説明

天然痘モノクローナル抗体

ワクシニアウイルスB5R表面抗原に対するヒト化モノクローナル抗体。前記抗体は、天然痘感染の治療に有効である。そのような抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸およびそれらを発現する細胞についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2006年8月23日に出願された米国仮出願第60/839,579号に対して優先権を主張するものであり、その内容は全体として参照によって引用される。
【背景技術】
【0002】
天然痘は重篤であり、感染性が高く、そしてポックスウイルス・ファミリーである天然痘ウイルスによって引き起こされる時には致死的な感染病である。天然痘の大発生は何千年もの間しばしば起こってきたが、世界的なワクチン接種計画が成功した後、1977年ころに天然痘は効果的に根絶した。
【0003】
天然痘が根絶した後、もはや予防の必要がなくなったため、公衆に対する定期的な天然痘のワクチン接種はストップした。したがって、現在の多くの人が天然痘に対して免疫性を持っていない。結果として、バイオテロリストの天然痘ウイルス攻撃は壊滅的になるであろう。重要なことは、そのような攻撃が起きた場合、ワクチン接種ではあまりに遅く、標的となった人々における天然痘の急速な広がりを効果的に阻止することはできない。それ故、即効性があり、効果的な天然痘感染の治療用組成物が求められている。
【発明の概要】
【0004】
要約
本発明は、天然痘ウイルスの近縁種であるポックスウイルスファミリーの一つであるワクシニアウイルスのB5R抗原に対するヒト化モノクローナル抗体が天然痘感染を無効化するのに有効であるという予期せぬ発見に部分的には基づいている。
【0005】
したがって、本発明の一態様は、B5R抗原に対する抗原結合ドメインを含むヒト化モノクローナル抗体に関する。そのようなヒト化モノクローナル抗体(hB5RmAb)は、ワクシニアウイルス感染に罹患した患者に投与すると、ワクシニアウイルス感染の進行を遅くすることができる。それは、EM−1000ハイブリドーマセルライン(ATCC Deposit Designation PTA−7594)によって産生されたモノクローナル抗体と同じエピトープ特異性を持つことができる。ヒト化抗体は、2個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号1(下記に示す)に一致する第一の重鎖相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)配列、4個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号2(下記に示す)に一致する第二の重鎖CDR配列、および4個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号3(下記に示す)に一致する第三の重鎖CDR配列;ならびに4個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号4(下記に示す)に一致する第一の軽鎖CDR配列、3個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号5(下記に示す)に一致する第二の軽鎖CDR配列、および3個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号6(下記に示す)に一致する第三の軽鎖CDR配列を含むことができる。ヒト化抗体は、上述の重鎖および軽鎖CDR配列を含む単一ポリペプチドから構成されていてもよい。
【0006】
本発明の他の態様は、上述の抗体を含む培養細胞に関する。
【0007】
本発明のさらに他の態様は、上述の重鎖または軽鎖CDR配列を含むヒト化重鎖可変領域配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸に関する。
【0008】
本発明のさらなる他の態様は、該核酸の一つを含む培養細胞に関する。
【0009】
本発明の他の特徴または利点は、下記の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
下記に述べるのは、天然痘ウイルスの検出および該ウイルスの宿主細胞に感染する能力を阻害することに有用である、ワクシニアウイルスB5R抗原に対するドナー(例えば、ラットまたはマウス)モノクローナル抗体由来の新規なヒト化モノクローナル抗体(hB5RmAb)である。ヒトへの治療剤としてげっ歯類のモノクローナル抗体を投与すると、有害な免疫反応を起こす可能性がある。本発明のヒト化モノクローナル抗体はこの免疫反応を引き起こさず、したがって、治療薬または予防薬として有用でありうる。
【0011】
