説明

大型2サイクルディーゼルエンジンにおける軸受の摩耗の監視の改善

【課題】大型2サイクルディーゼルエンジンのクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、主軸受の摩耗を監視するための装置を提供する。
【解決手段】少なくとも2つのセンサを備え、これらのセンサはエンジンの固定点に対して所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置・構成される。装置のコントローラは、各センサから信号を受信し;エンジン動作条件に応じて各信号を補償し;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行する;ように構成される。

【発明の詳細な説明】
【分野】
【0001】
本願は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおける軸受の摩耗を測定するための機器および方法に関する。
【背景】
【0002】
大型2サイクルディーゼルエンジンの主軸受、クランクピン軸受、およびクロスヘッド軸受は、対応する軸受ジャーナルを支持するための軸受表面を画定する下部軸受胴および上部軸受胴を有する。軸受胴は、軸受メタルの層をその上に含むスチールの裏当てを有する。軸受メタルは、典型的には、約1.5mmから2mmの厚さの層のスズ-アルミニウム合金またはホワイトメタル合金である。
【0003】
これらのエンジンの生産および動作の際の細心の注意にもかかわらず、欠陥が生じる率はゼロではない。大部分の大型2サイクルディーゼルエンジンは、外洋航行船であることから、欠陥軸受に起因してエンジン故障が生じることは極めて望ましくない。
【0004】
さらに、軸受のオーバーホールの費用は、高くなる可能性があり、例えば、クランクシャフトの再研磨が必要とされ、これにより、エンジンが動作できない期間はかなり長いものとなりうる。
【0005】
かかる事態の発生を防止するために、4年毎または5年毎に検査を実行し、その時に軸受を分解および検査することが、船級協会によって要求されている。
【0006】
これらの検査はかなり複雑であり、軸受を分解してから軸受を再び組み立てることを必要とする。また、この過程は、建造誤差、すなわち、オーバーホール中に発生する誤差について実質的な危険性を含む。
【0007】
検査の必要性を緩和するために、従来技術は、軸受の距離を測定することによって、軸受の摩耗を監視することを提案している。
【0008】
米国特許出願公開第US2007/0017280号は、シリンダ毎に2つのセンサを使用することによって、クロスヘッドのガイドシューの位置を測定することを開示する。これにより、主軸受、クランクピン軸受、およびクロスヘッド軸受における摩耗の検出が可能になり、また、摩耗が主軸受に存在するか、またはクランクピン軸受およびクロスヘッド軸受に存在するかを決定することも可能になる。これらの測定は、摩耗が故障を引き起こそうとしているか否か、および故障が差し迫って警告を発するかを決定するために使用される。
【0009】
上述のように、故障により生じた結果は非常に危険であるため、軸受の摩耗を検知する効率的かつ正確な方式が、大いに有用になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第US2007/0017280号
【概要】
【0011】
このような背景に鑑みれば、センサ読み取り値を改善された方式で較正および/または解釈するように設計された方法よび機器を提供することによって、従来のシステムの効率および精度を改善する機器および方法を提供することは、有用であろう。
【0012】
軸受の摩耗を監視する主な目的は、熱が軸受ライニング以外の他の部品に損傷を引き起こしている程度まで軸受の破壊が進展する前に軸受の破壊を検出することにある。影響を受け得る部品は、歪みに起因して、クロスヘッド、クランクピン、主軸受ジャーナル、または軸受ハウジングである。このような損傷は、概して、軸受ライニングが摩耗する場合、およびシャフトと軸受胴スチール裏当てとの接触が発生する場合の結果である。
【0013】
以下の説明がエンジン速度の補償に着目していても、本明細書における教示は、プロペラピッチレベルおよび負荷の補償にも適用されうることに留意されたい。これらは、いくつか例を挙げると、エンジンにおけるクロスヘッドまたはガイドシュー等の可動部品の下死点(bottom dead centre; BDC)に影響を及ぼすエンジン動作条件の例である。
【0014】
開示する実施形態は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置を提供する。前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダのクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成される。前記装置は、各センサから信号を受信し、エンジン動作条件に応じて各信号を補償し、前記センサ信号に影響を及ぼす要因に対応するように偏差を決定し、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行するように構成されたコントローラをさらに備える。
【0015】
ある実施形態では、前記エンジン動作条件はエンジン速度である。
【0016】
ある実施形態では、前記エンジン動作条件はプロペラピッチレベルである。
【0017】
ある実施形態では、前記エンジン動作条件は負荷である。
【0018】
センサ信号の偏差を決定することによって、前記コントローラは、複数のセンサに影響を及ぼし、そうでなければBDCレベルの変化として解釈され得る外部影響に対応することができる。
【0019】
また、開示する実施形態は、物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法を提供することをも対象とし、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するためのものであり、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記方法は、各センサから信号を受信することと、エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと、前記センサ信号に影響を及ぼす要因に対応するように偏差を決定することと、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することとを含む。
【0020】
また、開示する実施形態は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置を提供することも対象とし、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記装置は、各センサから信号を受信し、エンジン動作条件に応じて各信号を補償し、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行するように構成されたコントローラをさらに備え、前記コントローラは、前記エンジンの現在の動作に従って、前記閾値を動的に変更するようにさらに構成される。
【0021】
また、開示する実施形態は、物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法を提供することをも対象とし、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するためのものであり、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダのクロスヘッドの下死点(bottom dead centre; BDC)を測定するように配置および構成され、前記方法は、各センサから信号を受信することと、エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することとを含み、前記方法は、前記エンジンの現在の動作に従って、前記閾値を動的に変更することをさらに含む。
【0022】
また、開示する実施形態は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置を提供することも対象とし、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記少なくとも2つのセンサは、各シリンダにおいて2つのセンサ、つまり1つの前部センサおよび1つの後部センサが存在するように配置され、前記装置は、各センサから信号を受信し、エンジン動作条件に応じて各信号を補償し、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行するように構成されたコントローラをさらに備え、前記コントローラは、第1のシリンダの前部センサの信号を第2のシリンダの後部センサの信号と組み合わせることによって、軸受が摩耗しているかを決定し、および/または第1のシリンダの前記前部センサの信号を同一のシリンダの前記後部センサの信号と組み合わせることによって、軸受が摩耗しているかを決定し、前記2つのセンサ信号の結果を前記閾値レベルと比較するようにさらに構成される。
【0023】
また、開示する実施形態は、物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法を提供することをも対象とし、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するためのものであり、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記方法は、各センサから信号を受信することと、エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することとを含み、前記方法は、第1のシリンダの前記前部センサの信号を第2のシリンダの前記後部センサの信号と組み合わせることによって、軸受が摩耗しているか、または危険な状態にあるかを決定すること、および/または、第1のシリンダの前記前部センサの信号を同一のシリンダの前記後部センサの信号と組み合わせることによって、軸受が摩耗しているか、または危険な状態にあるかを決定することと、前記2つのセンサ信号を組み合わせて、前記2つのセンサ信号の結果を前記閾値レベルと比較することとをさらに含む。
【0024】
また、開示する実施形態は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置を提供することも対象とし、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記装置は、各センサから信号を受信し、エンジン動作条件に応じて各信号を補償し、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行するように構成されたコントローラをさらに備え、前記コントローラは、前記受信したセンサ信号を、前の期間の信号値の平均レベルと比較することによって、BDCレベルの急速な変化を検出するようにさらに構成される。
【0025】
また、開示する実施形態は、エンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置を提供することも対象とし、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記装置は、各センサから信号を受信し、エンジン動作条件に応じて各信号を補償し、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行するように構成されたコントローラをさらに備え、前記コントローラは、
センサの基準レベルを更新し、
センサの現在のレベルの更新し、および基準値を決定し、かつ前記基準値が急速な変化の閾値レベルを超えたかどうかを判断することによって、
下死点レベルの急速な変化を検出するようにさらに構成される。
【0026】
また、開示する実施形態は、エンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための方法を提供することも対象とし、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記装置は、各センサから信号を受信し、
エンジン動作条件に応じて各信号を補償し、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行するように構成されたコントローラをさらに備え、前記コントローラは、
センサの基準レベルの更新し、
センサの現在のレベルを更新し、および基準値を決定し、かつ前記基準値が急速な変化の閾値レベルを超えたかどうかを判断することによって、
下死点レベルの急速な変化を検出するようにさらに構成される。
【0027】
また、開示する実施形態は、物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法を提供することをも対象とし、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するためのものであり、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記方法は、各センサから信号を受信することと、エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することとを含み、前記方法は、前記測定されたセンサ値を、前の期間の平均レベルと比較することによって、BDCレベルの急速な変化を測定することをさらに含む。
【0028】
