説明

太陽光制御多層フィルム

多層フィルム物品が開示されている。多層フィルム物品は、第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、硬化可能かつ架橋可能なフルオロアクリレート含有化合物と、硬化可能かつ架橋可能な非フッ素化有機化合物、赤外光吸収性ナノ粒子、及び重合開始剤を含む混合物の反応生成物であるハードコート層とを備える。ハードコート層は多層フィルムに隣接して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、太陽光制御多層フィルムに関する。本発明は、より詳細には、望ましい特性を与える赤外線吸収性ナノ粒子及びフッ素化材料を含む太陽光制御多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
着色及び真空コーティングされているプラスチックフィルムは、太陽光による熱負荷を減らす目的で窓に適用されている。熱負荷を減少させる際には、太陽光スペクトルの可視光部分又は赤外部分のいずれか(すなわち、400nm〜2500nm以上の波長)の太陽光の透過を阻む。
【0003】
着色フィルムは、主に吸収を通じて可視光の透過を制御することができ、その結果、グレアの減少をもたらす。しかし、着色フィルムは一般に近赤外太陽エネルギーを遮断することがなく、そのため太陽光制御フィルムとして完全に有効ではない。また着色フィルムは、太陽暴露によって色あせることが多い。これに加え、複数の色素でフィルムを染めた場合、色素がさまざまな速度で色あせる場合が多く、フィルムの耐用期間にわたって無用の変色を引き起こす。
【0004】
知られている別のウィンドウフィルムは、ステンレススチール合金、インコネル合金、モネル合金、クロム合金、又は、ニクロム合金などの真空蒸着灰色金属を用いて作られている。蒸着した灰色金属フィルムは、太陽光スペクトルの可視部及び赤外部で、ほぼ同程度の透過率をもたらす。その結果、灰色金属フィルムは、太陽光制御の点では、着色フィルムを上回るものである。灰色金属フィルムは、光、酸素、及び/又は、水分にさらされても比較的安定しており、酸化によってコーティングの透過率が上昇するケースでも、一般に変色は検出されない。灰色金属は、透明ガラスに塗布した後は、太陽光の反射量及び吸収量がほぼ等しいことによって光の透過を防ぐ。
【0005】
銀、アルミニウム、及び、銅などの真空蒸着層は、主に反射によって太陽放射を制御するとともに、高レベルな可視反射が原因で、限られた数の用途でしか有用でない。銅及び銀といった特定の反射性物質によって、適度な選択性(すなわち、赤外透過率よりも高い可視透過率)が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高い可視光線透過率を有し、赤外放射を実質的に阻むとともに、望ましい洗浄及びスクラッチ耐性特性を有する改善された太陽光制御フィルムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的に、本発明は太陽光制御多層フィルムに関する。本発明は、より詳細には、望ましい特性を付与する赤外線吸収性ナノ粒子及びフッ素化材料を含む太陽光制御多層フィルムに関する。
【0008】
本発明には、第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、多層フィルム上に配置されたハードコート層であって、その内部に分散された赤外光吸収性ナノ粒子を含み、70度を超える水の静的接触角と、50度を超えるヘキサデカンの静的接触角を有するハードコート層と、を備える物品が含まれる。
【0009】
また本発明には、第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、多層フィルム上に配置されたハードコート層であって、少なくとも1種の硬化可能かつ架橋可能なフルオロアクリレート含有化合物と、少なくとも1種の硬化可能かつ架橋可能な非フッ素系化合物と、赤外光吸収性ナノ粒子と、少なくとも1種の重合開始剤とを含む混合物の反応生成物であるハードコート層とを有する物品が含まれる。
【0010】
代表的なフルオロアクリレート含有化合物としては、
(RQXC(O)NH))−R−(NHC(O)OQ(A) (化学式1)
が挙げられる。ここで、Rは多価イソシアネートの残基である。代表的なRとしては以下のものが挙げられる(但しこれらに限定されない)。
【0011】
【化1】

【0012】
XはO、S、又はNRである(RはH又は1〜4の炭素原子の低級アルキルである)。
【0013】
は、化学式F(RfcO)2d−を含む基からなる一価のパーフルオロポリエーテル部分である(各Rfcは独立に、1〜6の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基を表す)。RfcOの代表的な一価のパーフルオロポリエーテルとしては、−(C2p)−、−(C2pO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)C2pO)−、−(C2pCF(Z)O)−、−(CFCF(Z)O)−、又はそれらの組み合わせの過フッ素化反復単位を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの反復単位において、pは典型的には1〜10の整数である。いくつかの実施形態において、pは1〜8、1〜6、1〜4又は1〜3の整数である。基Zは、F、ペルフルオロアルキル基、パーフルオロエーテル基、パーフルオロポリエーテル、又はペルフルオロアルコキシ基であり、これらはすべて線状、分枝状、又は環状とすることができる。Z基は、典型的には12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、9個以下の炭素原子、4個以下の炭素原子、3個以下の炭素原子、2個以下の炭素原子又は1個以下の炭素原子を有する。いくつかの実施形態においては、Z基は、4個以下の酸素原子、3個以下の酸素原子、2個以下の酸素原子、1個以下の酸素原子を有するか、又は酸素原子を有さないことができる。これらのペルフルオロポリエーテル構造においては、異なる反復単位は鎖に沿って無秩序に分布させることが可能である。C2dは直鎖又は分枝鎖とすることができる。各xは独立に、2以上の整数を表し、dは1〜8の整数である。Rの数平均分子量は、400〜5000、別の実施形態では800〜4000、別の実施形態では1000〜3000とすることができる。
【0014】
Qは独立に、価数が少なくとも2の連結基であり、以下のものが含まれる(但しこれらに限定されない)。−C(O)NR(CH−、−C(O)NRCHCH(CH−)CH−、−C(O)NRCHCH(CH−)、−(CH−、−SONR(CH−、−(CH−O−(CH−、−(CH−S−(CH−、−CHC[(CH−)]。ここで、RはH又は1〜4の炭素原子の低級アルキルであり、hは1〜30であり、jは2〜20である。
【0015】
Aは、(メタ)アクリル官能基−XC(O)C(R)=CHであり(Rは、1〜4の炭素原子の低級アルキル又はH若しくはFである)、
mは少なくとも1であり、
nは少なくとも1であり、
aは1〜6である。但し、m+nは2〜10であり、添え字m及びnによって参照される各単位が、R単位に結合される。
【0016】
化学式(1)に適合する化合物の具体例を、以下に示す。
【0017】
【化2】

【0018】
他の代表的なフルオロアクリレート含有化合物としては、
f2−[Q−(XC(O)NHQOC(O)C(R)=CH (化学式2)
が挙げられる。ここで、X、Q、R、及びaは、前述のように定義され、
gは1又は2であり、
f2は、化学式F(RfcO)2d−を含む基からなる一価のパーフルオロポリエーテル部分か、又は化学式−C2dO(RfcO)2d−を含む基からなる二価のパーフルオロポリエーテル部分である。ここで、Rfc、x、及びdは前述のように定義される。Rの数平均分子量は、400〜5000、800〜4000、及び1000〜3000とすることができる。
【0019】
本発明のハードコート組成物中で用いることができる特定のフルオロアクリレート含有化合物の例としては、以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。HFPO−C(O)NHCOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−[C(O)NHCOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−C(O)NHCHCH[OC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH]CHOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−C(O)NHC(C)(CHOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、CH=C(CH)C(O)OCNHC(O)OCNHC(O)−HFPO−C(O)NHCOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、又はそれらの組み合わせである。
【0020】
更に他の代表的なフルオロアクリレート含有化合物としては、
【0021】
【化3】

【0022】
が挙げられる。ここで、R、X、R、Q、m、n、及びAは、前述のように特定され、
Gは、アルキル、アリール、アルカリール、アラルキル基、官能基を有する置換アルキル/アリール基、又はそれらの組み合わせであり、官能基の代表的な例としては、以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。−Si(OMe)、−(CO)、及び−CO。ここで、Rは、1〜30の炭素原子のアルキルであり、iは5〜5000であり、
oは少なくとも1である。
【0023】
更に他の代表的なフルオロアクリレート含有化合物としては、
【0024】
【化4】

【0025】
が挙げられる。ここで、R、Q、X、A、R、m、a、及びnは、前述のように規定される。
【0026】
Dは、二価又はq価のイソシアネート反応性基含有残基D(XH)で、その例としては、アルキレン、アリーレン、アルカリーレン、フルオロアルキレン、ペルフルオロアルキレン、又はアラルキレンが挙げられ、これらは線状、分岐状、又は環状とすることができ、任意にへテロ原子(例えばO、N、及びS)を含むことができ、qは2〜6である。一実施形態においては、qは2である。
【0027】
化学式4は、R(NCO)m+n+1及びD(XH)(例えばジオール、ジチオール、又はジアミン)からの反応生成物であって、(OCN)m+n−NHC(O)X−D−XC(O)NH−R(NCO)m+nを形成し、その後にR−Q−XH及び(A)−Q−OHと反応させるものである。多価イソシアネート反応性化学物質D(XH)を用いて化学式4と同様の化合物を得ることも、D(XH)を置換することによって可能であったであろう。D(QXH)(ここで、qは2である)の代表的なジオールとしては、以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。非フッ素化ジオール例えばHO(CHOH、HO(CHOH、HO(CHOH、HO(CH10OH、及びHO(CHO(CHOH;フルオロケミカルジオール例えばHOCH(CFCHOH、CSON(CHCHOH)、HFPO−C(O)NHCHCHCHN(CHCHOH)、HOCHCHNHC(O)−HFPO−C(O)NHCHCHOH、HOCHCHNHC(O)−CF(OCFx1(CFCFO)x2CF−C(O)NHCHCHOH、HOCH−CF(OCFx1(CFCFO)x2CF−CHOH、及びH(OCHC(CH)(CHOCHCF)CHOH(フォックスジオール(Fox-Diol)、MWは約1342、オハイオ州アルコン(Akron)のオムノバソリューション社(Omnova Solutions Inc.)から販売);及び官能基化ジオール例えばCHN(CHCHOH)、ヒダントインヘキサアクリレート(HHA)、米国特許第4,262,072号(ウェンドリング(Wendling)ら)の例1に記載されたように調製、及びCH=C(CH)C(O)OCHCH(OH)CHO(CHOCHCH(OH)CHOC(O)C(CH)=CHである。
【0028】
Dに、−C2dO(RfcO)2d−が含まれる場合、mは任意にゼロである。
【0029】
更に他の代表的なフルオロアクリレート含有化合物としては、化学式5のフルオロアクリレート非ウレタン化合物が挙げられる。
【0030】
(Rf2)−[(Q)−(R (化学式5)
ここで、Rf2は、化学式F(RfcO)2d−を含む基からなる一価のパーフルオロポリエーテル部分か、又は化学式−C2dO(RfcO)2d−を含む基からなる二価のパーフルオロポリエーテル基であり、数平均分子量が400〜5000、一実施形態においては800〜4000、別の実施形態においては1000〜3000であり、Rfc、d、及びxは前述のように定義され、
Qは前述のように特定され、
は、フリーラジカル反応例えば(メタ)アクリル、アリール、又はビニル基であり、aは1〜6であり、gは1又は2である。
【0031】
本発明のハードコート組成物中で用いることができる化学式5の(メタ)アクリル基を有する代表的なフルオロアクリレート非ウレタン化合物としては、以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。HFPO−C(O)NHCHCHOC(O)CH=CH、HFPO−C(O)NHCHCHOC(O)C(CH)=CH、HFPO−[C(O)NHCHCHOC(O)CH=CH、HFPO−C(O)NHCHCH=CH、HFPO−[C(O)NHCHCH=CH、HFPO−C(O)NHCHCHOCHCHOCHCHOC(O)CH=CH、HFPO−[C(O)NHCHCHOCHCHOCHCHOC(O)CH=CH、HFPO−C(O)NH−(CHOC(O)CH=CH、HFPO−C(O)NHC(CHOC(O)CH=CH、HFPO−C(O)N(CHCHOC(O)CH=CH、HFPO−C(O)NHCHCHN(C(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH、HFPO−C(O)NHC(CHOC(O)CH=CHH、HFPO−C(O)NHC(CHOC(O)CH=CHCH、HFPO−C(O)NHC(CHOC(O)CH=CHCHCH、HFPO−C(O)NHCHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH、HFPO−[C(O)NHCHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH、HFPO−C(O)NHCHCHCHN(CHCHOC(O)CH=CH、HFPO−C(O)OCHC(CHOC(O)CH=CH、CH=CHC(O)OCHCH(OC(O)−HFPO)CHOCHCH(OH)CHOCHCH(OC(O)−HFPO)CHOCOCH=CH、HFPO−CHOCHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH、HFPO−CHOC(O)CH=CH、HFPO−CHCHOC(O)CH=CH、HFPO−CHCHOC(O)C(CH)=CH、HFPO−CHCHOCHCHOC(O)CH=CH、又はそれらの組み合わせである。
【0032】
更に他の代表的なフルオロアクリレート含有化合物としては、
【0033】
【化5】

【0034】
が挙げられる。ここで、Rf3は一価のペルフルオロアルキル基又はポリフルオロアルキル基であり、これらは線状、分枝状、又は環状とすることができる。代表的なRf3としては、以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。C2d+1−(ここでdは1〜8である);CFCFCFCHFCF−;CFCHFO(CF−;(CFNCFCF−;CFCFCFOCFCF−;CFCFCFOCHCF−;n−COCF(CF)−;H(CFCF−;又はn−COCF(CF)CFOCF−である。
【0035】
Jは二価の連鎖基であり、以下のものから選択される(但し、これらに限定されない)。
【0036】
【化6】

【0037】
RはH又は1〜4の炭素原子のアルキル基であり、
hは1〜30であり、
jは2〜10であり、
Kは、非分岐対称アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を有するジイソシアネートの残基であり、代表的なKとしては、以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、
【0038】
【化7】

