大域的灌流モデルのパラメータの同時推定による血行動態パラメータ推定方法
随意に制限された大域的灌流モデルのパラメータを同時に推測することにより、灌流信号から、組織の基本容積すなわちボクセルの血行動態パラメータを推定する方法に関する。また、そのような方法を実行し、また、適切なフォーマットにしたがって推測パラメータをユーザーに表示することの可能なヒューマンマシンインターフェイスに出力するように適用される灌流イメージ分析システムの処理ユニットに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の血行動態灌流パラメータを推定するシステムおよび方法に関する。本発明は、特に、灌流強調磁気共鳴イメージング(PW−MRI)法またはコンピュータ断層撮影法(CT)に基づく。これらの手法は、脳または心臓のような器官の血行動態に関する貴重な情報を素早く取得することを可能にする。この情報は、発作のような病状の救急処置において診断を確定し、治療上の決定を行おうとする医師にとって特に重大である。
【背景技術】
【0002】
これらの手法を実施するため、核磁気共鳴イメージング装置またはコンピュータ断層撮影装置が使用される。この使用は、身体、特に、脳の一部のデジタル画像の複数の系列を送付する。上記装置は、この目的のため、高周波数の電磁波の組み合わせを該当する身体の一部に照射し、特定の原子によって再放出された信号を測定する。この装置は、このようにして、イメージングされた容積の各点(すなわち、ボクセル)での生物学的組織の化学組成、したがって、性質を決定することを可能にする。
【0003】
画像系列は、専用処理ユニットを用いて解析される。この処理ユニットは、最終的には、適当なヒューマン・マシン・インターフェイスを用いて灌流画像から血行動態パラメータの推定量を医師に送付する。医師は、このようにして、診断を行い、自分が適当であると判断する治療処置を決定することができる。
【0004】
核磁気共鳴灌流またはコンピュータ断層撮影画像は、造影剤(例えば、磁気共鳴イメージングのための塩化ガドリニウム)を静脈注射し、画像の各ボクセルで長時間に亘ってこの造影剤のボーラスを記録することにより取得される。簡潔にするため、ボクセルを識別するためのインデックスx、y、zは省略する。例えば、座標x、y、zのボクセルに対する信号をSx,y,z(t)として表すのではなく、この信号は、単にS(t)として表す。以下に記載される演算および計算は、最終的に、推定することが求められる血行動態パラメータを表現する画像またはマップを取得するため、着目中の各ボクセルに対して一般に実行されることが理解されよう。
【0005】
標準モデルは、ある時間tに亘って上記造影剤の濃度C(t)で測定された信号S(t)の強度を関連付けることを可能にする。
【0006】
例えば、灌流コンピュータ断層撮影法では、各ボクセルの信号は、濃度に正比例し、すなわち、S(t)=α.C(t)であり、ここで、αは、非零定数である。
【0007】
核磁気共鳴灌流イメージングでは、指数関係
【0008】
【数1】
【0009】
が存在し、式中、S0は、造影剤の到達前の信号の平均強度であり、TEは、エコー時間であり、kは、組織における常磁性磁化率と造影剤の濃度との間の関係に依存する定数である。各ボクセルに対する定数kの値は、未知であるので、この値は、着目中のすべてのボクセルに対して任意の値に固定される。このようにして、絶対的な推定量ではなく、相対的な推定量が取得される。上記の相対的な情報は、主に空間内でのこれらの相対的な値の変動に関するので、依然として関連している。
【0010】
濃度C(t)は、その結果、標準的な灌流畳み込みモデルC(t)=BF・Ca(t)ア*R(t)によって表現することが可能であり、式中、Ca(t)は、ボクセル中の組織容積に供給する動脈中の造影剤の濃度(動脈入力関数AIF)であり、BFは、組織容積中での血流量であり、R(t)は、組織容積中での通過時間の剰余関数であり、*は、畳み込み積を表す。
【0011】
実験的な信号S(t)から始めると、既知の方法は、造影剤が到達する前に、例えば、信号の平均を利用することにより、最初にS0を推定することで構成される。このようにして、式
【0012】
【数2】
【0013】
を用いて造影剤の濃度の推定量C(t)が取得される。
【0014】
C(t)および動脈入力関数Ca(t)がわかると、次に、標準的な灌流モデルの下でデジタル逆畳み込みによって、関数BF・R(t)を取得することが可能である。
【0015】
続いて、定義により、R(0)=1であることから、パラメータBFの推定量を取得することが可能である。さらに、
【0016】
【数3】
【0017】
であるので、組織内の平均通過時間の推定量が取得される。また、式BV=BF・MTTを用いて組織内の血液容量(BV)の推定量を取得することも可能である。
【0018】
従来技術によれば、動脈入力関数Ca(t)を与えずに、標準的な灌流モデルC(t)=BF・Ca(t)*R(t)の逆畳み込みの方法を実施する能力のある処理ユニットを設計することが可能でないように思われる。なぜならば、上記モデルは、単一の式の形式で表現され、2個の未知数が存在するからである。*は畳み込み積を表す。
【0019】
したがって、1個以上の動脈入力関数Ca(t)を固定するための手法が想定され、血行動態パラメータを推定するため濃度曲線C(t)の逆畳み込みを可能にする。
【0020】
人間の脳のような器官の血行動態パラメータを推定するため、第1の手法によれば、大域的動脈入力関数が医師によって手動で選ばれる。この選定は、例えば、脳の灌流イメージングの場合に、異常のある半球の対側にあるシルビウス動脈に関係することがある。補助手段、例えば、光学手段を用いて、変形として大域的動脈入力関数を取得することが可能である。
【0021】
この手法は、高い信号対雑音比をもつ信号を取得することを可能にするが、それにもかかわらず多数の欠点の原因になる。第一に、この手法は、人の介在、および/または、付加的な測定を必要とする。これは、救急臨床的状況において非常に不利である。さらに、手順および結果は、再現することが難しい。次に、そして、殊に、大域的動脈入力関数は、着目中の組織に対する局所的動脈入力関数に一致しない。局所的動脈入力関数は、通常は、上流で利用された大域的動脈入力関数より遅れるので、この動脈入力関数は、遅延に関して誤差がある。また、動脈入力関数は、造影剤の伝播が上流より下流で低速であるため、分散に関して誤差がある。しかし、このような現象が血行動態パラメータの推定にかなりの影響を与えることが知られている。特に、この第1の手法によれば、局所的動脈入力関数と静脈出力関数との間の真の平均通過時間MTTの推定は、取得されない。大域的動脈入力関数と静脈出力関数との間の平均通過時間だけが取得される。標準的な灌流モデルに対するこれらの問題を定量化することを試みるため、パラメータTMAX=argmaxR(t)のような新しい記述パラメータが導入される場合があるが、上記パラメータは、標準的な灌流モデルの中に介在しない。他の方法は、血行動態パラメータの推定へのこれらの問題の影響を最低限に抑えるが、大域的問題に新しい未知数を導入する傾向がある。
【0022】
第2の手法によれば、大域的動脈入力関数は、データ分割(クラスタリング)または独立成分分析(ICA)のような信号処理手法を用いて灌流画像から自動的に取得される。この第2の手法は、人の介在を不要にする。しかし、このアプローチは、大域的動脈入力関数に固有の遅延および分散の問題を解決しない。
【0023】
第3のアプローチによれば、局所的動脈入力関数は、信号処理手法および選択規準を用いて灌流画像から自動的に生成される。例えば、血行動態パラメータの推定対象である注目現在ボクセルの直ぐ隣にある「最良」関数が探索される。この第3の手法の目的は、最終的に、かけられるバイアスがより小さく、かつ、より高い精度の推定量を取得することである。遅延および分散の問題は、少なくとも部分的に省かれる。しかし、このようにして取得された局所的動脈入力関数が着目中のボクセルに対する「真の局所的関数」の適切な近似であることは、演繹的にも帰納的にも保証されない。例えば、この「真の」関数は、該当する近傍が非常に小さい場合、該当する近傍に存在しないことがある。上記「真の」関数は、該当する近傍が非常に大きい場合、別の動脈入力関数と混同される可能性もある。その結果、結果が大域的動脈入力関数を用いる場合より良好である可能性がある場合でも、局所的動脈入力関数(結果として、血行動態パラメータ)の重荷となる不確定性が広範囲に残存する。
【0024】
それまでにどのような手法が採用されるにしても、大域的であるか、または、局所的であるかにかかわらず動脈入力関数による濃度曲線の逆畳み込み(結果として、血行動態パラメータの推定)は、例えば、固有値分解、周波数域におけるHunt逆畳み込み、ティホノフ(Tikhonov)正規化などのような非パラメトリック逆畳み込み方法を使用して実行される。
【0025】
一方、動脈入力関数のためのパラメトリック生理学的モデルおよびセミパラメトリック生理学的モデルCa(t,Θa)と、組織内の通過時間の相補累積分布関数のためのパラメトリック生理学的モデルおよびセミパラメトリック生理学的モデルR(t,ΘR)と、を使用する方法が文献に提案されている。周知のこのようなモデルの使用の目的は、逆畳み込み演算を置き換えることではなく、上述されたような非パラメトリック方法によって取得される特定の結果を改善することを試みることである。
【0026】
例えば、局所的動脈入力関数のパラメトリック生理学的モデル、すなわち、「モノ−ガンマ」モデルCa(t,Θa)は、1個の成分および4個のパラメータを有する。
【0027】
【数4】
【0028】
この種のモデルは、以下の目的:
−非パラメトリック逆畳み込み方法の研究および検証のためのシミュレーションデータを合成する目的と、
−パラメータの数値的な逆畳み込みおよび推定を実行する前に、上記曲線へのこれらの平滑モデルの調整量で実験的な動脈入力関数を置き換えることによって、測定ノイズを低減し、かつ、データを平滑化する目的と、
−数値的な逆畳み込みを実行する前に、上記曲線へのこれらのモデルの調整量を人為的にオーバーサンプリングすることによって、動脈入力関数の時間的サンプリングに関係した問題を解決する目的と、
−造影剤の1回目の通過と時間的に重なるとき、着目中のボクセル内での造影剤の再循環の現象に起因した問題を解決する目的と、
のため導入された。
【0029】
同様に、組織内の通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)が提案され、その中で、
−「箱形」パラメトリックモデル:
【0030】
【数5】
【0031】
と、
−「三角形」パラメトリックモデル:
【0032】
【数6】
【0033】
と、
−「単一指数関数」パラメトリックモデル:
【0034】
【数7】
【0035】
と、
−2パラメータ「ガンマ積分」パラメトリックモデル:
【0036】
【数8】
【0037】
と、を挙げることができる。
【0038】
これらのモデルは、以下の目的:
−例えば、現実には直面することがないかもしれない極端な場合を表現する「箱形」モデルおよび「三角形」モデルの場合である非パラメトリック逆畳み込み方法の研究および検証のためのシミュレーションデータを合成する目的と、
−実験データへのこれらのモデルの反復的な調整によって、非パラメトリック方法により取得される相補累積分布関数(特に、標準的な灌流モデルの下で定義されるように、正であり、減少し、そして、時点t=0で1に等しい関数)と比べるとより「生理学的」である組織内での通過時間の相補累積分布関数R(t)を取得する目的と、
−δ(t)がディラックの一般化関数である場合に、
【0039】
【数9】
【0040】
によって与えられ、組織内の通過時間の確率密度関数h(t)(パルス応答)のような相補累積分布関数に依存して他の関数および着目中のパラメータを解析的に取得する目的と、
のため導入された。
【0041】
このようなモデルの使用は、特定のパラメータの推定量を多少改善する。しかし、大域的であるか、または、局所的であるかにかかわらず動脈入力関数を固定することに固有の欠点が存在したままである。
【発明の概要】
【0042】
本発明は、周知の解決策によって引き起こされたすべての欠点に対応することを可能にする。本発明は、迅速、客観的、かつ、再現可能な手順を提供する。本発明による方法は、診断を可能にするステップのすべてを網羅するものではないので、本発明は、診断方法自体には関係しない。特に、本発明は、例えば、核磁気共鳴イメージング装置を用いて実行されるデータの収集を可能にする検査段階に関係しない。本発明は、医師が診断を実行することを可能にさせる人体または動物体との相互作用のステップにも関係しない。
【0043】
しかし、本発明によって提供される利点は、非常に多く、かつ、有意義である。本発明は、医師が診断を完全に行い、かつ、適切な治療上の決定を行うことを支援するので救急臨床的状況において特に高く評価されることが分かる。
【0044】
本発明の実施は、研究者が人間または動物の器官についての物理的な理解を進展させることも可能にする。
【0045】
多数の利点のうち、以下の利点:
−大域的動脈入力関数または局所的動脈入力関数を手動または自動で選択しようと試みる人の介在、および/または、付加的な実験手段を不要とすることと、
−「悪設定」され、そして、数値的に不安定かつ構築される逆畳み込み問題と、大域的または局所的動脈入力関数アプローチに固有の遅延および分散の問題とを省くと共に、より小さいバイアスがかけられ、かつ、より高い精度である着目中の血行動態パラメータの推定量を取得することと、
−例えば、本発明の寄与度を従来技術と比較し、検証するため、組織ボクセル毎の局所的動脈入力関数の推定量および相補累積分布関数の推定量を任意選択的に供給することと、
−個々のパラメータの推定量の信頼区間および上記信頼区間に関する公平な期待度を任意選択的に供給することと、
−実験データに対する大域的灌流モデルの適合度の定量的かつ客観的な測定量を任意選択的に提供し、その結果、最も適当なモデルの比較および選択を可能にすることと、
を挙げることができる。
【0046】
このために、灌流イメージング解析システムの処理ユニットによって実施され、灌流信号S(t)から1個以上の血行動態パラメータを推定するステップを備え、ボクセルと呼ばれる組織の体積要素の1個以上の血行動態灌流パラメータを推定する方法であって、1個以上の血行動態パラメータを推定するステップは、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と上記ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−造影剤の濃度C(t)と、血液流量BFと、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内の通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
を備える大域的灌流モデルのパラメータΘの同時推定により構成されることを特徴とする方法が提供される。
【0047】
本発明の用途の第1の例によれば、このような方法は、
−磁気共鳴灌流イメージング装置によって送付されたデジタル画像から予め取得された灌流信号S(t)と、
−大域的灌流モデルと、
に関係することがあり、
−第1の関係は、S(t)=S0e−k.TE.C(t)によって表現することができ、式中、S0は、ボクセル内の造影剤の到達前の信号の平均強度であり、TEは、エコー時間であり、kは、非零定数であり、
−第2の関係は、C(t)=η・BF・Ca(t,Θa)*R(t,ΘR)によって表現することができ、式中、*は、畳み込み積を表し、ηは、非零定数であり、BFは、当該ボクセル内を循環する血液流量である。
【0048】
本発明の用途の第2の例によれば、このような方法は、
−コンピュータ断層撮影灌流イメージング装置によって送付されたデジタル画像から予め取得された灌流信号S(t)と、
−大域的灌流モデルと、
に関係することがあり、
−第1の関係は、比例式S(t)=α.C(t)でもよく、式中、αは、非零定数であり、
−第2の関係は、C(t)=η・BF・Ca(t,Θa)*R(t,ΘR)によって表現することができ、式中、*は、畳み込み積を表し、ηは、非零定数であり、BFは、該当するボクセル内を循環する血液流量である。
