説明

天然ガス液化方法

過剰圧力の入手できるメタンに富む供給物、即ち天然ガスを、まず膨張させて膨張仕事を与え、これを数多くの新規な方法で、例えば、供給流を冷却するのに用いる冷媒サイクル或いは供給流を液化するための液化領域において用いる1以上の冷媒サイクルにおける冷却を与えたり、或いは液化プロセスにおいて用いたり或いは輸出用の電力を生成するために利用することができる天然ガスを液化する方法が開示される。一態様においては、膨張仕事は、膨張器/圧縮器装置(ターボエキスパンダー30)を用いることによって得られ、それによって、供給流を膨張させて(1)装置(25)のコンプレッサー(40)を駆動し、それによって天然ガス流(10)を予め冷却する(15)閉鎖ループプロパン冷媒サイクル(60)のための圧縮を与え、(2)液化プロセスのための膨張した冷却天然ガス供給流(140)を生成する。冷却天然ガス供給流を生成して液化プロセスに供給することにより、所定量の設置馬力に対するLNG製造量を増大させ、或いは、所定量のLNGの製造のための資本コスト及び/又は操作コストを減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2004年8月6日出願の米国仮特許出願60/599,753号の利益を享受し請求するものであり、上記出願の教示の全ては本明細書に参照として包含する。
本発明は、天然ガスのようなメタンに富むガス流を液化する方法、並びにかかる液化流のより効率的な製造に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスとは、一般に、地球上に見られる希薄な又はガス状の炭化水素(メタンと、エタン、プロパン、ブタンなどのような軽質炭化水素とを含む)を指す。二酸化炭素、ヘリウム及び窒素のような地球上に存在する不燃性ガスは、一般にそれらの適当な化学名で呼ばれる。しかしながら、不燃性ガスはしばしば可燃性ガスと共に見られ、この混合物は、可燃性ガスと不燃性ガスとを区別する意図なしに、一般に「天然ガス」と呼ばれる。Pruitt, "Mineral Terms-Some Problems in Their Use and Definition", Rocky Mt. Min. L. Rev. 1, 16 (1966)を参照。
【0003】
天然ガスは、しばしば、ガスの地元での市場がなかったり、或いはガスを処理して離れた市場へ移送する高いコストのために、それらの埋蔵地を開発するのが非経済的である地域に豊富に存在する。
【0004】
より好都合な貯蔵及び移送のために液化天然ガス製品(LNG)を製造するために、天然ガスを低温で液化することが一般的に行われている。天然ガスを液化する基本的な理由は、液化によって容量が約1/600に減少し、それによって低い圧力又は大気圧においても容器中で液化ガスを保存及び移送することが可能となるからである。天然ガスの液化は、供給源と市場とが大きな距離離れており、パイプライン移送が現実的でないか又は経済的に実現可能でない場合に、供給源から市場へのガスの移送を可能にする上で非常に大きな重要性を持つ。いくつかの場合、移送法は外航船による。ガス状物質が高度に圧縮されていない限り、船によってガス状物質を移送することは不経済的である。高度に圧縮されていたとしても、好適な強度及び容量の容器を提供する必要性のために、移送は経済的でない。
【0005】
天然ガスを液体状態で保存及び移送するためには、天然ガスを、通常、大気圧付近で液体として存在することのできる−240°F(−151℃)〜−260°F(−162℃)に冷却する。多くのLNG液化プラントは、吸入ガス流を冷却するために機械的な冷却サイクル、例えばその教示を参照として本明細書に包含する米国特許3,548,606に概して開示されているようなカスケード又は混合冷媒タイプの冷却サイクルを利用している。ガスを昇圧下で多数の冷却段階に順次通して、液化が達成されるまでガスを逐次より低温に冷却することによって液化する天然ガスを液化するための種々の他の方法及び/又はシステムが存在する。冷却は、一般に、プロパン、プロピレン、エタン、エチレン、窒素及びメタン或いはこれらの混合物のような1以上の冷媒を用いた閉ループ又開ループの構成の熱交換によって行われる。冷媒は、冷媒の沸点を低下させるためにカスケード状に配置することができる。例えば、LNGを調製する方法が、概して、米国特許4,445,917;5,537,827;6,023,942;6,041,619;6,062,041;6,248,794及び英国特許出願GB2,357,140Aに開示されている。上記の特許の教示の全ては参照として本明細書に包含する。
