガッタ及び少なくとも1つの雨水リザーバを有していても良い。クレーンは、廃棄物リザーバを更に有していても良い。
【0031】
雨水リザーバは、雨水ガッタから水を集め、この雨水リザーバが実際、例えば給排水設備に近接して配置されている場合、この水を給排水設備用に使用されるように構成されていても良い。
【0032】
廃棄物リザーバは、廃棄物を収集すると共に給排水設備から出てくる水を使用するよう構成されるのが良い。廃棄物リザーバは、クレーンの底部上に配置されると共に、トラックがリザーバからその内容物を排出することができるよう装備されるのが良い。
【0033】
上述のこととは別個独立に又はこれと一緒に、本発明は又、別の実施形態において、大型クレーンであって、
‐軌道を有する2本のビームと、
‐ビームを支承した2本の脚と、
‐軌道に沿って動くよう設計された、少なくとも1つの主トロリ及び少なくとも1つの補トロリとを有し、主トロリ及び補トロリは、ビームに沿って動いている間、互いに横切ることができることを特徴とする大型クレーンを含む。各ビームは、他方のビームに向いた表面上に、補トロリのための軌道を支持した内ブラケットを保持するのが良い。各ビームは、その外面上に、主トロリのための少なくとも1本の軌道を支持した外ブラケットを有するのが良い。
【0034】
上述のこととは別個独立に又はこれと一緒に、本発明は又、別の実施形態において、大型クレーンであって、
‐軌道を有する2本のビームと、
‐ビームを支承した2本の脚と、
‐軌道に沿って動くよう設計された、少なくとも1つの主トロリ及び少なくとも1つの補トロリとを有し、主トロリ及び補トロリは、ビームに沿って動いている間、互いに横切ることができ、ビームのうちの少なくとも一方は、断面で見て、丸い上側形状及び/又は丸い下側形状を備えていることを特徴とする大型クレーンを含む。
【0035】
上述のこととは別個独立に又はこれと一緒に、本発明は又、別の実施形態において、大型クレーンであって、
‐軌道を有する2本のビームと、
‐ビームを支承した2本の脚と、
‐軌道に沿って動くよう設計された、少なくとも1つの主トロリ及び少なくとも1つの補トロリとを有し、主トロリ及び補トロリは、ビームに沿って動いている間、互いに横切ることができ、ビームは、共有末端の一部分に、点検整備用クレーン、好ましくは伸縮式点検整備用クレーンを収容することができるチャンバを有することを特徴とする大型クレーンを含む。点検整備用クレーンは、移動式であってもよく、例えば、補トロリにより用いられる軌道に沿って動くことができる。
【0036】
上述のこととは別個独立に又はこれと一緒に、本発明は又、別の実施形態において、大型クレーンであって、
‐軌道を有する2本のビームと、
‐ビームを支承した2本の脚と、
‐軌道に沿って動くよう設計された、少なくとも1つの主トロリ及び少なくとも1つの補トロリとを有し、主トロリ及び補トロリは、ビームに沿って動いている間、互いに横切ることができ、
‐クレーンの脚のうちの一方、好ましくは固定脚に沿って、クレーンの底部からビームまで動くことができる少なくとも1つの移動式キャビンを有する大型クレーンを含む。クレーンは、脚のうちの一方、好ましくは固定脚のベースのところ位置する給排水設備を有するのが良い。移動式キャビンは、キャビンのオペレータがこの給排水設備にアクセスすることができるよう動くのが良い。
【0037】
上述のこととは別個独立に又はこれと一緒に、本発明は又、別の実施形態において、大型クレーンであって、
‐軌道を有する2本のビームと、
‐ビームを支承した2本の脚と、
‐軌道に沿って動くよう設計された、少なくとも1つの主トロリ及び少なくとも1つの補トロリとを有し、主トロリ及び補トロリは、ビームに沿って動いている間、互いに横切ることができ、
‐雨水を集めてこの雨水を、クレーンの脚のうちの一方、好ましくは固定脚内に配置された雨水リザーバまで案内することができる雨水ガッタを有する大型クレーンを含む。
【0038】
この場合、クレーンは、給排水設備を更に有していても良く、雨水リザーバは、この給排水設備の近くに配置され、これに雨水を供給するのが良い。クレーンは、廃棄物収集リザーバを更に有していても良く、この廃棄物収集リザーバは、脚のうちの一方のベース、好ましくは固定脚のベースのところに配置されるのが良く、この廃棄物収集リザーバは、排出トラックにアクセス可能であるよう配置されると有利である。
【0039】
