説明

天井解体工法

【課題】既存天井の解体に際して軽量鉄骨下地をそのまま残して天井ボードのみを効率的に解体撤去する。
【解決手段】解体対象の既存天井の下方からウォータージェットにより天井ボード4を切断するとともに切断物を軽量鉄骨下地3から切り離して撤去する。天井ボードを横方向の切断線C1と縦方向の切断線C2により縦横に切断するとともに、縦方向の切断線C2を軽量鉄骨下地の直下の位置に設定して、天井ボードをネジ7の近傍位置で切断すると同時に切断物をネジから切り離し可能とする。あるいは縦方向の切断線C2を軽量鉄骨下地の相互間に設定するとともにネジの周囲に穿孔を形成して切り離す。横方向の切断を先行する。自律的に作動する解体ロボットを使用して軽量鉄骨下地の位置を検出し、天井ボードの切断位置や切り離し位置を設定し、それに基づいて解体作業を自動的に実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軽量鉄骨下地に天井ボードを取り付けた構造の既存天井を対象とする天井解体工法、特に軽量鉄骨下地を残して天井ボードのみを撤去するための工法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、建物の内装としての天井は野縁としての軽量鉄骨下地に天井ボードを取り付けた構造のものが一般的であり、特に天井ボードとしては下貼り材としての石膏ボードと仕上げ材としての化粧ボードとを二重貼りしたものが最も一般的である。
そのような構造の天井の施工手順としては、軽量鉄骨下地を組み立てた後、まず下貼り材としての石膏ボードを軽量鉄骨下地に対してネジ止めし、その上に化粧ボードを重ねて接着することが一般的である。
【0003】
ところで、既存建物の改修(リニューアル)工事に際して上記のような構造の既存天井を解体する必要がある場合、従来一般には作業員がバール等の工具を用いて天井ボードを軽量鉄骨下地から引き剥がすようにして力任せに解体撤去することが通常であり、特許文献1にはそのような解体作業の際に補助的に用いるための解体装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−240444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような作業員の人力に頼る天井解体作業は非効率的であるばかりでなく、作業安全性の確保と、多量に発生する破砕片や粉塵に対する処理が不可欠であり、必ずしも容易にかつ安価に行い得るものではない。
【0006】
また、リニューアルの程度によっては天井ボードを貼り代えるだけで充分であって軽量鉄骨下地までは解体する必要はない場合もあるが、従来においては軽量鉄骨下地を損傷させることなくそのまま残して天井ボードのみを撤去することは極めて困難であることから、既存の軽量鉄骨下地を利用可能な場合であっても天井ボードとともに解体撤去するしかなく、その点で不合理であった。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は既存天井の解体に際して軽量鉄骨下地をそのまま残して天井ボードのみを効率的に解体撤去することの可能な天井解体撤去工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軽量鉄骨下地に天井ボードを取り付けた構造の既存天井を対象として、前記軽量鉄骨下地を残して前記天井ボードのみを撤去するための天井解体工法であって、解体対象の天井の下方からウォータージェットにより前記天井ボードを切断するとともに切断物を前記軽量鉄骨下地から切り離して撤去することを特徴とする。
【0009】
本発明においては、前記天井ボードを、前記軽量鉄骨下地に直交する横方向の切断線と前記軽量鉄骨下地に平行な縦方向の切断線とにより縦横に切断するとともに、前記縦方向の切断線を前記天井ボードがネジ止めされて固定されている前記軽量鉄骨下地の直下の位置に形成することにより、該天井ボードを前記ネジの近傍位置で切断すると同時に切断物を該ネジから切り離し可能とすると良い。
