説明

大豆粉の製造法

【課題】 大豆を微粉末として作成して、その微粉末を有効に利用し得るようにするために、超低温で凍結させた状態で微粉末とし、加熱処理することで水分を分離した微粉末を容易に得ることを可能にする。
【解決手段】 大豆に十分に吸水させた状態で、超低温で凍結させてから、微粉砕する処理を施して微粉末を作成し、その後に、耐圧容器に入れて加熱し、蒸発したのを吸引して分離し、大豆の微粉末を熱処理した状態で回収する。そして、前述したようにして作成した大豆の微粉末は、豆腐や他の加工食品の原料として利用可能となり、特に、豆腐状の加工食品の原料として用いる場合に、その加熱時間を短くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆を加工して脱脂し、加熱処理した状態の微粉末を製造し、その大豆の微粉末を豆腐等の食品の製造に供し得るようにする、大豆粉の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に大豆を粉末化して、食品の加工原料として供給すること、特に、大豆の粉を用いて、豆腐を製造する例としては、例えば、特開2003−250478号公報に示されるような例がある。この従来例においては、脱脂大豆を粉にしたものを主原料として用い、野菜や魚の他に、任意のミネラル成分等を加えて、水を加えて加熱したものにニガリのような凝固材を添加して、豆腐または豆腐様の製品を製造することが開示されている。
【特許文献1】特開2003−250478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記従来例にも開示されているように、大豆等を微粉末状に粉砕処理して製造した粉は、それを食品として加工する際には、比較的長い時間をかけて加熱処理を行う必要がある。また、そのままの粉の状態で食用に供し得るように、大豆の粉を得ようとする場合には、その原料となる穀物を粒として加工した後で、加熱処理することが必要である。したがって、製粉された粉を加熱処理することと、加熱した穀物の粒を製粉することの、いずれの加工方法を用いる場合でも、比較的手間を多く掛けることが必要で、比較的面倒な処理工程を経て処理することが要求される。
【0004】
本発明は、大豆を微粉末として加工するに際して、水分を添加して十分に給水させてから低温に処理し、凍った大豆と氷とを一緒に微粉砕することで、粉砕処理の能率を向上させ、その後に高温で減圧した環境の下で、水分と油分を蒸発処理するとともに、短時間で微粉末の加熱処理を行う手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、大豆の粉の製造に関するもので、
請求項1の発明は、大豆を水に浸漬して、発芽する温度で発芽が始まるまで保管する保管工程と、
前記大豆の発芽が始まった状態で、大豆に付着した水を残して、余分な水分を除去するとともに、低温の環境下で大豆を凍らせる凍結処理工程と、
前記凍結処理した大豆を微粉末状として粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程を経て、微粉末化された大豆を容器に収容して、減圧しながら加熱する加熱処理工程と、を経て、
前記容器内で加熱処理された大豆の粉を、微粉末として取り出すことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、前記大豆を水に浸漬する際には、水にゲルマニウムイオン、バナジュームイオン、もしくは人が摂取可能で、各種の有効なミネラル成分を溶解した水を用い、大豆に水分とともに前記各種のミネラル成分の豊富な環境で発芽させる処理を行い、
前記大豆を発芽させるとともに、大豆に浸透させた水分とともに、前記ミネラル成分を含ませることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、前記大豆を凍結処理してから粉砕する工程では、大豆に含ませた水分とともに、その表面に水分を付着させたままで、
