説明

大豆加工食品の製造方法

【課題】豆腐素材の風味が引き出され、しかも食感がソフトな大豆加工食品の製造方法を提供する。
【解決手段】豆腐100質量部と、粉末状大豆蛋白及び/又は全脂大豆粉とを10〜33質量部を混合することにより一次原料を得た後、該一次原料100質量部に対して、豆腐10〜350質量部を添加して、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存するように混合して二次原料を得た後、該二次原料を加熱処理する。これにより、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が存在し、新規な風味と食感を有する大豆加工食品を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐破材を有効活用した大豆加工食品に関し、さらに詳しくは、がんもどき等の大豆加工食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんもどきは、通常、脱水後の豆腐に山芋、野菜類、その他の食用原材料を混合し、成型・フライをすることにより製造されている(特許文献1参照)。そして、豆腐製造会社では、豆腐を製造する際に発生する豆腐破材を有効活用するために、発生した豆腐破材を脱水処理したものを、がんもどきの豆腐原料として使用している。
【0003】
このような従来のがんもどきにおいては、豆腐破材を有効利用しているものの、上記の混合原料が均一であり風味や食感の変化が乏しい。そして、このような豆腐破材を有効活用した大豆加工食品の風味や食感の改善については従来検討されていなかった。
【0004】
また、これとは別の課題として、豆腐の脱水処理は、例えば、豆腐に圧力をかけ、そのまま一晩放置して水分を除去する等、非常に時間と手間がかかる作業である。このため、何らかの方法により、脱水作業を効率化することも求められていた。一方で、脱水していない木綿豆腐を原料として使用して、柔らかいがんもどきを製造すると、フライの時(油で揚げる時)に生地が散るという問題点が生じていた(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−8656号公報
【特許文献2】特開2000−102358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、豆腐素材の風味が引き出され、しかも食感がソフトな大豆加工食品を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、豆腐及び大豆たん白を混合することにより一次原料を製造した後、得られた一次原料に、さらに豆腐を添加、混合して得られる二次原料を、がんもどき等の大豆加工食品の原料として使用することで、豆腐素材の風味が引き出され、しかも食感がソフトな大豆加工食品を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、豆腐として、従来がんもどきの製造が困難であった脱水処理をしていない豆腐、すなわち未脱水豆腐を用いることができるために、脱水処理が不要で生産性に優れ、また、水分が高い豆腐破材をそのまま用いることができる結果、歩留りを向上させることができることを見出した。具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1)本発明は、豆腐100質量部と、粉末状大豆蛋白及び/又は全脂大豆粉とを10〜33質量部を混合することにより一次原料を得た後、該一次原料100質量部に対して、豆腐10〜350質量部を添加して、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存するように混合して二次原料を得た後、該二次原料を加熱処理することを特徴する大豆加工食品の製造方法である。
【0009】
(2)また、本発明は、前記豆腐として未脱水豆腐を用いる(1)記載の大豆加工食品の製造方法である。
【0010】
(3)また、本発明は、前記一次原料が、さらに食用油を1〜30質量部混合して得られる(1)又は(2)に記載の大豆加工食品の製造方法である。
【0011】
(4)また、本発明は、前記一次原料が、さらに澱粉を1〜10質量部混合して得られる(1)から(3)のいずれかに記載の大豆加工食品の製造方法である。
【0012】
(5)また、本発明は、前記一次原料が、さらに凝固剤を0.1〜2質量部混合して得られる(1)から(4)のいずれかに記載の大豆加工食品の製造方法である。
【0013】
(6)また、本発明は、前記豆腐が、豆腐の製造時に発生する豆腐破材である(1)から(5)のいずれかに記載の大豆加工食品の製造方法である。
【0014】
(7)また、本発明は、豆腐100質量部と、粉末状大豆蛋白及び/又は全脂大豆粉とを10〜33質量部を混合することにより一次原料を得た後、該一次原料100質量部に対して、豆腐10〜350質量部を添加、混合して二次原料を得た後、該二次原料を加熱処理することにより得られることを特徴とする、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存した大豆加工食品である。
【0015】
(8)また、本発明は、前記豆腐が、未脱水豆腐である(7)に記載の大豆加工食品である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の大豆加工食品及びその製造方法によると、原料を一度に混合するのではなく、予め混合した一次原料に対して、さらに豆腐を混合して二次原料を製造するので、得られる大豆加工食品中に豆腐の塊を残存させることができる。このため、素材の風味が引き出され、しかも食感がソフトとなり、新規な風味と食感を呈する大豆加工食品を製造することができる。