【0039】
bは1〜30であり、
vは1〜3であり、
yは1〜6であり、
はH、CH3、又はFである。
【0040】
本発明のハードコート組成物中で用いることができる化学式6の(メタ)アクリル基を有する代表的なフルオロアクリレート化合物としては以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。CSON(CH)CO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(MeFBSE−MDI−HEA)、CSON(CH)CO−C(O)NH(CHNHC(O)−OCOC(O)Me=CH(MeFBSE−HDI−HEMA)、CSON(CH)CO−C(O)NH(CHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(MeFBSE−HDI−BA)、CSON(CH)CO−C(O)NH(CHNHC(O)−OC1224OC(O)CH=CH(MeFBSE−HDI−DDA)、CFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CFCHOH−MDI−HEA)、CCHCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CCHCHOH−MDI−HEA)、C13CHCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(C13CHCHOH−MDI−HEA)、CCHFCFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CCHFCFCHOH−MDI−HEA)、CFCHFO(CFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CFCHFO(CFCHO−MDI−HEA)、COCHFCFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(COCHFCFCHOH−MDI−HEA)、COCF(CF)CHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(COCF(CF)CHOH−MDI−HEA)、CSONMeCO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCHC(CHOC(O)CH=CH(MeFBSE−MDI−(SR−444C))、又はそれらの組み合わせである。
【0041】
また本発明には、赤外光源からの赤外光を阻むための光制御物品であって、第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、多層フィルム上に配置されたハードコート層であって、硬化可能かつ架橋可能なフルオロアクリレート含有化合物と、硬化可能かつ架橋可能な非フッ素化有機化合物と、赤外光吸収性ナノ粒子と、重合開始剤とを含む混合物の反応生成物であるハードコート層と、赤外光反射性多層フィルムに隣接して配置される基材とを備える光制御物品が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本出願は、添付図面と関連させて、本発明のさまざまな実施形態の詳細な説明を考慮すると、更に完全に理解できると思われる。
【図1】多層フィルムの斜視図。
【図2】太陽光制御多層フィルム物品の実施形態を概略的に例示する図。
【図3】太陽光制御多層フィルム物品の別の実施形態を概略的に例示する図。
【0043】
本発明は様々な変更例及び代替形状に柔軟に従うことができるが、それらの細目については図面中で一例として示しており、また以下に詳細に記述する。しかしながら、その意図は、記述した特定の実施形態に本発明を限定することではないことを理解するべきである。逆に本発明は、本発明の趣旨及び範囲内にある全ての変更形態、同等形態、及び代替形態を網羅するものである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の太陽光制御多層フィルムは、太陽光制御を必要とする種々の応用例、例えば建築及び輸送応用例などに適用可能であると考えられる。いくつかの実施形態においては、太陽光制御多層フィルム物品は、赤外線反射性多層フィルム上に配置された赤外線吸収性ナノ粒子層を備える。他の実施形態においては、太陽光制御多層フィルム物品は、赤外線吸収性ナノ粒子層と接着層との間に配置された赤外線反射性多層フィルムを備える。太陽光制御フィルムは、光学基材例えばガラス基材などに接着させることができる。これらの例及び後述する例において、開示される太陽光制御多層フィルムの適用性が理解されるが、限定的な意味で解釈してはならない。
【0045】
用語「ポリマー」又は「ポリマーの」には、ポリマー、コポリマー(例えば、2つ以上の異なるモノマーを用いて形成されるポリマー)、オリゴマー、及びこれらの組み合わせ、加えてポリマー、オリゴマー、又はコポリマーが含まれると理解される。別段の指定がない限り、ブロック及びランダムコポリマーの両者が含まれる。
【0046】
本明細書で用いる場合、「フルオロアクリレート含有化合物」若しくは「フルオロアクリレート含有添加剤」又は「フルオロアクリレート非ウレタン化合物」若しくは「フルオロアクリレート非ウレタン添加剤」は、特定の化合物又は化合物の混合物を指すことができる。
【0047】
特に明記しない限り、本明細書と請求項で用いられている特徴的なサイズ、量、及び、物理的特性を表すすべての数は、すべての場合において「約」という用語によって変更されることを理解されたい。したがって、特に記載のない限り、前述の明細書及び添付の請求の範囲に記載されている数のパラメータは、本願明細書で開示する教示を利用する当業者が得ようと試みる所望の特性に応じて変えることのできる近似値である。
【0048】
用語「硬質樹脂」又は「ハードコート」は、結果として生じる硬化したポリマーの示す破断点伸びが、ASTM D−882−91手順に従って評価したときに、50又は40又は30又は20又は10又は5パーセント未満であるということを意味する。いくつかの実施形態においては、硬質樹脂ポリマーは、引っ張り係数として、ASTM D−882−91手順に従って評価したときに、6.89×10パスカル(100kpsi)を超える値を示す可能性がある。いくつかの実施形態においては、硬質樹脂ポリマーは、ヘイズ値として、500g及び50サイクルの負荷の下でASTM D1044−99に従ってテーバー摩耗試験機において試験したときに、10%未満又は5%未満の値を示す可能性がある(ヘイズ成分は、ヘイズガードプラス(Haze-Gard Plus)、BYK−ガードナ(Gardner)、メリーランド州、ヘイズメータを用いて測定することができる)。
【0049】
ハードコート組成物に関連して用いるとき、特定の成分の「重量パーセント」又は「重量%」は、ハードコート組成物から溶媒を取り除いた後であるが、ハードコート層を形成するためにハードコート組成物を硬化する前のハードコート組成物中の特定の成分の量(重量で)を指す。
【0050】
「隣接」という用語は、1つの要素が別の要素に極めて接近した状態にあることを指し、この用語には、それらの要素が接触し合っている状態が含まれるとともに、更に、それらの要素が、要素間に配置された1つ以上の層で隔てられている状態も含まれる。
【0051】
端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に含まれるすべての数(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)、及び、その範囲内のあらゆる範囲が含まれる。
【0052】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「ナノ粒子層」を含む組成物について言及した場合、2つ以上のナノ粒子層が含まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、用語「又は」は、その内容によって別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0053】
本開示では一般的に、ポリマー多層フィルム上に配置された赤外線吸収性ナノ粒子層を備える多層フィルムについて説明する。多くの実施形態において、赤外光反射性多層フィルムは、第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有し、赤外光吸収性ナノ粒子層は多層フィルムに隣接している。ナノ粒子層には複数個の金属酸化物ナノ粒子が含まれる。いくつかの実施形態においては、多層フィルムは光学基材例えばガラスに隣接して配置されて、太陽光制御物品を形成する。いくつかの実施形態においては、多層フィルムの平均の可視光線透過率は少なくとも45%であり、780nm〜2500nmの光に対する平均の赤外線透過率は15%未満である。
【0054】
図1に、多層の光学フィルム20を例示する。フィルムには個々の層22、24が含まれる。それらの層は異なった屈折率特性を有しており、一部の光は、隣接する層間の境界面において反射される。前記層は、前記フィルムに所望の反射又は透過特性をもたらす目的で、複数の前記境界面で反射した光に建設的又は相殺的干渉をもたらすほど十分に薄い。紫外線、可視線、又は、近赤外線の波長の光を反射するように設計されている光学フィルムでは、各層の光学的厚み(すなわち、物理的厚みに屈折指数を乗じた数値)は一般に、約1マイクロメートル未満である。但し、これよりも厚い層、例えば、フィルム外面にあるスキン層、又は、層の束を区切るフィルム内に配置されている保護境界層も含むことができる。
【0055】
多層の光学フィルム20の反射及び透過特性は、それぞれの層(すなわち微小層)の屈折率の関数である。各層は、フィルムの少なくとも局所部分においては、面内屈折率n、n、及びフィルムの厚み方向軸と関連する屈折率nによって特徴づけることができる。これらの屈折率は、それぞれ、相互に直交するx軸、y軸、及びz軸に沿って偏光された光の、対象材料の屈折率を表す(図1を参照のこと)。実際には、屈折率は、賢明な材料選択及び加工条件によって制御する。フィルム20は、典型的には何十又は何百の、2種の交互のポリマーA、Bの層を共押出しし、その後、任意に、多層押出物を1以上の増倍のダイを通過させ、次に、押出物を伸張するか他の態様で延伸して、最終フィルムを形成することによって、製造することができる。得られたフィルムは、典型的には数十又は数百の個々の層から構成されており、これらの層の厚みと屈折率は、スペクトルの所望の領域(単一又は複数)、例えば、可視領域、近赤外領域、及び/又は赤外領域に1つ以上の反射バンドをもたらすように調整されている。適度な数の層で高い反射率を実現させるために、隣接し合っている層では、x軸に沿って偏光した光に対する屈折率の差(Δn)が少なくとも0.05であるのが好ましい。一部の実施形態では、2つの直交する偏光に対して高い反射率が望ましい場合、隣接している層では、y軸に沿って偏光した光に対する屈折率の差(Δn)も少なくとも0.05である。別の実施形態では、ある1つの偏光状態の法線入射光を反射させるとともに、直交偏光状態の法線入射光を透過する層スタックを作製させるために、屈折率の差Δnは0.05未満又は0にできる。
【0056】
所望に応じて、隣接し合っている層の間における、z軸に沿って偏光した光に対する屈折率の差(Δn)も、斜入射光のp偏光成分に対して所望の反射特性が得られるように調整することができる。説明を容易にするために、多層光学フィルム上のいかなる対象点においても、x軸は、Δnの大きさが最も大きくなるようにフィルム面内に延伸させるものとする。したがって、Δnの大きさは、Δnの大きさに等しいか又はそれ未満(超えない)とすることができる。更に、差Δn、Δn、Δnを計算する際、どの材料層から始めるべきかという選定は、Δnを負の数にしないことを要求することにより左右される。言い換えれば、界面を形成する2層間の屈折率の差はΔn=n1j−n2jであり、ここで、j=x、y、又はzであり、層の表記1、2は、n1x≧n2x、すなわち、Δn≧0となるように選定される。
【0057】
斜め入射角におけるp偏光の高い反射率を維持するために、層間のz屈折率の不一致Δnは、最も大きい面内屈折率の差Δnより実質的に小さく制御して、Δn≦0.5Δnのようにすることができる。一実施形態においては、Δn≦0.25Δnである。層の間における、大きさがゼロ又はほぼゼロのz屈折率の不一致は、入射角の関数としてp偏光の反射率が一定又はほぼ一定である境界面を層の間にもたらす。更に、z屈折率の不一致Δnは、面内屈折率の差Δnに対して反対の極性を有するように、すなわち、Δn<0であるように、制御することができる。この条件は、s偏光の場合と同様に、p偏光に対する反射率が、入射角の増加とともに増加する境界面をもたらす。
【0058】
多層光学フィルムは例えば、米国特許第3,610,724号(ロジャース(Rogers))、米国特許第3,711,176号(アルフレー(Alfrey)Jr.ら)、「赤外光、可視光、又は、紫外光用の高反射型熱可塑性光学体(Highly Reflective Thermoplastic Optical Bodies For Infrared,Visible or Ultraviolet Light)」、米国特許第4,446,305号(ロジャース(Rogers)ら)、米国特許第4,540,623号(イム(Im)ら)、米国特許第5,448,404号(シュレンク(Schrenk)ら)、米国特許第5,882,774号(ジョンザ(Jonza)ら)「光学フィルム(Optical Film)」、米国特許第6,045,894号(ジョンザ(Jonza)ら)「透明〜着色セキュリティフィルム(Clear to Colored Security Film)」、米国特許第6,531,230号(ウェーバー(Weber)ら)「カラーシフトフィルム(Color Shifting Film)」、PCT公開番号WO 99/39224号(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)「赤外干渉フィルタ(Infrared Interference Filter)」、及び、米国特許公開番号2001/0022982A1(ニービン(Neavin)ら)「多層光学フィルムを作製するための装置(Apparatus For Making Multilayer Optical Films)」に記載されており、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれている。このようなポリマー多層光学フィルムでは、個々の層の構成にポリマー材を優勢的に又は独占的に使用する。このようなフィルムは、大量製造プロセスに対応することができるとともに、大型のシート及びロール商品の形で作製してもよい。
【0059】
多層フィルムは、交互のポリマータイプ層の任意の有用な組み合わせによって形成することができる。多くの実施形態では、交互のポリマー層の少なくとも一方が複屈折で配向されている。一部の実施形態では、交互のポリマー層の一方が複屈折で配向されており、もう一方が等方性である。ある1つの実施形態では、多層光学フィルムは、第1のポリマータイプ、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンテレフタレートのコポリマー(coPET)と、第2のポリマータイプ、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)又はポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のコポリマー(coPMMA)の層を交互にすることによって形成する。別の実施形態では、多層光学フィルムは、第1のポリマータイプ、例えばポリエチレンテレフタレートと、第2のポリマータイプ、例えばポリ(メチルメタクリレート及びエチルアクリレート)のコポリマーの層を交互にすることによって形成する。別の実施形態では、多層光学フィルムは、第1のポリマータイプ、例えばグリコール化ポリエチレンテレフタレート(PETG−コポリマーエチレンテレフタレート及び第2のグリコール部分、例えばシクロヘキサンジメタノール)又はグリコール化ポリエチレンテレフタレートのコポリマー(coPETG)と、第2のポリマータイプ、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)又はポリエチレンナフタレートのコポリマー(coPEN)の層を交互にすることによって形成する。別の実施形態では、多層光学フィルムは、第1のポリマータイプ、例えばポリエチレンナフタレート又はポリエチレンナフタレートのコポリマーと、第2のポリマータイプ、例えばポリ(メチルメタクリレート)又はポリ(メチルメタクリレート)のコポリマーの層を交互にすることによって形成する。交互のポリマータイプ層の有用な組み合わせは、米国特許第6,352,761号及び同第6,797,396号に開示されており、これらの特許は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0060】
図2に、太陽光制御多層フィルム物品100の実施形態を概略的に例示する。フィルム100は、前述したように第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルム110を備える。赤外光吸収性ハードコート層120が、多層フィルム110に隣接して配置されている。接着層130が多層フィルム110上に配置されている。剥離層又は基材140が接着層130上に配置されている。任意的の第2のハードコート層150を、多層フィルム110に隣接して配置することができる。
【0061】
多くの実施形態において、フィルム100は、前述したように第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルム110を含み、ハードコート層120は、多層フィルム110に隣接して配置される。いくつかの実施形態においては、ハードコート層120は、硬化したポリマー結合剤内に分散した金属酸化物を含む。いくつかの実施形態においては、このハードコート層120の厚さは、1〜20マイクロメートル、又は1〜10マイクロメートル、又は1〜5マイクロメートルの範囲である。接着層130が多層フィルム110上に配置されている。剥離層又は光学基材140が、接着層130上に配置されている。
【0062】
図3に、太陽光制御多層フィルム物品200の別の実施形態を概略的に例示する。フィルム200は、前述したように第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルム210を含む。ハードコート層220が、多層フィルム210に隣接して配置されている。任意的な中間体接着層270が、ハードコート層220と多層フィルム210との間に配置されている。接着層230が多層フィルム210上に配置されている。剥離層又は光学基材240を、感圧性接着剤層230上に配置することができる。任意的な第2のハードコート層250を、多層フィルム210に隣接して配置することができる。任意的な中間体ポリマー層260が、任意的な第2のハードコート層250と中間体接着層270との間に配置されている。
【0063】
上記の多層フィルム物品構造体は、改良型の太陽光制御フィルム物品を提供する。いくつかの実施形態においては、多層フィルム物品の平均の可視光線透過率(400〜780nm)は少なくとも45%であり、780nm〜2500nmの光に対する平均の赤外光線透過率は10%未満又は15%未満である。一部の実施形態では、多層フィルム物品の平均可視光線透過率は少なくとも60%であり、950nm〜2500nmの間の実質的にすべての波長における赤外光線透過率は20%以下である。いくつかの実施形態においては、多層フィルム物品の780〜1200nmでの平均の光反射率は50%以上であり、1400〜2500nmでの平均の光透過率は50%以下である。更なる実施形態においては、多層フィルム物品の780〜1200nmでの平均の光反射率は80%以上であり、1400〜2500nmでの平均の光透過率は20%以下である。更なる実施形態、多層フィルム物品の780〜1200nmでの平均の光反射率は90%以上であり、1400〜2500nmでの平均の光透過率は5%以下である。
【0064】
本発明の一実施形態においては、ハードコート混合物から形成されるハードコート層は赤外光吸収性材料を含み、ハードコート層は70度を超える水の静的接触角を有している。別の実施形態においては、ハードコート層は90度を超える水の静的接触角を有している。更なる実施形態においては、ハードコート層は100度を超える水の静的接触角を有している。
【0065】
本発明の一実施形態においては、ハードコート層は、50度を超えるヘキサデカン(油)の静的接触角を有している。
【0066】
本発明の一実施形態においては、低い表面エネルギー(例えば、防汚、染み耐性、撥油性及び/又は撥水性)と耐久性(例えば、耐磨耗性)との組み合わせが、ハードコート層にとっては望ましい特性である。またハードコート層は、本発明のいくつかの実施形態においては、耐久性及び光学的透明性を改善する一方で、グレア損失を小さくするように機能することもできる。
【0067】
実施例に記載される試験方法によって決定されるように、表面エネルギーを接触角及び撥インク性等の様々な方法によって特徴づけることができる。本出願では、「染み忌避剤」とは、少なくとも70度の水分の静的接触角を示すような表面処理のことを指す。一実施形態においては、接触角は少なくとも80度であり、別の実施形態では少なくとも90度である。この代わりに、又はそれに加えて、ヘキサデカンの前進接触角は少なくとも50度、そして別の実施形態においては少なくとも60度である。表面エネルギーが低い結果、防汚特性及び染み忌避特性が得られるとともに、露出面も洗浄しやすくする。低い表面エネルギーのもう1つの指標は、ペン又はマーカーからのインクが露出面に塗布された時に玉状化する度合いに関係する。表面層及び物品が「撥インク性」を示すというのは、ペン及びマーカーからのインクが玉状化して別個の液滴になり、露出面をテッシュペーパー又はペーパータオル(例えば、キンバリークラーク社(Kimberly Clark Corporation)(ジョージア州ロズウェル(Roswell))から商品名「サーパスフェイシャルティシュー(SURPASS FACIAL TISSUE)」で販売されるテッシュペーパー)で拭くことによって容易に取り除くことができるときである。
【0068】
耐久性は、溶媒抵抗試験とスチールウールを用いた耐磨耗性試験との組み合わせから得られる結果に関して定義することができる。スチールウールは、ホーマックスプロダクツ(Homax Products)(ワシントン州ベリンガム(Bellingham))の一部門であるローデスアメリカン(Rhodes-American)から、商品名「#0000−スーパーファイン(Super-Fine)」で入手され、500グラムのおもりをスタイラスに加えた後に300回引っかく。これについは、実施例に記載した通りである。
【0069】
いくつかの実施形態においては、金属酸化物ナノ粒子には、ポリマー材料中に分散した酸化インジウムスズ、ドープされた酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、又はドープされた酸化アンチモンスズが含まれる。ナノ粒子層の厚みは、任意の有用な厚み、例えば1〜10、又は、2〜8マイクロメートルにすることができる。ナノ粒子層には、ナノ粒子を任意の有用な充填量又は重量比で、例えば、30〜90重量%、40〜80重量%、50〜80重量%だけ含むことができる。多くの実施形態では、ナノ粒子層は非導電性である。ナノ粒子組成物は、例えば韓国のアドバンストナノプロダクツ社(Advanced Nano Products Co.,LTD.)からTRB−PASTE(商標)SM6080(B)、SH7080、SL6060という商品名で市販されている。別の実施形態では、金属酸化物ナノ粒子としては、酸化亜鉛及び/又は酸化アルミニウムが挙げられ、このような酸化物は、ドイツのGfEメタルウンドマテリアリエン社(GfE Metalle und Materialien GmbH)から入手可能である。
【0070】
前述した接着層130には、太陽光制御多層フィルムを基材に取り付けることができる任意のタイプの接着剤を含むことができる。太陽光制御フィルムをガラスに取り付けるために、太陽光制御フィルムの1つの表面に接着剤をコーティングし、フィルムを基材に貼り付ける前に剥離シートを接着層から取り除く。紫外線吸収性添加剤を接着層内に取り入れることができる。
【0071】
一実施形態においては、接着層130の接着剤は感圧性接着剤(PSA)である。別の実施形態においては、接着剤は水分硬化可能な接着剤である。PSAを用いる実施形態では、PSAは光学的に透明なPSAフィルム、例えばポリアクリレート感圧性接着剤である。感圧テープ協議会(Pressure-Sensitive Tape Council)では、感圧性接着剤を、以下の特性を伴う材料であると規定している。(1)積極的かつ永続的な接着性、(2)指圧力以下の接着性、(3)接着物上に保持する十分な能力、(4)十分な貼着性強度、及び(5)エネルギー源による活性化が不要。PSAは通常、典型的には室温以上(すなわち、約20℃〜約30℃以上)である組立温度で接着性を示す。PSAとして十分に機能することがわかっている材料は、必須の粘弾性特性を示すように設計及び処方され、結果として組立温度で接着性と剥離接着性と剪断保持力の望ましいバランスをもたらすポリマーである。PSAを調製する際に最も一般的に用いられているポリマーは、天然ゴム−、合成ゴム−(例えば、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)及びスチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロックコポリマー)、シリコーンエラストマー−、ポリα−オレフィン−、及び種々の(メタ)アクリレート−(例えば、アクリレート及びメタクリレート)系ポリマーである。これらのうち、(メタ)アクリレート−系ポリマーであるPSAは、その光学的透明性、特性の長期間にわたる恒久不変性(経時的安定性)、及び汎用な接着程度(これらはPSAの利点のほんの一部である)から、本発明におけるPSAの1つの部類として発展してきている。
【0072】
前述の剥離ライナーは、例えば、ポリマー又は紙のような任意の有用な材料で形成することができ、剥離コートを包含していてもよい。剥離コートで用いる好適な材料としては、接着剤から剥離ライナーを容易に剥離させるように設計されているフッ素ポリマー、アクリル樹脂及びシリコーンが挙げられるが、これらに限らない。
【0073】
前述した基材は、任意の有用な材料で形成することができ、多くの実施形態において光学基材である。一部の実施形態では、基材は、ポリマー材料、例えば、セルローストリアセテート、ポリカルボネート、ポリアクリレート、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートで形成されている。別の実施形態では、基材は、無機材料、例えば、石英、ガラス、サファイア、YAG又は雲母で形成されている。基材には、任意の有用な厚みを持たせることができる。ある1つの実施形態では、基材は自動車用ガラス又は建築用ガラスである。光沢化システムとして透明ガラスサブストレートが含まれる一部の実施形態では、70%以上の(TVIS)における光沢化システムの遮へい係数は、0.68以下、又は、0.6以下、又は、0.55以下、又は、0.50以下である。
【0074】
ハードコート層は、最終製品の処理中及び使用中の基材の耐久性を向上させることができる。前記ハードコート層としては、任意の有用な物質、例えばシリカ系ハードコート、シロキサンハードコート、メラミンハードコート、アクリル系ハードコートなどを挙げることができる。ハードコートは、任意の有用な厚さ、例えば1〜20マイクロメートル、又は1〜10マイクロメートル、又は1〜5マイクロメートルなどとすることができる。
【0075】
本発明の一実施形態においては、ハードコート層は一般的に、硬化可能かつ架橋可能なフルオロアクリレート含有化合物と、硬化可能かつ架橋可能な非フッ素系化合物と、赤外光吸収性材料と、重合開始剤とを含む混合物からなる反応生成物を含む。
【0076】
本明細書の一実施形態においては、フルオロアクリレート含有添加剤は、一価のパーフルオロポリエーテル部分と多価アクリレート末端基とを有するパーフルオロポリエーテルウレタンである。このような実施形態においては、この代表的な添加剤は、硬化可能かつ架橋可能な非フッ素系化合物として従来の炭化水素系(例えば、アクリレート系)ハードコート材料と、組み合わせることができる。添加剤は、10重量%未満で添加し、一実施形態においては5重量%未満で添加する。別の実施形態においては、添加剤を0.05〜5重量%で添加する。
【0077】
代表的なフルオロアクリレート含有化合物としては、
(RQXC(O)NH))−R−(NHC(O)OQ(A) (化学式1)
が挙げられる。ここで、Rは多価イソシアネートの残基である。代表的なRとしては、例えば以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。
【0078】
【化8】

