説明

天然資源からのパクリタキセルの改良された単離及び精製プロセス

以下:a)パクリタキセルを含む原材料を脱イオン水又は純水で洗浄するステップであって、上記原材料はタキサン類の天然資源に由来し、かかる洗浄は上記原材料から可溶性不純物を除去することを可能にするステップ;b)上記洗浄した原材料から、パクリタキセルを含む湿原材料を有機溶媒で抽出するステップ;c)沈殿によりバイオマスを得るため、上記湿原材料を塩と接触させるステップ、並びに上記バイオマスを単離及び乾燥させるステップ;d)そのようにして単離及び乾燥されたバイオマスをアセトン又はアセトン−ヘキサン混合液に溶解し、次にそれにパクリタキセル濃縮油相が得られるまで少なくとも1つの極性溶媒を加えることにより、上記バイオマスから樹脂及び天然色素を除去するステップ;及びe)揮発性溶媒中の前のステップで得られたパクリタキセル濃縮油相を、少なくとも1回クロマトグラフィー精製し、それにより精製溶液を得るステップ、並びにクロマトグラフィーにより得られた精製溶液を少なくとも1回結晶化するステップ;を含む、パクリタキセルを含有するタキサン類の天然資源からパクリタキセルを抽出及び精製するプロセスが開示される。このプロセスにより、有利には、不純物、及び沈殿によりバイオマスから得られたパクリタキセル及び類似体抽出物の体積を低減すること、精製ステップを減らすこと、得られるパクリタキセルの量を増加させること、及びより経済的なレベルに生産コストを低減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然資源からパクリタキセルを単離及び精製する改良されたプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来技術の簡単な説明]
本発明の出願人、CHAICHEM PHARMACEUTICALS INTERNATIONAL(チャイケム・ファーマシューティカル・インターナショナル)の名における米国特許第6,452,024号及びその外国対応特許の全ては、上述したタイプのプロセスを開示及び請求するものであり、この米国特許の序文中の「従来技術」として開示された以前のプロセス全てと比較して、特に興味深い。さらに具体的には、この米国特許中に開示されたプロセスは、以下を可能とするため非常に興味深い:
様々な種のイチイ属の樹皮、針葉及び/又は枝の抽出後、バイオマスの獲得を容易にすること;
そのようにして得られ、且つクロマトグラフィーで精製されるべきバイオマスの量を増加させること;
精製のステップを減らすこと;
得られるパクリタキセルの量を増加させること;及び
より経済的なレベルに、生産コストを低減すること。
【0003】
上記米国特許第6,452,024号に開示されたプロセスは、基本的に以下のステップを含む:
a)タキサン類の天然資源から、有機溶媒を用いてパクリタキセルを含む原材料を抽出するステップ;
b)沈殿によりバイオマスを得るため、上記原材料を塩基性媒体又は酸性媒体と接触させるステップ、並びに上記バイオマスを単離及び乾燥させるステップ;
c)単離及び乾燥されたバイオマスをアセトンに溶解し、次にそれにパクリタキセル濃縮油相が得られるまで少なくとも1つのヘキサン又はヘプタンのような非極性溶媒を加えることにより、上記バイオマスから樹脂及び天然色素を除去するステップ;
d)沈殿により沈殿物を得るため、前のステップで回収したパクリタキセル濃縮油相を、ステップ(b)が塩基性媒体を用いて行われた場合は酸性媒体と、又はステップ(b)が酸性媒体を用いて行われた場合は塩基性媒体と、接触させるステップ、並びにその沈殿物を単離及び乾燥させるステップ;及び
e)揮発性溶媒で単離された沈殿物の溶液を、少なくとも1回クロマトグラフィー精製するステップ、並びにクロマトグラフィーにより得られた精製溶液を少なくとも1回結晶化するステップ。
【0004】
上記の米国特許において、ステップ(e)は以下を含むことが好ましいことも開示されている:
1)ステップ(d)で単離された沈殿物を揮発性溶媒中に溶解すること、そのようにして得られた溶液とシリカゲルとの混合物を調製すること、シリカゲルを含有するクロマトグラフィーカラムで上記混合物を処理すること、並びにパクリタキセル濃縮画分を回収することを含む、第1のクロマトグラフィー精製;
2)前のステップで回収されたパクリタキセル濃縮画分を、残留物が得られるまで蒸発させて乾燥すること、並びに上記残留物を揮発性溶媒に溶解することで混合物を調製することを含み、混合物は、他のパクリタキセル濃縮画分を得るため、前のサブステップと同じ条件でクロマトグラフィーにより再精製される、第2のクロマトグラフィー精製;
3)前のサブステップで得られた他のパクリタキセル濃縮画分を、残留物が得られるまで蒸発させて乾燥すること、アセトン中のこの残留物の混合物を調製すること、並びに混合物中に含まれるパクリタキセルを非極性溶媒を用いて結晶化することを含む、第1の結晶化;
4)前のサブステップで得られたパクリタキセル結晶をアセトンに溶解すること、並びに前のサブステップと同じ条件でパクリタキセルを再結晶化することを含む、第2の結晶化;
5)前のサブステップの再結晶化で得られた結晶を揮発性溶媒に溶解し、それにより溶液を得ること、この溶液とシリカゲルとの混合物を調製すること、並びにシリカゲルを含有するクロマトグラフィーカラム中の上記混合物を、それによりさらなるパクリタキセル濃縮画分を得るために、溶出溶媒を用いて処理することを含む、第3のクロマトグラフィー精製;及び
6)前のサブステップで得られたさらなるパクリタキセル濃縮画分を、残留物が得られるまで蒸発させて乾燥すること、残留物をアルコール、アセトン又はアルコール/アセトン混合液に溶解し、それにより別の混合物を得ること;並びに水を用いて上記別の混合物に含有されるパクリタキセルを結晶化することを含む、第3の結晶化。
【0005】
上記のように、上記の米国特許第6,452,024号に開示されたプロセスは、既存のプロセスよりもはるかに簡便、効率的及び費用効果的であるため、非常に興味深い。しかし、タキサン類の天然資源の針葉及び枝を使用して抽出が行われる時に得られる大量の溶媒可溶性不純物を除去するために必要である、クロマトグラフィーによる数々の分離ステップ及び結晶化による数々の精製ステップを、このプロセスではいまだ要する。特にイチイ属の様々な種においてパクリタキセルの量が少ないため、いまだに生産コストは高い。さらに、クロマトグラフィーカラムのサイズが小さいため、且つ精製後に得られるパクリタキセルの収量が低いため、精製され得るバイオマスの量は非常に限られている。
【0006】
[発明の概要]
本発明の目的は、上述した問題の大部分を解決する、改良されたプロセスを提供することである。
【0007】
特に、本発明の目的は、以下を可能とする改良されたプロセスを提供することである:
イチイ属の様々な種の樹皮、針葉及び/又は枝の抽出後に、より多いパクリタキセル及び類似体を含有する溶液を得ること;
不純物、及び沈殿によりバイオマスから得られたパクリタキセル及び類似体抽出物の体積を低減すること;
クロマトグラフィーにより精製されるべきバイオマスの量をさらに増加させること;
精製ステップをさらに低減すること;
得られるパクリタキセルの量をさらに増加させること;及び
最終的に、より経済的なレベルに、生産コストを低減すること。
【0008】
パクリタキセルを含有するタキサン類の天然資源からパクリタキセルを抽出及び精製する、本発明の改良されたプロセスは、以下の基本的なステップを含む:
a)パクリタキセルを含有する原材料を脱イオン水又は純水で洗浄するステップであって、上記原材料は上記タキサン類の天然資源に由来し、かかる洗浄は上記原材料から可溶性不純物を除去することを可能にする、洗浄するステップ;
b)上記洗浄した原材料から、パクリタキセルを含有する湿原材料を有機溶媒で抽出するステップ;
c)上記湿原材料を塩と接触させ、それにより沈殿によりバイオマスを得る、接触させるステップ、並びに上記バイオマスを単離及び乾燥させるステップ;