また、開示する実施形態は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置を提供することも対象とし、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記装置は、各センサから信号を受信し、エンジン動作条件に応じて各信号を補償し、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行するように構成されたコントローラをさらに備え、前記コントローラは、前記エンジンの動作中に第2の数の速度点に関連する第1の数のセンサ値をサンプリングすることによって、前記エンジンの動作中のエンジン動作条件補償表を学習フェーズ中に生成し、前記第1の数のサンプルは、速度点について受信されているため、その速度点について前記得られたサンプル値を平均することによって基準値を決定するようにさらに構成される。
【0029】
また、開示する実施形態は、物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法を提供することをも対象とし、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するためのものであり、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記方法は、各センサから信号を受信することと、動作条件に応じて各信号を補償することと、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することとを含み、前記方法は、前記エンジンの動作中に第2の数の速度点に関連する第1の数のセンサ値をサンプリングすることによって、前記エンジンの動作中のエンジン動作条件補償表を学習フェーズ中に生成することであって、前記第1の数のサンプルは、速度点について受信されているため、その速度点について前記得られたサンプル値を平均することによって基準値を決定することをさらに含む。
【0030】
また、開示する実施形態は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置を提供することも対象とし、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記装置は、
各センサから信号を受信し、エンジン動作条件に応じて各信号を補償し、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行する、
ように構成されたコントローラをさらに備え、前記コントローラは、ある期間における再調整または取り換えられたセンサのオフセットの平均を計算し、前記計算された平均オフセットに従って、影響を受けたセンサの前記基準値をオフセットすることによって、動作条件補償ルックアップテーブルに従って前記信号値を補償することによって、再調整または取り換えられたセンサからの信号を調整することによって、取り換えられたまたは調整されたセンサの補償を再調整するようにさらに構成される。
【0031】
また、開示する実施形態は、物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法を提供することも対象とし、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するためのものであり、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記方法は、各センサから信号を受信することと、エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することとを含み、前記方法は、ある期間における再調整または取り換えられたセンサのオフセットの平均を計算し、前記計算された平均オフセットに従って、影響を受けたセンサの前記基準値をオフセットすることによって、動作条件補償ルックアップテーブルに従って前記信号値を補償することによって、再調整または取り換えられたセンサからの信号を調整することによって、取り換えられたまたは調整されたセンサを再調整することをさらに含む。
【0032】
また、開示する実施形態は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置を提供することも対象とし、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記装置は、各センサから信号を受信し、エンジン動作条件に応じて各信号を補償し、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行するように構成されたコントローラをさらに備え、前記コントローラは、期間中に何らかの摩耗が発生した場合かどうかを示す傾向曲線を生成するようにさらに構成される。
【0033】
また、開示する実施形態は、物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法を提供することも対象とし、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するためのものであり、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおけるクロスヘッドまたはガイドシューの下死点を測定するように配置および構成され、前記方法は、各センサから信号を受信することと、エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することとを含み、前記方法は、期間中に何らかの摩耗が発生した場合かどうかを示す傾向曲線を生成することをさらに含む。
【0034】
また、開示する実施形態は、上記に記載のいずれかの装置を備えるエンジンを提供することも対象とする。
【0035】
また、開示する実施形態は、上記に記載のエンジンを備える船舶を提供することも対象とする。
【0036】
また、開示する実施形態は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおける軸受の摩耗を監視するためのコンピュータプログラムコードを少なくとも含むコンピュータ可読媒体を提供することも対象とし、前記コンピュータ可読媒体は、上記に記載の方法のうちの任意の1つまたは複数を実行するためのソフトウェアコードを含む。
【0037】
本願に従う装置、方法、およびコンピュータ可読媒体に関するさらなる目的、特徴、利点、および特性は、発明を実施するための形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本説明の以下の詳細部分では、図示する例示的実施形態を参照して本願の教示について詳細に説明する。
【図1】ある実施形態に従うエンジンの線図である。
【図2】ある実施形態に従う軸受の概略図である。
【図3】ある実施形態に従う一般方法を説明するフローチャートである。
【図4】ある実施形態に従う方法を説明するフローチャートである。
【図5】ある実施形態に従う方法を説明するフローチャートである。
【図6】ある実施形態に従う曲線を示す図である。
【図7】ある実施形態に従う曲線を示す図である。
【図8】ある実施形態に従う方法を説明するフローチャートである。
【図9】ある実施形態に従う方法を説明するフローチャートである。
【図10】ある実施形態に従う曲線を示す図である。
【詳細説明】
【0039】
以下の詳細な説明では、本願の教示に従う機器、方法、およびソフトウェア製品について、大型2サイクルディーゼルエンジンに関連する実施形態によって説明する。2サイクルエンジンについてのみ説明されるが、本願の教示を4サイクルエンジン、2サイクルガソリンエンジン、および小型2サイクルディーゼルエンジン等のいかなるエンジンにも使用してもよいことに留意されたい。
【0040】
図1は、エンジン100の切断図である。エンジンは、主ジャーナル110と、各クロスヘッド130が連結される1つ以上のクランクピン120とを有するクランクシャフトを有する。
【0041】
シリンダ毎に、少なくとも3つの軸受、つまり主軸受140(図1では見えないため、点線で示される)、クランクピン軸受150、およびクロスヘッド軸受160が存在する。
【0042】
2つのセンサ170(1つしか図示されない)が、シリンダ毎に配置される。ある実施形態では、1つのセンサ170は、クロスヘッド130の後部に配置され、1つのセンサ170は、クロスヘッド130の前部に配置される。センサ170は、クロスヘッド130と固定点との間の距離を測定するように配置される。代替として、センサは、クロスヘッドが取り付けられた点と固定点との間の距離を測定するように配置される。
【0043】
代替として、センサは、ガイドシュー135の距離を測定するように配置される。
【0044】
図1では、センサ170は、エンジン構造100上に配置され、ガイドシュー135に取り付けられた反射板175までの距離を測定する。使用するセンサの種類、配置方法、および測定する距離についての異なる代替が存在することに留意されたい。
【0045】
好適な実施形態では、センサ170はエンジン構造上に配置されるが、これは、センサが動くことがないので、信頼性の高い読み取り値を生成することができるからである。
【0046】
ある実施形態では、センサ板175は、ガイドシュー135の角移動に起因する変動を減少させた読み取り値を確かにするべく、クロスヘッドピン上に配置される。
【0047】
ある実施形態では、センサは、クロスヘッドに取り付けられるエンジン構造か、クロスヘッドとともに移動するエンジン構造の下死点レベルを決定するように配置される。そのようなエンジン構造としては、例えば上述のガイドシューであるが、他の構造も可能である。そのような配置によれば、クロスヘッドの下死点の間接的な読み取り値が得られる。したがって、そのような構造の下死点レベルを測定することによって、クロスヘッドの下死点レベルの偏位および変化を決定することが可能になる。
【0048】
代替として、複数のセンサ170を異なって配置してもよく、これらをシャフトに沿わない位置に配置してもよい。しかしながら、好ましくは、センサ170は、シャフトに平行して配置される。また、複数のセンサを、シャフトに平行に軸方向に互いに離して配置することは好ましく、それによって、摩耗が主軸受140に存在することを決定することが可能になる。
【0049】
このように、センサは、エンジン100の一回転中のクロスヘッド130の最下点、すなわち下死点のレベルの測定値を提供するように構成される。
【0050】
当業者であれば明白であるように、センサ170の実装には、光学近接センサや静電容量測定近接センサ等の、多数の手法が存在する。
【0051】
図2は、スチール等の硬質金属の核210と、ホワイトメタルまたはスズ-アルミニウム等のより軟質な金属のライニング220とを有する軸受200の一般構成を図示する。
【0052】
ライニングの厚さは、通常、1.0mmから1.5mmの範囲であり、センサ170は、+/-0.01mmの精度で距離またはレベルを繰り返し測定するように設計される。
【0053】
コントローラは、センサ170に接続され、センサ170からの測定値を受信して、測定値を処理して軸受の摩耗を測るように構成される。摩耗の測定は、軸受140、150、160のいずれについても、その負荷部分における軸受壁220の(摩耗または焼付きに起因する)厚さの変化が、エンジン100の構造に対するクロスヘッド130の下死点(Bottom Dead Centre; BDC)レベルに、対応する変化をもたらすという事実に基づく。クランクピン軸受150またはクロスヘッド軸受160の摩耗の場合、該当するシリンダに関してBDCレベルが変化し、一方、主軸受140の摩耗の場合、あるシリンダについてのいずれかのセンサ170および隣接するシリンダにおけるいずれかのセンサに関してBDCレベルが変化する。
【0054】
センサ170からの信号は、一定のレベルの雑音を含み、この雑音は、センサの読み取り値の精度に影響を及ぼす。
【0055】
センサの精度に影響を及ぼす他の要因の1つとして、実際のガイドシューまたはクロスヘッドのBDCレベルが、燃焼圧力等のエンジンパラメータにおける軽度の異常に起因して若干変動することが挙げられる。
【0056】
信号に影響を及ぼす他の要因の1つとして、エンジン速度、すなわち、エンジン100の毎分回転数(revolutions per minute; rpm)が挙げられる。
【0057】
信号に影響を及ぼす他の要因の1つとして、プロペラピッチレベルが挙げられる。
【0058】
信号に影響を及ぼす他の要因の1つとして、エンジンが受ける負荷が挙げられる。このような負荷の一例として、船が運ぶ貨物負荷が挙げられる。
【0059】
これらは全てエンジン動作条件の例であり、以下の説明が、エンジン速度の補償に着目しているとしても、この教示を、他の動作条件の補償にも、単独でまたは組み合わせて適用してもよいことに留意されたい。
【0060】
また、船の喫水の変化による船体変形およびエンジン温度等の他の要因も、BDCレベルに何らかの影響を及ぼし得る。また、種々のエンジン部品の製造工程における変動も影響を及ぼす。
【0061】
また、軸受の信号の乱れ等の要因も、測定されたBDCレベルに影響を及ぼし得る。
【0062】
本明細書に開示する方法および装置は、上述の要因および他の要因を考慮し、かつエンジンにおける軸受の摩耗の信頼性のある測定を提供するように構成される。
【0063】
図3は、本明細書の実施形態の一般的な方法のフローチャートを示す。
【0064】
第1のステップ310において、センサ170からの信号が、コントローラによって入手される。次いで、信号は、種々の要因を補償することによって処理され(320)、偏差を計算することによって補正され、その結果が評価され(330)、評価されると、警告を発するべきか否かが決定される。
【0065】
動作中のエンジンにおける軸受の摩耗に影響を及ぼす多くの要因が存在する。エンジンが故障する場合、機能停止の発生源を探し出することが重要である。軸受の摩耗の場合、軸受の摩耗の増加の原因を把握することが重要であり、把握できないのであれば、新しく取り換えた軸受も尚早に摩耗する可能性が高くなる。