クレーンは、ガッタにより供給される雨水とは別個独立に雨水リザーバから雨水を供給する装置を更に有するのが良い。
【0040】
本発明の内容は、以下に続く詳細な説明を読むと共に添付の図面を参照すると一層容易に理解でき、図中、本発明の非限定的な実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の先行技術として存在するクレーンの一例の概略正面図である。
【図2】図1のクレーンの略図である。
【図3】先行技術として存在する別のクレーンの概略側面図である。
【図4】本発明によるクレーンの概略正面図である。
【図5】図4のクレーンのVの方向に見た概略平面図である。
【図6】図4のクレーンのVIの方向に見た概略側面図である。
【図7】図4のクレーンのVIIの方向に見た部分概略側面図である。
【図8】図4のクレーンのVIIIの方向に見た部分断面略図である。
【図9】図4のクレーンのビーム部分の部分立体図である。
【図10】図4のクレーンの軌道の拡大部分断面図である。
【図11】図8に示されているクレーンの変形例の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図4は、本発明による大型クレーン1を示している。
【0043】
このクレーンは、40m以上、好ましくは50〜150mの高さのものであるのが良い。その重さは、例えば2000T〜8000Tであるべきであり、その全体的容量、即ち、このクレーンが取り扱うことができる吊り荷の重量は、例えば、600Tを超える場合がある。クレーンの幅は、50〜250mであるのが良い。
【0044】
クレーン1は、互いに平行な2本の水平ビーム2を有し、これらのうちの1つだけが図4に見える。
【0045】
さらに、クレーン1は、1本の固定脚3及び地上に配置されたレールに沿って動くよう構成された1本の揺動脚4を備え、ビーム2は、脚3,4によって支持されている。
【0046】
クレーン1は、吊り荷Cを運搬することができる主トロリ5及び補トロリ6を更に有し、吊り荷Cは、例えば建造中の船舶の一部分であるのが良い。
【0047】
主トロリ5及び補トロリ6は、ビーム2によって支持された水平軌道7に沿って動くことができ、そして吊り荷Cを必要ならば逆向きにすることができるよう互いに横切ることができるのが良い。
【0048】
図8に示されているように、各ビーム2は、他方のビーム2に向いた表面25a上に設けられた内ブラケット10と、外面25b上に設けられた外ブラケット11を有し、ブラケット10,11は、軌道7を有している。
【0049】
軌道7は、図示の例では、ビームの頂部から、ビームの最大高さの1/3〜1/2の距離gのところに配置されている。
【0050】
他方のビーム2に向いた表面25a及び外面25bは、所与の例では垂直である。しかしながら、表面25a,25bが例えば傾斜状態にある場合であっても、これは、本発明の範囲に依然として含まれる。
【0051】
図示の例では、補トロリ6は、2本のビーム2間を走行し、主トロリ5の一部分も又、ビーム2間を走行する。2本のビーム2間を走行する主トロリ5の部分は、例えばトロリの全高の25%以上の高さのところに位置すべきである。
【0052】
補トロリは、これがビーム2によって完全に隠されているので図4では見えない。
【0053】
ビーム2は各々、高さHが変化する断面を備えている。所与の例では、高さHは、その最も高いところの高さであり、ビームの中央部分では一定である一方で、図4に示されているように軌道7の任意の部分に沿ってビームの末端に近づくにつれ次第に減少する。
【0054】
最大高さHmaxは、例えば、8〜20mであり、ビームの端のところの最小高さHminは、例えば、4〜10mであり、高さの変化は、例えば直線的に考えられる。差ΔH=Hmax−Hminは、4〜10mである。角度は、例えば、5°〜20°である。
【0055】
各ビーム2の平坦な中央部分の長さL2は、例えば、各ビーム2の全長L1の50%以上である。
【0056】
図5で分かるように、ビーム2は、大抵の場合、互いに離隔されており、共通末端部の一部分を形成するようこれらの末端が互いに接合されており、共通末端部の幅は、図示の例では、ビーム2の中央部分から遠ざかるにつれて次第に減少している。
【0057】
各ビーム2の全長L1は、図4に示されているように共有末端部分15を含む各ビーム2の一端から他端までの距離として定義される。
