説明

天然繊維のトリムパネル

天然繊維及び保護部材で形成されたトリムパネル、及び該トリムパネルを形成する方法。天然繊維は環境に優しく、保護部材はホットメルト又は接着剤を使用することなく、天然繊維に十分接着する。保護部材は、アプリケーション時にガス及び水蒸気に透過性であるように構成され、一旦施与されると、紫外線並びに水及び炭酸水などの液体に不浸透性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年1月9日に出願された、“Exposed Natural Trim Fiber”と題された米国仮出願第61/143,619号、及び2009年9月3日に出願された、“Natural Fiber Trim Panel”と題された米国仮出願第61/239,563号の優先権を主張し、これらの出願の開示の全体が本出願の一部として考慮され、及び参照として包含される。
【0002】
本発明は、自動車のトリムパネルに関し、特に、天然繊維から形成され、該天然繊維層が視界に晒され、かつ、様々な環境因子からの汚れ及び他の弊害を防ぐために施与された保護フィルムを含む、環境に優しいトリムパネルに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、天井材、ドアパネル、計器パネル、ダッシュボード、インサート成形品などの、自動車トリムパネル中で使用される、多層パネル又は積層パネルが長い間知られている。積層パネルは、様々な種類のものが製造され、また様々な方法で製造される。内装トリムパネルは、通常、例えばポリウレタン若しくはポリプロピレンなどのポリマー部材のコア層又は基材を含む。外部層を含む、1つ以上の追加の層が、一般的に、基材に接着剤又は他の結合方法によって取り付けられる。外部層は、織布、皮革、又はポリマー(例えば、ポリエステル)でよい。単一部材(例えばポリプロピレン)であるか、又は複合部材(例えば、繊維ガラスで補強されたポリウレタンフォーム)である、成形されたパネルの自動車のトリムパネルにおける使用も知られている。
【0004】
従来の積層トリムパネルは製造するのに複雑で、かつ高価である。なぜなら、製造工程が、例えば、接着剤の施与、層の取り付け、及び構成成分の加熱などの、複数のステップ及び部品に関与するからである。トリムパネルに通常使用されている多くの部材が、非分解性であり、かつ同時に再利用することができず、及び/又は、分離できるとしても困難である。様々な化学接着材の使用もまた、トリムパネルの再利用可能な部材への解体を、より難しくし、及び/又はより高額にする。これらのトリムパネルは、不燃性部材を含み、及び/又は燃焼されると有害ガスもしくは毒性のガスを産生するので、一般に安全に焼却することもできない。
【0005】
環境的及び経済的な懸念は、消費者を、より環境に優しい部材の探求へと導いている。例えば、自動車におけるより軽量の部材の使用は、車体の重量を軽減し、かつ燃費を向上させる。さらに、多くの従来の内装トリムパネルは、石油由来のポリマー系部材(例えば、ポリウレタン、ポリプロピレン)でできている。原油価格の乱高下、及び多くの石油源の信頼性の欠如は、石油ベースの製品への依存を望ましくないものとしている。さらに、最終的に廃棄されることになるトリムパネルの部材を再利用することができないことは、埋立地に過度の負担をかける。消費者はまた、再利用が容易な製品をますます望んでいる。消費者は、新車中の石油ベースの製品からの化学排出物に関しても、懸念を強めている。よって、既存の製品の性能特性に適う、より環境に優しく、又は「無公害の」製品に対する多大な要求が存在する。また、消費者は、洗練された、好みでカラーコーディネートをすることができ、かつ容易に再利用することができる、環境に優しい製品も求めている。
【0006】