その場合においては、軽量鉄骨下地の直下に形成する縦方向の切断線を、前記軽量鉄骨下地に沿う単一あるいは二重の直線状もしくは螺旋状やジグザグ状に設定することが考えられる。
また、その場合の切断手順としては、まず前記天井ボードを前記軽量鉄骨下地に直交する横方向の切断線により全面的に切断した後、前記軽量鉄骨下地の直下の位置において該軽量鉄骨下地に平行な縦方向の切断線により切断すると良い。
【0010】
あるいは、天井ボードを切断して軽量鉄骨下地から切り離すために、前記天井ボードを前記軽量鉄骨下地に直交する横方向の切断線と前記軽量鉄骨下地に平行な縦方向の切断線とにより縦横に切断するとともに、前記縦方向の切断線を前記天井ボードがネジ止めされて固定されている前記軽量鉄骨下地の相互間に形成し、さらに前記天井ボードを前記軽量鉄骨下地に対して固定しているネジの周囲において該天井ボードの一部をウォータージェットにより切除して穿孔を形成するようにしても良い。
その場合の切断手順としては、まず前記天井ボードを前記軽量鉄骨下地に直交する横方向の切断線により全面的に切断した後、前記軽量鉄骨下地の相互間の位置において該軽量鉄骨下地に平行な縦方向の切断線により全面的に切断し、しかる後に前記穿孔を形成すると良い。
【0011】
さらに、本発明においては、解体対象の天井の下方において床面上を自走可能な走行台車にロボットアームを搭載して該ロボットアームの先端にウォータージェットを噴射するノズルを装着してなる解体ロボットを使用し、該解体ロボットにより前記天井ボードを切断するとともに軽量鉄骨下地より切り離すと良い。
その場合、解体ロボットにより軽量鉄骨下地の位置を検出し、その検出結果に基づいて天井ボードの切断位置や軽量鉄骨下地からの切り離し位置を設定し、その設定結果に基づいて前記ノズルを移動させて切断作業や切り離し作業を実施すれば良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の天井解体工法によれば、ウォータージェットにより天井ボードのみを効率的に切断することが可能であり、したがって撤去する必要のない軽量鉄骨下地をそのまま残すことができ、リニューアル工事の合理化を図ることができる。
また、従来のバール等の工具による解体作業のように多量の破砕片や粉塵が発生することはなく、したがって解体物の搬出作業や解体作業後の清掃作業等も含めて遙かに効率的な作業が可能であるし、作業安全性の確保や作業環境維持の点でも有利である。
【0013】
特に、天井ボードを縦横に切断するとともに、縦方向の切断線を軽量鉄骨下地の直下の位置に設定して、天井ボードをネジ止めしているネジの位置ないしネジの近傍位置で切断すれば、天井ボードを切断すると同時に軽量鉄骨下地から自ずと切り離し可能となるから作業効率に優れる。
あるいは、切断工程と切り離し工程とを別工程により行うこととして縦方向の切断線を軽量鉄骨下地の相互間に設定し、ネジの周囲で天井ボードを切除してそこに穿孔を形成することによっても切断物を軽量鉄骨下地から確実に切り離すことができる。
いずれにしても、天井ボードを縦横に切断して切り離すためには、まず天井ボードを軽量鉄骨下地に直交する横方向の切断線により全面的に切断した後、軽量鉄骨下地の直下の位置で縦方向の切断線により切断すると同時に切り離す手順とするか、あるいは軽量鉄骨下地の相互間の位置で軽量鉄骨下地に平行な縦方向の切断線により全面的に切断したうえでネジの周囲に穿孔を形成して切り離す手順とすることにより、効率的な解体作業を行うことが可能である。
【0014】
さらに、自律的に作動する解体ロボットを用いることにより天井解体作業の完全自動化を実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明方法により解体する既存天井の構造の一例を示す図である。
【図2】本発明方法の実施形態を示すもので、天井ボードの切断パターンの一例を示す図である。