大豆の内部に浸透した水分とその他の水分とが、水に溶解されたミネラル成分とともに凍結され、
前記水分の凍ったものの微粉末状とされた小さな塊の尖った部分が、大豆を削るような作用を行うとともに、粉砕された塊が互いに削り合うようにして、微粉末化する作用を促進することを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、前記微粉末状に粉砕する前記粉砕工程を経て、微粉末化された大豆を容器に収容して、減圧しながら加熱する加熱処理工程において、
前記容器内で加熱することにより、大豆の微粉末を短時間で熱処理するとともに、真空吸引されることで、微粉末と共存していた水分と大豆の油成分とが大豆の固形成分から分離されて、気体成分として容器から排出させ、
前記容器から取り出して常温常圧に戻した状態では、加熱処理が終了して乾燥された大豆の微粉末が得られることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、前記大豆を水に浸漬する工程において、発芽させるに十分な温度よりも高い温度で大豆に水を含ませる処理を行い、
前記水分とともにミネラル成分を付着させるとともに、大豆の粒の中にも前記浸漬させたミネラル成分と水分とを含ませ、前記大豆の表面に水分が付着した状態で凍結させる処理を行い、
凍結処理した大豆を、低温の環境で微粉砕する処理を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、前記微粉末を作成する原料として脱脂大豆を用いて、前記大豆原料を水に浸漬して吸水させた状態で、冷凍・粉砕処理する工程から、
微粉末化された大豆を容器に収容して、減圧しながら加熱する加熱処理工程を経て、
前記容器内で加熱することにより、脱脂大豆の微粉末を短時間で熱処理するとともに、真空吸引させることで、微粉末と共存していた水分を固形成分から分離して、気体成分として容器から排出させて、微粉末のみを回収することを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、前記油成分と水分とを分離した状態で、微粉末として回収された大豆の粉は、前記浸漬した水に含まれたミネラル成分を多量に含む粉末であり、
さらに、必要に応じて食品として有効に作用するミネラル成分を強化して、食品加工用の原料として、市場に供給することを特徴とする。
【0012】
請求項8の発明は、前記容器から大豆の微粉末を残して分離された気体成分は、凝縮部を通して水分と大豆油成分とを含む液体成分として回収され、
前記回収された液体成分から水分を分離する処理を行うことで、大豆油成分を分離回収することを特徴とする。
【0013】
前述したようにして、−30℃〜−50℃の超低温の環境の下で、凍結させる処理を行った大豆を、その表面に付着した水と、内部に浸透した水分とともに粉砕処理して、微粉末とする工程に続いて、その微粉末を低圧に減圧した環境の下で熱処理し、乾燥と熱加工との2種類の処理を同時に行うことで、大豆を微粉末にする処理を効率良く行うことができる。前記大豆を原料として微粉末として粉砕する際に、超低温に凍結した大豆自体と、その周囲を包んでいた状態の水とが、硬く凍った氷が溶けない状態のままで砕かれることになり、砕かれた氷が先端が尖った状態の小さな塊とされ、その小さな氷と凍った大豆の塊が互いに擦り合う状態で、大豆を微粉とする粉砕作用が行われるために、製粉の効率を向上させることができる。
【0014】
また、低温で凍ったままの状態で砕いた微粉末を、乾燥するとともに加熱処理を行う工程においては、減圧した状態で130℃程度に加熱することで、大豆の水分と、油成分とを粉から分離する状態で蒸発させることができる。そして、処理槽から取り出したときには、内部の微粉末が乾燥した状態となり、その後に乾燥処理する工程を設けることを必要としない。また、微粉末をそのまま食用に供し得る程度に、熱加工できるので、豆腐等に加工するに際の加熱時間を短くでき、食品の加工を容易に行うことができる。さらに、前記減圧・加熱の段階で蒸発させたものを、凝縮させる処理を行うことで、大豆油の成分を容易に回収することができる。