天然繊維は、様々な自動車のトリムパネルに使用されており、典型的には基材及び支持部材として使用されている。しかしながら、これらの種類の繊維は、一般的にクラスAサーフェスと呼ばれる、自動車の乗員の目に見えるトリムパネルの表面には広く見出されない。なぜなら、これらは磨耗特性に乏しく、また他の欠点を有するからである。天然繊維シート及び製品は、通常の使用において、一般的に擦り切れやすく、又は擦過されやすい傾向がある。これらはまた、汚れやすい傾向がある。なぜなら、繊維の網目が汚染物質及び他の汚れの原因となる物質を吸着し、洗浄を困難又は不可能にするからである。したがって、液体を吸い取り、かつ吸収する、現在の天然繊維の任意の生来の性向は、天然繊維シートの見栄えの悪い膨潤又は膨張、及び時には製品の顕著な変形も導く。より深刻なことは、これらの天然素材部品又はパネルの多くは、洗浄液を吸収する傾向もあり、これらを洗浄することをさらに困難にしている。多くの天然素材は、紫外線(UV)及び他の環境要因、例えば熱などからの損傷、又は負の美的効果(例えば、黒ずみ)の影響も受けやすい。上記の多くの特性により、最終製品に負の影響を及ぼすことなく、多くの既存の方法で持続性並びに好ましい色合い及び着色の提供は、付与することが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の天然繊維パネルの欠点の傾向が少ない、天然繊維製品及び天然繊維パネルの製造方法に関する。本発明は、特に、繊維層及び透明保護層、及び/又は保護部材から形成されたコーティングを含むトリムパネルに関し、該繊維層は、植物性繊維、又は他の天然・非石油ベースの繊維をさらに含む。本発明は、色合い又は着色効果を繊維層に提供する、着色部材を含むトリムパネルにさらに関する。
【0008】
本発明は、天然繊維、場合によっては、植物性繊維を包含するシートを提供すること、保護部材を繊維シートの表面上に施与して保護層を生成すること、及び繊維シートを圧縮成形してトリムパネルを形成することを含む、トリムパネルを形成する方法にも関する。もちろん、場合によっては、保護部材を施与する前に、天然繊維のベース層を成形してよい。いくつかの例示的な方法は、着色部材を提供して、感知される色彩又は色合いをトリムパネルに提供するステップも含む。
【0009】
本発明の系及び方法の様々な態様のこれら及び他の特徴及び利点は、以下の本発明の様々な装置、構造、及び/又は方法の、様々な例示的な態様の詳細な説明に記載され、又はこれによって明らかになる。
【0010】
本開示に従う系及び方法の様々な例示的な態様を、以下の図を参照して、詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従う天然繊維から形成されたトリムパネルの様々な例示的な態様による、自動車の内装の断片的な斜視図である。
【図2】本発明に従うドアパネルの例示的な態様の斜視図である。
【図3】本発明に従う天然繊維のシートからトリムパネルを形成する、第1の例示的な工程を示す。
【図4】本発明に従う天然繊維のシートからトリムパネルを形成する、第2の例示的な工程を示す。
【図5】本発明に従う天然繊維のシートからトリムパネルを形成する、第3の例示的な工程を示す。
【図6】本発明の工程を示すフローチャートである。
【図7】例示的なトリムパネルを形成する、例示的な層の分解斜視図である。
【図8】例示的なトリムパネルを形成する、例示的な層の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、図1及び2に、ドアパネル101、102、ダッシュボード105、及びその他の自動車パネル104として例示的に示され、一般的には天然繊維ベース層110から形成され、並びに保護層111などの透明保護部材、及び/又は天然繊維シートを被覆するコーティングを含む、トリムパネル100に関する。図8に示すように、保護部材111を、典型的にはクラスAサーフェスに施与する。保護部材111は、耐磨耗性及び/又は耐擦過性、耐UV性(例えば、少なくとも部分的にUV光に不透明)、及び自動車のコンパートメント内部で一般的に存在する、水、ソーダ水、コーヒー、及び紅茶などの液体に対して、不浸透性又は耐性がある。保護部材111は、天然繊維シート110の目に見える面又はクラスAサーフェスを磨耗による擦り切れからも防ぐ。
【0013】
図1は、様々なトリムパネル101、104、及び105が、カバーストック部材(coverstock material)なしで、本発明の天然素材シートから製造された、例示的な自動車の内装を示す。本出願中で、「カバーストック部材」とは、従来技術の繊維パネルを被覆する布地などの、自動車内で見出される典型的な被覆部材を指す。本出願中で、「カバーストック部材」は、本発明の保護部材も、存在する場合には、いかなる着色層又は染色層も含まない。
