説明

天体自動追尾撮影方法及び天体自動追尾撮影装置

【課題】追尾条件に応じて、無駄な演算処理を省いてCPUの負担を低減しながら、最適な駆動周期で撮像素子を駆動して天体を点像として撮影することができる天体自動追尾撮影方法及び天体自動追尾撮影装置を得る。
【解決手段】日周運動によって撮影装置に対して相対運動する天体を撮影するために、撮影装置に内蔵する所定の追尾手段を駆動させながら追尾撮影する天体自動追尾撮影方法であって、前記撮影装置の撮像素子の撮像面上に形成される天体像の、日周運動による所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出するステップ;及び算出した前記天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離と、前記撮像素子の画素ピッチとに基づいて、前記追尾手段の駆動周期を設定するステップ;を有することを特徴とする天体自動追尾撮影方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天体の静止撮影を可能にした天体自動追尾撮影方法及び天体自動追尾撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影装置を固定して長時間露出で天体撮影を行うと、地球の自転により撮影装置に対して相対的に天体が移動(日周運動)するため、天体の移動軌跡が直線状あるいは曲線状に写ってしまう。そこで、撮影装置を固定したままで、撮影装置の撮像素子を駆動(移動)させながら撮影する天体自動追尾撮影が提案されている。
【0003】
従来の天体自動追尾撮影では、撮像素子の駆動周期(移動周期)を出来るだけ短く(撮像素子を日周運動に同期させてできるだけ連続的に移動させるように)設定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−289052号公報
【特許文献2】特開2010−122672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、天体像を止めるために、そのような連続駆動ないし短い駆動周期で駆動して追尾撮影を行う必要がある場合は少なく、大抵は必要な駆動周期より短い駆動周期で撮像素子を駆動しているのが実状であった。そのため無駄な演算処理によるCPUの負担が増大していた。
【0006】
本発明は以上の問題意識に基づいて完成されたものであり、追尾条件に応じて、無駄な演算処理を省いてCPUの負担を低減しながら、最適な駆動周期で撮像素子を駆動して天体を点像として撮影することができる天体自動追尾撮影方法及び天体自動追尾撮影装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の天体自動追尾撮影方法は、日周運動によって撮影装置に対して相対運動する天体を撮影するために、撮影装置に内蔵する所定の追尾手段を駆動させながら追尾撮影する天体自動追尾撮影方法であって、前記撮影装置の撮像素子の撮像面上に形成される天体像の、日周運動による所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出するステップ;及び算出した前記天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離と、前記撮像素子の画素ピッチとに基づいて、前記追尾手段の駆動周期を設定するステップ;を有することを特徴としている。
【0008】
本発明の天体自動追尾撮影方法は、前記撮影装置の撮影光学系の焦点距離情報を入力するステップを更に有し、前記移動距離算出ステップでは、入力した前記撮影光学系の焦点距離情報を使って、前記天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出することが好ましい。
このようにすれば、天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離をより高精度に算出することができる。
【0009】
前記駆動周期設定ステップでは、算出した前記天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離が、前記撮像素子の画素ピッチを超えない範囲内で、前記追尾手段の駆動周期を設定することが好ましい。
このようにすれば、撮像素子の撮像面上に形成される天体像が撮像素子の画素ピッチを跨いで移動することがないので、天体を静止状態(光点状)で撮影することができる。
【0010】
前記移動距離算出ステップでは、前記撮像素子の撮像面上に形成される天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を、前記撮影光学系の光軸に対して直交する方向の平行移動成分と、該光軸と平行な軸回りの回転移動成分とに分けて算出し、前記駆動周期設定ステップでは、前記平行移動成分の移動距離に対応する追尾手段の駆動周期と前記回転移動成分の移動距離に対応する追尾手段の駆動周期とのうちいずれか短い方の駆動周期を、前記追尾手段の駆動周期として設定することが好ましい。
このようにすれば、撮像素子の撮像面上における天体像の平行移動成分と回転移動成分の所定時間あたりの移動距離の大きい方を止めることができるので、少ない駆動頻度(長い駆動周囲)で天体を静止状態(光点状)で撮影することができる。
【0011】
本発明の天体自動追尾撮影方法は、撮影時間中に、前記追尾手段の駆動周期を更新するステップを更に有していてもよい。
このようにすれば、撮影時間中に追尾条件が仮想的に変化した場合であっても、変化した追尾条件に応じた最適な駆動周期で追尾手段を駆動することができる。
【0012】
本発明の天体自動追尾撮影方法は、撮影地点の緯度情報、撮影方位角情報、撮影仰角情報、及び撮影装置の姿勢情報を入力するステップをさらに有し、前記移動距離算出ステップでは、入力した前記撮影地点の緯度情報、撮影方位角情報、撮影仰角情報、及び撮影装置の姿勢情報と、撮影光学系の焦点距離情報とを用いて、前記撮像素子の撮像面上に形成される天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出することができる。
このようにすれば、より簡単に追尾撮影をすることができる。
【0013】
