説明

天井用伸縮カバー装置

【課題】 各躯体間の相対変位を許容して空隙を塞ぎ、この空隙内で落下する漏水を回収することができる天井用伸縮カバー装置を提供する。
【解決手段】 一方の躯体3aに支持部9と当接部79とを有する縁材11を固定し、支持部9によって、カバー体8の一端部を回動軸線mまわりに回動可能に支持し、当接部79にカバー体8の一端部が当接して、他端部が他方の躯体3bの下面7bから下方へ変位する方向へのカバー体8の回動を阻止する。カバー体8は断面を凹状とし、空隙G内で落下する漏水をカバー体8内に収容する。地震によって各躯体3a,3bが相対変位しても、カバー体8は縁材11に対して支持部9によって回動軸線mまわりに回動可能であるので、他方の躯体に対する干渉が防がれ、空隙Gを下から塞いだ状態に維持し、天井面の連続性が得られ、美観を損なわずに、空隙G内で落下した漏水を収容して、空隙Gから下部空間12への漏水の流れ落ちを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する2つの建物の各躯体の相対変位を許容し、各躯体間の目地などの空隙から落下する漏水を収容して回収するために好適に実施することができる天井用伸縮カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
隣接する2つの建物の各躯体間には、目地として空隙が存在する。各躯体は、急激な地震などによって、相互に近接する左右方向、この左右方向に垂直な前後方向、および上下方向に相対変位するため、前記相対変位を許容することができるとともに、空隙を介して水などの液体が各躯体の下方へ漏洩することを防止するために、各躯体間には排水装置が設けられる。
【0003】
このような排水装置の従来の技術は、特許文献1に記載されている。この従来の技術では、空隙である隙間を隔てて対向する第1および第2の躯体間に形成された排水構造において、第1の躯体に前記隙間に沿って排水溝が形成され、この隙間および排水溝を覆うグレーチングが各躯体間にわたって載置され、第2の躯体には、グレーチングの下を第1の躯体側に向かって次第に低くなるように傾斜して前記排水溝の上方まで延び、第1の躯体に摺動自在に支持される傾斜板部を有する水切り材が設けられる。
【0004】
このような排水装置によれば、グレーチングを通って落下してきた雨水などの排水は、排水溝内に直接落下し、または水切り材の傾斜板部上に落下して傾斜板部上を流れて排水溝内へ導かれる。また、各躯体間の相対変位は、傾斜板部が第1の躯体に摺動自在に支持されているため、水切り材の第1の躯体に対する相対変位が許容される。
【0005】
このようにして、この従来の技術では、簡単な構成で、各躯体間の相対変位を許容することができるとともに、グレーチングから排水溝内へ直接落下する排水と、傾斜板部上へ落下する排水とを排水溝内へ集水することができる排水装置が提案されている。
【0006】
また、他の従来の技術は、特許文献2に記載されている。この従来の技術では、家屋の屋根パネル側面より屋外側へ向けて張出し材を突出させ、張出し材の先端に手摺りパネルの下部を固定して手摺りパネルをベランダ床の側方に立設させ、手摺りパネルの屋内面下部に水切板を設けるとともに、水切板の上から手摺りパネルに略L字状の樋支持具を取付け、手摺りパネルに沿って樋支持具に凹状の樋を取着し、屋根パネル上面の縁から樋内へ向けて水返し板を設け、張出し材の前記樋の下方に突出する部分が筒状の水切カバーによって覆われた排水装置が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−189155号公報
【特許文献2】実開昭59−182541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の従来の技術では、各躯体が建物の上層空間と下層空間とを仕切るスラブであるとき、各躯体の上層空間に臨む各上面は、グレーチングによって水平に連続した床面を形成するが、各躯体の下層空間に臨む各下面の間には、通行者が下から容易に認識することができる開口が生じ、意匠上の美観が低下するとともに、排水装置の水密性が低下すると、開口から漏水が下層空間へ落下し、床などを汚損してしまうという問題がある。
【0009】
また、特許文献2の従来の技術では、樋内には雨水などの漏水が直接または水返し板によって導かれて排水されるが、前記樋は樋支持具によって手摺りパネルに連結され、この手摺りパネルは張出し材に連結され、張出し材は家屋の屋根パネル側面に突出して設けられ、建物の上層空間と下層空間とを仕切るスラブである各躯体に対しては、前記樋と屋根パネルとが近接および離反する左右方向、左右方向に垂直な前後方向および上下方向の相対変位を許容し、かつ天井面上で開口する空隙を塞ぐことができず、天井用伸縮カバー装置として用いることはできない。
【0010】
本発明の目的は、各躯体間の相対変位を許容して空隙を塞ぎ、この空隙内で落下する漏水を回収することができる天井用伸縮カバー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、隣接する2つの建物の各躯体が空隙をあけて相互に対向し、各躯体の近接および離反する左右方向、前記左右方向に垂直な前後方向および上下方向の相対変位を許容しかつ各躯体間の空隙を下方から塞いだ状態に維持する天井用伸縮カバー装置であって、
一端部が一方の躯体に前記前後方向に平行な回動軸線まわりに回動可能に保持され、他端部が他方の躯体の下面に当接する断面が凹状のカバー体と、