【図3】同、天井ボードを軽量鉄骨下地から切り離すための切断線の形成例を示す図である。
【図4】同、他の切断パターンを示す図である。
【図5】同、さらに他の切断パターンを示す図である。
【図6】同、天井ボードを軽量鉄骨下地から切り離すための穿孔の形成例を示す図である。
【図7】本発明方法において使用する解体ロボットの一例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(a)〜(d)は本発明工法が解体対象としている既存天井の構造を示すものである。
これは上階のスラブから吊りボルト1および野縁受2を介して吊り支持された軽量鉄骨下地3に天井ボード4を取り付けた構造のものである。
軽量鉄骨下地3は軽溝形鋼(いわゆるCチャンネル)からなるものであって、野縁受2に対して直交しかつ互いに平行に等間隔で取り付けられて天井構成要素としての野縁として機能するものである。
なお、本発明においては軽量鉄骨下地3に平行な方向を主たる方向としており、本明細書および特許請求の範囲においては軽量鉄骨下地3に平行な方向を縦方向と称し、軽量鉄骨下地3に直交する方向を横方向と称している。
【0017】
天井ボード4は下貼り材としての石膏ボード5と仕上げ材としての化粧ボード6からなる二重構造とされ、(c),(d)に示すように石膏ボード5が軽量鉄骨下地3に対してネジ7により固定され、その石膏ボード5に対して化粧ボード6が重ねられて接着されているものである。
なお、図示例の既存天井では(b)に示すように天井ボード4の下張り材としての石膏ボード5が900mm×1800mmの定尺寸法とされ、それがネジ止めされている軽量鉄骨下地3のピッチは360mmとされ、各軽量鉄骨下地3に対して石膏ボード5が200mmピッチでネジ止めされている。軽量鉄骨下地3としては基本的に(c)に示すようにシングル幅(25mm)の軽溝形鋼が用いられているが、石膏ボード4の長手方向両端部をネジ止めしているものは(d)に示すようにダブル幅(50mm)とされてその両側にそれぞれ石膏ボード4がネジ止めされている。
また、図示例の既存天井では石膏ボード5および化粧ボード6の厚さ寸法はいずれも10mmとされ、したがって天井ボード4の全体の厚さ寸法は20mmとされている。
【0018】
本実施形態の天井解体工法は上記構造の既存天井をリニューアルするに際し、軽量鉄骨下地3を吊りボルト1および野縁受2とともにそのまま残して天井ボード4のみを解体撤去するものであり、そのためにウォータージェットによって軽量鉄骨下地3に対しては何ら損傷を与えることなく天井ボード4のみを効率的に切断し撤去することを主眼とするものである。
【0019】
周知のように、ウォータージェットはノズルから噴射する高圧ないし超高圧の水流の作用により各種材料の切断やコンクリート表面の斫りが可能なものであり、水圧やノズル口径、切断速度、スタンドオフ(ノズルと切断対象物との距離)等の仕様を適正に設定することにより目的とする切断対象物のみを選択的に切断することが可能であることから、本実施形態ではそれらの仕様を軽量鉄骨下地3を切断不能かつ天井ボード4を切断可能な範囲に設定することにより、軽量鉄骨下地3を切断することなく天井ボード4のみを切断するようにしたものである。
【0020】
具体的には、天井ボード4の厚さが20mm(石膏ボード5が10mm厚+化粧ボード6が10mm厚)の場合における好適な仕様としては、ウォータージェットの水圧を200MPa〜280MPa、ノズル口径を0.15〜0.4mm(特に好ましくは0.18mmあるいは0.3mm)、スタンドオフを15〜30mm、切断速度(ノズルの走査速度)を2m/sec以下(特に好ましくは0.5〜1m/sec)とすることが良い。
そのような仕様によるウォータージェットによれば軽量鉄骨下地3に対して何ら損傷を与えることなく天井ボード4のみを確実かつ効率的に切断可能であることはもとより、その場合の所要水量はわずか3リットル/min程度で済み、したがって周囲が水浸しになったり床面に水溜まりができるような懸念はないので切断に伴う水損を考慮する必要はないしそれに対する対策も不要である。