本発明の天体自動追尾撮影装置は、日周運動によって撮影装置に対して相対運動する天体を撮影するために、撮影装置に内蔵する所定の追尾手段を駆動させながら追尾撮影する天体自動追尾撮影装置であって、前記撮影装置の撮像素子の撮像面上に形成される天体像の、日周運動による所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出する移動距離算出手段;及び前記移動距離算出手段が算出した天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離と、前記撮像素子の画素ピッチとに基づいて、前記追尾手段の駆動周期を設定する駆動周期制御手段;を有することを特徴としている。
【0014】
前記撮影装置の撮影光学系の焦点距離情報を入力する焦点距離情報入力手段を更に有し、前記移動距離算出手段は、前記焦点距離情報入力手段から入力した撮影光学系の焦点距離情報を使って、前記天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出することが好ましい。
【0015】
前記駆動周期制御手段は、前記移動距離算出手段が算出した天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離が、前記撮像素子の画素ピッチを超えない範囲内で、前記追尾手段の駆動周期を設定することが好ましい。
【0016】
前記移動距離算出手段は、前記撮像素子の撮像面上に形成される天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を、前記撮影光学系の光軸に対して直交する方向の平行移動成分と、該光軸と平行な軸回りの回転移動成分とに分けて算出し、前記駆動周期制御手段は、前記平行移動成分の移動距離に対応する追尾手段の駆動周期と前記回転移動成分の移動距離に対応する追尾手段の駆動周期とのうちいずれか短い方の駆動周期を、前記追尾手段の駆動周期として設定することが好ましい。
【0017】
前記駆動周期制御手段は、撮影時間中に、前記追尾手段の駆動周期を更新してもよい。
【0018】
本発明の天体自動追尾撮影装置は、撮影地点の緯度情報、撮影方位角情報、撮影仰角情報、及び撮影装置の姿勢情報、撮影光学系の焦点距離を入力する入力手段をさらに有し、前記移動距離算出手段は、前記入力手段から入力した情報を用いて、前記撮像素子の撮像面上に形成される天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出することができる。
【0019】
本発明の天体自動追尾撮影装置は、その一態様では、前記追尾手段は、前記撮像素子の全撮像領域であり、前記駆動周期制御手段が設定した駆動周期に基づいて、前記撮像素子の全撮像領域を移動させる移動手段を有している。
【0020】
本発明の天体自動追尾撮影装置は、別の態様では、前記追尾手段は、前記撮像素子の全撮像領域の一部を電子的にトリミングしたトリミング領域であり、前記駆動周期制御手段が設定した駆動周期に基づいて、前記トリミング領域を仮想的に移動させる移動手段を有している。
【0021】
本発明の天体自動追尾撮影装置は、さらに別の態様では、前記追尾手段は、前記撮影光学系、及び前記撮像素子の全撮像領域の一部を電子的にトリミングしたトリミング領域であり、前記駆動周期制御手段が設定した駆動周期に基づいて、前記撮影光学系の一部を偏心させることで天体像を撮影装置に対して移動させると共に、前記トリミング領域を仮想的に回転移動させる移動手段を有している。
ここで言う「撮影光学系の光軸」とは、偏心調整前の初期状態における撮影光学系の光軸を意味する。
【0022】
本発明の天体自動追尾撮影装置は、さらに別の態様では、前記追尾手段は、前記撮像素子の全撮像領域、及び前記撮像素子の全撮像領域の一部を電子的にトリミングしたトリミング領域であり、前記駆動周期制御手段が設定した駆動周期に基づいて、前記撮像素子の全撮像領域を、撮像面の短辺方向と長辺方向に設けられたガイド手段に沿って移動させると共に、前記トリミング領域を仮想的に回転移動させる移動手段を有している。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、追尾条件に応じて、無駄な演算処理を省いてCPUの負担を低減しながら、最適な駆動周期で撮像素子を駆動して天体を点像として撮影することができる天体自動追尾撮影方法及び天体自動追尾撮影装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による天体自動追尾撮影装置であるデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】北極点で天体撮影する様子を、天球の半径をrとして示した図である。
【図3】図1を真下から見た様子を説明する図である。
【図4】天体の軌道(円軌道)を異なる方向(a1)乃至(a4)から見た様子を説明する図である。
【図5】円軌道の天体を異なる方向(a1)乃至(a4)から撮影した場合の天体の軌跡の画像を示した図である。
【図6】天体にカメラを向けて、地球の自転により天体画像が描く軌跡を説明する図である。
【図7】天体が見かけ上楕円(円)軌道を描いて移動する場合、天体を撮像センサ中心にとらえて天体の移動に対して追尾する様子を説明する図である。
【図8】楕円と接線の関係を説明する図である。
【図9】本発明による天体自動追尾撮影を説明する天球図である。
【図10】同天球図上の、北極点、目標の天体及び天頂を結ぶ球面三角形を示した図である。
【図11】デジタルカメラがその撮影光軸回りに水平から傾いている様子を示した図である。
【図12】本発明による天体自動追尾撮影の動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明による別実施形態を示す図1に対応するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1ないし図13を参照して、本発明の天体自動追尾撮影装置をデジタルカメラ(撮影装置)10に適用した実施形態を説明する。
【0026】