【0017】
また、未脱水豆腐を原料として使用しているにもかかわらず、油で揚げる時に散りがなく、さらに、豆腐を製造する際に発生する豆腐破材を、脱水処理をしないで、そのまま大豆加工食品の原料として使用することもできる。使用する原料豆腐の脱水処理が不要となるので、大豆加工食品の生産性を向上させることができる。また、脱水処理した豆腐、すわなち、脱水豆腐を原料として使用した場合と比較して、大豆加工食品の歩留まりを高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一例である、二段混合によるがんもどきの製造フローを示す図である。
【図2】一段混合によるがんもどきの製造フローの一例を示す図である。
【図3】実施例における二次原料中の豆腐の塊の存在を示す図であり(ロット1)、(a)は写真、(b)は(a)の塊の輪郭をトレースした図である。
【図4】実施例における二次原料中の豆腐の塊の存在を示す図であり(ロット2)、(a)は写真、(b)は(a)の塊の輪郭をトレースした図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の大豆加工食品の製造方法について説明する。
【0020】
<一次原料>
本発明の製造方法は、まず、豆腐100質量部と、粉末状大豆蛋白及び/又は全脂大豆粉10〜33質量部、好ましくは15〜30質量部、より好ましくは15〜25質量部とを混合することにより一次原料を得る。
【0021】
<豆腐>
一次原料に用いる豆腐としては、木綿豆腐や絹ごし豆腐のいずれも使用することができ、豆腐を製造する際に発生する豆腐破材も使用することができる。ここで、豆腐破材とは、豆腐の製造工程で、形状がくずれて商品価値がなくなった豆腐や、豆腐を切断したときに発生する切れ残り部分のことをいう。豆腐は、そのまま使用することもできるが、予めカッターミキサーで練ったものも使用することができる。
【0022】
本発明においては、従来技術において説明したような脱水豆腐を用いることもできるが、未脱水豆腐を用いることができる点が大きな特徴である。これにより、脱水処理工程を省くことができるので、生産性を向上させることができ、また、得られる大豆加工食品の歩留まりを高くすることができる。ここで、未脱水豆腐として、豆腐破材や市販品の豆腐を使用することができるが、豆腐破材や市販品の豆腐の多くは、その水分含量は85〜90質量%である。また、脱水豆腐は、豆腐破材や市販品の豆腐を脱水処理することにより得られるものであれば良く、その水分含量は、脱水処理の条件によっても異なってくるが、例えば、水分含量86質量%の豆腐を、脱水処理(全重量の約25質量%に相当する水分を除去)することにより得られる水分含量約81質量%の脱水処理豆腐を使用することができる。なお、一次原料には、適宜水を配合することで、製造時のハンドリングをより向上させたり、得られる大豆加工食品の食感をよりソフトにしたりすることができる。
【0023】
<粉末状大豆蛋白及び/又は全脂大豆粉>
一次原料は、豆腐と粉末状大豆蛋白及び/又は全脂大豆粉を混合することにより得られるが、粉末状大豆蛋白及び/又は全脂大豆粉の量は、豆腐100質量部に対して、10〜33質量部であり、15〜30質量部であることが好ましく、15〜25質量部であることがより好ましい。粉末状大豆蛋白及び全脂大豆粉の含量が、この範囲よりも少ない量であると、生地に保形性がなく、フライ時に散りが生じてしまい、一方、この範囲よりも多い量であると、大豆臭が強くなってしまう傾向があるからである。また、粉末状大豆蛋白と全脂大豆粉は、それぞれ単独で使用することができるが、粉末状大豆蛋白と全脂大豆粉を併用すると風味の点でより好ましく、その配合の質量比は、7/3〜9/1であることが好ましい。
【0024】
粉末状大豆蛋白としては、例えば、粉末状分離大豆蛋白、粉末状濃縮大豆蛋白、粉末状抽出大豆蛋白、粉末状酵素分解大豆蛋白等が挙げられる。これら粉末状大豆蛋白は、市販品を使用することができ、例えば、日清オイリオグループ(株)製の粉末状分離大豆蛋白(商品名:ソルピー4000)、粉末状酵素分解大豆蛋白(商品名:ソルピー1500)等が挙げられる。
【0025】
また、全脂大豆粉は、製造時における加熱状態によって、生全脂大豆粉から加熱脱臭全脂大豆粉等種々のものがあり、これらを利用することができる。生全脂大豆粉は、乾燥大豆を脱皮処理後、乾燥し、粉砕処理することにより製造することができる。また、加熱脱臭全脂大豆粉は、乾燥大豆(原料)を脱皮処理後、加熱脱臭処理し、その後乾燥し、粉砕処理することにより製造することができる。市販の加熱脱臭全脂大豆粉としては、例えば、日清オイリオグループ(株)製の商品アルファプラスHS−600が挙げられ、市販の生全脂大豆粉としては、例えば、日清オイリオグループ(株)製の商品ソーヤフラワーNSAが挙げられる。
【0026】
<食用油>
一次原料には、食用油を配合することもできる。食用油を配合する場合、その配合量は、豆腐100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましく、15〜20質量部であることが最も好ましい。かかる範囲であると、得られる大豆加工食品の食感がより滑らかになるからである。
【0027】