【0014】
天然繊維トリムパネル100を、第一の例示的なドアパネル101及び例示的なダッシュボード105を含む、図1に示すトリムパネルなどの、任意の所望の形状、大きさ、又は構造の任意の所望のパネルに形成してよい。図1に示すダッシュボード105は、様々な様式、形状及び構造を含むことができ、図1は例示的な態様を単に示すだけであることが認識されるべきである。図1に示す例示的なウイングアームレストは、トリムパネル101及び他の自動車パネル104のように上述の天然繊維パネル110を用いて形成することができることが認識されるべきである。図2は、カバーストック部材を何ら含まない、天然繊維から製造された第2の例示的なドアパネル102も示す。本発明は、自動車における様々な様式、構造、及び設計だけでなく、天然繊維が目に見える耐摩耗性外部表面を形成する、環境に優しい部材を使用することが望まれる家具などの他の部品の多くの産物に形成してよい。
【0015】
繊維シート110は、木質繊維、リグニン繊維、及び例えば、木材、ケナフ、麻、黄麻、亜麻、カラムシ、ローゼル、ラタン、大豆、オクラ、バナナ繊維、竹、ココナツ、コイア、綿、クラワ、アバカ、マツ、パイナップル、ラフィア、及び/又はサイザル麻などの他のセルロース繊維原料から主に形成される。いくつかの限定的な態様において、繊維シート110は、例えば、アクリル、アラミド、トワロン(twaron)、ケブラー、テクノーラ(technora)、ノメックス(nomex)、カーボン、マイクロファイバー、ナイロン、オレフィン、ポリエステル、ポリエチレン、レーヨン、スパンデックス(spandex)、テンセル(tencel)、ビナロン(vinalon)、ザイロン(zylon)、及び/又はポリプロピレンなどの合成繊維も含んでもよいが、部材の大半は天然繊維部材のままである。好ましい態様において、繊維シートは、50%未満の合成繊維を含み、より好ましくは30%未満の合成繊維を含む。多くのトリムパネル100は、約100%の天然繊維から形成された繊維シート110を使用してよい。繊維シート110を、任意の既知の工程により形成してよい。
【0016】
様々な例示的な態様において、保護部材111は可視光を透過し、擦過に対して高い耐性を有し、UV耐性(例えば、UV光に対して少なくとも部分的に不透明)、及び/又は、一般的な液体(例えば、疏水性液体)による浸透に耐性である。保護層111は、一般的に例えばウレタン、アクリル、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性オレフィン(TPO)、ポリエステル、及び/又はポリカプロラクトンなどの透明部材のシート112、又はフィルムであるが、噴霧部材115でもよい。保護部材111は、厚さが約0.025〜0.15mmのシート又はフィルムとして、典型的に施与され、施与されると、0.020〜0.080mmの好ましい厚さを有する。もちろん、施与された厚さは、繊維シートの天然特性に応じて大幅に変更してよい。ほとんどの部材にとって、保護部材は厚さが約0.030〜0.070mmで施与されるが、所与の保護部材111に適切な、他の厚さを使用してよい。約0.040〜0.06mmの厚さが、十分な保護を一般的に提供すること、及び簡便、経済的、かつ効果的な製造方法を可能にすることが見出された。保護層111の厚さは、保護部材111を形成する部材の種類に従って変更してよい。例えば、ポリカプロラクトンベースの脂肪族熱可塑性ポリウレタンが保護層111を形成し、かつ70%のマツ繊維と20%のPET/ポリプロピレン及び、10%のアクリルバインダーが、繊維シート110を形成する場合に、0.1mmの厚さの保護層が良好に機能することが見出された。様々な例示的な態様において、保護部材111又は112は厚さが約0.002〜0.012inであるが、所与の部材に適切な他の厚さを使用してよい。
【0017】
