説明

天然の肉片を模したペットフード、およびその製造方法

【課題】犬、猫、家畜等に与えるための天然の肉片を模したペットフード、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ペットフードのペレットが、それぞれ、天然の肉の筋肉繊維の構造に類似する表面をもつようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフード(ドッグフード、キャットフード等)の分野に属し、特に天然の肉片を模したペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に最も近いペットフードは、今日多数の西欧諸国で市販されているネッスル・プリーマ・ペットケア・ドイツ社製の天然の肉片を模したキャットフードである。
【0003】
図4は、このようなキャットフードの一例を示す写真である。その6片のキャットフードの表面組織は、天然の肉片に類似している。
【0004】
この種のペットフードが売れているという事実は、これらが、肉の成分を含まない植物性タンパク質からなる製品であっても、天然の香りや他の添加物を加えれば、購買者(ペットの飼主)には見分けがつかず、天然の肉片の表面組織を有するものと受け取られていることを示している。しかし、このような商品は、いずれ、購買者の要求を満足させるものではなくなる。
【0005】
本発明に係るペットフードと、その製造方法は、従来見られないものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、天然の肉片を模し、視覚的に天然の肉製品に極力近づけたペットフードを提供することを目的としている。
また、本発明は、天然の肉片を模し、表面組織が筋肉繊維の構造に類似するペットフードを提供することも目的としている。
上記の筋肉繊維様の表面組織は、最終的な製品(個々のペレット)に付される。
【0007】
さらに、本発明は、上記ペットフードの製造方法も提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記の課題は、次に述べる方法によって解決することができる。
請求項1記載ペットフードの製造方法であって、
−天然の肉を粉砕する工程と、
−粉砕した肉の乳状化物からなる層を形成する工程と、
−前記層に、水と食用の親水コロイドからなるゲルを塗布する工程と、
−前記ゲルが塗布された層を削ぎ取り、動物の筋肉繊維に似た構造の表面組織を有する半製品を得る工程と、
−前記半製品を熱処理にかけて固化し、かつペレットに分断して、天然の肉片を模した筋肉繊維の構造をもつ表面組織を有するペレットを得る工程を含む方法。
【0009】
このようなペットフードは、天然の肉片そのものであるかのような外観を呈する。
【0010】
前記肉を粉砕する工程の最中には、ビタミン、ミネラル、塩化ナトリウム、およびイオン化している塩からなる群より選択される添加物を添加するのが好ましい。
【0011】
さらに、前記肉を粉砕する工程の最中に、シリアル、脂肪、油、魚粉、エビの加工品からなる群より選択される栄養成分を添加することもできる。
【0012】
こうすれば、天然の肉の成分を含む、ペットの健康に必要な主要栄養素および微量栄養素を、ペットフードに添加することができる。
【0013】
前記肉の乳状化物からなる層の厚さは、概ね0.1〜5mmであるのが好ましい。この層の厚さは、0.1mm未満としてはならないことが分かった。また、この層の厚さが5mmを超えると、筋肉繊維様の表面組織が得られず、最終製品の品質が劣化する。
【0014】
前記親水コロイドは、ヒドロキシプロピレンセルロース、ヒドロキシプロピレンメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルナトリウムセルロース等のセルロースエーテルであるのが好ましい。しかし、寒天、アルギン酸ナトリウム、ゲラチン、デンプン、ペクチン、カラギナンおよびこの塩、ガム等の物質を用いることもできる。
【0015】
前記半製品を固化する工程おいては、赤外線を照射し、その後、飽和蒸気に晒す熱処理を行うのが好ましい。このような熱処理を施すと、望むような固化を得ることができる。
【0016】
前記の熱処理は、半製品を熱空気流に晒すことによっても実現することができる。
【0017】
上記のような熱処理は、当業者によく知られた、マイクロ波加熱、オーム加熱、凍結等によって行うこともできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、天然の肉片を模し、表面組織が筋肉繊維の構造に類似するペットフード、およびこのようなペットフードの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るペットフードの製造ラインを示す模式図である。
【図2】図1に示す製造ラインを経て製造され、筋肉繊維に類似する構造をもつペットフードの表面組織の拡大図である。
【図3】図1に示す製造ラインを経て製造されるペットフードを斜め方向から写した写真である。
【図4】図3に示すペットフードのペレットを複数個を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、天然の肉片を模したペットフードおよびその製造方法を示す添付の図面および写真を参照し、実施形態に即して、本発明の内容を詳細に説明する。
【0021】
図3と図4は、本発明に係る、天然の肉片を模したペットフードの外観と表面組織を明瞭に示している。各ペレットは、筋肉繊維に似た構造の表面組織を有している。
【0022】
本発明に係るペットフードは、図1に示す製造ラインを経て製造される。
この製造ラインにおいて、
−グラインダ1は、天然の肉Aを粗く粉砕する。
−乳化器2は、粉砕した肉Aから、肉の乳状化物Bを形成する。