【0006】
更に、液化天然ガスは、液化ガスを1以上の膨張段階に通すことによって大気圧に膨張させることができる。膨張工程の間に、ガスは、好適な保存又は移送温度に更に冷却され、ほぼ大気圧に減圧される。この大気圧への膨張において、相当量の天然ガスがフラッシュする可能性がある。フラッシュ蒸気は、膨張段階から回収して、再循環するか、或いは燃焼させて液化天然ガス製造設備のための電力を生成させることができる。
【0007】
カスケード冷却サイクルタイプのプラントは、通常、建設及び運転するのが比較的高価であり、混合冷媒サイクルプラントもまた、運転中の流れの組成に細かな注意が必要な場合がある。冷却装置は、部品の低温での金属学的要求のために特に高価である。しかしながら、天然ガスの液化は、容易に且つ経済的に移送及び保存できる形態にガスを転化させるための、益々重要度が増大している、広く実施される技術である。ガスを液化するために費やすコスト及びエネルギーを最小にして、ガスを製造してガス田からエンドユーザーまで移送する費用効率のよい手段を提供しなければならない。液化のコストを低減するプロセス技術は、その結果としてエンドユーザーに対するガス製品のコストを減少させる。
【0008】
天然ガスを液化するためのプロセスサイクルは、歴史的に、等エントロピー膨張バルブ或いはジュール−トンプソン(J−T)バルブを用いてガスを液化するのに必要な冷却を生成していた。この目的のために膨張バルブを用いる典型的なプロセスサイクルは、例えば、米国特許3,763,658;4,065,276;4,404,008;4,445,916;4,445,917及び4,504,296に記載されている。
【0009】
かかるバルブを通ってプロセス流が流れる際に生成する膨張仕事は、実質的に失われる。これらのプロセス液の膨張によって生成する仕事の少なくとも一部を回収するために、往復膨張器又はターボエキスパンダーのような膨張機を用いることができる。例えば、米国特許4,445,916;4,970,867及び5,755,114には、LNGの製造に関連したターボエキスパンダーの使用が記載されている。
【0010】
本明細書で用いる「膨張器」又は「膨張器/圧縮装置」という用語は、概して、かかるターボエキスパンダー又は往復膨張器を指す。天然ガス液化の分野において、「膨張器」という用語は、通常、ターボエキスパンダーを意味するように用いられ、本明細書の開示においても同様に用いられる。
【0011】
本出願人らは、天然ガス流のようなメタンに富むガス供給流の過剰の圧力を、LNGプロセスのための冷却源として、例えば天然ガスを液化領域に導く前に予め冷却するのに用いる冷却サイクルのための圧縮を与えたり、或いは液化領域において天然ガスを液化するのに用いる1以上の冷却サイクルのための圧縮を与えるために利用するこれまでの試みを知らない。殆どの液化プロセスは650psig(44.8barg)〜1000psig(69.0barg)の圧力で供給されるメタンに富む供給流を利用するが、供給される天然ガスがより高い圧力、例えば約1000psig(69.0barg)から2500psig(172.4barg)又はそれ以上の高さの圧力で入手される多くの場合がある。このガスは、地下の地層からこのような圧力で生産される場合もあり;或いは、生産現場の要求に関連した多くの理由のために生産された後にこのような圧力に加圧される場合もあり;或いは、生産現場に隣接するローカルパイプライン又はガス移送システムの要求のために加圧される場合もある。液化に先立つこのような予備工程を用いることにより、建設及び/又は運転するのにより安価な液化プラントを得ることができ、及び/又は、所定のプラント設計でより多量のLNG製造を可能にすることができる。また、過剰の圧力を機械的仕事に変換して、これを用いて電力を生成させることができ、これによってもより効率的なプロセスを得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