d)そのようにして単離及び乾燥されたバイオマスをアセトン又はアセトン−ヘキサン混合液に溶解し、次にそれにパクリタキセル濃縮油相が得られるまで少なくとも1つの極性溶媒を加えることにより、上記バイオマスから樹脂及び天然色素を除去するステップ;及び
e)揮発性溶媒中の前のステップで得られたパクリタキセル濃縮油相を、少なくとも1回クロマトグラフィー精製し、それにより精製溶液を得る、少なくとも1回クロマトグラフィー精製するステップ、並びにクロマトグラフィーにより得られた精製溶液を少なくとも1回結晶化するステップ。
【0009】
そのようにして得られた結晶化産物は、実際はパクリタキセル結晶の混合物であり、結晶のろ過及び乾燥後は、基本的に以下から成る:
99%を超える純度を有する結晶が約60%;
98%(<99%)を超える純度を有する結晶が約30%;及び
92%(<98%)を超える純度を有する結晶が約10%。
【0010】
より多くの99%を超える純度を有する最終生成物を得るため、99%より低い純度を有する結晶は分離され、共に混合され、続いてクロマトグラフィーにより精製され得る。
【0011】
本発明は、その最も近い従来技術に対する基本的な差異、本発明の利点及びそれを実現できるようにする方法において、添付の図面及び併記の実施例を参照して以下の非限定的な説明を読むことによりさらに理解されるであろう。
【0012】
[発明の詳細な説明]
上述したように、本発明による改良されたプロセスは、抽出されるべきパクリタキセルを含有するタキサン類天然資源に由来する原材料からの、パクリタキセルの抽出及び精製に使用されるように意図される。
【0013】
出発材料として本発明によるプロセスを行うのに使用されるタキサン類の天然資源は、イチイ属(gender)である。特に、タキサン類の天然資源は、パクリタキセル及びその誘導体を含有する針葉樹の種のいずれか1種から成る。かかるパクリタキセルを含有する針葉樹の種は、Taxus brevifolia、Taxus baccata、Taxus canadensis、Taxus wallichiana、Taxus yunnanensis、Taxus densiformis、Taxus hicksii、Taxus wardii、Taxus cuspidata、Taxus capitata又はTaxus browniiから成り得る。
【0014】
本発明のプロセスは、パクリタキセルを含有するタキサン類の天然資源のいかなる部分にも使用されるという利点を有する。選択された針葉樹(複数可)の樹皮から成るものを使用するのが好ましい。代替的には、選択された針葉樹の枝及び針葉から成るものが使用され得る。
【0015】
(本発明によるプロセスの各ステップの詳細な説明)
(ステップ1−洗浄)
本発明による改良されたプロセスの第1のステップは、脱イオン水又は純水を用いて、タキサン類天然資源に由来するパクリタキセル及びその類似体を含有する原材料を洗浄することから成る。樹皮、枝及び針葉等から成り得る原材料は、20℃〜100℃の温度(好ましくは20〜25℃の温度)で、2〜24時間の期間(好ましくは3時間)、攪拌して又は攪拌しないで水で完全に覆われる。この時間の後、水は排出される。これは、原材料から水溶性不純物の除去を可能にする。
【0016】
(ステップ2−抽出)
改良されたプロセスの第2のステップは、第1のステップで得られた洗浄された原材料から、パクリタキセル及びその類似体を含有する湿原材料を有機溶媒で抽出することから成る。
【0017】
この抽出ステップ中で用いられる有機溶媒は、アルコール類、アセトン類及びこれらの混合液から成る群より選ばれるのが好ましい。かかる好ましい溶媒の例としては、メタノール、アセトン及びメタノールとアセトンの混合液が参考とされる。
【0018】
アルコールとアセトンの混合液が用いられる場合、アルコール及びアセトンは9:1〜1:9の体積比で存在することが好ましい。上記混合液の体積比は、約1:1に等しいことがさらに好ましい。
【0019】
また好ましくは、そのようにして得られた抽出物は沈積物を除去するためにろ過され、次に好ましくは65〜70℃の温度の温水が供給された二重壁タンクに移される。このタンクから有機溶媒が蒸留される。通常、収集される溶媒は出発体積の約70%に達する。次に、パクリタキセルを含有する残存溶液は別のタンク中に排出される。この残存溶液は、そこに含有される残余水分のため、実際は非濃縮抽出物である。
【0020】
(ステップ3−バイオマスの単離)
本発明による改良されたプロセスの第3のステップは、前のステップで得られた溶液からバイオマスを単離することから成る。
【0021】
この目的のため、前のステップから得られた非濃縮抽出物をメタノール及び水で希釈し、次に塩析してバイオマスの沈殿を得る。抽出物を塩析する塩としては、塩化ナトリウムを用いることが好ましい。しかし、同じ反応に他の塩、例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸ナトリウム若しくは酢酸カリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム若しくはリン酸カリウム、又はクエン酸ナトリウム若しくはクエン酸カリウム(これら全ての塩は、水溶液中に溶解されている)を用いることもできる。
【0022】
塩化ナトリウム(又は任意の他の選択された塩)を、激しい攪拌下で非濃縮抽出物に素早く添加することが好ましい。溶液1リットル当たり10〜200gの濃度で塩化ナトリウムを添加することにより、求められるバイオマスは急速に生成する。好ましくは、塩化ナトリウムを、上記非濃縮抽出溶液1リットル当たり50〜100g、より好ましくは50〜75gの濃度で添加する。
【0023】
生成及び沈殿したバイオマスは、ろ過又は遠心分離により溶液から分離される。そのようにして分離した湿ったバイオマスを、直ちに次のステップに供するか、又は周囲雰囲気又は真空下で乾燥させることができ、通気若しくは凍結乾燥が好ましい。
【0024】
(ステップ4−樹脂及び天然色素の除去)
本発明による改良されたプロセスの第4ステップは、バイオマス中に含有される樹脂及び天然色素を除去するために、前のステップで単離されたバイオマスを処理することから成る。
【0025】
このステップが行われる方法は、前のステップで得られたバイオマスの種類、すなわち乾燥しているか湿っているかによって決まる。
【0026】
A−前の沈殿ステップから得られたバイオマスが乾燥している場合、沈殿前のステップ2で得られた非濃縮抽出物の体積の、好ましくは約1/25に等しい体積のアセトンとヘキサンの混合液(1/1の体積比が好ましい)をそこに添加することにより、バイオマスを溶液に戻す。
【0027】
初めにアセトンとヘキサンの混合液を添加し、次にさらに1.5体積の純ヘキサンを添加することにより、上記乾燥バイオマスを溶液に戻すことがより好ましい。ヘキサンに対するアセトンの最終比は、4体積のヘキサンに対して1体積のアセトンである。かかる溶解の後、得られた溶液に純水を添加し、パクリタキセル濃縮油相を形成させる。添加したアセトンの100体積当たり、2〜10体積、より好ましくは5〜7体積の比で水を加えることが好ましい。
【0028】
次に、そのようにして得られた混合物をデカント用フラスコ内に移す。フラスコの底に沈積した、パクリタキセル及び他のタキサン類を含有する油相を回収する。次に、油相を蒸発させ、シリカゲルでクロマトグラフィーにより精製されるように準備する。
【0029】
B−第3のステップの遠心分離直後に得られたバイオマスが湿っている(すなわち、乾燥が行われていない)場合、かかる湿ったバイオマスは、何ら水を添加することなく、アセトンとヘキサンの混合液(1:1の体積比が好ましい)で溶液に戻される。アセトンの体積は、沈殿前の第2のステップで得られた非濃縮抽出物の体積の約1/20に等しいのが好ましい。
【0030】
かかる溶解の後、同様な方法でヘキサンから分離されたパクリタキセル濃縮油相を形成するため、少なくとも1つの非極性溶媒を、得られた溶液に添加する。
【0031】
この目的に用いられる非極性溶媒(複数可)は、アセトンと混和性のある炭化水素類(例えばペンタン、ヘキサン又はヘプタン)から成る群より選ばれることが好ましい。ヘキサンが使用される場合、使用されるヘキサンの体積は、通常アセトン溶液の体積の3〜4倍である。
