説明

大豆SSRプライマーセット及び大豆品種鑑別方法

【課題】丹波黒標準系統とそれ以外の大豆品種のDNAを識別しうるプライマーセット、及び該プライマーセットを用いた大豆品種鑑定方法の提供を目的とする。
【解決手段】大豆のゲノム中の特に非コード領域に存在する、36種類の単純反復配列(SSR)マーカーのプライマーから構成させることを特徴とするプライマーセットを用いて、試料大豆のDNAをPCR法によって増幅し、PCR産物の同定結果に基づき、大豆試料が丹波黒標準系統であるか否か鑑別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆の品種鑑別に関し、より詳細には、最高級品種である「丹波黒標準系統」と他の大豆品種を鑑別するためのプライマーセット、及び該プライマーセットを用いたPCR法によって、「丹波黒標準系統」と他の大豆品種を鑑別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
丹波黒は、兵庫県農事試験場が古くから丹波地方で栽培されていた黒大豆の在来種(波部黒)を取り寄せ、明石本場と但馬分場で品種特性の把握の比較試験を行い、昭和16年に「丹波黒」と命名し、奨励品種にした品種名であり、丹波地方を代表する特産品の一つである。12月上旬成熟する秋ダイズ型の極晩生種であって、草丈長く、分枝多く、さや数は少なく、花は紫色、短毛はカッ色である。
【0003】
子実は、極大粒・球形・黒色を呈し、外観的には100粒重が80gを超える極大粒である。種皮にろう粉を生じることも特徴である。丹波黒には、大粒の中では最高の美味しさ、煮豆の軟らかさ、風味の良さがあり、煮豆用大豆の最高級品に位置づけられている。この形質は枝豆の食味にも発揮されるから、丹波黒は近年、枝豆としても最高級品に認められることになっている。
【0004】
しかし、丹波黒は、栽培農家が維持してきた在来種に由来するもので、成熟期や粒大等が異なるものがあり、遺伝的に単一であるとは考えられていない。また、現在の丹波黒栽培地域は、丹波地方にとどまらず、近畿及び中国地方、中部地方、北四国、北九州にまで拡大しており、さらに近年では、中国及び米国等の海外産が輸入されるに至っている。
【0005】
ここで、植物のDNA塩基配列の多型を解析する方法として、SSRマーカーを用いる方法がある。SSRマーカーは、ゲノムDNA中の遺伝子をコードしていない非コード領域に主に見られる単純反復配列(Simple Sequence Repeats)を利用し、SSRの反復回数が種系統間で異なる性質に基づいて品種系統を判別する方法である。
【0006】
SSRの検出は、PCRで増幅したDNA断片を電気泳動によって分離し、DNA断片を蛍光色素によって検出する方法により行う。そして、品種の鑑別は、検出されたDNA断片長の違いを、基準となる品種と比較することによって行い、複数のDNAマーカーを併用することが好ましいとされる。
【0007】
このようなSSRマーカーを用いる植物の品種鑑別方法として、シバ属植物の個体識別方法が、特許文献1に開示されている。また、イグサの品種鑑別方法が、特許文献2に開示されている。
【0008】
また、SSRマーカーを用いた小豆品種の識別方法及び小豆のあん品種の識別方法が、非特許文献1及び非特許文献2にそれぞれ開示されている。さらに、SSRマーカーを用いたセイヨウナシの品種識別・親子鑑定法が、非特許文献3に開示されている。
【特許文献1】特開2005−27566号公報
【特許文献2】特開2005−168308号公報
【非特許文献1】http://www.hinsyu.maff.go.jp/DNAgaido/san5.pdf
【非特許文献2】http://www.hinsyu.maff.go.jp/DNAgaido/san6.pdf
【非特許文献3】http://www.affrc.go.jp/ja/db/seika/data_tohoku/h14/to169.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、主要産地である兵庫県、京都府、岡山県等の農業機関で丹波黒系統の種子管理が進む一方、種子管理状態が不明な海外産黒大豆が「丹波黒」として市場に出回るようになってきている。これら海外産黒大豆は、外観観察よって種子管理されている丹波黒系統と鑑別することが容易でない場合もある。
【0010】
このため、これら海外産黒大豆が種子管理されている丹波黒系統と遺伝的に同一かどうかを判断するための科学的判別方法の確立が急務とされている。