図1に示すように、デジタルカメラ10は、カメラボディ11と撮影レンズ101(撮影光学系101L)を備えている。カメラボディ11内には、撮影光学系101Lの後方に撮像センサ(撮像素子、追尾手段)13が配設されている。撮影光学系101Lの光軸LOと撮像センサ13の撮像面(追尾手段)14とは直交している。撮像センサ13は、撮像センサ駆動ユニット(移動手段)15に搭載されている。撮像センサ駆動ユニット15は、固定ステージと、この固定ステージに対して可動な可動ステージと、固定ステージに対して可動ステージを移動させる電磁回路とを有しており、可動ステージに撮像センサ13が保持されている。撮像センサ13(可動ステージ)は、光軸LOと直交する所望の方向に所望の移動速度で平行移動制御され、さらに光軸LOと平行な軸(光軸LOと直交する面内の何処かに位置する瞬間中心)を中心として所望の回転速度で回転制御される。このような撮像センサ駆動ユニット15は、例えば特開2007−25616号公報に記載されているカメラの像ブレ補正装置の防振ユニットとして公知である。
【0027】
撮影レンズ101は、撮影光学系101L内に、絞り103を備えている。この絞り103の絞り値(開閉度合い)は、カメラボディ11内に備えられた絞り駆動制御機構17によって制御される。撮影レンズ101は、撮影光学系101Lの焦点距離情報fを検出する焦点距離検出装置(焦点距離情報入力手段)105を備えている。
【0028】
カメラボディ11は、撮像センサ13で撮像した画像を表示するLCDモニタ23と、撮像センサ13で撮像した画像を保存するメモリーカード25を備えている。またカメラボディ11は、電源スイッチ27と、レリーズスイッチ28と、設定スイッチ30とを備えている。電源スイッチ27は、デジタルカメラ10の電源のオンオフを切り替えるためのスイッチである。レリーズスイッチ28は、焦点調節処理、測光処理及び撮影処理を実行するためのスイッチである。設定スイッチ30は、天体自動追尾撮影モードや通常撮影モードなどの撮影モードを選択して設定するスイッチである。カメラボディ11は、撮像センサ駆動ユニット15を防振ユニットとして用いる際にデジタルカメラ10に加わるブレを検出するためのX方向ジャイロセンサGSX、Y方向ジャイロセンサGSY、及び回転検出ジャイロセンサGSRを備えている。
【0029】
カメラボディ11は、GPSユニット(緯度情報入力手段)31と、方位角センサ(撮影方位角情報入力手段)33と、重力センサ(撮影仰角情報入力手段、姿勢情報入力手段)35とを備えている。GPSユニット31は、デジタルカメラ10の撮影地点の緯度情報εを検出する。方位角センサ33は、デジタルカメラ10の撮影地点の撮影方位角情報Aを検出する。重力センサ35は水準機能を有しており、デジタルカメラ10の撮影地点の撮影仰角情報hと、図11に示すカメラボディ11(撮像センサ13)の姿勢情報ξを検出する。姿勢情報ξは、カメラボディ11(撮像センサ13)の基準位置からの撮影光軸LO(撮像センサ13の撮像面14の中心C)を中心とする回転角情報ξである。カメラボディ11(撮像センサ13)の基準位置は、例えば、矩形の撮像センサ13の長辺方向を水平方向Xとした位置であり、回転後の長辺方向X’とのなす角ξがこの回転角情報である。
【0030】
ここで緯度情報ε、撮影方位角情報A、撮影仰角情報h、姿勢情報ξの各情報は、GPSユニット31、方位角センサ33、重力センサ35が出力するこれらの情報に換算可能な「換算前情報」を含む概念である。
【0031】
カメラボディ11には、デジタルカメラ10の全体の機能を制御するCPU(移動距離算出手段、駆動周期制御手段、移動手段)21が搭載されている。CPU21は、撮像センサ13の画素ピッチ情報を保持する画素ピッチ情報保持部21Aを備えている。
【0032】
CPU21は、焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fと、GPSユニット31から入力した緯度情報εと、方位角センサ33から入力した撮影方位角情報Aと、重力センサ35から入力した撮影仰角情報h及び姿勢情報ξと、画素ピッチ保持部21Aが保持する撮像センサ13の画素ピッチ情報とに基づいて、撮像センサ駆動ユニット15を介して、撮像センサ13を予め設定した駆動周期(移動周期)で平行移動制御及び回転制御する。以下、CPU21による撮像センサ13の駆動制御について詳細に説明する。
【0033】
まず、図2ないし図11を参照して、デジタルカメラ(撮影装置)10を用いて行う天体自動追尾撮影の原理を具体的に説明する。
【0034】
「北極点(緯度90゜)から撮影する場合」
地球上の北極点(緯度90゜)から撮影する場合とは、地軸(自転軸)の延長上に位置する北極星(天の極)が天頂と一致している状態(図2)での撮影である。
【0035】
天球を有限の球体と見立てて、実際には無限大となるはずの天球の半径を図2のように有限のrとおき、デジタルカメラ10の撮影光学系101Lの光軸LOと北極星からのずれ角度(天の極方向と撮影光学系光軸LOとの成す角)をθとする。このとき、デジタルカメラ10の撮影仰角hは、90−θ(h=90−θ)である。
【0036】
天球を図3のように真下から見た場合、すべての天体は北極星(天の極)を中心に円軌道を描く。その円軌道の半径をRと置く。円軌道の半径Rはデジタルカメラ10の撮影仰角hに依存するので、θで表すことができる。円軌道の半径Rは、
R = r × sinθ ・・・(1)
で与えられる。
【0037】
円軌道の1周360°を24時間( = 1440分 = 86400秒)で一回りするとして、t秒でφ゜回転する場合、
φ = 0.004167 × t [deg] ・・・(2)
が成立する。
【0038】
図4のように天体の描く軌道が円軌道であっても、円軌道を真下から見た構図(a1)の場合と、斜めから見た構図(a2)、(a3)、真横から見た構図(a4)の場合はそれぞれ図5の(a1)乃至(a4)に示したような画像となり、軌跡が異なるという結果が得られる。つまり、天体はあたかも円軌道を描いて動いているように見えるが、実際にカメラで撮影する場合には、カメラの撮影仰角hが結像状態に影響する。
【0039】
これらの軌跡は、円を斜めから見ると楕円に見えることから、Xrを楕円の長軸側の半径、Yrを短軸側の半径として、
Xr = R = r × sinθ ・・・(3)
Yr = R × cosθ= r × sinθ × cosθ ・・・(4)
として求めることができる。
【0040】