一方の躯体に固定され、前記カバー体の一端部を前記回動軸線まわりに回動可能に支持する支持部と、カバー体の一端部が前記支持部によって支持された状態で前記他端部が下方へ変位する方向へのカバー体の回動を阻止する当接部とが設けられる縁材とを含むことを特徴とする天井用伸縮カバー装置である。
【0012】
本発明に従えば、一方の躯体に縁材が固定される。この縁材は、支持部と当接部とを有し、支持部によって、カバー体の一端部が回動軸線まわりに回動可能に支持され、当接部にカバー体の一端部が当接して、他端部が下方へ変位する方向へのカバー体の回動が阻止される。前記カバー体は、断面が凹状に形成されるので、左右方向の両端部から流れ出すことが防がれ、空隙内で落下する漏水をカバー体内に収容される。このカバー体内に収容された漏水は、たとえばドレン管によって実現される排水用導水設備によって既設の下水管および排水溝などの排水設備に導かれて排水処理される。
【0013】
前記排水は、各躯体から上方の上部空間が屋外である場合には、主として雨水、散水および結露水などであり、上部空間が屋内である場合には、主としてこぼした水、飲料水および結露水などであり、さらに通行者が落とした硬貨、筆記具などの小物、ごみおよび砂などの固形物をも含み、これらを包括して「漏水」と称する。また、左右方向および前後方向とは、静水面に平行な水平面上で直交する2軸にそれぞれ平行な各方向、ならびに地盤の不等沈下および建物の施工誤差などによる水平に対してわずかに傾斜した方向を含む実質的に水平な方向をいう。
【0014】
急激な地震が発生すると、各躯体は左右方向、前後方向および上下方向に相対変位する。このような相対変位は、実際には左右方向、前後方向および上下方向の3方向の変位を各方向の変位成分とする合成された3次元変位として生じる場合がほとんどである。したがって前記カバー体は、縁材に対して支持部によって前後方向に平行な回動軸線まわりに回動可能に一端部が支持され、かつ他端部は他方の躯体の下面によって当接することによって、カバー体が縁材とともに一方の躯体に追従し、他方の躯体に対して相対変位しても、他方の躯体に対するカバー体の左右方向、前後方向および上下方向の変位が許容され、カバー体が他方の躯体との干渉によって破壊されることが防がれ、空隙を下から塞いだ状態に維持し、外観上、天井面の連続性が得られ、美観を損なわずに、空隙内で落下した漏水を回収し、空隙から下部空間へ漏水が流れ落ちてしまうことが防がれる。
【0015】
また、縁材の当接部によってカバー体の他端部が下方へ移動する方向への回動が阻止されるので、カバー体の他端部が他方の躯体の下面から下方に離間する方向にカバー体が傾斜することが阻止される。これによって、カバー体の他端部と他方の躯体の下面との間に隙間が発生せず、各躯体間にわたる天井面の連続性を損なわずに空隙を常に塞いだ状態に維持することができる。
【0016】
また本発明は、前記他方の躯体には、左右方向に延びる第1案内部材が固定され、
前記カバー体には、そのカバー体内に収容された状態で、第1案内部材に左右方向に沿って移動可能に係合する第2案内部材が固定され、
前記縁材の支持部は、カバー体の一端部を前記回動軸線まわりに回動可能にかつ回動軸線に沿って移動可能に支持することを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、他方の躯体に第1案内部材が設けられ、カバー体に第2案内部材が設けられ、これらの第1および第2案内部材が左右方向に沿って移動可能に係合するので、各躯体が空隙を介して左右方向の間隔が大きく、その間隔に対応して各躯体間にわたる広幅のカバー体を採用してカバー体の形態が大きくなっても、縁材の支持部に過度に大きな荷重を負担させず、各躯体間の左右方向の間隔が大きくなっても、確実にカバー体によって空隙を塞ぎかつ空隙内の漏水をカバー体内に収容することができる。なお、このカバー体内に収容された漏水は、前述と同様に、たとえばドレン管または排水パイプによって実現される排水用導水設備によって既設の下水管および排水溝などの排水設備に導かれて排出される。
【0018】
縁材の支持部に対してカバー体の一端部が回動軸線に沿って移動可能であるので、各躯体間の前後方向の相対変位を許容することができ、カバー体の自重および収容した漏水の重量によるカバー体の撓みおよび各躯体間の上下方向の相対変位を許容することができ、これによってカバー体に過大な曲げ荷重が作用することを緩和し、カバー体の変形および破損が防止される。
【0019】
さらに本発明は、前記前後方向に隣接して複数のカバー体が配置され、各カバー体の前後方向に対向する各端部は、各端部にわたって水密に装着される補助カバー体によって接続されることを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、複数のカバー体が補助カバー体によって水密に連結されるので、天井用伸縮カバー装置の構成を大きく変えずに簡単な構成で、前後方向に長い区間にわたって延びる空隙を塞ぎ、各躯体間にわたる天井面の連続性を維持して、各躯体の左右方向、前後方向および上下方向の相対変位を許容することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、急激な地震の発生によって各躯体が左右方向、前後方向および上下方向に相対変位しても、カバー体は一端部が縁材によって回動可能に支持され、かつ他端部は他方の躯体の下面に当接するので、カバー体が縁材とともに一方の躯体に追従し、他方の躯体に対して相対変位しても、他方の躯体に対するカバー体の左右方向、前後方向および上下方向の変位が許容され、空隙を下から塞いだ状態に維持して、外観上、天井面の連続性が得られ、美観を損なわずに、空隙内で落下した漏水を回収し、空隙から各躯体の下方の下部空間へ漏水が流れ落ちてしまうことが防がれる。また、縁材の当接部によってカバー体の他端部が下方へ移動する方向への回動が阻止されるので、カバー体が自重または収容した漏水の重みによって傾くこと防がれ、カバー体の他端部と他方の躯体の下面との間の隙間の発生を防ぎ、各躯体間にわたる天井面の連続性を損なわずに空隙を常に塞いだ状態に維持することができる。
