説明

天井走行車

【課題】地上側のロードポート8との間で昇降台の昇降により物品の受け渡しを行う天井走行車であり、天井スペースに設けられた走行レール4と、走行レールに沿って走行する走行台車12と、走行台車に支持される駆動昇降部20と、駆動昇降部で吊持材24の作動により昇降する昇降台22からなり、昇降台には下方の障害物を監視する障害物センサ28a,bを設ける。
【解決手段】障害物センサを天井走行車の本体フレームなどではなく昇降台に配置するので、昇降台を下降させるとロードポートに近い位置で監視することになり、障害物を確実に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は天井走行車に関し、特にロードポート付近の障害物の監視に関する。
【背景技術】
【0002】
天井走行車は昇降台を昇降させて地上側のロードポートとの間で物品を受け渡しし、走行レールに沿って走行する。昇降台を昇降させる際に、ロードポート付近に人や不用意に置き忘れられた物品などがあると危険なので、ロードポート付近の障害物を検出する必要がある。従来の天井走行車(不図示)では、天井走行車の落下防止カバーに障害物センサを設けてロードポートを監視していたが、落下防止カバーからではロードポートまでの距離が大きく、監視距離の長い障害物センサが必要であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、昇降台を昇降させる際に、監視距離の短い障害物センサでも障害物を確実に検出できるようにすることにある。
請求項2,3の発明での追加の課題は、障害物を更に確実に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、天井スペースに設けた走行レールに沿って走行する台車と、該台車に直接または間接に支持される昇降駆動部と、昇降駆動部での吊持材の繰り出し/巻き取りにより昇降する昇降台とを備えた天井走行車において、前記昇降台に下方の障害物を検出するための障害物センサを設けたことを特徴とする。
【0005】
好ましくは、天井走行車は地上側のロードポートとの間で前記昇降台により物品を受け渡しを行い、ここで該ロードポートは左右一方の側が通路スペースで、他方の側が処理装置スペースとされており、前記障害物センサを昇降台の通路スペース側に配置する。
【0006】
特に好ましくは、前記物品は前記通路スペース側にカットされたコーナーが位置する姿勢でロードポート上に載置され、前記障害物センサを前記コーナーの上部に配置する。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、天井走行車の落下防止カバーや本体フレームなどではなく、昇降台に障害物センサを配置するので、昇降台を下降させると短い距離で障害物を検出できる。このため障害物検出の信頼性が増す。
【0008】
ここで障害物センサを昇降台の通路スペース側に配置すると、通路からロードポートへアクセスしようとする人体や、ロードポート付近に不用意に置かれた物品を確実に検出できる。
【0009】
また障害物センサを物品のコーナーの上部に配置すると、物品をカットしたコーナーを介してさらに確実に障害物を検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1〜図4に、実施例とその変形とを示す。これらの図において、2は天井走行車で、クリーンルームなどの天井空間に設けた走行レール4に沿って走行し、6はクリーンルームの地上スペースに設けた処理装置で、天井走行車2は処理装置6とロードポート8を介して物品10を受け渡しする。なおロードポートは天井走行車2が物品を受け渡しする地上側設備を指し、処理装置以外の場所に設けられていても良い。
【0012】
天井走行車2は走行台車12を備えて走行レール4内を走行し、フレーム14により横送り部16を支持する。横送り部16はθドライブ18を横送りし、θドライブ18は昇降駆動部20を水平面内で回動させて、物品10をロードポート8への移載に適した向きにする。昇降駆動部20は昇降台22をワイヤやロープ、ベルトなどの吊持材24により昇降させ、チャック26により物品10を把持して搬送する。横送り部16やθドライブ18は設けなくても良く、その場合、走行台車12で昇降駆動部20を直接支持することも可能である。
【0013】
走行レール4の直下にロードポート8があり、天井走行車2の走行方向、即ち走行レール4の長手方向から見て左右一方の側に処理装置6があり、走行レール4の下方と処理装置6の反対側とに通路29がある。ロードポート8には天井走行車2以外に作業者等もアクセスし、またロードポート8の付近に不用意に物品を置かれることがある。そこでロードポート8の付近の人体や物品を検出するため、昇降台22に前後一対の障害物センサ28a,28bを設ける。
【0014】