【0079】
XはO、S、又はNRであり(ここで、RはH又は1〜4の炭素原子の低級アルキルである)、
は、化学式F(RfcO)2d−を含む基からなる一価のパーフルオロポリエーテル部分である(ここで、各Rfcは独立に、1〜6の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基を表す)。RfcOの代表的な一価のパーフルオロポリエーテルとしては、−(C2p)−、−(C2pO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)C2pO)−、−(C2pCF(Z)O)−、−(CFCF(Z)O)−か、又はそれらの組み合わせの過フッ素化反復単位を有するものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。これらの反復単位において、pは典型的には1〜10の整数である。いくつかの実施形態において、pは1〜8、1〜6、1〜4又は1〜3の整数である。基Zは、F、ペルフルオロアルキル基、パーフルオロエーテル基、パーフルオロポリエーテル、又はペルフルオロアルコキシ基であり、これらはすべて線状、分枝状、又は環状とすることができる。Z基は、典型的には12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、9個以下の炭素原子、4個以下の炭素原子、3個以下の炭素原子、2個以下の炭素原子又は1個以下の炭素原子を有する。いくつかの実施形態においては、Z基は、4個以下の酸素原子、3個以下の酸素原子、2個以下の酸素原子、1個以下の酸素原子を有するか、又は酸素原子を有さないことができる。これらのペルフルオロポリエーテル構造において、異なる反復単位は鎖に沿って無秩序に分布することが可能である。各xは独立に、2以上の整数を表し、dは1〜8の整数であり、Rの数平均分子量は400〜5000、別の実施形態においては800〜4000、別の実施形態においては1000〜3000とすることができる。C2dは直鎖又は分枝鎖とすることができ、
Qは独立に、価数が少なくとも2の連結基であり、以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。−C(O)NR(CH−、−C(O)NRCHCH(CH−)CH−、−C(O)NRCHCH(CH−)、−(CH−、−SONR(CH−、−(CH−O(CH−、−(CH−S(CH−、−CHC[(CH−)]である。ここでRはH又は1〜4の炭素原子の低級アルキルであり、hは1〜30であり、jは2〜20である。
【0080】
Aは、(メタ)アクリル官能基−XC(O)C(R)=CHであり、Rは、1〜4の炭素原子の低級アルキル又はH若しくはFであり、Xは前述のように規定され、
mは少なくとも1であり、
nは少なくとも1であり、
aは1〜6であり、但し、m+nは2〜10であり、添え字m及びnによって参照される各単位が、R単位に結合される。
【0081】
一実施形態においては、Qは、直鎖又は分岐鎖又は環を含む連結基とすることができる。Qには、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルカリーレンを含むことができる。Qには任意に、へテロ原子(例えばO、N、及びS)、並びにこれらの組み合わせを含むことができる。またQには任意に、へテロ原子含有官能基、例えばカルボニル又はスルホニルなど、及びこれらの組み合わせを含むこともできる。
【0082】
それらの合成方法によって、これらの材料は必然的に混合物である。イソシアネート基のモル分率に任意に1.0の値を与えた場合、化学式(1)の材料を作る際に用いるm及びn単位の全体のモル分率は1.0以上となる。m:nのモル分率は0.95:0.05〜0.05:0.95の範囲である。一実施形態においては、m:nのモル分率は0.50:0.50〜0.05:0.95である。別の実施形態においては、m:nのモル分率は0.25:0.75〜0.05:0.95であり、更に別の実施形態においては、m:nのモル分率は0.25:0.75〜0.10:0.90である。m:nのモル分率が合計で1を超える場合、例えば0.15:0.90の場合、最初にm単位がイソシアネート上で反応し、わずかに余分(0.05モル分率)のn単位が用いられる。
【0083】
代表的な配合物において、例えば0.15モル分率のm単位と0.85モル分率のn単位とが導入されている場合、形成された生成物の何分の1かにm単位が含まれない生成物の分布が形成される。しかしこの生成物分布において、化学式(1)の材料が存在する。
【0084】
多数のジイソシアネート(二官能イソシアネート)、変性ジイソシアネート材料、及びより高官能イソシアネートを、多価イソシアネートの残基として本発明においてRとして用いてもよく、やはり本発明の範囲に含まれる。一実施形態においては、ヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」)に基づく多機能材料を用いる。HDIの市販の誘導体の1つはデスモジュール(Desmodur)(商標)N100であり、これはバイエルポリマーズ(Bayer Polymers)LLC(ペンシルベニア州(Pennsylvania)、ピッツバーグ(Pittsburgh))から販売されている。
【0085】
更に、他のジイソシアネート例えばトルエンジイソシアネート(「TDI」又はイソホロンジイソシアネート(「IPDI」)も、本発明においてRとして用いてもよい。使用してもよい、例えば脂肪族及び芳香族イソシアネート材料の非限定の例としては、デスモジュール(商標)3300、デスモジュール(商標)TPLS2294、及びデスモジュール(商標)N3600が挙げられるが、これらに限定されない。これらはすべて、バイエルポリマーズLLC(ペンシルベニア州ピッツバーグ)から得られる。
【0086】
化学式(1)の添加剤を作るために用いる材料は、化学式HOQ(A)によって記述してもよく、例えば、1,3−グリセロールジメタクリレート(ミズーリ州(Missouri)ヴァーセイルズ(Versailles)のエコーレズン社(Echo Resins Inc.)から販売)及びペンタエリスリトールトリアクリレート(ペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー(Sartomer)からSR444Cとして販売)によって例示することができる。
【0087】
通常、この実施形態の添加剤は、最初にポリイソシアネートをパーフルオロポリエーテル含有アルコール、チオール、又はアミンと反応させ、その後にヒドロキシル官能多価アクリレートと、通常は非ヒドロキシ溶媒中で、触媒(例えば有機スズ化合物)の存在下で反応させることによって、作製することができる。この代わりに、この実施形態の添加剤は、ポリイソシアネートをヒドロキシル官能多価アクリレートと反応させ、その後にパーフルオロポリエーテル含有アルコール、チオール、又はアミンと、通常は非ヒドロキシ溶媒中で、触媒(例えば有機スズ化合物)の存在下で反応させることによって、作製することができる。更に、添加剤は、3つの成分すべてを同時に、通常は非ヒドロキシ溶媒中で、触媒(例えば有機スズ化合物)の存在下で反応させることによって、作製することもできる。
【0088】
化学式(1)に適合する化合物の具体例を以下に示す。
【0089】
【化9】

