説明

天然繊維を有するポリアミド配合物の調合法及び天然繊維を有するポリアミドの配合物

本発明は、天然繊維を有するポリアミド配合物の製造方法及び天然繊維を有するポリアミド配合物に関し、押し出し及び射出成形の連続法を用いて、天然繊維を使用して無機物から得られたものに近い機械的性質を有する配合物を得ることを確立し、本方法は、射出法によって、正確な寸法及び複雑な機能を有する最終製品の獲得を可能にし、天然クラワ繊維を有する配合物が無機化合物より低い密度に関連した適切な機械的性質を示すことは、より軽い部品で製造された乗り物がより少ない燃料を消費するので自動車産業界の興味を引く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、押し出し/射出成形によって、天然繊維で強化された、ポリアミド‐6のようなポリアミド配合物を得るという目的を有する。
【0002】
したがって、本願発明の目的の1つは、ポリアミド配合物中の、例えばガラス繊維のような無機物の繊維を、例えばクラワ繊維のような有機物由来の繊維に置き換えることである。
【背景技術】
【0003】
より優れた機械的性能を有する物質を得るために、産業界ではポリマー中の強化材として合成繊維が使用された。しかし、それらを生活環境に曝しても分解できないということに加えて、それらは高い研磨力を有するので、処理に使用される装置を磨耗させる。
【0004】
熱可塑性物質を有する配合物中の強化材として天然繊維を使用することについて関心が高まっている((M. Palabiyik、S. Bahadur、「Wear」、2002年、第253巻、p.369‐376)、(J. J. Rajesh、J. Bijwe、U.S. Tewari、「Journal of Materials Science」、2001年、第36巻、p.351‐356)、(S. -H. Wu、F. -Y. Wang、C. -C. M. Ma、W. -C. Chang、C. -T、Kuo、H. -C. Kuan、W. -J. Chen、「Materials Letters」、2001年、第49巻、p.327‐333)、(A. G. Pedroso、L. H. I. Mei、J.A.M. Agnelli、D.S. Rosa、「Polymer Testing」、1999年、第18巻、p.211‐215)、(A. G. Pedroso、L. H. I. Mei、J. A. M. Agnelli、D.S. Rosa、「Polymer Testing」、2002年、第21巻、p.229‐232)、(S. V. Joshi、L. T. Drzal、A. K. Mohanty、S. Arora)、(M. A. Silva Spinace、K. K. G. Fermoselli、M. -A. De Paoli、「PPS 2004 Americas Regional Meeting」、ブラジル、フロリアーノポリス、S. C.、2004年議事録、p.48‐49)、及び(A. L.、Leao R. Rowell、N. Tavares、「Sci. Technol. Polym. Adv. Mater」、1998年、p.756)を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この興味は、その低いコスト及び幾つかの利点(例えば、それらは無毒であり、再生可能資源から得られ、再利用できて、細菌分解可能であり、無機繊維と比べて加工装置上での低い密度、良好な機械的性質及び低い磨耗性を有する)による。さらに、ガラス繊維のような無機繊維の製造は、例えば、大量の電力を必要とし、環境への影響を増大させる。しかし、天然繊維の親水性は、繊維とポリマーマトリクスの間の弱い界面相互作用による密着性に作用して、配合物の機械的性質に影響する。繊維とポリマーマトリクスの密着性を改良する方法は、機械的若しくは化学的方法によって、又はカップリング剤を用いることによって繊維表面を改質する方法である。現在、これらの配合物を獲得するために様々な天然繊維が研究されている。それらの中では、アマゾン地域で発見されるパイナップルの特徴を持つ科に属する植物から抽出された繊維が際立っている。これらの種は、高い生産力の土壌を必要とせず、また砂地の粒土に植えられるが、高濃度の有機物を伴う。
【0006】