【0011】
本発明は、国内の農業機関で種子管理されている丹波黒の系統(以下、「丹波黒標準系統」という)と、それ以外の大豆品種のDNAとを識別しうるプライマーセット、及び該プライマーセットを用いた大豆品種鑑定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、約1000種類存在する大豆SSRマーカーのプライマーのうち、Satt141、Satt168、Satt175、Satt269、Satt273、Satt288、Satt301、Satt303、Satt316、Satt345、Satt354、Satt415、Satt548、Satt554、Satt556、Satt564、Satt586及びSatt590(18組あるが、それぞれにForwardプライマー及びReverseプライマーがあり、それらは配列番号:1乃至36に示される)の36種類のプライマー(18組のプライマー)を組み合わせたプライマーセットを用い、試料大豆のDNAをPCR法によって増幅し、PCR産物を比較することにより、丹波黒標準系統とそれ以外の黒大豆とを遺伝子レベルで鑑別しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、大豆SSRマーカーを組み合わせた、丹波黒とそれ以外の大豆品種のDNAを識別しうるSSRプライマーセット、及び該SSRプライマーセットを用いる大豆品種鑑定方法に関する。
【0014】
具体的に本発明は、
配列番号:1乃至36に記載の塩基配列を有する大豆SSRマーカーのプライマーから構成させることを特徴とする、丹波黒標準系統の品種鑑別に有用なプライマーセットに関する(請求項1)。
【0015】
また、本発明は、
請求項1に記載のプライマーセットを用いて、大豆試料のDNAをPCR法によって増幅する増幅工程と、
増幅工程におけるPCR産物を検出する検出工程と、
検出されたPCR産物の同定結果に基づき、大豆試料が丹波黒標準系統であるか否か鑑別する鑑別工程と、
を含むことを特徴とする大豆品種鑑別方法に関する(請求項2)。
【発明の効果】
【0016】
本発明のSSRプライマーセット及び大豆品種鑑別方法を利用すれば、従来は専ら外観観察に依存していた丹波黒の品種鑑別を、遺伝子レベルの解析によって行うことができる。このため、黒大豆の品種が丹波黒標準系統であるか否かを非常に正確に鑑別することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、これらに限定されない。
【0018】
本発明のSSRプライマーセットは、Soybase(http://soybase.agron.iastate.edu/ssr.
html)に開示されている公知の大豆SSRプライマーであるSatt141、Satt168、Satt175、Satt269、Satt273、Satt288、Satt301、Satt303、Satt316、Satt345、Satt354、Satt415、Satt548、Satt554、Satt556、Satt564、Satt586及びSatt590の18組のForwardプライマー及びReverseプライマー(配列番号:1乃至36)から構成される。これら36種類のSSRプライマー(18組のプライマー)を組み合わせて大豆試料のSSR分析を行うことにより、丹波黒(丹波黒標準系統)と他の黒大豆品種とを鑑別することが可能である。
【0019】
これらプライマーの配列番号及び塩基配列を、表1に示す
【0020】
【表1】

【0021】
次に、本発明の大豆品種鑑別方法の具体的手順について、図1を参照しながら説明する。
【0022】
まず、ステップS1として、大豆試料(黒大豆)を粉砕し、溶媒を用いてDNAを抽出する(抽出工程)。
【0023】
次に、ステップS2として、本発明のSSRプライマーセットを用いて、大豆試料から抽出したDNAをPCR法によって増幅する(増幅工程)。
【0024】
次に、ステップS3として、各SSRプライマーの増幅工程後の反応液を電気泳動し、PCR産物(増幅断片)を検出及び確認する(検出工程)。
【0025】
次に、ステップS4として、検出されたPCR産物の同定結果に基づき、大豆試料が丹波黒標準系統であるか否か鑑別する(鑑別工程)。すなわち、18組36種類のプライマーセットによって得られたPCR産物を電気泳動した結果、丹波黒標準系統と同じPCR産物が得られたかどうかを確認し、18組のプライマー全てについて同じPCR産物が得られていれば、その大豆試料は丹波黒標準系統であると鑑別し、そうでなければ丹波黒標準系統ではないと鑑別する。