【0090】
これは、HDIのビウレットと、1当量のHFPOオリゴマーアミドール(F(CF(CF)CFO)CF(CF)−C(O)NHCHCHOH)との、更に2当量のペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応生成物であり、ここで「x」は平均して2〜15である。いくつかの実施態様において、xの平均値は3〜10であるか、又はxの平均値は5〜8である。
【0091】
化学式(1)の化合物の別の具体例は、
【0092】
【化10】

【0093】
別の実施形態においては、フルオロアクリレート含有添加剤は、化学式(2)とすることができる。
【0094】
f2−[Q−(XC(O)NHQOC(O)C(R)=CH (化学式2)
ここで、X、Q、及びRは前述のように規定され、
aは1〜6であり、
gは1又は2であり、
f2は、化学式F(RfcO)2d−を含む基からなる一価のパーフルオロポリエーテル部分か、又は化学式−C2dO(RfcO)2d−を含む基からなる二価のパーフルオロポリエーテル部分であり、Rfc、x、及びdは前述のように定義され、C2dは直鎖又は分枝鎖とすることができる。
【0095】
f2は一価又は二価であり得る。Rが一価であるいくつかの化合物において、末端基は(C2p+1)−、(C2p+1O)−、(X’C2pO)−、又は(X’C2p+1)−とすることができ、ここで、X’は水素、塩素、又は臭素であり、Pは1〜10の整数である。一価Rf2基のいくつかの実施形態において、末端基はペルフルオロ化されており、pは1〜10、1〜8、1〜6、1〜4又は1〜3の整数である。代表的な一価のRf2基としては、CFO(CO)CF−、CO(CFCFCFO)CFCF−、及びCO(CF(CF)CFO)CF(CF)−が挙げられ、ここで、xの平均値は0〜50、1〜50、3〜30、3〜15、又は3〜10である。
【0096】
二価のRf2基に対する典型的な構造としては以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。−CFO(CFO)x1(CO)x2CF−、−(CFO(CO)(CF−、−CFO(CO)CF−、−CFCFO(CFCFCFO)CFCF−、及び−CF(CF)(OCFCF(CF))x1OC2dO(CF(CF)CFO)x2CF(CF)−である。ここで、x1及びx2は独立に、平均値が0〜50、1〜50、3〜30、3〜15、又は3〜10であり、x1及びx2の合計は、平均値が1〜50又は4〜40であり、dは1〜8の整数である。
【0097】
一実施形態においては、Rf2の平均分子量(数平均)は、400〜5000、別の実施形態においては800〜4000、別の実施形態においては1000〜3000である。
【0098】
本発明のハードコート組成物中で用いることができる化学式2の代表的なHFPO置換ウレタンアクリレートには、HFPO−ポリオール、HFPO−ポリマーカプトン、又はHFPO−ポリアミンと、以下のものとの反応が含まれる。CH=C(CH)C(O)OCHCHNCO、例えば、HFPO−C(O)NHCOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−(O)NHC(C)(CHOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−C(O)NHCOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−C(O)NHC(C)(CHOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−C(O)NHCHCH[OC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH]CHOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−C(O)NHC(C)(CHOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、CH=C(CH)C(O)OCNHC(O)OCNHC(O)−HFPO−C(O)NHCOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−C(O)NHCSC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、CH=C(CH)C(O)OCNHC(O)SCNHC(O)−HFPO−C(O)NHCSC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−C(O)NH(CN(C(O)NHCOC(O)C(CH)=CHNHC(O)−HFPO、又はそれらの組み合わせである。
【0099】
別の実施形態においては、本発明のハードコート組成物中で使用可能なフルオロアクリレート添加剤が、化学式(3)によって与えられる。
【0100】
【化11】

【0101】
ここで、R、X、R、Q、a、m、n、及びAは、前述のように特定され、
oは少なくとも1であり、
Gは、アルキル、アリール、アルカリール、アラルキル基、官能基を有する置換アルキル/アリール基、又はそれらの組み合わせである。またGは任意に、へテロ原子含有官能基例えばカルボニル、スルホニル、ポリエチレンオキシド、又はそれらの組み合わせを有する。更に、Gはへテロ原子とへテロ原子含有官能基との組み合わせを有していてもよい。官能基の代表的な例としては以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。−Si(OMe)、−(CO)、及び−CO。ここで、Rは、1〜30の炭素原子を有するアルキル基であり、iは5〜5000である。
【0102】
Gには任意に、ペンダント又は端子反応性基が含まれる。Gの任意的な反応性基には、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリール基、及び−Si(OR基が含まれていてもよい。ここで、Rは1〜4の炭素原子の低級アルキルである。またGは任意に、フルオロアルキル又はペルフルオロアルキル基を有している。
【0103】
化学式(3)の材料を形成する際に用いるHXQGは、モノアルコール、モノチオール、又はモノアミンであってもよく、例えば以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。n−C1225OH、n−C1837OH、n−C1837O(CO)H、CHO(CO)H(iは5〜5000である)、CSON(CH)CHCHOH、HNCHCHCH(SiOCH、HSCHCHCHSi(OCH、HO(CHCOOC(O)CH=CH、及びHEA(ヒドロキシエチルアクリレート)である。一実施形態においては、(m+n+o)は、NNCO、すなわちRに当初に添えられたイソシアネート基の数に等しい。一実施形態においては、及び(m+n+o)/NNCOの比率は1をわずかに超える場合があり、これは過剰なnから寄与され、また添え字m、n、及びoによって参照される各単位がR単位に結合される。
【0104】
別の実施形態においては、本発明のハードコート組成物中で使用可能な添加剤が、化学式(4)によって与えられる。化学式(4)自体は次の混合物を表わしている。
【0105】
【化12】