この種の植物の例は、それがガラス繊維と比べたときに加工装置上でより低い密度、コスト及び摩損性を示すので、幾つかの用途ではガラス繊維の理想的な代用品と考えられたクラワ(アナナ科の種、L.B.Smith)である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
最新技術に基づいて、それを最適化するために、本願発明は開発された。
【0008】
本発明は、押し出し及び射出成形法のような連続法によって、天然繊維を用いて、無機物から得られたものと似た機械的性質を有する配合物を得ることを確立する。
【0009】
ここで扱った方法は、射出法によって、正確で複雑な寸法の特徴を有する最終製品の獲得を可能にする。
【0010】
好ましい天然繊維は、ガラス繊維のものと似た性質を示すクラワの天然繊維である。
【0011】
クラワの天然繊維を有する配合物が無機化合物より低い密度に関する適切な機械的性質を示すことは、より軽い部品で製造された乗り物がより少ない燃料を消費するので自動車産業界の興味を引く。
【0012】
本件の配合物は、土木建築業にも利用できる。
【0013】
本発明は、下記に列挙された図に基づく詳細によって説明されるであろう。
【0014】
この部品の外観及び表面処理並びにその性能は、強化材として天然繊維を用いる射出成形によって最終製品を製造することが可能であることを証明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1A及び1Bは、ここで扱った天然繊維を有するポリアミドの配合物を用いて射出成形された、自動車産業の一部品となる製品のような、最終製品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述のように、本願発明は、2つの目的、すなわち、天然繊維を有するポリアミド配合物の製造方法及び本物の天然繊維を有するポリアミド配合物を示す。
【0017】
・天然繊維を有するポリアミドの配合物の製造方法
ポリアミド配合物、好ましくはポリアミド‐6と、天然繊維、好ましくは、クラワの繊維の調合には、
(A)バルク形態の、すなわち洗浄、乾燥及び表面処理されていない天然繊維、及び
(B)標準的な窯内で100℃で1.5時間乾燥した表面処理されていない天然繊維
を利用する。
【0018】
天然繊維を有するポリアミド配合物の調合法は、次の工程を含む。
1.天然繊維の調製。この工程は次の下位工程を含む。
1.1)A又はBの形態の天然繊維をカッティング(ナイフ)ミル内で0.1〜15mmの平均長が得られるまで粉砕する下位工程、
1.2)粉砕済みの天然繊維を石英反応器内でO又はNのコールドプラズマによって表面的に処理する下位工程、
1.3)10質量%のNaOH溶液(約5.0に等しいpHを有する溶液)中で繊維を30分から2時間の間隔で処理し、主要な給水器からの水で一度洗浄し、蒸留水(約6.0に等しいpH値)で一度洗浄する下位工程、並びに
1.4)その後に、窯内で繊維を100℃で2時間乾燥する下位工程。
2.天然繊維を有するポリアミド配合物の調合。この工程は次の下位工程を含む。
2.1)使用される天然繊維の量を分ける下位工程、
2.2)事前に調製した天然繊維をポリマーマトリクスで均質化する下位工程、及び
下位工程2.2で得られた配合物を押し出す下位工程。
【0019】
使用される繊維の量は、使用されるポリマーマトリクスの質量に対して10〜50質量%の粉砕された繊維であることが重要な点である。
【0020】
より優れた性能を有する配合物を製造する天然繊維の処理法は、酸素プラズマによる処理である。
【0021】
使用されるポリマーマトリクスは、未変性ポリアミド‐6及び/又は無水マレイン酸で官能化されたポリ(エチレン‐co‐プロピレン‐co‐ジエン)エラストマー(EPDM‐g‐AM)を約1〜10質量%含むポリアミド‐6である。
【0022】
下位工程2.2で得られた配合物の押し出しは、50〜300rpmの回転数、及び200〜250℃の温度分布を用いて、1軸型(L/D=30、D=32mm)、2軸型(L/D=13、D=29mm、同方向回転型、相互にかみ合っている、セグメント化されたスクリュー)の押出機内で行われるものである。
【0023】
押し出し後、配合物を取り出し、200〜260℃の温度分布を用いて射出成形する。
【実施例】
【0024】
・天然繊維を有するポリアミド配合物