【0032】
湿ったバイオマスが含有する水が多すぎる場合、パクリタキセル及びその類似体を回収及び精製するためには、得られたパクリタキセル濃縮油相をシリカゲルにコーティングし、且つそのようにしてコートされたシリカゲルをクロマトグラフィーにかける前に、残余水分を除去するように得られたパクリタキセル濃縮油相を処理しなくてはならない。水分を除去することによって、クロマトグラフィーカラムにシリカゲルを装填する前に、コートされたシリカゲルがより迅速に乾燥することが可能となる。
【0033】
パクリタキセル濃縮油相中の残余水分は、水不混和性溶媒を用いた抽出により除去され得る。次に混合物をデカントし、有機相を水から分離する。使用される水不混和性溶媒は、ハロゲン化炭化水素又はエーテルから成る群より選ばれるのが好ましい。かかる溶媒の例としては、クロロメチレン、トリクロロメタン及びジエチルエーテルが参考となる。
【0034】
得られた抽出物は、次に、回収され、真空下で濃縮され、且つこの時点で、シリカゲルでクロマトグラフィーにより精製されるように準備される。
【0035】
(ステップ5−クロマトグラフィー精製)
本発明によるプロセスの第5すなわち最後のステップは、前のステップで得られたパクリタキセル濃縮油相の溶液を少なくとも1回クロマトグラフィーで精製すること、及びクロマトグラフィーにより得られた精製溶液を少なくとも1回結晶化することにある。
【0036】
これを行うために、第4ステップで得られた濃縮されたパクリタキセル濃縮油相を、少なくとも1回クロマトグラフィーにより精製し、クロマトグラフィーにより得られた精製溶液を少なくとも1回結晶化させる。しかし、第4ステップで得られた濃縮されたパクリタキセル濃縮油相を、数回クロマトグラフィー精製し、数回結晶化することが好ましい。クロマトグラフィー精製の回数は2回であることが好ましく、結晶化の回数は3回であることが好ましい。
【0037】
これらの連続的な精製及び結晶化を、サブステップA〜Eとして次に説明する。
【0038】
(A−第1のクロマトグラフィー精製)
第1のクロマトグラフィー精製ステップにおいて、プロセスの第4ステップで得られたパクリタキセル濃縮油相をシリカゲルと混合し、通気により乾燥させる。油相でコートされたシリカゲルを、同じ種類のゲルを含有するクロマトグラフィーカラムに装填する。このカラムにおいて、30〜40%のアセトン及び60〜70%のヘキサンを含有する混合溶出液を用いて、パクリタキセルを精製する。混合溶出液は、約35%のアセトン及び約65%のヘキサンから成ることが好ましい。
【0039】
使用するカラムは、高さが142cm、及び精製されるべきパクリタキセルの量に応じて、内径が7.6cm若しくは15.2cmであることが好ましい。4〜6gのパクリタキセルを含有するパクリタキセル濃縮油相は、7.6cmの直径を有するカラムで精製されることが好ましい。20〜24gのパクリタキセルを含有する油相では、15.2cmのカラム直径を有するカラムを使用する。小さいカラム(直径7.6cm)は2.2〜2.3kgのシリカゲルを含有する一方、大きいカラム(直径15.2cm)は8〜9kgのシリカゲルを含有する。
【0040】
カラムのシリカゲルをアセトンとヘキサンから成る混合溶出液で洗浄し、平衡にする。画分の溶出を同じ溶媒混合物で、好ましくは、直径7.6cmのカラムでは約100ml/分の流速で、直径15.2cmのカラムでは400ml/分の流速で行う。いずれの場合でも、体積を0〜30psiの範囲の圧力下に保つことが好ましい。
【0041】
(B−第1の結晶化)
B.1 このステップにおいて、前のステップでクロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する画分を、乾燥するまで蒸発させ、アセトン溶液に戻す。HPLC分析によるパクリタキセルに対応する最大ピークに対して、228nmの吸光度で1.0〜1.5O.D.が得られるようにアセトンの量を調整する。次に、3〜4体積のヘキサンをアセトン溶液に添加することにより、パクリタキセルを結晶化する。
【0042】
B.2 代替的には、前のステップのクロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する画分を、初期の体積の1/5まで又はHPLC分析によるパクリタキセルに対応する最大ピークに関して1.0〜1.5O.D.が得られるまで、蒸発させることにより減量する。このようにして、パクリタキセルはアセトン/ヘキサン(35:65%)溶媒混合物中に残る。次に、2〜3体積のヘキサンを溶液に添加することにより、パクリタキセルを結晶化する。
【0043】
結晶は急速に生成する。周囲温度又は2〜8℃の温度で、混合物を一晩放置し、結晶化を完了する。
【0044】
(C−第2の結晶化)
本ステップにおいて、前のステップで結晶化により得られた結晶をろ過又は遠心分離により分離し、HPLC分析によるパクリタキセルに対応するピークに対して、溶液の吸収値が1.0〜1.5O.D.の範囲で得られるように調整した量のアセトンを用いて、アセトン溶液に戻す。
【0045】
次に、アセトン溶液に溶液の1体積当たりヘキサン3〜4体積を加えることにより、本溶液に含有されるパクリタキセルを再結晶化する。
【0046】
本ステップで得られる結晶は、HPLC分析により85〜95%のパクリタキセル純度を有する。
【0047】
前の2つの結晶化ステップからろ過により結晶を分離後、9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIIIと同定されているピークに対応する第1のクロマトグラフィーから得られた画分とヘキサン相を混合する。本成分はパクリタキセルピークに至る前にいくつかの画分に溶出する。次に、混合物を乾燥するまで蒸発させる。そのようにして得られた残留物は、メタノールを加えることで9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIIIの淡黄色の結晶へと変わる。ろ過により結晶を分離し、その後アセトン溶液に戻し、4体積のヘキサンを加えることで迅速に結晶化する。ろ過により本ステップで得られた9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIII結晶は、上記に開示されるものと同じ方法で再結晶化することができ、且つHPLC分析により98%よりも高い純度を有する。
【0048】
(D−第2のクロマトグラフィー精製)
D.1 本ステップにおいて、前のステップで得られたパクリタキセル結晶をろ過し、その後アセトン溶液に戻す。パクリタキセル溶液をろ過してアセトン中の不溶性粒子を除去する。次に、そのようにして得られた溶液をシリカゲルと混合し、通気下で乾燥させる。
【0049】
パクリタキセルでコーティングされたシリカゲルを、同じ種類のゲルを含有するクロマトグラフィーカラムに装填する。次に、有機溶媒ベースの混合溶出液でパクリタキセルの2度目の再精製を行う。混合溶出液は、30〜40%のアセトン及び70〜60%のヘキサンを含むのが好ましい。
【0050】
ステップCで得られた結晶をアセトンで溶解し、シリカゲルと混合して乾燥させるのがより好ましい。パクリタキセルが含浸したゲルをクロマトグラフィーカラム(好ましくは7.6cm又は15.2cm内径の142cm長、精製されるべきパクリタキセルの量に依存する)に装填する。7.6cm径カラムは2.2〜2.3kgのシリカゲルを含有することができ、一方15.2cm径カラムは8kgのシリカゲルを含有することができる。カラム内のゲルはアセトンとヘキサンから成る溶媒(好ましくは1体積当たり35:65%)で洗浄し、平衡にする。画分の溶出は同じ混合溶媒を用いて、好ましくは7.6cm径カラム内を約100ml/分の流速で、又は15.2cm径カラム内を400ml/分の流速で行った。両カラムは0〜30psiの範囲の圧力で操作する。
【0051】
D.2 代替的には、前のステップCで得られたパクリタキセル結晶をろ過し、その後塩化メチレン溶液に戻す。パクリタキセル溶液をろ過して塩化メチレンに不溶の粒子を除去する。