【0106】
ここで、R、Q、X、A、R、m、a、及びnは、前述のように定義され、
Dは、D(XH)からの二価又はq価のイソシアネート反応性基含有残基であり、その例としては、アルキレン、アリーレン、アルカリーレン、フルオロアルキレン、ペルフルオロアルキレン、又はアラルキレンが挙げられ、これらは任意に、へテロ原子(例えばO、N、及びS)を含むことができ、qは2〜6である。
【0107】
化学式4の化合物は、R(NCO)m+n+1をD(XH)(例えばジオール、ジチオール、又はジアミン)と反応させて(OCN)m+n−NHC(O)X−D−XC(O)NH−R(NCO)m+nを形成し、その後に、R−Q−XH及び(A)−Q−OHと反応させることによって得ることができる。化学式4の化合物を作るために多価イソシアネート反応性化学物質、D(XH)を用いることも、D(XH)をD(XH)を置換することによってできたであろう。任意に、HXQGは化学式4で示すことができる。
【0108】
この実施形態においては、ポリオール、ポリアミン又はポリチオール延長ポリイソシアネートを、D(XH)をR(NCO)m+n+1に添加することによって作製するときには、高度に架橋されたウレタンポリマーゲルが回避されるように、D(XH)の比率、反応濃度、及び量を選択する際に注意しなければならない。例えば、三官能イソシアネートを多官能アルコールとともに使用するべき場合には、多官能アルコールの量は、ゲル化架橋網目構造の形成が回避されるように制限しなければならない。一実施形態においては、R(NCO)におけるcの数が2よりも大きいときには、配合物は主にジオールに基づいている。ここでcはm+n+1に等しい。
【0109】
D(XH)qの代表的なジオールとしては以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。非フッ素化ジオール例えばHO(CHOH、HO(CHOH、HO(CHOH、HO(CH10OH及びHO(CHO(CHOH;フッ素化ジオール、例えばHOCH(CFCHOH、CSON(CHCHOH)、HFPO−C(O)NHCHCHCHN(CHCHOH)、HOCHCHNHC(O)−HFPO−C(O)NHCHCHOH、HOCHCHNHC(O)−CF(OCFx1(CFCFO)x2CF−C(O)NHCHCHOH、HOCH−CF(OCFx1(CFCFO)x2CF−CHOH、H(OCHC(CH)(CHOCHCF)CHOH(フォックスジオール、MWは約1342及びオハイオ州アルコンのオムノバソリューション社から販売);及び官能基化ジオール例えばCHN(CHCHOH)及びヒダントインヘキサアクリレート(HHA)、米国特許第4,262,072号(ウェンドリングら)の例1に記載されたように調製、及びCH=C(CH)C(O)OCHCH(OH)CHO(CHOCHCH(OH)CHOC(O)C(CH)=CHである。
【0110】
Dに−C2dO(RfcO)2d−が含まれているときには、mは任意にゼロとすることができる。
【0111】
本明細書に記載した各化学式(すなわち、化学式1〜4)に対して、XがOであるときには、Qは通常、メチレンではなく、したがって2つ以上の炭素原子が含まれる。いくつかの実施形態においては、XはS又はNRである。いくつかの実施形態においては、Qは、少なくとも2つの炭素原子を有するアルキレンである。他の実施形態においては、Qは、アリーレン、アラルキレン、及びアルカリーレンから選択される直鎖、分枝鎖、又は環を含む連結基である。更に他の実施形態においては、Qは、へテロ原子(例えばO、N、及びS)及び/またはへテロ原子含有官能基(例えばカルボニル及びスルホニル)を含む直鎖、分枝鎖、又は環を含む連結基である。他の実施形態においては、Qは、へテロ原子(O、N、Sから選択される)及び/またはへテロ原子含有官能基(例えばカルボニル及びスルホニル)を任意に含む分枝状又は環を含むアルキレン基である。いくつかの実施形態においては、Qには、窒素含有基例えばアミドが含まれる。
【0112】
別の実施形態においては、非ウレタン連鎖基を有するフルオロアクリレート含有添加剤を用いることができる。これらの化合物の連結基は、アルキレン、アリーレン、又はそれらの組み合わせから選択される二価基を含むことができ、またカルボニル、エステル、アミド、チオエステル又はスルホンアミド、及びこれらの組み合わせから選択される二価基を任意に含んでいる。他の実施形態においては、連結基は、カルボニル、エステル、アミド、チオエステル又はスルホンアミド、及びこれらの組み合わせから選択される二価基を含むイオウ含有ヘテロアルキレン基である。他の実施形態においては、連結基は、カルボニル、エステル、チオエステル、スルホンアミド、及びこれらの組み合わせから選択される二価基を含む酸素含有ヘテロアルキレン基である。更に他の実施形態においては、連結基は、カルボニル、アミド、チオエステル、又はスルホンアミド、及びこれらの組み合わせから選択される二価基を含む窒素含有ヘテロアルキレン基である。
【0113】
本発明のハードコート組成物中で使用可能な代表的なフルオロアクリレート非ウレタン添加剤を、化学式(5)によって与えることができる。
【0114】
(Rf2)−[(W)−(R (化学式5)
ここで、Rf2は、化学式F(RfcO)2d−を含む基からなる一価のパーフルオロポリエーテル部分か、又は化学式−C2dO(RfcO)2d−を含む基からなる二価のパーフルオロポリエーテル基であり、数平均分子量が約400〜5000、一実施形態においては約800〜4000、別の実施形態においては約1000〜3000であり、Rfc、d、及びxは前述のように定義され、C2dは直鎖又は分枝鎖であってもよく、
Wは連結基であり、
は、フリーラジカル反応性基例えば(メタ)アクリル、アリール、又はビニル基であり、aは1〜6であり、及びgは1又は2である。
【0115】
化学式(5)の化合物は、合成された場合、典型的にはRf2基の混合物を含む。平均構造は、混合物成分にわたって平均された構造である。Rf2の平均分子量は一般的に、少なくとも約400である。化学式5の化合物の分子量(数平均)は、多くの場合に400〜5000、800〜4000又は1000〜3000である。
【0116】
パーフルオロポリエーテルセグメントと(メタ)アクリル又は−COCF=CH2末端基との間の連結基Wは、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン又はそれらの組み合わせから選択された二価基、及びカルボニル、エステル、アミド、スルホンアミド又はそれらの組み合わせから選択された任意の二価基を含む。Wは非置換であるか、又はアルキル、アリール、ハロ又はそれらの組み合わせにより置換されていることが可能である。W基は典型的には30個以下の炭素原子を有する。いくつかの化合物において、W基は20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を有する。例えば、Wは、アリーレン若しくはアルキルエーテル又はアルキルチオエーテル連結基とともに、アルキレン、アリール基で置換されているアルキレン、又はアルキレンであることができる。
【0117】
パーフルオロポリエーテルアクリレート化合物(例えば、化学式5のもの)は、米国特許第3,553,179号及び同第3,544,537号、並びに同第7,094,829号、発明の名称「フッ素化ポリマーを含むフルオロケミカル組成物及び該組成物による繊維質基材の処理(Fluorochemical Composition Comprising a Fluorinated Polymer and Treatment of a Fibrous Substrate Therewith)」に記載されたような公知の技術によって合成することが可能である。
【0118】
本発明のハードコート組成物中で用いることができる化学式5の代表的なフルオロアクリレート非ウレタン化合物としては、例えば以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。
【0119】
HFPO−[C(O)NHCHCHOCHCHOCHCHOC(O)CH=CH1〜2
HFPO−[C(O)NH−(CHOC(O)CH=CH]1〜2
HFPO−[C(O)NHC(CHOC(O)CH=CH1〜2
HFPO−[C(O)N(CHCHOC(O)CH=CH1〜2
HFPO−[C(O)NHCHCHN(C(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH1〜2
HFPO−[C(O)NHC(CHOC(O)CH=CHH]1〜2
HFPO−[C(O)NHC(CHOC(O)CH=CHCH1〜2
HFPO−[C(O)NHC(CHOC(O)CH=CHCHCH1〜2
HFPO−[C(O)NHCHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH1〜2
HFPO−[C(O)NHCHCHCHN(CHCHOC(O)CH=CH1〜2
HFPO−[C(O)OCHC(CHOC(O)CH=CH1〜2、CH=CHC(O)OCHCH(OC(O)−HFPO)CHOCHCH(OH)CHOCHCH(OC(O)−HFPO)CHOCOCH=CH
HFPO−CHOCHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH、HFPO−CHOC(O)CH=CH、HFPO−CHCHOC(O)CH=CH、HFPO−CHCHOC(O)C(CH)=CH
HFPO−CHCHOCHCHOC(O)CH=CH
(CH=CHC(O)O)CHCH(OC(O)C(CH)=CH)CHNHC(O)−HFPO−C(O)NHCHCH(OC(O)C(CH)=CH)CHOC(O)C(CH)=CH、及びこれらの組み合わせ。
【0120】
更に多くの(ペル)フルオロポリエーテルアクリル化合物が、例えば米国公開番号2005/0250921A1及び米国特許出願公開番号2005/0249940(本明細書において参照により取り入れられている)に記載されている。
【0121】
他の実施形態においては、フルオロアクリレート非ウレタン化合物は、反応性(ペル)フルオロポリエーテルのポリ(メタ)アクリレートへのマイケル型付加、例えばHFPO−C(O)N(H)CHCHCHN(H)CHとトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)との付加物によって調製される化合物であってもよい。このような(ペル)フルオロポリエーテルアクリレート化合物については、米国特許第7,101,618号に更に記載されている。
【0122】
本発明の組成物中で使用可能な他の代表的なフルオロアクリレート非ウレタン化合物としては、米国特許第3,810,874号及び同第4,321,404号に開示されているものが挙げられる。代表的な化合物は、構造CH=CHC(O)OCHCFO(CFCFO)x1(CFO)x2CHOC(O)CH=CHで与えられ、
化学式において、x1及びx2はそれぞれランダムに分布するペルフルオロエチレンオキシ及びペルフルオロメチレンオキシ主鎖反復単位の数を示し、x1及びx2は、独立に、例えば1〜50の値であり、x1/x2の割合は0.2〜1から5/1である。
【0123】
更に他のフルオロアクリレート非ウレタン化合物としては、ビニル化合物例えばHFPO−[C(O)NHCHCH=CH1〜2、及びHFPO−[C(O)NHCHCHOCH=CH1〜2が挙げられる。
【0124】
これらのフルオロアクリレート含有添加剤又はフルオロアクリレート非ウレタン含有添加剤は両方とも、ハードコート組成物中の唯一のパーフルオロポリエーテル含有添加剤として用いることができる。しかしその代わりに、本明細書に記載したフルオロアクリレートウレタン含有添加剤を、フルオロアクリレート非ウレタン含有化合物と組み合わせて用いてもよい。これらの実施形態においては、2つの添加剤をハードコート組成物に、フルオロアクリレート含有添加剤とフルオロアクリレート非ウレタン添加剤との重量比が1:1、一実施形態においては2:1、別の実施形態においては3:1となるように、添加することができる。これらの代表的な比率内において、硬化可能な混合物の全重量パーセントフッ素(F)が、0.5〜25重量%F、一実施形態においては0.5〜10重量%F、また別の実施形態においては0.5〜5重量%Fを構成するようにすることができる。1つの代表的な添加剤においては、フルオロアクリレート含有添加剤のパーフルオロポリエーテル部分をHFPO部分とすることができ、フルオロアクリレート非ウレタン添加剤のフッ素化部分をHFPOとすることができる。
【0125】
1つの相乗組合せにおいては、パーフルオロポリエーテル部分及び多価(メタ)アクリル末端基を有するパーフルオロポリエーテルウレタンを、(メタ)アクリル基にリンクされたパーフルオロポリエーテル部分を有する(非ウレタン)1官能性パーフルオロポリエーテル化合物と組み合わせて用いる。通常、パーフルオロポリエーテル部分は化合物の末端基である。同様に、(メタ)アクリル基も通常は末端基である。別の実施形態においては、第2の(非ウレタン)パーフルオロポリエーテル化合物は通常、フッ素の重量パーセントが、パーフルオロポリエーテルウレタン多価(メタ)アクリル化合物よりも高い。1官能性パーフルオロポリエーテル化合物が高い接触角に対して主に寄与しているのに対して、パーフルオロポリエーテルウレタン多価(メタ)アクリル化合物が1官能性パーフルオロポリエーテル化合物を相溶化させていることが推測される。この相互作用により、より高い濃度の1官能性パーフルオロポリエーテル化合物を、相分離することなく取り入れることができる。別の実施形態においては、パーフルオロポリエーテル部分及び多価(メタ)アクリル末端基を有するパーフルオロポリエーテルウレタンを、少なくとも2つの(メタ)アクリル基にリンクされたパーフルオロポリエーテル部分を有する(非ウレタン)多官能のパーフルオロポリエーテル化合物と組み合わせて用いる。あるいは、パーフルオロポリエーテルウレタンモノアクリレートを、(非ウレタン)モノ又は多価(メタ)アクリルパーフルオロポリエーテル化合物と組み合わせて用いることができる。
【0126】
フルオロカーボン及びウレタン(メタ)アクリル添加剤(例えば、化学式(1)、(2)、(3)、又は(4)などからなるもの)を、任意に種々の他の(ペル)フルオロポリエーテル(メタ)アクリル化合物と組み合わせたものを、1又は複数の他の(非ウレタン)フッ素系化合物と組み合わせて、混合物の相溶性を向上させてもよい。
【0127】
別の実施形態においては、本発明のフルオロアクリレート含有添加剤を、化学式6によって表わすことができる。
【0128】
【化13】

【0129】
ここで、Rf3は、一価のペルフルオロアルキル基又はポリフルオロアルキル基であり、これらは線状、分枝状、又は環状とすることができる。代表的なRf3としては、以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。C2d+1−(dは1〜8である);CFCFCFCHFCF−;CFCHFO(CF−;(CFNCFCF−;CFCFCFOCFCF−;CFCFCFOCHCF−;n−COCF(CF)−;H(CFCF−;又はn−COCF(CF)CFOCF−である。
【0130】
Jは二価の連鎖基であり、以下のものから選択される(但し、これらに限定されない)。
【0131】
【化14】

【0132】
RはH又は1〜4の炭素原子のアルキル基であり、
hは1〜30であり、
jは2〜10であり、
Kは、非分岐対称アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を有するジイソシアネートの残基である。代表的なKとしては、以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、
【0133】
【化15】

【0134】
bは1〜30であり、
yは1〜5であり、
vは1〜3であり、
はH、CH3、又はFである。
【0135】
一実施形態においては、Rf3は、少なくとも1種のへテロ原子を含むペルフルオロアルキル基、又は少なくとも1種のへテロ原子を含むポリフルオロアルキル基である。ペルフルオロアルキル基又はポリフルオロアルキル基のいずれかに含むことができるへテロ原子の例としては、O及びNが挙げられるが、これらに限定されない。可能なペルフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、少なくとも1種のへテロ原子を含むペルフルオロアルキル基、及び少なくとも1種のへテロ原子を含むポリフルオロアルキル基の具体例としては以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。C2d+1、(dは1〜8である);CFCFCFCHFCF−;CFCHFO(CF−;(CFNCFCF−;CFCFCFOCFCF−;CFCFCFOCHCF−;n−COCF(CF)−;H(CFCF−;又はn−COCF(CF)CFOCF−である。
【0136】
一実施形態においては、Jは、
【0137】
【化16】

【0138】
である。別の実施形態においては、Jは、
【0139】
【化17】

【0140】
であり、ここでhは2〜4である。
【0141】
別の実施形態においては、Jは、
【0142】
【化18】

【0143】
である。
【0144】
一実施形態においては、Kは、
【0145】
【化19】

【0146】
である。別の実施形態においては、Kは、
【0147】
【化20】

【0148】
である。
【0149】
一実施形態においてはbは2〜12であり、別の実施形態においてはbは2、4、6、10、又は12であり、別の実施形態においてはbは2、4、又は12である。
【0150】
一実施形態では、RはHである。
【0151】
一実施形態においては、vは1又は3である。
【0152】
本発明のハードコート組成物中で有用な化学式6の特定のフルオロアクリレート添加剤としては、以下のものを挙げることができる(但し、これらに限定されない)。CSON(CH)CO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(MeFBSE−MDI−HEA)、CSON(CH)CO−C(O)NH(CHNHC(O)−OCOC(O)Me=CH(MeFBSE−HDI−HEMA)、CSON(CH)CO−C(O)NH(CHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(MeFBSE−HDI−BA)、CSON(CH)CO−C(O)NH(CHNHC(O)−OC1224OC(O)CH=CH(MeFBSE−HDI−DDA)、CFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CFCHOH−MDI−HEA)、CCHCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CCHCHOH−MDI−HEA)、C13CHCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(C13CHCHOH−MDI−HEA)、CCHFCFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CCHFCFCHOH−MDI−HEA)、CFCHFO(CFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CFCHFO(CFCHO−MDI−HEA)、COCHFCFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(COCHFCFCHOH−MDI−HEA)、COCF(CF)CHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(COCF(CF)CHOH−MDI−HEA)、CSONMeCO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCHC(CHOC(O)CH=CH(MeFBSE−MDI−(SR−444C))、及びこれらの組み合わせである。化学式6のフルオロアクリレート添加剤の調製については、米国公開番号2005/0143541A1(本明細書において参照により取り入れられている)に記載されている。
【0153】
本発明のこれらフルオロアクリレート添加剤は、例えば最初に前記フルオロケミカルアルコールと非分岐対称性ジイソシアネートとを、選択した溶媒中で混ぜ合わせ、次に前記ヒドロキシ末端アルキル(メタ)クリレートを添加することにより、調製可能である。有用な溶媒としては以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。芳香族系溶媒(例えば、トルエン)、脂肪族系溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、ペンタン、環状ペンタン及び環状ヘキサン;フッ素化溶媒、例えばCOCH、COCHCH及びCOCH、又はそれらの組み合わせである。
【0154】
一般的に、反応混合物を撹拌することができる。反応は一般的に、室温〜約120℃の温度で行なうことができ、一実施形態においては、選択性を改善するために、反応を30℃〜70℃で行なうことができる。
【0155】
典型的には、前記反応は触媒の存在下で行なうことができる。有用な触媒としては、塩基(例えば、第三級アミン、アルコキシド、及びカルボン酸塩)、金属塩及びキレート、有機金属化合物、酸及びウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態においては、前記触媒は、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート(DBTDL))又は3級アミン(例えば、ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO))、又はこれらの組み合わせである。別の実施形態においては、触媒はDBTDLである。
【0156】
本発明のフルオロアクリレート添加剤を形成する際に有用なフルオロケミカルアルコールは、化学式7によって表すことができる。
【0157】
f3−J−OH 化学式7
ここで、Rf3は、ペルフルオロアルキル基又はポリフルオロアルキル基であり、
Jは二価の連鎖基であり、以下のものから選択される(但し、これらに限定されない)。
【0158】
【化21】

【0159】
Rは、水素又は1〜4の炭素原子のアルキル基であり、
hは1〜30であり、
jは2〜10である。
【0160】
一実施形態においては、Rf3は、少なくとも1種のへテロ原子を含むペルフルオロアルキル基、又は少なくとも1種のへテロ原子を含むポリフルオロアルキル基である。ペルフルオロアルキル基又はポリフルオロアルキル基のいずれかに含むことができるへテロ原子の例としては、O及びNが挙げられるが、これらに限定されない。可能なペルフルオロアルキル基、ポリフルオロアルキル基、少なくとも1種のへテロ原子を含むペルフルオロアルキル基、及び少なくとも1種のへテロ原子を含むポリフルオロアルキル基の具体例としては以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。C2d+1、(ここでeは1〜8である);CFCFCFCHFCF−;CFCHFO(CF−;(CFNCFCF−;CFCFCFOCFCF−;CFCFCFOCHCF−;n−COCF(CF)−;H(CFCF−;又はn−COCF(CF)CFOCF−である。
【0161】
一実施形態においては、dは1〜8であり、別の実施形態においては、dは4〜6である。
【0162】
一実施形態では、hは2〜4である。
【0163】
一実施形態においては、Jは、
【0164】
【化22】