本明細書において用いられる場合、「モノクローナル抗体」なる語は、免疫グロブリン重鎖または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。そのようなポリペプチドとしては、例えば、二価抗体、一価抗体、一本鎖抗体(すなわち重鎖および軽鎖可変領域を含む単一ポリペプチド)、Fabフラグメント、二重特異性抗体(diabodies)、ミニボディー(minibodies)、および免疫グロブリンと関連のない、または相同性が低い(すなわち60%未満)アミノ酸配列へのこれらの融合体が挙げられる。
【0012】
「ヒト化モノクローナル抗体」なる語は、前述のポリペプチドのどれも指し、該ポリペプチドにおいては、可変領域骨格配列(framework sequence)の少なくとも一つが、例えば、ヒト免疫グロブリンファージディスプレイライブラリーから単離された抗体のような、ヒトの骨格配列に近い、または一致している。
【0013】
本明細書で述べられているhB5RmAbによって認識されるB5Rタンパク質の配列(Genbank CAA46496)を以下に示す:
【0014】
【表1】

【0015】
B5R抗原に対する親抗体(parental antibody)またはヒト化抗体の親和性測定に有用なアッセイは本分野においてよく知られている。例えば、Azimzadeh et al.,J.Immunol Methods,141(2):199−208(1991);およびOta et al.,Hybridoma,17(5):471−7(1998)参照。hB5RmAbは、下記のEM−1000ハイブリドーマによって産生される抗体と同じB5R抗原エピトープ特異性を有することができる。エピトープマッピングの方法は、十分に確立されており、例えば、Steinmann et al.,J Virol.78(17):9030−40(2004)で説明されているように、容易に行うことができる。
【0016】
本明細書で記載されるhB5RmAbは、B5R抗原に対するドナー(例えば、マウスまたはラット)モノクローナル抗体由来の、下記の第一、第二および第三の重鎖相補性決定領域(H−CDR 1−3)を有することができる:
【0017】
【表2】

【0018】
hB5RmAbは、下記の第一、第二および第三の軽鎖相補性決定領域(L−CDR 1−3)を有することができる:
【0019】
【表3】

【0020】
上記要約部で指摘したように、本明細書で記載されるhB5RmAb中の各CDR配列は、上記列挙した配列番号1〜6について、いくつかのアミノ酸の相違を含んでいてもよい。
【0021】
【表4】

【0022】
相違には、アミノ酸置換、欠失、挿入および付加が含まれうる。相違がアミノ酸置換である場合には、保存アミノ酸置換であることが好ましい。保存アミノ酸置換とは、あるアミノ酸が類似の化学的特性を有する別のアミノ酸によって置換されることを言う。
【0023】
表1に、遺伝的にコードされた20のアミノ酸が化学的特性にしたがってどのようにグループ化されうるかを示す。
【0024】
【表5】

【0025】
前述の変異を導入する技術は、本分野においてよく知られている(例えば、部位特異的突然変異誘発法、エラープローンPCR、およびエラープローン宿主細胞中の複製配列)。上述のタイプの変異のいずれかを含むhB5RmAbのB5Rへの結合能力は、一般的に用いられている技術、例えば、ELISAまたはファージ提示法によって、非常に効率的に試験することができる。これらのアッセイのハイスループット版は本分野で知られており、過度の努力なしにさらに高い抗原親和性を有するhB5RmAbを単離するために変異技術と組み合わせて用いることができる。例えば、米国特許第6,916,474号参照。
【0026】
hB5RmAbの可変領域として、抗原結合領域が由来するドナー抗体のクラスまたはタイプを考慮して、どんなヒトアクセプター可変領域フレームーク配列も用いることができる。ヒトアクセプター可変領域フレームーク配列もまたコンセンサス配列であり、すなわち、自然発生的な配列に基づいて生成したものである。用いられるヒトアクセプターフレームークのタイプは、ドナー抗体と同じ、または類似のクラスまたはタイプであることが好ましい。好適には、ヒトグループIIIγ生殖細胞系フレームワークが合成重鎖用に用いられ、ヒトグループIκ生殖細胞系フレームワークが合成軽鎖用に用いられる。hB5RmAbの重鎖および軽鎖は、各々、ドナー可変領域フレームワーク配列から約15残基まで含むことができる。hB5RmAbフレームワーク領域配列内にドナー可変領域フレームワーク残基を含有することにより、抗原に対する抗体の親和性を増大させることができる。適切なドナーフレームワーク残基を選択する方法は、例えば、米国特許第5,998,586号および6,056,957号に記載されている。
【0027】