【0058】
中央部分の表面25a,25b間の各ビーム2の各幅は、例えば、2〜4mである。
【0059】
図示のように各ビームの中心間の距離と最大高さHmaxの関係e/Hmaxは、例えば1にほぼ等しく又は恐らくは1未満であり、それにより、クレーンは、より空気力学的になる。
【0060】
各ビームの中心は、他方のビームに向いた表面25a及び外面25bから等距離のところに位置している。
【0061】
図4に陰影を施した領域に示されている共有末端部分15の一部分内に位置したチャンバ16内に、クレーンは、図を混乱させないように図4には示されていないが、それ自体周知である伸縮式保守用クレーンを有し、この保守用クレーンは、トロリ5,6及び軌道7を保守するのに役立つ。保守用クレーンの高さは、稼働中又は非伸長状態では、必要に応じて主トロリ5の下を通り、必要ならばこれと交差するほどの高さであるのが良い。保守用クレーンは、移動式であり、かかる保守用クレーンは、ブラケット10上に配置されていて、補トロリ5が走行する軌道7上でビーム2に沿って動くことができる。チャンバ16が設けられていることにより、保守用クレーンを不使用時に共有末端部分15の内部に収納することができる。したがって、保守用クレーンは、公知のクレーンの場合のように連続的に伸長されるわけではない。また、これにより、現行の公知クレーンと比較して、クレーン1の空気抵抗を減少させることができる。
【0062】
クレーン1は、固定脚3の側部に、図4及び図6に見える2本のストラット20を有し、これらストラットは、荷重を分布させると共にクレーン1の平衡状態を補強するよう共有末端部分15の末端15aを固定脚に連結するよう構成されている。注目されるように、所与の例では、固定脚3は、末端15aとしてビームを支持しておらず、これから距離fを置いたところから支持している。ストラット20は、ビームの末端15aを固定脚3に連結している。距離fは、例えば、8〜15mである。図4で理解できるように、末端15aは、斜切されると共に斜めになっており、垂線に対して角度γをなしており、γは、例えば30°〜45°である。
【0063】
図8及び図9に示されているように、各ビーム2は、ビームの外面を構成するケーソン25を有している。図示の例では、ケーソン25は、各ビーム2の上面25cの高さ位置のところに丸い形状を示している。この例では、ケーソン25は、下面25dの高さ位置のところに同様に丸い形状を示している。この空気力学的形状により、雨水は、ケーソン25に沿って容易且つ迅速に流れることができる。
【0064】
ビーム2の内部構造体は、図示の例では、1つのものから次のものにほぼ平行に配置された一連の隔壁26で構成されている。隔壁26は、図示の例では、人を通過させることができる穴あけされた穴28を備える幾つかのプレート27を上側部分に有すると共に下側部分に筋かい30を有している。隔壁26は、図示の例では、ブラケット10,11内に配置された幾つかのプレート29を更に有している。図9で理解されるように、点線で示されている隔壁26は、各ビーム2の内部に互いに距離dを置いて配置された隔壁26の配置状態を良好に理解するために、ビーム2の内部に配置されている。
【0065】
2つの隔壁26の離隔距離dは、例えば、高さHmax以下である。
【0066】
各ビーム2の内部構造体は、図示の例ではプレート27と筋かい30との境界部のところに位置し且つ互いに異なる隔壁26を連結するフロア31を更に有している。ケーソン25の内部では、各ブラケット10,11に関し、各ビーム2は、水平横断面がTの形状をしており、組み立て状態を維持するためにこの形状をブラケット10,11の長さにわたって有する数個の補剛材(スチフナ)32を有する。図面を分かりやすくするために図示していないが、他の長手方向補剛材を設けるのが良い。これら長手方向補剛材は、ビーム2のケーソン25を形成するシートを補剛するためにケーソン25の内部に設けられるのが良い。
【0067】
図示の例では、フロア31は、ブラケット10,11の上側末端部10b又は11bの頂部の高さ位置に配置されている。ブラケット10,11は、ケーソン25の各側に対称に配置されている。補剛材32は、各ブラケット10又は11の下側末端部10a又は11aの高さ位置のところでケーソン25の内部に配置されている。
【0068】
