説明

太陽光利用システム

【課題】発電モジュールの冷却と回収熱の温度を高めることを両立するハイブリッド式太陽光利用システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の太陽光利用システムは、熱交換部3の流路の比較的上流に第1の相転移温度を有する第1の蓄熱部2−aと、前記流路の比較的下流に第1の相転移温度よりも高い相転移温度を有する第2の蓄熱部2−bを配置するようにしたものである。これによって、太陽光発電モジュール1の多くの部分を占める第1の蓄熱材の配置部分では太陽光発電モジュール1の冷却効果を主に発揮しつつ熱回収時には熱媒体を予備加熱する。その上で、熱媒体を第2の蓄熱材の配置部分に導入してより高温の最終目的温度に到達させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱材を用いて太陽熱を蓄熱する太陽光利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅の省エネルギーおよびCO発生量削減のために自然エネルギーを一般住宅で活用しようとする風潮が高まっている。このようなニーズにこたえるものとして、太陽光発電装置と太陽熱集熱装置の両方の機能を一体化したハイブリッド式太陽エネルギー利用装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の太陽エネルギー利用装置(図7)は、太陽光発電モジュール101の下面に潜熱蓄熱材を充填した蓄熱部102を密着して配置して、蓄熱部102の内部に熱媒体の流路である熱交換部103を設け、蓄熱部102全体が断熱材106により覆われたものである。
【0004】
太陽光発電モジュール101に日光が照射されると、10数%の太陽光エネルギーは発電素子により電気エネルギーに変換されるが、残りの熱は発電素子の温度を上昇させる。一般に、太陽光発電素子は温度が高いほど発電効率が低下するという課題を有する。その点、ハイブリッド式太陽エネルギー利用装置の場合は、潜熱蓄熱材が発電素子の熱を奪って発電効率を維持する。加えて、蓄熱部102に蓄えられた熱は、家庭内で熱が必要な時点で熱交換部103によって回収されて熱利用機器に供給される。
【0005】
蓄熱材として潜熱蓄熱材を用いることのメリットは、相転移温度で大きな熱容量を持つことにより発電モジュール101の温度を相転移温度以上に上昇しないようにするという冷却効果が大きいことと、限られた温度でより多くの熱を蓄熱可能であり発電モジュール101の裏面の温度の有効利用に適すること、熱回収までの間の放冷が少なくなること、熱供給の際に熱媒体の温度を相転移温度である程度一定化できるため熱利用機器が利用しやすいということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−108467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、太陽光発電モジュールを冷却したいというニーズと熱を回収して利用したいというニーズの両方に1種類の潜熱蓄熱材で応えようとしていたため、相反する二つのニーズに対して十分に応え切れないという課題を有していた。即ち、冷却するためには相転移温度はなるべく低い方が効果は大きく、熱利用する上では相転移温度はなるべく高い方が高温の熱が取り出せて様々な用途に利用しやすいからである。ハイブリッド式太陽光利用システムは、屋根の上などに設置する都合上、重量の制約が大きいために、限られた量の蓄熱材で上記の二つの目的に対応することが重要である。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、発電モジュールの冷却と回収熱の温度を高めることを両立するハイブリッド式太陽光利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の太陽光利用システムは、蓄熱材から熱回収