【0049】
第1の実施形態によれば、本発明による方法は、該当する複数のボクセルのための逐次反復によって実施することができる。
【0050】
一例として、処理ユニットによって実施される大域的灌流モデルのパラメータΘの同時推定は、ベイズ法、最尤法、または、非線形最小二乗法を用いて実施されることがある。
【0051】
好ましい実施形態によれば、この方法は、実験灌流データD=[S(t1),...,S(tN)]に対する大域的灌流モデルの適合度を、上記モデルを前提としたこれらのデータの確率
【0052】
【数10】
【0053】
の計算によって、定量化するステップを備えることができる。
【0054】
本発明による方法は、複数の中から大域的灌流モデルを選択する事前ステップを備えることができる、と規定されることもある。
【0055】
このようにして、このような方法は、処理ユニットから知られている各大域的灌流モデルに対し処理ユニットによって反復的に実施できるようにすることができる。
【0056】
上述された好ましい実施形態によれば、この場合に、データを前提として、灌流モデルに応じた推定パラメータのうち、確率が最大である推定パラメータが送付されるように規定されることがある。
【0057】
1個以上の血行動態パラメータの推定は別として、本発明は、
−推定動脈入力関数
【0058】
【数11】
【0059】
−推定された相補累積分布関数
【0060】
【数12】
【0061】
−大域的灌流モデルのパラメータに関連付けられた信頼区間、または、
−大域的灌流モデルのパラメータに関連付けられた期待度
という形式をした補助情報を計算するステップを備えることができる方法を提供する。
【0062】
本発明は、推定血行動態パラメータ、または、推定血行動態パラメータに関連付けられることになるすべての他の補助情報さえも、上記推定パラメータをユーザに返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイスに送付するステップを備えることができる方法の実施形態を提供する。
【0063】
また、本発明は、大域的灌流モデルが動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルのパラメータΘaの間に第3の関係Ψ(Θa)=0を備える変形を提供する。
【0064】
また、本発明は、記憶手段と、外界と通信する手段と、処理手段などを備える処理ユニットに関し、
−通信する手段は、外界から灌流イメージングによって取得された信号S(t)を受信する能力をもち、
−記憶手段は、大域的拡散モデルを備え、上記モデルは、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と上記ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−濃度C(t)と、血液流量BFと、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内での通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
を備え、
−処理手段は、本発明による血行動態灌流パラメータを推定する方法を実施するため適応している。
【0065】
本発明は、処理ユニットの変形に関係し、この処理ユニットの通信する手段は、処理手段が灌流信号S(t)を決定し、本発明による1個以上の血行動態灌流パラメータを推定する方法を実施するため提供されるデジタル灌流画像を外界から受信する能力をもつ。
【0066】
本発明は、推定パラメータをユーザに返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイスに、適切なフォーマットに従って上記推定パラメータを送付することができる本発明による処理手段の通信手段をさらに提供する。
【0067】
本発明は、上述されたような処理ユニットと、本発明により、かつ、上記処理ユニットによって実施される方法によって1個以上の推定パラメータをユーザに返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイスとを備える何らかの灌流イメージング解析システムにさらに関する。
【0068】
他の特徴および利点は、以下の説明を読み、かつ、添付図面を参照することにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は灌流イメージング解析システムの変形実施形態を示す図である。
【図2】図2は灌流イメージング解析システムの変形実施形態を示す図である。
【図3】図3は核磁気共鳴イメージング装置によって取得された灌流画像を示す図である。
【図4】図4は造影剤を注入した状態で、この造影剤が脳の組織内を循環している間の人間の脳のスライスを示す図である。
【図5】図5aおよび図5bは人間の脳のボクセルに関係する典型的な核磁気共鳴灌流信号S(t)を示す図である。
【図6】図6は人間の脳のボクセル内を循環する造影剤の典型的な濃度曲線C(t)を示す図である。
【図7】図7は典型的な動脈入力関数Ca(t)を示す図である。
【図8】図8は本発明による方法を示す図である。
【図9】図9は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図10】図10は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図11】図11は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図12】図12は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図13】図13は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図14】図14は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図15】図15は本発明による推定血流量の標準偏差に関する図である。
【図16】図16は本発明による推定平均通過時間に関する図である。
【図17】図17は脳血流量が信頼範囲に入る確率に関係するマップに関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、灌流画像解析システムを表す。核磁気共鳴断層撮影法またはコンピュータ断層撮影法によるイメージングのための装置1は、コンソール2を用いて制御される。ユーザは、このようにして、装置1を制御するパラメータ11を選択することができる。装置1によって生成された情報10から、人間または動物の身体の一部の複数のデジタル画像の系列12が取得される。好ましい例として、人間の脳の観測から生じるデジタル画像を用いて、従来技術による解決策と、本発明による解決策とを例証する。他の組織も同様に考えることができる。
【0071】
画像系列12は、場合によっては、サーバ3に蓄積されることがあり、患者の医療症例13を構成する。このような症例13は、灌流画像または拡散画像のような様々なタイプの画像を含むことができる。画像系列12は、専用処理ユニット4を用いて解析される。上記処理ユニットは、画像を収集するため外界と通信する手段を備える。また、上記通信する手段は、処理ユニットが最終的には適応したヒューマン・マシン・インターフェイス5を用いて灌流画像12からの血行動態パラメータの推定量を医師6または研究者に送付することを可能にする。解析システムのユーザ6は、その後、診断を承認するか、または、無効にし、自分が適切であると思う治療処置を決定し、研究をより深く探求することなどが可能である。場合によっては、該ユーザは、パラメータ16を用いて処理ユニット4の機能をパラメータ化することが可能である。例えば、該ユーザは、このようにして、表示閾値を定義するか、または、自分が表示したいと思う推定パラメータを選択することがある。
【0072】
図2は、前処理ユニット7が画像系列12からボクセル毎の灌流信号15を導出するため画像系列12を解析する解析システムの変形実施形態を示す。血行動態パラメータ14を推定する役割を担う処理ユニット4は、このようにして、この働きが軽減され、外界と通信する手段によって受信された灌流信号15からの推定方法を使用する。
【0073】
図3は、人間の脳の厚さ5ミリメートルのスライス5の典型的な画像12の一例を示す。この画像は、核磁気共鳴によって取得される。この手法を用いて、スライス毎に、寸法が1.5×1.5×5ミリメートルである128×128ボクセルの行列を取得することが可能である。双一次補間を用いて、画像20のような458×458ピクセルからなるフラット画像を生成することが可能である。
【0074】
図4は、図3に関連して提示された画像に類似する画像20を示す。しかし、この画像は、造影剤の注入後に取得される。この画像は、典型的な脳の灌流画像の一例である。動脈は、このようにして、図3に記載された同じ画像とは異なって、明瞭に現れる。周知の手法によれば、血行動態パラメータを推定するため異常のある半球の対側にある半球内の1個以上の動脈入力関数21を選択することが可能である。
【0075】
図5aは、図2に関連して記載された前処理ユニット7によって送付される信号15のような核磁気共鳴灌流信号S(t)の一例を示す。灌流信号は、このようにして、投影剤の注入後の期間tにおけるボクセルの変化を表現する。一例として、図5bは、50秒の期間に亘るこのような信号を記載する。Y軸は、任意単位である信号の強度を記述する。このような信号を取得するため、図1による処理ユニット4(または、変形では図2による前処理ユニット7)は、例えば、図5aによって記載されるように時点t1、t2、...,ti,...,tnにおけるn個の核磁気共鳴灌流画像I1、I2、...、Ii、...、Inの系列を解析する。所定のボクセル、例えば、ボクセルVに対し、灌流信号S(t)は、造影剤の注入後の期間tにおけるボクセルの変化を表す。
【0076】
図6は、図5bに記載されるような灌流信号から導出された濃度曲線を表す。既に記載されたように、灌流信号と関連した濃度曲線との間には、関係が存在する。よって、核磁気共鳴灌流イメージングでは、指数関係S(t)=S0.e−k.TE.C(t)が存在し、式中、S0は、造影剤の到達前の信号の平均強度であり、TEは、エコー時間であり、kは、組織における常磁性磁化率と造影剤の濃度との間の関係に依存する定数である。各ボクセルに対する定数kの値は、未知であるので、この値は、着目中のすべてのボクセルに対して任意の値に固定される。
【0077】
図6は、このように、時間的に、ボクセル内の造影剤の濃度の変化を表示する。高い振幅ピークは、ボクセル内の造影剤の1回目の通過中に顕著であり、上記造影剤の再循環現象(2回目の通過)に関連した低い振幅ピークが後に続く。
【0078】
図7に関しては、図7は、図4に関連して提示されたボクセル21のような動脈ボクセル内の造影剤の循環を表現する典型的な動脈入力関数Ca(t)を示す。図7は、特に、造影剤の1回目の通過後の再循環現象が非常に弱いことを表す。
【0079】
本発明を実施するため、動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリック生理学的モデルCa(t,Θa)を導入する。このようなモデルは、図1および図2に関して記載された解析システムの処理ユニット4において記憶手段によって記憶されるか、プログラムされる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態によれば、このモデルは、12個のパラメータを含むいわゆる「トリ−ガンマ」(tri−gamma)モデルであり、
【0081】
【数13】
【0082】
によって定義される。
【0083】
さらに、組織内の通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリック生理学的モデルR(t,ΘR)を導入する。
【0084】
動脈入力関数モデルの場合と同様に、このようなモデルは、図1または図2に関連して記載されたような解析システムの処理ユニット4において記憶されるか、プログラムされる。
【0085】
一例として、通過時間のこの相補累積分布関数は、2個のパラメータを含むいわゆる「修正ガンマ積分」モデル:
【0086】
【数14】
【0087】
である。
【0088】
動脈入力関数のためのパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルと相補累積分布関数のためのパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルとだけを導入することにより、本発明は、非常に満足できる結果を取得することを可能にする。しかし、本発明は、取得される推定量の精度が特に改善される変形を提供する。なぜならば、例えば、核磁気共鳴イメージングにおける標準的な灌流モデルは、以下の等価的な式:
【0089】
【数15】
【0090】
で表現されることがあり、式中、λは、非零定数である。
【0091】
このように、
【0092】
【数16】
【0093】
が理論的な灌流モデルを実験データに当てはめる2個の推定量である場合、
【0094】
【数17】
【0095】
は、いずれのλ≠0に対しても、モデルを実験データにちょうど良く当てはめる2個の他の推定量である。
【0096】
換言すると、BFおよびCa(t,Θa)は、標準的な灌流モデルの下で、定数倍の範囲内に限り決定される。但し、ベイズ法は、特に、上記量、特に、BFおよびCa(t,Θa)のある特定の値をより確からしくさせる操作量を先験的に利用できる情報を考慮することを可能にするので、満足できる結果を取得することを可能にする。その結果、乗算定数λの一部の値は、それ自体がより確からしく、量を推定する問題をより良く決定する効果を有している。
【0097】
しかし、この問題を完全に決定させ、そして、BFまたはΘaのようなパラメータの推定の精度を改善するため、本発明は、動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルに付加定数Ψ(Θa)を導入する。この第3の関係は、例えば、長時間に亘って動脈ボクセル内を循環する造影剤の総重量のような着目中のすべての動脈入力関数での物理量の保存を表現することができる。特に有利な点として、この制約は、該当するモデルCa(t,Θa)とは独立である。
【0098】
この制約は、一般的な言葉では、Ψ(Θa)=0のような動脈入力関数のモデルのパラメータΘaの間の関係によって表現されることがある。
【0099】
動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルに関する制約の形をしたこの付加関係は、1回に限り、かつ、すべてのボクセルに対して、定数λを固定することを可能にさせる。この第3の関係は、図1または図2に関連して記載されたように解析システムの処理ユニット4において記憶されるか、プログラムされる。3つの関係の組は、制約付き大域的灌流モデルを構成する。
【0100】
制約付き大域的モデルのパラメータΘ、特に、BFおよびΘaの同時推定の問題は、この場合、完全に巧く決定されかつ良設定される。
【0101】
本発明の第1の実施形態によれば、この制約Ψ(Θa)=0は、
【0102】
【数18】
【0103】
として表現することができ、式中、C0は、着目中のすべてのボクセルに対して同一である非零任意定数である。
【0104】
パラメータΘa=(a,b,c,α0,β0,t0,α1,β1,t1,α2,β2,t2)の動脈入力関数に対する「トリ−ガンマ」モデルの場合、パラメータに関するこの制約は、a+b+c=C0として表現することができる。
【0105】
したがって、この制約は、式:Ψ(Θa)=a+b+c−C0を与える。
【0106】
この制約下では、したがって、3個のパラメータのうちの1個、例えば、c=C0−a−bとすることにより、cを除去し、
【0107】
【数19】
【0108】
といった11個の自由パラメータを含む制約付きモデルCa(t,Θa)に帰着することが可能である。
【0109】
第2の実施形態によれば、制約は、
【0110】
【数20】
【0111】
として表現することができ、式中、Cca(t,Θca)は、造影剤の1回目の通過中に造影剤の濃度をモデル化するモデルCa(t,Θa)の成分であり、C0は、着目中のすべてのボクセルに対して同一である非零任意定数である。