ケーソン25は、単一の材料、例えば鋼で作られても良く、或いは数種類の互いに異なる鋼、好ましくは互いに異なる力学抵抗を備えた少なくとも2種類の鋼で構成されても良い。
【0069】
図示していない実施形態では、プレート27は、ビーム2の頂部から補剛材32まで延び、この場合、筋かい30は、ビーム2の底部から補剛材32に至る高さのところに位置するのが良い。
【0070】
各ブラケット10,11は、これらの全長にわたって手すり35を有する。ブラケット10,11は、図8に点線で示されているように、雨水を排水することができる少なくとも1つの雨水排水系統12を更に有している。雨水排水系統12は、例えば、各ブラケットを横切る垂直ガッタから成る。
【0071】
図10に詳細に示されているように、軌道7の各々は、好ましくはレール100のベースのところに作られた溶接部101によりレール100が締結されているT字形の形をした部分を有している。軌道7のT字形部分の底部は、軌道を図示のようにブラケットの外側末端部10c又は11cのところで支持するブラケットに連結され、好ましくは溶接されている。
【0072】
以下、図6を参照して、図を分かりやすくするために図には示されていないが、一般に知られているイコライザ及びボギー55を有するクレーンの側方調節システムで支持されたベース54に取り付けられている固定脚3について詳細に説明する。固定脚3は、イコライザ及びボギー55によって動くのに適している。固定脚3は、ビーム2を支持したピラー50及び上述したように連結されたビーム2の共通末端部分15の末端15aを支持するために上側末端20aにより互いに結合された2本のストラット20を有している。ストラット20は、ビームの末端部分15のところでピンにより互いに非剛性的に連結された管から成るのが良い。ストラット20は、ビーム2と40°〜60°の角度δをなすのが良い。
【0073】
図6に2つの末端のところに矢印で指示されているようにクレーンの底部から頂部までのエレベータ51の移動を可能にするために、図示していない通路がピラー50の内部に設けられていることが示唆されている。図示していない階段も又、クレーンの底部から頂部までピラー50の内部に設けられていることが想定される。
【0074】
ベース54内で固定脚3の中に給排水設備53が設置されるのが良い。
【0075】
図示の例では、クレーンは、固定脚3の中に、図6に点線で表された雨水収集ガッタ57を有し、この雨水収集ガッタは、これに雨水を供給する雨水収集リザーバ58に連結されている。
【0076】
ベース54内に配置された雨水収集リザーバ58は、給排水設備に水を供給するために給排水設備53に連結されている。また、雨水収集リザーバ58には、雨水収集とは別個独立に、例えばトラックによって水を供給することができる。
【0077】
廃棄物収集リザーバ59も又、給排水設備53の近くでベース54内に設けられており、この廃棄物収集リザーバは、給排水設備53から来た廃棄物及び廃水を収集するようになっている。廃棄物収集リザーバ59は、例えばトラックによりその内容物を空にすることができるように位置決めされている。
【0078】
ピラー50の各側で底部のところに配置された2つのバットレス52により、ピラー50が載っているイコライザ及びボギー55を含むクレーン側方調節システム全体に沿って重量を分配することができる。バットレス52は各々、ピラー50の両端部と角度βをなし、角度βは、例えば20°〜45°である。バットレス52は、可撓性リンクを構成するピンによってピラー50及びベース54に連結されている。
【0079】
クレーン1は、揺動脚4に向いた固定脚3の部分上且つピラー50上に、移動式キャビン60を有し、この移動式キャビンは、トロリ案内制御装置を収容した状態で底部から頂部まで動くことができ、オペレータは、これらトロリ案内制御装置を操作することができる。移動式キャビン60が底部から頂部まで動くことができるということにより、オペレータは、ベース54内に設置された給排水設備に容易に接近することができ、その昇降状態をモニタすることができ、そしてクレーンを容易に退避させることができる。
【0080】
揺動脚4は、図7に示されているように、固定脚3と同様、ボギー及びイコライザを含むクレーンの側方調節システム55に取り付けられている。
【0081】