【0165】
である。別の実施形態においては、Jは
【0166】
【化23】

【0167】
であり、ここで、jは2〜4である。別の実施形態においては、Jは、
【0168】
【化24】

【0169】
である。別の実施形態においては、Jは、
【0170】
【化25】

【0171】
である。
【0172】
一実施形態においては、本発明のフルオロアクリレート添加剤を形成するために用いることができるフルオロケミカルアルコールとしては以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。CSONCH(CHOH、CSONCH(CHOH、及びC(CHOHである。別の実施形態においては、フルオロケミカルアルコールは、CSONCH(CHOHである。
【0173】
好適なアルコールの代表的な例としては以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。CFCHOH、(CFCHOH、(CFCFCHOH、CSONH(CHOH、CSONCH(CHOH、CSONCH(CHOH、CSONC(CHOH、C(CHOH、CCONH(CHOH、CSONCH(CHOH、CSONH(CHOH、CCHOH、CCONH(CHOH、CSONCH(CHOH、CCONH(CHOH、CSONCH(CHOH、CSONH(CHOH、CSONC(CHOH、CSONC(CHOH、C11SONCH(CHOH、C11CONH(CHOH、C11(CHOH、C2d+1(CHOH、C2d+1(CHO(CHOH、C2d+1(CHS(CHOH、(dは1〜8である);CFCFCFCHFCFOH、CFCHFO(CFOH、(CFNCFCFOH、CFCFCFOCFCFOH、CFCFCFOCHCFOH、n−COCF(CF)OH、H(CFCFOH、又はn−COCF(CF)CFOCFOHである。
【0174】
本発明のフルオロアクリレート添加剤を形成するために用いることができる非分岐対称ジイソシアネートの代表的な例としては以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート(PDI)、1,4−ブタンジイソシアネート(BDI)、1,8−オクタンジイソシアネート(ODI)、1,12−ドデカンジイソシアネート、及び1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)である。一実施形態においては、非分岐対称ジイソシアネートとしてはMDI、HDI、及びPDIが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態においては、利用する非分岐対称ジイソシアネートはMDIである。その純粋形態では、MDIはダウケミカル社(ミシガン州ミッドランド)からイソネート(ISONATE)(商標)125Mとして、及びバイエルポリマーズ社(ペンシルベニア州ピッツバーグ)からモンドウール(MONDUR)(商標)として市販されている。
【0175】
本発明のフルオロアクリレート添加剤を形成する際に有用なヒドロキシ終端アルキル(メタ)アクリレートは、2〜30の炭素原子を有することができる。別の実施形態においては、ヒドロキシル終端アルキル(メタ)アクリレートとして、そのアルキレン部分に2〜12の炭素原子を有するものを用いる。
【0176】
一実施形態においては、ヒドロキシ終端アルキル(メタ)アクリレートモノマーはヒドロキシ終端アルキルアクリレートである。一実施形態においては、ヒドロキシ終端アルキルアクリレートとしては以下のものが挙げられる(但し、これらに限定されない)。ヒドロキシエチルアクリレートエチル、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシアクリル酸ヘキシル、ヒドロキシデシルアクリレート、ヒドロキシドデシルアクリレート、HOCH−C10−CHOC(O)CR=CH及びHO(CHC(O)OCHCHOC(O)CH=CH、及びこれらの混合物である。別の実施形態においては、ヒドロキシル終端アルキルメト(アクリレート)モノマーは、トリアクリレート例えばペンタエリスリトールトリアクリレート(本明細書においてSR444Cと言う)(サートマー社(Sartomer Company)から販売)である。
【0177】
本発明のフルオロアクリレート添加剤を形成するための1つの代表的な組み合わせとしては、化学式C2d+1SONCH(CHOH(ここで、d=2〜5、及びh=2〜4)によって表わされるフルオロケミカルアルコールをMDIと反応させることが挙げられ、米国特許第7,081,545号、発明の名称「フルオロケミカルモノイソシアネートを調製するためのプロセス(Process For Preparing Fluorochemical Monoisocyanates)」に記載されるプロセスを用いることができる。
【0178】
ハードコート層から最終的に形成されるハードコート組成物には、赤外光吸収性粒子も含まれる。一実施形態においては、許容できるレベルのヘイズ成分を有する物品を形成するために赤外光吸収性粒子を選択する。一般的に、光学層中の粒子は、粒子サイズが増加するにつれて、ヘイズ成分に対して効果を持ち始める。一実施形態においては、粒子が、関連する波長(すなわち、可視光)の10X分の1であれば、層のヘイズ成分に対して容認できない程度まで影響することはない。一実施形態においては、ヘイズ成分値が5%未満の物品は一般的に、許容できると考えられる。
【0179】
一実施形態においては、赤外光吸収性粒子には金属酸化物粒子が含まれる。オキシドナノ粒子は通常、着色され、電磁スペクトルの異なる部分において吸収する。太陽光制御物品は、高い可視光透過を有する一方で、赤外線放射をできるだけ阻止することが望ましい可能性がある。赤外線放射とは一般的に、780nm〜2500nmの電磁放射を指す。一実施形態においては、金属酸化物ナノ粒子(例えば以下で例示するもの)の濃度は一般的に、ほぼ100%の吸光度が1800nmよりも高い波長において実現されるように、別の実施形態では100%の吸光度が1500nmよりも高い波長において実現されるように選択する。このような濃度において、少なくとも50%の可視光線透過率が望ましく、別の実施形態においては、少なくとも70%の可視光線透過率が望ましい。
【0180】
本発明のハードコート組成物中で赤外線吸収性粒子として使用可能な代表的な金属酸化物ナノ粒子としては、スズ、アンチモン、インジウム及び酸化亜鉛、並びにドープされた酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、金属酸化物ナノ粒子としては、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、アンチモンドープ酸化スズ、又は、これらの混合物が挙げられる。一部の実施形態では、金属酸化物ナノ粒子としては、酸化スズ又はドープ酸化スズが挙げられ、任意に応じて、更に酸化アンチモン及び/又は酸化インジウムが挙げられる。ナノ粒子の寸法は、任意の有用な寸法、例えば1〜100、又は、30〜100、又は、30〜75ナノメートルにすることができる。一部の実施形態では、金属酸化物ナノ粒子としては、ポリマー物質内に分散させた酸化アンチモンスズ又はドープ酸化アンチモンスズが挙げられる。
【0181】
一実施形態においては、本発明のハードコート組成物には、所望の量の赤外線吸収性を与える物品を提供するために十分な量の赤外線粒子が含まれる。一実施形態においては、赤外線吸収性粒子は20〜65重量%の範囲で存在する。別の実施形態においては、赤外線吸収性粒子は20〜55重量%の範囲で存在する。
【0182】
硬化を促進するために、本発明による重合性組成物には少なくとも1種の重合開始剤も含まれている。本発明において有用な重合開始剤には、フリーラジカル熱重合開始剤及び/又は光重合開始剤の両方が含まれる。通常、重合開始剤及び/又は光重合開始剤は、ハードコート組成物の10重量%未満で、一実施形態においては5重量%未満で、別の実施形態においては2重量%未満で存在する。フリーラジカル硬化技術は当該分野で周知であり、例えば熱による硬化法並びに電子ビーム又は紫外放射線等の放射線による硬化法が挙げられる。フリーラジカル熱及び光重合技術に関する更なる詳細は、例えば米国特許第4,654,233号(グラント(Grant)ら);同第4,855,184号(クラン(Klun)ら);及び同第6,224,949号(ライト(Wright)ら)に見られる。
【0183】
有用なフリーラジカル熱開始剤としては、例えばアゾ、ペルオキシド、ペルスルフェート、及び、レドックス開始剤、並びに、これらの組み合わせが挙げられる。
【0184】
有用なフリーラジカル光開始剤としては、例えばアクリレートポリマーのUV硬化において有用であると知られているものが挙げられる。このような開始剤には、ベンゾフェノンとその誘導体;ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリールベンゾイン、α−ベンジルベンゾイン;ベンジルジメチルケタール(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown, New York)のチバスペシャルティケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から「イルガキュア(IRGACURE)651」の商品名で市販されている)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルなどのベンゾインエーテル;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(チバスペシャルティケミカルズ社から「ダロキュア(DAROCUR)1173」の商品名で市販されている)、及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(同様にチバスペシャルティケミカルズ社から「イルガキュア184」の商品名で市販されている)などの、アセトフェノンとその誘導体;同様にチバスペシャルティケミカルズ社から「イルガキュア907」の商品名で市販されている2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン;チバスペシャルティケミカルズ社から「イルガキュア369」の商品名で市販されている2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン;ベンゾフェノンとその誘導体及びアントラキノンとその誘導体などの芳香族ケトン;ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩;例えば、同様にチバスペシャルティケミカルズ社から「CGI 784 DC」の商品名で市販されているものなどのチタン錯体;ハロメチルニトロベンゼン;並びに、チバスペシャルティケミカルズ社から「イルガキュア1700」、「イルガキュア1800」、「イルガキュア1850」、「イルガキュア819」、「イルガキュア2005」、「イルガキュア2010」、「イルガキュア2020」及び「ダロキュア(DAROCUR)4265」の商品名で市販されているものなどのモノ−及びビス−アシルホスフィンが挙げられるがこれらに限定されない。二種以上の光開始剤の組み合わせを使用してもよい。更にミシシッピー州パスカグーラ(Pascagoula)のファーストケミカルコーポレイション(First Chemical Corporation)から市販品として入手可能な2−イソプロピルチオキサントン等の増感剤を「イルガキュア369」等の光開始剤と組み合わせて使用してもよい。
【0185】
表面層又はその下に設けられたハードコート層として用いる重合性コーティング組成物には、例えばコーティングをより良好にし性能を向上させて、異なる応用例に対する要求を満たすために、必要に応じて他の材料が含まれていてもよい。一実施形態においては、1又は複数のヒンダードアミン光安定剤(HALS)及び/又は1又は複数のホスホネート安定剤化合物を、重合性コーティング組成物に添加してもよく、これは、3M社に譲渡された米国特許第6,613,819号、「光安定物品(Light Stable Articles)」に記載されている。
【0186】
1種の又は混合された溶媒が存在することがコーティング配合物にとっては、特に金属酸化物ナノ粒子が存在する場合には、望ましい可能性がある。フリーラジカル架橋反応中で用いる有機溶媒は、次のような有機液体、すなわち反応体及び生成物に対して不活性であり、その他の場合には反応に悪影響を与えず、しかし配合物を安定にすること及びコーティングを高品質にすることに役立たなければならない任意の有機液体とすることができる。好適な有機溶媒は極性を持っており、例えば、アルコール(例えばメタノール、エタノール、カルビトール、及びイソプロパノール)、エステル例えば酢酸エチル、芳香族系溶媒例えばトルエン、エーテル(例えばジエチルエーテル、THF、及びt−ブチルメチルエーテル)、並びにケトン(例えばアセトン及びメチルイソブチルケトン)が含まれる。他の溶媒システムを用いてもよく、例えばアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホンである。溶媒の量は、一般に、反応物質及び溶媒の総重量の約20〜90重量%とすることができる。
【0187】
またコーティング配合物には、層に付随する静電気を小さくするために任意に取り入れることができる他の無機粒子を含むことができる。一般的に、金属酸化物を用いてこのような特性を実現することができる。また金属酸化物は、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどの材料を用いて表面処理することもできる。これらの粒子によって、帯電防止特性及び他の望ましい特性を有する構造を実現することができる。これは、フィルムを取り扱い及び洗浄する間に、静帯電並びにその結果としてのホコリ及び他の不要な残骸の接着によって生じる汚染を防止するのに望ましい可能性がある。このような実施形態の1つにおいては、このような金属酸化物粒子を、フルオロアクリレート含有ハードコートを炭化水素系ハードコートに付与した本発明の2層の実施形態の最上部の(薄い)層に取り入れる。充分な帯電防止の特性を与えるためにコーティング中にこのような粒子が必要となり得るレベル(通常25重量%以上)では、これらの濃く着色された粒子によって、望ましくない色が構造に付与される可能性がある。しかし2層のフッ素化ハードコート構成の薄い最上部層では、フィルムの光学及び透過特性に対するそれらの効果を最小限にすることができる。この実施形態において有用な伝導性の金属酸化物ナノ粒子の例としては、ニッサンケミカル(Nissan Chemical)から、商品名セルナックス(Celnax)CXZ−210IP及びCXZ−210IP−F2で販売されるアンチモン複酸化物が挙げられる。これらの粒子が本発明のコーティング中に適切なレベルで含まれていると、結果として生じるフッ素化ハードコートは、静電気減衰時間として約0.5秒未満を示すことができる。この試験において、サンプルを2つの電気接点の間に置いて、+/−5kVまで帯電させる。次にサンプルを接地した後、電荷がその初期値の10%まで減衰するのに必要な時間を測定して、静電気減衰時間として記録する。対照的に、非伝導ナノ粒子を含むフィルム構造は、静電気減衰時間>30秒を示す。
【0188】
前述したように、本発明の物品には任意に、中間体接着層270を含むことができる。中間体接着層270は、任意の有用な材料から形成することができる。いくつかの実施形態においては、中間体接着層270には、前述したように、感圧性接着剤材料を含むことができる。いくつかの実施形態においては、中間体接着層270には、硬化可能な接着剤例えば、熱、UV、又は水分硬化可能な接着剤などを含むことができる。中間体接着層270は、任意の有用な厚さ、例えば1〜100マイクロメートル、又は5〜50マイクロメートル、又は10〜50マイクロメートル、又は10〜30マイクロメートル等を有することができる。
【0189】
任意的な中間体ポリマー層260は、任意の有用な材料から形成することができる。いくつかの実施形態においては、中間体ポリマー層260には、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、フルオロポリマーなどを含むことができる。一実施形態においては、中間体ポリマー層260にはポリエチレンテレフタレートを含むことができる。中間体ポリマー層260は、任意の有用な厚さ、例えば5〜500マイクロメートル、又は10〜100マイクロメートル、又は25〜75マイクロメートル、又は25〜50マイクロメートル等を有することができる。
【0190】
また本発明の物品には、耐引裂性フィルム(図示せず)を含むこともできる。多くの実施形態において、耐引裂性フィルムには剛性のポリマーと延性ポリマーとの交互層が含まれる。いくつかの実施形態においては、耐引裂性フィルム160には、剛性のポリエステル又はコポリエステルと延性のセバシン酸ベースのコポリエステルとの交互層が含まれる。多くの実施形態において、剛性のポリエステル又はコポリエステル層は、少なくとも1つの方向に配向され及び、又は2軸配向されている。これらの耐引裂性フィルムの例は、米国特許第6,040,061号、同第5,427,842号、及び同第5,604,019号に記載されている。なおこれらの文献は、本明細書において参照により、本開示と矛盾しない程度まで取り入れられている。
【0191】
別の実施形態においては、耐引裂性フィルムは、所望のレベルの引裂抵抗をもたらす単一のモノリシックポリマーフィルムである。このようなフィルムは、当該技術分野において、「丈夫な」ポリマーフィルムとして知られている。強靱性は、ポリマーが、壊れる前に吸収することができる測定値のエネルギーとして記述することができ、丈夫なポリマーの例としては、ABS(ポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン))、LDPE(線状低密度ポリエチレン)、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ポリウレタンなどが挙げられる。付加的に、モノリシックポリマーフィルムの厚さを増すことによって、いくつかのポリマー(例えばPET及びナイロン)の用法を耐引裂性フィルムとして利用することが可能になる場合がある。
【0192】
「耐引裂性」によって大まかに示されているのは、本開示による多層フィルムによって、そのフィルムの1つの方向のグレーブス(Graves)面積が多層フィルムの剛性のポリマーのみを含む単層フィルム(単層フィルムは、多層フィルムの場合と同じ方法及び実質的に同じ厚さまで処理される)に対する同じ方向のグレーブス面積を超えることが実証されているということである。多くの実施形態において、耐引裂性太陽光制御フィルムでは、フィルムの1つの方向のグレーブス面積が少なくとも約40+0.4(x)kpsi%に等しいことが実証される。ここでxは、マイクロメートルで表したフィルムの公称厚さである。より具体的には、グレーブス面積は、試験の間に、フィルムが受ける応力(kpsiで測定される)対フィルムが受ける歪み(グレーブス伸びによって%で測定され、以下で更に十分に規定される)のグラフプロットにおける曲線の真下の面積を数学的に積分することによって得られる。試験では、グレーブス面積試験用に専用に成形されたフィルムサンプルを、対向するつかみ具の間にクランプして一定速度で離れるように動かし、引裂応力を小さい面積に集中させて行なう。したがってグレーブス面積は、フィルムの引っ張り係数(すなわち、フィルムの剛性及び寸法安定性)と引裂きの進行にフィルムが耐える能力との組み合わせ測定値である。その結果として、グレーブス面積は、フィルムを破損させるのに必要な全エネルギーの測定値、すなわちフィルムがエネルギーを吸収する能力とみなしてもよい。多くの実施形態において、耐引裂性太陽光制御フィルムは望ましくは、グレーブス面積試験の間に示すグレーブス破断点伸びが、少なくとも20%、又は少なくとも40%である。引裂抵抗太陽光制御フィルムは、ASTM試験方法D1004(グレーブス引裂き試験としても知られる)によって測定してもよい。
【0193】
加えて、本開示による多くの多層又はモノリシックの耐引裂性フィルムでは、引っ張り係数(従来の引張試験で測定される)が、フィルムの少なくとも1つの方向において、少なくとも1,208MPa(175kpsi)、又は少なくとも1,656MPa(240kpsi)、又は少なくとも3,105MPa(450kpsi)であることが実証される。
【0194】
耐引裂性多層フィルムの厚さ及び耐引裂性多層フィルムを構成する個々の層の厚さは両方とも、広い範囲に渡って変えてもよい。これらのフィルムの公称厚さは、7〜500マイクロメートル、又は15〜185マイクロメートルとすることができる。剛性のポリエステル又はコポリエステルの個々の層の平均の公称厚さを、少なくとも約0.5マイクロメートル、又は0.5〜75マイクロメートル、又は約1〜25マイクロメートルとすることができる。いくつかの実施形態においては、延性のセバシン酸ベースのコポリエステル層は、剛性のポリエステル/コポリエステル層よりも薄い。延性の材料層は、平均の公称厚さが約0.01マイクロメートル〜約5マイクロメートル、又は約0.2〜3マイクロメートルの範囲であってもよい。同様に、個々の層の正確な順番は重要ではない。また層の総数は実質的に変わってもよい。多くの実施形態において、耐引裂性多層フィルムには少なくとも3層、又は5〜35層、又は10〜15層が含まれる。
【0195】
実験
A.材料
特に断らない限り、実施例で用いる場合、「HFPO−」は、メチルエステルF(CF(CF)CFO)xCF(CF)C(O)OCHの末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−を指し、これは、米国特許第3,250,808号(ムーア(Moore)ら)(この開示は本明細書において参照により取り入れられている)に報告される方法に従って、分留による精製を用いて調製することができる。「−HFPO−」は、CH(O)CCF(CF)(OCFCF(CF))x1OCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)x2CF(CF)COOCH(CHO(O)C−HFPO−C(O)OCH)を指す。これは、重合開始剤としてKF又はCsFが存在する状態でヘキサフルオロプロペンオキシドによってFC(O)CFCFC(O)Fのオリゴマー化を、米国特許第3,250,807号(フリッツ(Fritz)ら)に報告される方法に従って行なってHFPOオリゴマービス酸フロリドを作製し、その後にメタノリシスと分留による低沸点材料の除去による精製とを、米国特許第6,923,921号(フリン(Flynn)ら)に記載されるように行なって調製する。前述した両方の特許の開示は、本明細書において参照により取り入れられている。
【0196】