【0112】
「トリ−ガンマ」モデルの場合、この成分は、このモデルの3個の成分のうちの単に1番目の成分:
【0113】
【数21】
【0114】
であるので、制約は、a=C0、すなわち、Ψ(Θa)=a−C0である。
【0115】
したがって、この制約は、再び、
【0116】
【数22】
【0117】
といった11個の自由パラメータを含む制約付きモデルCa(t,Θa)を意味することができる。
【0118】
本発明は、このようにして、磁気共鳴イメージングにおけるパラメータΘ=(Θa,ΘR,BF,S0,ΘB)、または、コンピュータ断層撮影法におけるパラメータΘ=(Θa,ΘR,BF,ΘB)の同時推定の問題を意味することができ、ここで、ΘBは、動脈入力関数を予め供給または推定することを必要とすることなく、灌流信号S(t)に関する測定ノイズを特徴付けるパラメータベクトルである。
【0119】
したがって、本発明は、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と組織ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−上記濃度C(t)と、血流量BFと、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内の通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
−場合によっては、動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルのパラメータΘa間の第3の関係Ψ(Θa)=0と、
を備える、おそらく制約された、制約付きモデルに基づいている。
【0120】
動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルと、通過時間の相補累積分布関数R(t,ΘR)のモデルとは、場合によっては、動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルのパラメータΘa間の上記の第3の関係Ψ(Θa)=0によって制約される大域的灌流モデルのサブモデルであると考えることが可能になる。
【0121】
核磁気共鳴イメージングにおける一例として、このような大域的制約付き灌流モデルMは、
【0122】
【数23】
【0123】
といった形で表現することができ、式中、「x」を〇で囲んだ符号(以下、「*」で表すことがある)は、畳み込み積を表し、ηは、任意固定非零定数であり、BFは、該当するボクセル内を循環する血流量である。
【0124】
同様に、コンピュータ断層撮影イメージングでは、大域的制約付き灌流モデルMは、
【0125】
【数24】
【0126】
といった形で表現することができ、式中、「x」を〇で囲んだ符号(以下、「*」で表すことがある)は、畳み込み積を表し、ηは、任意固定非零定数であり、BFは、該当するボクセル内を循環する血液量であり、αは、非零定数である。
【0127】
図8に関連して、本発明による血行動態パラメータを推定する方法は、灌流信号S(t)からモデルMのパラメータΘを同時推定するステップ51を備える。特に、パラメータの同時推定の問題を解決するため数学的手法および数値的手法を使用することができるように適応した、図1または図2に記載されたような処理ユニット4によってこのような方法が使用される。
【0128】
一例として、このような処理ユニット4は、最尤法、非線形最小二乗法、または、ベイズ法を使用することができる。
【0129】
本発明の好ましい実施形態を例証するため、以下の点:
−処理ユニット4は、ベイズ法を使用すること、
−処理ユニット4において記憶されるか、プログラムされた動脈入力関数モデルは、「トリ−ガンマ」モデルであること、
−処理ユニット4において記憶されるか、プログラムされた相補累積分布関数モデルは、「修正ガンマ積分」モデルであること、
−処理ユニット4において記憶されるか、プログラムされた制約は、Ψ(Θa)=C0−a−b−cであること、
を考慮する。
【0130】
核磁気共鳴灌流イメージング用途に対し、制約付きモデルCa(t,Θa)は、その結果、
【0131】
【数25】
【0132】
として記述される。
【0133】
ti、i=1、Nがサンプリング時点であり、S(ti)、i=1、Nがこれらの時点で測定された灌流信号の強度であるとする。実験データは、したがって、D=[S(t1),...,S(tN)]である。
【0134】
標準偏差σ=ΘBである加法性白色定常ガウス雑音が仮定される場合、灌流データDの尤度関数または直接確率分布は、すべてのパラメータが与えられると、
【0135】
【数26】
【0136】
と記述される。
【0137】
C(t)=η.BF・Ca(t,Θa)*R(t,ΘR)は、時間的打ち切り後に数値的に計算されるか、または、好ましくは、2個の確率分布Γの畳み込み積の近似を使用して解析的に計算される。
【0138】
モデルを前提としたすべてのパラメータの事前結合確率分布p(Θ|M)がこれらのパラメータでの実験前に利用できる情報を表現すると仮定すると、事後結合分布は、以下のベイズの規則を用いて取得される。
【0139】
【数27】
【0140】
この結合分布から、本発明による方法は、他のパラメータすべてを無視して、血流量BF、血液容量BV、または、平均通過時間MTTのような着目中の個々の血行動態パラメータθの周辺事後分布を取得すること(ステップ52)を可能にする。この周辺分布から、二次損失関数の下で、この分布の数学的期待度、または、パラメータの最も確からしい値を利用するパラメータの予測器、例えば、ベイズ予測器(最大事後予測器)を取得することが最終的に可能である。このように、本発明は、例えば、着目中のいずれのボクセルに対しても、
【0141】
【数28】
【0142】
とを推定できることを可能にする。
【0143】
場合によっては、本発明による方法は、推定パラメータに関する信頼区間の形式をした補助情報を取得すること(ステップ52a)と、上記信頼区間を予測すること(ステップ52b)でさえ可能にする。この補助情報は、医師のようなユーザのため特に有用であり、そして、診断を構築するためさらなる支援になることが判明することがある。本発明に先行する技術の手法を使用すると、医師は、着目中の各ボクセルのため利用できる推定量の精度が分からない。
【0144】
例えば、脳血流量θ=CBFのような特有の血行動態パラメータθに対し、本発明は、事後周辺分布
【0145】
【数29】
【0146】
を取得し、そして、二次損失関数
【0147】
【数30】
【0148】
の下でθのベイズ推定器、すなわち、
【0149】
【数31】
【0150】
または、パラメータの最も確からしい値:
【0151】
【数32】
【0152】
を取得することを可能にする。
【0153】
ユニット4は、場合によっては、
−二次損失関数の下でベイズ推定器の分散:
【0154】
【数33】
【0155】
と、
−信頼区間、例えば、±1σでの信頼区間:
【0156】
【数34】
【0157】
と、を推定することもできる。
【0158】
一実施形態によれば、本発明による方法を使用する処理ユニット4は、パラメータが信頼区間の中にある確率または期待度、例えば、
【0159】
【数35】
【0160】
を計算すること(ステップ52b)を可能にする。
【0161】
一変形では、本発明は、
【0162】
【数36】
【0163】
といった該当する組織容積に対する局所的動脈入力関数のパラメータの事後結合周辺分布に対応する補助情報を取得すること(ステップ53)を可能にする方法を提供する。
【0164】
本発明は、このようにして、例えば、二次損失関数
【0165】
【数37】
【0166】
の下で、同時パラメータ:
【0167】
【数38】
【0168】
の「平均」動脈入力関数
【0169】
【数39】
【0170】
または、パラメータの「最も確からしい」動脈入力関数
【0171】
【数40】
【0172】
を取得することを可能にする。
【0173】
同様にして、本発明は、本発明による方法が「平均」または「最も確からしい」相補累積分布関数
【0174】
【数41】
【0175】
を計算するステップ54を備える変形実施形態を提供する。
【0176】
このようにして、
【0177】
【数42】
【0178】
によって造影剤の理論的濃度の推定量の形式をした補助情報を取得することも可能である。
【0179】
一実施形態によれば、本発明は、「平均」または「最も確からしい」これらの動脈入力関数または推定された相補累積分布関数が、最も関連するモデルが選択されることを可能にする目的のため、本発明以前のアプローチによって取得された1つ以上のこれらの関数、または、別個の動脈入力関数または相補累積分布関数モデルと比較できるようにする。
【0180】
なぜならば、真の動脈入力関数が既知であるとき推定動脈入力関数を真の動脈入力関数と比較し、必要に応じてより適切なモデルを導入することにより両者の間の差を最小限に抑えることが有利であるからである。
【0181】
図8に関連して、本発明は、本発明による方法が動脈入力関数のパラメータのための信頼区間を取得する(ステップ53a)、または、さらにこれらの信頼区間の期待度を取得する(ステップ53b)1つ以上の補助ステップを備えることがある可能性をさらに提供する。同じことが、相補累積分布関数のパラメータのための信頼区間を取得すること(ステップ54a)、または、さらにこれらの信頼区間の期待度を取得すること(ステップ54b)に当てはまることがある。
【0182】
動脈入力関数Ca(t,Θa)および相補累積分布関数R(t,ΘR)のための典型的なパラメトリックモードまたはセミパラメトリックモードの次元は、十分に小さいので、マルコフ連鎖モンテカルロ法または変形ベイズ法のような事後結合分布p(Θ|D,M)および周辺事後分布をサンプリングまたは近似する方法に適用することが可能である。
【0183】
その結果、本発明は、着目中のパラメータに対する所要推定量の近似を取得することを可能にする。
【0184】
特有の実施形態によれば、本発明は、図8に関連して記載され、そして、磁気共鳴イメージングにおけるΘ={Θa,ΘR,θ,S0,ΘB}、または、コンピュータ断層撮影法におけるΘ={Θa,ΘR,BF,ΘB}を用いてモデル
【0185】
【数43】
【0186】
を仮定して、これらのデータの確率の計算55によって、実験データDへの制約付き大域的灌流モデルの適合度を定量化することができるようにしかるべく適応した処理ユニット4によって実施される方法を提供する。
【0187】
この量の計算55は、本発明以前の技術の手法では明瞭に決定された大域的信号モデルが利用できないので、考えることができなかった。
【0188】
本発明は、前述されているように、動脈入力関数Ca(t,Θa)に対する様々なサブモデル、および/または、相補累積分布関数R(t,ΘR)に対する様々なサブモデル、および/または、様々な補助制約Ψ(Θa)=0から取得された、おそらく制約付きの数個の大域的灌流モデルを客観的に比較することを可能にするためにこの量を提供する。
【0189】
このように、本発明は、別個の制約付き大域的灌流モデルを使用する逐次反復により処理ユニットによって実施することができる方法を提供する。処理ユニットは、使用された各モデルのための計算55の結果を維持することができる。本発明は、最終的に最良の大域的灌流モデルを選択することを可能にさせる。このモデルは、モデルを仮定すると、灌流信号の確率が着目中のすべてのボクセルに亘る平均で最大になるモデルである。
【0190】
一変形では、本発明は、反復中に、複数の中からサブモデルCa(t,Θa)、サブモデルR(t,ΘR)、または、さらに制約Ψ(Θa)=0を選択するために、ステップ56a、56bおよび56cを備えて、大域的灌流モデルを調整する(ステップ57)ことができる方法を提供する。この選択は、パラメータ16を用いてユーザ6によって手動で、または、方法自体によって自動で実行することができ、反復プロセスおよび逐次テストを通じて、本発明によれば、灌流現象のモデル化および理解を進展し、最終的には、患者、病状、組織のタイプなどに応じて最良モデルを特定し、有効とすることが可能になる。
【0191】
本発明の用途の一例として、図1または図2に記載されたシステムのような適応型灌流イメージング解析システムを用いる本発明の実施の主要なステップ:
−患者症例を開くか、または、処理ユニット4(または、処理ユニット7)によって画像の系列を考慮に入れ、着目中の画像の系列を選択すること、特に、図5aに示されるように灌流信号S(t)がボクセル毎に取得される時間に亘って灌流画像I1からInを選択するステップと、
−ユーザ6が着目中のスライスまたはエリアを特定することを可能にするため、ヒューマン・マシン・インターフェイス5を用いて、画像を事前表示するステップと、
−パラメータが最終的にマップの形式で、各ピクセルの強度または色が計算された値に、例えば、直線的に依存する状況を表現するように、処理ユニット4によって、人間の脳のような組織のための
【0192】
【数44】
【0193】
のような血行動態パラメータ14を同時推定し、上記パラメータ14をヒューマン・マシン・インターフェイス5に送付し、信頼区間、期待度、または、大域的灌流モデルのパラメータに関連付けられた他の相補的情報のような他の推定量の送付をさらに含むことがあるステップと、
−マップの内容をユーザ6に返すため、上記マップを表示するステップと、
−着目に値する領域だけを維持し、および/または、ある特定の異常を除去するため、ユーザ6の脈拍16の下で、閾値化および濾波を行うステップと、
−1個異常の血行動態パラメータ14の分布の異常性によって特徴付けられた、ユーザによる着目中の上記病的エリアの支援付き選択のステップと、
−処理ユニット4によって、異常灌流された組織エリアの容積と、場合によっては、損傷されたエリアと異常灌流されたエリアとの比率のようなある特定の量とを推定し、これに基づいて、医師が自分の診断および治療上の意思決定(例えば、血栓を吸収するための血栓溶解点滴)の最後の仕上げをすることができるステップと、
を挙げることができる。
【0194】
図9から図17は、本発明によって推定された血行動態パラメータ14、または、さらにこれに関連付けられた標準偏差もしくは確率の表示モードをマップの形式で示す。
【0195】
このように、核磁気共鳴イメージングを用いて解析された人間の脳に対し、図9は、脳血液容量CBVの推定量を見ることを可能にさせる。このようなマップは、予想される虚血ゾーン80を明らかにする。この理由は、適応型インターフェイス6を用いて、対側半球と比較して右後大脳動脈の領域において、パラメータCBVの顕著な増加を見つけることができるからである。虚血の後に続く血管拡張は、図9に示されるように、マップを読むことにより明らかにされることがある。
【0196】
図10は、脳虚血の場合の脳血流量の推定量に関係するマップを示す。マップを解析することにより、右後大脳動脈の領域におけるパラメータCBFの僅かな減少が虚血の後に続く対側半球と比べると顕著である可能性がある。
【0197】
図11は、平均通過時間MTTに関係するマップを示す。マップを解析することにより、MTTの明らかな増加は、虚血の後に続く対側半球と比べて右後大脳動脈の領域80において見つけることができる。
【0198】
図12は、本発明による12個のパラメータを含む「トリ−ガンマ」動脈入力関数モデルのパラメータaの推定量に関係するマップを記載する。aの明らかな減少を、対側半球と比較して右後大脳動脈の領域80において見つけることができる。この情報は、再循環中の量と比較して循環中の造影剤の量の相対的な減少を意味することを可能にさせる。この情報は、本発明以前の技術による手法と共に利用することができない。
【0199】
図13は、本発明による12個のパラメータを含む「トリ−ガンマ」動脈入力関数モデルのパラメータβ2の推定量に関係するマップを記載する。マップを解析することにより、β2の明らかな増加は、対側半球と比較して右後大脳動脈の領域80において見つけることができる。この情報は、本発明以前の技術による手法と共に利用することができない。
【0200】
図14は、本発明による12個のパラメータを含む「トリ−ガンマ」動脈入力関数モデルのパラメータt1の推定量に関係するマップを記載する。マップを解析することにより、t1の明らかな増加は、対側半球と比較して右後大脳動脈の領域80において見つけることができる。この情報は、本発明以前の技術による手法と共に利用することができない。