明らかなように、上記のような入手できるガス流内に内包される過剰のエネルギーを、より効率的で及び/又はより安価となり得るLNG液化プロセスを与える方法で利用することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の概要
上記の目的及び有利性は、一態様においては加圧天然ガス流を液化する方法に関する本発明によって達成される。かかる方法は、
(a)第1の圧力及び第1の温度の加圧天然ガス流を提供し;
(b)加圧天然ガス流を、冷たい冷媒流による間接熱交換によって冷却して、第1の温度よりも低い第2の温度の冷却された加圧天然ガス流を生成し;
(c)膨張装置において冷却された加圧天然ガス流を膨張させ、ここで膨張装置からの膨張仕事を用いて冷媒流を圧縮する圧縮器を駆動して加圧冷媒流を生成し、膨張によって冷却供給流を得てこれを天然ガス液化領域に導き;
(d)加圧冷媒流を冷却して、冷却され少なくとも部分的に凝縮した加圧冷媒流を生成し;
(e)冷却され少なくとも部分的に凝縮した加圧冷媒流を膨張させて、工程(b)において用いる冷たい冷媒流を生成し;
(f)天然ガス液化領域において冷却供給流を液化する;
工程を含む。
【0014】
一態様においては、本発明は、
(a)第1の圧力及び第1の温度の加圧天然ガス流を提供し;
(b)冷たい冷媒流による間接熱交換によって加圧天然ガス流を冷却して、第1の温度よりも低い第2の温度の冷却された加圧天然ガス流を生成し;
(c)膨張装置において冷却された加圧天然ガス流を膨張させて冷却供給流を生成し、ここで膨張装置からの膨張仕事を用いて冷たい冷媒流を生成するための冷却を与え;
(d)冷却供給流を液化領域で液化する;
工程を含む、加圧天然ガス流を液化する方法に関する。
【0015】
他の態様において、本発明は、
(a)第1の圧力及び第1の温度の加圧天然ガス流を提供し;
(b)冷たい冷媒流による間接熱交換によって加圧天然ガス流を冷却して、第1の温度よりも低い第2の温度の冷却された加圧天然ガス流を生成し;
(c)膨張装置において冷却された加圧天然ガス流を膨張させて冷却供給流を生成し、ここで膨張装置からの膨張仕事を用いて冷たい冷媒流を生成する;
工程を含む、冷却天然ガス供給流を調製する方法に関する。
【0016】
他の態様において、本発明は、
(a)第1の圧力及び第1の温度の加圧天然ガス流を提供し;
(b)膨張装置において加圧天然ガス流を膨張させて冷却供給流を生成し、ここで膨張装置からの膨張仕事を用いてLNGを調製するための冷却を与え;
(c)液化領域において冷却供給流を液化する;
工程を含む、加圧天然ガス流を液化する方法に関する。
【0017】
他の態様においては、本発明は、加圧天然ガス流を液化する方法に関する。この方法は、
(a)第1の圧力及び第1の温度の加圧天然ガス流を提供し;
(b)膨張装置において加圧天然ガス流を膨張させて冷却供給流及び膨張仕事を生成し;
(c)液化領域において冷却供給流を液化する;
工程を含む。
【0018】
本発明の詳細な説明
本発明は、天然ガス(この用語は上記に定義した通りである)のようなメタンに富むガス流からLNGを製造する方法に関する。本発明において意図する天然ガスは、概して少なくとも50モル%のメタン、好ましくは少なくとも75モル%のメタン、より好ましくは少なくとも90モル%のメタンを含む。天然ガスの残りは、概して、より少量のエタン、プロパン、ブタン、ペンタン及びより重質の炭化水素のような(しかしながらこれらに限定されない)他の可燃性炭化水素、並びに二酸化炭素、硫化水素、ヘリウム及び窒素のような不燃性成分を含む。
【0019】
一般に、天然ガス中の、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、並びにプロパンよりも高い沸点を有する炭化水素のようなより重質の炭化水素の存在量は、気液分離工程を通して減少する。ペンタン又はヘキサンの沸点よりも高い沸点の炭化水素は、一般に、原油に導入される。実質的にエタンの沸点よりも高くペンタン又はヘキサンの沸点よりも低い沸点の炭化水素は、一般に、本発明の目的のために除去されて天然ガス液(NGL)と見なされる。このようなNGLは、本明細書で開示したプロセスの上流又は下流において本発明において用いる天然ガス供給流から回収することができる。
【0020】