【0015】
前記一般的な穀物の微粉末の製法に加えて、その穀物を大豆として、大豆の皮を含む粒全体を微粉末として供給する場合には、豆腐等のような大豆の加工品を容易に作成できることになる。そして、前記大豆の微粉末を用いて、豆腐の他に、任意の大豆加工品、または、大豆の栄養成分を大量に含有する食品を、新たに作ることができる。また、原料としての大豆の微粉末においては、豆腐製造工場から「オカラ」のような廃棄物を排出することがなく、繊維質を大量に含む大豆製品を市場に提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の大豆を微粉末に加工する方法を説明するが、最初に、大豆の微粉末加工するとともに、脱脂した粉末を得る方法を説明する。
大豆の粉をそのまま食しても良いように、加熱処理した微粉末の状態で供給できれば、その後の大豆の加工工程を大幅に短縮して、大豆を主成分とする食品を容易に製造できるものと考えられる。また、大豆の皮を除去せずに、大豆全体をそのまま粉に加工することで、それを豆腐として加工したときには、従来は「オカラ」として破棄していた豆の皮とはい芽の部分を、廃棄物として処理することはなくなる。さらに、大豆の粉を含む食品を加工する工程中で、熱処理する時間を大幅に短縮して、余分なエネルギーを使わずに、加工製品を容易に得ることができる。
【実施例】
【0017】
以下に説明する例において、大豆の微粉末を得るためには、図1に説明するような段階を経て行われる。図示するブロック図の工程Aの前段階で、まず、原料の丸大豆を準備して夾雑物を除去し、それを洗浄してそのまま食用に供し得るようにして、工程Aからの加工工程に移行する。
次に、加工工程の最初の段階である工程Aから、そのまま食用に供し得る大豆の微粉末として得られるところの、工程Hに至る間の各段階での加工工程を、以下に順を追って説明する。
【0018】
工程A 大豆を水に浸漬して、十分に吸水させる。
工程B 大豆が発芽するに適した温度に保管し、発芽開始するまで保持する。
工程C 発芽開始した段階で、水から取り出すが、大豆は水に濡れた状態とする。
工程D 微粉砕処理の前段階で、冷凍機を用いて−50℃程度に冷却処理する。
工程E 微粉砕処理装置を用いて、氷とともに大豆を微粉末化させる。
工程F 乾燥工程;低圧の環境で130℃程度まで加熱処理し、乾燥微粉末を得る。
工程G 工程Fで分離した蒸発物を、冷却処理して液体を得る。
工程H 工程Gで得られた液体を、水と油分に分離して、大豆油を得る。
以上の各工程を経て、そのまま食べても良い状態にまで熱処理が施された大豆の微粉末と、大豆油とが製品として得られる。
【0019】
工程A:図示する工程の最初の段階では、準備した大豆を水に浸漬して十分に吸水するまで、そのまま保管する工程Aで、水は磁界を通した水(磁気水)を用い、ゲルマニウムおよびバナジウムイオンを含む水分を添加する。さらに、前記各種のイオンに加えて、多糖類、核酸、アミノ酸や有機酸類、ビタミン類、カルシウム成分や、その他に食品に加工する際に、添加しておくと良いと考えられるミネラル成分等を適宜、適量添加する。
【0020】
そして、前述したようにして原料の大豆に有効成分を含ませるために、大豆を浸漬した水とともに、丸大豆の中まで前記有効成分を浸透させるような温度と、環境を設定して処理を行うことで、製品として得られる大豆の微粉末に、それ等の有効成分を多量に含ませることを意図している。また、前記大豆を浸す水を磁気水とすることで、通常の真水の場合よりも、大豆の皮を通って粒の内部にまで浸透しやすくされ、後で大豆を凍結させる時にも、粒の中心から次第に外側に向けて凍結するようになる。
【0021】