【0201】
図15は、本発明による12個のパラメータを含む「トリ−ガンマ」動脈入力関数から推定された脳血流量の標準偏差σCBFの推定量に関係するマップを記載する。マップを解析することにより、標準偏差は、組織ではなく、動脈を包含するゾーン81において最高であることが分かる。虚血エリアにおける標準偏差は、対側エリアにおける標準偏差より高くなく、図10によって記載されるように、このゾーンにおけるCBFの推定量を補う。この情報は、本発明以前の技術による手法と共に利用することができない。
【0202】
図16は、本発明による2個のパラメータを含む「修正ガンマ積分」相補累積分布関数モデルから推定された平均通過時間の標準偏差σMTTの推定量に関係するマップを記載する。マップを解析することにより、標準偏差は、組織ではなく、動脈を包含するゾーン82において最高であることが分かる。これは、厳密に、脳血流量の標準偏差も同様に最高であるゾーンに類似したゾーンの場合である。虚血エリアにおける標準偏差は、対側エリアにおける標準偏差より高くなく、推定量が図11によって記載されるように、このゾーンにおけるMTTの推定量を補う。この情報は、本発明以前の技術による手法と共に利用することができない。
【0203】
図17は、脳血流量が本発明による12個のパラメータを含む「トリ−ガンマ」動脈入力関数モデルの下で信頼区間
【0204】
【数45】
【0205】
の中にある確率の推定量に関係するマップを記載する。マップを解析することにより、異常な調整量を除いて、確率は、0.68付近に中心が置かれている。この値は、CBFの事後確率分布が正規分布である場合に、1を期待することができる値である。
【0206】
以上提示されたマップを用いて、本発明は、ユーザが先行技術から周知の手法を用いて利用することができなかった有用な情報の全範囲を利用できるようにする。この利用可能化は、ユニット4の外界と通信するユニット4の手段が、例えば、図9から図17によって示されるようにマップの形式で上記推定パラメータをユーザ6に返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイス5に適切なフォーマットに従って推定パラメータ14を送付できるという点で、図1および図2による処理ユニット4の適応によって可能にされる。
【0207】
本発明は、本発明以前の技術によれば必要であるステップを除去することを可能にするという点をさらに注記することができる。種々のステップの中で、
−大域的動脈入力関数または局所的動脈入力関数の手動または自動による選択または決定と、
−BF.R(t)の推定量を取得するための選択された1個以上の動脈入力関数に基づく処理ユニットによるボクセル毎の標準的な灌流モデルC(t)=η・BF・Ca(t)*R(t)の逆畳み込みアルゴリズムの実施と、
の除去を挙げることができる。
【0208】
本発明によれば、処理ユニットは、従来手法による逆畳み込みアルゴリズムに代えて、大域的灌流モデルのパラメータのための同時推定アルゴリズムを実行するため適応しているという点をさらに注記することができる。
【0209】
本発明によれば、送付される情報の項目は、より多岐に亘り、かつ、正確である。研究者または医師が利用できる情報は、したがって、診断の決定および治療上の決定における彼らの自信の増大に関するような性質をもつ。
【0210】
本発明によるシステムの性能を改善するため、本発明は、パラメータの推定が必要とされる画像のボクセルを並列に計算に入れる手段を設けることができる処理ユニット4を提供する。このような処理ユニットは、グラフィカル・マイクロプロセッサ(グラフィカル・プロセッサ・ユニット(GPU))のような手段を備えるか、または、計算クラスタを使用することがある。一変形例では、このような処理ユニットは、並列モンテカルロ法のようなプログラムされた手段を使用することがある。一変形例では、本発明による処理手段は、遠隔コンピューティング手段に依拠することができる。コンピューティング時間は、このようにしてかなり短縮することができる。さらに、本発明による処理ユニットは、1個以上の大域的灌流モデル、または、複数の動脈入力関数サブモデルもしくは通過時間の相補累積分布関数サブモデル、または、上記動脈入力関数サブモデルのパラメータに基づく複数の制約を記憶する手段を備えることができる。一変形では、このような処理ユニットは、おそらく制約付きの、このような大域的灌流モデル、または、サブモデル、もしくは、さらには平均を用いる制約のローディングが外界と通信することを可能にすることがある。処理ユニットは、従来技術から周知である手法による有線または遠隔通信を実施できることがある。
【0211】
本発明は、動的感受性コントラスト磁気共鳴イメージング(DSC−MRI)の分野において説明され、かつ、例証されている。本発明は、この実例的な用途だけに限定されるべきではなく、特に、コンピュータ断層撮影法による灌流イメージングのような他の医療技術にも適用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の血行動態灌流パラメータを推定するシステムおよび方法に関する。本発明は、特に、灌流強調磁気共鳴イメージング(PW−MRI)法またはコンピュータ断層撮影法(CT)に基づく。これらの手法は、脳または心臓のような器官の血行動態に関する貴重な情報を素早く取得することを可能にする。この情報は、発作のような病状の救急処置において診断を確定し、治療上の決定を行おうとする医師にとって特に重大である。
【背景技術】
【0002】
これらの手法を実施するため、核磁気共鳴イメージング装置またはコンピュータ断層撮影装置が使用される。この使用は、身体、特に、脳の一部のデジタル画像の複数の系列を送付する。上記装置は、この目的のため、高周波数の電磁波の組み合わせを該当する身体の一部に照射し、特定の原子によって再放出された信号を測定する。この装置は、このようにして、イメージングされた容積の各点(すなわち、ボクセル)での生物学的組織の化学組成、したがって、性質を決定することを可能にする。
【0003】
画像系列は、専用処理ユニットを用いて解析される。この処理ユニットは、最終的には、適当なヒューマン・マシン・インターフェイスを用いて灌流画像から血行動態パラメータの推定量を医師に送付する。医師は、このようにして、診断を行い、自分が適当であると判断する治療処置を決定することができる。
【0004】
核磁気共鳴灌流またはコンピュータ断層撮影画像は、造影剤(例えば、磁気共鳴イメージングのための塩化ガドリニウム)を静脈注射し、画像の各ボクセルで長時間に亘ってこの造影剤のボーラスを記録することにより取得される。簡潔にするため、ボクセルを識別するためのインデックスx、y、zは省略する。例えば、座標x、y、zのボクセルに対する信号をSx,y,z(t)として表すのではなく、この信号は、単にS(t)として表す。以下に記載される演算および計算は、最終的に、推定することが求められる血行動態パラメータを表現する画像またはマップを取得するため、着目中の各ボクセルに対して一般に実行されることが理解されよう。
【0005】
標準モデルは、ある時間tに亘って上記造影剤の濃度C(t)で測定された信号S(t)の強度を関連付けることを可能にする。
【0006】
例えば、灌流コンピュータ断層撮影法では、各ボクセルの信号は、濃度に正比例し、すなわち、S(t)=α.C(t)であり、ここで、αは、非零定数である。
【0007】
核磁気共鳴灌流イメージングでは、指数関係
【0008】
【数1】
【0009】
が存在し、式中、S0は、造影剤の到達前の信号の平均強度であり、TEは、エコー時間であり、kは、組織における常磁性磁化率と造影剤の濃度との間の関係に依存する定数である。各ボクセルに対する定数kの値は、未知であるので、この値は、着目中のすべてのボクセルに対して任意の値に固定される。このようにして、絶対的な推定量ではなく、相対的な推定量が取得される。上記の相対的な情報は、主に空間内でのこれらの相対的な値の変動に関するので、依然として関連している。
【0010】
濃度C(t)は、その結果、標準的な灌流畳み込みモデルC(t)=BF・Ca(t)ア*R(t)によって表現することが可能であり、式中、Ca(t)は、ボクセル中の組織容積に供給する動脈中の造影剤の濃度(動脈入力関数AIF)であり、BFは、組織容積中での血流量であり、R(t)は、組織容積中での通過時間の剰余関数であり、*は、畳み込み積を表す。
【0011】
実験的な信号S(t)から始めると、既知の方法は、造影剤が到達する前に、例えば、信号の平均を利用することにより、最初にS0を推定することで構成される。このようにして、式
【0012】
【数2】
【0013】
を用いて造影剤の濃度の推定量C(t)が取得される。
【0014】
C(t)および動脈入力関数Ca(t)がわかると、次に、標準的な灌流モデルの下でデジタル逆畳み込みによって、関数BF・R(t)を取得することが可能である。
【0015】
続いて、定義により、R(0)=1であることから、パラメータBFの推定量を取得することが可能である。さらに、
【0016】
【数3】
【0017】
であるので、組織内の平均通過時間の推定量が取得される。また、式BV=BF・MTTを用いて組織内の血液容量(BV)の推定量を取得することも可能である。
【0018】
従来技術によれば、動脈入力関数Ca(t)を与えずに、標準的な灌流モデルC(t)=BF・Ca(t)*R(t)の逆畳み込みの方法を実施する能力のある処理ユニットを設計することが可能でないように思われる。なぜならば、上記モデルは、単一の式の形式で表現され、2個の未知数が存在するからである。*は畳み込み積を表す。
【0019】
したがって、1個以上の動脈入力関数Ca(t)を固定するための手法が想定され、血行動態パラメータを推定するため濃度曲線C(t)の逆畳み込みを可能にする。
【0020】
人間の脳のような器官の血行動態パラメータを推定するため、第1の手法によれば、大域的動脈入力関数が医師によって手動で選ばれる。この選定は、例えば、脳の灌流イメージングの場合に、異常のある半球の対側にあるシルビウス動脈に関係することがある。補助手段、例えば、光学手段を用いて、変形として大域的動脈入力関数を取得することが可能である。
【0021】
この手法は、高い信号対雑音比をもつ信号を取得することを可能にするが、それにもかかわらず多数の欠点の原因になる。第一に、この手法は、人の介在、および/または、付加的な測定を必要とする。これは、救急臨床的状況において非常に不利である。さらに、手順および結果は、再現することが難しい。次に、そして、殊に、大域的動脈入力関数は、着目中の組織に対する局所的動脈入力関数に一致しない。局所的動脈入力関数は、通常は、上流で利用された大域的動脈入力関数より遅れるので、この動脈入力関数は、遅延に関して誤差がある。また、動脈入力関数は、造影剤の伝播が上流より下流で低速であるため、分散に関して誤差がある。しかし、このような現象が血行動態パラメータの推定にかなりの影響を与えることが知られている。特に、この第1の手法によれば、局所的動脈入力関数と静脈出力関数との間の真の平均通過時間MTTの推定は、取得されない。大域的動脈入力関数と静脈出力関数との間の平均通過時間だけが取得される。標準的な灌流モデルに対するこれらの問題を定量化することを試みるため、パラメータTMAX=argmaxR(t)のような新しい記述パラメータが導入される場合があるが、上記パラメータは、標準的な灌流モデルの中に介在しない。他の方法は、血行動態パラメータの推定へのこれらの問題の影響を最低限に抑えるが、大域的問題に新しい未知数を導入する傾向がある。
【0022】
第2の手法によれば、大域的動脈入力関数は、データ分割(クラスタリング)または独立成分分析(ICA)のような信号処理手法を用いて灌流画像から自動的に取得される。この第2の手法は、人の介在を不要にする。しかし、このアプローチは、大域的動脈入力関数に固有の遅延および分散の問題を解決しない。
【0023】
第3のアプローチによれば、局所的動脈入力関数は、信号処理手法および選択規準を用いて灌流画像から自動的に生成される。例えば、血行動態パラメータの推定対象である注目現在ボクセルの直ぐ隣にある「最良」関数が探索される。この第3の手法の目的は、最終的に、かけられるバイアスがより小さく、かつ、より高い精度の推定量を取得することである。遅延および分散の問題は、少なくとも部分的に省かれる。しかし、このようにして取得された局所的動脈入力関数が着目中のボクセルに対する「真の局所的関数」の適切な近似であることは、演繹的にも帰納的にも保証されない。例えば、この「真の」関数は、該当する近傍が非常に小さい場合、該当する近傍に存在しないことがある。上記「真の」関数は、該当する近傍が非常に大きい場合、別の動脈入力関数と混同される可能性もある。その結果、結果が大域的動脈入力関数を用いる場合より良好である可能性がある場合でも、局所的動脈入力関数(結果として、血行動態パラメータ)の重荷となる不確定性が広範囲に残存する。
【0024】
それまでにどのような手法が採用されるにしても、大域的であるか、または、局所的であるかにかかわらず動脈入力関数による濃度曲線の逆畳み込み(結果として、血行動態パラメータの推定)は、例えば、固有値分解、周波数域におけるHunt逆畳み込み、ティホノフ(Tikhonov)正規化などのような非パラメトリック逆畳み込み方法を使用して実行される。
【0025】
一方、動脈入力関数のためのパラメトリック生理学的モデルおよびセミパラメトリック生理学的モデルCa(t,Θa)と、組織内の通過時間の相補累積分布関数のためのパラメトリック生理学的モデルおよびセミパラメトリック生理学的モデルR(t,ΘR)と、を使用する方法が文献に提案されている。周知のこのようなモデルの使用の目的は、逆畳み込み演算を置き換えることではなく、上述されたような非パラメトリック方法によって取得される特定の結果を改善することを試みることである。
【0026】
例えば、局所的動脈入力関数のパラメトリック生理学的モデル、すなわち、「モノ−ガンマ」モデルCa(t,Θa)は、1個の成分および4個のパラメータを有する。
【0027】
【数4】
【0028】
この種のモデルは、以下の目的:
−非パラメトリック逆畳み込み方法の研究および検証のためのシミュレーションデータを合成する目的と、
−パラメータの数値的な逆畳み込みおよび推定を実行する前に、上記曲線へのこれらの平滑モデルの調整量で実験的な動脈入力関数を置き換えることによって、測定ノイズを低減し、かつ、データを平滑化する目的と、
−数値的な逆畳み込みを実行する前に、上記曲線へのこれらのモデルの調整量を人為的にオーバーサンプリングすることによって、動脈入力関数の時間的サンプリングに関係した問題を解決する目的と、
−造影剤の1回目の通過と時間的に重なるとき、着目中のボクセル内での造影剤の再循環の現象に起因した問題を解決する目的と、
のため導入された。
【0029】
同様に、組織内の通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)が提案され、その中で、
−「箱形」パラメトリックモデル:
【0030】
【数5】
【0031】
と、
−「三角形」パラメトリックモデル:
【0032】
【数6】
【0033】
と、
−「単一指数関数」パラメトリックモデル:
【0034】
【数7】
【0035】
と、
−2パラメータ「ガンマ積分」パラメトリックモデル:
【0036】
【数8】
【0037】
と、を挙げることができる。
【0038】
これらのモデルは、以下の目的:
−例えば、現実には直面することがないかもしれない極端な場合を表現する「箱形」モデルおよび「三角形」モデルの場合である非パラメトリック逆畳み込み方法の研究および検証のためのシミュレーションデータを合成する目的と、
−実験データへのこれらのモデルの反復的な調整によって、非パラメトリック方法により取得される相補累積分布関数(特に、標準的な灌流モデルの下で定義されるように、正であり、減少し、そして、時点t=0で1に等しい関数)と比べるとより「生理学的」である組織内での通過時間の相補累積分布関数R(t)を取得する目的と、
−δ(t)がディラックの一般化関数である場合に、
【0039】
【数9】
【0040】