殆どの市場のためには、二酸化炭素、ヘリウム及び窒素並びに硫化水素のようなLNG中の不燃性物質及びコンタミナントの存在量を最小にすることもまた望ましい。所定の天然ガス貯留容器の品質に依存して(50%〜70%の二酸化炭素を含む可能性がある)、天然ガスを、上記の成分を予め除去するために天然ガスプラントで予め処理するか、或いはLNGの製造に先立って予備処理するためにプラントに直接移送することができる。
【0021】
天然ガスは、一般に、2800psig(193.1barg)又はそれ以上の高さの昇圧下で入手できるようになり、移送される。本発明によれば、好適な天然ガス供給流は、通常は約650psig(44.8barg)〜1000psig(69.0barg)の供給圧で設計されている通常のLNG液化プロセスの設計圧よりも少なくとも約200psig(13.8barg)高い圧力のような、LNG設備に対して通常提供されているものよりも概して高い圧力を有する。望ましくは、本発明方法において用いる供給圧は、約1000psig(69.0barg)又はそれ以上、例えば約1300psig(89.6barg)〜約2500psig(172.4barg)又はそれ以上である。天然ガスの温度はその産出源による。天然ガスがパイプラインガスである場合には、その温度は、例えば0°F(−17.8℃)〜120°F(48.9℃)、より典型的には50°F(10℃)〜100°F(37.8℃)のようなほぼ雰囲気条件であってよい。天然ガス条件を天然ガス圧縮器のような移送装置に近接して測定した場合には、出口の装置及び圧縮後の装置が天然ガス供給流の温度及び圧力に影響を与える可能性がある。
【0022】
本発明において用いるのに好適な予備処理工程は、概して、天然ガス流からの酸ガス(acid gas)(例えばH2S及びCO2)、メルカプタン、水銀及び湿分の除去など(しかしながらこれらに限定されない)のLNG製造に関連して通常認められ且つ公知の工程から始まる。酸ガス及びメルカプタンは、通常、アミン含有水溶液又は他のタイプの公知の物理的又は化学的溶媒を用いた吸収プロセスによって除去される。この工程は、一般に、天然ガス液化領域の上流で行われる。概して、低レベル冷却の前又は後に二相気液分離によって水の実質的な部分が液体として除去され、その後、モレキュラーシーブ(molecular sieve)処理によって微量の水が除去される。水除去工程は、概して、ここで意図されているように、膨張の上流で行われる。水銀は水銀吸収床を用いることによって除去される。残余量の水及び酸ガスは、通常、再生可能なモレキュラーシーブのような特に選択された吸収床を用いることによって除去される。このような特に選択された吸収床もまた、一般に、天然ガス液化工程の殆どの上流に配置される。
【0023】
本発明を、本発明の一態様を示す図1を参照して説明する。図1の態様では、加圧天然ガス流からの過剰の圧力を、膨張器/圧縮器装置においてガス流を膨張させ、機械的仕事を生成することによって利用する。例えば(1)装置の圧縮器を駆動してそれによって天然ガス流を予備冷却するための閉ループプロパン冷却サイクルのための圧縮を与え、(2)液化プロセスのための膨張し冷却された天然ガス流を生成する。冷却サイクルもまた、二元混合冷媒のような当該技術において公知の任意の他の冷媒を用いてもよい。
【0024】
図1を参照すると、約1000psig(69.0barg)〜2500psig(172.4barg)、より望ましくは1300psig(89.6barg)〜2500psig(172.4barg)のような比較的高い圧力の天然ガス流を、ライン10を通してプロセス中に導入する。上記したように、かかる供給流は、約50°F(10℃)〜100°F(37.8℃)のような雰囲気温度であってよい。ライン10によって天然ガス供給流が冷却器15に導かれ、供給流が、閉ループシステムによって搬送される冷媒、例えばプロパンによる間接熱交換によって冷却される。冷媒は、二相(蒸気及び液体)の形態で冷却器15に導入することができるが、蒸気量を最小にして冷媒が実質的に液相であるようにすることが好ましい。冷媒はライン120を通して冷却器15に導入される。冷却器15においては、冷媒が蒸発してライン50を通して冷却器15から排出される。天然ガス供給流は冷却器15において冷却され、ライン20を通して排出される。天然ガス供給流が本発明のプロセスに上記した温度及び圧力範囲で導入される場合には、冷却された天然ガス供給流は、冷却器15に充填された時と実質的に同等の圧力、及び約−30°F(−34.4℃)〜50°F(10℃)の範囲であってよい温度で排出される。