をおこなう熱媒体の流路の比較的上流部に第1の相転移温度を有する第1の蓄熱材と、前記流路の比較的下流部に第1の相転移温度よりも高い相転移温度を有する第2の蓄熱材を配置するようにしたものである。
【0010】
これによって、太陽光発電モジュールの多くの部分を占める第1の蓄熱材の配置部分では太陽光発電モジュールの冷却効果を主に発揮しつつ熱回収時には熱媒体を予備加熱する。その上で、熱媒体を第2の蓄熱材の配置部分に導入してより高温の最終目的温度に到達させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の太陽光利用システムは、限られた量の蓄熱材で最も高温の熱が回収されるようになると同時に、大部分の太陽光発電モジュールでは冷却が効率的におこなわれて発電効率を高いレベルで維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における太陽エネルギー利用装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における太陽エネルギー利用装置の側面図
【図3】本発明の実施の形態1における蓄熱部の熱容量を示すグラフ
【図4】本発明の実施の形態2における太陽エネルギー利用装置の断面図
【図5】本発明の実施の形態2における太陽エネルギー利用装置の側面図
【図6】本発明の実施の形態3における太陽エネルギー利用装置の断面図
【図7】従来の太陽エネルギー利用装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、太陽光発電モジュールと、前記太陽光発電モジュールから熱を奪って蓄えるために前記太陽光発電モジュールに密着して配置され複数の容器に収められた潜熱系蓄熱材を備えた蓄熱部と、前記蓄熱部容器の各々に接触した流路からなり前記蓄熱部に蓄えられた熱を回収する熱交換部と、前記熱交換部の流路の中を流れる熱媒体と、前記熱交換部の流路に前記熱媒体を流すための移送手段と、前記移送手段の稼動を制御する制御手段と、前記太陽光発電モジュールから回収した熱を利用する熱利用手段とを備え、前記蓄熱部は、前記流路の比較的上流部に第1の相転移温度を有する第1の蓄熱材と、前記流路の比較的下流部に第1の相転移温度よりも高い相転移温度を有する第2の蓄熱材を配置するようにした太陽光利用システムである。第1の蓄熱材によって太陽光発電モジュールの冷却性能を確保しつつ第1の蓄熱材から熱回収した上で第2の蓄熱材によってさらに高温の熱を供給することにより、太陽光発電モジュールの冷却と供給熱の高温化という相反する需要に応じることが可能となる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の太陽光利用システムにおいて、第1の蓄熱材は、熱媒体の冬季の温度よりも高く太陽光発電モジュール裏面の冬季の最高温度よりも低い相転移温度を備え、第2の蓄熱材は前記第1の相転移温度域よりも高く前記太陽光発電モジュール裏面の夏季日中の平均温度よりも低い相転移温度を備えるようにしたものである。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の太陽光利用システムにおいて、熱媒体は水道水であり、第1の蓄熱材と第2の蓄熱材の配置量の割合を、水道水温と第2の蓄熱材の予想される到達温度と前記第1の蓄熱材と第2の蓄熱材の相転移温度に基づいて決めることを特徴とするものである。
【0016】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の太陽光利用システムにおいて、面積あたりの熱交換部の流路の配置密度を、第1の蓄熱材を含む蓄熱部よりも第2の蓄熱材を含む蓄熱部で大きくしたものである。
【0017】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の太陽光利用システムにおいて、蓄熱部とモジュールとの接触面積と蓄熱部の厚みの比を第1の蓄熱材の厚みよりも第2の蓄熱材で大きくしたものである。
【0018】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の太陽光利用システムにおいて、第2の蓄熱材は、太陽光発電モジュールに密接して隣接する位置に配置されたものである。