【0066】
以前から知られているように、また上述のように、シリンダ毎に2つのセンサを使用することによって、摩耗している軸受を探し出すことが可能になる。どの軸受の取り換えが必要であるかを同定することは、技術者がエンジンを開ける場所を把握し、どの軸受であるかを探そうとする不必要な作業を行う必要がなくなるため、取り換えに役立つ。
【0067】
しかし、本願の発明者が認識するように、これらの2つのセンサからさらなる情報を抽出してもよい。かかる情報は、摩耗(の増加)の原因の識別にも有用であり、これにより、技術者は、問題を改善し、かつ取り換える軸受の摩耗が増えることを防止することが可能になる。
【0068】
また、さらなる情報は、センサの一部または全部が、何の損傷もないが影響は受ける状況に対応するために使用されてもよい。
【0069】
以下に示すように、抽出された情報を使用して、早期警告を発することによって軸受の摩耗を防止することができ、早期警告によって、オペレータは、軸受が摩耗する前に摩耗の原因を改善することが可能になり、それによって、エンジン故障と、その結果もたらされるエンジンの中断時間が防止される。
【0070】
したがって、本明細書による装置および方法は、摩耗増加の原因を識別することを可能にし、故障を予測し、これを追加のセンサを使用せずに行うことができるため、極めて有利である。
【0071】
ゆえに、本システムは、単に、性能が向上したコントローラを接続することによって、または恐らくは既存のコントローラを更新することによって、2つのセンサが設置された既存のエンジンに容易に組み込むことができる。
【0072】
BDCレベルに対する最も有意な影響は、エンジン速度であり、センサから受信する信号値は、エンジン速度を補償しなくてはならない。なぜなら、エンジン速度が増加するにつれて、BDCレベルは低下し、摩耗監視システムは、軸受が摩耗していると誤って伝えるからである。
【0073】
エンジンの規模に応じて、0.3mmを超える変動が、エンジン速度に応じてBDCレベルに存在し得る。ゆえに、この影響の補償が必要になる。この影響は、シャフト線などの配置やアラインメントに応じて、エンジン毎に個別的であることから、各センサの補償の程度を、エンジン毎に個々に調節しなければならない。
【0074】
信号値は、広範囲の速度についてセンサ毎のBDCレベルを有するルックアップテーブルの使用によって、エンジン速度に応じて補償される。
【0075】
ある実施形態では、コントローラは、エンジン速度またはrpmに依存した通常信号値または平均信号値(基準値)を含むルックアップテーブルに基づいて、速度を補償するように構成される。
【0076】
この通常値は、エンジン速度の小さな変化内で大幅に変化し得る。
【0077】
ある実施形態では、ルックアップテーブルは、公称エンジン速度の速度範囲を、以下において速度点と呼ばれる小範囲に分割することに対応する精度を有する。
【0078】
ある実施形態では、速度範囲は、公称エンジン速度の0%から120%の範囲に対応する。
【0079】
ある実施形態では、速度範囲は、公称エンジン速度の20%から110%の範囲に対応する。
【0080】
ある実施形態では、公称エンジン速度の20%未満の範囲は、軸受の摩耗の監視に考慮されない。
【0081】
ある実施形態では、コントローラは、エンジンが逆回転しているか否かを考慮するように構成される。
【0082】
速度補償に起因して、コントローラが考慮する測定は、実際のBDCレベルではなく、現在のエンジン速度における測定BDCレベルと平均BDCレベルとの差である。これにより、軸受の摩耗に起因するBDCレベルの異常な変化または予想外な変化を検出することが可能になる。
【0083】
したがって、センサから受信した信号の処理は、補償された信号値に基づくべきである。
【0084】
ある実施形態では、コントローラは、受信した信号値から基準値を減算することによって、補償された信号値を決定するように構成される:
Scomp = SN - Sref
【0085】
ある実施形態では、コントローラは、センサ値をフィルタリングするように構成される。
【0086】
ある実施形態では、雑音の影響を最低限に抑えるために、センサ170により提供された値は、ローパスフィルタを使用してフィルタリングされる。
【0087】
ある実施形態では、センサ値毎に、すなわち1回のエンジン回転毎に移動平均を更新するという単純なフィルタが用いられる。ある実施形態では、フィルタは:
新フィルタリング値 = 旧フィルタリング値 × (1-x) + 値 × x
と表現される。
【0088】
xの値は、コントローラが変化に反応する速さに影響を及ぼす。値が高いと、コントローラは、変化に極めて敏感であるため、雑音にも敏感であるが、xの値が低いと、実際のイベントに対する反応が遅くなる。ある実施形態では、xは0.05である。
【0089】
いくつかの要因が、全てのセンサに共通して影響を及ぼし、影響を受けたセンサから受信した信号は、誤って解釈される場合がある。
【0090】
このような要因の1つとして、エンジン温度の変化が挙げられる。
【0091】
このような変化と、軸受の摩耗増加に起因する変化とを区別するために、センサ値毎に偏差が計算される。
【0092】
ある実施形態では、コントローラは、個々の信号から他の信号の平均を減算することによって、他のセンサの値と比較して、センサの信号の偏差を計算するように構成される。
【0093】
4本のシリンダに対応する、全部で8つのセンサS1からS8を有するエンジンにおいて、5番目のセンサ(S5)のセンサ偏差(d(Si))は:
d(S5) = S5 - (S1 + S2 + S3 + S4 + S6 + S7 + S8)/7
と表現されることができる。
【0094】
他の要因の1つとして、場合により推力の変動により引き起こされるエンジン構造の縦せん断により形成される変形の影響が挙げられる。場合によっては、この変形により、シリンダの前部センサおよび後部センサは、互いに関して変動を示す。
【0095】
動作中のエンジンの綿密な監視および調査と、その結果の慎重な分析とによって、2つのセンサの変動が、信号値がしばしば逆位相にあるということにあることが結論付けられた。これにより、一方のセンサの信号値は、他方のセンサの信号値が減少するにつれて増加し、その逆も同様になる。これは、以下において、シリンダ偏差と呼ばれる。
【0096】
ある実施形態では、コントローラは、一方のシリンダの2つのセンサの平均センサ値を決定し、かつそれを他方のシリンダのセンサの平均と比較することによって、この変動を排除するように構成される。
【0097】
4本のシリンダに対応する、全部で8つのセンサセンサS1からS8を有するエンジンにおいて、3番目のシリンダ(cyl3)のシリンダ偏差(d(cyli))は:
d(cyl3) = (S5 + S6)/2 - (S1 + S2 + S3 + S4 + S7 + S8)/6
と表現されることができる。
【0098】
シリンダ偏差およびセンサ偏差の両方を考慮することによって、信号の乱れの影響が減少する。しかし、シリンダ偏差を考慮することは、信号の乱れの減少においてより効果的である。
【0099】
したがって、シリンダ偏差を計算することは、信号の乱れの減少に有用である。
【0100】
シリンダ偏差は、軸受の損傷を検知し得るセンサが1つだけである状況にあまり感度がなく、これは、検知された変化が、偏差計算中に半減し得るからである。
【0101】
ゆえに、軸受の損傷の信頼性のある検出を可能にするために、シリンダ偏差およびセンサ偏差の両方を計算することが好ましい。
【0102】
ある実施形態では、コントローラは、シリンダ偏差およびセンサ偏差の両方を計算するように構成される。
【0103】
2つ以上のセンサが影響を受ける状況の一例として、2つ以上の軸受が損傷を受ける場合が挙げられる。これは、一般的な浸食過程が一部または全部の軸受を劣化させた結果であり得る。このような状況は、油の汚染または油の供給不足の結果であり得る。
【0104】
このような状況は、シリンダ偏差およびセンサ偏差から容易に検出可能ではなく、これは、効果が、これらの計算の平均過程によって相殺され得るからである。
【0105】
しかしながら、このような状況を、信号毎のエンジン速度補償値から検出することが可能である。
【0106】
ある実施形態では、コントローラは、シリンダ偏差、センサ偏差、およびエンジン速度補償信号値を計算するように構成される。
【0107】
したがって、上記に従うある実施形態では、コントローラは、センサ読み取り値の信頼性に影響を及ぼすいくつかの要因を考慮して、信号値から情報を抽出するように構成される。
【0108】
したがって、本明細書に従う装置のコントローラは、エンジンにおける軸受の摩耗を監視するための信頼性のある読み取り値を生成することができる。
【0109】
ある実施形態では、コントローラは、読み取り値を評価し、かつ損傷が差し迫っているか、または発生しようとしているかを決定するように構成される。
【0110】
ある実施形態では、コントローラは、シリンダまたは軸受の現在の読み取り値を、ある期間に取られた平均値と比較するように構成される。ある実施形態では、この期間は6時間である。ある実施形態では、コントローラは、現在の読み取り値と期間平均との差が閾値レベルを超えるかを決定し、超える場合に、事前警告動作を作動するように構成される。ある実施形態では、事前警告限界は、+/-0.25mmである。
【0111】
事前警告レベルを超えたと判断した場合、これは、監視される軸受の状態が変化しているという標示である。
【0112】
ある実施形態では、コントローラは、事前警告をログファイルに格納するように構成される。
【0113】
ある実施形態では、コントローラは、事前警告動作をリセットするために、入力を受信するように構成される。
【0114】
軸受の状態が変化し始めたことだけが検出されるため、エンジンは、少なくともさらに数時間の間、極めて危険な状態にあるわけではなく、ゆえに、事前警告動作をリセットし、エンジンの動作を継続することが可能である。
【0115】
ある実施形態では、コントローラは、シリンダまたは軸受の現在の読み取り値を、アラーム閾値と比較するように構成される。このような閾値を超えたと判断した場合、コントローラは、アラームを作動するように構成される。
【0116】
アラームは、影響を受けた軸受が摩耗し始めているか、または摩耗寸前であり、検査するべきであるという標示である。
【0117】
ある実施形態では、センサ値のアラーム閾値は、+/-0.5mmである。
【0118】
ある実施形態では、センサ偏差のアラーム閾値は、+/-0.4mmである。
【0119】
ある実施形態では、シリンダ偏差のアラーム閾値は、+/-0.3mmである。
【0120】
ある実施形態では、コントローラは、アラーム動作をログファイルに格納するように構成される。
【0121】
万が一、より大きな変化が検出されると、エンジン速度を減速する要求を発行することができる。エンジン速度が軸受負荷および軸受の摩耗に最大の影響を及ぼすため、場合によっては、エンジンを減速させることによって、深刻な場合では、エンジンは、故障を防止するために完全に停止しなければならない。
【0122】
ある実施形態では、コントローラは、シリンダまたは軸受の現在の読み取り値を、減速閾値と比較するように構成される。このような閾値を超えたと判断した場合、コントローラは、減速の要求を発行するように構成される。ある実施形態では、センサ値の閾値は、+/-0.7mmである。ある実施形態では、センサ偏差の減速閾値は、+/-0.5mmである。
【0123】
ある実施形態では、コントローラは、このような減速要求時に、エンジン速度を自動的に減速するように構成される。
【0124】
ある実施形態では、コントローラは、このような減速要求時に、エンジンを自動的に停止するように構成される。
【0125】
ある実施形態では、コントローラは、減速要求をログファイルに格納するように構成される。
【0126】
図4は、本願のある実施形態に従う、軸受の摩耗を監視する一般方法を図示する。
【0127】
ある実施形態では、コントローラは、全てのセンサについて並行して図4のステップを実行するように構成される。
【0128】
ある実施形態では、コントローラは、1つのシリンダについて図4のステップを実行するように構成される。かかる実施形態のあるものでは、シリンダ毎に1つのコントローラを有する。かかる実施形態のあるものでは、コントローラは、他のシリンダのコントローラから信号値を受信するように構成される。
【0129】
第1のステップ410において、値または信号であるSNが、コントローラによって受信される。
【0130】
ある実施形態では、コントローラは、受信した信号から基準値(Sref)を減算することによって、補償値を計算するように構成される(420):
Scomp = SN - Sref
【0131】
ある実施形態では、コントローラは、受信した信号における雑音を減少させるようにフィルタを適用するようにさらに構成される(430)。
【0132】
ある実施形態では、コントローラは、センサ偏差d(Ssensor)を計算するように構成される:
d(Ssensor) = センサ値または信号 -他のセンサの平均
【0133】
ある実施形態では、コントローラはまた、シリンダ偏差であるd(シリンダ)を計算するようにも構成される:
d(シリンダ) = (シリンダ前部のセンサ値または信号+ シリンダ後部のセンサ値または信号)/2 - 他のセンサの平均
【0134】
図4では、両方の偏差がステップ440において計算される。
【0135】
ある実施形態では、コントローラは、センサ値のアラーム閾値を超えたかどうかを判断し(450)、超えたと判断した場合、アラームを作動する(460)ように構成される。
【0136】
ある実施形態では、コントローラは、センサ偏差のアラーム閾値を超えたかどうかを判断し(450)、超えたと判断した場合、アラームを作動する(460)ように構成される。