【0052】
次に、そのようにして得られた溶液をシリカゲルと混合して通気下で乾燥させる。
【0053】
パクリタキセルでコーティングされたシリカゲルを、同じ種類のゲルを含有するクロマトグラフィーカラムに装填する。次に、有機溶媒ベースの混合溶出液でパクリタキセルの2度目の再精製を行う。混合溶出液は、95〜98%のクロロメチレン及び2〜5%のイソプロパノールを含むのが好ましい。
【0054】
ステップCで得られた結晶をクロロメチレンで溶解し、シリカゲルと混合し、乾燥させることがより好ましい。パクリタキセルが含浸したゲルをクロマトグラフィーカラム(好ましくは7.6cm又は15.2cm内径の142cm長、精製されるべきパクリタキセルの量に依存する)に装填する。7.6cm径カラムは2.2〜2.3kgのシリカゲルを含有することができ、一方15.2cm径カラムは8kgのシリカゲルを含有することができる。カラム内のゲルをクロロメチレンとイソプロパノールから成る溶媒(好ましくは1体積当たり97.5:2.5%)で洗浄し、平衡にする。画分の溶出は同じ混合溶媒を用いて、好ましくは7.6cm径カラム内を約100ml/分の流速で、又は15.2cm径カラム内を400ml/分の流速で行う。
【0055】
(E−第3の結晶化)
本ステップにおいて、ステップDでクロマトグラフィーにより回収したパクリタキセルを含有する濃縮画分を、それらの画分の純度に従って、好ましくは98〜99%及び90〜98%の純度に従って、合わせる。次に、それらの画分を乾燥するまで蒸発させ、アセトン、アルコール(エタノール)、酢酸エチル又はジエチルエーテルの溶液に戻す。
【0056】
HPLC分析によるパクリタキセルに対応するピークに対して、溶液の吸収の値が1.0〜1.5O.D.の範囲で得られるように、添加されるアセトン量を調整する。上記した他の溶媒、すなわちアルコール(エタノール)、酢酸エチル又はジエチルエーテルが使用される場合、パクリタキセルの濃度はなおさら重要であり、通常アセトン溶液中のパクリタキセルの濃度の5倍を上回る濃度に濃縮される。
【0057】
次に、好ましくは以下:
1.1体積のアセトン当たり3〜4体積のヘキサンを、アセトン溶液に加えることにより;
2.1体積のアルコール又は酢酸エチル当たり少なくとも3体積のヘキサンを、アルコール溶液又は酢酸エチル溶液に加えることにより;及び
3.1体積のジエチルエーテル当たり少なくとも2体積のヘキサンをジエチルエーテル溶液に加えることにより
パクリタキセルの3度目の再結晶を行う。
【0058】
先に記載した精製及び再結晶化の最終ステップにおいて、周囲温度でパクリタキセル溶液にヘキサンの添加を実施することができる。これは結晶の生成を遅くするが、2〜4℃又は周囲温度では一晩で結晶化は完了する。微細な、分離された粉末を得るために、結晶をろ過し、真空下で乾燥させる。次に、アルコール(メタノール若しくはエタノール)又はアセトンに結晶を溶解し、その後水で懸濁液に戻し、約−60℃の温度で66〜72時間の間、凍結乾燥させる。
【0059】
次に、得られたタキサン類の画分をオートサンプラー(Waters 717 plus)、光ダイオードアレイ検出器(Waters 996)、多溶媒送出システム(登録商標Waters 600E)及びC18 登録商標Nova−Pakカラム、60Å、4μm(3.9×150mm)を用いてHPLCクロマトグラフィー(Waters system)により分析することができる。
【0060】
画分の分析は、5μlの体積を注入することで行われる。アセトニトリル−水−メタノール(体積で、開始時25:50:30;終了時35:35:30)の溶媒勾配を用いて流速1ml/分でカラムを溶出する。
【0061】
化合物のピークは228nmで検出され、サンプルの分析時間は約36分である。パクリタキセルのピークの保持時間は約18.9±0.2分であり、9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIIIのピークの保持時間は6.5±0.2分である。
【0062】
残留物の溶解のためのクロマトグラフィー精製ステップに使用される揮発性溶媒は、アセトン類、C1〜C3低級アルコール類、酢酸エチル、クロロメチレン又はこれらの溶媒の混合液から成る群から選択されるのが好ましい。
【0063】
ステップEの終わりに、ヘキサン中のパクリタキセルの結晶化並びにろ過及び乾燥の後、パクリタキセル結晶の混合物が得られる。このパクリタキセル結晶の混合物は、以下の:
99%を超える純度を有する60%の結晶;
98%を超えるが99%を下回る純度を有する30%の結晶;及び
92%を超えるが98%を下回る純度を有する10%の結晶
から成る。
【0064】
(本発明と本出願人による米国特許第6,452,024号に開示及び特許請求されたものとの基本的な差異)
上記のように、図1及び図2は、米国特許第6,452,024号に開示及び特許請求されたプロセスの基本的なステップと本発明のそれとを比較した、フローチャートである。
【0065】
1.これらのフローチャートに示されているように、本発明によるプロセスでは、抽出されるパクリタキセルを含有する原材料、好ましくは乾燥針葉及び枝から成る原材料を精製水で洗浄した後、有機溶媒(例えばメタノール又はアセトン)で抽出する。このような洗浄後に得られた水は、廃棄されるいくつかの水溶性(hydrosoluble)成分を含有する。次に、湿った針葉及び枝は、メタノール若しくはアセトン又は両方の混合液で「覆われ」て、例えば20℃では16時間抽出される。次に、抽出物を、カートリッジフィルターに通し、ジャケット内で加熱された水が循環することによって溶媒を蒸留する二重壁タンク内にポンプで送り込む。上記のように、いくらかの残留水を含有する抽出物を「非濃縮抽出物」と呼ぶ。
【0066】
対照的に、米国特許第6,452,024号においては、メタノール及び塩化メチレンの混合溶媒を用いて、乾燥針葉及び枝の抽出が直接行われる。蒸留後に得られた濃縮抽出物は非常に粘性(visquous)があり、且つ顕著な量の樹脂と天然色素を含有する。この抽出物を「濃縮抽出物」と呼ぶことができる。
【0067】
2.本発明によるプロセスでは、塩化ナトリウムを非濃縮抽出物に加えて、直ちに沈殿するバイオマスを生成する。このバイオマスは遠心分離により単離される。
【0068】
米国特許第6,452,024号において、予め塩基性溶媒又は酸性溶媒中のメタノールで希釈された濃縮抽出物の沈殿によりバイオマスが得られる。生成される沈殿物は非常に微細で軽いため、塩化ナトリウムを加えて塩析してから単離される。
【0069】
3.次に、米国特許第6,452,024号に開示されたものはもとより、本発明によるプロセスにおいて、バイオマスをアセトンに溶解し、ヘキサン等の非極性溶媒の所定量(好ましくは4体積)をアセトン溶液に加え、パクリタキセル濃縮油相を形成する。
【0070】
本発明によるプロセスでは、そのようにして得られたパクリタキセル濃縮油相は、シリカゲルを用いた低圧でのクロマトグラフィーカラムにより精製されるように準備される。対照的に、米国特許第6,452,024号で開示されたプロセスでは、得られたパクリタキセル濃縮油相は、酸性溶媒又は塩基性溶媒中で2回目の沈殿を行わなければならない。沈殿物を遠心分離で単離する前に塩化ナトリウムを加えて塩析する。得られた沈殿物を乾燥させ、その後アセトンに溶解させる。アセトン溶液が、シリカゲルを用いた低圧でのクロマトグラフィーカラムにより精製されるように準備されるのは、この時だけである。
【0071】
4.本発明によるプロセスの第1のクロマトグラフィー精製ステップでは、パクリタキセル濃縮油相をシリカゲルと混合し、通気下で乾燥させる。次に、バイオマスで覆われたシリカゲルをクロマトグラフィーカラムに装填する。パクリタキセルをアセトンとヘキサンの混合溶出液で精製する。クロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する画分を集め、その後結晶化させる。ろ過又は遠心分離により得られた結晶をアセトンに溶解し、その後2度目の再結晶化を行う。結晶を、ろ過又は遠心分離により単離し、2度目で最後のシリカゲルを用いた低圧でのクロマトグラフィーカラムにより再精製されるように準備する。