【0022】
また本発明によれば、他方の躯体に第1案内部材が設けられ、カバー体に第2案内部材が設けられ、これらの第1および第2案内部材が左右方向に沿って移動可能に係合するので、各躯体が空隙を介して左右方向の間隔が大きく、その間隔に対応して各躯体間にわたる広幅のカバー体を採用してカバー体の形態が大きくなっても、縁材の支持部に過度に大きな荷重を作用させず、またカバー体を躯体に当接させて、前後方向の変位に追従することができる。したがって各躯体間の左右方向の間隔が大きくなっても、確実にカバー体によって空隙を塞ぎかつ空隙内の漏水をカバー体内に収容することができる。なお、このカバー体内に収容された漏水は、前述と同様に、たとえばドレン管または排水パイプによって実現される排水用導水設備によって既設の下水管および排水溝などの排水設備に導かれて排出される。
【0023】
縁材の支持部に対してカバー体の一端部が回動軸線に沿って移動可能であるので、各躯体間の前後方向の相対変位を許容することができ、カバー体の自重および収容した漏水の重量によるカバー体の撓みおよび各躯体間の上下方向の相対変位を許容することができ、これによってカバー体に過大な曲げ荷重が作用することを緩和し、カバー体の変形および破損が防止される。
【0024】
さらに本発明によれば、複数のカバー体が補助カバー体によって水密に連結されるので、天井用伸縮カバー装置の構成を大きく変えずに簡単な構成で、前後方向に長い区間にわたって延びる空隙を塞ぎ、各躯体間にわたる天井面の連続性を維持して、各躯体の相対変位を許容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明の実施の一形態の天井用伸縮カバー装置1の設置状態を示す鉛直断面図である。隣接するコンクリート構造の2つの独立した建物間には、目地として空隙Gが存在し、この空隙Gをあけて相互に対向する各躯体3a,3bの各下部対向部4a,4bには、各躯体3a,3bが近接および離反する左右方向X1、前記左右方向X1に垂直な前後方向X2および上下方向Yの相対変位を許容しかつ各躯体3a,3b間の空隙Gを下方から塞いだ状態に維持するために、天井用伸縮カバー装置1が設けられる。また、各躯体3a,3bの上部対向部5a,5bには、床用伸縮カバー装置6が設けられる。
【0026】
なお、本発明の実施の形態において、「左右方向X1」および「前後方向X2」とは、静水面に平行な水平面上で直交する2方向にそれぞれ平行な各方向、ならびに地盤の不等沈下および建物の施工誤差などによって水平な2方向に対してわずかに傾斜した方向を含む実質的に水平とみなすことができる方向をいう。また「上下方向Y」とは、鉛直方向および地盤の不等沈下および建物の施工誤差などによって鉛直方向に対してわずかに傾斜した方向を含む実質的に鉛直な方向をいう。
【0027】
前記天井用伸縮カバー装置1は、一端部が一方の躯体3aに前記前後方向X2に平行な回動軸線mまわりに回動可能に保持され、他端部が他方の躯体3bの下面7bに下方から当接して支持され、前後方向X2に沿う長手方向に垂直な断面が凹状のカバー体8と、一方の躯体3aの下面7aに固定され、前記カバー体8の一端部を前記回動軸線mまわりに回動可能に支持する支持部9、およびカバー体8の一端部が前記支持部9によって支持された状態で前記他端部が下方へ変位する方向へのカバー体8の回動を阻止する当接部10を有する縁材11とを含む。
【0028】
前記カバー体8は、空隙Gから落下した漏水を収容して、下部空間12への漏水の漏洩を防止するとともに、下部空間12から天井を見たときの天井面の連続性が得られ、外見上の美観を向上するために設けられる。前記漏水は、各躯体3a,3bから上方の上部空間13が屋外である場合には、主として雨水、散水および結露水などであり、上部空間13が屋内である場合には、主としてこぼした水や飲料水および結露水などであり、さらに通行者が落とした硬貨、筆記具などの小物、履物によって持ち込まれた微小なごみおよび砂などの固形物をも含み、これらを包括して「漏水」と称する。
【0029】
前記天井用伸縮カバー装置1の上方には、各躯体3a,3bの上部対向部5a,5b間にわたって床用伸縮カバー装置6が設けられる。この床用伸縮カバー装置6は、各躯体3a,3bの各上部対向部5a,5bに形成された各凹所14a,14bの水平な各取付け面15a,15bにアンカー体16a,16bによってライナープレート17a,17bを敷設した状態でライナープレート17a,17bとともに固定される一対の上部縁材18a,18bと、各上部縁材18a,18bに両端部が支持される上部カバー体19と、各上部縁材18a,18bにビス20a,20bによってそれぞれ固定され、上部カバー体19の前記両端部を上方から弾発的に押下して、上部カバー体19の離脱を防止するとともに、各上部縁材18a,18bを覆う一対の縁材カバー21a,21bと、各凹所14a,14bの各取付け面15a,15bから各立ち上がり面22a,22bにわたって両端部が配置され、これらの両端部が各取付け面15a,15b上で前記各ライナープレート17a,17bおよび各上部縁材18a,18bとともに前記アンカー体16a,16bによって固定され,各下端部がカバー体8の底板50に接する位置まで垂下される一対の排水案内シート23a,23bと、両端部が各上部縁材18a,18bに保持され、下方に凸に湾曲して垂下した状態で、前後方向X2にたとえば1%〜10%の排水勾配で傾斜して設けられる止水シート24とを含む。