【0025】
冷却された天然ガス流は、次に、ライン20によってターボエキスパンダー25に搬送され、その膨張器部分30に導入される。膨張器部分30においては、天然ガス流は、LNGの製造において用いられる液化プロセスの設計圧に圧力を実質的に調節するように膨張させることができる。通常、天然ガスの圧力を、約650psig(44.8barg)〜1000psig(69.0barg)に膨張させる。ライン140を通して膨張器部分30から排出される冷却された天然ガス供給流の温度は、−100°F(−73.3℃)〜−60°F(−51.1℃)の温度のようなNGL回収ユニット(所望の場合)及び/又は液化領域への供給流として有利に用いることのできる比較的低い温度であってよい。所望の場合には、冷却された天然ガス供給流を酸ガス又は水銀コンタミナントを除去するためのプロセスユニットに導くことができるが、かかるコンタミナントは上記した予備冷却工程の前に除去することがより有利である。
【0026】
ライン50によって冷却器15から搬送された冷媒蒸気は、ターボエキスパンダー25の圧縮器部分40で圧縮される。圧縮器部分40で圧縮された後、加圧された冷媒蒸気は、ライン60によって凝縮器70に搬送される。凝縮器70は、空冷熱交換器であってよいが、当該技術において公知の任意の熱交換装置を用いることもできる。凝縮器70を用いて冷媒の少なくとも一部を液相に凝縮し、好ましくは冷媒の殆ど、より好ましくは冷媒の全部を液相に実質的に凝縮する。また、図1には示されていないが、凝縮器70の下流に更なる冷却装置を用いて、凝縮され、少なくとも部分的に(好ましくは全部が)液体の冷媒流を過冷して、冷媒が以下に説明する圧力減少装置90から排出された後に冷媒流の蒸気フラクションが最小になる、即ち0.5未満、より好ましくは0.35未満になるようにすることが好ましい。その後、冷却された冷媒は、ジュール−トンプソンバルブのような圧力減少装置90を通過し、冷媒が更に冷却される。冷却された冷媒は、その後、場合によってはライン100によって分離容器110に導いて、蒸気形態の冷媒を分離及び回収して、ライン130及び50を通して、圧縮器部分40に戻すことができる。次に、冷媒は、ライン120を通して分離容器110から冷却器15へ導かれる。有利には、以下に説明する実施例によって示されるように、簡単にライン100、分離容器110及びライン130を省略して、圧力減少装置90に導いた後に、得られる冷媒流をライン120を通して冷却器15に直接送ることが一般により好都合である。この方法においては、この時点では二相(蒸気及び液体)であってよい冷却された冷媒流の実質的に全てを冷却器15において用いる。
【0027】
冷却された天然ガス供給流は、当該技術において公知の任意の液化プロセスを含んでいてよいLNGの製造のための液化領域に導かれる。カスケードタイプの液化プロセスの例は、米国特許4,172,711;5,537,827;5,669,234;及び6,158,240に開示されており、これらの教示は全て参照として本明細書に包含する。混合冷媒タイプの液化プロセスの例は、米国特許4,901,533(単一混合冷媒サイクル);米国特許4,545,795及び6,119,479(二元混合冷媒サイクル);及び米国特許6,253,574(三元混合冷媒サイクル)に開示されている。これらの特許の教示もまた、全て参照として本明細書に包含する。
【0028】
上記に説明したようにかかる天然ガス供給流において得られる過剰の圧力を用いることにより、冷却された供給流の温度を、75°F(23.9℃)のような雰囲気温度から−260°F(−162.2℃)へではなく、約−90°F(−67.8℃)のような液化が起こる温度から−260°F(−162.2℃)に低下させるのに必要な冷却を与えることのみが必要となる。その結果、従来のLNGプロセスと同等量の設置プラント動力(冷却)について、増加した量のLNGを製造することができる。この製造増加量は、同等の設置動力に対して15%〜20%のオーダーであることができる。また、かかる過剰の圧力を用いて、所定量のLNGを製造するのに必要な設置動力を低下させることによってプロセスのための資本コスト及び/又は運転コストを低下させることができる。