昇降台22の前後の通路29側に一対の突起40,40を設け、その先端が物品10のR部32よりも通路29側に突き出すようにし、この部分に障害物センサ28a,28bを設ける。障害物センサ28a,28bは例えばレーザ距離計からなり、レーザ光の向きを扇状に変化させて、障害物センサ28a,28bから所定の角度内でかつ所定の距離内の監視範囲38を監視する。39は監視範囲の下端で、監視範囲38はロードポート8を避けるように斜めに配置して、その下端39をロードポート8よりも低い位置に配置する。あるいは監視範囲38をほぼ鉛直にして、その下端がロードポート8よりも高い位置に来るようにしてもよい。
【0015】
物品10は半導体の搬送用のカセットなどで、ロードポート8では処理装置6側に物品10の前面があり、この部分に蓋34が取り付けられてある。物品10の中央上部にフランジ36があり、天井走行車2のチャック26でフランジ36を把持する。物品10を上面側から見た場合、背面側の2つのコーナー部はカットされてR部32となり、そのカット面は鉛直である。そして突起40はR部32を越えて通路29側へ突き出しており、この部分に障害物センサ28a,28bを設ける。
【0016】
図3に障害物センサ28a,28bの制御系を示すと、昇降駆動部20などに設けた台車側制御部42は、昇降台22に設けた昇降台側制御部44へ、昇降台の高さ信号を送出する。障害物センサ28a,28bの監視範囲を昇降台22の昇降により変化させ、例えばその下端39が絶えず一定の高さになるようにする。そして障害物センサ28a,28bの検出信号を制御部44を介して制御部42へ送出し、障害物を検出する。
【0017】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 障害物センサ28a,28bを昇降台22に取り付けたので、昇降台の下降に伴い、ロードポート付近の障害物をより近距離で検出できる。このため監視距離の短い障害物センサの使用が可能になる。
(2) 障害物センサ28a,28bを前後一対設け、物品10のR部32を越えた位置で検出する。このためロードポート8のすぐ付近の位置を監視でき、検出の信頼性が増す。
(3) 監視範囲を昇降台の昇降に連れて変化させるので、正確な検出ができる。
【0018】
図4に、変形例を示す。この変形例では、昇降台22の通路29寄りで前後方向中心部に、物品10の背面中央部を越えるように突起46を設け、この部分に障害物センサ28を設ける。そして同様に監視範囲48に対して監視を行い、その下端49はロードポート8の上部にあってもロードポート8の外側でロードポート8よりも下側にあっても良い。図4の変形例と図2の実施例を比較すると、図2の実施例ではロードポート8の側方の障害物も検出できるが、図4の変形例では困難である。また図2の実施例ではR部32に突起40を設けるので、より短い突起で物品10の背面を避けながら監視できる。このため、より物品10に近い位置で監視できる。他の点では図4の変形例は図2の実施例と同様で、特に天井走行車の構造や、障害物センサの監視範囲を昇降台の高さによって変更する点は、実施例と同様である。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例の天井走行車がロードポート付近の障害物を監視している姿を示す側面図
【図2】昇降台に設けたセンサからの監視範囲を示す、実施例の部分切り欠き部付き要部平面図
【図3】実施例でのセンサの制御系を示すブロック図
【図4】昇降台に設けたセンサからの監視範囲を示す、変形例の部分切り欠き部付き要部平面図
【符号の説明】
【0020】
2 天井走行車
4 走行レール
6 処理装置
8 ロードポート
10 物品
12 走行台車
14 フレーム
16 横送り部
18 θドライブ
20 昇降駆動部
22 昇降台
24 吊持材
26 チャック
28 障害物センサ
29 通路
30 落下防止カバー
32 R部
34 蓋
36 フランジ
38,48 監視範囲
39,49 監視範囲の下端
40,46 突起
42 台車側制御部
44 昇降台側制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井スペースに設けた走行レールに沿って走行する台車と、該台車に直接または間接に支持される昇降駆動部と、昇降駆動部での吊持材の繰り出し/巻き取りにより昇降する昇降台とを備えた天井走行車において、
前記昇降台に下方の障害物を検出するための障害物センサを設けたことを特徴とする、天井走行車。
【請求項2】
天井走行車は地上側のロードポートとの間で前記昇降台の昇降により物品を受け渡しを行い、ここで該ロードポートは左右一方の側が通路スペースで、他方の側が処理装置スペースとされており、前記障害物センサを昇降台の通路スペース側に配置したことを特徴とする、請求項1の天井走行車。
【請求項3】
前記物品は前記通路スペース側にカットされたコーナーが位置する姿勢でロードポート上に載置され、前記障害物センサを前記コーナーの上部に配置したことを特徴とする、請求項2の天井走行車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−298567(P2006−298567A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122463(P2005−122463)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】