【0019】
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の太陽光利用システムにおいて、第2の蓄熱材は、太陽光発電モジュールに隣接する位置の流路の周囲に配置されたものである。
【0020】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明の太陽光利用システムにおいて、熱交換部は、第1の蓄熱材と第2の蓄熱材を結ぶ流路の途中と熱交換部の出口とを結ぶバイパス経路と、前記バイパス経路方向と前記第2の蓄熱材方向とに熱媒体の流路を切り替える切り替えバルブとを備え、制御手段は前記切り替えバルブの流路切り替えを制御可能に設けて、前記制御手段は前記切り替えバルブを前記バイパス経路方向に切り替えて比較的低温の熱を回収したり前記第2の蓄熱材方向に切り替えて比較的高温の熱を回収したりするものである。
【0021】
第9の発明は、特に、第8の発明の太陽光利用システムにおいて、蓄熱部は、第2の蓄熱材の温度を検知する温度検知手段を有し、制御手段は、前記第2の蓄熱材の温度が所定の値よりも低い場合は切り替えバルブをバイパス経路方向に切り替えて、第2の蓄熱材の温度が前記所定の値を上回るまで第2の蓄熱材への蓄熱を継続するように制御するものである。
【0022】
第10の発明は、特に、第8または第9の発明の太陽光利用システムにおいて、制御手段は、カレンダー機能を持つ時計と、日の出時刻と日没時刻を記憶する記憶手段とを備え、日の出時刻以降と日没時刻以前には切り替えバルブをバイパス経路方向に切り替えて、第2の蓄熱材への蓄熱が継続するように制御するものである。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における太陽エネルギー利用装置の断面図を示し、図2は側面図を示すものである。
【0025】
図1において、太陽光発電モジュール1−a、1−bの裏面に密着して、潜熱蓄熱材が充填された複数の不透水性の蓄熱容器からなる蓄熱部2−a、2−bが配置される。また、それぞれの蓄熱容器の内部には熱交換部3の流路が貫通し、全ての蓄熱容器が熱交換部3によって連結される。熱交換部3の中には移送手段4によって熱媒体が流され、熱交換部3の流路の下流には床暖房装置などの熱利用機器5が連結される。蓄熱部2−a,2−bおよび熱交換部3の下面および側面は、断熱材6によって覆われる(図2)。移送手段4は制御手段7によって運転が制御される。熱媒体としては水、空気、冷媒液などが可能であるが、以下水道水を用いた場合について説明する。
【0026】
熱交換部3の上流に位置する蓄熱部2−aは蓄熱材Aを持ち、その相転移温度T2は、下流に位置する蓄熱部2−bの相転移温度T4よりも低く設定される(図3)。より多く
の面積を占める蓄熱部2−aが年間を通じてモジュール冷却効果を発揮できるように、相転移温度T2は冬場の水道水温度T1よりも高く冬場の蓄熱部2−aの最高温度T3よりも低い温度に設定される。また、装置の最下流に位置する蓄熱部2−bが年間を通じて熱供給性能を発揮しやすいように、蓄熱材Bの相転移温度T4は夏場の蓄熱部2−bの到達温度T5よりも低く設定される。冬場は蓄熱部2−aはほぼ完全に相転移して潜熱蓄熱性能を完全に発揮し、夏場は蓄熱部2−bを含む全ての蓄熱部が潜熱蓄熱性能を完全に発揮することを目論んでいる。使用する蓄熱材の例としては、蓄熱材A、Bとしてそれぞれ硫酸ナトリウム10水和物と酢酸ナトリウム3水和物を用いたり、側鎖の炭素数の異なるパラフィンを用いたりするとよい。いずれも固体/液体の相変化を用いる潜熱蓄熱材である。
【0027】
本発明の太陽エネルギー利用装置を住宅の屋根の上に設置する場合は、屋根の最上部が日射を受ける時間が長いので、図1の下流側を上に設置して蓄熱部2−bの温度が上がりやすいようにするのが良い。
【0028】
以上のように構成された太陽エネルギー利用装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0029】