【0072】
米国特許第6,452,024号に開示されたプロセスの第1のクロマトグラフィー精製ステップでは、パクリタキセル濃縮油相をシリカゲルと混合し、通気下で乾燥させる。次に、バイオマスで覆われたシリカゲルをクロマトグラフィーカラムに装填する。パクリタキセルをアセトンとヘキサンの混合溶出液で精製する。クロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する画分を集め、その後2度目のクロマトグラフィーカラムにより前のステップで用いられた条件下で再精製する。2度目のクロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する画分を集め、その後結晶化させる。ろ過又は遠心分離により得られた結晶をアセトンに溶解し、その後2度目の再結晶化を行う。結晶を、ろ過又は遠心分離により単離し、その後3度目で最後のシリカゲルを用いた低圧でのクロマトグラフィーカラムにより再精製されるように準備する。
【0073】
したがって、米国特許第6,452,024号に開示されたプロセスでは、実施されるべきクロマトグラフィーの回数は多い(2度ではなく3度)。
【0074】
5.もちろん両方の場合とも、本発明における2度目で最後のクロマトグラフィーカラムからのパクリタキセルを含有する画分、又は米国特許第6,452,024号における3度目で最後のクロマトグラフィーカラムからのパクリタキセルを含有する画分が集められ、その後結晶化され、最終生成物が生成される。
【0075】
したがって、米国特許第6,452,024号と比較して本発明の主要な利点は、本発明によるプロセスでは、針葉の抽出の開始からバイオマスの調整までの精製ステップが少ないこと及び精製ステップが少ないこと(米国特許第6,452,024号に記載されるような3回のクロマトグラフィーではなく2回のクロマトグラフィー)が、ここでより理解されよう。
【0076】
また、本発明によるプロセスでは、同じ量の最終生成物を得るのに使用する溶媒が遥かに少なく、必要とする原材料も遥かに少ない。したがって、本発明による改良されたプロセスを用いる場合の生産コストは、パクリタキセル精製に使用される通常の及び伝統的なプロセスだけではなく、米国特許第6,452,024号のプロセスの場合よりも遥かに低い。
【0077】
[実施例]
以下の実施例は単に説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものと認識されるべきではない。
【実施例1】
【0078】
(洗浄)
100kgのTaxus canadensisの乾燥粉末針葉及び枝を木綿袋に入れた。この袋を、400Lの蒸留水が加えられたステンレス鋼タンクに入れた。室温で3時間の間、水中に木綿袋を完全に浸し、水溶性不純物を含有する溶液を排出させた。
【0079】
実際は、この洗浄手順は1回又は2回繰り返されてもよく、湿った針葉は木綿袋のままタンク内に放置されてもよい。
【0080】
(抽出)
250Lのメタノールを、湿った針葉及び枝を含有するタンク内に加えた。周囲温度で16時間の間抽出を行った。抽出物をフィルターに通して第2の二重壁タンク内にポンプで送り込んだ。二重壁タンク内に80℃の熱水を循環させて、メタノールを蒸留した。回収されたメタノールは、針葉を洗浄するために針葉を含有するタンク内に移し、純メタノールの体積を400Lに満たした。次に、洗浄に使用したメタノールはポンプで汲み上げ、メタノールの体積の約75%が回収されるまで蒸留した。約100〜120Lの残留溶液(以後「非濃縮抽出物」と呼ぶ)を別のタンク内に移し、抽出物の温度が周囲温度に低減するまで放置した。
【0081】
(塩析によるバイオマスの沈殿)
非濃縮抽出物を10Lのメタノール(非濃縮抽出物の体積に対して約10%のメタノール)で浄化した。攪拌のもと、迅速に塩化ナトリウムを加えることにより沈殿させてバイオマスを単離した。塩化ナトリウムの濃度は、抽出溶液1L当たり約50gであった。沈殿物を直ちに生成し、混合物を攪拌せずに一晩放置した。次に、上清を排出し、ろ過又は遠心分離をせずに重い沈殿物を容易に回収した。
【0082】
必要であれば、塩化ナトリウムを添加することにより得られたバイオマスを、ろ過又は4,200rpmの速さで、20℃で30分間遠心分離(J6 MC Beckmam Centrifugal machine、4.2JS rotor)することにより迅速に回収することもできる。多量の沈殿物を処理するには、連続フロー遠心分離機を使用することが好ましいことが理解される。
【0083】
10−デアセチルバッカチンIII及びバッカチンIIIを含有する上清を、塩化メチレン又はジエチルエーテルにより抽出した。蒸発により有機相を濃縮し、これらのタキサンの類似体を抽出する処理を行ってもよい。
【0084】
(樹脂及び色素の除去)
1.得られた沈殿物を空気乾燥させた。代替的には、真空乾燥又は凍結乾燥(Freeze dryer−FTS System)を行うこともできる。沈殿物の重量は約1.3kg〜1.5kgであった。この沈殿物を6Lのアセトン−ヘキサン混合液(1:1)に溶解し、その中に含有する不溶性粒子を除去するために0〜2℃で30分間ろ過した(又は代替的に4,200rpmで遠心分離した)。次に、アセトン−ヘキサン溶液をビーカ内に移し、1.5体積の純ヘキサン(9L)及び続いて1/2体積のヘキサンを添加することによりそれぞれを数分間攪拌しながら混合した。5%〜20%の純水、好ましくは5%〜10%の純水の添加により油相を形成した。水の量は、使用されるアセトンの体積により算出した。次に、混合物を分離フラスコの中に入れ、約30分間分離させた。フラスコの底のパクリタキセル濃縮相を回収し、過カラー化の前に得られた溶液の初期体積の1/10まで蒸発させることで濃縮させた。この調製物は、クロマトグラフィー精製ステップでシリカゲルに吸着するように準備された状態であった。
【0085】
2.乾燥を行わずに遠心分離した後、そのようにして得られた沈殿物を3Lのアセトンに溶解し、その中に含有する不溶性粒子を除去するために0〜2℃で30分間ろ過した(又は、代替的には4,200rpmで遠心分離した)。次に、アセトン溶液をビーカ内に移し、4体積のヘキサン(12L)及び続いて1体積のヘキサンを添加することによりそれぞれ数分攪拌しながら混合した。油相は素早く形成した。次に、混合物を分離フラスコの中に入れ、約30分間分離させた。フラスコの底のパクリタキセル濃縮相を回収した。この溶液はいくらかの残留水を含有しているので、1体積のクロロメチレンを加えて抽出した。
【0086】
この混合物から水を分離し、パクリタキセルを含有する下層のクロロメチレン相を、樹脂及び色素を除去する前に得られたアセトン溶液の初期体積の1/5まで濃縮するか、又は乾燥するまで蒸発させた。後者の場合、乾燥した残留物を0.5Lのアセトンに溶解した。
【実施例2】
【0087】
(低圧にてシリカゲルを用いたクロマトグラフィーによる第1の精製)
実施例1で樹脂及び色素を除去した後に得られたパクリタキセル及び類似体を含有するアセトン溶液を500gのシリカゲル(230〜400メッシュ)と混合した。抽出物が含浸したゲルを通気下(又は真空下)で空気乾燥させた。乾燥後の総重量は約900〜950gであった。この材料の半量を、2.2kgのシリカゲル(230〜400メッシュ)を含有するカラム(142×7.6cm内径)に装填した。アセトンとヘキサンの混合液(35:65%、v/v)でゲルを洗浄し、平衡にした。溶媒送出システム(Dynamax(登録商標))を用いて同じ溶媒で溶出を行った。0〜30psiの圧力下で、溶出の流速は約100ml/分であった。混合溶媒の体積は約40Lであり、各画分を1Lのバッチで回収した。HPLC分析によると、9〜10の画分、26番目又は27番目〜35番目又は36番目が、約0.2mg/ml〜0.7mg/mlのパクリタキセルを含有し、それらの純度は10〜58%の範囲であったことが示された。より多くのパクリタキセルを含有する画分はより高い純度を有する。標準パクリタキセルのピーク面積と比較することにより、各画分のピーク面積からパクリタキセル量を決定した。