工程B:発芽処理工程であり、水に浸漬したままの状態で、大豆が発芽するに適した温度に保管する。そして、大豆の一定の割合が発芽した状態で、前記発芽処理を停止して、大豆から水を分離する工程Cへと移行する。なお、この発芽処理の工程では、大豆の発芽が開始されて、数mm程度の任意の長さに芽が延びるのを待ってから、つまり、大豆の成分そのものに加えて、発芽することで新たに生成される大豆の成長成分等を、ともに利用可能とする状態で、より栄養豊富な食品原料とすることも可能である。
【0022】
工程C:前記発芽工程Bを経たものは、余分な水分を除去して、次の凍結処理の段階に向けて供給する準備を行う。この工程では、大豆の表面に水が付着して残る程度に、余分な水を分離・除去させる処理を行うものとし、ミネラル水に含まれている有効ミネラル成分をより多く残して、乾燥後の大豆にそれ等の有効成分が多量に含まれるようにする、予備処理を行うものとしても良い。
【0023】
工程D:冷凍処理する工程であり、前記工程Cで大豆を水から出した状態で、表面に水が付着しているものを、−30〜50℃に冷却して、水を多量に含む大豆とその表面に付着した水とを、一体にして凍結させる。この状態では、大豆の凍結させたものの内外部の水分が、ミネラル分を多量に含んだままの状態で硬く凍結される。また、前記凍結させる処理工程では、前記工程Aに説明したように、前記大豆を磁気水に浸すことで、通常の真水の場合よりも、大豆の内部にまで浸透しやすくされるので、そのような磁気水を含んでいることにより、粒の中心から次第に外側に向けて凍結される。
【0024】
工程E:微粉砕処理する工程であり、高速回転するジエットミル(商品名)のような、従来公知の微粉末製造装置を用いて、微粉末化する処理を行う。この微粉砕する処理工程においては、前記大豆の表面に付着していた水分の氷が、凍ったままで微粉末状とされ、その氷の小さな塊の尖った部分が、大豆を削るような作用を行うものと推定される。それとともに、大豆と氷の粉砕された塊が互いに削り合うようにして、微粉末化する作用を促進することで、効率良く微粉末化の処理が行われる。
【0025】
工程F:微粉末化した大豆を乾燥する工程であり、その乾燥処理のためには、大豆の微粉末を耐圧容器に入れて加熱手段により外側から、130℃程度に加熱して、水分と大豆油成分を含む蒸発可能な成分を、大豆の微粉末から気体として分離させる。この加熱処理工程において、凍結温度が−50℃であったものを、+130℃程度の高温に急速に加熱することで、微粉末に付着している水分と、粉に含まれている大豆油成分が、ともに瞬時に蒸発されるようにして分離される。そして、容器に接続して設けた空気吸引装置Mに、気体のみを通過させるフィルターNを通して、蒸発成分のみを回収する冷却工程Gに向けて排出させる。
【0026】
この工程Fで、容器から取り出した大豆の粉は、加熱処理されていることで、そのままキナコのように、他の食物の表面にまぶして食べても良いものとなる。また、その粒が数ミクロンのスクリーンを通過し得るような、微粉砕された微粒子として生成される。さらに、前記大豆の微粉末は、容器内で加熱処理されたことで、容器から取り出した時には、完全に乾燥したものとなっており、そのままの状態で袋詰め処理することで、任意の大豆製品の原料用の大豆粉として、出荷が可能なものとなる。そして、この大豆粉を原料として、後で説明する豆腐や、その他の大豆加工品を製造するために用い得るようにする。
【0027】
前記乾燥工程Fで、真空吸引装置を用いて、乾燥容器から吸引した蒸発成分は、ガス体の冷却処理工程Gで、低温に設定した冷却容器で、液体に戻す処理が行われる。
また、前記乾燥工程では、加熱容器に空気吸引装置Mを接続して設け、気体のみを通過させるフィルターNを通して大豆の微粉末が気体に含まれないようにして、蒸発可能な成分のみを回収する冷却工程Gに向けて排出させている。そして、前記冷却工程Gでは、ガス体を吸引させて収容する容器は、熱伝導性の良好な金属等で作ったものを用い、その外側から水で冷却する等の処理を行うことで、ガス体を液体に戻す作用を行わせる。なお、前記ガス体を液体に戻すためには、冷水を収容する容器内に、熱伝導性の良い金属製のパイプを通しておき、そのパイプ内に回収したガス体を通すことで、液化する作用を効率良く行わせる手段を用いても良い。