そこで、図3、図4、図6に示したように、天体にデジタルカメラ10を向けて、天体(地球)がφ゜回転したときの軌跡をX方向(天球の緯線方向)、Y方向(天球の経線方向)に分割して説明する。X方向の移動量xは、
x = R × sinφ ・・・(5)
となる。Y方向の移動量yは円軌道を見ている方向により異なる。
【0041】
図6中において、矢印(D点からE点)で示した天体の軌跡は、(a1)のように天体の軌跡を真下から見た場合(θ= 0°)に完全な円軌道を描く。実際にはθ= 0では、円の半径Rも0となり点にしか見えないが、ここでは簡単のためRを有限の値で仮定する。このとき、Y方向の移動量yは最大になる。
【0042】
そして、円軌道を構図(a2)、(a3)のように斜めに見ていくと移動量yは小さくなっていくので、構図(a4)のように円軌道を真横から見ると移動量yは最小(=0)となる。Y方向の移動量yの最大量Ymaxは円軌道の場合の図6から、
Ymax = R - R × cosφ ・・・(6)
となる。
よって移動量yは、
y = Ymax × cosθ = (R - R × cosφ) × cosθ ・・・(7)
となる。
(5)、(7)式中のRに(1)式を代入すると、移動量x、移動量yは、
x = r × sinθ × sinφ ・・・(8)
y = r × sinθ × cosθ(1 - cosφ) ・・・(9)
となる。
【0043】
実際のデジタルカメラ10を用いて天球に対する計算をするには、天球のX方向、Y方向を撮像面14上に射影した方向に関し、撮像面14上での移動量ΔxとΔyを求める。無限大となる天球半径rは撮影レンズ101の焦点距離fで表して、
Δx = f × sinθ × sinφ ・・・(10)
Δy = f × sinθ × cosθ(1 - cosφ) ・・・(11)
により、移動量ΔxとΔyを演算する。
つまり、撮像センサ13の光軸直交面内での移動量は、デジタルカメラ10に装着された撮影レンズ101の焦点距離fによって変化する。
【0044】
次に、撮影時に撮像センサ中心を中心として撮像センサ13をどれだけ回転すればよいかを求める。前述のように、デジタルカメラ10から天体を見た場合、天体の軌道は円もしくは楕円軌道として見える。図7のように点Fの天体が楕円(円)軌道を描いて移動する場合、点Fを撮像センサ中心(撮像面14の中心C)にとらえて、F→F'という移動に対し追尾するならば、撮像センサ中心CをΔx、Δy移動させればよい。しかし、点Fの周囲に例えばJという天体があった場合、点Jは、J→J'へと移動する。この点Jに対しても追尾を行うためには、撮像センサ中心Cを中心として撮像センサ13を回転させればよい。その回転角度は、点F'における楕円の接線Lの傾き角(点Fにおける楕円の接線と点F'における楕円の接線との成す角)αである。以下、カメラボディ11(撮像センサ13)の基準位置において、撮像センサ13の長辺方向をX軸、X軸と直交する短辺方向をY軸とする。
【0045】
図8のようなX-Y座標系と楕円において、楕円上の点Kにおける楕円の接線Lの方程式は、
x0 × x/a2 + y0 × y/b2 = 1
となる。
図8において、点a、点bは、式(3)と(4)で示した楕円の長軸側の半径Xr、短軸側の半径Yrに相当する。
【0046】
この接線Lの式をYについての方程式(Y=)の形に変形すると、
Y = -(b2 × x0)/(a2 × y0) × x - 1/(a2 × y0)
となる。
この楕円の接線LとX軸の成す角度が、画像中心を回転中心とする画像の回転角αである。
【0047】
楕円の接線Lの傾きに直交する直線Qの傾きは、
-(b2 × x0)/(a2 × y0)
となるため、求める回転角αは、
α = arctan( -(b2 × x0)/(a2 × y0)) ・・・(12)
となる。
【0048】
「緯度が90°以外の場合」
以上は、撮影地点の緯度が90°(つまり北極星(天の極)が真上にある場合)の説明である。次に、撮影地点の緯度が90°以外の場合について、さらに図9及び図10を参照して説明する。
【0049】
北半球における天体撮影の様子を表す図9において、各符号を以下の通り定義する。
P:天の極
Z:天頂
N:真北
S:対象天体(撮影目標点)(説明の便宜上、この対象天体(恒星)は撮影画面14の中心であり、撮影レンズ101の光軸LOの延長線上に位置するものとする。但し、撮影するにあたり光軸をどれかの天体に一致させる必要が無いことは言うまでも無い)
ε:撮影地点の緯度
A:撮影方位角(撮影レンズ101が狙う天体Sの方位、又は撮影レンズ101の光軸LOと天球との交点の方位角)
h:撮影仰角(撮影レンズ10が狙う天体Sの高度、又は撮影レンズ101の光軸LOと天球との交点の高度)
H:対象天体Sの時角(通常、時角の単位は時間が使われるが、ここでは角度(1時間=15度)に換算して扱うこととする。)
δ:対象天体Sの赤緯
γ:天球面上において、天の極Pと対象天体Sとを最短で結ぶ曲線と、天頂Zと対象天体(恒星)Sとを最短で結ぶ曲線とがなす角。
【0050】
図9において、北極星Pと目標点Sの間の角度である∠POSが求められれば、図2における角度θを∠POSに置き換えることで天体の軌跡を求めることができる。
【0051】
∠POSは、球の半径を1とした場合の図10の曲線PSの長さに等しい。よって、∠POSは球面三角の余弦定理を用いて、
cos(∠POS) = cos(90 - ε) × cos(90 - h) + sin(90 - ε) × sin(90 - h)×cos(A)
= sin(ε) × sin(h) + cos(ε) × cos(h) × cos(A)
となるので、
∠POS = arccos[sin(ε) × sin(h) + cos(ε) × cos(h) × cos(A)]・・・(13)
となる。
ここで、式(8)乃至(11)のθを∠POSで置き換えると、任意の緯度εにおける天体のX方向移動量x、Y方向移動量yを求めることができる。
【0052】
また、カメラ姿勢によって、移動方向の補正を行う必要がある。カメラを水平に構えたまま、撮影仰角hの方向に持ち上げて目標点Sへ向けた場合、水平と目標点Sの赤道がなす角はγとなる。なお、前述のように、カメラ姿勢は、デジタルカメラ10の撮影レンズ光軸LO回りの回転角のことであり、撮像面14の長手方向が水平の場合のカメラ姿勢を水平とする。
球面三角の正接定理より、