上述の方法から、試験のために射出成形され、そのような射出成形から得られた配合物を試験体とした。
【0025】
得られた試験体は、引張り、屈曲、衝撃、熱変形温度(HDT)及び密度の試験に用いた。
【0026】
引張り試験(ASTM D 638‐02)、屈曲(ASTM D 790-02)、衝撃(ASTM D 256‐02)、HDT(ASTM D 648‐98c)及び密度(ASTM D 792‐00)によるASTM標準試験法を用いて試験体を特性化した。
【0027】
配合物の引張り機械試験の結果から、処理された又は未処理の天然繊維の添加は、この添加(20質量%)が引張弾性率を300%まで増加させ、最大張力を80%増加させるので、ポリアミド‐6に対する強化材として機能することが明らかになった。
【0028】
下記の機械的性質及びHDTの値は、それぞれに、80質量%のポリアミド‐6及び20質量%のクラワ繊維、タルク又はガラス繊維を有する3つの配合物に対応する。最大張力値(σmax)及びヤング率(引張弾性率(E))は、それぞれに、80(±1)、73(±1)、101(±1)MPa、並びに5.1(±0.4)、6.7(±0.6)及び6.5(±0.5)GPa。上述の3つの配合物の、アイゾッド圧入試験のような耐衝撃値は、それぞれに9(±1)、9(±2)及び7(±1)Jm−1であり、また圧入しない衝撃耐性測定値は、それぞれに35(±2)、58(±3)及び32(±4)Jm−1であった。最大張力の計測値は、それぞれに、116(±2)、114(±2)、160(±5)MPaであった。ヤング率の測定値は、それぞれに、3.7(±0.1)、4.4(±0.1)、及び5.0(±0.1)GPaであった。HDT値は、これらの配合物に1.82MPaの張力を用いたときには、それぞれに186(±10)、110(±4)、及び194(±1)℃であり、また0.45MPaの張力を用いたときには、それぞれに217(±1)、206(±4)、及び214(±1)℃であった。これら3つの配合物から得られた密度は、それぞれに1.18(±0.01)、1.27(±0.01)及び1.27(±0.01)gcm−3であった。
【0029】
最高の性能を有する配合物を製造するクラワ繊維の処理法は、酸素プラズマによる処理である。ただし、未処理のクラワ繊維及び事前に乾燥していないポリアミド‐6で調製された配合物は、タルクが充填されたポリアミド‐6の性能に匹敵する性能を示す。処理されたクラワ繊維で調製される配合物では、この性能の結果は、充填材としてタルクを用いる各配合物のものを上回り、特定の機械的性質は、ガラス繊維を含む配合物のものに匹敵する。耐衝撃値及びHDT値の両方とも、ガラス繊維を含む配合物に類似する。
【0030】
スィープ光学顕微鏡写真及びスィープ電子顕微鏡写真は、繊維マトリクスの良好な分布、分散及び密着を示した。
【0031】
ポリアミド‐6の、安定化添加物を有し、かつ、処理された及び射出成形された繊維のないポリアミド‐6の、並びに20質量%のクラワ繊維を有する配合物の射出成形された試験体の固有粘度の分析値は、それぞれに、η=96.59(±0.23)、η=98.02(±0.66)及びη=97.47(±3.03)mLg−1であった。したがって、クラワ繊維による又はクラワ繊維なしでの処理中にポリアミド‐6のマトリクス分解はないことが証明された。
【0032】
表面処理性及び外観を評価するために、図1A及び1Bのように、部品業者から提供された金型(ガラス繊維で強化されたポリアミド部品を製造するのに使用される)を用いて部品を射出成形した。
【0033】
図1A及び1Bは、この技術報告で説明した原材料を用いて、射出成形された最終製品を示す。クラワ繊維で強化された部品の外観及び表面処理性は、ガラス繊維で強化されたポリアミド‐6で製造された部品のものに優る。自動車産業界の標準試験に関するこの部品の性能から、強化材として天然繊維を用いて射出成形による最終製品を製造することが可能なことが明らかになる。この繊維は自動車産業、土木建築業などの用途の再生可能及び細菌分解可能な資源の原材料である。
【0034】
本発明の上記の説明は図示及び説明のために示した。さらに、この説明は、本発明をここで明らかにされた態様に限定するものではない。したがって、上記の示唆及び能力又は関連技術の知識に合わせた変化及び変更は、本発明の範囲内である。
【0035】