【0028】
前述したようにして、回収したガス体を液化する工程Gに続いて、油水分離工程Hを設けて、液体成分から大豆油を分離して回収する。この大豆油を回収するためには、最も簡単な理屈では、容器に回収した液体を貯留しておくことで、自然に油分が水の成分から分離され、油成分が上の層として溜まることから、その上の部分の層を汲み出すことで、分離することができる。なお、この大豆油の回収工程では、乾燥容器内から蒸発させて回収されたガス体を、密閉状態で状態で液体化するので、油成分が空気に触れない状態で液化されるため、酸化しない油成分が回収される。
【0029】
また、前記丸大豆を微粉砕する工程Eで、前記超低温の環境の下で粉末化の処理を行うことにより、大豆自体を砕いた粉と氷の砕かれたものとのとが、刃物で切断された状態のように、突端が尖った部分となるような丸みの少ない粉末とされる。したがって、大豆の皮を含む実の全体が砕かれるとともに、それぞれの粉状のものの突端の部分が、他の氷と粉の粒同士が互いに押圧され、衝突させる作用が加えられることで、互いに粒同士が削り合う状態で擦り合って、微粉末化する処理工程が促進される。そして、前述したようにして作成された微粉末は、水を加えて加熱する際に、微粉に水分を含ませる時間が非常に短くてすみ、容易に豆乳状の液を作成することが可能となる。
【0030】
前述したようにして、前記工程Aから工程Fの処理が行われて、製品として得られる大豆の微粉末は、それ自体をそのまま食用に供することができる程度に、高温の温度処理が行われているものである。したがって、その大豆の微粉末を、任意の食品用の原料として用いて、大豆関連食品を製造する際には、その加熱処理時間を短縮したとしても、十分に熱処理が行われた状態の食品を得ることができる。
【0031】
(第2の実施例)
前記丸大豆を原料として用いて、微粉末化する処理を行い、その微粉末を用いて豆腐
のような大豆製品を製造することが可能であることを先に説明した。
その他に、丸大豆を原料として用いずに、大豆油成分を絞り取った後の、脱脂大豆を原理用として、大豆の微粉末を作成して、その脱脂大豆の微粉末を他の加工食品の原料として用いることもある。前記脱脂した大豆を微粉末化する処理を行う場合でも、前記丸大豆を用いて、微粉末とする場合の一連の処理工程のうち、発芽処理Bを除いて、乾燥工程Fまでは、同様な処理を行うことになる。その後に、水分を蒸発させて回収し、冷却して気体を液化させたものでは、油成分が非常に小量しか含まれないので、大豆油成分を効率良く分離回収することはできないことになる。
【0032】
(大豆加工食品の製造例)
前記微粉末を乾燥させると同時に、熱処理する工程では、丸大豆をそのまま煮沸処理する場合に比べて、非常に短時間で加工できて、食用に供給することが可能なものとなり、そのままの大豆粉を食べてたとしても、十分に消化することが可能である。また、前記一連の工程を経て製造された大豆粉は、前記処理工程の中で、熱処理が行われることで、十分に乾燥された状態の粉となり、袋に詰めて保管することと、その粉に水を添加する等の処理を行って、大豆製品の原料として、次に例示するように、大豆製品の製造に供することができるものとされる。
【0033】
次に、前述したようにして製造された大豆粉を用いて、豆腐を製造する時には、大豆粉に対して所定の割合で90℃程度の熱湯を加えて大豆粉を分散させて所定の濃さの大豆液を作成してから、通常の豆腐製造時と同様に、凝固材成分として作用する「にがり」を所定の割合で添加して、冷却しながら静かに置くとともに冷却する。また、前記「にがり」に代えて、従来より豆腐の製造に用いられている、他の凝固材成分を適宜用いることができる。特に、大豆成分を大量に含む豆腐状の食品を製造する際に、他に添加する食品成分の性質によっては、容易に凝固しない場合などには、食用に使用可能な任意の固化成分を追加して用いることで、豆腐状の加工食品を提供することが可能である。
【0034】