揺動脚4は、形状が三角形であり、上側末端が互いに連結されていて互いに角度α、例えば20°〜45°をなす2本の脚62を有している。脚62は、クレーン側方調節システム55上に載っている。脚62は、脚62の中央部分のところの厚さが10〜20mmの管状断面材であり、これは、図の縮尺では視認できない。
【0082】
固定脚3の場合と同様、揺動脚4は、これらの末端15aから8〜15mmの距離kをおいたところでビーム2を支持している。
【0083】
次に、特に図8に見え、更に図5の平面図でも見える主トロリ5及び補トロリ6について詳細に説明する。
【0084】
主トロリ5は、ビーム2に対して水平且つ横方向に位置決めされると共にビーム2の上方で且つこれらの各側で延びる2本の横方向ビーム75を有している。横方向ビーム75のうちの1本が図8に見える。横方向ビーム75は、必要に応じてビーム2の場合と同様、上面及び/又は下面に丸形の形状、即ち、空気力学的形状を備えるのが良い。
【0085】
主トロリ5は、ビーム2に平行であり横方向ビーム75を連結する2本の短いビーム77を更に有している。ビーム支持体77が図5に見える。
【0086】
主トロリ5は、各側が軌道7上で動くのに適した図8に見える4本の垂直ピラー80を介してビーム2によって支持されている。ビーム支持体77及びピラー80は、横方向ビーム75の末端に対して4〜8mmの距離jをおいたところの引っ込み位置にある。ピラー80は、イコライザ82、ボギー83及びローダ81を有し、これらのうちの特定のものは、電動式のものであり、それによりビーム2上での主トロリの移動が可能である。
【0087】
横方向ビーム75間には、主トロリ5の昇降システム70が設けられ、この昇降システムは、各横方向ビーム75に或る特定の箇所で固定されている。
【0088】
昇降システム70の外部は、例えば複合材料で作られたシートで覆われている。昇降システム70の内部には数個の、図示の例では、全部で4本の筋かい71が設けられており、これら筋かいは、昇降システム70の外部に設けられた数個の戻しシーブに連結されている。
【0089】
主トロリ5は、特に図4及び図5で見え、昇降システム70の各側に設けられると共に主トロリ5を全体として剛性にする2つのブレース78を更に有する。
【0090】
主トロリ5の昇降システム70の中心は、横方向ビーム75の長さに沿うなかほどで横方向ビーム75の上下に置かれており、これに対し、公知のクレーンでは、昇降システムは、横方向ビームの末端のところに配置されている。したがって、昇降システム70の荷重は、有利には、ビーム2間で主トロリの中間に集中して位置する。
【0091】
戻しシーブ72は、分かりやすくするために図面には示されていないフック及びロープの案内を可能にする。点線によって2つの間隔保持トロリ76が表されており、これらトロリは、横方向ビーム75間に設けられた状態で戻しシーブ72に連結されており、それにより、ビーム2のフックの伸長及び戻りが可能である。
【0092】
補トロリ6に関し、これは、主トロリ5の循環的運動のためのスペースを空けるよう吊り下げられており、かかる補トロリ6により、ケーブル又はロープの長さを短くすることができる。補トロリは、2本の横方向ビーム90を含むフレームを有し、これら横方向ビームは、水平且つ横方向にビームまで延びると共にこれらを見たときにビーム表面間に配置されている。図5に見えるビーム2に平行な2本のビーム支持体95が、互いの間に横方向ビーム90を連結している。横方向ビーム90は、これらの末端90aのイコライザ91、幾つかのボギー93及び幾つかのローラ92を介してブラケット10の軌道7上に載っており、イコライザ、ボギー及びローラのうちの或る特定のものは、補トロリが動くことができるようにするよう電動式のものである。補トロリフレーム6は、図示の例では2つずつVの形に配置されると共に上側末端85bにより互いに連結されると共に横方向ビーム90のうちの1本に連結され、そしてビーム末端90aに対して僅かに引っ込められた4本のピラー85を更に有している。ピラー85の下側末端85aは、2つずつこれらの間に連結されている。ピラー85は、例えば複合材料で作られていて、幾つかの、図示の例では2つの巻上装置88を収容した外部シート87を有する昇降システム86を支持している。巻上装置88は、昇降システムの外部に設けられた戻しシーブ89に連結され、これらシーブは、分かりやすくする目的で図示されていないケーブル及び/又はフック、例えば少なくとも1つのフック又は実際には2つのフックに直接的又は間接的に連結されており、巻上装置88の設置位置は、フックの個数の関数である。