HFPO−OH、HFPO−C(O)NHCHCHOHは、米国20060148350の段落[0058]に記載される公開特許に従って、HFPO−C(O)OCH及びNHCHCHOHから調製される。平均分子量は約1344である。HFPO−ジオール、HOCHCHNHC(O)−HFPO−C(O)NHCHCHOHは、出願特許である米国特許出願番号11/277162(2006年3月22日出願)、発明の名称「(メタ)アクリル基を有するペルフルオロポリエーテルウレタン添加剤及びハードコート(PERFLUOROPOLYETHER URETHANE ADDITIVES HAVING(METH)ACRYL GROUPS AND HARD COATS)」の調製番号27に従って、CHO(O)C−HFPO−C(O)OCH及びNHCHCHOHから調製される。電磁攪拌棒を備え付けた200mL丸底フラスコに、3.81g(0.0624mol)のエタノールアミンを充填した後、乾燥空気下で摂氏75度まで加熱した。30.0g(0.240mol、1250MW)のCHO(O)C−HFPO−C(O)OCHの充填物を、等圧滴下漏斗を介して40分間加えた後、反応を約18時間加熱状態に置く。フーリエ変換赤外分光法(FTIR)分析によれば、エステル信号(−CO−)が消滅したときに、アミド−C(O)NH−が形成された。次に50.7gのメチルt−ブチルエーテルを反応に加えて作った溶液を、20mLの2N水性HClを用いて連続して洗浄した後、20mLの水を用いて3回洗浄した。次に溶液を、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、摂氏75度の水浴中でアスピレータ圧力においてロータリーエバポレーター上で濾過及び濃縮して、濃いシロップ剤として生成物を形成した。平均分子量は約1308である。
【0197】
N100、ポリイソシアネートデスモジュール(商標)(デス(Des))N100を、バイエルポリマーズLLC(ペンシルベニア州ピッツバーグ)から入手した。
【0198】
N3300、ポリイソシアネートデスモジュール(商標)3300を、バイエルポリマーズLLC(ペンシルベニア州ピッツバーグ)から入手した。
【0199】
SR444C、ペンタエリスリトールトリアクリレート(「PET3A」)は商品名「SR444C」であり、ペンシルベニア州エクストンのサートマー社から入手した。
【0200】
SR351は、トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)は商品名「SR351」であり、ペンシルベニア州エクストンのサートマー社から入手した。
【0201】
NHSi、HNCHCHCHSi(OCHは、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)(ウィスコンシン州(Wisconsin)ミルウォーキー(Milwaukee))から販売される。
【0202】
D−1173、ダロクア(Darocur)(商標)1173は、2−ヒドロキシ−2メチル−1フェニル−プロパン−1ワン=光開裂開始剤を指しており、チバスペシャルティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)によって製造される。
【0203】
I−184、使用したUV光開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンは、ニューヨーク州タリータウンのチバスペシャルティプロダクツ(Ciba Specialty Products,Tarrytown,NY)から入手し、これは商標名「イルガキュア184」で販売されていた。
【0204】
I−907、使用した光開始剤、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オンは、ニューヨーク州タリータウンのチバスペシャルティプロダクツ(Ciba Specialty Products,Tarrytown,NY)から入手し、これは商標名「イルガキュア907」で販売されていた。
【0205】
メチルパーフルオロブチルエーテル(HFE7100又は4O1)を、3M社(ミネソタ州(Minnesota)セントポール)から入手した。
【0206】
DBTDL、ジブチル錫ジラウレートを、シグマアルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手した。
【0207】
特に断らない限り、「MW」は分子量を指し、「EW」は当量を指す。更に、「℃」を「摂氏度」と交換可能に用いてもよく、「mol」は、特定の材料のモルを指し、「eq」は特定の材料の当量を指す。更に、「Me」はメチル基を構成しており、「CH」と交換可能に用いてもよい。
【0208】
ATO−1は、62.5%ATO(販売元はインフラマット社(Inframat Corporation))、15%HDDA(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、SR238、販売元はサートマー)、15%PETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート、PETA−K、販売元はUCB−ラドキュア(Radcure))、及び7.5%ポリマー分散剤(ソルプラス(Solplus)D510、販売元はオハイオ州クリーブランド(Cleveland)、ノベオン社(Noveon Inc.))を含む酸化アンチモンスズ(ATO)コーティング配合物を指す。分散を、モリネックス(MoliNEx)(商標)偏心ディスクと1リットルのステンレス鋼チャンバとを有するネッツ(Netzsch)LME−1ディスクミル(ネッツ社(Netzsch Incorporated)、ペンシルベニア州エクストン)を用いて8時間、粉砕した。最終的な粒径は、〜60nm(PDI=0.21)であり、これはゼータサイザーナノ(Zetasizer Nano)ZS(マルバーンインスツルメンツ社(Malvern Instruments Ltd)、英国(United Kingdom)ウースターシャー(Worcestershire))によって測定した。次にATO−1を、1−メトキシ2−プロパノール中の配合物の45%溶液を作ることによって作製した。溶液を希釈して、メチルイソブチルケトンを有する30%配合物にし、2%ダロクア(Darocur)(商標)1173(チバスペシャルティケミカルズ、ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown))フォト重合開始剤を添加した。
【0209】
ATO−2は、80gTRBペースト6070(アドバンストナノプロダクツ(Advanced Nano Products)(韓国(S.Korea))から購入)を含むATOコーティング配合物、並びに24.58%HDDA、1.59%チヌビン123、1.11%イルガキュア819、1.11%イルガキュア184、0.26%FA−1、及び71.36%MEKを含む20gATOプレミックス配合物を指す。
【0210】
溶媒イソプロパンアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、酢酸エチル(EtOAc)、及びN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)は、アルドリッチから販売される。
【0211】
MeFBSEA、CSONMeCOC(O)CH=CHは、WO 01/130973の実施例2−Bに記載された手順に従って調製され、3M社から販売される。
【0212】
B.添加剤の調製
FA−1、HFPO−OH/100/SR−444C(15/100/88.5)の調製
電磁攪拌棒を備え付けた500mL丸底2首フラスコに、25.00g(0.131eq、191EW)のDes N100、26.39g(0.0196eq、1344EW)のF(CF(CF)CFO)6.85CF(CF)C(O)NHCHCHOH、及び109.62gのMEKを充填し、かき混ぜて均質な溶液を生成した。フラスコを、摂氏80度の槽の中に置き、ジブチル錫ジラウレート触媒を2滴充填し、凝縮器を取り付けた。反応は、最初は濁っていたが、2分以内に透明になった。約1.75時間経ってから、フラスコを槽から取り出して、失われた溶媒を補償するために2.42gのMEKを添加した。2.0gのサンプルをフラスコから取り出して、反応の(1−(2.0/161.01))又は0.9876重量分率を残し、57.51g(58.23gの98.76%)(0.116mol、494.3当量)のSR−444Cを反応に添加した後、摂氏63度の槽内に置いた。約5.25時間後、FTIRによれば、2273cm−1におけるイソシアネート吸収は見られず、失われた溶媒を補償するために0.56gのMEKを添加して、材料を50%固形物にした。生成物の計算された重量%Fは15.6%Fである。
【0213】
FA−2、HFPO−OH/N100/SR−444C/NHSi(5/30/20/5)の調製
撹拌棒を備え付けた500mL丸底フラスコに、5.73g(30meq)のDes N100、37gのMEK、15g COCH、2滴のDBTDL、6.15g(5meq)のHFPO−C(O)のNHCHCHOH(1229等価分子量)、及び0.05gのBHTを充填し、摂氏60度の油浴の中に置いた。1時間後、0.98g(5meq)のHN(CHSi(OCHを添加し、それから10分後に4.46g(20meq、494.3当量)のSR444Cを添加した。25%溶液において5.75時間の総反応時間の後、FTIRによれば、反応混合物には残留イソシアネートは見出されなかった。
【0214】
FA−3、HFPO−OH/N100/SR−444C(15/100/85)の調製
電磁攪拌棒を備え付けた500mL丸底フラスコに、25.0g(100モルパーセント)(0.131eq、191EW)のDes N100、55.5g(85モルパーセント)(0.087eq、494.3EW)のサートマーSR444C、11.5mg(15モルパーセント)のMEHQ、及び126.77gのメチルエチルケトン(MEK)を充填した。反応をかき混ぜてすべての反応体を溶解させ、フラスコを摂氏60度の油浴中に置いて、乾燥空気下で凝縮器を取り付けた。ジブチル錫ジラウレートを2滴、反応に加えた。1時間後、58.64g(0.0436eq、1344EW)のF(CF(CF)CFO)6.85CF(CF)C(O)NHCHCHOHを、添加漏斗を介して約75分間に渡って反応に添加した。反応をFTIRによってモニタしたところ、反応の約5時間後に2273cm−1において小さいイソシアネート吸収が見られたが、反応の7.5時間後にはイソシアネート吸収は見られなかった。材料を、MEK中の50%固形物溶液として用いた。
【0215】
FA−4、HFPO−ジオール/N3300/SR−444C(5/30/20)の調製
240mLボトルに、5.79gのDes N3300(EW約193、約30ミリ当量NCO)、3.35gのHFPO−ジオール(MW約1341、10meq OH)、9.89gのSR−444C(EW約494.3、約20ミリ当量OH)、5滴のジブチル錫ジラウレート触媒、及び52gのMEK(約30%固形物)を、窒素下で充填した。ボトルを密封した後で、溶液を、電磁攪拌棒付きの油槽中で摂氏70度において10時間反応させた。室温に放置したら、沈殿物が少量だけ形成された。FTIR分析では、未反応の−NCOの信号は見られなかった。
【0216】
FA−5、HFPO−C(O)NHCHCHCHNHCH及びTMPTAのほぼ1:1モル比の付加物を、米国特許第7,101,618号の段落[0110]に記載された手順に従って調製した。
【0217】
FC−6、HFPO−C(O)N(H)CHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CHの調製
FA−6は、米国特許出願番号11/277162(2006年3月22日出願)、発明の名称「(メタ)アクリル基を有するペルフロロポリエーテルウレタン添加剤及びハードコート(PERFLUOROPOLYETHER URETHANE ADDITIVES HAVING(METH)ACRYL GROUPS AND HARD COATS)」の調製番号25に記載された手順に従って、HFPO−C(O)NHCHCH(OH)CHOH及びCH=CHC(O)Clから調製した。HFPO−C(O)NHCHCH(OH)CHOHを、米国特許公開番号2005/0249956の調製番号6又は段落[0066]に従って調製した。
【0218】
オーバーヘッド攪拌棒を備え付けた250mLの3首の丸底フラスコに、63.5g(0.05mol)のHFPO−C(O)NHCHCH(OH)CHOH、9.56g(0.946mol)のトリエチルアミン、及び100gの酢酸エチルを充填した。このフラスコに、室温において11.26g(0.0945mol)のアクリロイル塩化物を等圧滴下漏斗を用いて12分間に渡って添加したところ、反応温度は25から上昇して最大で40℃に達した。滴下漏斗を5gの付加的な酢酸エチルを用いてすすぎ洗いした。この酢酸エチルが反応に添加された後、40℃の槽の中に置いて、2時間10分の更なる時間、反応させた。次いで有機層を連続的に65gの2%硫酸水、65gの2%重炭酸ナトリウム水及び65gの水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過して、16mgのメトキシヒドロキノン(MEHQ)で処理し、そして45℃でロータリーエバポレーターにより濃縮して62.8gの粗製生成物を得た。次に、この材料の35gについてクロマトグラフ分析を、600mLのシリカゲル(SX0143U−3、等級62、60〜200メッシュ、EMサイエンス(EM Science))上で、25:75酢酸エチル、溶離剤としてヘプタンを用いて行なった。最初の2つの部分は体積が250mL、残りの部分は体積が125mLであった。部分4〜10を混合して、これらの部分に8mgのMEHQを添加した後、ロータリーエバポレーター上で55℃において濃縮して、58.5%の計算重量%のフッ素を有する生成物を形成した。
【0219】
FA−7、(ArO)CHCH(OAr)CHNHC(O)−HFPO−C(O)NHCHCH(OAr)CHOArの調製
(ArO)CHCH(OAr)CHNHC(O)−HFPO−C(O)NHCHCH(OAr)CHOArの調製は、CHOC(O)−HFPO−C(O)OCHから(HO)CHCH(OH)CHNHC(O)−HFPO−C(O)NHCHCH(OH)CHOHへの移行を、NHCHCH(OH)CHOHとの反応、その後にCH=CHCOClとの反応を、米国特許出願番号11/277162(2006年3月22日出願)(この開示は本明細書において参照により取り入れられている)の調製番号#26に記載された手順に従って起こさせることによって、行なった。HFPO−C(O)NHCHCH(OAr)CHOArをHFPO−C(O)OCHから調製する際、CHO(O)C−HFPO−C(O)OCHをHFPO−C(O)OCHの代わりに用いて、NHCHCH(OH)CHOHと反応させ、その後にCH=CHCOClと反応させた。
【0220】
FA−8、1官能性パーフルオロポリエーテルメタクリレート、HFPO−C(O)N(H)CHCHOC(O)C(CH)=CHの調製
この化合物は、(HFPO)k−メタクリレートの合成に関する2002年5月24日出願の「フッ素化ポリマーを含むフルオロケミカル組成物及びそれによる繊維状基材の処理(Fluorochemical Composition Comprising a Fluorinated Polymer and Treatment of a Fibrous Substrate Therewith)」と題された米国特許出願公開第2004/0077775号明細書に記載の手順と同様の手順によって、F(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)NHCHCHOH(x=6.8、分子量1344)を、F(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)NHCHCHOH(x=10.5)の代わりに用いた。
【0221】
FA−9MeFBSE−MDI−HEA(C4MHとも言う)の調製
SON(CH)CO−CONHCCHNHCO−OCOCOCH=CH(MeFBSE−MDI−HEA)を、米国特許出願公開番号2005/0143541の段落0104に記載された手順で調製した。
【0222】
C.試験方法
接触角の決定方法
水及びヘキサデカンの接触角の測定にかける前に、IPAの中でコーティングを手で1分間かけて揺することにより洗浄した。マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica,MA)のミリポアコーポレーション(Millipore Corporation)から得られた濾過システムを通して濾過した、受け取ったままの状態での試薬グレードのヘキサデカン「油」(アルドリッチ(Aldrich))及び脱イオン水を用い、マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica,MA)のASTプロダクツ(AST Products)から商品番号VCA−2500XEとして入手可能なビデオ接触角分析計により、測定を行った。報告される値は、滴の右側及び左側で測定された少なくとも3滴の測定値の平均である。液滴容積は静的測定に関して5μLであり、前進及び後退に関して1〜3μLであった。ヘキサデカンの場合には、前進接触角及び後退接触角のみを報告しているが、その理由は、静的接触角と前進接触角がほぼ同じであることが見出されたからである。
【0223】
マーカー撥性の測定方法
この試験を行なうために、シャーピーパーマネントマーカー(Sharpie Permanent Marker)、ビザビパーマネントオーバーヘッドプロジェクトペン(Vis-a-vis Permanent Overhead Project Pen)又はキングサイズパーマネントマーカー(King Size Permanent Marker)(すべて米国サンフォード(Sanford)より市販されている)の1つをマーカーとして使用した。最初に、選択されたマーカーの先端をかみそり刃で切断して、幅広く平坦なマーキングチップを提供した。続いて、該マーカー及びガイドとしての直線定規の端を使用して、PET基材上に塗布された試料コーティングの上に、概ね速度15cm/秒の速度にて直線を引いた。コーティング上に引かれた直線の外観を観察し、マーカーに対する試料コーティングの撥性の程度を反映するために数字を割り当てた。割り当てられた数字の1は、卓越した撥性を示し、割り当てられた数字の5は、低い撥性を示す。使用したマーカーの種類に応じて、結果をシャーピー(Sharpie)試験、ビザビ(Vis- a-vis)試験又はキング(King)マーカー試験として報告した。溶媒抵抗を決定する方法。この試験のため、メチルエチルケトン(MEK)又はその他の有機溶媒の1滴(直径約1.25cm)を、PET基材上に塗布された試料コーティング上に置き、室温にて自然乾燥させた。その後、試料コーティングの外観を目視観察し、溶媒撥性が低いことを示す「かすみ(Haze)」(H)、又は溶媒撥性が良好なことを示す「透明(Clear)」(C)のいずれかで格付けした。更に、上記の「マーカー試験方法」を使用して、滴下MEK又は有機溶媒撥性試験を実施し、そして1〜5の範囲のマーカー撥性値を割り当てた箇所で、シャーピー試験を繰り返した。
【0224】
スチールウール試験
硬化させたフィルムの摩耗抵抗性は、スタイラス(ゴムガスケットの手段により)に固定したチーズクロス又はスチールウールをフィルムの表面に対して振動させることが可能な機械装置を使用することにより、コーティング方向に対してクロスウェブに試験した。スタイラスを、10cmの掃引幅で、3.5拭取り/秒の速度で振動させたが、ここで「拭取り(wipe)」という用語は、10cmの1回の移動と定義する。スタイラスは、平坦で円筒状の幾何学的形状を有し、直径1.25インチ(3.2cm)であった。その装置にはプラットホームが備え付けられており、その上におもりを置いて、フィルムの表面に直角なスタイラスから加わる力を増やした。チーズクロスは、ペンシルバニア州ハッツフィールド、EMSアクイジション社(EMS Acquisition Corp.,Hatsfield,Pennsylvania)の事業部の一部門である、EMSパッケージング、サマーズオプティカル(Summers Optical,EMS Packaging)から「ミルスペック(MIL SPEC)CCC−c−440生成物(PRODUCT)番号S12905」の商品名で入手した。チーズクロスは折りたたんで12層とした。スチールウールは、ワシントン州ベリングハム(Bellingham)のホーマックスプロダクツ(Homax Products)の一部門であるローデス−アメリカン(Rhodes-American)から、商品名「#0000−スーパーファイン」で入手し、入手したままのものを使用した。それぞれの実施例では1個の試料について試験したが、スタイラスに加えた重量(グラム)及び試験の際の拭取り数を報告する。目に見える引っかきがなかったことは、表において「NS」と報告されている。
【0225】
D.ハードコート組成物の調製及び結果として生じるハードコート層
ハードコート組成物を、下表に概略的に記載した重量%比で調製した。太陽光制御多層フィルム上へのコーティングは、巻線ロッドを用いて約4ミクロンの乾燥厚さにおいて行なった。コーティングを約1〜2分間摂氏110度のオーブン中で乾燥させ、次いで紫外線(「UV])光硬化デバイスに連結されたコンベヤーベルト上に置き、そして0.10m/s(20フィート/分)でフュージョン(Fusion)500ワットHバルブ(500W)を使用してUV硬化させた。次にコーティングを前述の試験方法を用いて分析した。
【0226】
1.ATOハードコート組成物中の添加剤としてのウレタン含有HFPO多価アクリレート
1〜2%D−1173(MEK中の10%溶液)を、30%ATO−1ナノ粒子ハードコート分散に添加して、MEKで希釈した。フルオロアクリレート添加剤、FA−1、FA−2、FA−3及びFA−4を前述のように調製し、MEK、EtOAc、又はMEK/混合溶媒で希釈して30%溶液にした後、ATO溶液に異なる比率で添加した。30%溶液を太陽光制御多層膜上に、10番のワイヤロッドを用いてコーティングした。コーティングされたフィルムを、110℃のオーブン内で〜2分間乾燥させた後、N中で、H−バルブを0.10m/s(20フィート/分)にした状態でUV硬化した。表Iに、詳細なコーティング配合物及びコーティング品質を記録した。対照−1は、わずかなフルオロアクリレート添加剤も含まれない(0%FA)純粋なATO−1配合物である。対照−2は、ATO−2に0.06%のFA−1添加剤を加えた配合物であり、この配合物を、押出ダイコーティングプロセスを用いてコーティングして、フュージョン(Fusion)H及びDバルブ(60%パワー)を0.25m/s(50フィート/分)で用いて硬化して、ほぼ2.6ミクロン厚の乾燥したコーティングを得た。ハードコートコーティングプロセスに続いて、感圧性接着剤(PSA)コーティングをハードコート表面とは反対側の表面に施して、そこにシリコーン剥離ライナーを積層した。PSAコーティングを、ほぼ8.6g/m(0.8g/ft)の乾燥コーティング重量で施した。
【0227】
【表1】