上述の様式は、本発明の実施の既知の態様をより良く説明するためのものであり、当業者に本発明をそのように、又は他の様式で、さらに特定の用途に必要な変更を伴って、又は本発明の用途で使用させる。本報告で説明した範囲内のそのような変更及び変化の全てを含むことが本発明の目的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バルク形態の天然繊維及び(B)標準的な窯内において100℃で1.5時間乾燥した表面処理されていない天然繊維を用いることを特徴とする天然繊維を有するポリアミド配合物の製造方法であって、
天然繊維を有するポリアミド配合物の製造方法は
(1)天然繊維を調製する工程、及び
(2)天然繊維を有するポリアミド配合物を製造する工程
を含み、
工程(1)は、
(1.1)A及びBの形態の天然繊維をカッティング(ナイフ)ミル内で0.1〜15mmの平均長が得られるまで粉砕する下位工程、
(1.2)粉砕済みの天然繊維を石英反応器内でO又はNのコールドプラズマによって表面的に処理する下位工程、
(1.3)10質量%のNaOH溶液中で繊維を処理し、主要な給水器からの水で一度洗浄し、蒸留水で一度洗浄する下位工程、並びに
(1.4)その後に、窯内で繊維を100℃で2時間乾燥する下位工程
を含み、
工程(2)は、
(2.1)使用される天然繊維の量を分ける下位工程、
(2.2)事前に調製した天然繊維をポリマーマトリクスで均質化する下位工程、及び
(2.3)下位工程(2.2)で得られた配合物を押し出す下位工程
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
下位工程(1.2)では、石英反応器が13.56MHzの無線周波数源、30Wの電力、及び15分間で4×10−2Torrの圧力を有し、下位工程(1.3)では、繊維が30分間〜2時間処理され、10質量%のNaOH溶液がほぼ5.0のpHを有し、蒸留水がほぼ6のpHを有することを特徴とする請求項1に記載の天然繊維を有するポリアミド配合物の製造方法。
【請求項3】
使用される繊維の量が、使用されるポリマーマトリクスの質量に対して10〜50質量%の粉砕された繊維であることを特徴とする請求項1に記載の天然繊維を有するポリアミド配合物の製造方法。
【請求項4】
ポリアミド配合物が好ましくはポリアミド‐6であり、天然繊維が好ましくはクラワ繊維であることを特徴とする請求項1に記載の天然繊維を有するポリアミド配合物の製造方法。
【請求項5】
使用されるポリアミドマトリクスが、未変性ポリアミド‐6と、無水マレイン酸で官能化されたポリ(エチレン‐co‐プロピレン‐co‐ジエン)エラストマーを約1〜10質量%含むポリアミド‐6であることを特徴とする請求項1又は4に記載の天然繊維を有するポリアミド配合物の製造方法。
【請求項6】
下位工程(2.2)で得られる配合物の押し出しが、1軸又は2軸の押出機内で50〜300rpm及び200〜250℃の温度分布を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の天然繊維を有するポリアミド配合物の製造方法。
【請求項7】
80質量%のポリアミド‐6及び20質量%のクラワ繊維によって形成された配合物で構成され、約1.18gcm−3の密度を有することを特徴とする天然繊維を有するポリアミド配合物。
【請求項8】
引張弾性率が300%増加し、最大張力が80%増加することを特徴とする天然繊維を有するポリアミド配合物。
【請求項9】
自動車及び土木建築産業に利用できることを特徴とする天然繊維を有するポリアミド配合物。

【図1】
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【公表番号】特表2009−537671(P2009−537671A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511308(P2009−511308)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/BR2007/000122
【国際公開番号】WO2007/137378
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508345782)
【出願人】(508345793)ウニベルシダーデ エスタドゥアル デ カンピーナス−ウニカンプ (1)
【Fターム(参考)】