【0026】
[実施例]
本発明の実施例として、国内の主要産地の農業機関で管理されている丹波黒標準系統(以下、「JTS」という)7種、国産他品種黒大豆(以下、「JBS」という)4種、及び種子管理状態が不明な中国産黒大豆(以下、「CBS」という)12種(いずれも乾燥大豆)を試料とし、SSR分析結果に基づいて大豆試料の品種鑑別を行った。なお、JTS、JBS及びCBSの名称及び入手先を、表2に示した。
【0027】
【表2】

【0028】
(抽出工程)
大豆試料からのDNA抽出は、CTAB(Cetyltrimethylammonium bromaide)法によって行った。まず、各試料大豆1粒をミキサー等で粉砕し、容量15mLのチューブに粉砕物を移した。CTABバッファ(CTAB 2%, Tris-HCl(pH8.0) 0.1M, EDTA(pH8.0) 0.02M)を4mL添加して充分に混合させた後、65℃で30分静置した。このとき、約10分に一度撹拌した。
【0029】
次に、1.5mlマイクロチューブに溶液を移し、室温で10分間、15,000rpmで遠心分離した。上清600μLを別のマイクロチューブに移し、同量のPCI溶液(フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1(容積比)の混合溶液)を添加し、激しく撹拌してエマルジョンとした。その後、室温で10分間、15,000rpmで遠心分離した。
【0030】
上清約500μLを別のマイクロチューブに移し、CTABバッファを300μL添加し、激しく撹拌後、室温で10分間、15,000rpmで遠心分離した。このとき、CTABバッファを添加する前の上清が透明ではなくエマルジョンであった場合には、下層を取り除き、残った上清にCTABバッファを300μL添加した。
【0031】
次に、500μLのCIA溶液(クロロホルム:イソアミルアルコール=24:1(容積比)の混合溶液)を添加し、激しく撹拌してエマルジョンとした後、室温で10分間、15,000rpmで遠心分離した。上清約400μLを別のマイクロチューブに移し、同量のイソプロピルアルコールを添加した。転倒混和した後、4℃で10分間、15,000rpmで遠心分離した。
【0032】
沈殿を確認し、上清を取り除いて70%エタノールを400μL添加し、チューブの中身を軽く混ぜた後、4℃で5分間、15,000rpmで遠心分離した。上清を取り除き、アスピレーターで約15分真空乾燥した後、1×TE溶液(Tris-HCl(pH8.0) 10mM, EDTA(pH8.0) 1mM)を500μL加えて沈殿を溶解させた。そして、RNaseを5μL添加し、37℃で30分間静置した。
【0033】
500μLのCIAを添加し、激しく撹拌してエマルジョンとした後、室温で10分間、15,000rpmで遠心分離した。上清約400μLを別のマイクロチューブに移し、同量のイソプロピルアルコールを添加した。転倒混和した後、4℃で10分間、15,000rpmで遠心分離した。
【0034】
沈殿を確認し、上清を取り除いて70%エタノールを400μL添加し、チューブの中身を軽く混ぜた後、4℃で5分間、15,000rpmで遠心分離した。上清を取り除き、アスピレーターで約15分真空乾燥した。
【0035】
最後に、100μLの滅菌水を添加し、沈殿を溶解させた。
【0036】
このような操作により、表2に示した各大豆試料1種類につき、無作為に5粒を選択してDNA抽出を行った。
【0037】
(増幅工程)
抽出工程において作製した抽出DNA 0.5μLに、表3に示す試薬類を加え、TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice TP600(タカラバイオ(株)製)を用いてPCR反応を行った。Taq DNA ポリメラーゼは、TAKARA Ex Taq DNA polymerase(タカラバイオ(株)製,5U/μL)を使用した。また、反応バッファは、TAKARA Ex Taq DNA polymerase 付属の10×Ex Taq Bufferを使用した。なお、PCR反応条件は、表4に示す通りである。
【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
PCR反応終了後、反応チューブ内の反応溶液(PCR産物)は、室温まで冷やした後、4℃で保存した。
【0041】