【0021】
以下、天井ボード4を切断するための具体的な実施形態を図2〜図3を参照して説明する。
天井ボード4を切断するための切断パターンは任意に設定可能であるが、作業効率や切断物のハンドリング、搬出作業等を考慮すると、切断物の最大寸法は1m程度とすることが現実的であり、したがってたとえば天井ボード4の全体を縦横に1m程度の間隔で格子状に切断して個々の切断物の大きさを1m×1m程度とすることが考えられる。
しかし、天井ボード4の全体を任意の位置で単に縦横に切断するだけでは、切断された天井ボード4(個々の切断物)が軽量鉄骨下地3に対して未だネジ止めされた状態であるからそのままでは撤去できず、それを撤去するためには切断物を軽量鉄骨下地3から切り離す必要がある。そこで、効率的な切断作業と撤去作業を行うためには天井ボード4を切断すると同時にそれを軽量鉄骨下地3から切り離してしまうようなパターンで切断を行うことがより好ましい。
【0022】
そのため、本実施形態では図2(a)に示すように軽量鉄骨下地3に直交する方向(野縁受2と平行な方向=図2において横方向)に設定した切断線C1により天井ボード4全体を所定間隔(たとえば1m程度)で切断するとともに、軽量鉄骨下地3の直下の位置においてその軽量鉄骨下地3に沿う方向(図2において縦方向)に設定した切断線C2により天井ボード4を軽量鉄骨下地3の直下の位置で切断して、個々の切断物を1m×0.36m程度の大きさとするようにしている。
なお、この場合の切断順序は任意であって、横方向の切断を先行した後に縦方向の切断を行うことでも良いし、あるいはその逆でも良いし、適宜の手順で双方の切断を交互に行うことでも良い。しかし、まず軽量鉄骨下地3に直交する横方向の切断を全面的に先行した後に、軽量鉄骨下地3に沿う縦方向の切断を軽量鉄骨下地3の直下で行うことが現実的であり、そのような切断手順によることがより好ましい。
【0023】
上記のように天井ボード4を軽量鉄骨下地3の直下の位置で切断することとして、そのための切断線C2を図3(a)に示すように軽量鉄骨下地3の幅の範囲内で直線状となるように設定すれば、その切断線C2は自ずとネジ7に重なる位置を通過するか、重ならないまでもネジ7に充分に近接する位置を通過するから、天井ボード4は切断されると同時にネジ7から(つまり軽量鉄骨下地3から)切り離されてしまうことになる。
この場合、切断線C2がネジ7の中心を通れば切断物をその自重により自ずと落下させることができるが、ネジ7は必ずしも厳密に一直線上に並んでいるとは限らないことから切断線C2がネジ7の位置とずれることも想定され、その場合には切断物が落下しないことも想定される。しかし、そのような場合でもずれが5mm程度の範囲内であれば通常は支障なく落下するし、落下せずとも軽量鉄骨下地3に引っ掛かってぶら下がるような状態となるから、人為的に100N程度の力で軽く引っ張ることのみで容易に撤去することができる。
また、ネジ7が一直線上に並んでいない場合を想定して、そのような場合においてもネジ7からの切り離しをより確実に行うために、図3(b)に示すように切断線C2を軽量鉄骨下地3の幅寸法の範囲内で若干の間隔(5mm程度)をおいて二重の直線状としたり、(c)に示すように偏心回転ノズルを高速(100〜200rad/sec)で回転させながら低速(0.5m/sec程度)で走行させることによって螺旋状の切断線C2としたり、(d)に示すようにジグザグ状の切断線C2とすることも考えられる。
【0024】
上記のように天井ボード4を横方向には約1m間隔で切断し、縦方向には軽量鉄骨下地3の直下の位置で切断するような切断パターンとすることにより、本実施形態では天井ボード4の全体が約1m×0.36mの大きさに切断されると同時に軽量鉄骨下地3から切り離され、したがって個々の切断物は図2(b)に示すように切断されると同時に自重により自ずと落下してしまうか、あるいは落下せずとも軽量鉄骨下地3に引っ掛かってぶら下がるような状態となって人為的に軽く引っ張ることのみで容易に撤去することができる。