【0029】
更に、ターボエキスパンダーのような膨張装置において加圧天然ガス供給流を膨張させることによって得られる膨張仕事を用いて、上述し参照として本明細書に包含するカスケードタイプの液化プロセス又は上述し参照として本明細書に包含する混合冷媒タイプのプロセス(1以上の混合冷媒サイクルを用いることができる)において用いられるカスケード冷媒流のための圧縮のような液化領域において用いられる他の冷媒流のための圧縮を与えることができる。また、この膨張仕事を用いて、液化プロセスにおいて用いるか或いは地域の電力供給網に供給するための電力を製造する発電機を駆動することもできる。
【0030】
以下の実施例によって本発明を更に説明するが、以下の記載は例示の目的のみで与えられるものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0031】
本実施例においては、本発明の実施において用いるプロセス及び装置を使用して、天然ガス供給流中のNGL成分を回収し、1年あたりLNGを約500万メートルトン製造するように設計されたカスケードタイプ又は二元混合冷媒プロセスのような天然ガス液化プラントでのLNGの製造において更に使用する前に、天然ガス供給流を冷却した。
【0032】
用いる天然ガス供給流をまず処理して、コンタミナント、水、並びにCO2及び硫黄含有化合物のような酸ガス成分を除去し、かかる予備処理の後に、モルパーセント基準で、メタン(94.12%)、エタン(3.34%)、プロパン(1.23%)、i−ブタン(0.31%)、n−ブタン(0.38%)、i−ペンタン(0.20%)、n−ペンタン(0.20%)及びヘキサン(0.22%)の組成を有していた。天然ガス供給流は、図1のライン10内の地点において、23.9℃の温度及び137.9bargの圧力を有していた。ライン10内の天然ガス供給流のモル流量及び質量流量を下表1に示す。
【0033】
用いた装置は、以下に他に記載しない限り、図1を参照して説明したものである(装置及び配管に関する参照番号は便宜上以下の説明においても使用する)。冷媒としてプロパンを用いた。プロパン冷媒ループ及び凝縮器70の下流において、空冷熱交換器のような更なる冷却器(図1には示さず)を用いて、凝縮器70において凝縮された後に液体プロパン冷媒を過冷して、冷媒がジュール−トンプソンバルブ90から排出された後に冷媒流が未だ実質的に液相であるようにした。凝縮器70で冷却された後であるが過冷される前のプロパン冷媒の条件を表1のプロセス流75(このプロセス流は図1には図示していない)の欄に示し、過冷された後であるがジュール−トンプソンバルブ90に導入される前の冷媒の条件を表1のプロセス流80の欄に示す。また、用いた装置は、図1に示されるライン100,分離器110、又はライン130を用いなかった。それよりも、ジュール−トンプソンバルブ90から排出された後に、得られた冷たいプロパン冷媒流(ここでは二相流で蒸気フラクションは0.305であった)をライン120を通して直接冷却器15に搬送した。ジュール−トンプソンバルブ90から排出される冷媒流の条件を表1のプロセス流120の欄に示す。
【0034】
図1の番号に対応する本実施例の装置において用いた他のプロセス流の条件を表1に示す。更に、ターボエキスパンダー25の膨張器部分30における冷却天然ガス供給流の膨張によって、機械的動力10,430キロワット(kW)が生成し、これを用いてターボエキスパンダー25の圧縮器部分40においてプロパン冷媒を圧縮した。
【0035】
ライン140内に得られる冷却天然ガス供給流は、49,807キロモル/時のモル流量及び872,832kg/時の質量流量で生成し、これは次に、ターボエキスパンダー25の膨張器部分30での冷却天然ガス供給流20の膨張の後に凝縮するNGLの一部を回収する通常の装置に送った。NGL回収の後、冷却された天然ガス供給流の残りの部分はLNGを製造するための液化プラントに送った。
【0036】
【表1】

【0037】
本明細書において参照した全ての特許又は他の文献は、全て参照として本明細書に包含する。