【0137】
ある実施形態では、コントローラは、シリンダ偏差のアラーム閾値を超えたかどうかを判断し(450)、超えたと判断した場合、アラームを作動する(460)ように構成される。
【0138】
図4では、アラーム限界に関連する全ての3つの決定が実行される(450)。
【0139】
コントローラが、アラームが作動されると決定する場合、コントローラは、イベントをログファイルに格納する(460)ようにさらに構成される。
【0140】
ある実施形態では、コントローラは、センサ偏差の減速限界値を超えたかどうかを判断し(480)、超えたと判断した場合、減速手順の要求を作動する(490)ように構成される。
【0141】
ある実施形態では、コントローラは、新しい信号値を受信するためにステップ410に戻るように構成される。
【0142】
ある実施形態では、コントローラは、回転毎に410から440を実行するように構成される。
【0143】
ある実施形態では、コントローラは、回転毎に450から490を実行するように構成される。
【0144】
ある実施形態では、コントローラは、間隔をおいて450から490を実行するように構成される。ある実施形態では、この間隔は、1回転から50回転の範囲である。ある実施形態では、この間隔は、10回転から30回転の範囲である。ある実施形態では、この間隔は、30回転である。これは、点線によって図4において示される。
【0145】
ある実施形態では、コントローラは、各速度点において50時間の間隔でセンサ毎の信号値の平均を再計算するように構成される。これにより、システムは、エンジンの構造の変化に適合および反応することが可能になる。
【0146】
ある実施形態では、コントローラは、いずれかのエンジン速度の基準値が、最初に得られた有効補償値と比較して、更新閾値を超える値以上に変化するか否かを決定する。変化する場合、これを示すアラームを作動するように構成される。ある実施形態では、更新閾値は、0.2mmである。
【0147】
ある実施形態では、コントローラは、事前警告、アラーム、および減速のうちの少なくとも1つの閾値を、エンジンの現在の動作に従って、動的に変更するように構成される。
【0148】
大型2サイクルディーゼルエンジンの通常動作中、エンジンは、長時間一定のエンジン速度で運転するように設定される。この期間中、エンジン環境は、かなり安定している。例えば、加速が無いため、推力に起因する変形が少ない。
【0149】
エンジン速度が変化すると、環境はより不安定になり、これが、軸受のBDCレベルに影響を及ぼし、これらのBDCレベルは、それに応じて変化および/または変動する。このような期間中、コントローラは、アラームを発することなくこのような変化に対応するように、閾値レベルを上昇させるように構成される。
【0150】
エンジン環境またはエンジン動作に影響を及ぼす別の状況の一例として、エンジンにより推進されている船の負荷が増加し、船が海中により深く沈む場合が挙げられる。
【0151】
エンジン動作が、恐らくは新しいエンジン速度で再び安定すると、コントローラは、閾値を低下させるように構成される。
【0152】
ある実施形態では、コントローラは、待ち期間の経過後に、少なくとも1つの閾値レベルを低下させるように構成される。これにより、動作の変化の影響の後に、アラームを不必要に発することなく対応することが可能になる。
【0153】
ある実施形態では、シリンダ毎に2つのセンサが配置され、1つは前部センサであり、1つは後部センサであり、上述のように、コントローラは、主軸受またはクロスヘッドおよび/もしくはクランクピン軸受が摩耗しているかを決定するように構成される。主軸受が摩耗しているか、または危険な状態にあるかを決定するために、第1のシリンダの前部センサは、第2のシリンダの後部センサと比較される。クロスヘッドおよび/またはクランクピン軸受が摩耗しているか、または危険な状態にあるかを決定するために、第1のシリンダの前部センサは、同一のシリンダの後部センサと組み合わせられる。
【0154】
したがって、主軸受について利用可能なセンサ読み取り値と、クロスヘッドおよび/またはクランクピン軸受について利用可能なセンサ読み取り値との、2つのセンサ読み取り値が存在する。
【0155】
ある実施形態では、コントローラは、2つのセンサ読み取り値を組み合わせ、かつ2つのセンサ読み取り値の結果をアラーム閾値レベルと比較するように構成される。
【0156】
4つのシリンダを有するある実施形態では、各シリンダが2つのセンサを備えて配置され、それぞれ(SF1; SA1),(SF2; SA2) ,(SF3; SA3) ,(SF4, SA4)と示される。すなわち全部で8つのセンサが設けられる。SF1は、シリンダ1の前部センサであり、SA1は、シリンダ1の後部センサであることを表す。シリンダ1は、エンジン出力に最も近いシリンダであり(言い換えると、シリンダ1は、本例において、最後部のシリンダである)、シリンダ1と2との間の主軸受の組み合わせられたセンサ値、SM12は:
SM12 = SF1 + SA2
であり、シリンダ1のクロスヘッドおよび/またはクランクピン軸受の組み合わせられたセンサ値、SCC1は:
SCC1 = SF1 + SA1
である。
【0157】
ある実施形態では、センサ値は、基準値を減算することによって、前述のように補償される。かかる実施形態のあるものでは、コントローラは、補償されたセンサ値の値を合計し、かつその合計の絶対値を計算するように構成される。
【0158】
シリンダ1と2との間の主軸受けでは、SM12は:
SM12 = |SF1 - SF1ref + SA2 - SA2ref|
である。
【0159】
2つのセンサの和を比較することによって、BCDレベルの変化が比較前に2倍になるため、測定の感度がさらに増加し、これは、差がかなり小さくなるため有益である。
【0160】
アラーム、事前警告、および減速の閾値レベルが、組み合わせられたセンサ値であるため、単一のセンサ値について同様ではないことに留意されたい。
【0161】
ある実施形態では、コントローラは、センサ値の急速な変化を検出するように構成される。
【0162】
エンジンの動作中、軸受が摩耗する際、BDCレベルの小さな変化が経時的に予測される。しかしながら、これらの変化は、極めてゆっくりと発生し、エンジン環境(温度、推力等)の変化等の他の変化と区別するのが難しく、コントローラは、レベルの変化の代わりに、BDCレベルに着目するように構成される。
【0163】
しかしながら、BDCレベルの急速な変化は、何か異常が発生しようとしている標示であり得る。このような状況の1つとして、何らかの汚染が油システムに入り、軸受がより急速に摩耗している場合が挙げられる。
【0164】
変化が依然として許容限度内(種々のアラームの閾値限度未満)にあっても、変化の速度によっては、間に合うように停止しなければ重大な損傷をもたらす可能性がある。場合によっては、変化が急速である場合、アラームが発せられた時には手遅れである可能性がある。
【0165】
ある実施形態では、コントローラは、センサ値を、最近のレベルではなく前のレベルと比較することによって、BDCレベルの急速な変化を検出するように構成される。これにより、コントローラは、この変化が十分許容限度内にあっても、直近の期間に有意な変化があるかを決定することが可能になる。
【0166】
ある実施形態では、コントローラは、センサ値を少なくとも1つの前の期間と比較することによって、演算解析を実行することによって、急速な変化が発生しているか否かを決定するように構成される(以下参照)。
【0167】
演算解析の利点の1つとして、補償表が精密に調節されることが挙げられる。
【0168】
ある実施形態では、コントローラは、センサ値を浮動基準レベルと比較することによって、指数関数解析を実行することによって、急速な変化が発生しているか否かを決定するように構成される(さらに先を参照)。
【0169】
指数関数解析の利点の1つとして、多くの値を格納する必要がないため、より高速になり、かつリソースにより優しいことが挙げられる。
【0170】
ある実施形態では、コントローラは、センサ値を、前の短い期間の平均レベルと比較することによって、BDCレベルの急速な変化を検出するように構成される。
【0171】
ある実施形態では、この期間は1分から20分の間隔である。ある実施形態では、この期間は1分から10分の間隔である。ある実施形態では、この期間は5分から10分の間隔である。ある実施形態では、この期間は10分の間隔である。ある実施形態では、この期間は5分である。
【0172】
ある実施形態では、比較される期間は第2の期間による測定に先行する。ある実施形態では、この第2の期間は1分から20分の間隔である。ある実施形態では、この期間は1分から10分の間隔である。ある実施形態では、この期間は5分である。かかる実施形態のあるものでは、コントローラは、現在の測定を、第2の期間だけ現在の時間に先行する第1の期間の平均レベルと比較するように構成される。第1の期間が10分であり、第2の期間が5分である一例では、時間Tにおける測定は、T−5およびT−15における平均と比較される。
【0173】
誤った読み取り値および他の少しの変動に対応するために、コントローラは、ある実施形態では、直近の読み取り値の平均を、前の期間のセンサ信号の平均と比較するように構成される。
【0174】
ある実施形態では、上記集合は、多数の直近の受信したセンサ値を含み、上記数は、5から10の範囲である。ある実施形態では、上記集合は、受信したセンサ値のうちの直近の5つを含む。ある実施形態では、上記集合は、受信したセンサ値のうちの直近の10個を含む。
【0175】
誤った読み取り値および他の少しの変動に対応するために、コントローラは、ある実施形態では、直近の5つの読み取り値の平均を、前の期間の平均と比較するように構成される。
【0176】
コントローラは、前の期間の平均レベルと現在の(平均)レベルとの差から変化率を決定するように構成される。
【0177】
ある実施形態では、コントローラは、差が閾値レベルを超えたかどうかを判断するように構成され、超えた場合、コントローラは、オペレータに通知を発行するように構成される。ある実施形態では、閾値レベルは、0.2mmである。
【0178】
ある実施形態では、コントローラは、差が閾値レベルを超えたかどうかを判断するように構成され、超えた場合、コントローラは、ログに通知を発行するように構成される。
【0179】
ある実施形態では、コントローラは、差が閾値レベルを超えたかどうかを判断するように構成され、超えた場合、コントローラは、アラームを発するように構成される。
【0180】
ある実施形態では、コントローラは、差が閾値レベルを超えたかどうかを判断するように構成され、超えた場合、コントローラは、減速を要求するように構成される。
【0181】
したがって、このような状況で素早く情報を提示することができ、これにより、深刻なエンジン故障が防止されうるだろう。
【0182】
指数関数解析により急速な変化を検出する。
【0183】
ある実施形態では、コントローラは、センサ値の指数関数解析を実行し、アラームを発行すべきか否かを決定するように構成される。
【0184】
ある実施形態では、コントローラは、基準レベルを決定し、また指数関数的平均の計算によって現在の状態を決定するように構成される。
【0185】
ある実施形態では、コントローラは、更新因子を有するローパスフィルタを使用し、古い基準レベルSrefleveloldを、補償された値であるScompを用いて新しい基準レベルSreflevelに更新するように構成される。
【0186】
ある実施形態では、これは:
Sreflevelnew = Sreflevelold*(1-x) + Scomp*x
と表現される。式中、xは更新因子である。
【0187】
基準レベルは、現在の通常レベルの表現であるため、比較的ゆっくりと応答するべきである。ゆえに、更新因子は小さくなるように選択されるべきである。ある実施形態では、更新因子xが0.0001になるように選択される。
【0188】
ある実施形態では、コントローラは、更新因子を有するローパスフィルタを使用し、古い現在状態レベルSpresoldを、補償された値Scompを用いて新しい現在状態レベルSpresに更新するように構成される。
【0189】
ある実施形態では、これは:
Spresnew = Spresold*(1-y) + Scomp*y
と表現される。式中、yは更新因子である。
【0190】
現在の状態レベルは、BDCレベルの現在の状態の表現であるため、急速な変化に反応するように比較的速く反応するべきである。ゆえに、更新因子は、大きくなるように選択されるべきである。ある実施形態では、更新因子yが0.2になるように選択される。
【0191】
ある実施形態では、コントローラは、基準値Srefvalueを計算するようにも構成される。ある実施形態では、基準値は、基準レベルと現在の状態との差である:
Srefvalue = Spres - Sreflevel
【0192】
ある実施形態では、コントローラは、アラームを発するべきか否かを決定するために、基準値を分析するように構成される。
【0193】
図9は、本明細書の実施形態に従う、指数関数アルゴリズムを使用して軸受におけるBDCレベルの急速な変化を検出するための方法を示す。
【0194】
ステップ910および920において、BDCレベルを表わす信号が受信され、エンジン動作条件補償表に従って補償される。
【0195】
ステップ930において、上述の基準レベル、現在の状態、および基準値の計算が実行される。
【0196】
ある実施形態では、コントローラは、急速な変化が発生しているかを決定するために、単一のセンサの基準値を分析するように構成される。急速な変化は、基準値が閾値を超えた場合に発生していると決定される。図9では、これらの計算は、ステップ960において実行される。
【0197】
単一のセンサの読み取り値から摩耗を決定することによって、軸受の不均一な(軸方向の)摩耗の検出が可能になる。
【0198】