前述したようにして、大豆の皮を含む全成分を微粉末とし、食用に用い得る微粉末として製造することで、従来の豆腐製造現場で発生する廃棄物の問題が解消される。つまり、一般的な豆腐製造工場では、その副産物としての「オカラ」が大量に生産され、それが廃棄物となるという問題があったのである。そこで、前記排出される「おから」は、豚等の餌として供給される等の解決策があったが、餌等としての利用にも限界があり、特に、都会地等の家畜の飼育場所が得られない場所においても、その廃棄物の処理が大きな問題となっている。ところで、豆乳を絞った残りの「オカラ」と呼ばれるところの、廃棄処理される成分には、大豆のはい芽や皮に付着したままの、有用成分が多く含まれているものであり、それを廃棄物として捨て去るには勿体ないものである。
【0035】
前述したように、豆腐を製造するための原料として用いる大豆は、従来の一般的な豆腐の製造の場合と同様に、丸大豆または脱脂した大豆をそのまま用いて、微粉末化する方法を適用できる。さらに、丸大豆を発芽させる処理を、その製造工程に1段階余分に追加して処理することで、丸大豆にはない栄養成分を発芽により増加させた微粉末を用いて、加工食品を製造することができる。
【0036】
また、丸大豆に代えて、油を絞った後の脱脂大豆を原料として、それを微粉末化する処理を行い、そのようにして作成した大豆の皮を含む成分の全部を、豆腐等の大豆関連食品の製造原料として用いることができて、脂肪分の少ない原料を食品の製造に用いることができる。前記実施例のように、本発明においては、油を絞った残りの脱脂大豆を、豆腐の原料として用いる場合には、丸大豆を用いる場合と同様にして十分に吸水させた状態で、冷凍・粉砕処理を行ってから、加熱・乾燥工程を経て微粉末を作成する。そして、大豆の油分が少ないけれども、有効成分を多量に含む豆腐を製造すること、もしくは、大豆加工食品を製造する原料を供給することが可能である。
【0037】
また、前記脱脂大豆のみを原料として用いることで、豆腐の風味が不足すると考えられる場合には、丸大豆から製造した微粉末を適量混合することも可能である。前述したようにして、大豆の微粉末を原料として、大豆加工食品を製造する場合に、豆腐状の食品として製造する場合では、野菜または海草等の加工品の粒、液やペースト等を適宜添加して、風味豊かな豆腐加工品を製造することも可能である。
なお、前記大豆の微粉末を用いて、豆腐状の加工食品を製造することは、大豆のはい芽と表皮の成分、その他の添加物を適宜混合して、歯応えのあるもの等を適宜組合せて、一種の新たな食品とすることができる。そして、前記豆腐様の加工食品においては、通常の豆腐の場合には水分率が90%以上であることに比較して、この例では、任意の水分含有率の食品として製造できるので、その食品をさらに加工する際に、最も適した堅さの食品として、提供できることになる。
【0038】
(豆腐状のものをさらに処理して、別の食品を製造する例)
前記大豆の微粉末を用いて、豆腐状の加工食品を製造した後で、その豆腐状の食品にかびを繁殖させて、チーズ状の食品を製造することも可能である。この大豆を主成分としたチーズ状の食品を製造するためには、水分が少ない状態の硬い豆腐を、前記大豆の微粉末を用いて製造し、その表面にチーズ菌を植え付ける。前記チーズ菌としては、例えば、本出願人が最近、新たに発見して微生物として登録した、新種の微生物(特許第3789303号)に開示している菌を用いると良い。
【0039】
つまり、前記大豆の粉に水分と豆腐用の凝固材成分、および、必要に応じて調味料成分を加えて加熱して凝固させる処理を施して、豆腐または豆腐様加工品として製造する。そして、その豆腐様加工品に対して、前記チーズ菌または、その菌類と同様に、蛋白質に対する作用を行う菌を付着させ、前記菌の増殖させるに適した温度で所定の期間保管することで、チーズ様の食品を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の大豆の処理の工程を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆を水に浸漬して、発芽する温度で発芽が始まるまで保管する保管工程と、