食用油としては、20℃で液状の植物油を使用することが好ましく、具体的には、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ブドウ種油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米糠油、及び小麦胚芽油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらは、市販品を使用することができる。
【0028】
<澱粉>
また、一次原料には、澱粉を配合することもできる。澱粉を配合する場合、その配合量は、豆腐100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部であることがより好ましく、2〜6質量部であることが最も好ましい。かかる範囲であると、得られる大豆加工食品の食感がよりソフトになるからである。
澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、甘薯澱粉、及びこれら澱粉の加工澱粉等が挙げられ、加工澱粉としては、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、リン酸架橋澱粉等が挙げられる。これらは、市販品を使用することができる。
【0029】
<凝固剤>
また、一次原料には、凝固剤を配合することもできる。凝固剤としては、塩化マグネシウム、にがり(粗製海水塩化マグネシウム)、硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトン等を使用することができる。凝固剤としてにがりを配合する場合、その配合量は、豆腐100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましく、0.5〜2質量部であることがより好ましく、0.5〜1.5質量部であることが最も好ましい。かかる範囲であると、原料生地の保形性やハンドリング性がより向上するからである。
【0030】
<その他の一次原料>
一次原料には、砂糖、キシロース、塩、香辛料、かつおぶしエキス、こんぶエキス、魚貝エキス、発酵調味液、グルタミン酸ナトリウム等の調味料を適宜配合することができる。また、一次原料には、野菜、肉類、魚貝類等の具材、具体的には、にんじん、玉ねぎ、ねぎ、生姜、しいたけ、ごぼう、山芋、ひじき、枝豆、グリンピース、コーン、昆布、ごま、ゆりね、たけのこ、青のり、わらび、やまくらげ、キャベツ、れんこん、さやいんげん、ゆば、わかめ、もち、牛肉、豚肉、鶏肉、卵、カニ、エビ、タコ、イカ、貝等の具材を適宜配合することができる。また、一次原料には、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、増粘剤、膨張剤、着色料、保存料等を適宜配合することができ、ハンドリングをより向上させ、食感をより滑らかにするために、水を加えることもできる。
【0031】
一次原料の混合は、フードカッター、サイレントカッター、ステファンカッター、真空ボールカッター、カッターミキサー、クイジナート、ケンウッドミキサー、スパイラルミキサー、リボンミキサー、擂潰機、石臼、ニーダー、がんも練り機等の機械を用いて行うことができる。一次原料の混合は、粉末状大豆蛋白、全脂大豆粉を豆腐へ均一混合させるために、原料豆腐の塊がなくなるまで行うのが好ましい。
【0032】
<二次原料>
次に、本発明の製造方法では、得られた一次原料100質量部に対して、豆腐を10〜350質量部、好ましくは20〜300質量部、より好ましくは30〜250質量部、最も好ましくは70〜150質量部添加し、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存するように混合して二次原料(生地)を得る。このような二段混合により得られた二次原料には、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が存在している。添加する豆腐の配合量が、この範囲より少ないと、うまく豆腐素材の風味が引き出すことができず、一方、この範囲より多いと、二次原料に保形性がなく、油で揚げる時に散りが発生してしまうからである。使用する豆腐としては、先の一次原料で説明をした豆腐を使用することができ、使用する豆腐は、脱水処理したものでよいが、脱水処理をしていないもの(未脱水豆腐)がより好ましい。さらに、二次原料には、適宜水を配合することで、製造時のハンドリングをより向上させたり、得られる大豆加工食品の食感をよりソフトにしたりすることができる。
【0033】
二次原料には、砂糖、キシロース、塩、香辛料、かつおぶしエキス、こんぶエキス、魚貝エキス、発酵調味液、グルタミン酸ナトリウム等の調味料を適宜配合することができる。また、二次原料には、野菜、肉類、甲殻類、貝類等の具材、具体的には、にんじん、玉ねぎ、ねぎ、生姜、しいたけ、ごぼう、山芋、ひじき、枝豆、グリンピース、コーン、昆布、ごま、ゆりね、たけのこ、青のり、わらび、やまくらげ、キャベツ、れんこん、さやいんげん、ゆば、わかめ、もち、牛肉、豚肉、鶏肉、卵、カニ、エビ、貝等の具材を適宜配合することができる。また、二次原料には、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、増粘剤、膨張剤、着色料、保存料等を適宜配合することができ、ハンドリングをより向上させ、食感をより滑らかにするために、水を加えることもできる。
【0034】