ある実施形態では、単一のセンサの閾値レベルは120である。
【0199】
ある実施形態では、単一のセンサの閾値レベルは120より上である。
【0200】
ある実施形態では、単一のセンサの閾値レベルは110より上である。
【0201】
ある実施形態では、コントローラは、急速な変化が発生しているかを決定するために、単一のシリンダにおける複数のセンサの基準値の和を分析するように構成される。急速な変化は、その和が閾値を超えた場合に発生していると決定される。急速な変化は、シリンダのクランクピンまたはクロスヘッド軸受に発生し得る。図9では、これらの計算は、(代替)ステップ940において実行され、アラーム限界を超えたか否かの決定は、ステップ960において実行される。
【0202】
2つのセンサの読み取り値から摩耗を決定することによって、軸受の摩耗の高速検出が可能になり、これは、2つの読み取り値が同時に増大し、ひいてはその和が2倍速く増大するからである。2つの個別のセンサ読み取り値よりもそれらの和の値が大きくなることに対応するために、和のための閾値レベルは、ある実施形態では、単一のセンサの閾値レベルよりも大きい。
【0203】
ある実施形態では、1つのシリンダにおける2つのセンサの閾値レベルは170である。
【0204】
ある実施形態では、1つのシリンダにおける2つのセンサの閾値レベルは170より上である。
【0205】
ある実施形態では、1つのシリンダにおける2つのセンサの閾値レベルは、160より上である。
【0206】
ある実施形態では、コントローラは、急速な変化が発生しているかを決定するために、1つのシリンダからの1つのセンサの基準値と、隣接するシリンダにおける1つのセンサの基準値との和を分析するように構成される。急速な変化は、その和が閾値を超えた場合に発生していると決定される。急速な変化は、2つのシリンダの間の主軸受に発生し得る。図9では、これらの計算は、(代替)ステップ950において実行され、アラーム限界を超えたか否かの決定は、ステップ960において実行される。
【0207】
異なる2つのシリンダからの2つのセンサの読み取り値から摩耗を決定することによって、主軸受の摩耗のさらに高速な検出が可能になる。これは、これら2つの読み取り値が、同一のシリンダに関するセンサの和よりも速く増大すると考えられるからである。したがって、これにより、さらなる安全性が提供される。上記2つの読み取り値の和が同一のシリンダについてのセンサの和よりも速く増大することに対応するために、ある実施形態では、前者の閾値レベルは、後者の閾値レベルよりも大きい。
【0208】
ある実施形態では、隣接するシリンダにおけるセンサの閾値レベルは220である。
【0209】
ある実施形態では、隣接するシリンダにおけるセンサの閾値レベルは220より上である。
【0210】
ある実施形態では、隣接するシリンダにおけるセンサの閾値レベルは210より上である。
【0211】
全てのこれらのステップ(940および950)を実行する必要が必ずしもないことは留意されたい。
【0212】
ある実施形態では、コントローラは、急速な変化が発生したと決定する場合に(ステップ965)、アラーム要求を発行する(図示せず)ように構成される。
【0213】
ある実施形態では、コントローラは、急速な変化が発生したと決定する場合に(ステップ965)、減速要求を発行する(ステップ970)ように構成される。変化が急速であるため、損傷の発生を防止するために測定を迅速に行い、減速が、急速な変化に対して最も速い改善を提供することが重要である。
【0214】
ある実施形態では、コントローラはまた、急速な変化に関する情報をログファイルに格納させるようにも構成される(ステップ980)。
【0215】
これにより、コントローラは、センサ毎に複数の値を格納することを必要とせずに、急速な変化に対して迅速に反応することが可能になり、軸受に対するさらなる摩耗または損傷を防止することが可能になる。
【0216】
エンジン速度変化に起因するBDCレベルの変動を説明するために、動的アラーム限界または閾値レベルを、急速な変化を監視する場合に使用してもよい。
【0217】
ある実施形態では、動的アラーム限界または閾値レベルは、エンジン速度毎分回転数(Revolutions Per Minute; RPM)の変化に基づいて計算され、動的閾値レベルは、エンジン速度が増加すると増加する。
【0218】
ある実施形態では、コントローラは、RPMNで示される現在の速度または新しい速度を示す入力を受信するように構成される。
【0219】
コントローラは、新しい速度に基づいて、基準速度を更新するように構成される。ある実施形態では、コントローラは:
RPMrefnew = RPMrefold*(1-z) + RPMN*z
のように、指数関数的移動平均によって、基準速度を更新するように構成される。
【0220】
また、コントローラは、現在の速度RPMNと基準速度との差の絶対値を計算することによって、ΔRPMで示されるRPMの変化を計算するようにも構成される:
ΔRPM = |RPMN - RPMref|
【0221】
ある実施形態では、ΔRPMは、3より大きい全ての値について3になるように設定される。これにより、高値になり過ぎることなくアラーム限界が増加することが確実になる。
【0222】
alarmbasicで示される基礎閾値レベルまたは基礎アラーム限界は、どのセンサの組み合わせが監視されているか(単一のセンサ、同一のセンサ、または隣接するシリンダ)に応じて、上記に列挙した閾値のうちの1つになるように決定される。
【0223】
ある実施形態では、コントローラは:
Alarm 1 = alarmbasic(1+ΔRPM*k)
のように、kで示される増幅定数に基づいて、第1の動的閾値レベルの候補(alarm 1で示される)を計算するようにさらに構成される。
【0224】
ある実施形態では、コントローラは、第1の候補閾値レベルを、動的閾値レベルとして使用するように決定される。
【0225】
ある実施形態では、コントローラは:
alarm 2 = alarmbasic(1+ΔRPM*k*Exp(-H/β)
のように、Hで示される閾値レベルが増加した直近の時間から受信したエンジン速度読み取り値の数、kで示される増幅定数、およびβで示される遅延定数に基づいて、第2の動的閾値レベルの候補(alarm 2で示される)を計算するようにさらに構成される。
【0226】
ある実施形態では、コントローラは、第2の候補閾値レベルを、動的閾値レベルとして使用するように決定される。
【0227】
増幅定数が高くなればなるほど、アラームレベルの増加が速くなる。増幅定数の例として、0.1,0.15,0.2,0.25,および0.3が挙げられる。ある実施形態では、増幅定数は、0.05から0.4の範囲である。
【0228】
遅延定数の例として:190、200、210が挙げられる。ある実施形態では、遅延定数は、150から250の範囲である。
【0229】
ある実施形態では、コントローラは、候補閾値レベルの最高閾値レベルを決定し、かつ、それを動的閾値レベルとして使用するように構成される:
動的閾値レベル = max(alarm1, alarm 2)
【0230】
したがって、コントローラは、変動に対応することができ、依然として、軸受の摩耗の急速な変化を検出することができる。
【0231】
上記で論じたような急速な変化の指数関数解析が、4サイクルエンジンにも適切であることに留意されたい。ある実施形態では、エンジンは、2サイクルエンジンである。ある実施形態では、エンジンは、4サイクルエンジンである。
【0232】
エンジンの監視における全ての変動可能要因を考慮に入れるために、監視装置は、まず、最初に、学習フェーズ中に較正される。
【0233】
エンジン速度補償のルックアップテーブルは、コントローラが実行する「学習過程」中に得られなければならない。
【0234】
ある実施形態では、学習フェーズは、500時間の期間である。
【0235】
ある実施形態では、コントローラは、センサ170毎に速度補償表を確立するように構成される。
【0236】
新しく建造されたエンジン、陸上試験の実行、または海上試験の実行に適合する摩耗監視システムの場合、システムが、可能な限り早期から軸受の保護を提供することができることが重要である。ゆえに、大まかな較正曲線が、1つの固定されたエンジン速度からの10分の平均値が達成されるとすぐに確立される。次いで、この曲線は、学習過程中に開始するために3つの固定されたエンジン速度を使用するように再調整される。
【0237】
図5は、大まかな較正値を提供するための一般フローチャートを示す。コントローラは、まず、表の値を、BDCレベル対エンジン速度の曲線と近似化することによって、エンジン速度補償の大まかな推定を作成するように構成される。
【0238】
この大まかな推定によって、学習フェーズ中にいくつかの制御が可能になる。
【0239】
ある実施形態では、コントローラは、あるエンジン速度(またはrpm)において、各センサから値を受信する(510)。これらの値は平均される(520)。ステップ530では、平均エンジン速度BDCレベル座標点または制御点と、当該速度領域においてエンジンの大きさに依存して予測される変化とから、予備曲線が作成される(530)。ある実施形態では、予測される変化は事前に計算され、表1のようなの表に格納される。
[表1:エンジンの種類に関して予測される変化]

【0240】
図6の曲線600は、エンジン速度に対する平均BDCレベルの予備曲線または大まかな推定を表す。曲線600は制御点610を有する。
【0241】
曲線600は、大まかな推定であり、コントローラは、大まかな較正曲線の作成中に大まかな推定を参照としてのみ使用するように構成される。
【0242】
ある実施形態では、第2の速度が選択され、コントローラは、第2のエンジン速度において各センサから値を受信する(540)。これらの値は平均される(550)。曲線は、第2の平均エンジン速度BDCレベル座標点または制御点を考慮するために、更新される(560)。
【0243】
ある実施形態では、コントローラは、第3の速度についてステップ540から560を繰り返すように構成される。図5では、これは、点線で示される。
【0244】
ステップ570において、コントローラは、制御点(710、720、730)の間を補間し、さらに幅広いエンジン速度を含めるように外挿することによって、大まかな較正曲線(700)を完成させる。
【0245】
ある実施形態では、エンジン速度範囲は0%-120%である。ある実施形態では、エンジン速度範囲は20%-110%である。
【0246】
図7は、3つのエンジン速度における平均BDCレベルに関する3つの制御点710、720、730を有する、例示的な大まかな較正曲線700を示す。
【0247】
ある実施形態では、エンジンは、各速度でそれぞれ10分間運転する。他の運転時間も利用可能であることに留意されたい。
【0248】
ある実施形態では、コントローラは、表2に従って、3つの速度を選択するように構成される。
[表2. 速度および対応する速度間隔]

【0249】
ある実施形態では、コントローラは、曲線700において各制御点が互いに適切に離れていることを確かにするべく、公称速度の少なくとも20%の間隔で、選択された3つの速度に間隔を空けるように構成される。
【0250】
ある実施形態では、コントローラは、学習フェーズ中の摩耗のいくつかの参照を可能にするために、残りの学習フェーズ中に大まかな較正曲線700を使用するように構成される。
【0251】
ある実施形態では、コントローラは、種々の速度におけるエンジンの自由動作中にセンサ値を受信し、かつBDCレベル対エンジン速度の表を更新するようにさらに構成される。
【0252】
図8は、エンジン速度-BDCの表を完成させるための本願のある実施形態の方法を示す。
【0253】
ある実施形態では、図8のステップは、全てのセンサについて並行して実行される。
【0254】
第1のステップ810において、コントローラは、値または信号SNを受信する。次いでコントローラは、現在の速度について補償が有効であるか否かを決定する(815)。
【0255】
特定のエンジン速度について事前に決定された数のサンプルが受信されているため、コントローラは、その速度でそのセンサについて受信したサンプルを平均することによって、そのエンジン速度の基準値を計算し、かつ第1の有効補償値を生成するように構成され、エンジン速度補償表は、更新される。
【0256】
ある実施形態では、コントローラは、エンジン速度毎に1000個のサンプルを受信およびサンプリングするように構成される。
【0257】
コントローラは、補償機能が有効であると判断すると、受信した信号から基準値を減算することによって、補償値を計算するように構成される(ステップ820):
Scomp = SN - Sref
【0258】
補償が有効でないと判断する場合は、コントローラは、受信した信号から大まかな基準値を減算することによって、補償値を計算するように構成される(ステップ825):
Scomp = SN - Sref, rough
【0259】
ある実施形態では、コントローラは、受信した信号における雑音を減少させるようにフィルタを適用するようにさらに構成される(830)。
【0260】
ある実施形態では、コントローラは、次にセンサ偏差d(Ssensor)を計算するように構成される:
d(Ssensor) = センサ値または信号 -他のセンサの平均
【0261】
ある実施形態では、コントローラはまた、シリンダ偏差d(シリンダ)を計算するようにも構成される:
d(シリンダ) = (シリンダ前部のセンサ値または信号+ シリンダ後部のセンサ値または信号)/2 - 他のセンサの平均
【0262】
図8では、両方の偏差がステップ840において計算される。
【0263】
ある実施形態では、コントローラは、センサ値のアラーム閾値を超えたかどうかを判断し(850)、超えたと判断した場合、アラームを作動する(860)ように構成される。
【0264】
ある実施形態では、コントローラは、シリンダ偏差のアラーム閾値を超えたかどうかを判断し(850)、超えたと判断した場合、アラームを作動する(860)ように構成される。