tan(γ) = sin(90 - ε) × sin(A)/(cos(90 - ε) × sin(90 - h) - sin(90 - ε) × cos(90 - h) × cos(A))
= cos(ε) × sin(A)/(sin(ε) × cos(h) - cos(ε) × sin(h) × cos(A))
となり、
γ = arctan[cos(ε) × sin(A)/(sin(ε) × cos(h) - cos(ε) × sin(h) × cos(A))]・・・(14)
となる。
【0053】
よって、上記で求めたこのγを用いて、天体の移動量x、yを撮像面上の座標(カメラ(撮像素子)の縦横座標)における横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyに変換するには、下記式(I)、(II)を使用する。
Δx = x × cos(γ) + y × sin(γ)・・・(I)
Δy = x × sin(γ) + y × cos(γ)・・・(II)
【0054】
また、図11に示したように、デジタルカメラ10のカメラ姿勢(撮像センサ13)が撮影レンズ光軸LO回りに水平からξ傾いている(回転している)場合は、式(III)、(IV)によって撮像センサ13の横方向、縦方向移動量Δx、Δyを補正することができる。
Δx = x × cos(γ + ξ) + y × sin(γ + ξ)・・・(III)
Δy= x × sin(γ + ξ) + y × cos(γ + ξ)・・・(IV)
【0055】
以上の撮像センサ13の横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角αは、次のように算出される。
【0056】
天球の北極点Pの方向は、日時にかかわらず変化しないと見なすことができるので、撮影地点の緯度から演算によって算出できる。さらに天頂Zの方向も、緯度から算出できる。従って、先ず、目標とする天体が撮像面14に投影されるように、デジタルカメラ10の構図を決めて固定する。このデジタルカメラ10の構図において、CPU21に、GPSユニット31から緯度情報εを入力し、方位角センサ33から撮影方位角情報Aを入力し、重力センサ35から撮影仰角情報h及び姿勢情報(回転角情報)ξを入力する。CPU21は、これらの入力情報から、図9、図10に示したように、天頂の点Z、天の極の点P、撮影画面中心の天体の点Sの位置を求める。
【0057】
以上の3点Z、P、Sが求まれば、CPU21は、焦点距離検出装置105から入力した撮影レンズ101の焦点距離情報f及び姿勢情報(回転角情報)ξから、撮像センサ13の横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角αを算出する。この撮像センサ13の横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角αを合成したものが、撮像センサ13の撮像面14上に形成される天体像の移動距離に相当する。
【0058】
CPU21は、焦点検出装置105から入力した焦点距離情報fと、撮像センサ13の撮像面14上に形成される天体像の移動速度と、画素ピッチ情報保持部21Aが保持する撮像センサ13の画素ピッチ情報とに基づいて、撮像センサ13の駆動周期を設定する。
【0059】
より具体的にCPU21は、撮像センサ13の撮像面14上に形成される天体像の所定時間あたりの撮像面14上での移動距離が、撮像センサ13の画素ピッチを超えない範囲内で、撮像センサ13の駆動周期を設定する。これにより、撮像センサ13の撮像面14上に形成される天体像が撮像センサ13の画素ピッチを跨いで移動することがないので、天体を静止状態(光点状)で撮影することができる。
【0060】
いま、撮像センサ13の駆動周期をT、撮像センサ13の駆動周期の許容できる最大値をTmax、撮像センサ13の画素ピッチをa、駆動周期Tでの撮像センサ13の撮像面14上における天体像の移動距離をLと定義する。
【0061】
撮影画像に天体像の移動量がずれとして写らないようにするためには、駆動周期Tでの撮像センサ13の撮像面14上における天体像の移動距離Lが撮像センサ13の画素ピッチa以内であればよい。つまり撮像センサ13の駆動周期の許容できる最大値Tmaxとは、a=Lが成立するときの駆動周期Tを意味する。CPU21は、0.5Tmax<T≦Tmaxを満足するような駆動周期Tを設定することが好ましい。これにより、撮像センサ13を天体の日周運動に良好に追従させて天体を静止状態(光点状)で撮影するとともに、無駄な演算処理を省いてCPU21の負担を低減することができる。この条件式の上限を超えると、撮像センサ13の駆動周期Tが長くなりすぎて、天体の移動軌跡が直線あるいは曲線状に写ってしまう。この条件式の下限を超えると、撮像センサ13の駆動周期Tが短くなりすぎて、無駄な演算処理が増えることによりCPU21の負担が増大する。
【0062】
例えば、撮像センサ13の横方向移動量Δx、縦方向移動量Δyだけを考慮した場合の撮像センサ13の駆動周期をTxyとする。北極星から撮影目標点への角度をθ、焦点検出装置105から入力した撮影レンズ101の焦点距離情報をfとすると、次の式(15)が成立する。
L = f・sinθ・sin(2・π/24/60/60・Txy) ・・・(15)
この式(15)の移動距離Lを画素ピッチaに置き換えて(a=L)、駆動周期Txyについて変形すると、次の式(16)が成立する。
xy= arcsin(a/f/sinθ)・24・60・60/2/π ・・・(16)
この式(16)においてa=5μm、f=100mmとして、点の赤道上を撮影する場合(θ=90°)を仮定すると、駆動周期Txyは、
xy = arcsin(5/100000/1)・24・60・60/2/π = 0.687549秒
となる。
この値は撮像センサ13の駆動周期Txyの許容できる最大値に相当するので、CPU21は、撮像センサ13の駆動周期Txyとして、0.687549秒以内の値を設定する。
【0063】
また、撮像センサ13の回転角αだけを考慮した場合の撮像センサ13の駆動周期をTαとする。撮像センサ13の対角サイズをbとすると、次の式(17)が成立する。
L = b・π/24/60/60・Tα・cosθ ・・・(17)
この式(17)の移動距離Lを画素ピッチaに置き換えて(a=L)、駆動周期Tαについて変形すると、次の式(18)が成立する。