二次原料の混合は、手混合や、上記の一次原料の混合と同じ機械を用いて行うことができる。ただし、これらの機械を使用して二次原料を混合する場合であっても、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存するように混合時間、撹拌強度を調整することが重要である。このように、不均一な大きさの豆腐を残存させることで、食感及び風味の良好な大豆加工食品を得ることができる。例えば、カッターミキサー等で一次混合と同様に、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存しなくなるまで均一混合をしてしまうと、豆腐素材の風味をうまく引き出すことができず、単調な食感となってしまう。
【0035】
ここで、二次原料中の直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊は、例えば、二次原料を15g採取し、水に漬けた金属ザル(目の内径0.1cm四方)の上に載せて振とうすると、金属ザルの目より小さいものが金属ザル外の水中へ出るので、豆腐の塊が金属ザルの上に残り、その大きさを測定することによって確認することができる。また、二次原料中の塊の直径を、定規等を使って直接測定することもできる。なお、直径とは塊の最大径を意味する。
【0036】
<大豆加工食品>
次に、本発明の製造方法は、得られた上記二次混合原料を、球状や円柱形、直方体等の所定形状に成形後に、加熱処理する。加熱処理の方法は、特に限定されず、例えば、焼く、蒸す、又は油で揚げるという一段加熱の方法や、120〜140℃の低温の油で揚げた後、150〜160℃の高温の油で再度揚げるという二段加熱でもよい。また、二段加熱は、120〜170℃の油で揚げた後、焼いたり蒸したりしてもよいし、また、蒸した後、120〜170℃の油で揚げてもよい。
【0037】
本発明の製造方法により得られた大豆加工食品としては、具体的には、がんもどき、ひりゅうず等が挙げられる。そして、本発明の大豆加工食品中には、上記二次原料と同じく、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が存在し、一次原料由来の部分と、二次原料で添加した豆腐由来の塊部分とが相俟って、従来ない独特の風味と食感を呈するものである。なお、大豆加工食品中の直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊は、食品を切断したときの断面に現れた豆腐の塊の直径を、定規等で直接測定することにより確認することができる。直径とは塊の最大径を意味する。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施例1:二段混合によるがんもどきの製造〕
下記の原料を表1の配合例に示す割合で使用して、図1の製造フローに従い、がんもどきの製造を行った。まず、未脱水豆腐をフードカッターに投入し、20秒間撹拌しペースト化した。その後、大豆蛋白、全脂大豆粉、澱粉、砂糖、グルタミン酸ナトリウムを投入し、フードカッターでさらに30秒間混合した。次いで食用油を投入し、さらに1分30秒間混合した。最後に、にがりを加えて10秒間混合し、一次原料を得た。得られた一次原料を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊は残存していなかった。
(使用した原料)
未脱水絹ごし豆腐:市販品、水分含量86.6質量%
未脱水木綿豆腐:市販品、水分含量86.2質量%
大豆蛋白:粉末状分離大豆たん白(商品名:ソルピー4000、日清オイリオグループ(株)製)
全脂大豆粉:商品名:アルファプラスHS−600、日清オイリオグループ(株)製
食用油:キャノーラ油(商品名:日清キャノーラ油、日清オイリオグループ(株)製)
馬鈴薯澱粉、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、凝固剤(にがり):市販品
【0039】
次に、表2に示す配合、すなわち、一次原料100質量部、及び未脱水豆腐100質量部をまな板の上に置き、ヘラで豆腐の塊が残るように混合し二次原料を得た(実施例1)。得られた二次原料を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
得られた二次原料を、がんもどきの円柱型(直径6cm、厚さ2.5cm)に入れて成形し、成形したものを130℃の油で6分間揚げた後、160℃の油で2分間揚げるという二段加熱を行い、実施例1のがんもどき(直径6cm、厚さ3cm)を得た。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
〔比較例1〜3:一段混合によるがんもどきの製造〕
図2の製造フローに従い、表3に示す配合の原料を使用して、がんもどきの製造を行った。未脱水豆腐、大豆蛋白、全脂大豆粉、澱粉、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、食用油を、フードカッターに投入後、3分間撹拌混合した。その後、にがりを投入し10秒間混合し、混合原料を得た。比較例1〜3のがんもどきの混合原料を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊は残存していなかった。
【0043】
得られた混合原料を、がんもどきの円柱型(直径6cm、厚さ2.5cm)に入れて成形し、成形したものを130℃の油で6分間揚げた後、160℃の油で2分間揚げるという二段加熱を行い、がんもどきを得た。
【0044】
【表3】