【0093】
注目されるべきこととして、補トロリ6と主トロリ5は、互いに横切るのが良い。というのは、主トロリ5の電動化システム70の下側末端は、補トロリ6の横方向ビーム90の上側末端の上方を通るからである。
【0094】
電源は、図示の例では、ケーブルチェーン型のものであり、各トロリについて別々である。
【0095】
補トロリ及び主トロリの昇降システムの周りにシートを作るために複合材料を用いた場合の利点は、これらの材料が計量であること、これらが腐食並びに油及びグリースに対して耐性があること、空気力学的形状を作ることができること、光を透過させることができ、それにより、日中、照明効率を促進することができるということにある。クレーンの他の要素、例えば階段、プラットホーム、梯子及び手すりは、複合材料を用いて製作できるので有利である。
【0096】
ビーム2、主トロリ5の横方向ビーム70及び脚3,4のベースのところの最も大きなイコライザに予め応力を加えるのが良い。
【0097】
当然のことながら、本発明は、上述の例には限定されない。クレーンの要素の各々、特に主トロリ、補トロリ、ビーム及びブラケットの形状、保守用クレーン及びクレーン脚は、本発明の範囲から逸脱することなく改造できる。
【0098】
例えば、バルクヘッド26は、ビーム2の頂部全体に沿ってプレート27を有しても良く、ビームの内部構造体は、この場合、筋かいなしである。
【0099】
これとは逆に、バルクヘッド26は、全体が筋かいで作られても良い。これら2つの末端間の中間構造体の全ても又このように構成可能である。
【0100】
補トロリ及び主トロリの筋かいの設置位置は、本発明の範囲から逸脱することなく変更可能である。
【0101】
吊り荷があまりにも大きく又は軟質である場合、数個のフックを備えたスプレッダービームを吊り荷の支持のためにフックと吊り荷Cとの間に配置するのが良い。スプレッダービームは、チタン合金で作られるのが良く、これにより、軽量であり且つ耐腐食性があるという利点が得られる。
【0102】
ケーソン25の丸形形状は、本発明の範囲から逸脱せずに図示の形状とは異なっていても良い。これは、例えば、楕円形状のものであっても良い。
【0103】
図11には、本発明によってクレーム請求されているクレーンの別の実施形態の半分が示されている。
【0104】
この例では、ケーソン25は、各ビームの上側平坦面25cのところに平坦な形状を有し、これも又、ケーソン25の空気力学的形状を改良することができる。
【0105】
図8に示されている形態に関し、上述の例の補トロリ6は、4つの巻上装置88及び垂直に位置決めされた幾つかのピラー85を有している。
【0106】
主トロリ5は、図11に示されている例では、2つの大型巻上装置71a及び2つの小型巻上装置71bを有しており、巻上装置71a,71bは、並置状態に位置決めされている。昇降システム70の高さを減少させることができ、それにより、主トロリ5の垂直軸線に関する風抵抗を減少させることができる。
【0107】
図示していない実施形態では、各巻上装置71aは、小型巻上装置71bの上方に位置決めされる。
【0108】
別の実施形態では、巻上装置71a,71bは、それぞれ1つずつ垂直軸線周りに位置決め可能である。
【0109】
明細書全体において、「〜を1つ有する」という表現は、別段の指定がなければ、「〜を少なくとも1つ有する」と同義であると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型クレーン(1)であって、
‐軌道(7)を有する2本のビーム(2)と、
‐前記ビーム(2)を支承した2本の脚(3,4)と、
‐前記軌道(7)に沿って動くよう設計された、少なくとも1つの主トロリ(5)及び少なくとも1つの補トロリ(6)とを有し、前記主トロリ(5)及び前記補トロリ(6)は、前記ビーム(2)上を動いている間、互いに横切るのに適するよう構成されており、
各ビーム(2)は、軌道(7)の少なくとも一部に沿って進むにつれ高さ(H)が変化する外側断面を有している、クレーン。
【請求項2】
前記ビーム(2)は、中央部分に最大高さを持つ外側断面と、前記脚(3,4)に近づくにつれ高さが減少する外側断面とを有している、請求項1記載のクレーン。
【請求項3】
