説明

大塊岩石破砕作業システム

【課題】岩石の破砕工程の上部篩いにおいて大塊岩石の詰まりによる閉塞状態を取り除く小割り作業を行う大塊岩石破砕作業システムを提供する。
【解決手段】大塊岩石破砕作業システムは、カメラ画像およびマイクロフォンによる流動音により岩石の流動状態の判別を行うとともに、破砕工程の上部篩いにおいて閉塞状態に至った場合は、篩いの閉塞状態をステレオビジョンにより撮像し、大塊岩石の3次元形状から大塊岩石の同定とモデル化を行い、大塊岩石のモデルによって大塊岩石を破砕する作業計画を作成し、作業計画に基づいて連続的に小割り作業を行い、篩いの閉塞状態を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱山における破砕プラントの岩石の破砕過程への投入口に設けられた篩いにおける大塊岩石の詰まりによる閉塞状態を解除するために、破砕プラントに設置された小割り機の自動運転を行う大塊岩石破砕作業システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
露天採掘鉱山においては、採掘場の下の岩盤内に空洞を掘削し、破砕プラントを設置している。採掘場では発破によって岩石を破砕するが、破砕粒度はある程度の分布を持ち、破砕プラントのクラッシャーに投入できない大塊が発生する。
【0003】
この大塊の岩石を処理するため破砕過程への投入口に鋼鉄製のビーム数本を平行に並べて篩いとし、ビーム間の間隔よりも大きな岩石がクラッシャーへ入ることを阻止している。大塊岩石とそれに伴う閉塞の解除のため、油圧駆動アームの先端に装着したブレーカにより大塊の破砕と移動を行う小割り機を設置している。小割り機の操作の多くは、モニタテレビ画面を見ながら操作員による遠隔操作によって行われている。
【0004】
従来におけるこの種の技術として、特許文献1に記載されている技術が公知である。特許文献1に記載されている「ブレーカ破砕作業支援方法」の発明では、位置決め作業を自動化するため、CCDカメラにより岩石の画像を取得し、取得した画像を画像処理装置で処理して、輝度情報から岩石の輪郭を抽出し、抽出した輪郭の画面中の最も中心に近い輪郭に対して図心を算出し、算出した図心と現在の画面中心との差分を算出し、算出した差分にフィードバックゲインを乗じて重機アームの制御量を算出し、算出した制御量によりアームアクチュエータを作動して、ブレーカ先端を対象とする岩石に位置決めする。これにより、オペレータは目標の岩石の上にブレーカ先端を移動するだけで、ブレーカ先端が自動的に位置決めされる。
【特許文献1】特開平8−165880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉱山の破砕プラントにおいて、破砕した岩石の流動閉塞状態の判別は、遠隔操作室において操作員がモニタ画面を目視して判断しているが、閉塞状態は間欠的に発生する。このため、遠隔操作室での監視作業は退屈な作業であり、自動化が切望されている。また、閉塞状態の解除のための小割り作業を行う小割り機の操作は、閉塞状態が生じている箇所をCCDカメラで撮影している画像を映し出したモニタ画面を見ながら行うが、モニタ画面では岩石の位置等の把握が困難であり、小割り機の操作は無駄な操作が多く、小割り作業の効率が低く、その効率化が望まれている。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、鉱山の破砕プラントにおける破砕工程の上部篩いにおいて大塊岩石の詰まりによる閉塞状態を取り除く小割り作業を効率よく行うことができる大塊岩石破砕作業システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような目的を達成するため、本発明による大塊岩石破砕作業システムは、基本的な構成として、坑道に設けられたカメラおよびマイクロフォンにより鉱石の流動状態の判別を行うとともに、坑道の破砕工程の上部篩いにおいて閉塞状態に至った場合は、篩いの閉塞状態をステレオビジョンにより撮像し、画像処理による大塊岩石の3次元形状から、大塊岩石の同定とモデル化を行い、大塊岩石のモデルによって大塊岩石を破砕する作業計画を作成し、作業計画に基づき連続的に小割り作業を行い、篩いの閉塞状態を解除するように、システムを構成する。
【0008】
具体的には、本発明による大塊岩石破砕作業システムは、岩石の破砕工程の上部篩いにおいて大塊岩石の詰まりによる閉塞状態を取り除くために大塊岩石の小割りまたは移動の作業を行う大塊岩石破砕作業システムであって、岩石が通過する篩いを撮像するカメラと、岩石の流動音を検出するマイクロフォンと、前記篩いに詰まった岩石を破砕または移動する小割り機と、前記カメラにより撮像された画像およびマイクロフォンにより検出された音信号により岩石の流動状態を判別する判別手段と、前記判別手段より岩石の流動状態が判別できない場合に、前記カメラにより撮像された画像の画像処理を行い、篩いを閉塞している岩石の同定とモデル化を行い、同定された岩石を破砕する作業計画を作成し、作成した作業計画に基づいて、前記小割り機を制御し、岩石の小割りまたは移動の作業を行い、篩いの閉塞状態を解除する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