【0045】
<がんもどきの評価試験>
実施例1と、比較例1〜3のがんもどきについて、二次原料又は混合原料の保形性、揚げた時の様子、がんもどきの風味、がんもどきの食感についてそれぞれ評価した。その結果を表4に示す。表4からわかるように、本発明の実施例1(二段混合による製造品)のがんもどきは、風味、食感共に、比較例1〜3(一段混合による製造品)のがんもどきに比べて優れており、新規な風味と食感を備えるがんもどきが得られていることがわかる。また、得られたがんもどきを、包丁で厚さ方向に切ってその断面を目視観察したところ、実施例1のがんもどきには直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していたが、比較例1〜3のがんもどきには直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していなかった。
【0046】
【表4】

【0047】
〔実施例2〜5:二段混合によるがんもどきの製造〕
豆腐として未脱水木綿豆腐を使用し、豆腐に対する大豆蛋白及び全脂大豆粉の配合量を変化させたものについて、実施例1と同様にしてがんもどきを製造した(実施例2〜5)。実施例2〜5のがんもどきの一次原料を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊は残存しておらず、二次原料には直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
〔がんもどきの評価試験〕
実施例2〜5のがんもどきについて、二次原料の保形性、揚げた時の様子、がんもどきの風味、がんもどきの食感についてそれぞれ評価した。その結果を表9に示す。表9からわかるように、本発明の実施例2〜5(二段混合による製造品)のがんもどきは、風味、食感共に、先に記載した比較例1〜3(一段混合による製造品)のがんもどきに比べて優れており、新規な風味と食感を備えるがんもどきが得られていることがわかる。そして、大豆蛋白と全脂大豆粉の割合を調整することで、二次原料の保形性や得られるがんもどきの風味、食感を調整できることがわかる。実施例2〜5のがんもどきにおける二次原料の保形性、風味、及び食感を総合評価すると、実施例3のがんもどきが、最も優れていた。また、実施例2〜5のがんもどきを、包丁で厚さ方向に切ってその断面を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
【0053】
【表9】