Tα= a/b/π・24・60・60/cosθ ・・・(18)
この式(18)においてa=5μm、b=28.4mmとして、北極星を撮影する場合(θ=0°)を仮定すると、駆動周期Tαは、
Tα = 5/28400/π・24・60・60/1 = 4.841897秒
となる。
この値は撮像センサ13の駆動周期Tαの許容できる最大値に相当するので、CPU21は、撮像センサの駆動周期Tαとして、4.841897秒以内の値を設定する。
【0064】
CPU21は、平行移動成分(Δx、Δy)の移動距離に対応する撮像センサ13の駆動周期Txyと、回転移動成分(α)の移動距離に対応する撮像センサ13の駆動周期Tαとのうちいずれか短い方の駆動周期(この例では駆動周期Txy)を、撮像センサ13の駆動周期として設定する。これにより、撮像センサ13の撮像面14上における天体像の平行移動成分(回転移動成分)の移動距離が回転移動成分(平行移動成分)の移動距離に対して大きくなりすぎることがないので、天体を静止状態(光点状)で撮影することができる。
【0065】
CPU21は、設定した駆動周期(この例では駆動周期Txy)で、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角αに基づく移動軌跡に合わせて撮像センサ13を平行移動制御及び回転移動制御しながら(このときデジタルカメラ10の向きは固定である)露出を行うことで、天体自動追尾撮影を行う。
【0066】
続いて、このデジタルカメラ10による天体自動追尾撮影について、図12のフローチャートを参照して説明する。
【0067】
まずCPU21には、焦点距離検出装置105から撮影レンズ101の焦点距離情報fが入力され、GPSユニット31から緯度情報εが入力され、方位角センサ33から撮影方位角情報Aが入力され、重力センサ35から撮影仰角情報h及び姿勢情報ξが入力される(S1)。
【0068】
次いでCPU21は、入力した焦点距離情報f、緯度情報ε、撮影方位角情報A、撮影仰角情報h及び姿勢情報ξから、撮像センサ13の横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角αを算出する(S2)。
【0069】
次いでCPU21は、上述の式(15)と(16)により、焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fと、横方向移動量Δx及び縦方向移動量Δyを合成して得た移動距離Lxyと、画素ピッチ情報保持部21Aが保持する撮像センサ13の画素ピッチ情報aとに基づいて、撮像センサ13の横方向移動量Δx及び縦方向移動量Δyを考慮した場合の撮像センサ13の駆動周期Txyを算出する(S3)。
【0070】
同時にCPU21は、上述の式(17)と(18)により、焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fと、回転角αに対応する移動距離Lαと、画素ピッチ情報保持部21Aが保持する撮像センサ13の画素ピッチ情報aとに基づいて、撮像センサ13の回転角αを考慮した場合の撮像センサ13の駆動周期Tαを算出する(S4)。
【0071】
駆動周期Txyの算出(S3)と駆動周期Tαの算出(S4)は必ずしも同時に行う必要はなく、その順序も問わない。
【0072】
次いでCPU21は、平行移動成分(Δx、Δy)の移動距離に対応する撮像センサ13の駆動周期Txy(S3)と、回転移動成分(α)の移動距離に対応する撮像センサ13の駆動周期Tα(S4)とのうち、いずれか短い方の駆動周期を、撮像センサ13の駆動周期として設定する(S5)。
【0073】
次いでCPU21は、撮影者が予め設定した露出時間だけ、図示しないシャッタを開放して、撮像センサ13による撮像を開始する(S6)。
【0074】
そしてCPU21は、設定した露出時間が経過するまで、設定した駆動周期(S5)で、横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角αに基づく移動軌跡に合わせて撮像センサ13を平行移動制御及び回転移動制御しながら(このときデジタルカメラ10の向きは固定である)露出を行うことで、天体自動追尾撮影を行う(S6)。これにより、デジタルカメラ10を固定した状態で撮影するだけで各天体を見かけ上静止した状態で撮影することができる。
【0075】
CPU21は、この露出時間中(撮影時間中)に、上述のステップS1−S5の処理を行って、撮像センサ13の駆動周期を更新してもよい。これにより、撮影時間中に仮想的に追尾条件が変化した場合であっても、変化した追尾条件に応じた最適な駆動周期で撮像センサ13を駆動することができる。具体的には、露光開始時に算出した追尾条件で撮像センサ13を駆動していくと、撮像センサ13の中心が徐々に移動するので、それに伴って仮想的に撮影方位角情報、撮影仰角情報、姿勢情報がそれぞれ変化する結果、露光開始時に算出した撮像センサ13の駆動周期が最適値でなくなる場合がある。適当なタイミングで撮像センサ13の駆動周期を更新すれば、常に最適な駆動周期で撮像センサ13を駆動することができるのである。
【0076】
CPU21は、設定した露出時間が経過したら、図示しないシャッタを閉じて露出を終了する(S7)。CPU21は、撮像センサ13から撮影画像データを読み出して(S8)、ホワイトバランス調整や所定フォーマットへの変更等の画像処理を施す(S9)。最後にCPU21は、画像処理後の撮影画像データをLCDモニタ23に表示するとともに、所定フォーマットの画像ファイルとしてメモリーカード25に保存する(S10)。
【0077】
以上のように、本実施形態の天体自動追尾撮影方法及び天体自動追尾撮影装置によれば、デジタルカメラ(撮影装置)10の撮像センサ(撮像素子)13の撮像面14上に形成される天体像の、日周運動による所定時間あたりの撮像面14上での移動距離Lを算出し、算出した天体像の所定時間あたりの撮像面14上での移動距離Lと、撮像センサ13の画素ピッチaとに基づいて、撮像センサ(追尾手段)13の駆動周期(TxyまたはTα)を設定している。これにより、追尾条件に応じた最適な駆動周期で撮像センサ(追尾手段)13を駆動するとともに、無駄な演算処理を省いてCPU21の負担を低減することができる。
【0078】
