説明

大規模集積回路

【目的】全体に消費電力を低く抑えながらも高速動作を可能とし、且つ、回路の信頼性を下げない。
【構成】第1の供給電圧V1(例えば5[V])と第1の動作クロックCK1により動作する第1の回路部11と、上記第1の供給電圧より低電位の第2の電圧V2(例えば3[V])と第1の動作クロックCK1より周波数の高い第2の動作クロックCK2により動作する第2の回路部12とを1つの集積回路10上に設けるようにしたので、高速動作を要求される回路部(12)を低電圧駆動により実現する一方、それほど高速の動作を必要としない回路(11)に関しては信頼性を向上させるために低周波、高電圧駆動とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大規模集積回路に関し、特にゲートアレイ技術やスタンダードセル技術を用いたカスタムICに係る。
【0002】
【従来の技術】LSIの中でもゲートアレイ技術やスタンダードセル技術を用いたカスタムICに適用されるデジタル回路では、電源電圧を5[V]に設定したものが一般的であった。したがって、この5[V]の電源電圧を前提とした上で回路を高集積化、高速化するべく、日々開発が進んできた。
【0003】ところで、近年は携帯性を重視した電池電源のパーソナルコンピュータ等での使用を考慮して、消費電力のより低いLSIが要求されている。LSIの消費電力Wは一般に次の式、すなわち W=k・F・V2 …(1)(但し、k:定数、F:動作周波数、V:設計上の動作電圧。)
【0004】で表わされる。この(1)式からも明らかなように、設計上の動作電圧を下げることが消費電力の低下をはかる点で最も効果が大きい。そこで、電源電圧を5[V]より低い値、例えば電池電源に適した3[V]に設定してLSIを設計すれば、消費電力を低く抑えながら動作速度を高速化することが可能となる。これは、MOS−FETのチャネル幅を短くすることで、チャネルを移動する電子の距離が短くなり、トランジスタのスイッチングが高速になるためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら低い電源電圧でLSIを設計した場合、当然のことながらノイズに弱く、回路の信頼性が低いものとなってしまうという問題を生じる。
【0006】本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、全体に消費電力を低く抑えながらも高速動作を可能とし、且つ、信頼性の高い大規模集積回路を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用】すなわち本発明は、第1の供給電圧V1(例えば5[V])と第1の動作クロックCK1により動作する第1の回路部(またはメモリ)と、上記第1の供給電圧より低電位の第2の電圧V2(例えば3[V])と第1の動作クロックCK1より周波数の高い第2の動作クロックCK2により動作する第2の回路部(またはメモリ)とを1つの集積回路上に設けるようにしたもので、高速動作を要求される回路部を低電圧駆動により実現する一方、それほど高速の動作を必要としない回路に関しては信頼性を向上させるために低周波、高電圧駆動とすることで、全体に消費電力を低く抑えながらも高速動作を可能とし、且つ、回路の信頼性を下げることもない。
【0008】
【実施例】以下図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0009】図1は本発明の一実施例に係るチップ構成を示すもので、10がLSIチップである。このLSIチップ10内には、第1の電源電圧5[V]及びここでは図示しない第1の動作クロックが供給される第1の回路部11と、第2の電源電圧3[V]及びここでは図示しない第2の動作クロックが供給される第2の回路部12とが設けられる。これら第1の回路部11と第2の回路部12の間は必要に応じて接続されるもので、その際には両回路間の信号電圧の変換と同期を計る回路を第1の回路部11、第2の回路部12の少なくとも一方に配設される。
【0010】しかして、これら第1の回路部11、第2の回路部12は共に、供給される電圧値に応じてスタンダードセル技術あるいはゲートアレイ技術により設計されたものであり、したがって第2の回路部12の側の供給電圧の方が第1の回路部11の側の供給電圧より低いため、耐圧設計上、第2の回路部12の側の方がより高速動作が可能となる。
【0011】上記のような構成にあって、第1の回路部11に供給する動作クロックの周波数を低く、第2の回路部12に供給する動作クロックの周波数を高く設定して第1の回路部11と第2の回路部12の双方を動作させ、それぞれで外部との信号の送受を行なわせる。こうすることにより、電源電圧の低い第2の回路部12では高速の動作処理を、電源電圧の高い第1の回路部11では低速ながらも信頼性の高い動作処理をそれぞれ実行させて、第2の回路部12と第1の回路部11の双方の消費電力を低く抑え、結果としてLSIチップ10全体の消費電力を低く抑えることができる。次いで図2及び図3により上記図1の変形例を説明する。
【0012】図2は本発明の他の構成例を示すもので、上記図1の第2の回路部12に代えてメモリ14を配した場合を例示するものである。同図でLSIチップ10内には、第1の電源電圧5[V]及びここでは図示しない第1の動作クロックが供給される回路部13と、第2の電源電圧3[V]及びここでは図示しない第2の動作クロックが供給されるメモリ14とが設けられ、これら回路部13とメモリ14の間に信号電圧変換部15が配設される。