【0088】
パクリタキセルを含有する画分が、ある精製から別の精製で他の画分に対して分離されたものになり得るということは留意すべきことである。
【0089】
最も多い量の侠雑物を有する画分を廃棄した。包括的には、0.3mg/ml未満のパクリタキセルを含有する最初の画分を排除した。
【実施例3】
【0090】
(低圧にてシリカゲルを用いたクロマトグラフィーによる第1の精製)
実施例1で樹脂及び色素を除去した後に得られたパクリタキセル及び類似体を含有するアセトン溶液を500gのシリカゲル(230〜400メッシュ)と混合した。抽出物を含浸したゲルを通気下(又は真空下)で空気乾燥させた。乾燥後の総重量は約920gであった。この材料の半量を、2.2kgのシリカゲル(230〜400メッシュ)を含有するカラム(142×7.6cm内径)に装填した。アセトンとヘキサン(40:60%、v/v)の混合液でゲルを洗浄し、平衡にした。溶媒送出システム(Dynamax(登録商標))を用いて同じ溶媒で溶出を行った。0〜30psiの圧力下で溶出の流速は約100ml/分であった。混合溶媒の体積は約30Lであり、各画分を1Lのバッチで回収した。HPLC分析によると、7〜8の画分、16番目又は17番目〜23番目又は24番目が、約0.1mg/ml〜0.7mg/mlのパクリタキセルを含有し、それらの純度は8〜45%の範囲であったことが示された。より多くのパクリタキセルを含有する画分はより高い純度を有する。標準パクリタキセルのピーク面積と比較することにより、各画分のピーク面積からパクリタキセル量を決定した。
【0091】
ここにおいても、パクリタキセルを含有する画分が、ある精製から別の精製で他の画分に対して分離されたものになり得るということは留意すべきことである。
【0092】
最も多い量の侠雑物を有する画分を廃棄した。包括的には、0.3mg/ml未満のパクリタキセルを含有する最初の画分を排除した。
【実施例4】
【0093】
(第1の結晶化)
実施例2及び3での第1のクロマトグラフィー精製の後、パクリタキセルの濃度が0.3mg/mlよりも高い画分を合わせ、乾燥するまで蒸発させた。残留物をアセトンに溶解し、HPLCによりパクリタキセルの最大ピークが1.0〜1.5O.D.の範囲で得られるようにアセトンの体積を調整した。次に、4体積のヘキサンをアセトン溶液に加えて次の時間、結晶化を開始した。混合物を2〜8℃又は室温で一晩放置して結晶化を完了させた。
【0094】
(第2の結晶化)
次に、得られた結晶をろ過(又は遠心分離)し、アセトンに溶解させた。HPLCによりパクリタキセルの最大ピークが1.0〜1.5O.D.の範囲で得られるようにアセトンの体積を調整した。次に、アセトン溶液に対して4体積の比でヘキサンを加えた。次の時間で結晶は形成した。混合物を2〜8℃又は周囲温度で一晩放置して結晶化を完了させた。結晶をろ過又は遠心分離し、空気又は真空下で乾燥させた。HPLC分析によると、パクリタキセルの含有量は約85%以上であることが示された。
【0095】
(9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIIIの直接単離及び第1の結晶化)
実施例2におけるクロマトグラフィーによる第1の精製から得られた9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIIIを含有する画分(画分20番目〜25番目)又は実施例3における9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIIIを含有する画分13番目〜15番目を、第1と第2の結晶化ステップから得られたヘキサン/アセトン溶液(母液)と共に合わせ、乾燥するまで蒸発させた。メタノールを加えて結晶を生成し、ろ過又は遠心分離により回収した。得られた結晶をアセトンに溶解し、3体積のヘキサンで結晶化させた。産物を純度>95%である9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIIIと同定した。
【0096】
(9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIIIの第2の結晶化)
そのようにして得られた9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIII結晶をアセトンに溶解させ、その後1体積のヘキサンをアセトン溶液に加えた。混合物をゆっくり攪拌させ、2体積のヘキサンをさらに加えた。溶液をゆっくり結晶化させた。白色の結晶をろ過又は遠心分離により回収し、通気又は真空下で乾燥させた。これらの結晶のHPLC分析によると、9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIIIの含有量は98%以上であることが示された。
【実施例5】
【0097】
(低圧にてシリカゲルを用いたクロマトグラフィーによる第2の精製)
実施例4における第2の結晶化の後に得られたパクリタキセル結晶を75〜100mlのアセトンに溶解し、その後ろ過して不溶性粒子を除去し、75〜100gのシリカゲルに吸着させた。パクリタキセルでコーティングされたゲルを、通気下又は真空下で空気乾燥させた。乾燥ゲルを、2.2kgのシリカゲル(230〜400メッシュ)を含有するカラム(142×7.6cm内径)の上部に装填した。アセトンとヘキサンの混合液(35:65、v/v)でゲルを洗浄し、平衡にした。溶媒送出システム(Dynamax(登録商標))を用いて、0〜30psiの圧力下で約100ml/分の流速にて同じ溶媒で溶出を行った。混合溶媒の体積は約40Lであり、画分を1Lのバッチで回収した。HPLC分析によると、9〜10の画分、26番目又は27番目〜34番目又は35番目が、約0.2mg/ml〜0.6mg/mlのパクリタキセルを含有し、それらの純度は85〜99%の範囲であったことが示された。98%を超える純度を有するパクリタキセルを含有する画分を共に合わせて、3度目で最後の結晶化を行った。
【0098】
ここにおいても、パクリタキセルを含有する画分は、ある精製ステップから別の精製ステップで他の画分に対して分離されたものになり得る。
【実施例6】
【0099】
(低圧にてシリカゲルを用いたクロマトグラフィーによる第2の精製)
実施例4における第2の結晶化の後に得られたパクリタキセル結晶を75〜100mlの塩化メチレンに溶解し、ろ過して不溶性粒子を除去し、その後75g〜100gのシリカゲルと接触させた。パクリタキセルでコーティングされたゲルを、通気下又は真空下で空気乾燥させた。乾燥ゲルを、2.2kgのシリカゲル(230〜400メッシュ)を含有するカラム(142×7.6cm内径)の上部に装填した。クロロメチレンとイソプロパノールの混合液(97.5:2.5、v/v)でゲルを洗浄し、平衡にした。溶媒送出システム(Dynamax(登録商標))を用いて、0〜30psiの圧力下で約100ml/分の流速にて同じ溶媒で溶出を行った。混合溶媒の体積は約50Lであり、画分を1Lのバッチで回収した。HPLC分析によると、20の画分、28番目〜48番目が、約0.1mg/ml〜0.3mg/mlのパクリタキセルを含有し、それらの純度は98から99%を超えることが示された。98%を超える純度を有するパクリタキセルを含有する画分を共に合わせて、3度目で最後の結晶化を行った。
【0100】
(第3の結晶化)
実施例5又は実施例6の第2のクロマトグラフィー精製後、パクリタキセルの純度が98%を超える画分を合わせ、乾燥するまで蒸発させた。残留物をアセトンに溶解し、HPLCによりパクリタキセルの最大ピークが1.0〜1.5O.D.の範囲で得られるようにアセトンの体積を調整した。次に、4体積のヘキサンをアセトン溶液に加えて次の時間で結晶化を開始した。混合物を2〜8℃又は室温で一晩放置して結晶化を完了させた。
【0101】
白色の結晶をろ過又は遠心分離により回収し、通気又は真空下で乾燥させた。HPLCにより分析された結晶の純度は、以下:
実施例5で得られた時は99.20〜99.50%;及び
実施例6で得られた時は99.50〜99.90%
の通りであった。
【0102】
本明細書中で開示されるように、第2のクロマトグラフィー精製後にパクリタキセルを含有する画分から得られた残留物を、エタノール、酢酸エチル又はジエチルエーテルに溶解してもよい。これらの溶媒の体積は前に使用されたアセトンよりも5倍少ないので、パクリタキセルの濃度は5倍高い(約10mg/ml)ことになる。
【0103】
実際は:
次に、1〜2体積のヘキサンをエーテル溶液に加えた;及び、代替的には
次に、3〜4体積のヘキサンをエタノール溶液又は酢酸エチル溶液に加えて次の時間で結晶化を開始した。
【0104】
混合物を2〜8℃又は室温に一晩放置して結晶化を完了させた。これらの結晶の純度は結晶化にアセトンを使用するときは非常に類似していた。
【0105】
純度が98%より劣る結晶を残しておき、上記の第2の精製と同じ条件でクロマトグラフィーにより共に再精製を行った。この再精製により、これらの結晶総量のうち約75%の、純度が99%を超える結晶を得ることができた。
【0106】
結晶を最小体積のエタノール又はメタノール又はアセトンに溶解し、その後純水を含有するガラスビンの中に戻した。溶媒の体積は、純水の体積に対して約10〜15%であった。パクリタキセルを72時間、凍結乾燥させ、100ミリトールの圧力下で1分間当たり0.02℃で、−60℃〜+20℃に上昇させた。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明によるプロセスの基本的なステップと、最も近い従来技術、すなわち米国特許第6,452,024号に開示された基本的なステップとを比較する、フローチャートである。
【図2】本発明によるプロセスの基本的なステップと、最も近い従来技術、すなわち米国特許第6,452,024号に開示された基本的なステップとを比較する、フローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出されるパクリタキセルを含むタキサン類の天然資源からのパクリタキセルの抽出及び精製プロセスであって、該プロセスは以下のステップ:
a)パクリタキセルを含有する原材料を脱イオン水又は純水で洗浄するステップであって、前記原材料は前記タキサン類の天然資源に由来し、かかる洗浄は前記原材料から可溶性不純物を除去することを可能にするステップ;
b)有機溶媒を用いて、前記洗浄した原材料からパクリタキセルを含有する湿原材料を抽出するステップ;
c)前記湿原材料を塩と接触させ、それにより沈殿によりバイオマスを得るステップ、並びに前記バイオマスを単離及び乾燥するステップ;
d)そのように単離及び乾燥されたバイオマスをアセトン又はアセトン−ヘキサン混合液に溶解し、次にそれにパクリタキセル濃縮油相が得られるまで少なくとも1つの極性溶媒を加えることにより、前記バイオマスから樹脂及び天然色素を除去するステップ;及び
e)揮発性溶媒中の前のステップで得られたパクリタキセル濃縮油相を、少なくとも1回クロマトグラフィー精製し、それにより精製溶液を得るステップ、並びにクロマトグラフィーにより得られた精製溶液を少なくとも1回結晶化するステップ
を含む、抽出及び精製プロセス。
【請求項2】
パクリタキセルを含有するタキサン類の天然資源は、Taxus brevifolia、Taxus baccata、Taxus canadensis、Taxus wal(l)ichiana、Taxus yunnanensis、Taxus densiformis、Taxus hicksii、Taxus wardii、Taxus cuspidata、Taxus capitata及びTaxus browniiから成る群より選ばれる針葉樹から成る、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(a)において、原材料は、前記針葉樹の樹皮、枝及び針葉、又はそれらの混合物から成る群より選ばれる、請求項1又は請求項2記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(b)において、有機溶媒は、アルコール類又はケトン類及びアルコールとケトンの混合液から成る群より選ばれる、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(b)において、有機溶媒は、メタノール、アセトン又は9:1〜1:9の範囲の体積比で存在するメタノールとアセトンの混合液である、請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
ステップ(c)において、沈殿によりバイオマスを得るのに用いられる塩は、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及びそれらの混合物から成る群より選ばれる、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(c)において、塩は塩化ナトリウムであり、ステップ(b)で抽出される湿原材料の1リットル当たり10〜100gの濃度で使用される、請求項6記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(c)において、沈殿したバイオマスはろ過又は遠心分離により単離され、次に空中で又は凍結乾燥される、請求項6又は請求項7記載のプロセス。
【請求項9】
ステップ(d)において、ステップ(c)で得られた乾燥バイオマスはアセトン、次に水を添加することにより溶解され、ここで水は添加されたアセトンの100体積当たり2〜10体積の比で添加され、及び前記ステップ(d)において、少なくとも1つの前記非極性溶媒はヘキサン及びペンタンから成る群より選ばれる、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(e)は以下のサブステップ:
e.1)ステップ(d)で得られたパクリタキセル濃縮油相とシリカゲルとの混合物を調製するサブステップ、並びに、シリカゲルを含むクロマトグラフィーカラムで、前記混合物を溶出溶媒で処理し、それにより第1のパクリタキセル濃縮画分を得る、処理するサブステップ;
e.2)第1のパクリタキセル濃縮画分を、残留物が得られるまで蒸発させて乾燥させるサブステップ、前記残留物をアセトンに溶解することで混合物を調製するサブステップ、並びに混合物中に含有されるパクリタキセルを非極性溶媒を用いて結晶化するサブステップ、又は第1のパクリタキセル濃縮画分を、許容可能な濃度のパクリタキセルが得られるまで蒸発させて乾燥させるサブステップ、並びに混合物中に含有されるパクリタキセルを非極性溶媒を用いて結晶化するサブステップ;
e.3)サブステップ(e.2)で得られたパクリタキセル結晶をアセトンに溶解するサブステップ、並びにパクリタキセルを非極性溶媒を用いて結晶化するサブステップ;
e.4)サブステップ(e.3)で得られた結晶を揮発性溶媒に溶解し、それにより溶液を得るサブステップ、前記溶液とシリカゲルとの混合物を調製するサブステップ、並びにシリカゲルを含有するクロマトグラフィーカラムの前記混合物を、溶出溶媒を用いて処理し、それにより溶出溶媒を用いて第2のパクリタキセル濃縮画分を得るサブステップ;及び
e.5)サブステップ(e.4)で得られた第2のパクリタキセル濃縮画分を、残留物が得られるまで蒸発させて乾燥させるサブステップ、残留物をアセトン、アルコール、エーテル、酢酸エチル又はそれらの混合物に溶解するサブステップ、並びにパクリタキセルを非極性溶媒を用いて結晶化するサブステップ
を含む、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
サブステップ(e.1)において、ステップ(d)で得られたパクリタキセル濃縮油相はシリカゲルと混合され、空気中で乾燥され;シリカゲルは回収され、シリカゲルを同様に含有するクロマトグラフィーカラム中に装填され;及び次にパクリタキセルは、30%〜40%のアセトン及び60%〜70%のヘキサンを含有する混合溶出液を用いて精製され;及び