【0054】
<豆腐の塊の大きさ測定試験>
実施例3について、二次原料中及びがんもどきの断面の豆腐の塊の大きさを、以下の方法で測定した。
・二次原料中の豆腐の塊の大きさ測定
実施例3について、得られた二次原料を15g量取り、水に漬けた金属ザル(目の内径0.1cm四方)の上に載せて振とうし、金属ザルの上に残った豆腐の塊の大きさを測定したところ、大きい順に下記の大きさの二次原料由来豆腐の塊が確認できた。測定は、ロット1、ロット2の2回行った。その結果を下記、図3(ロット1)、及び図4(ロット2)に示す。この測定結果から、二次原料中には直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していることが確認できた。なお、直径とは塊の最大径を意味する。
ロット1:金属ザルの上に残っていた豆腐の塊の直径
1.8cm/1.5cm/1.0cm/0.8cm/0.7〜0.2cm
ロット2:金属ザルの上に残っていた豆腐の塊の直径
2.5cm/2.2cm/1.8cm/1.5cm/1.3cm/1.0cm/0.8cm/0.7〜0.2cm
【0055】
・がんもどきの断面の豆腐の塊の大きさ測定
実施例3のがんもどき(直径6cm、厚さ3cm)、及び実施例3のがんもどきの二段加熱処理の部分を、90℃20分間の蒸し加熱処理に変更して製造したがんもどき(実施例3(蒸し加熱)、直径7cm、厚さ2cm)について、断面の豆腐の塊の大きさを測定した。各かんもどきを、包丁で厚さ方向に切り、その断面に存在していた比較的大きい豆腐の塊について、その直径を定規で測定し数を数えた。塊の直径及びその数を表10に示す。表10の結果から、がんもどき中にも直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していることがわかる。なお、直径とは塊の最大径を意味する。
【0056】
【表10】

【0057】
〔比較例4〜6:二段混合によるがんもどきの製造〕
豆腐として未脱水木綿豆腐を使用し、大豆蛋白及び全脂大豆粉を配合しないもの(比較例4)、豆腐に対する大豆蛋白及び全脂大豆粉の配合量が少ないもの(比較例5)、及び多いもの(比較例6)について、実施例1と同様にしてがんもどきを製造した。比較例4〜6のがんもどきの一次原料を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊は残存しておらず、二次原料には直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
【0058】
【表11】