【0030】
各上部縁材18a,18bは、平坦状の基部25a,25bと、基部25a,25bの相互に近接する各一端部から直角に立ち上がり、上部カバー体19の両端部を支持する前壁部26a,26bと、基部25a,25bの各他端部から直角に立ち上がる側壁部27a,27bと、側壁部27a,27bの上端部から前記一端部側へ直角に屈曲して突出し前記ビス20a,20bが螺着されるねじ受け部28a,28bと、基部25a,25bの一端部に形成され、前記止水シート24の両端部が嵌着される止水シート嵌合部29a,29bと、基部25a,25bの下面から下方に突出し、断面がL字状の一対の脚部30a,30bとを有する。前記上部カバー体19および各縁材カバー21a,21bは、アルミニウム合金の押し出し形材または鋼板の打ち抜き加工材からなる。
【0031】
各前壁部26a,26bの各上端部には、ポリ塩化ビニルなどの滑り性の良好な軟質合成樹脂からなり、断面が逆U字状の摺動片31a,31bがそれぞれ装着され、各摺動片31a,31bを介して上部カバー体19が支持され、これらの摺動片31a,31bによって上部カバー体19は各上部縁材18a,18bに対して円滑に移動して、各躯体3a,3b間の相対変位を許容することができるように構成される。このような各上部縁材18a,18bは、アルミニウム合金の押し出し形材からなり、前記ライナープレート17a,17bとともに図1の紙面に垂直な前後方向X2を長手方向として、各取付け面15a,15b上に設置される。
【0032】
図2は、図1に示される天井用伸縮カバー装置1およびその近傍を示す斜視図であり、図3は図2の切断面線III−IIIから見た水平断面図である。前記各躯体3a,3bは、各建物A,Bの各外壁35a,35bからそれぞれ突出して通路または廊下として利用されるスラブであって、各外壁35a,35bに直角に突出して形成される。各躯体3a,3bの遊端部には、上方に直角に立ち上がる手摺り壁36a,36bが設けられ、前記天井用伸縮カバー装置1は、各手摺り壁36a,36bと各外壁35a,35bとの間でかつ各躯体3a,3bの各下面7a,7b間にわたってほぼ水平に設置される。前記各躯体3a,3bの各下面7a,7bは下層階の天井面を構成し、各躯体3a,3bの各上面37a,37bは上層階の床面を構成する。
【0033】
天井用伸縮カバー装置1の遊端部には、各手摺り壁36a,36bにわたって天井用伸縮カバー装置1に直角に第1壁用伸縮カバー装置38が設置される。また天井用伸縮カバー装置1の基端部には、各外壁35a,35bにわたって天井用伸縮カバー装置1に直角に第2壁用伸縮カバー装置39が設置される。これらの第1および第2壁用伸縮カバー装置38,39は、各躯体3a,3bにそれぞれ固定された各一対の縁材(図示せず)上で各壁カバー体40,41を各躯体3a,3bの左右方向X1、前後方向X2および上下方向Yの相対変位を許容し、かつ空隙Gを外側から覆った状態に保持して、空隙G内への雨水の浸入を阻止し、外見上の美観を向上することができる。
【0034】
図4は、天井用伸縮カバー装置1の具体的構成を示す拡大断面図であり、図3の切断面線IV−IVから見た断面を示す。前記カバー体8は、前述したように断面が凹状であって、平坦な底板50と、底板50の一端部に連なって直角に上方に立ち上がる一方の側板51と、底板50の他端部に連なって直角に立ち上がる他方の側板52と、前記一方の側板51の上端部から前記他方の側板52に近接する方向に直角に突出して連なる一方の屈曲部53と、他方の側板52の上端部から前記他方の側板51に近接する方向に直角に突出して連なる他方の屈曲部54と、前記一方の側板51から外側方(図4の左方)に突出する第1ヒンジ片55とを含む。
【0035】
前記第1ヒンジ片55は、一方の側板51から前記外側方に突出する連結片56と、連結片56の遊端部に一体的に形成される直円柱状のヒンジピン57とを有する。
【0036】
このようなカバー体8は、たとえばアルミニウム合金の押し出し形材またはステンレス鋼板の打ち抜き加工材からなり、図4の紙面に垂直な前後方向X2を長手方向として配置される長尺材である。
【0037】
前記他方の屈曲部54にはパッキン60が装着される。このパッキン60は、前記他方の屈曲部54が嵌合する断面が略U字状の嵌合部61と、嵌合部61の第1水平方向X1の両端部からほぼ直角に立ち上がる一対の舌状部62とを有する。各舌状部62は、他方の躯体3bの下面7bに、下方から弾発的に当接し、他方の躯体3bとカバー体8との間の水密性を実現する。このパッキン60は、たとえばエチレンプロピレンゴム(略称EPDM)からなり、高い耐水性、耐摩耗性および耐候性を有する。
【0038】