この場合に、本発明による大塊岩石破砕作業システムにおいて、判別手段は、カメラによって一定時間間隔をもって撮像した画像を相互に比較することにより画像の時間変化を検出し、前記マイクロフォンによる流動音の音圧レベルを連続して検出し、画像と音圧に基づいて流動状態と閉塞状態の判別を行うように構成される。
【0010】
また、本発明の大塊岩石破砕作業システムにおいて、カメラは、ステレオビジョンであり、制御手段は、ステレオビジョンによって撮像された画像の画像処理を行い、3次元画像から篩い上の岩石の形状を計測し、閉塞の原因となっている大塊岩石を同定し、多角形近似によるモデル化を行い、モデル化されたモデルに基づいて破砕または移動の作業計画を作成し、作成した作業計画に基づいて、前記小割り機を制御し、岩石の小割りまたは移動の作業を行い、篩いの閉塞状態を解除するように構成される。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する大塊岩石破砕作業システムにおいては、カメラおよびマイクロフォンからの情報に基づいて流動状態判別し、閉塞状態に至ったときは閉塞解除のため、岩石形状モデルに基づく作業計画を生成し、作業計画に基づいて小割り機動作制御によって岩石の破砕および移動作業によって閉塞状態を解除するようにしているので、これにより、鉱山の破砕プラントにおける小割り作業を自動化でき、作業の自動化によって操作員の苦渋作業からの解放と作業の効率向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を一実施例に基づいて、図面を参照しながら説明する。図1は、大塊岩石破砕作業システムを設置する破砕プラントの小割り室の概略を説明する図であり、図2は、篩いの構造を説明する平面図である。図1において、11は岩石を破砕または移動するための小割り機、12は小割り機の先端部に設けられたブレーカ、13はCCDカメラ、14はマイクロフォン、15はコンピュータ、16は坑道の投入立坑下部、17は坑道のプラント上部、18は坑道に設けられた篩い、19は閉塞状態となった詰まりの岩石である。図2において、20は篩いの開口部、21は篩いを形成するビームである。
【0013】
図1に示すように、鉱山の破砕プラントにおいて、発破による破砕岩石は、投入対抗部下部16から投入されて、破砕プラント上部17へと自然落下して行く。岩石の流路に沿って途中に設置されている篩い18によって、篩い目よりも小さな岩石は篩い18を通過するが、篩い目よりも大きな岩石19は篩い18上に留まる。図2には、篩い部分を上方からみた図を示してしており、開口部20に数本のビーム21が設置され、篩いを形成している様子が示されている。
【0014】
篩い18の近くには、閉塞状態となった岩石の大塊を破砕するための小割り機11が設置されており、小割り機11のアームの先端に装着されたブレーカ12により、岩石の大塊を破砕または移動させる。本実施例の大塊岩石破砕作業システムにおいては、篩い18の部分を見とおす位置にCCDカメラ13を設置し、さらに岩石の流路の流動音を検出するためのマイクロフォン14を設置する。CCDカメラ13によって撮像される画像データ、マイクロフォン14により検出される流動音の音データは、プラント制御用のコンピュータ15に入力されるよう信号線に接続されており、コンピュータ15からの出力信号線が小割り機11に接続されて、小割り機11を操作する制御データが送出される。
【0015】
コンピュータ15により制御される小割り機11は、各関節には回転角度を検出するセンサ、各油圧アクチュエータには発生力または反力を検出する油圧センサが装着されており、これらのセンサにより検出される信号およびコンピュータ15から出力される制御データに基づいて、油圧アクチュエータの動作が制御される。これにより、小割り作業が実行される。
【0016】
本実施例の大塊岩石破砕作業システムにおいては、流動状態の判別には画像および音声のデータを用いたデータ処理が行われる。画像データの処理では、CCDカメラ13により一定時間ごとに撮像した画像に対して、時刻tに撮像した画像Iと時刻t−1に撮像した画像It−1の対応する画素間の差の絶対値を算出し、その総計が設定値以下であれば流動は静止状態にあると判定する。
【0017】
また、音データの処理では、マイクロフォン4によって捕集された破砕岩石流動音を強度に変換し、強度が設定値を下回る場合を流動は静止状態にあると判定する。画像による静止状態の判定と流動音による静止状態の判定が5分以上継続した時に、閉塞状態であると判別し、閉塞状態の解除のために岩石の破砕または移動の作業を実行する。
【0018】
前述した画像による流動状態の判別は、1台のCCDカメラ画像によって行うことができるが、閉塞状態を解除する破砕岩石を精度よく識別するためには、ステレオ画像を用いる。ステレオ画像を得るためには2台以上のカメラを用いる。撮像の際、2台のCCDカメラにより同時に撮像するステレオビジョンによって篩い上の岩石の3次元形状を得る。この3次元形状は篩い上の岩石堆積の表面形状であり、個別の岩石形状ではない。1つの岩石の3次元形状データは連続して分布しているので、得られた3次元形状に対してクラスター分析を適用し、個別の岩石を同定する。ある岩石として同定された3次元形状に対して凸包をもとめ、これをその岩石の多角形近似モデルとする。多角形モデルの最長径が篩い目よりも大きな岩石を大塊として操作の対象(小割りする対象の岩石)とする。これらの画像処理は、公知であり、ここでの説明は省略する。