【0265】
ある実施形態では、コントローラは、センサ偏差のアラーム閾値を超えたかどうかを判断し(850)、超えたと判断した場合、アラームを作動する(860)ように構成される。
【0266】
図8では、アラーム閾値に関連する全ての3つの決定が、ステップ850において実行される。
【0267】
ある実施形態では、学習フェーズ中のセンサ値のアラーム閾値は、+/-0.8mmである。
【0268】
ある実施形態では、学習フェーズ中のセンサ偏差のアラーム閾値は、+/-0.5mmである。
【0269】
ある実施形態では、学習フェーズ中のシリンダ偏差のアラーム閾値は、+/-0.4mmである。
【0270】
コントローラが、アラームを作動すると決定する場合、コントローラは、イベントをログファイルに格納する870ようにさらに構成される。
【0271】
ある実施形態では、コントローラは、センサ偏差の減速限界を超えたかどうかを判断し880、超えたと判断した場合、減速手順の要求を作動する(890)ように構成される。
【0272】
ある実施形態では、学習フェーズ中のセンサ値の減速閾値は、+/-0.9mmである。ある実施形態では、学習フェーズ中のセンサ偏差の減速閾値は、+/-0.7mmである。
【0273】
ある実施形態では、コントローラは、新しい信号値を受信するためにステップ810に戻るように構成される。
【0274】
ある実施形態では、コントローラは、回転毎に810から840を実行するように構成される。
【0275】
ある実施形態では、コントローラは、回転毎に850から890を実行するように構成される。
【0276】
ある実施形態では、コントローラは、間隔をおいて850から890を実行するように構成される。ある実施形態では、この間隔は、1回転から50回転の範囲である。ある実施形態では、この間隔は、10回転から30回転の範囲である。ある実施形態では、この間隔は、30回転である。これは、点線によって図8において示される。
【0277】
学習フェーズ中に幅広いエンジン範囲が含まれることを確かにするために、コントローラは、利用可能なエンジン速度の範囲において様々なエンジン速度のサンプルを受信するように構成される。
【0278】
ある実施形態では、コントローラは、エンジン速度のサンプルを100個受信するように構成される。
【0279】
ある実施形態では、コントローラは、エンジン速度毎に各センサからサンプルを受信する、すなわち、エンジンの範囲における可能な毎分回転数毎にサンプルを受信するように構成される。
【0280】
ある実施形態では、コントローラは、学習フェーズ中に有効性が確認されなかった速度点毎の基準点を決定するように構成される。ある実施形態では、コントローラは、隣接する速度点の基準値から補間することによって、基準値を決定するように構成される。ある実施形態では、コントローラは、大まかな推定における基準点から外挿することによって基準値を決定するように構成される。
【0281】
ある実施形態では、コントローラは、各速度点において50時間の間隔でセンサ毎の信号値の平均を再計算するように構成される。これにより、システムは、エンジンの構造の変化に適合および反応することが可能になる。
【0282】
ある実施形態では、コントローラは、いずれかのエンジン速度の基準値が、最初に得られた有効補償値と比較して、更新閾値を超えて変化するか否かを決定し、変化する場合、これを示すアラームを作動するように構成される。ある実施形態では、更新閾値は0.2mmである。
【0283】
長い学習フェーズ中にも軸受の摩耗を高い信頼性で監視するために、学習フェーズは、3つのステップに分割される。第1のステップは、第2のステップの参照として使用される極めて大まかな事前推定を作成し、第2のステップにおいて大まかな推定を完全に完成する。完成した大まかな推定は、残りの学習フェーズによって使用される(ステップ3)。
【0284】
これにより、エンジンの起動中であっても軸受の摩耗を監視することが確実になる。これにより、例えば、欠陥設置および異常に起因する摩耗の増加を検出することが可能になり、エンジンの中断時間に対する保護が強化される。
【0285】
直接的な較正であれば、このような起動問題を考慮することができず、したがって、本明細書に開示する学習フェーズは、極めて有利である。
【0286】
エンジンは、その寿命中に、一連の保守作業およびオーバーホールを受ける。例えば、センサを支持するブラケットも主軸受のオーバーホールのために取り外されるかもしれない。すると、ブラケットを再び取り付けた時、センサの位置は以前と異なるであろうことを予測しなければならない。また、損傷した後あるいは機能しなくなった後にセンサを取り換える必要がある可能性もある。また、センサを保持するブラケットが若干曲がった場合に、センサを再調整する必要もあり得る。
【0287】
これらは、センサのうちの1つまたはいくつかの速度補償表または曲線の再調整を必要とする。
【0288】
調整は、個々のセンサのオフセットの調整により行われる。
【0289】
ある実施形態では、コントローラは、既存の速度補償ルックアップテーブルまたは曲線に従って信号値を補償することによって、センサからの信号を調整するように構成される。通常動作中、測定されたBDCレベルと基準値との差は、(少なくとも平均的に)ゼロである。ゆえに、補償値は、補償値の絶対値が(少なくとも平均的に)ゼロを超えるため、センサのオフセットを反映する。
【0290】
ある実施形態では、コントローラは、ある期間におけるオフセットの平均を計算するように構成される。ある実施形態では、この期間は50時間である。
【0291】
ある実施形態では、コントローラは、計算された平均オフセットに従って、影響を受けたセンサの基準値をオフセットするように構成される。
【0292】
しかしながら、センサの故障からセンサの取り換えまでには時間差があり、この時間は場合によってかなり長くなるため、この時間の間、軸受の摩耗を検出できない危険性がある。
【0293】
このような場合に対応するため、コントローラは、隣接するセンサからの信号と、取り換え前および取り換え後の時間に取られた平均との組み合わせに基づいて再調整を行うように構成される。ある実施形態では、この期間は500時間である。
【0294】
図10は、2つのセンサの速度補償曲線の図を示し、図において:
a1t1 + b1は、センサ故障前500時間中の第1のセンサの曲線であり;
a2t2 + b2は、センサ取り換え後500時間中の第1のセンサの曲線であり;
a3t3 + b3は、第1のセンサが壊れている時間中の隣接するセンサの曲線である。
【0295】
これらの式中、'a'は勾配を示し、't'は時間であり、'b'はt=0の曲線の開始点を示す定数である。
【0296】
ある実施形態では、コントローラは、6時間にわたる補償およびフィルタリングされたセンサ値の平均に基づいて3つの異なる最良適合二乗平均平方根線(best fit Root Mean Square line)を引くことによって、これらの3つの線を生成するように構成される。
【0297】
ある実施形態では、コントローラは、センサを再調整する間、隣接するセンサの速度補償を使用するように構成される。
【0298】
センサの再調整の時間が経過した後、取り換えられたセンサのオフセット(O)を計算することができる。
【0299】
ある実施形態では、コントローラは、取り換えられたセンサのオフセットを計算するように構成され、ある実施形態では、これは:
O = O1 + a3tb + Ta2
によって行われる。式中:
O1は、センサが壊れていた時間中のオフセットであり;
tbは、センサが壊れていた時間であり;
Tは期間である(上記実施形態では、T=500時間)。
【0300】
ある実施形態では、コントローラは、センサの取り換え後の期間または再調整期間中、他のセンサのセンサ偏差および/またはシリンダ偏差を計算する場合に、取り換えられたセンサを除外するように構成される。
【0301】
ある実施形態では、コントローラは、センサの再調整期間中、取り換えられたセンサのセンサ偏差および/またはシリンダ偏差を計算しないように構成される。
【0302】
ある実施形態では、コントローラは、再調整期間中、取り換えられたセンサから生じるセンサ値について、アラームを作動すること、または減速要求を発行することを控えるように構成される。
【0303】
これにより、影響を受けたセンサまたは取り換えられたセンサのみの学習フェーズが可能になり、全てのセンサの学習フェーズの完全な再実行が必要なくなる。これにより、全てのセンサの学習フェーズの完全な再実行よりも再調整フェーズ中の安全な監視を提供することが可能になる。
【0304】
軸受摩耗監視システムにおけるデータの記録は、2つの目的を果たす。第1の目的は、任意の軸受損傷が発生した場合にデータを読み出すことを可能にすることである。ある実施形態では、これは、「ブラックボックス」機能として実装される。
【0305】
第2の目的は、軸受の検査に関する。従来では、軸受は、時間ベースのスケジュールで定期検査のために開けられている。例えば、全ての軸受を、例えば、4年または5年間隔で開けなければならない。不必要に軸受を開くことを防ぐために、時間ベースの検査から状態ベースの検査に移行することが望ましい。この目的のために、記録されたデータを使用して、検査間隔中に任意の摩耗が発生した場合に示す傾向曲線を生成することができる。このような曲線を、船級検査員に提示してもよい。
【0306】
ある実施形態では、コントローラは、直近の24時間から利用可能なタイムスタンプを含んで、フィルタリングされた値をセンサ毎に記録できるように構成される。ある実施形態では、このようなフィルタリングされた値は、短期記憶装置に記録される。ある実施形態では、30エンジン回転毎のデータセットが必要とされる。アラーム限界を超えたと判断した場合、コントローラは、短期記憶装置のコピーを「凍結」コピーとして別々に記録するように構成される。ある実施形態では、コントローラは、アラーム時間後5分間のデータをコピーに含むように構成される。
【0307】
ある実施形態では、コントローラは、最大、最小、および平均のフィルタリングされた値をセンサ毎に記録するあように構成される。ある実施形態では、このような最大、最小、および平均の値は、長期記憶装置に記録される。ある実施形態では、最大、最小、および平均のフィルタリングされた値は、6運転時間毎に記録される。ある実施形態では、最大、最小、および平均のフィルタリングされた値は、タイムスタンプとともに記録される。
【0308】
ある実施形態では、イベントログも記録される。ある実施形態では、イベントログは、以下の情報を含む:
発出された任意のアラーム、減速、もしくは事前警告または学習過程中の変化;
任意のセンサの可能性のある取り換えおよび/またはオフセット調整;
大まかな較正値から精密較正へのセンサ参照の変化;
事前警告の基準レベルの任意のリセット。
【0309】
ある実施形態では、全ての情報にタイムスタンプが付加され、全ての記録部およびイベントログは、不揮発性メモリに維持される。
【0310】
ある実施形態では、装置は、記録されたデータおよびイベントログを、PC等の外部機器にダウンロードするように構成される。このデータは、船級協会からの検査員に提示する目的のものであることができる。
【0311】
ある実施形態では、このデータは以下を含む:
【0312】
エンジン情報部分。これは、船およびエンジンの情報を含む。ある実施形態では、情報は以下の通りである。
船名 = XXXXXXX
IMO番号 = XXXXXXX
船級登録番号 = XXXXXXX
構成部品 = XXXXXXX
エンジンライセンサー = XXXXXXX
エンジンメーカー = XXXXXXX
エンジンの種類 = XXXXXXX
エンジンシリアル番号 = XXXXXXXX
CMシステムの種類 = 軸受摩耗監視システム
CMシステムメーカー = XXXXXXXX
CMシステムハードウェア = XXXXXX
CMシステムソフトウェア = XXXXXXX
傾向データの期間開始 = YYYY-MM-DD
傾向データの期間終了 = YYYY-MM-DD
エンジン動作開始時間 = 99999
エンジン動作終了時間 = 99999
【0313】
イベントログに従うシステム状態およびセンサ状態の全ての変更に関するログ部分。フォーマットは、[日付][時間[イベント]である。
【0314】
フィルタリングされた値および傾向部分。「長期記憶装置」から得られる。6エンジン動作時間毎にセンサ毎に以下のデータが提示される:タイムスタンプ;エンジン動作時間;6時間の平均フィルタリング値。フォーマットは、ある実施形態では、[日付および時間:YYYY-MM-DD hh:mm:ss];[エンジン動作時間:h]:[距離:mm]である。
【0315】
状態部分。このファイルの目的は、各シリンダについて、検査のためのシリンダに関連する軸受を開放することが、摩耗の検出または他の状況を鑑みて正当化されるかどうかを簡単に概観することである。これらの状況は、センサの交換中または基準値の喪失中に「有意限界」を超える摩耗を検出することであってもよい。ある実施形態では、状態は、4つのレベル提示として示される。4つのレベルは以下である:
・ 事前警告限界を超える摩耗が検出されていないことを示す、"通常"(N);
・ 事前警告限界を超える摩耗が検出されたことを示す、"事前警告"(W);
・ シリンダに接続されたセンサからアラームが発せられたことを示す、"アラーム"(A);
・ シリンダのセンサが基準値を喪失したか、またはその基準曲線が、交換中にその「隣接するもの」により検出された摩耗に起因して補正されたことを示す、"不明"(U)。損傷したセンサが交換されないままである場合にも同じ標示が提供される。
【0316】
ある実施形態では、装置はまた、長期記憶装置、短期記憶装置、および各センサの基準曲線の完全なデータを提供するように構成される。
【0317】