−乳化器2の下方に位置する第1のベルトコンベヤ3の上には、上記肉の乳状化物Bからなる層Cが形成される。
−第1のベルトコンベヤ3の上方に位置するブレード4は、層Cの厚さを調整する。
−第1のベルトコンベヤ3の上方に位置する塗布装置5は、水と食用の親水コロイドからなるゲルを層Cに塗布し、ゲルが塗布された層Dを形成する。
−スクレーパ6は、第1のベルトコンベヤ3から、ゲルが塗布された層Dを削ぎ取り、動物の筋肉繊維に似た構造の表面組織を有する半製品Eを形成する。
−スクレーパ6の下方に位置する第2のベルトコンベヤ7は、半製品Eを固化装置8まで運搬する。固化装置8は、熱処理によって半製品Eを固化する。
−分断装置(図示せず)は、固化した半製品Eを、ペレットに分断する。
【0023】
ブレード4は、金属製で、第1のベルトコンベヤ3との間隙を調節しつつ、層Cを適当な圧力で押圧することができる。
【0024】
塗布装置5は、スプレーである。
【0025】
固化装置8は、空気の熱流(図示せず)を供給されるチャンバである。
【0026】
本発明に係るペットフードは、以下の工程に従って製造することができる。まず、天然の肉Aを、グラインダによって粗く粉砕する。ついで、乳化器2によって、粉砕した肉Aから肉の乳状化物Bを形成する。その後、第1のベルトコンベヤ3上に、ブレード4を用いて厚さを調節しつつ、肉の乳化状物Bからなる層Cを形成する。
【0027】
層Cを形成する工程は、2段階からなる。第1の段階では、第1のベルトコンベヤ3上において、肉の乳化状物Bを押圧し、層状にする。第2の段階では、第1のベルトコンベヤ3の上方で高さを調整しうるブレード4によって、肉の乳化状物Bからなる層Cの厚さを小さくする。
【0028】
つぎに、水と食用の親水コロイドからなるゲルを、スプレー5を用いて、層Cに塗布し、ゲルが塗布された層Dを形成する。その後、スクレーパ6を用いて、第1のベルトコンベヤ3から、ゲルが塗布された層Dを削ぎ取り、動物の筋肉繊維に似た構造の表面組織を有する半製品Eを形成する(この工程については、図2参照)。
【0029】
半製品Eを固化し、さらにペレットに分断することにより、動物の筋肉繊維に似た構造の表面組織を有する最終製品が得られる。半製品Eの固化は、熱空気流が供給されるチャンバ8内において行う。半製品Eのペレットへの分断は、連続的に並べたディスクカッタとギロチン状のナイフを用いて行う。
【0030】
上記の方法によれば、動物の筋肉繊維に似た構造の外観を有する、天然の肉片を模したペットフードを製造することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 グラインダ
2 乳化器
3 第1のベルトコンベヤ
4 ブレード
5 塗布装置(スプレー)
6 スクレーパ
7 第2のベルトコンベヤ
8 固化装置
A 天然の肉
B 肉の乳状化物
C 肉の乳状化物からなる層
D ゲルが塗布された層
E 半製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の筋肉繊維に似た構造の表面組織を有することを特徴とするペットフード。
【請求項2】
請求項1記載のペットフードの製造方法であって、
−天然の肉を粉砕する工程と、
−粉砕した肉の乳状化物からなる層を形成する工程と、
−前記層に、水と食用の親水コロイドからなるゲルを塗布する工程と、
−前記ゲルが塗布された層を削ぎ取り、動物の筋肉繊維に似た構造の表面組織を有する半製品を得る工程と、
−前記半製品を固化し、かつペレットに分断する工程を含む方法。
【請求項3】
前記肉を粉砕する工程の後に、ビタミン、ミネラル、塩化ナトリウム、およびイオン化している塩からなる群より選択される添加物を添加する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記肉を粉砕する工程の後に、シリアル、脂肪、油、魚粉、エビの加工品からなる群より選択される栄養成分を添加する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記肉の乳状化物からなる層の厚さは、概ね0.1〜5mmであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記親水コロイドは、セルロースエーテルであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記半製品を固化する工程は、熱処理によって行うことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理において、半製品に赤外線を照射し、その後飽和蒸気に晒すことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記熱処理において、半製品を熱空気流に晒すことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項10】
セルロースエーテルが、ヒドロキシプロピレン・セルロース、ヒドロキシプロピレンメチル・セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルナトリウムセルロースであることを特徴とする請求項6記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−522558(P2010−522558A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500863(P2010−500863)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【国際出願番号】PCT/RU2008/000150
【国際公開番号】WO2008/121018
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(509269883)
【Fターム(参考)】