各ビーム(2)は、他方のビーム(2)に向いた1つの表面(25a)で前記補トロリ(6)の軌道(7)を構成する内ブラケット(10)を支持している、請求項1又は2記載のクレーン。
【請求項4】
各ビーム(2)は、外面(25b)で前記主トロリ(5)の少なくとも1つの軌道(7)を構成する外ブラケット(11)を支持している、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項5】
前記補トロリ(6)は、前記2本のビーム(2)に向いた前記表面(25a)間で循環して動く、請求項3又は4記載のクレーン。
【請求項6】
前記主トロリ(5)の一部は、前記2本のビームに向いた前記表面(25a)間に位置決めされている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項7】
各ビーム(2)は、丸い上側形状を有する、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項8】
各ビーム(2)は、丸い下側形状を有する、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項9】
各ビーム(2)は、好ましくは少なくとも下側部分に幾つかの筋かい(30)を備えた少なくとも1つ、好ましくは数個の隔壁を有する、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項10】
各ビーム(2)は、各々が好ましくは少なくとも上側部分に、前記ビームの外部に設けられたケーソン(25)に垂直なプレート(27)を備えた少なくとも1つ、好ましくは数個の隔壁を有する、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項11】
前記2本のビーム(2)は、各側に共通の末端部分(15)を形成するようこれらの末端が互いに接合され、前記共通末端部分(15)は、その末端に近づくにつれて幅が次第に減少する、請求項1〜10のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項12】
前記クレーンの底部から頂部まで前記クレーン脚のうちの一方の上で動くのに適した移動式キャビン(60)を有する、請求項1〜11のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項13】
前記脚のうちの一方のベース(54)内に設けられた給排水設備(53)を有する、請求項1〜12のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項14】
少なくとも一方の脚、好ましくは前記固定脚(3)は、前記ビームの前記末端から距離を置いたところに設けられている、請求項1〜13のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項15】
前記脚は、前記ビームの前記末端を前記脚、好ましくは前記固定脚に連結するのに適した少なくとも1本、好ましくは2本のストラット(20)を有する、請求項1〜14のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項16】
前記ビーム(2)は、共通末端部分(15)に、保守用クレーン、好ましくは伸縮式且つ移動式の保守用クレーンを受け入れるのに適した設置箇所(16)を有する、請求項1〜15のうちいずれか一に記載のクレーン。
【請求項17】
前記ビーム(2)は、少なくとも1つの雨水収集ガッタ及び少なくとも1つの雨水収集リザーバを有する、請求項1〜16のうちいずれか一に記載のクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−515301(P2011−515301A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501277(P2011−501277)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050508
【国際公開番号】WO2009/125127
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510255211)タイユアン ヘビー インダストリー カンパニー リミテッド (1)
【出願人】(510255233)
【Fターム(参考)】