以上の実施形態では、CPU21による撮像センサ駆動ユニット15の駆動制御により、撮像センサ13を物理的に平行移動及び回転させている。しかし、撮像センサ13の所定の撮像領域を、撮像センサ13の全撮像領域(撮像面14の全領域)の一部を電子的にトリミングしたトリミング領域(追尾手段)とし、算出した相対移動量(横方向移動量Δx、縦方向移動量Δy、回転角α)に基づいてこのトリミング領域を、撮影光学系101の光軸LOに対して直交する方向に平行移動及びこの光軸LOと平行な軸回りに回転移動させながら撮影する態様も可能である。この態様にあっては、図1においてCPU21が、所定の駆動周期で撮像センサ13にトリミング指示信号を送ることにより、撮像センサ13のトリミング領域を撮影光学系101Lの光軸LOに対して直交する方向に平行移動及びこの光軸LOと平行な軸回りに回転移動させながら撮影することができる。
【0079】
以上の実施形態では、撮像センサ13を光軸と直交する方向及び光軸と平行な軸回りに回転させる撮像センサ駆動ユニット15を備えたが、この撮像センサ駆動ユニット15を省略して、撮影レンズ101内に撮像センサ13上の被写体位置を移動させる像ブレ補正レンズ(防振レンズ、追尾手段)108を搭載した像ブレ補正装置と、撮像センサを回転させる撮像センサ回転機構とを組み合わせても、またはトリミング領域を回転移動させる形態と組み合わせる態様も可能である。図13はその実施形態を示しており、CPU21が撮影レンズ101のレンズCPU106に防振駆動指示信号を送ることにより、レンズCPU106が防振駆動ユニット107を介して像ブレ補正レンズ108を光軸直交方向に駆動制御する。一方、CPU21が、所定の駆動周期で撮像センサ13に回転指示信号を送ることにより、撮像センサ13を光軸LOと平行な軸回りに回転移動させる。あるいは、CPU21が、所定の駆動周期で撮像センサ13にトリミング指示信号を送ることにより、撮像センサ13のトリミング領域を撮影光学系101の光軸LOと平行な軸回りに回転移動させる。ここで言う「撮影光学系101の光軸LO」とは、偏心調整前の初期状態における撮影光学系101の光軸LOを意味する。
【0080】
以上の実施形態では、焦点距離検出装置105から入力した焦点距離情報fと、GPSユニット31から入力した緯度情報εと、方位角センサ33から入力した撮影方位角情報Aと、重力センサ35から入力した撮影仰角情報h及び姿勢情報ξとから、撮像センサ13の撮像面14上に形成される天体像の移動距離(天体像の移動軌跡)を算出している。しかし、撮像センサ13の撮像面14上に形成される天体像の移動距離(天体像の移動軌跡)を算出する方法はこれに限定されず、種々の方法を用いることができる。
【0081】
以上の実施形態では、CPU21が、撮像センサ13の撮像面14上に形成される天体像の所定時間あたりの撮像面14上での移動距離が、撮像センサ13の画素ピッチを超えない範囲内で、撮像センサ13の駆動周期を設定している。しかし、想定するカメラのレベルによっては、天体像の所定時間あたりの撮像面14上での移動距離が撮像センサ13の画素ピッチを多少超えても、実用上問題ない場合がある。例えば、天体像の所定時間あたりの撮像面14上での移動距離が、撮像センサ13の画素ピッチから決まる最小錯乱円を超えないような場合がこれに相当する。
【符号の説明】
【0082】
10 デジタルカメラ(撮影装置)
11 カメラボディ
13 撮像センサ(撮像素子、追尾手段)
14 撮像面(追尾手段)
15 撮像センサ駆動ユニット(移動手段)
17 絞り駆動制御機構
21 CPU(移動距離算出手段、駆動周期制御手段、移動手段)
21A 画素ピッチ情報保持部
23 LCDモニタ
25 メモリーカード
27 電源スイッチ
28 レリーズスイッチ
30 設定スイッチ
31 GPSユニット(緯度情報入力手段)
33 方位角センサ(撮影方位角情報入力手段)
35 重力センサ(撮影仰角情報入力手段、姿勢情報入力手段)
101 撮影レンズ
101L 撮影光学系
103 絞り
105 焦点距離検出装置(焦点距離情報入力手段)
106 レンズCPU
107 防振駆動ユニット
108 像ブレ補正レンズ(追尾手段)
GSX X方向ジャイロセンサ
GSY Y方向ジャイロセンサ
GSR 回転検出ジャイロセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日周運動によって撮影装置に対して相対運動する天体を撮影するために、撮影装置に内蔵する所定の追尾手段を駆動させながら追尾撮影する天体自動追尾撮影方法であって、
前記撮影装置の撮像素子の撮像面上に形成される天体像の、日周運動による所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出するステップ;及び
算出した前記天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離と、前記撮像素子の画素ピッチとに基づいて、前記追尾手段の駆動周期を設定するステップ;
を有することを特徴とする天体自動追尾撮影方法。
【請求項2】
請求項1記載の天体自動追尾撮影方法において、
前記撮影装置の撮影光学系の焦点距離情報を入力するステップを更に有し、
前記移動距離算出ステップでは、入力した前記撮影光学系の焦点距離情報を使って、前記天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出する天体自動追尾撮影方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の天体自動追尾撮影方法において、
前記駆動周期設定ステップでは、算出した前記天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離が、前記撮像素子の画素ピッチを超えない範囲内で、前記追尾手段の駆動周期を設定する天体自動追尾撮影方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の天体自動追尾撮影方法において、
前記移動距離算出ステップでは、前記撮像素子の撮像面上に形成される天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を、前記撮影光学系の光軸に対して直交する方向の平行移動成分と、該光軸と平行な軸回りの回転移動成分とに分けて算出し、