本明細書に記載されたhB5RmAbの定常領域ドメインは、所望の提案された抗体の機能、特にエフェクター機能を考慮して選択される。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgE、IgGまたはIgMドメインでありうる。hB5RmAbが治療用途を目的とし、抗体エフェクター機能が求められる場合には、特にIgGヒト定常領域ドメイン、とりわけIgGlおよびIgG3アイソタイプのヒト定常領域ドメインを用いることができる。特定のエフェクター機能を変えるために1以上のアミノ酸残基が改変された、または削除された、改良されたヒト定常領域ドメインをまた用いてもよい。
【0028】
本明細書で記載されたhB5RmAbは、付加されたエフェクターまたはレポーター分子(例えば、融合ポリペプチドとして)を有していてもよい。あるいは、重鎖または軽鎖の定常領域のアミノ酸配列が、機能的な非免疫グロブリンポリペプチド、例えば、アフィニティー標識、蛍光タンパク質、酵素、または毒素分子をコードするアミノ酸配列で置き換えられていてもよい。したがって、抗体分子の残余は、免疫グロブリン由来の配列のみから構成される必要はない。
【0029】
本発明のさらなる実施態様は、hB5RmAbを構成するヒト化重鎖および軽鎖をコードするDNA配列を含む。該DNA配列を含むクローニングおよび発現ベクター、DNA配列で形質転換されたホストセル、および形質転換されたホストセル中でDNA配列を発現することを含む、抗体分子を製造するプロセスもまた、本発明の他の実施態様である。ベクターを構築する一般的方法、トランスフェクション方法および培養方法は、本分野でよく知られており、過度の努力を要することなく容易に行うことができる。抗−B5Rドナーアミノ酸配列をコードするDNA配列は、例えば国際特許出願WO 93/16184中で説明されているように、公知の方法で容易に得ることができる。例えば、抗−B5Rコード配列は、適切なハイブリドーマセルラインから遺伝子クローニングまたはcDNAクローニングによって得ることができる。陽性クローンは、所望の重鎖および軽鎖に対する適切なプローブを用いてスクリーニングされうる。
【0030】
ヒトアクセプターアミノ酸配列は、標準的などんな方法によっても得ることができる。例えば、ヒトグループI軽鎖およびヒトグループIII重鎖のようなヒトアクセプターフレームワークをコードするDNA配列が知られ、本分野に従事しているものにとって広く用いられている。
【0031】
標準的な分子生物学手法が、所望のDNA配列を準備するために用いられうる。配列は、オリゴヌクレオチド合成技術を用いて、全部または一部を合成することができる。必要に応じて、部位特異的突然変異誘発法およびPCR技術を用いてもよい。例えば、Jones et al.Nature,321,522(1986)に記載されているような、オリゴヌクレオチド直接合成法を用いることができる。Verhoeyen et al.,Science,239,1534−1536(1988)によって述べられているように、あらかじめ存在する可変領域のオリゴヌクレオチド定方向突然変異誘発をまた用いてもよい。さらに、Queen et al.,Proc.Natl.Acad.ScL USA,86,10029−10033(1989)およびWO90/07861に記載のT4 DNAポリメラーゼを用いたギャップ形成されたオリゴヌクレオチド(gapped oligonucleotide)の酵素的埋まり(enzymatic filling−in)を用いてもよい。
【0032】
核酸は、Sigma−Genosys(at sigma−genosys.com/oligo.asp);The Midland Certified Reagent Company(mcrc@oligos.com)、The Great American Gene Company(at genco.com)、ExpressGen Inc.(at expressgen.com)、Operon Technologies Inc(アラメダ、カリフォルニア州)、その他のような種々の商業的供給源から注文することもできる。
【0033】
いかなる適切なホストセルおよびベクターシステムもhB5RmAb重鎖または軽鎖をコードするDNA配列の発現に用いられうる。好ましくは、真核性(例えば、哺乳類)の宿主細胞発現系が用いられる。とりわけ、好適な哺乳類宿主細胞としては、CHO細胞およびミエローマまたはハイブリドーマセルラインが挙げられる。
【0034】
一実施形態として、ハイブリドーマラインEM−1000によってhB5RmAbは分泌される。出願人は、ブタペスト条約にしたがって、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection、ATCC)、マナッサス、バージニア州20110−2209,米国にEM−1000ハイブリドーマセルライン(ATCC寄託指定(Deposit Designation) PTA−7594)を寄託した。寄託されたハイブリドーマラインは、本願の出願前から、EMAB LLC,3 Hunt Road,レキシントン,マサチューセッツ州02421によって維持されている同じ寄託から引き継がれていた。