まず、太陽光によって太陽光発電モジュール1−a,bは太陽光を電気エネルギーに変換すると共に、それ自身が輻射熱によって加熱される。その熱は、一部が風などの強制対流と太陽光発電モジュールからの熱輻射によって消費され、残りの熱の一部は熱伝導によって蓄熱部2に伝熱して潜熱蓄熱材の相変化(固体→液体)や温度上昇をもたらして蓄熱される。それ以外の熱が、太陽光発電モジュール1−a,b自身の温度上昇をもたらし、発電効率の低下を招く。
【0030】
同じ熱量で加熱された場合(図3の熱容量Y)、蓄熱材Aに比べて蓄熱材Bは温度が高くなる。そのため、蓄熱部2−aが設置された太陽光発電モジュール1−aの温度は、加熱された際に相転移温度T2付近で相転移が完了するまでの間安定する。一方、蓄熱部2−bが設置された太陽光発電モジュール1−bは、太陽光発電モジュール1−aよりも高い温度になり相転移温度T4付近で相転移が完了するまで安定する。いずれの場合も、蓄熱部をもたない太陽光発電モジュール単独の場合に比べると、太陽光発電モジュール1の温度は低く抑えられて発電量は向上する。
【0031】
制御手段7は、熱利用機器5から熱需要の信号を受けて、移送手段4を稼動させて熱媒体である水道水を熱交換部3に流して蓄熱部2−a、2−bから熱を回収して、熱利用機器5に熱を供給する。夏場のように全ての蓄熱部が相変化温度を超えて蓄熱した場合、液体→固体の相変化が完了するまでの間、蓄熱部2−aの出口地点(C)における水温は相転移温度T2に近い温度であり、蓄熱部2−bの出口地点(D)における水温は相転移温度T4に近いより高温になる。一方、冬場のように蓄熱部2−aのみが相変化を超えて蓄熱した場合は、出口地点(D)における水温は相転移温度T2に近くなる。
【0032】
蓄熱材Aだけを用いた場合に比べると、本発明の太陽エネルギー利用装置は夏場の供給熱をより高い温度(T4付近)で安定した水温を供給することができる点で優れる。一方、夏場に太陽光発電モジュール1−b部分の冷却性能は蓄熱材A単独使用の場合よりは劣るが、太陽光発電モジュール1−b部の面積を比較的小さく設けることによって大きなデメリットとなることは回避できる。
【0033】
蓄熱材Bだけを用いた場合に比べると、本発明の太陽エネルギー利用装置は太陽光発電モジュール1−aの冷却性能を向上できる点と、冬場に温度T2付近で安定した水温を供給可能である点で優れる。一方デメリットとしては夏場に供給できる熱量が小さくなるが
、もともと夏場の熱需要は比較的小さいため大きな問題とはならない。
【0034】
このように、流路の比較的上流部に第1の相転移温度を有する第1の蓄熱材Aと、比較的下流部に第1の相転移温度よりも高い相転移温度を有する第2の蓄熱材Bを配置することによって、モジュールの冷却と出口水温の高温化の両立が可能となる。また、第1の蓄熱材Aは、熱媒体の冬場の温度T1よりも高く太陽光発電モジュール裏面の冬季の最高温度T3よりも低い相転移温度を備え、第2の蓄熱材は前記第1の相転移温度域T2よりも高く前記太陽光発電モジュール裏面の夏季日中の平均温度T5よりも低い相転移温度T4を備えるようにすることによって、年間を通じて冷却効果と熱回収効果の両方が発揮可能となる。
【0035】
熱利用機器5の熱需要が蓄熱できる時間帯とタイムラグがあった場合に、蓄熱部2−a,bからの放熱により利用可能な熱が失われる。蓄熱部2−bは、2−aに比べて蓄熱温度が高くなりがちであるために放熱が起こりやすい。本太陽エネルギー利用装置の裏面は断熱材6で覆われているため、放熱は主に太陽光発電モジュール1−bとの密着面から起こる。また、上記前述の蓄熱材は熱伝導率が太陽光発電モジュールよりも1桁小さいため、蓄熱部内部の太陽光発電モジュールとの接触面から離れた位置にある蓄熱材からは熱が逃げにくい。そのため、蓄熱部2−aに比べて蓄熱部2−bは、蓄熱容器のサイズをより厚く、太陽光発電モジュール1−bへの密着面積をより小さく設けてより放熱しにくくしている。蓄熱材の厚みを概ね30mm以上とすると、数時間オーダーで放熱を抑制する効果が現れる。
【0036】