天然繊維から形成された繊維層の保護部材として良好に機能することが見出された部材は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、又は任意の有機油脂ベースのポリオール(例えば、大豆、トウモロコシ、及びヒマ)などのポリオールである。特に、天然繊維の保護部材として良好に機能する部材は、広く60℃〜170℃のTMAの範囲を有する。該範囲は、一般的に、自動車の完成部品上の粘着性表面を避けるために、最低で60℃のTMAを、及び保護コーティングを施与するためのエネルギーを減少させ、かつ繊維シートを形成する、繊維マット同士を結合させる任意の熱硬化反応が損なわれるのを防ぐために、最高で170℃のTMAを有するように選択される。TMAの範囲が80℃〜150℃である保護部材は、繊維シート110と際立って結合又はカップリングすること、及び繊維マット又はシート110を結合するための追加のホットメルト又は接着剤を必要としないことも見出された。100℃〜130℃の狭い範囲も良好に機能する。保護部材のTMAの最高温度が低すぎると、保護層を提供する代わりに、保護部材は天然繊維シート内に、場合によっては、繊維の中にさえ浸みこみ、そして(1)保護層がほとんど無いか皆無となり、十分な汚れ及び水バリアを生成することができなくなり、及び(2)繊維シート111を変形又は脱色させ得る。もし保護部材のTMAの最高温度が高すぎると、フィルムは、成形工程の間に十分なガス及び水分子を逃がすことができず、穴又はブリスターの原因となるために魅力のない外見及び印象を生じ得、又は、保護部材111を繊維シートに接着する工程ステップの間にこのようなガス及び水を逃がすことを可能にする、レーザー化学的な又は他の方法などの、保護部材111に穴を開ける等の機械的な追加のステップを必要とする。一つの一般的な問題は、繊維シート110が施与中に、及び/又は加熱した圧縮成形用鋳型中での成形中に加熱され、主に天然繊維中の蒸発した湿気によって保護層111にブリスターが発生することである。
【0018】
トリムパネル100を、天然繊維シート110から、様々な例示的な方法を通じて形成してよい。天然繊維シート110は、保護部材が施与される前又は後に、繊維シート110を覆って閉じられる該シートを圧縮し、そして所望のトリムパネルの形状に成形する、圧縮成形用鋳型120中で、最終形状に成形されてよい。一旦繊維シート110が成形されると、圧縮成形用鋳型120から取り出され、そして必要であれば、例えば、成形くずのトリミングなどの、任意の続くステップが行われ、これは二次工程中で、又はインツール(in−tool)トリミングによって行われてよい。保護層111を、一般的に噴霧液又はフィルムとして施与してよい。様々な例示的な態様において、天然繊維シート110及び/又は鋳型120を加熱してよい。
【0019】
保護層111を繊維シート110に最初に施与することが一般的に好ましい一方で、図3は、繊維シート110からトリムパネル100を形成することであって、ここで保護部材111はトリムパネル100を最終形状に成形した後に施与される、例示的な方法を示す。図3に示すように、繊維シート110は、天然繊維シート110を鋳型120中で圧縮成形することにより成形される。さらに図3において示すように、繊維シート110の成形後、トリムパネル100の見える表面113は、透明保護部材111でコーティングされる。保護部材111は、部材115上に噴霧されたものとして示される。保護部材111は、成形された繊維シート110上に熱及び圧力で施与され、又は特に図3に示すように、保護部材111は、任意の許容される方法によって、繊維シート110上に噴霧される。もちろん、保護部材111を、任意の適切な、既知の、又は後に開発された技術、工程、もしくは方法により、成形された繊維シート110に施与してよい。
【0020】
圧縮成形の前に保護部材111を繊維シート110に施与することは、よりよい接着、審美的な外見、より速い工程時間、及び/又はより費用効果のある製造方法を可能にすると考えられる。特に、繊維シートを成形するための圧縮成形工程の間の加熱及び/又は加圧は、保護部材の繊維シート110へのよりよい接着をもたらす。
【0021】
図には示していないが、図3中の工程は、保護部材111を成形のステップの前に噴霧してよいように変更することができる。もちろん、鋳型120に入れる前に、離型加工助剤又はスリップ剤121を施与してよい。
【0022】