【0035】
ハイブリドーマの寄託は、ATCC寄託機関において、30年間または直近のリクエストから5年間の期間、あるいは、特許権が有効である期間のいずれか長い方の期間、制限なく維持され、その期間の間で寄託が持続できない場合には、寄託は置き換われるだろう。
【0036】
上述のhB5RmAbは、予防または治療用の薬剤組成物中に含まれうる。例えば、薬剤組成物は、hB5RmAbの有効量および薬剤的に許容されるキャリアーを含むことができる。一般的には、有効量は、循環している天然痘またはワクシニアウイルスに定量的に結合するために、または感染患者中の感染の進行を遅らせるために十分なhB5RmAbの循環濃度であろう。それにもかかわらず、当業者によって認識されているように、感染の重篤性、診療の段階、患者の総体的な健康または年齢、以前に行われた治療、投与経路、賦形剤の使用、および他の予防または治療療法の併用の可能性によって、有効量は変化しうる。
【0037】
上述の抗体の有効量を必要とする患者に対する投与による、患者の天然痘感染の治療方法もまた本発明の範囲内である。治療されるべき患者は、天然痘感染に関連する状態である、または天然痘感染に関連する状態となる危険性があると確認されうる。「治療」という用語は、疾患、疾患の徴候、疾患に続く病態、または疾患傾向を治癒、軽減、緩和、治療、または改善することを目的として、患者に対して組成物を投与することを指す。「有効量」とは、治療患者に医学上の望ましい結果をもたらすことができる組成物の量である。
【0038】
本発明の方法を実行するために、hB5RmAb含有組成物を、非経口経路で全身投与することができる。投与の際、治療組成物は、好ましくは、発熱物質フリー、非経口で許容される水溶液の形態である。そのような非経口で許容されるタンパク質溶液の準備は、pH、等張性、安定性などを十分考慮して、本分野の技術内である。非経口で許容される賦形剤の中で、用いられうる溶媒はマンニトール、水、リンガー溶液、および生理食塩液である。
【0039】
必要に応じ、hB5RmAbを、ある期間にわたって持続的に投与することができる。持続的に組成物を注入し、徐々にその全身濃度を維持する方法は、本分野において公知である。例えば、本明細書で述べられている組成物は浸透ミニポンプまたは他の持続放出装置から放出され、また運搬されることができる。簡単な浸透ミニポンプからの放出速度は、放出開口部中に配置された細孔の、高速応答ゲルで調節することができる。浸透ミニポンプは、長期間(例えば、1時間から1週間)にわたり、組成物の放出を制御することに有用である。かようなミニポンプは、他の持続型放出装置と同様、例えば、DURECT社(クパチーノ、カルフォルニア州)から市販されている。活性配合もまた、直腸投与用の座薬形態で投与可能である。
【0040】
下記の特定の実施例は、単に説明のために用いられ、いかなる形態であれ開示の残りの制限ではないと解釈されるべきである。さらに詳述することなく、本明細書の記載に基づいて、当業者は本発明を最大限の範囲まで利用することができると確信する。本明細書で引用される全ての文献は、本明細書に全体として参照により組み込まれる。
【実施例】
【0041】
抗−BR5モノクローナル抗体による、インビボでのワクシニアウイルスの中和
ワクシニアウイルスウイルスエンベロープタンパク質B5Rに対するラットハイブリドーマ抗−BR5をDMEM中で増やした(Schmelz et al.,J Virol.,68(l):130−147(1994);and Galmiche et al.,Virology,254(l):71−80(1999))。モノクローナル抗体は、プロテインGセファロースで精製した。
【0042】
6〜8週齢のBalb/cマウス(グループあたり3)を、ワクシニアウイルスの一群を形成する10斑を鼻腔内に感染させた。5時間後、抗−BR5モノムローナル抗体または前免疫ラットIgG(PI)の10または30μgを腹腔内に注入した。次いで、マウスの体重を12日間、1日おきに測定した。対応のない片側t検定(unpaired one−sided t test)により、各投与量で抗−BR5およびPI動物間で結果を比較した。
【0043】
コントロール動物において、体重の落ちは、2日目で観察され、6日目にピークとなり、マウスは12日目には回復した。抗−BR5処置動物においては、同様のパターンが観察された。しかしながら、抗−BR5の30μg投与動物において、体重の落ちは6日目で顕著に少なくなった(PI状態と比較して、p<0.001)。
【0044】
抗−BR5モノクローナル抗体のヒト化
抗−BR5の軽鎖および重鎖の可変領域のcDNAをPCRで増幅し、配列決定のためにpCRII(インビトロジェン)中にサブクローン化した。ヌクレオチド配列は、いくつかの独立したクローンから得た。抗−BR5抗体の軽鎖または重鎖V領域を示す、独立したクローンから同一のcDNA配列が選択された。