【0025】
したがって本実施形態の天井解体工法によれば、天井ボード4のみをウォータージェットにより確実かつ効率的に切断することが可能であり、かつ軽量鉄骨自体3に対しては何らの損傷を与えることがないので、撤去する必要のない軽量鉄骨下地3をそのまま残すことができ、リニューアル工事の合理化を図ることができる。
また、従来のバール等の工具による力任せの解体作業のように多量の破砕片や粉塵が発生することはなく、したがって解体物の搬出作業や解体作業後の清掃作業等も含めて遙かに効率的な解体作業が可能であるし、作業安全性の確保や作業環境維持の点でも有利である。
【0026】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態はあくまで好適な一例であって本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、たとえば以下に列挙するような様々な変形や応用が可能である。
【0027】
既に述べたように切断パターンは任意であって、軽量鉄骨下地3の形態に応じて、また切断作業効率や切断物のハンドリング等の諸条件も考慮して適宜設定すれば良く、必要であればたとえば図4に示すように上記実施形態の切断パターンを基本としてさらに軽量鉄骨下地3の相互間においても切断することにより個々の切断物をより小さくすることができる。
【0028】
上記実施形態のように切断線C2を軽量鉄骨下地3の直下の位置に設定してネジ7に重なるような位置で切断することにより、切断と同時に切り離しが可能であって自ずと落下させることが可能であるから、通常はそのような切断パターンとすることが現実的ではあるが、あるいは切断の際には敢えて完全な切り離しをせずに,図2(b)に示したように切断物が軽量鉄骨下地3に引っ掛かってぶら下がる程度に切り離すに留め、しかる後に作業員が切断物を軽く引っ張って撤去するようにしても良い。そのようにすれば切断と同時に切断物が不用意に落下してしまうことを防止できるし、不用意な落下を防止するために切断物を仮支持しながら切断するような必要もない。
【0029】
さらに、上記実施形態のように切断と切り離しを同時に行うことに代えて、天井ボード4の切断と軽量鉄骨下地3からの切り離しを完全に別工程により行うことでも良い。
その場合の一例として、たとえば図5に示すように軽量鉄骨下地3に平行な縦方向の切断線C2を軽量鉄骨下地3の相互間に設定するとともに、ネジ7の周囲において天井ボード4の一部をウォータージェットによってくり抜くようにして切除してそこに穿孔8を形成することが考えられる。勿論、そのような穿孔8の形成は偏心回転ノズルを用いることで容易にかつ効率的に行うことができる。
なお、この場合の切断手順としては、天井ボードを所望位置で縦横に切断した後に各ネジ7の位置に穿孔8を形成するか、あるいは逆に各ネジ7の位置に穿孔8を形成した後に天井ボード4を所望位置で縦横に切断することでも良いが、通常は軽量鉄骨下地3に直交する横方向の切断を全面的に先行した後、軽量鉄骨下地3の相互間においてそれに平行な縦方向の切断を全面的に行い、しかる後に各切断物のネジ7の周囲に穿孔8を形成して各切断物を軽量鉄骨下地から順次切り離して撤去すれば良く、そのような手法により最も効率的な解体が可能であり、かつ切断物を軽量鉄骨下地3から確実に切り離して容易に撤去することができる。
なお、図5では軽量鉄骨下地3の相互間の全てに縦方向の切断線C2を形成することによって切断物の大きさを上記実施形態と同様に1m×0.36m程度としているが、軽量鉄骨下地3間における縦方向の縦方向の切断を一部省略して切断物の大きさをより大きくすることも勿論可能であり、たとえば縦方向の切断線C2を2本おきとすれば切断物の大きさを図示例の場合の3倍(1m×1m程度)の大きさとすることができることになる。
【0030】