によって与えられ、組織内の通過時間の確率密度関数h(t)(パルス応答)のような相補累積分布関数に依存して他の関数および着目中のパラメータを解析的に取得する目的と、
のため導入された。
【0041】
このようなモデルの使用は、特定のパラメータの推定量を多少改善する。しかし、大域的であるか、または、局所的であるかにかかわらず動脈入力関数を固定することに固有の欠点が存在したままである。
【発明の概要】
【0042】
本発明は、周知の解決策によって引き起こされたすべての欠点に対応することを可能にする。本発明は、迅速、客観的、かつ、再現可能な手順を提供する。本発明による方法は、診断を可能にするステップのすべてを網羅するものではないので、本発明は、診断方法自体には関係しない。特に、本発明は、例えば、核磁気共鳴イメージング装置を用いて実行されるデータの収集を可能にする検査段階に関係しない。本発明は、医師が診断を実行することを可能にさせる人体または動物体との相互作用のステップにも関係しない。
【0043】
しかし、本発明によって提供される利点は、非常に多く、かつ、有意義である。本発明は、医師が診断を完全に行い、かつ、適切な治療上の決定を行うことを支援するので救急臨床的状況において特に高く評価されることが分かる。
【0044】
本発明の実施は、研究者が人間または動物の器官についての物理的な理解を進展させることも可能にする。
【0045】
多数の利点のうち、以下の利点:
−大域的動脈入力関数または局所的動脈入力関数を手動または自動で選択しようと試みる人の介在、および/または、付加的な実験手段を不要とすることと、
−「悪設定」され、そして、数値的に不安定かつ構築される逆畳み込み問題と、大域的または局所的動脈入力関数アプローチに固有の遅延および分散の問題とを省くと共に、より小さいバイアスがかけられ、かつ、より高い精度である着目中の血行動態パラメータの推定量を取得することと、
−例えば、本発明の寄与度を従来技術と比較し、検証するため、組織ボクセル毎の局所的動脈入力関数の推定量および相補累積分布関数の推定量を任意選択的に供給することと、
−個々のパラメータの推定量の信頼区間および上記信頼区間に関する公平な期待度を任意選択的に供給することと、
−実験データに対する大域的灌流モデルの適合度の定量的かつ客観的な測定量を任意選択的に提供し、その結果、最も適当なモデルの比較および選択を可能にすることと、
を挙げることができる。
【0046】
このために、灌流イメージング解析システムの処理ユニットによって実施され、灌流信号S(t)から1個以上の血行動態パラメータを推定するステップを備え、ボクセルと呼ばれる組織の体積要素の1個以上の血行動態灌流パラメータを推定する方法であって、1個以上の血行動態パラメータを推定するステップは、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と上記ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−造影剤の濃度C(t)と、血液流量BFと、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内の通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
を備える大域的灌流モデルのパラメータΘの同時推定により構成されることを特徴とする方法が提供される。
【0047】
本発明の用途の第1の例によれば、このような方法は、
−磁気共鳴灌流イメージング装置によって送付されたデジタル画像から予め取得された灌流信号S(t)と、
−大域的灌流モデルと、
に関係することがあり、
−第1の関係は、S(t)=S0e−k.TE.C(t)によって表現することができ、式中、S0は、ボクセル内の造影剤の到達前の信号の平均強度であり、TEは、エコー時間であり、kは、非零定数であり、
−第2の関係は、C(t)=η・BF・Ca(t,Θa)*R(t,ΘR)によって表現することができ、式中、*は、畳み込み積を表し、ηは、非零定数であり、BFは、当該ボクセル内を循環する血液流量である。
【0048】
本発明の用途の第2の例によれば、このような方法は、
−コンピュータ断層撮影灌流イメージング装置によって送付されたデジタル画像から予め取得された灌流信号S(t)と、
−大域的灌流モデルと、
に関係することがあり、
−第1の関係は、比例式S(t)=α.C(t)でもよく、式中、αは、非零定数であり、
−第2の関係は、C(t)=η・BF・Ca(t,Θa)*R(t,ΘR)によって表現することができ、式中、*は、畳み込み積を表し、ηは、非零定数であり、BFは、該当するボクセル内を循環する血液流量である。
【0049】
第1の実施形態によれば、本発明による方法は、該当する複数のボクセルのための逐次反復によって実施することができる。
【0050】
一例として、処理ユニットによって実施される大域的灌流モデルのパラメータΘの同時推定は、ベイズ法、最尤法、または、非線形最小二乗法を用いて実施されることがある。
【0051】
好ましい実施形態によれば、この方法は、実験灌流データD=[S(t1),...,S(tN)]に対する大域的灌流モデルの適合度を、上記モデルを前提としたこれらのデータの確率
【0052】
【数10】
【0053】
の計算によって、定量化するステップを備えることができる。
【0054】
本発明による方法は、複数の中から大域的灌流モデルを選択する事前ステップを備えることができる、と規定されることもある。
【0055】
このようにして、このような方法は、処理ユニットから知られている各大域的灌流モデルに対し処理ユニットによって反復的に実施できるようにすることができる。
【0056】
上述された好ましい実施形態によれば、この場合に、データを前提として、灌流モデルに応じた推定パラメータのうち、確率が最大である推定パラメータが送付されるように規定されることがある。
【0057】
1個以上の血行動態パラメータの推定は別として、本発明は、
−推定動脈入力関数
【0058】
【数11】
【0059】
−推定された相補累積分布関数
【0060】
【数12】
【0061】
−大域的灌流モデルのパラメータに関連付けられた信頼区間、または、
−大域的灌流モデルのパラメータに関連付けられた期待度
という形式をした補助情報を計算するステップを備えることができる方法を提供する。
【0062】
本発明は、推定血行動態パラメータ、または、推定血行動態パラメータに関連付けられることになるすべての他の補助情報さえも、上記推定パラメータをユーザに返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイスに送付するステップを備えることができる方法の実施形態を提供する。
【0063】
また、本発明は、大域的灌流モデルが動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルのパラメータΘaの間に第3の関係Ψ(Θa)=0を備える変形を提供する。
【0064】
また、本発明は、記憶手段と、外界と通信する手段と、処理手段などを備える処理ユニットに関し、
−通信する手段は、外界から灌流イメージングによって取得された信号S(t)を受信する能力をもち、
−記憶手段は、大域的拡散モデルを備え、上記モデルは、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と上記ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−濃度C(t)と、血液流量BFと、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内での通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
を備え、
−処理手段は、本発明による血行動態灌流パラメータを推定する方法を実施するため適応している。
【0065】
本発明は、処理ユニットの変形に関係し、この処理ユニットの通信する手段は、処理手段が灌流信号S(t)を決定し、本発明による1個以上の血行動態灌流パラメータを推定する方法を実施するため提供されるデジタル灌流画像を外界から受信する能力をもつ。
【0066】
本発明は、推定パラメータをユーザに返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイスに、適切なフォーマットに従って上記推定パラメータを送付することができる本発明による処理手段の通信手段をさらに提供する。
【0067】
本発明は、上述されたような処理ユニットと、本発明により、かつ、上記処理ユニットによって実施される方法によって1個以上の推定パラメータをユーザに返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイスとを備える何らかの灌流イメージング解析システムにさらに関する。
【0068】
他の特徴および利点は、以下の説明を読み、かつ、添付図面を参照することにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は灌流イメージング解析システムの変形実施形態を示す図である。
【図2】図2は灌流イメージング解析システムの変形実施形態を示す図である。
【図3】図3は核磁気共鳴イメージング装置によって取得された灌流画像を示す図である。
【図4】図4は造影剤を注入した状態で、この造影剤が脳の組織内を循環している間の人間の脳のスライスを示す図である。
【図5】図5aおよび図5bは人間の脳のボクセルに関係する典型的な核磁気共鳴灌流信号S(t)を示す図である。
【図6】図6は人間の脳のボクセル内を循環する造影剤の典型的な濃度曲線C(t)を示す図である。
【図7】図7は典型的な動脈入力関数Ca(t)を示す図である。
【図8】図8は本発明による方法を示す図である。
【図9】図9は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図10】図10は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図11】図11は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図12】図12は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図13】図13は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図14】図14は本発明による推定血行動態パラメータに関係するマップを示す図である。
【図15】図15は本発明による推定血流量の標準偏差に関する図である。
【図16】図16は本発明による推定平均通過時間に関する図である。
【図17】図17は脳血流量が信頼範囲に入る確率に関係するマップに関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、灌流画像解析システムを表す。核磁気共鳴断層撮影法またはコンピュータ断層撮影法によるイメージングのための装置1は、コンソール2を用いて制御される。ユーザは、このようにして、装置1を制御するパラメータ11を選択することができる。装置1によって生成された情報10から、人間または動物の身体の一部の複数のデジタル画像の系列12が取得される。好ましい例として、人間の脳の観測から生じるデジタル画像を用いて、従来技術による解決策と、本発明による解決策とを例証する。他の組織も同様に考えることができる。
【0071】
画像系列12は、場合によっては、サーバ3に蓄積されることがあり、患者の医療症例13を構成する。このような症例13は、灌流画像または拡散画像のような様々なタイプの画像を含むことができる。画像系列12は、専用処理ユニット4を用いて解析される。上記処理ユニットは、画像を収集するため外界と通信する手段を備える。また、上記通信する手段は、処理ユニットが最終的には適応したヒューマン・マシン・インターフェイス5を用いて灌流画像12からの血行動態パラメータの推定量を医師6または研究者に送付することを可能にする。解析システムのユーザ6は、その後、診断を承認するか、または、無効にし、自分が適切であると思う治療処置を決定し、研究をより深く探求することなどが可能である。場合によっては、該ユーザは、パラメータ16を用いて処理ユニット4の機能をパラメータ化することが可能である。例えば、該ユーザは、このようにして、表示閾値を定義するか、または、自分が表示したいと思う推定パラメータを選択することがある。
【0072】
図2は、前処理ユニット7が画像系列12からボクセル毎の灌流信号15を導出するため画像系列12を解析する解析システムの変形実施形態を示す。血行動態パラメータ14を推定する役割を担う処理ユニット4は、このようにして、この働きが軽減され、外界と通信する手段によって受信された灌流信号15からの推定方法を使用する。
【0073】
図3は、人間の脳の厚さ5ミリメートルのスライス5の典型的な画像12の一例を示す。この画像は、核磁気共鳴によって取得される。この手法を用いて、スライス毎に、寸法が1.5×1.5×5ミリメートルである128×128ボクセルの行列を取得することが可能である。双一次補間を用いて、画像20のような458×458ピクセルからなるフラット画像を生成することが可能である。
【0074】
図4は、図3に関連して提示された画像に類似する画像20を示す。しかし、この画像は、造影剤の注入後に取得される。この画像は、典型的な脳の灌流画像の一例である。動脈は、このようにして、図3に記載された同じ画像とは異なって、明瞭に現れる。周知の手法によれば、血行動態パラメータを推定するため異常のある半球の対側にある半球内の1個以上の動脈入力関数21を選択することが可能である。
【0075】
図5aは、図2に関連して記載された前処理ユニット7によって送付される信号15のような核磁気共鳴灌流信号S(t)の一例を示す。灌流信号は、このようにして、投影剤の注入後の期間tにおけるボクセルの変化を表現する。一例として、図5bは、50秒の期間に亘るこのような信号を記載する。Y軸は、任意単位である信号の強度を記述する。このような信号を取得するため、図1による処理ユニット4(または、変形では図2による前処理ユニット7)は、例えば、図5aによって記載されるように時点t1、t2、...,ti,...,tnにおけるn個の核磁気共鳴灌流画像I1、I2、...、Ii、...、Inの系列を解析する。所定のボクセル、例えば、ボクセルVに対し、灌流信号S(t)は、造影剤の注入後の期間tにおけるボクセルの変化を表す。
【0076】
図6は、図5bに記載されるような灌流信号から導出された濃度曲線を表す。既に記載されたように、灌流信号と関連した濃度曲線との間には、関係が存在する。よって、核磁気共鳴灌流イメージングでは、指数関係S(t)=S0.e−k.TE.C(t)が存在し、式中、S0は、造影剤の到達前の信号の平均強度であり、TEは、エコー時間であり、kは、組織における常磁性磁化率と造影剤の濃度との間の関係に依存する定数である。各ボクセルに対する定数kの値は、未知であるので、この値は、着目中のすべてのボクセルに対して任意の値に固定される。
【0077】
図6は、このように、時間的に、ボクセル内の造影剤の濃度の変化を表示する。高い振幅ピークは、ボクセル内の造影剤の1回目の通過中に顕著であり、上記造影剤の再循環現象(2回目の通過)に関連した低い振幅ピークが後に続く。
【0078】
図7に関しては、図7は、図4に関連して提示されたボクセル21のような動脈ボクセル内の造影剤の循環を表現する典型的な動脈入力関数Ca(t)を示す。図7は、特に、造影剤の1回目の通過後の再循環現象が非常に弱いことを表す。
【0079】
本発明を実施するため、動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリック生理学的モデルCa(t,Θa)を導入する。このようなモデルは、図1および図2に関して記載された解析システムの処理ユニット4において記憶手段によって記憶されるか、プログラムされる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態によれば、このモデルは、12個のパラメータを含むいわゆる「トリ−ガンマ」(tri−gamma)モデルであり、
【0081】
【数13】
【0082】
によって定義される。
【0083】