【0045】
CDRグラフティングをラット抗−BR5抗体のヒト化に適用した。結合親和性と特異性を保持するために、ヒトフレームワーク上にCDRをグラフティングする際に、V領域構造を保存することは不可欠である。アミノ酸配列を比較した後、ヒト抗体IC4のフレームワーク領域を、ラット抗BR5のヒト化用にフレームワークドナーとして用いた。
【0046】
ヒト化抗−BR5可変領域のタンパク質配列をコードするために、シグナルペプチドを含む、プライマーの4対(各々約80ベース長)を設計し、合成した。各々の対のプライマーは、約20ヌクレオチドが部分的に一致した。遺伝子の回収および増幅は、4段階で行われた:(1)相補的オリゴヌクレオチドの4対を4つの個別の反応によりアニーリングし、Klenowフレグメントを用いて伸長させた;(2)得られた4つの二本鎖DNAフラグメントをペアワイズで混合し、変性し、リアニールし、そして2つの個別の反応で伸長した;(3)最終的な完全長二本鎖DNAを作製するために、得られた2つの二本鎖DNAを混合し、変性し、リアニールし、そして、伸長した;そして(4)得られたDNAをプライマーを用いてPCRで増幅し、両端にXbalサイトを導入した。次いで、PCRフラグメントをXbalで消化し、Xbalで消化したpVKおよびρVg4ベクターの各々に挿入した。
【0047】
次いで、ヒト化抗BR−5の特異性を下記のようにテストした。ヒト化抗BR−5重鎖および軽鎖をコードするプラスミドを、COS−7細胞に共トランスフェクションした。次いで、培養細胞から上清(exhausted supernatant)を回収し、精製した。ヒト化抗BR−5をウエスタンブロット分析により、COS−7細胞またはE.coli中で発現させたB5Rの細胞外ドメインと相互作用できるかどうかについてテストした。
【0048】
ヒト化抗BR−5を生産する安定なセルラインを開発するため、ヒト化抗BR−5重鎖および軽鎖をコードするプラスミドを、リポフェクタミン2000(インビトロジェン社)を用いて、CHO/dhfr−細胞に一緒に共トランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、細胞を選択培地(αMEM中、20nMメトトレキサート)を含む96ウェル組織培養プレート中に播種した。MTX−耐性クローンをヒトIgG産生についてテストした。高産生モノクローナルセルラインを特定するために、限界希釈法を適用した。
【0049】
他の実施態様
いかなる組み合わせにおいても、本明細書に開示されている全ての特徴を組み合わせることができる。本明細書に開示されている各特徴は、同じ、同等の、または類似の目的に役立つ代替可能な特徴によって置換されてもよい。
【0050】
上記記述から、当業者であれば本発明の本質的特徴を容易に確かめることができ、本発明の精神および範囲を離れることなく、様々な使用および条件に適合させるために本発明に多様な変化および改良をなすことができる。したがって、他の実施態様もまた検討される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体がB5R抗原に結合する、B5R抗原に対する抗原結合ドメインを含むヒト化モノクローナル抗体。
【請求項2】
ワクシニアウイルスに感染した患者に投与すると、前記抗体が感染の進行を遅くする、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記抗体は、2個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号1に一致する第一の重鎖CDR配列、4個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号2に一致する第二の重鎖CDR配列、および4個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号3に一致する第三の重鎖CDR配列;ならびに4個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号4に一致する第一の軽鎖CDR配列、3個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号5に一致する第二の軽鎖CDR配列、および3個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号6に一致する第三の軽鎖CDR配列を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
前記抗体は単一のポリペプチドから構成される、請求項3に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