このように、蓄熱部と太陽光発電モジュールとの接触面積と蓄熱部の厚みの比を第1の蓄熱材の厚みよりも第2の蓄熱材で大きくしたことにより、放熱を抑制して結果的に回収できる熱量を大きくすることができる。
【0037】
太陽光発電モジュール1の冷却性能と熱回収性能の両方をバランスよく両立するためには、蓄熱部2−aと2−bの設置割合を適切に設ける必要がある。蓄熱材Aと蓄熱材Bの設置量(熱量ベース)の割合は、水道水温および蓄熱部2−aの相転移温度T2および蓄熱部2−bの相転移温度T4および蓄熱材Bの到達温度T5とに基づいて、次の式(1)により定めることができる。現実には使用可能な蓄熱材の種類が限られていることおよびその他の制約条件によって、T2とT4は限られた選択肢の中から選ばれる場合が多い。
【0038】
(蓄熱材A):(蓄熱材B)=(T5−T2):(T4−T1) 式(1)
式(1)の右辺において、第1項(T5−T2)は装置の潜在的なモジュール冷却性能を表し主に蓄熱材Aの機能である。また、第2項(T4−T1)は潜在的な熱回収性能を表し、主に蓄熱材Bの機能である。式(1)は冷却性能と熱回収性能の潜在的な可能性を比較して、効果を発揮しやすい作用に重点を置いて蓄熱材AとBを配置するという考え方に基づく。このように、第1の蓄熱材Aと第2の蓄熱材Bの配置量の割合を、水道水温T1と第2の畜熱材の予想される到達温度T5と前記第1の蓄熱材と第2の蓄熱材の相転移温度T2、T4に基づいて決めることによって、装置のベネフィットを最大化することが可能である。
【0039】
特に、季節によってT1は変動し、天候によってT5も変動するので、熱利用機器5の熱需要の季節的、天候的変動を考慮に入れて重視したい条件に応じてT1およびT5の値を設定するとさらによい。このようにすることで、上記の式(1)における効果を、実際の需要に適合させることが可能となる。
【0040】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態の太陽エネルギー利用装置の断面図を示し、図5は
側面図を示す。本実施の形態は第1の実施の形態と共通の部分が多いため、特徴的な部分のみを以下に説明する。
【0041】
本実施の形態の太陽光発電モジュール1は全て、裏面に蓄熱材Aを含む蓄熱部2−aが密着されている。太陽光発電モジュール1のうち最も下流にある一列のみが水平方向に隣接した位置に配置された蓄熱部2−b(蓄熱材Bを含む)と密着している。また、熱交換部3の出口以降の熱交換部3‘の周囲に蓄熱材Bを含む蓄熱部2−cが密着して配置される。
【0042】
実施の形態1と異なって、全ての太陽光発電モジュール1が蓄熱部2−aに伝熱するため全ての太陽光発電モジュール1の温度は相転移温度T2で緩衝され、太陽光発電モジュール全体での発電効率が向上する。特に、太陽光発電モジュール1の最下流の一列は、蓄熱部2−a、bに熱を奪われるため、日射時間が長くなりがちな建物上部に設置しても太陽光発電モジュールの温度は低く抑えることが可能である。このように、第2の蓄熱材Bを、太陽光発電モジュール1に密接して隣接する位置に配置することによって、太陽光発電モジュール1の冷却性能を最大化することが可能である。
【0043】
蓄熱部による蓄熱容量は蓄熱材の設置量によって定まる。屋根の上の限られたスペースを有効に活用して蓄熱材を設置するために、蓄熱部2−cを熱交換部3‘の周囲に配置しても良い。熱交換部3’の周囲は熱回収されやすいので、蓄熱された熱を有効に利用する上でも効果的である。蓄熱部2−cは太陽光発電モジュール1に直接接しないため、蓄熱のみが機能であり高温で蓄熱されるほどよい。蓄熱材Bまたは蓄熱材Bよりも高温の相転移温度を有する蓄熱材を内部に配置してもよい。このように、第2の蓄熱材Bを、太陽光発電モジュールに隣接する位置の流路の周囲に配置することによって、限られた設置スペースを有効に活用して供給熱量をより大きくすることが可能である。
【0044】
(実施の形態3)
図6は、本発明の第3の実施の形態の太陽エネルギー利用装置の断面図を示す。本実施の形態は第1の実施の形態と共通の部分が多いため、特徴的な部分のみを以下に説明する。