さらに、組織内の通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリック生理学的モデルR(t,ΘR)を導入する。
【0084】
動脈入力関数モデルの場合と同様に、このようなモデルは、図1または図2に関連して記載されたような解析システムの処理ユニット4において記憶されるか、プログラムされる。
【0085】
一例として、通過時間のこの相補累積分布関数は、2個のパラメータを含むいわゆる「修正ガンマ積分」モデル:
【0086】
【数14】
【0087】
である。
【0088】
動脈入力関数のためのパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルと相補累積分布関数のためのパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルとだけを導入することにより、本発明は、非常に満足できる結果を取得することを可能にする。しかし、本発明は、取得される推定量の精度が特に改善される変形を提供する。なぜならば、例えば、核磁気共鳴イメージングにおける標準的な灌流モデルは、以下の等価的な式:
【0089】
【数15】
【0090】
で表現されることがあり、式中、λは、非零定数である。
【0091】
このように、
【0092】
【数16】
【0093】
が理論的な灌流モデルを実験データに当てはめる2個の推定量である場合、
【0094】
【数17】
【0095】
は、いずれのλ≠0に対しても、モデルを実験データにちょうど良く当てはめる2個の他の推定量である。
【0096】
換言すると、BFおよびCa(t,Θa)は、標準的な灌流モデルの下で、定数倍の範囲内に限り決定される。但し、ベイズ法は、特に、上記量、特に、BFおよびCa(t,Θa)のある特定の値をより確からしくさせる操作量を先験的に利用できる情報を考慮することを可能にするので、満足できる結果を取得することを可能にする。その結果、乗算定数λの一部の値は、それ自体がより確からしく、量を推定する問題をより良く決定する効果を有している。
【0097】
しかし、この問題を完全に決定させ、そして、BFまたはΘaのようなパラメータの推定の精度を改善するため、本発明は、動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルに付加定数Ψ(Θa)を導入する。この第3の関係は、例えば、長時間に亘って動脈ボクセル内を循環する造影剤の総重量のような着目中のすべての動脈入力関数での物理量の保存を表現することができる。特に有利な点として、この制約は、該当するモデルCa(t,Θa)とは独立である。
【0098】
この制約は、一般的な言葉では、Ψ(Θa)=0のような動脈入力関数のモデルのパラメータΘaの間の関係によって表現されることがある。
【0099】
動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルに関する制約の形をしたこの付加関係は、1回に限り、かつ、すべてのボクセルに対して、定数λを固定することを可能にさせる。この第3の関係は、図1または図2に関連して記載されたように解析システムの処理ユニット4において記憶されるか、プログラムされる。3つの関係の組は、制約付き大域的灌流モデルを構成する。
【0100】
制約付き大域的モデルのパラメータΘ、特に、BFおよびΘaの同時推定の問題は、この場合、完全に巧く決定されかつ良設定される。
【0101】
本発明の第1の実施形態によれば、この制約Ψ(Θa)=0は、
【0102】
【数18】
【0103】
として表現することができ、式中、C0は、着目中のすべてのボクセルに対して同一である非零任意定数である。
【0104】
パラメータΘa=(a,b,c,α0,β0,t0,α1,β1,t1,α2,β2,t2)の動脈入力関数に対する「トリ−ガンマ」モデルの場合、パラメータに関するこの制約は、a+b+c=C0として表現することができる。
【0105】
したがって、この制約は、式:Ψ(Θa)=a+b+c−C0を与える。
【0106】
この制約下では、したがって、3個のパラメータのうちの1個、例えば、c=C0−a−bとすることにより、cを除去し、
【0107】
【数19】
【0108】
といった11個の自由パラメータを含む制約付きモデルCa(t,Θa)に帰着することが可能である。
【0109】
第2の実施形態によれば、制約は、
【0110】
【数20】
【0111】
として表現することができ、式中、Cca(t,Θca)は、造影剤の1回目の通過中に造影剤の濃度をモデル化するモデルCa(t,Θa)の成分であり、C0は、着目中のすべてのボクセルに対して同一である非零任意定数である。
【0112】
「トリ−ガンマ」モデルの場合、この成分は、このモデルの3個の成分のうちの単に1番目の成分:
【0113】
【数21】
【0114】
であるので、制約は、a=C0、すなわち、Ψ(Θa)=a−C0である。
【0115】
したがって、この制約は、再び、
【0116】
【数22】
【0117】
といった11個の自由パラメータを含む制約付きモデルCa(t,Θa)を意味することができる。
【0118】
本発明は、このようにして、磁気共鳴イメージングにおけるパラメータΘ=(Θa,ΘR,BF,S0,ΘB)、または、コンピュータ断層撮影法におけるパラメータΘ=(Θa,ΘR,BF,ΘB)の同時推定の問題を意味することができ、ここで、ΘBは、動脈入力関数を予め供給または推定することを必要とすることなく、灌流信号S(t)に関する測定ノイズを特徴付けるパラメータベクトルである。
【0119】
したがって、本発明は、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と組織ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−上記濃度C(t)と、血流量BFと、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内の通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
−場合によっては、動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルのパラメータΘa間の第3の関係Ψ(Θa)=0と、
を備える、おそらく制約された、制約付きモデルに基づいている。
【0120】
動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルと、通過時間の相補累積分布関数R(t,ΘR)のモデルとは、場合によっては、動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルのパラメータΘa間の上記の第3の関係Ψ(Θa)=0によって制約される大域的灌流モデルのサブモデルであると考えることが可能になる。
【0121】
核磁気共鳴イメージングにおける一例として、このような大域的制約付き灌流モデルMは、
【0122】
【数23】
【0123】
といった形で表現することができ、式中、「x」を〇で囲んだ符号(以下、「*」で表すことがある)は、畳み込み積を表し、ηは、任意固定非零定数であり、BFは、該当するボクセル内を循環する血流量である。
【0124】
同様に、コンピュータ断層撮影イメージングでは、大域的制約付き灌流モデルMは、
【0125】
【数24】
【0126】
といった形で表現することができ、式中、「x」を〇で囲んだ符号(以下、「*」で表すことがある)は、畳み込み積を表し、ηは、任意固定非零定数であり、BFは、該当するボクセル内を循環する血液量であり、αは、非零定数である。
【0127】
図8に関連して、本発明による血行動態パラメータを推定する方法は、灌流信号S(t)からモデルMのパラメータΘを同時推定するステップ51を備える。特に、パラメータの同時推定の問題を解決するため数学的手法および数値的手法を使用することができるように適応した、図1または図2に記載されたような処理ユニット4によってこのような方法が使用される。
【0128】
一例として、このような処理ユニット4は、最尤法、非線形最小二乗法、または、ベイズ法を使用することができる。
【0129】
本発明の好ましい実施形態を例証するため、以下の点:
−処理ユニット4は、ベイズ法を使用すること、
−処理ユニット4において記憶されるか、プログラムされた動脈入力関数モデルは、「トリ−ガンマ」モデルであること、
−処理ユニット4において記憶されるか、プログラムされた相補累積分布関数モデルは、「修正ガンマ積分」モデルであること、
−処理ユニット4において記憶されるか、プログラムされた制約は、Ψ(Θa)=C0−a−b−cであること、
を考慮する。
【0130】
核磁気共鳴灌流イメージング用途に対し、制約付きモデルCa(t,Θa)は、その結果、
【0131】
【数25】
【0132】
として記述される。
【0133】
ti、i=1、Nがサンプリング時点であり、S(ti)、i=1、Nがこれらの時点で測定された灌流信号の強度であるとする。実験データは、したがって、D=[S(t1),...,S(tN)]である。
【0134】
標準偏差σ=ΘBである加法性白色定常ガウス雑音が仮定される場合、灌流データDの尤度関数または直接確率分布は、すべてのパラメータが与えられると、
【0135】
【数26】
【0136】
と記述される。
【0137】
C(t)=η.BF・Ca(t,Θa)*R(t,ΘR)は、時間的打ち切り後に数値的に計算されるか、または、好ましくは、2個の確率分布Γの畳み込み積の近似を使用して解析的に計算される。
【0138】
モデルを前提としたすべてのパラメータの事前結合確率分布p(Θ|M)がこれらのパラメータでの実験前に利用できる情報を表現すると仮定すると、事後結合分布は、以下のベイズの規則を用いて取得される。
【0139】
【数27】
【0140】
この結合分布から、本発明による方法は、他のパラメータすべてを無視して、血流量BF、血液容量BV、または、平均通過時間MTTのような着目中の個々の血行動態パラメータθの周辺事後分布を取得すること(ステップ52)を可能にする。この周辺分布から、二次損失関数の下で、この分布の数学的期待度、または、パラメータの最も確からしい値を利用するパラメータの予測器、例えば、ベイズ予測器(最大事後予測器)を取得することが最終的に可能である。このように、本発明は、例えば、着目中のいずれのボクセルに対しても、
【0141】
【数28】
【0142】
とを推定できることを可能にする。
【0143】
場合によっては、本発明による方法は、推定パラメータに関する信頼区間の形式をした補助情報を取得すること(ステップ52a)と、上記信頼区間を予測すること(ステップ52b)でさえ可能にする。この補助情報は、医師のようなユーザのため特に有用であり、そして、診断を構築するためさらなる支援になることが判明することがある。本発明に先行する技術の手法を使用すると、医師は、着目中の各ボクセルのため利用できる推定量の精度が分からない。
【0144】
例えば、脳血流量θ=CBFのような特有の血行動態パラメータθに対し、本発明は、事後周辺分布
【0145】
【数29】
【0146】
を取得し、そして、二次損失関数
【0147】
【数30】
【0148】
の下でθのベイズ推定器、すなわち、
【0149】
【数31】
【0150】
または、パラメータの最も確からしい値:
【0151】
【数32】
【0152】
を取得することを可能にする。
【0153】
ユニット4は、場合によっては、
−二次損失関数の下でベイズ推定器の分散:
【0154】
【数33】
【0155】
と、
−信頼区間、例えば、±1σでの信頼区間:
【0156】
【数34】
【0157】
と、を推定することもできる。
【0158】
一実施形態によれば、本発明による方法を使用する処理ユニット4は、パラメータが信頼区間の中にある確率または期待度、例えば、
【0159】
【数35】
【0160】
を計算すること(ステップ52b)を可能にする。
【0161】
一変形では、本発明は、
【0162】
【数36】
【0163】
といった該当する組織容積に対する局所的動脈入力関数のパラメータの事後結合周辺分布に対応する補助情報を取得すること(ステップ53)を可能にする方法を提供する。
【0164】
本発明は、このようにして、例えば、二次損失関数
【0165】
【数37】
【0166】
の下で、同時パラメータ:
【0167】
【数38】
【0168】
の「平均」動脈入力関数
【0169】
【数39】
【0170】
または、パラメータの「最も確からしい」動脈入力関数
【0171】
【数40】
【0172】
を取得することを可能にする。
【0173】
同様にして、本発明は、本発明による方法が「平均」または「最も確からしい」相補累積分布関数
【0174】
【数41】
【0175】
を計算するステップ54を備える変形実施形態を提供する。
【0176】
このようにして、
【0177】
【数42】
【0178】
によって造影剤の理論的濃度の推定量の形式をした補助情報を取得することも可能である。
【0179】
一実施形態によれば、本発明は、「平均」または「最も確からしい」これらの動脈入力関数または推定された相補累積分布関数が、最も関連するモデルが選択されることを可能にする目的のため、本発明以前のアプローチによって取得された1つ以上のこれらの関数、または、別個の動脈入力関数または相補累積分布関数モデルと比較できるようにする。
【0180】
なぜならば、真の動脈入力関数が既知であるとき推定動脈入力関数を真の動脈入力関数と比較し、必要に応じてより適切なモデルを導入することにより両者の間の差を最小限に抑えることが有利であるからである。
【0181】
図8に関連して、本発明は、本発明による方法が動脈入力関数のパラメータのための信頼区間を取得する(ステップ53a)、または、さらにこれらの信頼区間の期待度を取得する(ステップ53b)1つ以上の補助ステップを備えることがある可能性をさらに提供する。同じことが、相補累積分布関数のパラメータのための信頼区間を取得すること(ステップ54a)、または、さらにこれらの信頼区間の期待度を取得すること(ステップ54b)に当てはまることがある。
【0182】
動脈入力関数Ca(t,Θa)および相補累積分布関数R(t,ΘR)のための典型的なパラメトリックモードまたはセミパラメトリックモードの次元は、十分に小さいので、マルコフ連鎖モンテカルロ法または変形ベイズ法のような事後結合分布p(Θ|D,M)および周辺事後分布をサンプリングまたは近似する方法に適用することが可能である。
【0183】
その結果、本発明は、着目中のパラメータに対する所要推定量の近似を取得することを可能にする。
【0184】
特有の実施形態によれば、本発明は、図8に関連して記載され、そして、磁気共鳴イメージングにおけるΘ={Θa,ΘR,θ,S0,ΘB}、または、コンピュータ断層撮影法におけるΘ={Θa,ΘR,BF,ΘB}を用いてモデル
【0185】
【数43】
【0186】
を仮定して、これらのデータの確率の計算55によって、実験データDへの制約付き大域的灌流モデルの適合度を定量化することができるようにしかるべく適応した処理ユニット4によって実施される方法を提供する。
【0187】
この量の計算55は、本発明以前の技術の手法では明瞭に決定された大域的信号モデルが利用できないので、考えることができなかった。
【0188】
本発明は、前述されているように、動脈入力関数Ca(t,Θa)に対する様々なサブモデル、および/または、相補累積分布関数R(t,ΘR)に対する様々なサブモデル、および/または、様々な補助制約Ψ(Θa)=0から取得された、おそらく制約付きの数個の大域的灌流モデルを客観的に比較することを可能にするためにこの量を提供する。
【0189】
このように、本発明は、別個の制約付き大域的灌流モデルを使用する逐次反復により処理ユニットによって実施することができる方法を提供する。処理ユニットは、使用された各モデルのための計算55の結果を維持することができる。本発明は、最終的に最良の大域的灌流モデルを選択することを可能にさせる。このモデルは、モデルを仮定すると、灌流信号の確率が着目中のすべてのボクセルに亘る平均で最大になるモデルである。
【0190】