次に、前記縁材11の具体的構成について説明する。前記縁材11は、縁材本体71と縁材カバー72とによって構成される。前記縁材本体71は、偏平な板状の基部73と、基部73から垂直上方に突出する一対の平行な脚部74,75と、基部73の一端部から上方に突出して一体的に形成される係止爪76と、基部73の他端部から上方に突出して一体的に形成されるパッキン嵌合片77と、基部73の他端部から下方に突出して一体的に形成される側部78と、この側部78の下端部に他方の躯体3b側ないしは空隙G側に突出して一体的に形成される断面が略C字状の第2ヒンジ部79と、前記側部78の下端部から前記第2ヒンジ片79とは反対側(図4の左方)に直角に突出して一体的に形成されるねじ受け部80と、基部73の他端部から前記基部73とは反対側(図4の右方)に突出して一体的に形成される断面がL字状の前記当接部10とを有する。
【0039】
前記第2ヒンジ片79は、前記第1ヒンジ片55のヒンジピン57の外径よりもわずかに大きな内径の直円柱状の一部を成すヒンジピン嵌合孔81を有し、このヒンジピン嵌合孔81にヒンジピン57を嵌合させることによって、第1ヒンジ片55が第2ヒンジ片79から離脱することなしに前後方向X2に平行な回動軸線mまわりに回動可能に連結される。これによってカバー体8は、縁材11に前記回動軸線mまわりに回動可能に連結されて保持される。前記第1ヒンジ片55と第2ヒンジ片79とは、カバー体8を縁材11に前後方向X2に平行な回動軸線mまわりに回動可能に連結するヒンジ手段を構成する。
【0040】
前記当接部10は、前記基部73の他端部に平行に連なる水平部分83と、水平部分83の前記側部78に対して最も離れた遊端部から下方に直角に連なり前記側部78と平行な垂下部分84と、垂下部分84の下端部に連なり、下方になるにつれて側部78から離反する方向に傾斜する傾斜部分85とによって構成される。
【0041】
このように当接部10が構成されることによって、カバー体8が、その他端部が他方の躯体3bの下面7bから離反する方向に大きく回動したとき、当接部10の垂下部分84がカバー体8の一方の屈曲部53の先端部分によって側壁78から離反する方向へ押圧されて弾性変形し、さらに押圧されるにつれて、一方の屈曲部53の当接位置が垂下部分84の下端から傾斜部分85に乗り移り、傾斜部分85上を摺動して、水平部分83を大きく上方に湾曲させずに前記傾斜部分85から前記一方の屈曲部53を離脱させることができる。これによって当接部10全体が前記基部73の他端部、すなわち前記パッキン嵌合部77と側部78と当接部10とが交差する剛性の高い交差部から上方へ大きな角度で湾曲して破損してしまうことが防がれ、各躯体3a,3b間の上下方向Yの大きな相対変位に対して、カバー体8および縁材11が破損してしまうことが防がれる。
【0042】
前記パッキン嵌合部77は、パッキン87が装着される断面が略C字状の嵌合部分88と、嵌合部分88に一体的に連なり、前記基部73の他端部から上方に直角に突出して一体的に形成される断面が略T字状の連結部分89とを有する。前記パッキン87は、エチレンプロピレンゴム(略称EPDM)からなり、各躯体3a,3bの相互に左右方向X1に対向する各対向壁面90a,90bのうち、一方の躯体3aの対向壁面90aに弾発的に当接して、縁材11と一方の躯体3aとの間の水密性を達成している。
【0043】
前記縁材カバー72は、断面が大略的にL字状であって、前記基部73および水平部分83にほぼ平行な上蓋部91と、上蓋部91の一端部に上方に直角に屈曲して連なる側壁部92と、側壁部92の上端部に直角に屈曲して連なり前記基部73の一端部に上方から係合する係合部93と、係合部93の先端部から下方に突出して一体的に形成される係合爪94とを有する。
【0044】
前記縁材カバー72が縁材本体71に装着された状態では、前記係合部93が基部73の一端部に係合し、縁材カバー72の係合爪94が基部73の係合爪76よりも他端部側に配置されて、前記係合部93の基部73からの離脱が防止される。上蓋部91はビス95によってねじ受け部80に固定される。
【0045】
このような縁材カバー72は、アルミニウム合金の押し出し形材または打ち抜き加工材からなり、この縁材カバー72が前記ビス95によって縁材本体71に固定される。また前記縁材本体71は、アンカー体70によって一方の躯体3aの下面7a上に固定される。
【0046】
図5は、天井用伸縮カバー装置1の各躯体3a,3b側に配置される一端部付近を示す拡大断面図であり、図3の切断面線V−Vから見た断面を示す。前記カバー体8の各躯体3a,3b側に配置される一端部には、第2案内部材としての小口ブロック100がビス101によってシート状シール部材102とともに固定される。この小口ブロック100は、前記ビス101が螺着される円筒状のボス部103が形成されるブロック部104と、ブロック部104の一側部の上面から立ち上がる端壁部105と、ブロック部104の一側部の下面から下方に突出する係止突部106とを有する。前記シール部材102は、たとえばブチルゴムからなり、小口ブロック100はカバー体8に水密に取り付けられる。
【0047】
再び図4をも参照して、他方の躯体3bの下面7bには、第1案内部材として断面がL字状の案内部材107が複数(本実施の形態では2)のアンカー体108によって固定される。この案内部材107は、前記他方の躯体3bの下面7bに下方から当接する取付け片109と、この取付け片109の前後方向X2の一端部から直角に屈曲した案内片110とを有する。
【0048】