本発明の他の態様及び利益は、本明細書を考察することによるか、或いは本明細書において開示した本発明の実施から当業者には明らかである。本明細書は例示のみのものであり、本発明の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の一態様の簡略化したプロセスフロー図であり、ここでは、加圧天然ガス流からの過剰の圧力が膨張器/圧縮器装置内で膨張されて、(1)装置の圧縮器を駆動してそれによって天然ガス流を予備冷却するための閉ループプロパン冷却サイクルのための圧縮を与え、(2)液化プロセスのための膨張し冷却された天然ガス流を生成する、機械的仕事を生成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の圧力及び第1の温度の加圧天然ガス流を提供し;
(b)加圧天然ガス流を、冷たい冷媒流による間接熱交換によって冷却して、第1の温度よりも低い第2の温度の冷却された加圧天然ガス流を生成し;
(c)膨張装置において冷却された加圧天然ガス流を膨張させ、ここで膨張装置からの膨張仕事を用いて冷媒流を圧縮する圧縮器を駆動して加圧冷媒流を生成し、膨張によって冷却供給流を得てこれを天然ガス液化領域に導き;
(d)加圧冷媒流を冷却して、冷却され少なくとも部分的に凝縮した加圧冷媒流を生成し;
(e)冷却され少なくとも部分的に凝縮した加圧冷媒流を膨張させて、工程(b)において用いる冷たい冷媒流を生成し;
(f)天然ガス液化領域において冷却供給流を液化する;
工程を含む、加圧天然ガス流を液化する方法。
【請求項2】
第1の圧力が約1000psig(69.0barg)又はそれ以上である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の圧力が約1300psig(89.6barg)又はそれ以上である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の圧力が約1300psig(89.6barg)〜2500psig(172.4barg)である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の温度が約50°F(10℃)〜100°F(37.8℃)である請求項2に記載の方法。
【請求項6】
冷媒流がプロパンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第2の温度が約−30°F(−34.4℃)〜50°F(10℃)である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
膨張装置がターボエキスパンダーである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
冷却供給流が650psig(44.8barg)〜1000psig(69.0barg)の圧力を有する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
冷却供給流が−100°F(−73.3℃)〜−60°F(−51.1℃)の温度を有する請求項7に記載の方法。
【請求項11】
液化領域がカスケードタイプの液化プロセスを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
液化領域が混合冷媒タイプの液化プロセスを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(a)第1の圧力及び第1の温度の加圧天然ガス流を提供し;
(b)冷たい冷媒流による間接熱交換によって加圧天然ガス流を冷却して、第1の温度よりも低い第2の温度の冷却された加圧天然ガス流を生成し;
(c)膨張装置において冷却された加圧天然ガス流を膨張させて冷却供給流を生成し、ここで冷たい冷媒流を生成するための冷却を得るために膨張装置からの膨張仕事を用い;
(d)冷却供給流を液化領域で液化する;
工程を含む、加圧天然ガス流を液化する方法。
【請求項14】
第1の圧力が約1000psig(69.0barg)又はそれ以上である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1の圧力が約1300psig(89.6barg)又はそれ以上である請求項13に記載の方法。
【請求項16】
第1の圧力が約1300psig(89.6barg)〜2500psig(172.4barg)である請求項13に記載の方法。