前記大豆の発芽が始まった状態で、大豆に付着した水を残して、余分な水分を除去するとともに、低温の環境下で大豆を凍らせる凍結処理工程と、
前記凍結処理した大豆を微粉末状として粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程を経て、微粉末化された大豆を容器に収容して、減圧しながら加熱する加熱処理工程と、を経て、
前記容器内で加熱処理された大豆の粉を、微粉末として取り出すことを特徴とする大豆粉の製造法。
【請求項2】
前記大豆を水に浸漬する際には、水にゲルマニウムイオン、バナジュームイオン、もしくは人が摂取可能で、各種の有効なミネラル成分を溶解した水を用い、大豆に水分とともに前記各種のミネラル成分の豊富な環境で発芽させる処理を行い、
前記大豆を発芽させるとともに、大豆に浸透させた水分とともに、前記ミネラル成分を含ませることを特徴とする請求項1に記載の大豆粉の製造法。
【請求項3】
前記大豆を凍結処理してから粉砕する工程では、大豆に含ませた水分とともに、その表面に水分を付着させたままで、
大豆の内部に浸透した水分とその他の水分とが、水に溶解されたミネラル成分とともに凍結され、
前記水分の凍ったものの微粉末状とされた小さな塊の尖った部分が、大豆を削るような作用を行うとともに、粉砕された塊が互いに削り合うようにして、微粉末化する作用を促進することを特徴とする請求項1または2に記載の大豆粉の製造法。
【請求項4】
前記微粉末状に粉砕する前記粉砕工程を経て、微粉末化された大豆を容器に収容して、減圧しながら加熱する加熱処理工程において、
前記容器内で加熱することにより、大豆の微粉末を短時間で熱処理するとともに、真空吸引されることで、微粉末と共存していた水分と大豆の油成分とが大豆の固形成分から分離されて、気体成分として容器から排出させ、
前記容器から取り出して常温常圧に戻した状態では、加熱処理が終了して乾燥された大豆の微粉末が得られることを特徴とする請求項1または3に記載の大豆粉の製造法。
【請求項5】
前記大豆を水に浸漬する工程において、発芽させるに十分な温度よりも高い温度で大豆に水を含ませる処理を行い、
前記水分とともにミネラル成分を付着させるとともに、大豆の粒の中にも前記浸漬させたミネラル成分と水分とを含ませ、前記大豆の表面に水分が付着した状態で凍結させる処理を行い、
凍結処理した大豆を、低温の環境で微粉砕する処理を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の大豆粉の製造法。
【請求項6】
前記微粉末を作成する原料として脱脂大豆を用いて、前記大豆原料を水に浸漬して吸水させた状態で、冷凍・粉砕処理する工程から、
微粉末化された大豆を容器に収容して、減圧しながら加熱する加熱処理工程を経て、
前記容器内で加熱することにより、脱脂大豆の微粉末を短時間で熱処理するとともに、真空吸引させることで、微粉末と共存していた水分を固形成分から分離して、気体成分として容器から排出させて、微粉末のみを回収することを特徴とする請求項1に記載の大豆粉の製造法。
【請求項7】
前記油成分と水分とを分離した状態で、微粉末として回収された大豆の粉は、前記浸漬した水に含まれたミネラル成分を多量に含む粉末であり、
さらに、必要に応じて食品として有効に作用するミネラル成分を強化して、食品加工用の原料として、市場に供給することを特徴とする請求項4に記載の大豆粉の製造法。
【請求項8】
前記容器から大豆の微粉末を残して分離された気体成分は、凝縮部を通して水分と大豆油成分とを含む液体成分として回収され、
前記回収された液体成分から水分を分離する処理を行うことで、大豆油成分を分離回収することを特徴とする請求項1または4に記載の大豆粉の製造法。

【図1】
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