取付け片109には、前後方向X2に延びる複数(本実施の形態では2)の長孔111が形成される。前記案内片110は、取付け片109から下方に第1突出量H1を有する第1案内部112と、第1突出量H1よりも大きい第2突出量H2を有する第2案内部113と、第1突出量H1から第2突出量H2に突出量が変化し、第1案内部112および第2案内部113間に介在される第3案内部114とを有する。
【0049】
前記第1案内部112には、下方に臨む下縁部分の前記パッキン60に臨む角部115に、前記パッキン60に近接するにつれて上方に傾斜する第1案内面116が形成され、この第1案内面116よりも前記パッキン60から離反する方向に取付け片109と平行、すなわち左右方向X1と平行に延びる第2案内面117が形成される。前記第2案内面117は、前記パッキン嵌合部54の高さ位置よりも上方に退避して形成される。前記第1突出量H1は、前記取付け片109の上面から垂直に前記第2案内面117までの距離をいう。
【0050】
また第2案内部113には、下方に臨み、取付け片109の上面と平行な第3案内面120が、前記パッキン嵌合部54が形成される高さ位置よりも下方に突出して形成される。前記第2突出量H2は、前記取付け片109の上面から垂直に前記第3案内面120までの距離をいう。
【0051】
さらに前記第3案内部114には、前記第1案内部112の第2案内面117から第2案内部113の第3案内面120に連なり、第1案内部112から第2案内部113に向かって下方、すなわち取付け片109から下方に向かって離反する方向に傾斜する第4案内面121が形成される。
【0052】
このように、他方の躯体3bに固定される案内部材107において、案内片110は第1〜第3案内部112,113,114を有し、これらの案内部112,113,114には第1〜第4案内面116,117,121,120が形成されるので、各躯体3a,3bが近接する方向に相対変位したとき、第1案内面116によって第1案内部115がパッキン60を押圧してパッキン嵌合部54と他方の躯体3bの下面7bとの間に挿入され、前記近接する方向に相対変位するにつれて前記パッキン60は第2案内面117に押し下げられた状態を維持したままで案内部材107の移動を許容し、さらに第4案内面121によってパッキン嵌合部54がパッキン60とともに押し下げられ、パッキン60が第3案内面120上に乗り上げた状態となる。
【0053】
これによって、各躯体3a,3b間の左右方向X1の相対変位において、カバー体8はその他端部が他方の躯体3bの下面7bから離反する方向に第2突出量H2に相当する角度だけ前記回動軸線mを中心に回動し、カバー体8と他方の躯体3bとの衝突が確実に回避される。また各躯体3a,3bが前述とは逆に、相互に離反する方向に相対変位すると、パッキン60およびパッキン嵌合部54は案内部材107の第3案内面120、第4案内面121、第2案内面117および第1案内面116上をこの順序に摺動しながら案内され、カバー体8は前記回動軸線mまわりに前記近接する方向の相対変位時の回動方向とは逆方向に角変位して、元の水平な状態に復帰する。
【0054】
小口ブロック100は、前記案内部材107に対して、小口ブロック100の端壁部105が案内部材107の案内片110よりも各躯体3a,3b側に配置される。したがって、端壁部105および案内片110が相互に当接した設置当初の状態から各躯体3a,3bの前後方向X2の相対変位において、一方の躯体3aが他方の躯体3bに対して一方側(図5の左方)に変位すると、端壁部105が案内片110に同方向に当接するため、カバー体8の同方向の変位が案内部材107に阻止される。その結果、カバー体8の第1ヒンジ片55は縁材11の第2ヒンジ片79に対して回動軸線mに沿って同方向に移動し、前記前後方向X2の一方側の相対変位が許容される。
【0055】
また、前記前後方向X2の相対変位における他方側(図5の右方)に各躯体3a,3bが相対変位すると、小口ブロック100の端壁部105は案内部材107の案内片110から離反し、小口ブロック100が他方の建物Bの外壁35bに当接するまでの前後方向X2に平行な間隔ΔLの範囲で、前記他方側への相対変位が許容される。このようにして各躯体3a,3bの前後方向X2の相対変位を許容することができる。
【0056】
図6は、図3の切断面線VI−VIから見た拡大断面図である。前記縁材11およびカバー体8の前後方向X2に沿う長手方向一端部は、断面が逆L字状の端板130によって水密に塞がれている。またカバー体8の端板130には、前記パッキン60が前記パッキン嵌合部54に連なって装着され、このパッキン60が他方の躯体3bの下面7bに弾発的に当接して水密性が確保されるとともに、カバー体8内に溜まった漏水を外部に排出するためのL字状に屈曲した排水管131の一端部が接続され、端板130に形成された透孔132を介して連通している。カバー体8に溜まった漏水は、前記透孔132を経て排水管131に導かれ、図示しない排水パイプによって既設排水溝などの排水設備へ導かれて排出処理される。
【0057】
図7は、カバー体8の継手部140を上方から見た平面図であり、図8は図7の切断面線VIII−VIIIから見た断面図である。前記前後方向X2に隣接する複数のカバー体8が配置され、各カバー体8の前後方向X2に対向する各端部は相互に当接し、各端部にわたってシート状シール部材143によって水密に装着された補助カバー体144によって接続される。補助カバー体144は、その断面が凹状であり、両側の側壁がビス145,146によって各カバー体8に固定される。
【0058】