上記に説明したものの種々の実施形態は、単独で、または種々の組み合わせで使用することができる。本願の教示は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって実装されてもよいが、ハードウェアまたはソフトウェアにおいて実装されることもできる。また、本願の教示は、コンピュータ可読媒体に格納されるコンピュータ可読コードとして具体化されることもできる。
【0318】
本願の教示は、多数の利点を有する。様々な実施形態または実装は、以下の利点のうちの1つ以上を提供し得る。これが包括的なリストではなく、本明細書に説明していない他の利点も存在してもよいことに留意されたい。例えば、本願の教示の利点の1つとして、本明細書に従う装置が、いくつかの(外部)要因に対応する信頼性のある監視を提供することが挙げられる。
【0319】
本願の教示の別の例示的利点として、摩耗の監視を、推力により生じた変形に対応して行うことができることが挙げられる。
【0320】
本願の教示の別の例示的利点として、軸受の摩耗の監視を、較正フェーズ中にも行うことができることが挙げられる。
【0321】
本願の教示の別の例示的利点として、センサの取り換えを、より信頼性のある方式で行い、再調整することができることが挙げられる。
【0322】
上の説明において、特に重要であると考えられる本発明の特徴に留意するよう試みたが、本明細書において参照および/または図示されたいかなる特許可能な特徴または特徴の組み合わせに関しても、それに関して特に強調されたか否かに関わらず、出願人は保護を主張することを理解されたい。
【0323】
用語の「備える」は、請求項において使用する際、他の要素またはステップを除外しない。単数形の用語は、請求項において使用する際、複数形を除外しない。ユニットまたは他の手段は、請求項に列挙されるいくつかのユニットまたは手段の機能を果たしてもよい。
【0324】
本発明のいくつかの実施形態は以下の通りである:
【0325】
1.大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
各センサから信号を受信し、動作条件に応じて各信号を補償し、前記センサ信号に影響を及ぼす要因に対応するように偏差を決定し、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行するように構成されたコントローラをさらに備える、
装置。
【0326】
2.前記コントローラは、他のセンサの平均からの各センサの偏差を決定するために、前記受信したセンサ値に基づいて、センサ毎のセンサ偏差を決定するように構成される、実施形態1に記載の装置。
【0327】
3.前記エンジンは少なくとも1つのシリンダを備え、前記コントローラは、他のセンサの平均からの各シリンダのセンサの偏差を決定するために、前記受信したセンサ値に基づいて、シリンダ毎のシリンダ偏差を決定するようにさらに構成される、実施形態1に記載の装置。
【0328】
4.前記コントローラは、閾値を補償されたセンサ値と比較することによって、閾値を超えたかどうかを判断するように構成される、実施形態1に記載の装置。
【0329】
5.前記コントローラは、閾値を偏差と比較することによって、閾値を超えたかどうかを判断するように構成される、実施形態1に記載の装置。
【0330】
6.前記コントローラは、閾値をセンサ偏差と比較することによって、閾値を超えたかどうかを判断するように構成される、実施形態2よび5に記載の装置。
【0331】
7.前記コントローラは、閾値をシリンダ偏差と比較することによって、閾値を超えたかどうかを判断するように構成される、実施形態3および5に記載の装置。
【0332】
8.閾値は、事前警告、アラーム、および減速を含む群から取られた1つに対応する、実施形態1に記載の装置。
【0333】
9.前記動作条件はエンジン速度である、実施形態1に記載の装置。
【0334】
10.前記動作条件はプロペラピッチレベルである、実施形態1に記載の装置。
【0335】
11.前記動作条件は負荷である、実施形態1に記載の装置。
【0336】
12.物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法であって、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための方法であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
各センサから信号を受信することと;エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと;前記センサ信号に影響を及ぼす要因に対応するように偏差を決定することと;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することと、
を含む、方法。
【0337】
13.大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
前記装置は、各センサから信号を受信し;エンジン動作条件に応じて各信号を補償し;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行する;ように構成されたコントローラをさらに備え、
さらに前記コントローラは、前記エンジンの現在の動作に従って前記閾値を動的に変更するようにさらに構成される、
装置。
【0338】
14.前記コントローラは、動作条件が変化することを決定し、それに応じて前記閾値レベルを上昇させるように構成される、実施形態13に記載の装置。
【0339】
15.前記動作条件はエンジン速度である、実施形態13に記載の装置。
【0340】
16.前記動作条件はプロペラピッチレベルである、実施形態13に記載の装置。
【0341】
17.前記動作条件は負荷である、実施形態13に記載の装置。
【0342】
18.前記コントローラは、前記動作条件が変化していないことを決定し、それに応じて前記閾値を低下させるように構成される、実施形態14に記載の装置。
【0343】
19.前記コントローラは、前記動作条件が変化してから待ち時間が経過した後に、前記閾値レベルを低下させるように構成される、実施形態21に記載の装置。
【0344】
20.物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法であって、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための方法であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
各センサから信号を受信することと;エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することとを含み、
前記エンジンの現在の動作に従って、前記閾値を動的に変更することをさらに含む、
方法。
【0345】
21.大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、前記少なくとも2つのセンサは、各シリンダにおいて2つのセンサ、つまり1つの前部センサおよび1つの後部センサが存在するように配置され、
前記装置は、各センサから信号を受信し;エンジン動作条件に応じて各信号を補償し;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行する;ように構成されたコントローラをさらに備え、
さらに前記コントローラは、第1のシリンダの前記前部センサの信号を第2のシリンダの前記後部センサの信号と組み合わせることによって、軸受が摩耗しているか、または危険な状態にあるかを決定;および/または第1のシリンダの前記前部センサの信号を同一のシリンダの前記後部センサの信号と組み合わせることによって、軸受が摩耗しているか、または危険な状態にあるかを決定し;前記2つのセンサ信号の結果を前記閾値レベルと比較するようにさらに構成される、
装置。
【0346】
22.前記コントローラは、組み合わせられた信号値を閾値レベルの2倍と比較するように構成される、実施形態21に記載の装置。
【0347】
23.前記動作条件はエンジン速度である、実施形態21に記載の装置。
【0348】
24.前記動作条件はプロペラピッチレベルである、実施形態21に記載の装置。
【0349】
25.前記動作条件は負荷である、実施形態21に記載の装置。
【0350】
26.物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法であって、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための方法であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
前記方法は、各センサから信号を受信することと;エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することと;を含み、
さらに前記方法は、第1のシリンダの前記前部センサの信号を第2のシリンダの前記後部センサの信号と比較することによって、軸受が摩耗しているか、または危険な状態にあるかを決定すること;および/または、第1のシリンダの前記前部センサの信号を同一のシリンダの前記後部センサの信号と比較することによって、軸受が摩耗しているか、または危険な状態にあるかを決定することと;前記2つのセンサ信号を組み合わせて、前記2つのセンサ信号の結果を前記閾値レベルと比較することとをさらに含む、
方法。
【0351】
27.大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
前記装置は、各センサから信号を受信し;エンジン動作条件に応じて各信号を補償し;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行する;ように構成されたコントローラをさらに備え、
さらに前記コントローラは、前記受信したセンサ信号を、以前の期間におけるセンサ信号の平均レベルと比較することによって、下死点レベルの急速な変化を検出するようにさらに構成される、
装置。
【0352】
28.比較される前記期間は、第2の時間による前記測定されたセンサ値に先行する、実施形態27に記載の装置。
【0353】
29.前記コントローラは、一連の受信したセンサ信号の平均を、前記前の期間の前記平均レベルと比較するように構成される、実施形態27に記載の装置。
【0354】
30.前記コントローラは、前の期間の前記平均レベルと現在のレベルとの差から変化率を決定するように構成される、実施形態27に記載の装置。
【0355】
31.前記動作条件はエンジン速度である、実施形態27に記載の装置。
【0356】
32.前記動作条件はプロペラピッチレベルである、実施形態27に記載の装置。
【0357】
33.前記動作条件は負荷である、実施形態27に記載の装置。
【0358】
34.物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法であって、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための方法であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
各センサから信号を受信することと、エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することと;
前記受信したセンサ信号を、以前の期間におけるセンサ信号の平均レベルと比較することによって、BDCレベルの急速な変化を検出することと;
を更に含む、方法。
【0359】
35.大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
前記装置は、各センサから信号を受信し;エンジン動作条件に応じて各信号を補償し;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行する;ように構成されたコントローラをさらに備え、
さらに前記コントローラは、センサの基準レベルを更新し、センサの現在のレベルを更新し、基準値を決定し、かつ前記基準値が急速な変化の閾値レベルを超えたかどうかを判断することによって、下死点レベルの急速な変化を検出するようにさらに構成される、
装置。
【0360】
36.前記コントローラは、指数関数的移動平均に基づいて、前記基準レベルを更新するように構成される、実施形態35に記載の装置。
【0361】
37.前記指数関数的移動平均の更新因子が遅い更新を示す、実施形態36に記載の装置。
【0362】
38.前記コントローラは、指数関数的移動平均に基づいて、前記現在のレベルを更新するように構成される、実施形態35に記載の装置。
【0363】
39.前記指数関数的移動平均の更新因子が速い更新を示す、実施形態38に記載の装置。
【0364】
40.前記基準値は、センサの前記基準レベルと前記現在のレベルとの差である、実施形態35に記載の装置。
【0365】
41.前記基準値は、1つのシリンダに属する一方のセンサの前記基準レベルと前記現在のレベルとの差と、同一のシリンダに属する他方のセンサの前記基準レベルと前記現在のレベルとの差との和である、実施形態36に記載の装置。
【0366】
42.前記基準値は、1つのシリンダに属する一方のセンサの前記基準レベルと前記現在のレベルとの差と、隣接するシリンダに属する他方のセンサの前記基準レベルと前記現在のレベルとの差との和である、実施形態35に記載の装置。
【0367】
43.前記動作条件はエンジン速度である、実施形態35に記載の装置。
【0368】
44.前記動作条件はプロペラピッチレベルである、実施形態35に記載の装置。
【0369】
45.前記動作条件は負荷である、実施形態35に記載の装置。
【0370】
46.前記急速な変化の閾値レベルは動的である、実施形態35に記載の装置。
【0371】