【0059】
【表12】

【0060】
〔がんもどきの評価試験〕
比較例4〜6のがんもどきについて、二次原料の保形性、揚げた時の様子、がんもどきの風味、がんもどきの食感についてそれぞれ評価した。その結果を表13に示す。表13からわかるように、大豆蛋白及び全脂大豆粉を配合しないもの(比較例4)、豆腐100質量部に対する大豆蛋白及び全脂大豆粉の配合量8.8質量部のもの(比較例5)は、保形成がないので、がんもどきの製造ができず、また、豆腐100質量部に対する大豆蛋白及び全脂大豆粉の配合量が36.0質量部もの(比較例6)は、二次原料の保形成及び揚げたときの様子については良好であったが、風味、及び食感が悪かった。なお、比較例6のがんもどきを、包丁で厚さ方向に切ってその断面を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
【0061】
先に説明をした実施例2〜5の結果と、今回の比較例4〜6の結果から、一次原料を製造する際に配合する大豆蛋白及び/又は全脂大豆粉の量は、豆腐100質量部に対して、10質量部以上33質量部以下であると好ましいことがわかる。
【0062】
【表13】

【0063】
〔実施例6〜8:二段混合によるがんもどきの製造〕
豆腐として未脱水絹ごし豆腐を使用し、豆腐に対する大豆蛋白及び全脂大豆粉の配合量を変化させたものについて、実施例1と同様にしてがんもどきを製造した(実施例6〜8)。実施例6〜8のがんもどきの一次原料を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊は残存しておらず、二次原料には直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
【0064】
【表14】

【0065】
【表15】

【0066】
〔がんもどきの評価試験〕
実施例6〜8のがんもどきについて、二次原料の保形性、揚げた時の様子、がんもどきの風味、がんもどきの食感についてそれぞれ評価した。その結果を表16に示す。表16からわかるように、本発明の実施例6〜8(二段混合による製造品)のがんもどきは、風味、食感共に、先に記載した比較例1〜3(一段混合による製造品)のがんもどきに比べて優れており、新規な風味と食感を備えるがんもどきが得られていることがわかる。そして、大豆蛋白と全脂大豆粉の割合を調整することで、二次原料の保形性や得られるがんもどきの風味、食感を調整できることがわかる。実施例6〜8のがんもどきにおける二次原料の保形性、風味、及び食感を総合評価すると、実施例8のがんもどきが、最も優れていた。また、実施例6〜8のがんもどきを、包丁で厚さ方向に切ってその断面を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
【0067】
【表16】

【0068】
〔実施例9〜12、実施例1、比較例7:二段混合によるがんもどきの製造〕
一次原料とそれに追加する未脱水豆腐との配合量割合を変化させたものについて、実施例1(一次原料100質量部、未脱水豆腐100質量部)と同様にしてがんもどきを製造した(実施例9〜12、及び比較例7)。実施例9〜12、及び比較例7のがんもどきの一次原料を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊は残存していなかった。また、実施例9〜12、及び比較例7のがんもどきの二次原料を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。なお、実施例1のがんもどきの配合及び製造方法は、先に記載した実施例1と同じである。
【0069】
【表17】

【0070】
【表18】

【0071】
【表19】

【0072】
【表20】

【0073】
〔がんもどきの評価試験〕
実施例9〜12、実施例1、及び比較例7のがんもどきについて、二次原料の保形性、揚げた時の様子、がんもどきの風味、がんもどきの食感についてそれぞれ評価した。その結果を表21、表22に示す。表21、表22からわかるように、一次原料100質量部に対して、二次原料製造のために追加する豆腐の量は、本発明の範囲内である20質量部〜300質量部の間が好ましいことがわかる。実施例9〜12、及び実施例1のがんもどきにおける二次原料の保形性、風味、及び食感を総合評価すると、実施例1のがんもどき(一次原料100質量部、未脱水豆腐100質量部)が、最も優れていた。また、実施例9〜12、実施例1、及び比較例7のがんもどきを、包丁で厚さ方向に切ってその断面を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
【0074】
【表21】