前記駆動周期設定ステップでは、前記平行移動成分の移動距離に対応する追尾手段の駆動周期と前記回転移動成分の移動距離に対応する追尾手段の駆動周期とのうちいずれか短い方の駆動周期を、前記追尾手段の駆動周期として設定する天体自動追尾撮影方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の天体自動追尾撮影方法において、
撮影時間中に、前記追尾手段の駆動周期を更新するステップを更に有する天体自動追尾撮影方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の天体自動追尾撮影方法において、
撮影地点の緯度情報、撮影方位角情報、撮影仰角情報、及び撮影装置の姿勢情報を入力するステップをさらに有し、
前記移動距離算出ステップでは、入力した前記撮影地点の緯度情報、撮影方位角情報、撮影仰角情報、及び撮影装置の姿勢情報と、撮影光学系の焦点距離情報とを用いて、前記撮像素子の撮像面上に形成される天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出する天体自動追尾撮影方法。
【請求項7】
日周運動によって撮影装置に対して相対運動する天体を撮影するために、撮影装置に内蔵する所定の追尾手段を駆動させながら追尾撮影する天体自動追尾撮影装置であって、
前記撮影装置の撮像素子の撮像面上に形成される天体像の、日周運動による所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出する移動距離算出手段;及び
前記移動距離算出手段が算出した天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離と、前記撮像素子の画素ピッチとに基づいて、前記追尾手段の駆動周期を設定する駆動周期制御手段;
を有することを特徴とする天体自動追尾撮影装置。
【請求項8】
請求項7記載の天体自動追尾撮影装置において、
前記撮影装置の撮影光学系の焦点距離情報を入力する焦点距離情報入力手段を更に有し、
前記移動距離算出手段は、前記焦点距離情報入力手段から入力した撮影光学系の焦点距離情報を使って、前記天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出する天体自動追尾撮影装置。
【請求項9】
請求項7または8記載の天体自動追尾撮影装置において、
前記駆動周期制御手段は、前記移動距離算出手段が算出した天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離が、前記撮像素子の画素ピッチを超えない範囲内で、前記追尾手段の駆動周期を設定する天体自動追尾撮影装置。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれか1記載の天体自動追尾撮影装置において、
前記移動距離算出手段は、前記撮像素子の撮像面上に形成される天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を、前記撮影光学系の光軸に対して直交する方向の平行移動成分と、該光軸と平行な軸回りの回転移動成分とに分けて算出し、
前記駆動周期制御手段は、前記平行移動成分の移動距離に対応する追尾手段の駆動周期と前記回転移動成分の移動距離に対応する追尾手段の駆動周期とのうちいずれか短い方の駆動周期を、前記追尾手段の駆動周期として設定する天体自動追尾撮影装置。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれか1項記載の天体自動追尾撮影装置において、
前記駆動周期制御手段は、撮影時間中に、前記追尾手段の駆動周期を更新する天体自動追尾撮影装置。
【請求項12】
請求項7ないし11のいずれか1項記載の天体自動追尾撮影装置において、
撮影地点の緯度情報、撮影方位角情報、撮影仰角情報、及び撮影装置の姿勢情報、撮影光学系の焦点距離を入力する入力手段をさらに有し、
前記移動距離算出手段は、前記入力手段から入力した情報を用いて、前記撮像素子の撮像面上に形成される天体像の所定時間あたりの撮像面上での移動距離を算出する天体自動追尾撮影装置。
【請求項13】
請求項7ないし12のいずれか1項記載の天体自動追尾撮影装置において、
前記追尾手段は、前記撮像素子の全撮像領域であり、
前記駆動周期制御手段が設定した駆動周期に基づいて、前記撮像素子の全撮像領域を移動させる移動手段を有する天体自動追尾撮影装置。
【請求項14】
請求項7ないし12のいずれか1項記載の天体自動追尾撮影装置において、
前記追尾手段は、前記撮像素子の全撮像領域の一部を電子的にトリミングしたトリミング領域であり、
前記駆動周期制御手段が設定した駆動周期に基づいて、前記トリミング領域を仮想的に移動させる移動手段を有する天体自動追尾撮影装置。
【請求項15】
請求項7ないし12のいずれか1項記載の天体自動追尾撮影装置において、
前記追尾手段は、前記撮影光学系、及び前記撮像素子の全撮像領域の一部を電子的にトリミングしたトリミング領域であり、
前記駆動周期制御手段が設定した駆動周期に基づいて、前記撮影光学系の一部を偏心させることで天体像を撮影装置に対して移動させると共に、前記トリミング領域を仮想的に回転移動させる移動手段を有する天体自動追尾撮影装置。
【請求項16】
請求項7ないし12のいずれか1項記載の天体自動追尾撮影装置において、
前記追尾手段は、前記撮像素子の全撮像領域、及び前記撮像素子の全撮像領域の一部を電子的にトリミングしたトリミング領域であり、
前記駆動周期制御手段が設定した駆動周期に基づいて、前記撮像素子の全撮像領域を、撮像面の短辺方向と長辺方向に設けられたガイド手段に沿って移動させると共に、前記トリミング領域を仮想的に回転移動させる移動手段を有する天体自動追尾撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−5009(P2013−5009A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131052(P2011−131052)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(311015207)ペンタックスリコーイメージング株式会社 (81)
【Fターム(参考)】