【請求項17】
第1の温度が約50°F(10℃)〜100°F(37.8℃)である請求項14に記載の方法。
【請求項18】
冷媒流がプロパンを含む請求項13に記載の方法。
【請求項19】
第2の温度が約−30°F(−34.4℃)〜50°F(10℃)である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
膨張装置がターボエキスパンダーである請求項13に記載の方法。
【請求項21】
冷却供給流が650psig(44.8barg)〜1000psig(69.0barg)の圧力を有する請求項13に記載の方法。
【請求項22】
冷却供給流が−100°F(−73.3℃)〜−60°F(−51.1℃)の温度を有する請求項19に記載の方法。
【請求項23】
液化領域がカスケードタイプの液化プロセスを含む請求項13に記載の方法。
【請求項24】
液化領域が混合冷媒タイプの液化プロセスを含む請求項13に記載の方法。
【請求項25】
(a)第1の圧力及び第1の温度の加圧天然ガス流を提供し;
(b)冷たい冷媒流による間接熱交換によって加圧天然ガス流を冷却して、第1の温度よりも低い第2の温度の冷却された加圧天然ガス流を生成し;
(c)膨張装置において冷却された加圧天然ガス流を膨張させて冷却供給流を生成し、ここで膨張装置からの膨張仕事を用いて冷たい冷媒流を生成する;
工程を含む、冷却天然ガス供給流を調製する方法。
【請求項26】
(a)第1の圧力及び第1の温度の加圧天然ガス流を提供し;
(b)膨張装置において加圧天然ガス流を膨張させて冷却供給流を生成し、ここでLNGを調製するための冷却を得るために膨張装置からの膨張仕事を用い;
(c)液化領域において冷却供給流を液化する;
工程を含む、加圧天然ガス流を液化する方法。
【請求項27】
該膨張行程の前に、冷たい冷媒流による間接熱交換によって加圧天然ガス流を冷却して、第1の温度よりも低い第2の温度の冷却された加圧天然ガス流を生成する工程を更に含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
冷たい冷媒流を生成するための冷却を得るために膨張仕事の少なくとも一部を用いる請求項27に記載の方法。
【請求項29】
液化領域のための冷却を得るために膨張仕事の少なくとも一部を用いる請求項26に記載の方法。
【請求項30】
液化領域がカスケードタイプのプロセスである請求項26に記載の方法。
【請求項31】
液化領域が混合冷媒タイプのプロセスである請求項26に記載の方法。
【請求項32】
(a)第1の圧力及び第1の温度の加圧天然ガス流を提供し;
(b)膨張装置において加圧天然ガス流を膨張させて冷却供給流及び膨張仕事を生成し;
(c)液化領域において冷却供給流を液化する;
工程を含む、加圧天然ガス流を液化する方法。
【請求項33】
該膨張行程の前に、冷たい冷媒流による間接熱交換によって加圧天然ガス流を冷却して、第1の温度よりも低い第2の温度の冷却された加圧天然ガス流を生成する工程を更に含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
冷たい冷媒流を生成するための冷却を得るために膨張仕事の少なくとも一部を用いる請求項33に記載の方法。
【請求項35】
液化領域のための冷却を得るために膨張仕事の少なくとも一部を用いる請求項32に記載の方法。
【請求項36】
膨張仕事の一部を用いて電力を生成するための発電機を駆動する請求項32に記載の方法。
【請求項37】
液化領域がカスケードタイプのプロセスである請求項32に記載の方法。
【請求項38】
液化領域が混合冷媒タイプのプロセスである請求項32に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−509374(P2008−509374A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525051(P2007−525051)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/027982
【国際公開番号】WO2006/017783
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】