前記第一の重鎖CDR配列は、配列番号1と一致し、前記第二の重鎖CDR配列は、配列番号2と一致し、そして前記第三の重鎖CDR配列は、配列番号3と一致し;前記第一の軽鎖CDR配列は、配列番号4と一致し、前記第二の軽鎖CDR配列は、配列番号5と一致し、そして前記第三の軽鎖CDR配列は、配列番号6と一致する、請求項3に記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
前記抗体は単一のポリペプチドから構成される、請求項5に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
前記抗体は、ATCC寄託指定PTA−7594のセルラインによって産生されるモノクローナル抗体と同じエピトープ特異性を有する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
前記抗体は、ATCC寄託指定PTA−7594のセルラインによって産生される、請求項7に記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
前記抗体は単一のポリペプチドから構成される、請求項7に記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
2個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号1に一致する第一のCDR配列、4個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号2に一致する第二のCDR配列、および4個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号3に一致する第三のCDR配列を含む、ヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含む、単離核酸。
【請求項11】
前記第一のCDR配列は、配列番号1と一致し、前記第二のCDR配列は、配列番号2と一致し、そして前記第三のCDR配列は、配列番号3と一致する、請求項10に記載の核酸。
【請求項12】
前記コードされる核酸配列は、配列番号7を含む、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
4個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号4に一致する第一のCDR配列、3個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号5に一致する第二のCDR配列、および3個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号6に一致する第三のCDR配列を含む、ヒト化免疫グロブリン軽鎖可変領域を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含む、単離核酸。
【請求項14】
前記第一のCDR配列は、配列番号4と一致し、前記第二のCDR配列は、配列番号5と一致し、そして前記第三のCDR配列は、配列番号6と一致する、請求項13に記載の核酸。
【請求項15】
前記ポリペプチドは、配列番号8を含む、請求項13に記載の核酸。
【請求項16】
請求項1に記載のモノクローナル抗体を含む、培養細胞。
【請求項17】
請求項3に記載のモノクローナル抗体を含む、培養細胞。
【請求項18】
請求項11に記載の核酸を含む、培養細胞。
【請求項19】
請求項13に記載の核酸を含む、培養細胞。
【請求項20】
2個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号1に一致する第一のCDR配列、4個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号2に一致する第二のCDR配列、および4個以下の単一アミノ酸が異なっていてもよい配列番号3に一致する第三のCDR配列を含むヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含む、単離核酸をさらに含む、請求項19に記載の培養細胞。
【請求項21】
請求項1に記載の抗体の効果的な量を必要とする患者に投与することを含む、天然痘感染の患者を治療する方法。

【公表番号】特表2010−507362(P2010−507362A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525759(P2009−525759)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/076532
【国際公開番号】WO2008/085551
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(509051336)ケルセジーン ファーマ リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】