【0045】
本実施の形態の太陽エネルギー利用装置では、熱交換部3の流路の蓄熱部2−aと2−bの連結位置と蓄熱部2−bの出口を結ぶバイパス経路8、バイパス経路8方向または蓄熱部2−b内の熱交換部3方向に流路を切り替えるための切り替え手段9−aと9−bと、蓄熱部2−bの蓄熱材の温度を検知する温度検知手段10とが設けられる。温度検知手段10は制御手段7に温度信号を提供し、切り替え手段9−a,bは制御手段7により作動する。
【0046】
以上のように構成された太陽エネルギー利用装置について、冬場の稼動を例に以下その動作、作用を説明する。
【0047】
冬場など熱需要の多い季節では、蓄熱中(日中)に熱需要が発生して熱回収をおこなう場合がある。例えば、日中に熱利用機器5の一例である床暖房装置がT2に近い温度の熱需要信号を制御手段7に伝達する。制御手段7は、温度検知手段10の検知する蓄熱材Bの温度が相変異温度T4を上回っているかどうかに基づいて、蓄熱部2−bが相変異を完全に完了したかどうかを判断する。相変異が未了の場合、切り替え手段9−a,bをバイパス経路8方向に切り替えた状態で移送手段4を稼動させて、蓄熱部2−aのみから熱回収をおこなう。このような熱回収によって蓄熱部2−aに更に蓄熱し続けることができる。通常、日没後に風呂給湯や暖房など更に高温の熱需要が発生する。その場合に、制御手段7は切り替え手段9−a,bを蓄熱部2−b方向に切り替えて、蓄熱部2−aと2−b
の両方から熱回収をおこない高温の熱需要に応えることが可能になる。このように、熱交換部は、第1の蓄熱部2−aと第2の蓄熱部2−bを結ぶ流路の途中と熱交換部の出口とを結ぶバイパス経路8と、バイパス経路8方向と第2の蓄熱部2−b方向とに熱媒体の流路を切り替える切り替え手段9−a,bとを備え、制御手段7は切り替え手段9−a,bの流路切り替えを制御可能に設けて、制御手段7は切り替え手段9−a,bをバイパス経路8方向に切り替えて比較的低温の熱を回収したり第2の蓄熱部2−b方向に切り替えて比較的高温の熱を回収したりすることによって、太陽エネルギーの照射量が比較的少ない季節や昼間に熱需要の発生しがちな季節に対応することが可能になる。また、蓄熱部は、第2の蓄熱材Bの温度を検知する温度検知手段10を有し、制御手段7は、第2の蓄熱材Bの温度が所定の値よりも低い場合は切り替えバルブをバイパス経路8方向に切り替えて、第2の蓄熱材Bの温度が前記所定の値を上回るまで第2の蓄熱材Bへの蓄熱を継続するように制御することにより、蓄熱部2−bに蓄熱を継続するべきかどうかの正確な判断が可能となり冬場の熱回収性能を最大化することができる。
【0048】
なお、制御手段7は、カレンダー機能を持つ時計と、日の出時刻と日没時刻を記憶する記憶手段とを備え、日の出時刻以降と日没時刻以前には切り替え手段9−a,bをバイパス経路8方向に切り替えて、第2の蓄熱材Bへの蓄熱が継続するように制御してもよい。この場合、温度検知手段10を備える必要が無いため、温度検知エラーによる誤制御が発生する可能性が無く、長期間の使用においても確実に冬場の熱回収性能を最大化することが可能である。
【0049】
特に冬場、蓄熱部2−bと外気温の差が大きくなるために放熱が大きくなりがちである。図6において、面積あたりの熱交換部3の流路の配置密度を、第1の畜熱材を含む蓄熱部2−aよりも第2の蓄熱材を含む蓄熱部2−bで大きくしたことにより、蓄熱部2−bからの熱回収速度を大きくして放熱により失う熱を小さくするためである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかる太陽光利用システムは、太陽光発電モジュールの冷却と高温の熱供給とをより高いレベルで両立可能となるので、電力と熱の両方の需要がある工場やビル等での用途にも適用できる。また、日射時と非日射時の温度差の大きい砂漠、宇宙、月面などでの太陽エネルギー利用にも適する。
【符号の説明】
【0051】
1 太陽光発電モジュール
2 蓄熱部
3 熱交換部
4 移送手段
5 熱利用機器
6 断熱材
7 制御手段
8 バイパス経路
9 切り替え手段