また、そのような場合における穿孔8の径寸法は任意であるが、穿孔8をネジ7の径に比べて充分に大きくすれば確実に切り離しができて切断物を容易に撤去できるし、逆に穿孔8を充分に小さくして切り離された切断物がネジ7に引っ掛かるようにすれば不用意な落下を防止することができる。
また、ネジ7が一直線上に並んでいない場合や、ネジ7のピッチに多少の誤差が生じている場合もあるので、それを考慮してたとえば図6(a)に示すように穿孔8の径をネジ7の径よりも充分に大きく設定すれば各ネジ7との切り離しを確実に行うことができる。
勿論、ネジ7が一直線上に並んでいない場合であっても、ネジ7の位置を厳密に検知できる場合には(b)に示すように各ネジ7の位置に合わせて穿孔8を形成すれば良い。
さらに、たとえば図6(c)、(d)に示すように軽量鉄骨下地3の直下の位置で切断線C2による切断を行いつつ、あるいはそれに前後して、ネジ7の位置に穿孔8を形成しても良く、それにより軽量鉄骨下地3の位置での切断と切り離しとを確実に行うことができる。
【0031】
ところで、本発明工法による天井ボード4の切断作業や穿孔8の形成による切り離し作業は必ずしも特殊な装置を必要とせず、ウォータージェットによる切断作業を上述したような仕様で実施可能なものであれば汎用の装置を用いることも可能であるが、作業の効率化や自動化を図るためにはたとえば図7に示すような解体ロボット10を用いることが好適である。
これは、床面上を任意方向に自走可能な走行台車11に任意方向に旋回可能かつ俯仰可能なロボットアーム12を搭載し、そのロボットアーム12の先端にウォータージェットを天井面に向けて噴射するノズル13を装着したものであって、この解体ロボット10が移動しながら切断作業や切り離し作業を自動的に行うことが可能なものである。
【0032】
いずれにしても、本発明工法では天井ボード4の切断位置や切り離し位置を設定するためには軽量鉄骨下地3の位置やネジ7の位置を検知する必要があり、それらの位置検知は磁気センサ等の適宜の検出器を用いて容易にかつ精度良く行い得るから、予め天井面下からそれらの位置を検出しておくか、あるいはそれらの位置を検出しながら切断を行えば良いが、特にそのような検出作業も上記の解体ロボット10により行うことが好ましい。
すなわち、上記の解体ロボット10に軽量鉄骨下地3の位置やネジ7の位置を検出するための機構を搭載しておき、解体ロボット10自身によってそれらの位置を検出して切断位置や切り離し位置を設定し、それに基づいて解体ロボット10自身が軽量鉄骨下地3に倣って移動しかつロボットアーム12を操作してノズル13を所望位置に移動させながら切断作業や切り離し作業を行うように構成すれば良く、それにより天井解体作業の完全自動化を実現することも可能である。勿論、そのためには走行駆動源や操舵機構、各種センサ類などの全ての要素を総合的に制御して一連の作業を自動的に行うための制御装置を搭載して自律的に作動するロボットとして構成しておけば良い。
【0033】
さらに、上記解体ロボット10には、切断した天井ボード4が不用意に落下してしまうことを防止するための仮支持機構や、切断物を保持して床面に降下させるための機構、切断物を積載して搬出するための機構等、天井解体に関連する様々な作業を実施するための機構も搭載しておくことが考えられる。
【符号の説明】
【0034】
1 吊りボルト
2 野縁受
3 軽量鉄骨下地(野縁)
4 天井ボード
5 石膏ボード
6 化粧ボード
7 ネジ
8 穿孔
10 解体ロボット
11 走行台車
12 ロボットアーム
13 ノズル
C1 切断線(横方向=軽量鉄骨下地に直交する方向の切断線)
C2 切断線(縦方向=軽量鉄骨下地に平行な方向の切断線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量鉄骨下地に天井ボードを取り付けた構造の既存天井を対象として、前記軽量鉄骨下地を残して前記天井ボードのみを撤去するための天井解体工法であって、
解体対象の天井の下方からウォータージェットにより前記天井ボードを切断するとともに切断物を前記軽量鉄骨下地から切り離して撤去することを特徴とする天井解体工法。