47.前記コントローラは、エンジン速度の変化に基づいて、前記動的閾値レベルを決定するように構成される、実施形態35に記載の装置。
【0372】
48.前記コントローラは、基準速度と比較したエンジン速度の変化に基づいて、前記動的閾値レベルを決定するようにさらに構成され、前記基準速度は、エンジン速度の指数関数的移動平均である、実施形態47に記載の装置。
【0373】
49.前記コントローラは、エンジン速度の変化および増幅定数に基づいて、前記動的閾値レベルを決定するようにさらに構成される、実施形態48に記載の装置。
【0374】
50.前記コントローラは、急速な変化の閾値レベルおよび増幅定数に関する直近の決定以後のエンジン速度の変化、遅延定数、多数の受信したエンジン速度に基づいて、前記動的閾値レベルを決定するようにさらに構成される、実施形態48に記載の装置。
【0375】
51.前記エンジンは、大型2サイクルディーゼルエンジンである、実施形態35に記載の装置。
【0376】
52.エンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための方法であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、前記装置は、
前記装置は、各センサから信号を受信し;エンジン動作条件に応じて各信号を補償し;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行する;ように構成されたコントローラをさらに備え、さらに前記コントローラは、
センサの基準レベルを更新し、センサの現在のレベルを更新し、基準値を決定し、かつ前記基準値が急速な変化の閾値レベルを超えたかどうかを判断することによって、下死点レベルの急速な変化を検出する、
ようにさらに構成される、方法。
【0377】
53.大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
前記装置は、各センサから信号を受信し、エンジン動作条件に応じて各信号を補償するように構成されるコントローラをさらに備え、
前記コントローラは、動作条件補償ルックアップテーブルに従って前記信号値を補償することによって、センサからの信号を調整することにより、センサの補償を再調整するように構成され、前記補償することは、ある期間における前記センサのオフセットの平均を計算し、前記計算された平均オフセットに従って、影響を受けたセンサの前記基準値をオフセットすることによって行われる、
装置。
【0378】
54.前記コントローラは、隣接するセンサからの信号と、再調整を必要とするイベント前およびイベント後の時間に取られた平均との組み合わせに基づいて前記再調整を行うように構成される、実施形態53に記載の装置。
【0379】
55.前記コントローラは、前記センサを再調整する間、隣接するセンサの動作条件補償表を使用するように構成される、実施形態53に記載の装置。
【0380】
56.前記コントローラは、前記センサを再調整する期間が経過した後、前記センサのオフセット(O)を計算するように構成され、前記コントローラは、
O = O1 + a3tb + Ta2
によって前記センサのオフセットを計算するように構成され、式中、
O1は、前記センサが壊れていた時間中のオフセットであり、
tbは、前記センサが壊れていた時間であり、
a2は、前記再調整時間中の動作条件補償表の値に対応する曲線の勾配であり、
a3は、隣接するセンサの動作条件補償表の値に対応する曲線の勾配であり、
Tは、前記センサを再調整するための時間である、
実施形態53に記載の装置。
【0381】
57.前記コントローラは、あるセンサについて、前記センサの前記再調整時間を必要とする前記イベントの後の期間中、他のセンサのセンサ偏差および/またはシリンダ偏差の計算から除外するように構成される、実施形態54に記載の装置。
【0382】
58.前記動作条件はエンジン速度、プロペラピッチレベル、および負荷のうちの1つである、実施形態53に記載の装置。
【0383】
59.物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法であって、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための方法であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
前記方法は、各センサから信号を受信することと、エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することと、を含み、
前記方法は、ある期間における前記センサのオフセットの平均を計算し、前記計算された平均オフセットに従って、影響を受けたセンサの前記基準値をオフセットすることによって、動作条件補償ルックアップテーブルに従って前記信号値を補償し、前記補償することによってセンサからの信号を調整し、センサの補償を再調整すること、
をさらに含む方法。
【0384】
60.大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
前記装置は、各センサから信号を受信し;エンジン動作条件に応じて各信号を補償し;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行する;ように構成されたコントローラをさらに備え、
前記コントローラは、期間中に何らかの摩耗が発生した場合かどうかを示す傾向曲線を生成するように構成される、
装置。
【0385】
61.前記コントローラは、センサ毎にフィルタリングされた値をタイムスタンプと共に短期記憶装置に格納し、かつ
最大、最小、および平均のフィルタリングされた値をセンサ毎に長期記憶装置に格納する、
ように構成される、実施形態60に記載の装置。
【0386】
62.前記コントローラは、アラーム限界を超えたかどうかを判断し、超える場合に、前記短期記憶装置のコピーを長期記憶装置に格納するように構成される、実施形態60に記載の装置。
【0387】
63.前記コントローラは、前記アラーム時間後5分間のデータを前記コピーに含むように構成される、実施形態62に記載の装置。
【0388】
64.前記コントローラは、最大、最小、および平均のフィルタリングされた値を6運転時間毎に格納するように構成される、実施形態60に記載の装置。
【0389】
65.物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法であって、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための方法であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
各センサから信号を受信することと、エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと、閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することと、を含み、
期間中に何らかの摩耗が発生した場合かどうかを示す傾向曲線を生成すること、
をさらに含む、
方法。
【0390】
66.実施形態1、13、21、27、53、または60に記載の装置を備えるエンジンであって、船舶用大型2サイクルディーゼルエンジンである、エンジン。
【0391】
67.実施形態51または66のうちの1つに記載のエンジンを備える船舶。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための装置であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、
前記装置は、各センサから信号を受信し;エンジン動作条件に応じて各信号を補償し;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行する;ように構成されたコントローラをさらに備え、さらに前記コントローラは、
前記エンジンの動作中に、第2の数のエンジン動作条件点に関連して第1の数のセンサ値をサンプリングすることによって、前記エンジンの動作中のエンジン動作条件補償表を学習フェーズ中に生成し、
前記第1の数のサンプルがあるエンジン動作条件について得られている場合、その速度点について前記得られたサンプル値を平均することによって基準値を決定する、
ようにさらに構成される、
装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
第1のエンジン動作条件についてある期間に亘って少なくとも1つのセンサから信号値を受信し、
第1の基準値を生成するように前記信号値を平均し、
他のエンジン動作条件につき、事前に決定された推定変化因子を使用して、前記第1の基準値から外挿する、
ことによって、エンジン動作条件補償の大まかな推定較正値を決定するように構成され、
さらに前記コントローラは、前記学習フェーズ中に、前記大まかな較正値に従って、さらに受信した信号値を補償するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
1つの第2のエンジン動作条件についてある期間に亘って少なくとも1つのセンサから信号値を受信し、
第2の基準値を生成するべく前記信号値を平均し、
第1の速度と第2の速度との間の速度において、第1の基準値と第2の基準値との間を補間し、
前記第1および第2のエンジン動作条件外にあるエンジン動作条件につき、前記事前に決定された推定変化因子を使用して、前記第1および第2の基準値から外挿する、
ことによって、前記大まかな推定較正値を更新するようにさらに構成され、
前記コントローラは、前記学習フェーズ中に、前記大まかな較正値に従って、さらに受信した信号値を補償するように構成される、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記動作条件はエンジン速度であり、前記エンジン動作条件点は速度点である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記動作条件はプロペラピッチレベルである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記動作条件は負荷である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラは3つのエンジン速度についての信号を受信するように構成され、前記3つのエンジン速度は、
第1のエンジン速度は、公称エンジン速度の20%から50%の範囲からとられ、
第2のエンジン速度は、公称エンジン速度の50%から80%の範囲からとられ、
第3のエンジン速度は、公称エンジン速度の80%から100%の範囲からとられる、
ものである、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記学習フェーズ中に、前記大まかな推定較正値をエンジン動作条件補償表に更新するようにさらに構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記コントローラは、ある時間間隔でエンジン動作条件点毎に前記基準値を再決定するようにさらに構成され、前記エンジン動作条件補償表を前記新しい基準値で更新するようにさらに構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記コントローラは、エンジン動作条件点の基準値が、最初に得られた基準値に比べてあるファクタで変化するか否かを決定し、変化する場合、アラームを作動するようにさらに構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記コントローラは、エンジン動作条件補償の値と大まかな推定較正値との間を補間および外挿することによって、前記学習フェーズ後に前記エンジン動作条件補償表を更新するようにさらに構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
3つ以上のセンサを備え、前記コントローラは、他のセンサの平均から各センサの偏差を決定するために、前記受信したセンサ値に基づいて、センサ毎にセンサ偏差を決定するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記エンジンは、船舶用大型2サイクルディーゼルエンジンである、請求項1から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載のエンジンを備える船舶。
【請求項15】
物理媒体に格納された命令を実行するように構成されるコントローラを有する装置に実装される方法であって、前記方法は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるクロスヘッド軸受、クランクピン軸受、および主軸受の摩耗を監視するための方法であって、前記装置は、少なくとも2つのセンサを備え、前記少なくとも2つのセンサは、前記エンジンの固定点に対して、所定のシリンダにおける下死点レベルを測定するように配置および構成され、前記方法は:
各センサから信号を受信することと;エンジン動作条件に応じて各信号を補償することと;閾値を上回ったか否かを決定し、上回った場合に、前記上回った閾値の標示を発行することと;を含み、
前記エンジンの動作中に第2の数のエンジン動作条件点に関連して第1の数のセンサ値をサンプリングすることによって、前記エンジンの動作中のエンジン動作条件補償表を学習フェーズ中に生成することと;
前記第1の数のサンプルがあるエンジン動作条件点について得られた場合、そのエンジン動作条件点について前記得られたサンプル値を平均することによって基準値を決定すること;
をさらに含む、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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