(検出工程)
3.5%アガロースゲル(Agarose SFR、Amresco社製)に、PCR産物をアプライし、電気泳動漕(Mupid-ex、(株)アドバンス製)にセットした。そして、1×TBEバッファを用いて、100Vで約3時間泳動を実施した。泳動終了後、アガロースゲルを1μg/mL臭化エチジウム溶液を用いて染色した。なお、1×TBEバッファとは、Tris(ヒドロキシメチルアミノメタン)10.78g、ホウ酸5.51g、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)0.75gを精製水に溶解させ、1Lとした溶液である。
【0042】
(鑑別工程)
次に、各プライマーを用いた場合のPCR産物の位置を、JTSの位置と比較した。JTSである7種類の黒大豆について、18組のプライマーのPCR産物の位置を確認したところ、PCR産物の位置は完全に一致した。さらに、別の5粒を無作為に選別して実験を繰り返した場合にも、同様の結果が得られた。
【0043】
このため、18組のプライマーについて、PCR産物が1種類でも異なれば、JTSとは異なる品種の黒大豆であると鑑別した。
【0044】
ここで、1組のSSRプライマーとして、Satt345(Forwardプライマー及びReverseプライマー)を使用した場合の染色後のアガロースゲルの写真を、図2に示す。JTSである兵庫A、兵系黒3号、岡山A及び新丹波黒の4種類の黒大豆は、この図に示すように、5粒の試料全てについて、同じ位置にPCR産物が確認された。また、CBSである江蘇省B、山東省、四川省、雲南省、省名不明の中国産の場合にも、5粒の試料全てについて、JTSである兵庫A等と同じ位置にPCR産物が確認された。
【0045】
しかし、中国産在来種の場合には、5粒の試料全てについて、JTSとは異なる位置にPCR産物が確認された。また、江蘇省C、江蘇省D、江蘇省Eの場合には、5粒中の1粒について、安徽省A及び安徽省Bの場合には、それぞれ3粒及び4粒について、JTSとは異なる位置にPCR産物が確認された。
【0046】
このように、図2からは、中国産在来種がJTSとは全く異なる遺伝子を有していることが判明した。また、CBSの中には異なる種類の黒大豆が混入していることも判明した。
【0047】
今回試験したCBS12種のうち、JTSとPCR産物が全く同じ大豆が含まれていたのは、江蘇省B(5個中に3個)、山東省(5個中に2個)及び四川省(5個中に3個)だけであった。
【0048】
JBSである4種類の黒大豆は、5粒の試料全てについて、同じ位置にPCR産物が検出され、他の黒大豆品種が混入していないことが推察された。また、これらの黒大豆試料は、表現型と同様に、全てJTSとは遺伝型が異なる黒大豆品種であると鑑別された。
【0049】
CBSである12種類の黒大豆のうち、江蘇省BのNo.2,4,5、山東省のNo.1,2、四川省のNo,1,3,5は、JTSと同じ位置にPCR産物が検出されたため、JTSであると鑑別された。しかし、他の黒大豆品種が混入していることも確認された。
【0050】
次に、鑑別工程において、1つのプライマーについて、PCR産物が同一であるかどうかに加え、PCR産物の検出位置を数値化した。
【0051】
PCR産物の検出位置の数値化を、図3を参照しながら説明する。1組のプライマーSattX(Forwardプライマー及びReverseプライマー)のPCR産物(増幅断片)について、JTSの位置を「0」として、それよりも大きなPCR産物(図3左側のアガロースゲルの模式図では、JSTよりも上方となる)であれば、JSTの位置に近い順に「1,2,3・・・」と数値化した。逆に、JTSの位置を「0」として、それよりも小さなPCR産物(図3左側のアガロースゲルの模式図では、JSTよりも下方となる)であれば、JSTの位置に近い順に「-1,-2,-3・・・」と数値化した。
【0052】
例えば、試料1であれば、JSTのPCR産物よりも大きく、位置が1番目に近いので「1」となり、試料2であればJSTのPCR産物よりも大きく、位置が2番目に近いので「2」となる。試料3であれば、同じ位置なので「0」となる。そして、図3右側に示すように、各試料についてPCR産物の位置を数値化した。
【0053】
つまり、あるサンプル同士で数値が同じであれば、そのプライマーにおいてPCR産物の検出位置が同一であり、数値が違うもの同士は検出位置が異なるということになる。
【0054】