図4は繊維シート110からトリムパネル100を形成することを示す。繊維シート110の、最終的に見える表面113は、保護部材111でコーティングされる。繊維シート110、及び保護シート112として示される保護部材111は、繊維シート110及び保護部材シート112を覆って閉じられる、圧縮し、そして所望のトリムパネル100の形状に形成する、圧縮成形用鋳型120中に入れられる。様々な例示的な態様において、保護部材シート112は薄いフィルムである。他の例示的な態様において、保護部材シート112を、任意の適切な、既知の、又は最近開発されたな技術、工程、又は方法によって、繊維シート110に施与してよい。もちろん、保護部材111を圧縮成形の後、繊維シート110に施与してよく、そして、保護部材シート112の繊維シート110上への加熱及び真空プレスの例示的な工程により、繊維シート110に対する類似の付着力を得る。図は保護部材のシートのみを示しているが、このシートは保護部材のロールから供給されることが想定される。図には示していないが、図4において、加工助剤を、結合された繊維シート110及び保護部材111に施与してよい。
【0023】
繊維シート110が形成された後、保護部材111を施与する。上述の部材から形成された保護部材111は、レーザー又は他の手段による繊維シート110の穴開けなどの、繊維シートの追加の工程を必要とすることなく施与されるように構成される。保護部材の適切な施与を保証するために、保護部材の2重量%未満であるスリップ剤又は離型剤を使用してよい。スリップ剤121は一般的に不飽和脂肪酸アミドから形成され、最も一般的にはオレイン酸アミド及びエルカ酸アミドである。スリップ剤は保護部材の中に含まれ、又は特に製造工程においてロールから使用される場合、その一面に施与される。スリップ部材は、特に工程の間のフィルム同士の接着を防止(ブロッキング)するために作用する。スリップ部材は、もし存在する場合、好ましくは保護部材の重量で1000ppm〜200ppmの範囲で保護部材中に含まれるが、必ずしも必要ではなく、保護部材111は、スリップ部材を含まない、繊維シート110に施与されてもよい。
【0024】
保護部材111は好ましくは加熱及び加圧により施与され、そして保護部材のTMAは、保護部材のみが繊維シート110に施与されて、ホットメルト又は接着剤なしで施与されるように構成される。代わりに、保護部材は加熱及び加圧により溶融され、そして追加の接着剤を必要とすることなく、下地繊維シート110に沿った形になる。熱及び圧力は、十分に保護部材を溶融し、かつ保護部材を確実に繊維シートに結合又は接着する、任意の工程を通じて、適用される。例えば、圧力を適用する、加熱した圧板を使用してよい。多くの生産の態様のために、加熱したローラーを使用してよく、又は加熱及び加圧する複数の方法を組み合わせてよい。下地繊維層に依存して、保護部材111は実際上繊維シート110及び木質繊維などの何らかの繊維部材中に埋め込まれてよく、保護部材111は一部が繊維に吸収されて、ホットメルト又は他の接着剤を使用することなく、繊維と保護部材111との間の結合を向上させてよい。しかしながら、もし保護部材111が繊維シート110を成形する成形工程の前に施与された場合、多くの保護部材111に対して、保護部材は成形工程までは完全には埋め込まれない。
【0025】
繊維シート110が保護部材111が施与された後に成形された場合、繊維シート110は施与するステップの後に製造作業の成形又は形成段階へと送られる。保護部材を施与するステップからの潜熱を得るために、成形又は形成ステップは、施与するステップの直後に、行ってよく、好ましくは行う。当技術分野で知られているように、噴霧を、最終形状を形成するのに使用される鋳型に施与して、保護部材が鋳型にくっつくのを防ぐ。上述したように、保護部材111が繊維シート110の成形の前に施与されるときには、成形工程は、繊維シート110に保護部材111を埋め込むか、又はさらに埋め込む。鋳型からの熱及び圧力は、保護層を繊維シート110に埋め込む。成形工程における熱は、保護部材として使用する部材に依存して調節してよく、そして一般的には、融点の近傍の範囲であり、制御可能な状態で、保護部材を繊維シートに埋め込むことを可能にすると共に、工程の間、保護部材の浸透性を最大限にもする。鋳型の温度の高さは、わずかの保護部材しか、所望の機能を提供するように残されないように、保護部材が実質的に天然繊維中に染み込まないように制限されなければならない。TMAの範囲を上記に列挙したが、特に60〜170℃、好ましくは80〜150℃でも、成形工程の間に良好に機能し、並びに100〜130℃の狭い範囲でも機能する。