一変形では、本発明は、反復中に、複数の中からサブモデルCa(t,Θa)、サブモデルR(t,ΘR)、または、さらに制約Ψ(Θa)=0を選択するために、ステップ56a、56bおよび56cを備えて、大域的灌流モデルを調整する(ステップ57)ことができる方法を提供する。この選択は、パラメータ16を用いてユーザ6によって手動で、または、方法自体によって自動で実行することができ、反復プロセスおよび逐次テストを通じて、本発明によれば、灌流現象のモデル化および理解を進展し、最終的には、患者、病状、組織のタイプなどに応じて最良モデルを特定し、有効とすることが可能になる。
【0191】
本発明の用途の一例として、図1または図2に記載されたシステムのような適応型灌流イメージング解析システムを用いる本発明の実施の主要なステップ:
−患者症例を開くか、または、処理ユニット4(または、処理ユニット7)によって画像の系列を考慮に入れ、着目中の画像の系列を選択すること、特に、図5aに示されるように灌流信号S(t)がボクセル毎に取得される時間に亘って灌流画像I1からInを選択するステップと、
−ユーザ6が着目中のスライスまたはエリアを特定することを可能にするため、ヒューマン・マシン・インターフェイス5を用いて、画像を事前表示するステップと、
−パラメータが最終的にマップの形式で、各ピクセルの強度または色が計算された値に、例えば、直線的に依存する状況を表現するように、処理ユニット4によって、人間の脳のような組織のための
【0192】
【数44】
【0193】
のような血行動態パラメータ14を同時推定し、上記パラメータ14をヒューマン・マシン・インターフェイス5に送付し、信頼区間、期待度、または、大域的灌流モデルのパラメータに関連付けられた他の相補的情報のような他の推定量の送付をさらに含むことがあるステップと、
−マップの内容をユーザ6に返すため、上記マップを表示するステップと、
−着目に値する領域だけを維持し、および/または、ある特定の異常を除去するため、ユーザ6の脈拍16の下で、閾値化および濾波を行うステップと、
−1個異常の血行動態パラメータ14の分布の異常性によって特徴付けられた、ユーザによる着目中の上記病的エリアの支援付き選択のステップと、
−処理ユニット4によって、異常灌流された組織エリアの容積と、場合によっては、損傷されたエリアと異常灌流されたエリアとの比率のようなある特定の量とを推定し、これに基づいて、医師が自分の診断および治療上の意思決定(例えば、血栓を吸収するための血栓溶解点滴)の最後の仕上げをすることができるステップと、
を挙げることができる。
【0194】
図9から図17は、本発明によって推定された血行動態パラメータ14、または、さらにこれに関連付けられた標準偏差もしくは確率の表示モードをマップの形式で示す。
【0195】
このように、核磁気共鳴イメージングを用いて解析された人間の脳に対し、図9は、脳血液容量CBVの推定量を見ることを可能にさせる。このようなマップは、予想される虚血ゾーン80を明らかにする。この理由は、適応型インターフェイス6を用いて、対側半球と比較して右後大脳動脈の領域において、パラメータCBVの顕著な増加を見つけることができるからである。虚血の後に続く血管拡張は、図9に示されるように、マップを読むことにより明らかにされることがある。
【0196】
図10は、脳虚血の場合の脳血流量の推定量に関係するマップを示す。マップを解析することにより、右後大脳動脈の領域におけるパラメータCBFの僅かな減少が虚血の後に続く対側半球と比べると顕著である可能性がある。
【0197】
図11は、平均通過時間MTTに関係するマップを示す。マップを解析することにより、MTTの明らかな増加は、虚血の後に続く対側半球と比べて右後大脳動脈の領域80において見つけることができる。
【0198】
図12は、本発明による12個のパラメータを含む「トリ−ガンマ」動脈入力関数モデルのパラメータaの推定量に関係するマップを記載する。aの明らかな減少を、対側半球と比較して右後大脳動脈の領域80において見つけることができる。この情報は、再循環中の量と比較して循環中の造影剤の量の相対的な減少を意味することを可能にさせる。この情報は、本発明以前の技術による手法と共に利用することができない。
【0199】
図13は、本発明による12個のパラメータを含む「トリ−ガンマ」動脈入力関数モデルのパラメータβ2の推定量に関係するマップを記載する。マップを解析することにより、β2の明らかな増加は、対側半球と比較して右後大脳動脈の領域80において見つけることができる。この情報は、本発明以前の技術による手法と共に利用することができない。
【0200】
図14は、本発明による12個のパラメータを含む「トリ−ガンマ」動脈入力関数モデルのパラメータt1の推定量に関係するマップを記載する。マップを解析することにより、t1の明らかな増加は、対側半球と比較して右後大脳動脈の領域80において見つけることができる。この情報は、本発明以前の技術による手法と共に利用することができない。
【0201】
図15は、本発明による12個のパラメータを含む「トリ−ガンマ」動脈入力関数から推定された脳血流量の標準偏差σCBFの推定量に関係するマップを記載する。マップを解析することにより、標準偏差は、組織ではなく、動脈を包含するゾーン81において最高であることが分かる。虚血エリアにおける標準偏差は、対側エリアにおける標準偏差より高くなく、図10によって記載されるように、このゾーンにおけるCBFの推定量を補う。この情報は、本発明以前の技術による手法と共に利用することができない。
【0202】
図16は、本発明による2個のパラメータを含む「修正ガンマ積分」相補累積分布関数モデルから推定された平均通過時間の標準偏差σMTTの推定量に関係するマップを記載する。マップを解析することにより、標準偏差は、組織ではなく、動脈を包含するゾーン82において最高であることが分かる。これは、厳密に、脳血流量の標準偏差も同様に最高であるゾーンに類似したゾーンの場合である。虚血エリアにおける標準偏差は、対側エリアにおける標準偏差より高くなく、推定量が図11によって記載されるように、このゾーンにおけるMTTの推定量を補う。この情報は、本発明以前の技術による手法と共に利用することができない。
【0203】
図17は、脳血流量が本発明による12個のパラメータを含む「トリ−ガンマ」動脈入力関数モデルの下で信頼区間
【0204】
【数45】
【0205】
の中にある確率の推定量に関係するマップを記載する。マップを解析することにより、異常な調整量を除いて、確率は、0.68付近に中心が置かれている。この値は、CBFの事後確率分布が正規分布である場合に、1を期待することができる値である。
【0206】
以上提示されたマップを用いて、本発明は、ユーザが先行技術から周知の手法を用いて利用することができなかった有用な情報の全範囲を利用できるようにする。この利用可能化は、ユニット4の外界と通信するユニット4の手段が、例えば、図9から図17によって示されるようにマップの形式で上記推定パラメータをユーザ6に返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイス5に適切なフォーマットに従って推定パラメータ14を送付できるという点で、図1および図2による処理ユニット4の適応によって可能にされる。
【0207】
本発明は、本発明以前の技術によれば必要であるステップを除去することを可能にするという点をさらに注記することができる。種々のステップの中で、
−大域的動脈入力関数または局所的動脈入力関数の手動または自動による選択または決定と、
−BF.R(t)の推定量を取得するための選択された1個以上の動脈入力関数に基づく処理ユニットによるボクセル毎の標準的な灌流モデルC(t)=η・BF・Ca(t)*R(t)の逆畳み込みアルゴリズムの実施と、
の除去を挙げることができる。
【0208】
本発明によれば、処理ユニットは、従来手法による逆畳み込みアルゴリズムに代えて、大域的灌流モデルのパラメータのための同時推定アルゴリズムを実行するため適応しているという点をさらに注記することができる。
【0209】
本発明によれば、送付される情報の項目は、より多岐に亘り、かつ、正確である。研究者または医師が利用できる情報は、したがって、診断の決定および治療上の決定における彼らの自信の増大に関するような性質をもつ。
【0210】
本発明によるシステムの性能を改善するため、本発明は、パラメータの推定が必要とされる画像のボクセルを並列に計算に入れる手段を設けることができる処理ユニット4を提供する。このような処理ユニットは、グラフィカル・マイクロプロセッサ(グラフィカル・プロセッサ・ユニット(GPU))のような手段を備えるか、または、計算クラスタを使用することがある。一変形例では、このような処理ユニットは、並列モンテカルロ法のようなプログラムされた手段を使用することがある。一変形例では、本発明による処理手段は、遠隔コンピューティング手段に依拠することができる。コンピューティング時間は、このようにしてかなり短縮することができる。さらに、本発明による処理ユニットは、1個以上の大域的灌流モデル、または、複数の動脈入力関数サブモデルもしくは通過時間の相補累積分布関数サブモデル、または、上記動脈入力関数サブモデルのパラメータに基づく複数の制約を記憶する手段を備えることができる。一変形では、このような処理ユニットは、おそらく制約付きの、このような大域的灌流モデル、または、サブモデル、もしくは、さらには平均を用いる制約のローディングが外界と通信することを可能にすることがある。処理ユニットは、従来技術から周知である手法による有線または遠隔通信を実施できることがある。
【0211】
本発明は、動的感受性コントラスト磁気共鳴イメージング(DSC−MRI)の分野において説明され、かつ、例証されている。本発明は、この実例的な用途だけに限定されるべきではなく、特に、コンピュータ断層撮影法による灌流イメージングのような他の医療技術にも適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌流イメージング解析システムの処理ユニット(4)によって実施され、灌流信号S(t)(15)から1個以上の血行動態パラメータを推定するステップを備え、ボクセルと呼ばれる組織の体積要素の1個以上の血行動態灌流パラメータ(14)を推定する方法であって、
1個以上の血行動態パラメータを推定するステップは、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と前記ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−造影剤の濃度C(t)と、血液流量BFと、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内の通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
を備える大域的灌流モデルのパラメータΘの同時推定(51)により構成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
−灌流信号S(t)は、磁気共鳴灌流イメージング装置(1)によって送付されたデジタル画像(12,13)から予め取得され、
−大域的灌流モデルの第1の関係は、S(t)=S0e−k.TE.C(t)によって表現することができ、式中、S0は、ボクセル内の造影剤の到達前の信号の平均強度であり、TEは、エコー時間であり、kは、非零定数であり、
−大域的灌流モデルの第2の関係は、C(t)=η・BF・Ca(t,Θa)*R(t,ΘR)によって表現され、式中、*は、畳み込み積を表し、ηは、非零定数であり、BFは、ボクセル内の血液流量であること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
−灌流信号S(t)は、コンピュータ断層撮影灌流イメージング装置(1)によって送付されたデジタル画像(12,13)から予め取得され、
−大域的灌流モデルの第1の関係は、比例式S(t)=α.C(t)であり、式中、αは、非零定数であり、
−大域的灌流モデルの第2の関係は、C(t)=η・BF・Ca(t,Θa)*R(t,ΘR)によって表現され、式中、*は、畳み込み積を表し、ηは、非零定数であり、BFは、ボクセル内の血液流量であること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該当する複数のボクセルのための逐次反復によって実施されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
処理ユニット(4)によって使用される大域的灌流モデルのパラメータΘの同時推定(51)は、ベイズ法、最尤法、または、非線形最小二乗法を用いて実施されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
実験灌流データD=[S(t1),...,S(tN)]に対する大域的灌流モデルの適合度を、前記モデルを前提としたこれらのデータの確率
【数46】
の計算によって定量化するステップ(55)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
複数の中から大域的灌流モデルを選択する事前ステップ(56a,56b,56c,57)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
処理ユニット(4)によって、前記処理ユニットから知られている各大域的灌流モデルに対し反復的に実施されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記モデルを前提として、前記灌流モデルに応じた推定パラメータのうち、確率が最大である推定パラメータが送付される(55a)ことを特徴とする、請求項6に従属する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
動脈入力関数のモデルCa(t,Θa)は、12個のパラメータを含むいわゆる「トリ−ガンマ」モデルであり、
【数47】
によって定義されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ボクセル内の通過時間の相補累積分布関数のモデルR(t,ΘR)は、2個のパラメータを含むいわゆる「修正ガンマ積分」モデルであり、
【数48】
によって定義されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
大域的灌流モデルは、動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルのパラメータΘaの間に第3の関係Ψ(Θa)=0を備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
大域的灌流モデルの第3の関係Ψ(Θa)=0は、C0が着目中のすべてのボクセルに対して同一である非零任意定数であるとして、
【数49】
として表現されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
大域的灌流モデルの第3の関係Ψ(Θa)=0は、Cca(t,Θca)が造影剤の1回目の通過中に造影剤の濃度をモデル化するモデルCa(t,Θa)の成分であり、C0が着目中のすべてのボクセルに対して同一である非零任意定数であるとして、
【数50】
として表現されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
推定動脈入力関数
【数51】
という形式をした相補情報を計算するステップ(53)を備えることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
推定された相補累積分布関数
【数52】
という形式をした相補情報を計算するステップ(54)を備えることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
大域的灌流モデルのパラメータに関連付けられた信頼区間という形式をした相補情報を計算するステップ(52a,53a,54a)を備えることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
大域的灌流モデルのパラメータに関連付けられた期待度という形式をした補助情報を計算するステップ(52b,53b,53c)を備えることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