【請求項2】
請求項1記載の天井解体工法であって、
前記天井ボードを、前記軽量鉄骨下地に直交する横方向の切断線と、前記軽量鉄骨下地に平行な縦方向の切断線とにより縦横に切断するとともに、
前記縦方向の切断線を前記天井ボードがネジ止めされて固定されている前記軽量鉄骨下地の直下の位置に形成することにより、該天井ボードを前記ネジの近傍位置で切断すると同時に切断物を該ネジから切り離し可能とすることを特徴とする天井解体工法。
【請求項3】
請求項2記載の天井解体工法であって、
前記縦方向の切断線を前記軽量鉄骨下地に沿う単一の直線状に設定することを特徴とする天井解体工法。
【請求項4】
請求項2記載の天井解体工法であって、
前記縦方向の切断線を前記軽量鉄骨下地に沿う二重の直線状に設定することを特徴とする天井解体工法。
【請求項5】
請求項2記載の天井解体工法であって、
前記縦方向の切断線を前記軽量鉄骨下地に沿う螺旋状に設定することを特徴とする天井解体工法。
【請求項6】
請求項2記載の天井解体工法であって、
前記縦方向の切断線を前記軽量鉄骨下地に沿うジグザグ状に設定することを特徴とする天井解体工法。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の天井解体工法であって、
前記天井ボードを、前記軽量鉄骨下地に直交する横方向の切断線により全面的に切断した後、前記軽量鉄骨下地の直下の位置において該軽量鉄骨下地に平行な縦方向の切断線により切断することを特徴とする天井解体工法。
【請求項8】
請求項1記載の天井解体工法であって、
前記天井ボードを、前記軽量鉄骨下地に直交する横方向の切断線と、前記軽量鉄骨下地に平行な縦方向の切断線とにより縦横に切断するとともに、
前記縦方向の切断線を前記天井ボードがネジ止めされて固定されている前記軽量鉄骨下地の相互間に形成し、
前記天井ボードを前記軽量鉄骨下地に対して固定しているネジの周囲において該天井ボードの一部をウォータージェットにより切除して穿孔を形成することにより切断物を該ネジから切り離し可能とすることを特徴とする天井解体工法。
【請求項9】
請求項8記載の天井解体工法であって、
前記天井ボードを、前記軽量鉄骨下地に直交する横方向の切断線により全面的に切断した後、前記軽量鉄骨下地の相互間の位置において該軽量鉄骨下地に平行な縦方向の切断線により全面的に切断し、しかる後に前記穿孔を形成することを特徴とする天井解体工法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の天井解体工法であって、
解体対象の天井の下方において床面上を自走可能な走行台車にロボットアームを搭載して該ロボットアームの先端にウォータージェットを噴射するノズルを装着してなる解体ロボットを使用し、該解体ロボットにより前記天井ボードを切断するとともに軽量鉄骨下地より切り離して撤去することを特徴とする天井解体工法。
【請求項11】
請求項10記載の天井解体工法であって、
前記解体ロボットにより軽量鉄骨下地の位置を検出し、その検出結果に基づいて天井ボードの切断位置や軽量鉄骨下地からの切り離し位置を設定し、その設定結果に基づいて前記ノズルを移動させて切断作業や切り離し作業を実施することを特徴とする天井解体工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−203053(P2010−203053A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46548(P2009−46548)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト、建設系産業廃棄物処理RTシステム(特殊環境用ロボット分野)、廃材分別を考慮した環境対応型解体作業支援ロボットの研究開発 」委託研究、 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】