【0013】しかして、これら回路部13、メモリ14は共に、供給される電圧値に応じてスタンダードセル技術あるいはゲートアレイ技術により設計されたものであり、したがってメモリ14の側の供給電圧の方が回路部13の側の供給電圧より低いため、耐圧設計上、メモリ14の側の方がより高速動作が可能となる。
【0014】上記のような構成にあって、回路部13に供給する動作クロックの周波数を低く、メモリ14に供給する動作クロックの周波数を高く設定して回路部13とメモリ14の双方を動作させ、それぞれで外部との制御信号、データの送受を行なわせると共に、信号電圧変換部15により回路部13とメモリ14の間でデータの書込み/読出しを行なわせる。こうすることにより、電源電圧の低いメモリ14では高速の書込み/読出し処理を、電源電圧の高い回路部13では低速ながらも信頼性の高い動作処理をそれぞれ実行させて、メモリ14と回路部13の双方の消費電力を低く抑え、結果としてLSIチップ10全体としての消費電力を低く抑えることができる。
【0015】このような構成として、例えば回路部13をCPU、メモリ14をキャッシュメモリとすれば、高速キャッシュメモリを有した1チップのマイクロプロセッサを実現することができる。
【0016】また、上記図2とは反対に、メモリ14の側に高い電源電圧と低い周波数の動作クロックとを供給し、回路部13の側に低い電源電圧と高い周波数の動作クロックとを供給してそれぞれ動作させることも考えられるが、その説明は省略する。
【0017】図3は本発明の他の構成例を示すもので、上記図1の第1の回路部11、第2の回路部12に代えて第1のメモリ16、第2のメモリ17を配した場合を例示するものである。同図でLSIチップ10内には、第1の電源電圧5[V]及びここでは図示しない第1の動作クロックが供給される第1のメモリ16と、第2の電源電圧3[V]及びここでは図示しない第2の動作クロックが供給される第2のメモリ17とが独立して設けられる。
【0018】これら第1のメモリ16、第2のメモリ17は共に、供給される電圧値に応じてスタンダードセル技術あるいはゲートアレイ技術により設計されたものであり、したがって第2のメモリ17の側の供給電圧の方が第1のメモリ16の側の供給電圧より低いため、耐圧設計上、第2のメモリ17の側の方がより高速動作が可能となる。
【0019】上記のような構成にあって、第1のメモリ16に供給する動作クロックの周波数を低く、第2のメモリ17に供給する動作クロックの周波数を高く設定して回路部13とメモリ14の双方を動作させ、それぞれ独立して外部とのデータの書込み/読出しを行なわせる。こうすることにより、電源電圧の低い第2のメモリ17では高速のデータの書込み/読出し処理を、電源電圧の高い第1のメモリ16では低速ながらも信頼性の高いデータの書込み/読出し処理をそれぞれ実行させて、第1のメモリ16と第2のメモリ17の双方の消費電力を低く抑え、結果としてLSIチップ10全体としての消費電力を低く抑えることができる。
【0020】
【発明の効果】以上詳記した如く本発明によれば、第1の供給電圧V1(例えば5[V])と第1の動作クロックCK1により動作する第1の回路部(またはメモリ)と、上記第1の供給電圧より低電位の第2の電圧V2(例えば3[V])と第1の動作クロックCK1より周波数の高い第2の動作クロックCK2により動作する第2の回路部(またはメモリ)とを1つの集積回路上に設けるようにしたので、高速動作を要求される回路部を低電圧駆動により実現する一方、それほど高速の動作を必要としない回路に関しては信頼性を向上させるために低周波、高電圧駆動とすることで、全体に消費電力を低く抑えながらも高速動作を可能とし、且つ、回路の信頼性を下げることのない大規模集積回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るチップ構成を示すブロック図。
【図2】本発明の他の実施例に係るチップ構成を示すブロック図。
【図3】本発明の他の実施例に係るチップ構成を示すブロック図。
【符号の説明】
10…LSIチップ、11…第1の回路部、12…第2の回路部、13…回路部、14…メモリ、15…信号電圧変換部、16…第1のメモリ、17…第2のメモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の供給電圧V1と第1の動作クロックCK1により動作する第1の回路部と、前記第1の供給電圧より低電位の第2の電圧V2と第1の動作クロックCK1より周波数の高い第2の動作クロックCK2により動作する第2の回路部とを1つの集積回路上に設けたことを特徴とする大規模集積回路。
【請求項2】 前記第1の回路部と前記第2の回路部の間に信号電圧変換部を設けたことを特徴とする請求項1記載の大規模集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−152436
【公開日】平成5年(1993)6月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−314836
【出願日】平成3年(1991)11月28日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)