1個以上の推定血行動態パラメータ(14)を、前記推定パラメータをユーザ(6)に返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイス(5)に送付するステップ(52)を備えることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
何らかの相補情報を、推定パラメータおよび前記相補情報をユーザ(6)に返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイス(5)に送付するステップ(52)を備えることを特徴とする、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
記憶手段と、外界と通信する手段と、処理手段とを備える処理ユニット(4)であって、
−通信する手段は、外界から灌流イメージングによって取得された信号S(t)(15)を受信する能力をもち、
−記憶手段は、大域的拡散モデルを備え、前記モデルは、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と前記ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−ボクセル内の血液流量BFと、濃度C(t)と、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内での通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
を備え、
−処理手段は、請求項1から11に記載の血行動態灌流パラメータ(14)を推定する方法を実施するため適応していることを特徴とする、処理ユニット。
【請求項22】
記憶手段と、外界と通信する手段と、処理手段とを備える処理ユニットであって、
−通信する手段は、外界からデジタル灌流画像(12,13)を受信する能力をもち、
−記憶手段は、大域的拡散モデルを備え、前記モデルは、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と前記ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−濃度C(t)と、血液流量BFと、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内での通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
を備え、
−処理手段は、受信された灌流画像(12,13)から灌流信号S(t)を決定し、請求項1から11のいずれか一項に記載の1個または数個の血行動態灌流パラメータ(14)を推定する方法を実施するため適応していることを特徴とする、処理ユニット。
【請求項23】
記憶手段は、動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルのパラメータΘaの間に第3の関係Ψ(Θa)=0を含む大域的灌流モデルを備え、
前記処理手段は、請求項1から20のいずれか一項に記載の1個以上の血行動態灌流パラメータ(14)を推定するため適応していること、
を特徴とする、請求項21または22に記載の処理ユニット。
【請求項24】
通信する手段は、適切なフォーマットに従って1個以上の推定パラメータ(14)を、前記推定パラメータをユーザ(6)に返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイス(5)に送付する(52)ことを特徴とする、請求項21から23のいずれか一項に記載の処理ユニット。
【請求項25】
請求項21から24のいずれか一項に記載の処理ユニット(4)と、
請求項1から20のいずれか一項に記載され、前記処理ユニット(4)によって実施される方法によって1個以上の推定パラメータ(14)をユーザ(6)に返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイス(5)と、
を備える灌流イメージング解析システム。
【請求項1】
灌流イメージング解析システムの処理ユニット(4)によって実施され、灌流信号S(t)(15)から1個以上の血行動態パラメータを推定するステップを備え、ボクセルと呼ばれる組織の体積要素の1個以上の血行動態灌流パラメータ(14)を推定する方法であって、
1個以上の血行動態パラメータを推定するステップは、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と前記ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−造影剤の濃度C(t)と、血液流量BFと、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内の通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
を備える大域的灌流モデルのパラメータΘの同時推定(51)により構成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
−灌流信号S(t)は、磁気共鳴灌流イメージング装置(1)によって送付されたデジタル画像(12,13)から予め取得され、
−大域的灌流モデルの第1の関係は、S(t)=S0e−k.TE.C(t)によって表現することができ、式中、S0は、ボクセル内の造影剤の到達前の信号の平均強度であり、TEは、エコー時間であり、kは、非零定数であり、
−大域的灌流モデルの第2の関係は、C(t)=η・BF・Ca(t,Θa)*R(t,ΘR)によって表現され、式中、*は、畳み込み積を表し、ηは、非零定数であり、BFは、ボクセル内の血液流量であること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
−灌流信号S(t)は、コンピュータ断層撮影灌流イメージング装置(1)によって送付されたデジタル画像(12,13)から予め取得され、
−大域的灌流モデルの第1の関係は、比例式S(t)=α.C(t)であり、式中、αは、非零定数であり、
−大域的灌流モデルの第2の関係は、C(t)=η・BF・Ca(t,Θa)*R(t,ΘR)によって表現され、式中、*は、畳み込み積を表し、ηは、非零定数であり、BFは、ボクセル内の血液流量であること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該当する複数のボクセルのための逐次反復によって実施されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
処理ユニット(4)によって使用される大域的灌流モデルのパラメータΘの同時推定(51)は、ベイズ法、最尤法、または、非線形最小二乗法を用いて実施されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
実験灌流データD=[S(t1),...,S(tN)]に対する大域的灌流モデルの適合度を、前記モデルを前提としたこれらのデータの確率
【数46】
の計算によって定量化するステップ(55)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
複数の中から大域的灌流モデルを選択する事前ステップ(56a,56b,56c,57)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
処理ユニット(4)によって、前記処理ユニットから知られている各大域的灌流モデルに対し反復的に実施されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記モデルを前提として、前記灌流モデルに応じた推定パラメータのうち、確率が最大である推定パラメータが送付される(55a)ことを特徴とする、請求項6に従属する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
動脈入力関数のモデルCa(t,Θa)は、12個のパラメータを含むいわゆる「トリ−ガンマ」モデルであり、
【数47】
によって定義されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ボクセル内の通過時間の相補累積分布関数のモデルR(t,ΘR)は、2個のパラメータを含むいわゆる「修正ガンマ積分」モデルであり、
【数48】
によって定義されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
大域的灌流モデルは、動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルのパラメータΘaの間に第3の関係Ψ(Θa)=0を備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
大域的灌流モデルの第3の関係Ψ(Θa)=0は、C0が着目中のすべてのボクセルに対して同一である非零任意定数であるとして、
【数49】
として表現されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
大域的灌流モデルの第3の関係Ψ(Θa)=0は、Cca(t,Θca)が造影剤の1回目の通過中に造影剤の濃度をモデル化するモデルCa(t,Θa)の成分であり、C0が着目中のすべてのボクセルに対して同一である非零任意定数であるとして、
【数50】
として表現されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
推定動脈入力関数
【数51】
という形式をした相補情報を計算するステップ(53)を備えることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
推定された相補累積分布関数
【数52】
という形式をした相補情報を計算するステップ(54)を備えることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
大域的灌流モデルのパラメータに関連付けられた信頼区間という形式をした相補情報を計算するステップ(52a,53a,54a)を備えることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
大域的灌流モデルのパラメータに関連付けられた期待度という形式をした補助情報を計算するステップ(52b,53b,53c)を備えることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
1個以上の推定血行動態パラメータ(14)を、前記推定パラメータをユーザ(6)に返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイス(5)に送付するステップ(52)を備えることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
何らかの相補情報を、推定パラメータおよび前記相補情報をユーザ(6)に返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイス(5)に送付するステップ(52)を備えることを特徴とする、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
記憶手段と、外界と通信する手段と、処理手段とを備える処理ユニット(4)であって、
−通信する手段は、外界から灌流イメージングによって取得された信号S(t)(15)を受信する能力をもち、
−記憶手段は、大域的拡散モデルを備え、前記モデルは、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と前記ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−ボクセル内の血液流量BFと、濃度C(t)と、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内での通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
を備え、
−処理手段は、請求項1から11に記載の血行動態灌流パラメータ(14)を推定する方法を実施するため適応していることを特徴とする、処理ユニット。
【請求項22】
記憶手段と、外界と通信する手段と、処理手段とを備える処理ユニットであって、
−通信する手段は、外界からデジタル灌流画像(12,13)を受信する能力をもち、
−記憶手段は、大域的拡散モデルを備え、前記モデルは、
−時間tに亘る灌流信号S(t)と前記ボクセル内を循環する造影剤の濃度C(t)との間の第1の関係と、
−濃度C(t)と、血液流量BFと、Θaをパラメータとする動脈入力関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルCa(t,Θa)と、ΘRをパラメータとするボクセル内での通過時間の相補累積分布関数のパラメトリックまたはセミパラメトリックモデルR(t,ΘR)との間の第2の関係と、
を備え、
−処理手段は、受信された灌流画像(12,13)から灌流信号S(t)を決定し、請求項1から11のいずれか一項に記載の1個または数個の血行動態灌流パラメータ(14)を推定する方法を実施するため適応していることを特徴とする、処理ユニット。
【請求項23】
記憶手段は、動脈入力関数Ca(t,Θa)のモデルのパラメータΘaの間に第3の関係Ψ(Θa)=0を含む大域的灌流モデルを備え、
前記処理手段は、請求項1から20のいずれか一項に記載の1個以上の血行動態灌流パラメータ(14)を推定するため適応していること、
を特徴とする、請求項21または22に記載の処理ユニット。
【請求項24】
通信する手段は、適切なフォーマットに従って1個以上の推定パラメータ(14)を、前記推定パラメータをユーザ(6)に返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイス(5)に送付する(52)ことを特徴とする、請求項21から23のいずれか一項に記載の処理ユニット。
【請求項25】
請求項21から24のいずれか一項に記載の処理ユニット(4)と、
請求項1から20のいずれか一項に記載され、前記処理ユニット(4)によって実施される方法によって1個以上の推定パラメータ(14)をユーザ(6)に返す能力のあるヒューマン・マシン・インターフェイス(5)と、
を備える灌流イメージング解析システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a−5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a−5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−528644(P2012−528644A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513657(P2012−513657)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051068
【国際公開番号】WO2010/139895
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(510139128)オレア メディカル エスアエス (2)
【氏名又は名称原語表記】OLEA MEDICAL SAS
【住所又は居所原語表記】93 avenue du Sorbier − Z.I ATHELIA IV − 13600 LA CIOTAT − FRANCE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051068
【国際公開番号】WO2010/139895
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(510139128)オレア メディカル エスアエス (2)
【氏名又は名称原語表記】OLEA MEDICAL SAS
【住所又は居所原語表記】93 avenue du Sorbier − Z.I ATHELIA IV − 13600 LA CIOTAT − FRANCE
【Fターム(参考)】
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