10 温度検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電モジュールと、前記太陽光発電モジュールから熱を奪って蓄えるために前記太陽光発電モジュールに密着して配置され複数の容器に収められた潜熱系蓄熱材を備えた蓄熱部と、前記蓄熱部容器の各々に接触した流路からなり前記蓄熱部に蓄えられた熱を回収する熱交換部と、前記熱交換部の流路の中を流れる熱媒体と、前記熱交換部の流路に前記熱媒体を流すための移送手段と、前記移送手段の稼動を制御する制御手段と、前記太陽光発電モジュールから回収した熱を利用する熱利用手段とを備え、前記蓄熱部は、前記流路の比較的上流部に第1の相転移温度を有する第1の蓄熱材と、前記流路の比較的下流部に第1の相転移温度よりも高い相転移温度を有する第2の蓄熱材を配置するようにした太陽光利用システム。
【請求項2】
第1の蓄熱材は、熱媒体の冬季の温度よりも高く太陽光発電モジュール裏面の冬季の最高温度よりも低い相転移温度を備え、第2の蓄熱材は前記第1の相転移温度域よりも高く前記太陽光発電モジュール裏面の夏季日中の平均温度よりも低い相転移温度を備える請求項1に記載の太陽光利用システム。
【請求項3】
熱媒体は水道水であり、第1の蓄熱材と第2の蓄熱材の配置量の割合を、水道水温と前記第2の蓄熱材の予想される到達温度と前記第1の蓄熱材と前記第2の蓄熱材の相転移温度に基づいて変更したことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽光利用システム。
【請求項4】
面積あたりの熱交換部の流路の配置密度を、第1の蓄熱材を含む蓄熱部よりも第2の蓄熱材を含む蓄熱部で大きくした請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽光利用システム。
【請求項5】
蓄熱部とモジュールとの接触面積と蓄熱部の厚みの比を第1の蓄熱材の厚みよりも第2の蓄熱材で大きくした請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽光利用システム。
【請求項6】
第2の蓄熱材は、太陽光発電モジュールに密接して隣接する位置に配置された請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽光利用システム。
【請求項7】
第2の蓄熱材は、太陽光発電モジュールに隣接する位置の流路の周囲に配置された請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽光利用システム。
【請求項8】
熱交換部は、第1の蓄熱材と第2の蓄熱材を結ぶ流路の途中と熱交換部の出口とを結ぶバイパス経路と、前記バイパス経路方向と前記第2の蓄熱材方向とに熱媒体の流路を切り替える切り替えバルブとを備え、制御手段は前記切り替えバルブの流路切り替えを制御可能に設けて、前記制御手段は前記切り替えバルブを前記バイパス経路方向に切り替えて比較的低温の熱を回収したり前記第2の蓄熱材方向に切り替えて比較的高温の熱を回収したりする請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽光利用システム。
【請求項9】
蓄熱部は、第2の蓄熱材の温度を検知する温度検知手段を有し、制御手段は、前記第2の蓄熱材の温度が所定の値よりも低い場合は切り替えバルブをバイパス経路方向に切り替えて、第2の蓄熱材の温度が前記所定の値を上回るまで第2の蓄熱材への蓄熱を継続するように制御する請求項8記載の太陽光利用システム。
【請求項10】
制御手段は、カレンダー機能を持つ時計と、日の出時刻と日没時刻を記憶する記憶手段とを備え、日の出時刻以降と日没時刻以前には切り替えバルブをバイパス経路方向に切り替えて、第2の蓄熱材への蓄熱が継続するように制御する請求項8または9に記載の太陽光利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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