サブステップ(e.3)において、サブステップ(e.2)で得られた結晶は、ろ過又は遠心分離により単離され、且つアセトンに溶解され、それにより溶液を生成し、アセトンの体積は、前記溶液の吸収がHPLC分析に対応するピークに対して1.0〜1.5O.D.(optic density)の値を有するように調整され、次に、3〜4体積のヘキサンを溶液に添加することにより、パクリタキセルを再結晶化する
、請求項10記載のプロセス。
【請求項12】
サブステップ(e.2)において、サブステップ(e.1)のクロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する濃縮画分は、集められ、乾燥するまで蒸発され、且つアセトンに溶解され、それにより溶液を生成し;アセトンの量は、前記溶液の吸収がHPLC分析に対応するピークに対して1.0〜1.5O.D.(optic density)の値を有するように調整され、且つ3〜4体積のヘキサンを溶液に添加することにより、パクリタキセルを結晶化する
、請求項10又は請求項11記載のプロセス。
【請求項13】
サブステップ(e.2)において:サブステップ(e.1)のクロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する濃縮画分は、集められ、且つ前記濃縮画分の吸収がHPLC分析に対応するピークに対して1.0〜1.5O.D.(optic density)の値を有するまで蒸発され、次に、1.5〜2体積のヘキサンを濃縮溶液に添加することにより、パクリタキセルを結晶化する
、請求項10又は請求項11記載のプロセス。
【請求項14】
サブステップ(e.4)において、サブステップ(e.3)で得られた結晶はろ過又は遠心分離され、アセトンに溶解され、それにより溶液を生成し;溶液は次にシリカゲルと混合され、通気下で乾燥され;パクリタキセルで覆われたシリカゲルは、シリカゲルを同様に含有するクロマトグラフィーカラムに装填され;次に、パクリタキセルは30%〜40%のアセトン及び60%〜70%のヘキサンを含む有機溶媒ベース混合溶出液を用いて再精製される
、請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
サブステップ(e.4)において、サブステップ(e.3)で得られた結晶はろ過又は遠心分離され、アセトンに溶解され、それにより溶液を生成し;溶液は次にシリカゲルと混合され、通気下で乾燥され;パクリタキセルで覆われたシリカゲルは、シリカゲルを同様に含有するクロマトグラフィーカラムに装填され;次に、パクリタキセルは95%〜98%の塩化メチレン及び2%〜5%のイソプロパノールを含む有機溶媒ベース混合溶出液を用いて再精製される
、請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
サブステップ(e.5)において、サブステップ(e.4)のクロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する濃縮画分は、それらの純度に応じて合わせられ、乾燥するまで蒸発され、次にアセトンに溶解され、それにより溶液を生成し;アセトンの量は、前記溶液の吸収がHPLC分析に対応するピークに対して1.0〜1.5O.D.(optic density)の値を有するように調整され;次に、3〜4体積のヘキサンを溶液に添加することにより、パクリタキセルを結晶化する
、請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
サブステップ(e.5)において、サブステップ(e.4)のクロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する濃縮画分は、集められ、且つ前記濃縮画分の吸収がHPLC分析に対応するピークに対して1.0〜1.5O.D.(optic density)の値を有するまで蒸発され;次に、1.5〜2体積のヘキサンを濃縮溶液に添加することにより、パクリタキセルを結晶化する
、請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
サブステップ(e.5)において、サブステップ(e.4)のクロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する濃縮画分は、それらの純度に応じて合わせられ、乾燥するまで蒸発され、次にエタノールに溶解され、それにより溶液を生成し、HPLC分析により溶液の約5〜10mg/mlのパクリタキセル濃度が得られるようにエタノールの量を調整し;次に、3〜4体積のヘキサンを溶液に添加することにより、パクリタキセルを結晶化する
、請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
サブステップ(e.5)において、サブステップ(e.4)のクロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する濃縮画分は、それらの純度に応じて合わせられ、乾燥するまで蒸発され、次に酢酸エチルに溶解され、それにより溶液を生成し、HPLC分析により溶液の約5〜10mg/mlのパクリタキセル濃度が得られるように酢酸エチルの量を調整し;次に、3〜4体積のヘキサンを溶液に添加することにより、パクリタキセルを結晶化する
、請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
サブステップ(e.5)において、サブステップ(e.4)のクロマトグラフィーにより得られたパクリタキセルを含有する濃縮画分は、それらの純度に応じて合わせられ、乾燥するまで蒸発され、次にジエチルエーテルに溶解され、それにより溶液を生成し、HPLC分析により溶液の約5〜10mg/mlのパクリタキセル濃度が得られるようにジエチルエーテルの量を調整し;次に、1〜2体積のヘキサンを溶液に添加することにより、パクリタキセルを結晶化する
、請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
サブステップ(e.3)において、前記揮発性溶媒は、アセトン、C1〜C3の低級アルコール類、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン及びそれらの混合物から成る群より選ばれる、請求項10乃至請求項20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
以下のさらなる:
サブステップ(e.1)におけるパクリタキセルの単離前に溶出された画分から、及びサブステップ(e.2)及びサブステップ(e.3)の結晶化後に得られた混合液から、メタノールを用いて9−ジヒドロ−13−アセチルバッカチンIIIを抽出するステップ、及び
そのようにして抽出された結晶を、アセトン−ヘキサン混合液を用いて再結晶化するステップ
を含む、請求項10乃至請求項21のいずれか1項に記載のプロセス。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−519184(P2006−519184A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501397(P2006−501397)
【出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000107
【国際公開番号】WO2004/076435
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(501492890)チャイケム・ファーマシューティカル・インターナショナル (1)
【氏名又は名称原語表記】CHAICHEM PHARMACEUTICALS INTERNATIONAL
【住所又は居所原語表記】230 Bernard Belleau, Suite130, Laval, Quebec, Canada
【Fターム(参考)】