【0026】
成形工程は熱及び圧力を用いて実行され、該熱は、保護部材を十分に軟化又は溶融して、部材の伸びを容易にし、さらに下地繊維層に保護部材を埋め込み、そしてさらに保護層111をガス透過性にしてガス又は水蒸気がフィルムを透過するの可能にし、かつ保護層を滑らかにして、最終的に平滑な防汚表面を形成するような熱である。
【0027】
様々な例示的な態様において、成形手法はトリムパネル部材への加熱を必要とする。部材は鋳型に入れられる前に加熱されてよく、及び/又は鋳型中で加熱されてよい(例えば、加熱した鋳型を使用する)。適用する熱量及び熱する時間は、トリムパネルを形成するのに使用される部材の選択に依存して変更してよい。例えば、トリムパネル部材は、約150〜220℃(鋳型の温度)で約1分間、圧縮成形用鋳型中に入れられてよい。
【0028】
図5は、例示的な工程の詳細なスケッチ図を提供する。図5に示すように、最初に、天然繊維のシートを形成する。次に、保護部材111を天然繊維シート110に積層する。保護部材111のシートが繊維シート110に成形前に積層されることは、速い加工時間、及び典型的にはより効率的な製造工程を可能にする。結合された繊維シート110及び保護部材111は、成形のためにとっておかれる。いくつかの態様においては示していないが、シートを湿気の影響から密封するために、特に湿度感受性の天然繊維を使用している場合は、保護部材111を繊維シート110の、クラスAサーフェス以外の面に施与するのが好ましい。所望であれば、離型剤又はスリップ剤121をその後施与する。シートを鋳型120に、好ましくは加熱した鋳型120に入れる。成形工程を実施し、そして鋳造プレス時間及び鋳型の温度などの様々な要因は、使用される部材の種類に依存する。トリムパネル100はその後鋳型120から取り出され、トリミングなどの任意の二次加工ステップを実行してよい。
【0029】
図7に示すように、トリムパネル100は、不透明(opaque)な、非光透過性(non−transparent)の保護部材111が施与された、繊維シート110を用いて形成されてよい。不透明な、非光透過性保護部材111は背景色又は基本色を提供する。これに、図7に示す着色シートフィルム114のなどの、様々な着色された又は透明な層を施与してよい。着色層114が望まれる場合、図7に示すように、主として一つの着色シートを使用することが予想される一方で、追加の着色層114を使用して、様々な所望の彩色又は着色効果を創作してもよい。
【0030】
図8に示すように、着色は、保護部材111と結合されて、色彩又は着色を創作し得、それは不透明又は透明であり得、繊維シート110の繊維部材を示す。また、例示してはいないが、着色を天然繊維に直接噴霧して施与してよく、その後保護層111がその上に施与される。いくつかの態様において、繊維シート110が彩色又は着色されており、保護部材111は透明でよい。もちろん、保護層111を繊維層110に加えて着色してもよい。また、光沢着色を、この上に施与される別の透明層と共に、保護層111に施与してよい(示していない)。製造工程を容易とするために、保護部材を好ましくは保護部材111のベース樹脂において着色又は彩色する。これは、製造工程の間に必要とされる加工ステップの数を最小限にする。
【0031】
着色は天然木質繊維に施与され、又は保護部材111若しくは任意の他の施与されたフィルムに、任意の既知の工程を通じて付与してよい。もし追加の着色層114を保護部材111に施与する場合、施与する方法の一つは、繊維シート110及び保護部材111を覆う、着色層114の真空包装であり得る。
【0032】
本明細書において相対的位置(例えば、「上部」及び「下部」)の参照は、図において配向された様々な要素を特定するためにのみ使用されることに留意すべきである。特定の部品の配向は、それらが使用される用途に大きく依存して変更されてよいことを認識すべきである。
【0033】