複数のカバー体8が補助カバー体144によって水密に連結されるので、天井用伸縮カバー装置1の構成を大きく変えずに簡単な構成で、前後方向X2に長い区間にわたって延びる空隙を塞ぎ、各躯体3a,3b間にわたる天井面の連続性を維持して、各躯体3a,3bの左右方向X1および前後方向X2ならびに上下方向Yの相対変位を許容することができる。また、各躯体3,3bの前後方向X2の幅がそれほど大きくない場合には、前記補助カバー体144を用いずに単一のカバー体8だけが用いられてもよい。
【0059】
以上のように本実施の形態によれば、一方の躯体3aに縁材11が固定され、この縁材11は、支持部9と当接部10とを有し、支持部9によって、カバー体8の一端部が回動軸線mまわりに回動可能に支持され、当接部10にカバー体8の一端部が当接して、カバー体8の他端部が下方へ変位する方向への回動が阻止される。前記カバー体8は、断面が凹状に形成されるので、左右方向X1の両端部からカバー体8内の漏水が流れ出すことが防がれ、空隙G内で落下する漏水をカバー体8内に確実に収容して、排水管131から排水することができる。そのため、前記カバー体8は、排水管131側の端部が各躯体3a,3b側の端部よりも下方に傾斜した排水勾配を有するように設置されてもよく、あるいはカバー体8内に落下する漏水の流量が微小である場合には、水平に設置されてもよい。
【0060】
急激な地震が発生すると、各躯体3a,3bは左右方向X1、前後方向X2および上下方向Yに相対変位する。このような相対変位は、実際には第1および前後方向X2ならびに上下方向Yの3方向の変位を各方向の変位成分とする合成された3次元変位として生じる場合がほとんどである。したがって前記カバー体8は、縁材11に対して支持部9によって前後方向X2に平行な回動軸線mまわりに回動可能に一端部が支持され、かつ他端部は他方の躯体3bの下面によって当接することによって、カバー体8が縁材11とともに一方の躯体3aに追従し、他方の躯体3bに対して相対変位しても、他方の躯体3bに対するカバー体8の左右方向X1、前後方向X2および上下方向Yの変位が許容され、カバー体8が他方の躯体3bとの干渉によって破壊されることが防がれ、空隙を下から塞いだ状態に維持し、外観上、各躯体3a,3bの下面7a,7bおよびカバー体8の下面によって実現される天井面の連続性が得られ、美観を損なわずに、空隙内で落下した漏水を回収し、空隙から下部空間12へ漏水が流れ落ちてしまうことが防がれる。
【0061】
また、縁材11の当接部10によってカバー体8の他端部が下方へ移動する方向への回動が阻止されるので、カバー体8の他端部が他方の躯体3bの下面7bから下方に離間する方向にカバー体8が傾斜することが阻止される。これによって、カバー体8の他端部と他方の躯体3bの下面7bとの間に隙間が発生せず、各躯体3a,3b間にわたる天井面の連続性を損なわずに空隙Gを常に塞いだ状態に維持することができる。
【0062】
また、他方の躯体3bに第1案内部材として案内部材107が設けられ、カバー体8に第2案内部材として小口ブロック100が設けられ、これらの案内部材107および小口ブロック100が左右方向X1に沿って移動可能でかつ前後方向X2に係合するので、各躯体3a,3bが空隙Gを介して左右方向X1の間隔が大きく、その間隔に対応して各躯体3a,3b間にわたる広幅のカバー体8を採用してカバー体8の形態が大きくなっても、縁材11の支持部9に過度に大きな荷重を負担させずに、カバー体8の重量を負荷させることができる。したがって各躯体3a,3b間の左右方向X1の間隔が大きくなっても、確実にカバー体8によって空隙Gを塞ぎかつ空隙G内の漏水をカバー体8内に収容することができる。
【0063】
本発明の実施の他の形態では、第1および第2案内部材は前述の案内部材107および小口ブロック100に限るものではなく、たとえば偏平な板状体からなる端板を溶接によってカバー体の長手方向両端部を塞ぐように接合するなどの他の形態が採用されてもよい。
【0064】
さらに、縁材11の支持部9に対してカバー体8の一端部が第1および第2ヒンジ片55,79によって回動軸線mに沿って移動可能であるので、各躯体3a,3b間の前後方向X2の相対変位を許容することができ、カバー体8の自重および収容した漏水の重量によるカバー体8の撓みおよび各躯体3a,3b間の上下方向Yの相対変位を許容することができ、これによってカバー体8に過大な曲げ荷重が作用することを緩和し、カバー体8の変形および破損を防ぐことができる。
【0065】
さらに、複数のカバー体8が前記補助カバー体144によって水密に連結されるので、天井用伸縮カバー装置1の構成を大きく変えずに、簡単な構成で、前後方向X2に長い区間にわたって延びる空隙Gを塞ぎ、各躯体3a,3b間にわたる天井面の連続性を維持して、各躯体3a,3bの第1および前後方向X2ならびに上下方向Yの相対変位を許容することができる。
【0066】
図9は、本発明の実施の他の形態の天井用伸縮カバー装置1aを示す鉛直断面図である。なお、前述の実施の形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。本実施の他の形態の天井用伸縮カバー装置1aは、一方の躯体3aが壁構造体であり、他方の躯体3bがスラブである場合に適用される。この天井用伸縮カバー装置1aにおいて、一方の躯体3aの鉛直な対向壁面90aに、縁材11aが固定される。この縁材11aもまた、前記縁材11と同様に、支持部9および当接部10を有し、第1および第2ヒンジ片55,79によってカバー体8の一端部が回動可能に連結される。また、この天井用伸縮カバー装置1aの上方には、前述の床用伸縮カバー装置6と類似の床用伸縮カバー装置6aが設置される。この床用伸縮カバー装置6aの上部縁材18aもまた、前述の床用伸縮カバー装置6aの縁材11aと同様に、前記鉛直な一方の対向壁面90aに固定される。