【0019】
篩いにおける閉塞状態の解除は、大塊岩石の破砕または移動させることによって行う。まず、はじめに破砕または移動する岩石を選択する。篩い18面は小割り機側に傾斜しており、小割り機11の側の大塊を除去すると閉塞状態が解除されるので、例えば、最も小割り機11の側に位置する大塊岩石を選択する。
【0020】
ついで、加える操作、すなわち、破砕操作または移動操作を選択する。多角形モデルで最小径が篩い目よりも大きな岩石に対しては破砕操作を行い、最大径が篩い目の80%以下である岩石に対しては移動操作を行うことを選択する。
【0021】
破砕操作を行う際に、ブレーカ先端を岩石に押し当てる箇所は、破砕の効果に大きく影響し、効果的な破砕のためには岩石の中央部を打撃することが望ましい。打撃点の決定のために破砕対象岩石の多角形モデルを篩い面へ投影し、その2次元平面図の重心を打撃点として選択する。
【0022】
移動操作では岩石の最長径を篩いの2本のビームの間に移動させると、ビームの間から落下するので、多角形モデルの重心をビームの間に移動させるため、最長径の方向に垂直の方向で重心を通る直線が多角形の辺と交わる点を接触点として選択する。なお、移動操作を行っても落下しない場合は破砕対象の岩石として上記手順を実行する。
【0023】
このように、流動状態の判別、大塊岩石の判定、操作方法の決定および動作制御はコンピュータ5によって管理されており、流動状態の監視と閉塞状態の解除の操作は自動的連続的に行われる。
【0024】
図3は、本実施例の大塊岩石破砕作業システムにおける全体の処理フローを示すフローチャートである。図3にしたがって、岩石の流路の閉塞状態の解除の処理について説明する。ここでの処理では、CCDカメラにより撮影された画像での閉塞状態の検出処理(ステップ101)、流動音の音圧検出による閉塞状態の処理(ステップ102)を行い、閉塞状態となっているか否かを判定する(ステップ103)。閉塞状態となっていることが判定されると、次に、操作対象の岩石の選択の処理(ステップ104)、選択した岩石の形状についての最長径および最小径の算出処理(ステップ105)を行い、対象の岩石が破砕する岩石であるか移動する岩石であるかを判別(ステップ106)し、破砕する岩石であると判定された場合においては小割り機を制御して破砕する作業を行い(ステップ107)、移動する岩石であると判定された場合においては小割り機を制御して移動する作業を行う(ステップ108)、この作業の処理を繰り返すことにより、閉塞状態の解除を行う。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】大塊岩石破砕作業システムを設置する破砕プラントの小割り室の概略を説明する図である。
【図2】篩いの構造を説明する平面図である。
【図3】本実施例の大塊岩石破砕作業システムにおける全体の処理フローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
11 小割り機
12 ブレーカ
13 CCDカメラ
14 マイクロフォン
15 コンピュータ
16 投入立坑下部
17 プラント上部
18 篩い
19 岩石
20 篩いの開口部
21 ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩石の破砕工程の上部篩いにおいて大塊岩石の詰まりによる閉塞状態を取り除くために大塊岩石の小割りまたは移動の作業を行う大塊岩石破砕作業システムであって、
岩石が通過する篩いを撮像するカメラと、
岩石の流動音を検出するマイクロフォンと、
前記篩いに詰まった岩石を破砕または移動する小割り機と、
前記カメラにより撮像された画像およびマイクロフォンにより検出された音信号により岩石の流動状態を判別する判別手段と、
前記判別手段より岩石の流動状態が判別できない場合に、前記カメラにより撮像された画像の画像処理を行い、篩いを閉塞している岩石の同定とモデル化を行い、同定された岩石を破砕する作業計画を作成し、作成した作業計画に基づいて、前記小割り機を制御し、岩石の小割りまたは移動の作業を行い、篩いの閉塞状態を解除する制御手段と
を備えることを特徴とする大塊岩石破砕作業システム。
【請求項2】
請求項1に記載の大塊岩石破砕作業システムにおいて、
前記判別手段は、前記カメラによって一定時間間隔をもって撮像した画像を相互に比較することにより画像の時間変化を検出し、前記マイクロフォンによる流動音の音圧レベルを連続して検出し、画像と音圧に基づいて流動状態と閉塞状態の判別を行う
ことを特徴とする大塊岩石破砕作業システム。
【請求項3】
請求項1に記載の大塊岩石破砕作業システムにおいて、
前記カメラは、ステレオビジョンであり、
前記制御手段は、前記ステレオビジョンによって撮像された画像の画像処理を行い、3次元画像から篩い上の岩石の形状を計測し、閉塞の原因となっている大塊岩石を同定し、多角形近似によるモデル化を行い、モデル化されたモデルに基づいて破砕または移動の作業計画を作成し、作成した作業計画に基づいて、前記小割り機を制御し、岩石の小割りまたは移動の作業を行い、篩いの閉塞状態を解除する
ことを特徴とする大塊岩石破砕作業システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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