図面は大きさを変える必要がないことを理解すべきである。或る場合において、本発明を理解するのに必要のない詳細、又は理解するのが困難な他の詳細は、省略され得る。もちろん、本発明は、本明細書中で示される特定の態様に限定される必要がないことが理解されるべきである。
【0034】
様々な例示的な態様で示されるようなトリムパネルの構築及び配置は、一例に過ぎないことに留意するのも重要である。本発明のトリムパネルが、上記で要点を述べた例示的な態様に関連して記載される一方で、様々な代替、修正、変更、改良、及び/又は実質的な均等物は、既知であろうと現在予期されない又はされ得ないかによらず、明らかになり得る。したがって、上述した本発明に従うトリムパネルの例示的な態様は、例示を意図し、限定を意図するものではない。本発明の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変更が行われ得る。したがって、上述の記載は、既知の又は後に開発された代替、修正、変更、改良、及び/又は実質的な均等物を包含することを意図するものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に天然繊維から形成されるベース層と、
介在するホットメルト接着剤を使用することなく、前記ベース層に直接施与される保護部材であって、ここで前記保護部材は60℃〜170℃の範囲のTMAを有する、保護部材
とを含む、トリムパネル。
【請求項2】
前記合成繊維は、木質繊維、リグニン繊維、及び例えば、木材、ケナフ、麻、黄麻、亜麻、カラムシ、ローゼル、ラタン、大豆、オクラ、バナナ繊維、竹、ココナツ、コイア、綿、クラワ、アバカ、マツ、パイナップル、ラフィア、及び/又はサイザル麻などの他のセルロース繊維からなる群より選択される、請求項1に記載のトリムパネル。
【請求項3】
前記保護部材は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート又は任意の有機油ベースのポリオール(すなわち、大豆、トウモロコシ、及びヒマ)などのポリオールからなる群より選択される材料から形成される、請求項1に記載のトリムパネル。
【請求項4】
着色部材をさらに含む、請求項1に記載のトリムパネル。
【請求項5】
前記保護部材は約0.02mm〜0.15mmの厚さを有する、請求項1に記載のトリムパネル。
【請求項6】
前記保護部材は、前記ベース層に少なくとも部分的に埋め込まれている、請求項1に記載のトリムパネル。
【請求項7】
前記天然繊維は開口部を含み、そして前記保護部材は少なくとも部分的に前記開口部に吸収される、請求項1に記載のトリムパネル。
【請求項8】
前記ベース層は重量%で最大50%の合成繊維を含む、請求項1に記載のトリムパネル。
【請求項9】
前記保護部材は60℃〜170℃の間でガス及び水蒸気を透過する、請求項1に記載のトリムパネル。
【請求項10】
前記保護部材は液状水及び紫外線に実質的に不浸透性である、請求項1に記載のトリムパネル。
【請求項11】
前記保護層は穴が開けられていない、請求項1に記載のトリムパネル。
【請求項12】
前記保護部材は着色剤を含む、請求項1に記載のトリムパネル。
【請求項13】
実質的に天然繊維から形成されるベース層と、
介在するホットメルト接着剤を使用することなく、前記ベース層に直接施与される保護部材であって、ここで前記保護部材は60℃〜170℃の範囲のTMAを有する、保護部材と、及び
前記ベース層及び前記保護部材の少なくとも1つに適用される着色部材
とを含む、トリムパネル。
【請求項14】
前記天然繊維は、木質繊維、リグニン繊維、及び例えば、木材、ケナフ、麻、黄麻、亜麻、カラムシ、ローゼル、ラタン、大豆、オクラ、バナナ繊維、竹、ココナツ、コイア、綿、クラワ、アバカ、マツ、パイナップル、ラフィア、及び/又はサイザル麻などの他のセルロース繊維からなる群より選択される、請求項13に記載のトリムパネル。
【請求項15】
前記保護部材は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート又は任意の有機油ベースのポリオール(すなわち、大豆、トウモロコシ、及びヒマ)などのポリオールからなる群より選択される材料から選択される、請求項13に記載のトリムパネル。