JTS、JBS及びCBSについて、18組のプライマーのPCR産物の位置を数字化した結果を、それぞれ表5、表6及び表7(表7A及び表7B)に示す。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
【表7A】

【0058】
【表7B】

【0059】
上述した通り、JTSでは18組のプライマー全てについて、PCR産物の位置が同じであったため、最初に試料を分析した兵庫Aの位置を「0」とすれば、全ての試料の位置が「0」と数値化された。なお、表5中の「粒番号」とは、各試料大豆について5粒ずつ試験したうちの何番目の粒であるかを示しており、表6及び表7(表7A及び表7B)においても同様である。
【0060】
本実施例においては、JTSについて1種類、JBSについて4種類、CBSについて35種類、合計40種類のPCR産物が全115粒中から確認された。今回使用したCBSでは、5粒とも遺伝型がそろっている試料はなく、異なる品種が混入している試料ばかりであったが、黒大豆であってもJTSとは遺伝的に非常に異なる大豆試料も確認された。
【0061】
[参考例]
本発明の参考例として、国内で販売されている黒大豆の煮豆製品中の黒大豆について、Satt175(Forwardプライマー及びReverseプライマー)を用いて、実施例と同様の操作を行い、PCR産物の位置をJTSと比較した。
【0062】
まず、市販煮豆製品3種から黒大豆を取り出し、精製水を用いてよく洗浄した。その後、ミキサー等を用いて粉砕し、以下、実施例の乾燥大豆の場合と同様の試験操作を行い、PCR産物の位置が、JTS(乾燥大豆)と同じであるか鑑別した。1種類の製品からは、20個ずつの黒大豆を無作為に選別した。
【0063】
Satt175を用いた場合のアガロースゲル(染色後)の写真を、図4に示す。煮豆試料1では、20粒全てについて、JTSとPCR産物の位置が同じであった。しかし、煮豆試料2及び煮豆試料3では、JTSとPCR産物の位置が異なる粒が、それぞれ2粒及び10粒確認された。
【0064】
このように、本発明に含まれるSSRプライマーを使用した結果、煮豆製品についても、使用されている黒大豆がJTSであるか否かを鑑別可能であることが推察された。
【0065】
上述したように、本発明の黒大豆品種鑑別方法は、JTSとそれ以外の黒大豆を、遺伝子レベルで明確に鑑別することが可能である。これにより、従来は外観で鑑別するしかなかったJTSを、確実、かつ、再現性よく他の黒大豆品種と鑑別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、食品及び農業分野において、黒大豆の品種鑑別方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の大豆品種鑑別方法の工程を示すフロー図である。
【図2】実施例において、1組のプライマーとしてSatt345(Forwardプライマー及びReverseプライマー)を使用した場合の染色後のアガロースゲルの写真である。
【図3】PCR産物の検出位置の数値化を説明する概念図である。
【図4】参考例において、1組のプライマーとしてSatt175(Forwardプライマー及びReverseプライマー)を使用した場合の染色後のアガロースゲルの写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1乃至36に記載の塩基配列を有する大豆SSRマーカーのプライマーから構成させることを特徴とする、丹波黒標準系統の品種鑑別に有用なプライマーセット。
【請求項2】
請求項1に記載のプライマーセットを用いて、大豆試料のDNAをPCR法によって増幅する増幅工程と、
増幅工程におけるPCR産物を検出する検出工程と、
検出されたPCR産物の同定結果に基づき、大豆試料が丹波黒標準系統であるか否か鑑別する鑑別工程と、
を含むことを特徴とする大豆品種鑑別方法。


【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−228839(P2007−228839A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52580(P2006−52580)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(591183625)フジッコ株式会社 (15)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】