【0067】
このような天井用伸縮カバー装置1aは、前述の実施の形態の天井用伸縮カバー装置1と同様な効果を達成し、急激な地震による各躯体3a,3b間の左右方向X1、前後方向X2および上下方向Yの相対変位を許容して、カバー体8が他方の躯体3bとの干渉によって破壊されることなく、空隙Gを下から塞いだ状態に維持し、外観上、天井面の連続性が得られ、美観を損なわずに、空隙G内で落下した漏水を回収し、空隙Gから下部空間12へ漏水が流れ落ちてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の一形態の天井用伸縮カバー装置1の設置状態を示す鉛直断面図である。
【図2】図1に示される天井用伸縮カバー装置1およびその近傍を示す斜視図である。
【図3】図2の切断面線II−IIから見た水平断面図である。
【図4】天井用伸縮カバー装置1の具体的構成を示す拡大断面図であり、図3の切断面線IV−IVから見た断面を示す。
【図5】天井用伸縮カバー装置1の各躯体3a,3b側に配置される一端部付近を示す拡大断面図であり、図3の切断面線V−Vから見た断面を示す。
【図6】図3の切断面線VI−VIから見た拡大断面図である。
【図7】カバー体8の継手部を上方から見た平面図である。
【図8】図7の切断面線VIII−VIIIから見た断面図である。
【図9】本発明の実施の他の形態の天井用伸縮カバー装置1aを示す鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1,1a 天井用伸縮カバー装置
3a,3b 躯体
4a,4b 下部対向部
5a,5b 上部対向部
6,6a 床用伸縮カバー装置
7a 一方の躯体3aの下面
7b 他方の躯体3bの下面
8 カバー体
9 支持部
10 当接部
11,11a 縁材
12 下部空間
13 上部空間
16a,16b アンカー体
18a,18b 上部縁材
19 上部カバー体
20a,20b ビス
21a,21b 縁材カバー
23a,23b 排水案内シート
24 止水シート
25a,25b 基部
26a,26b 前壁部
27a,27b 側壁部
35a,35b 外壁
36a,36b 手摺り壁
39 第2壁用伸縮カバー装置
40,41 壁カバー体
55 第1ヒンジ片
56 連結片
57 ヒンジピン
70,108 アンカー体
71 縁材本体
72 縁材カバー
73 基部
79 第2ヒンジ部
83 水平部分
84 垂下部分
85 傾斜部分
88 嵌合部分
89 連結部分
90a,90b 対向壁面
91 上蓋部
92 側壁部
93 係合部
94 係合爪
100 小口ブロック
104 ブロック部
105 端壁部
106 係止突部
107 案内部材
109 取付け片
110 案内片
112 第1案内部
113 第2案内部
114 第3案内部
115 角部
116 第1案内面
117 第2案内面
120 第3案内面
121 第4案内面
130 端板
131 排水管
132 透孔
140 継手部
143 シール部材
144 補助カバー体
A,B 建物
G 空隙
m 回動軸線
X1 左右方向
X2 前後方向
Y 上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する2つの建物の各躯体が空隙をあけて相互に対向し、各躯体の近接および離反する左右方向、前記左右方向に垂直な前後方向および上下方向の相対変位を許容しかつ各躯体間の空隙を下方から塞いだ状態に維持する天井用伸縮カバー装置であって、
一端部が一方の躯体に前記前後方向に平行な回動軸線まわりに回動可能に保持され、他端部が他方の躯体の下面に当接する断面が凹状のカバー体と、
一方の躯体に固定され、前記カバー体の一端部を前記回動軸線まわりに回動可能に支持する支持部と、カバー体の一端部が前記支持部によって支持された状態で前記他端部が下方へ変位する方向へのカバー体の回動を阻止する当接部とが設けられる縁材とを含むことを特徴とする天井用伸縮カバー装置。
【請求項2】
前記他方の躯体には、左右方向に延びる第1案内部材が固定され、
前記カバー体には、そのカバー体内に収容された状態で、第1案内部材に左右方向に沿って移動可能に係合する第2案内部材が固定され、
前記縁材の支持部は、カバー体の一端部を前記回動軸線まわりに回動可能にかつ回動軸線に沿って移動可能に支持することを特徴とする請求項1記載の天井用伸縮カバー装置。
【請求項3】
前記前後方向に隣接して複数のカバー体が配置され、各カバー体の前後方向に対向する各端部は、各端部にわたって水密に装着される補助カバー体によって接続されることを特徴とする請求項1または2記載の天井用伸縮カバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−56629(P2007−56629A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246513(P2005−246513)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000004732)株式会社日本アルミ (64)
【Fターム(参考)】