【請求項16】
前記ベース層は、前記天然繊維間に窪みを含み、そして前記保護層は少なくとも部分的に前記窪みを充填する、請求項13に記載のトリムパネル。
【請求項17】
前記着色部材は、前記繊維に直接施与される、請求項16に記載のトリムパネル。
【請求項18】
前記着色部材は、前記保護部材と前記天然繊維との間に位置する、請求項16に記載のトリムパネル。
【請求項19】
前記保護部材は、前記天然繊維と前記着色部材との間に位置する、請求項16に記載のトリムパネル。
【請求項20】
前記TMAの範囲は80℃〜150℃の間である、請求項13に記載のトリムパネル。
【請求項21】
前記ベース層は、重量%で最大50%の合成繊維を含む、請求項13に記載のトリムパネル。
【請求項22】
前記保護部材は60℃〜170℃の間でガス及び水蒸気を透過する、請求項13に記載のトリムパネル。
【請求項23】
前記保護部材は液状水及び紫外線に実質的に不浸透性である、請求項13に記載のトリムパネル。
【請求項24】
前記保護層は穴が空けられていない、請求項13に記載のトリムパネル。
【請求項25】
前記保護部材は前記着色部材を含む、請求項13に記載のトリムパネル。
【請求項26】
実質的に天然繊維から形成されたベース層を提供すること、
液状水及び紫外線に実質的に不浸透性である一方で、60℃〜220℃の間でガス及び水蒸気を透過する保護部材を提供すること、
前記保護部材を前記ベース層に施与すること
を含む、トリムパネルを形成する方法。
【請求項27】
前記保護部材を施与するステップは、60℃〜220℃の間で加熱することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記保護部材を施与するステップは、前記ベース層と前記施与された保護部材とを最終形状へと圧縮成形するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記保護部材を施与するステップは、前記ベース層と前記施与された保護部材とを成形するステップの前である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記保護部材を施与するステップは、前記保護部材を前記天然繊維に埋め込むステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記保護部材を施与するステップは、前記ベース層を成形するステップの後である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記保護部材を施与するステップは、約220℃に加熱するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記保護部材を施与するステップは、約170℃に加熱するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
実質的に天然繊維から形成されたベース層と、
介在するホットメルト接着剤を使用することなく、前記ベース層に直接施与される、穴があけられていない保護部材であって、前記保護層は雰囲気温度で水及び紫外線に実質的に不浸透性であり、かつ60℃〜220℃の間でガス及び水蒸気を透過する、保護部材と、
を含む、トリムパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−514550(P2012−514550A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545445(P2011−545445)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/020454
【国際公開番号】WO2010/080967
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(598147400)ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー (224)
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
【Fターム(参考)】