【0075】
【表22】

【0076】
〔実施例13、14:食用油、又は澱粉を配合していない二段混合によるがんもどきの製造〕
実施例1の配合を基に、食用油脂を配合していないがんもどき(実施例13)、及び澱粉を配合していないがんもどき(実施例14)について、実施例1と同様にして製造した。実施例13、14のがんもどきの一次原料を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊は残存しておらず、二次原料には直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
【0077】
【表23】

【0078】
【表24】

【0079】
〔がんもどきの評価試験〕
実施例13、14のがんもどきについて、二次原料の保形性、揚げた時の様子、がんもどきの風味、がんもどきの食感についてそれぞれ評価した。その結果を表25に示す。表25からわかるように、食用油、又は澱粉を配合しなくても、豆腐素材の風味が引き出され、ソフト感のあるがんもどきを製造することができた。また、実施例13、14のがんもどきを、包丁で厚さ方向に切ってその断面を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
【0080】
【表25】

【0081】
〔実施例15、16:脱水豆腐を使用した二段混合によるがんもどきの製造〕
原料豆腐として、豆腐の全質量の10質量%に相当する量の水を脱水した豆腐(10質量%脱水豆腐、実施例15)、及び豆腐の全質量の20質量%に相当する量の水を脱水した豆腐(20質量%脱水豆腐、実施例16)を使用したものについて、実施例1と同様にしてがんもどきを製造した。実施例15、16のがんもどきの一次原料を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊は残存しておらず、二次原料には直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
【0082】
【表26】

【0083】
【表27】

【0084】
〔がんもどきの評価試験〕
実施例15、16のがんもどきについて、二次原料の保形性、揚げた時の様子、がんもどきの風味、がんもどきの食感についてそれぞれ評価した。その結果を表28に示す。表28からわかるように、原料として脱水豆腐を使用した場合でも、豆腐素材の風味が引き出され、ソフト感のあるがんもどきを製造することができたが、豆腐のみずみずしさ、口溶け、ソフト感の点では、未脱水豆腐を使用した方が優れていた。また、実施例15、16のがんもどきを、包丁で厚さ方向に切ってその断面を目視観察したところ、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存していた。
【0085】
【表28】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の大豆加工食品の製造方法は、食品分野において利用することができ、特に、豆腐を製造する際に発生する豆腐破材を有効活用するために利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆腐100質量部と、粉末状大豆蛋白及び/又は全脂大豆粉とを10〜33質量部を混合することにより一次原料を得た後、該一次原料100質量部に対して、豆腐10〜350質量部を添加して、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存するように混合して二次原料を得た後、該二次原料を加熱処理することを特徴する大豆加工食品の製造方法。
【請求項2】
前記豆腐として、未脱水豆腐を用いる請求項1記載の大豆加工食品の製造方法。
【請求項3】
前記一次原料が、さらに食用油を1〜30質量部混合して得られる請求項1又は2に記載の大豆加工食品の製造方法。
【請求項4】
前記一次原料が、さらに澱粉を1〜10質量部混合して得られる請求項1から3のいずれかに記載の大豆加工食品の製造方法。
【請求項5】
前記一次原料が、さらに凝固剤を0.1〜2質量部混合して得られる請求項1から4のいずれかに記載の大豆加工食品の製造方法。
【請求項6】
前記豆腐が、豆腐の製造時に発生する豆腐破材である請求項1から5のいずれかに記載の大豆加工食品の製造方法。
【請求項7】
豆腐100質量部と、粉末状大豆蛋白及び/又は全脂大豆粉とを10〜33質量部を混合することにより一次原料を得た後、該一次原料100質量部に対して、豆腐10〜350質量部を添加、混合して二次原料を得た後、該二次原料を加熱処理することにより得られることを特徴とする、直径0.3cm〜3cmの豆腐の塊が残存した大豆加工食品。
【請求項8】
前記豆腐が、未脱水豆腐である請求項7記載の大豆加工食品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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