【0228】
マーカー忌避剤及び接触角を前述のように測定した。表Iの配合物から得られた結果を表IIにまとめる。
【0229】
【表2】

【0230】
上記結果から、0.25〜1%のFA−1によって、容易クリーニング性能に対する撥性について望ましい結果が得られることが分かる。
【0231】
溶媒抵抗及び対応するシャーピーマーカー試験を前述のように行なった。その結果を表IIIに記録する。
【0232】
【表3】

【0233】
ハードコートはすべて、優れた溶媒抵抗を示しており、選択した溶媒については外観変化は観察されなかった。これによって、コーティング溶剤保有洗浄配合物を用いる洗浄に対して耐性があることが示された。シャーピーマーカー撥性もすべて、溶媒試験後に残っていた。
【0234】
本発明の少なくとも一部の実施形態によって示される溶媒抵抗、マーカー撥性、及び機械的耐久性におけるこれらの改善は、少なくとも部分的には、本発明の組成物から形成されるハードコート層における架橋度の程度に起因する場合がある。一般的に、このような架橋度は、非UV硬化重合プロセスからは達成不可能である。高い水/油接触角及び良好な溶媒抵抗は両方とも、高いマーカー撥性特性を実現する上で有用であり得ることも提案されている。
【0235】
耐久性試験を前述のように行なった。結果を下表IVに示す。
【0236】
【表4】

【0237】
スチールウール試験は、3.2cm(1.25インチ)スタイラス、500g重量、及び300回こすりによって行なった。**30番ワイヤロッドを用いてコーティングした。
【0238】
2.ATOハードコート組成物中の添加剤としてのウレタン含有HFPO多価アクリレート
水及びヘキサデカンの接触角を、フルオロアクリレート非ウレタン添加剤を含むハードコート組成物に対して試験した。特定の配合物及び試験結果を、下表V、VI、VII、及びVIIIに見ることができる。
【0239】
一般的に、添加剤(FA−5、FA−6、FA−7、及びFA−8)をMEK中で希釈して、10重量%溶液を作製した。ATOをカルビトールによって希釈して、1重量%D−1173(フォト重合開始剤)を含む30%溶液を作製した。次に添加剤溶液及びATO溶液を、以下のそれぞれの表に示す比率で混合した。次に接触角及びマーカー撥性試験を行なった。結果を以下に示す。
【0240】
【表5】

【0241】
【表6】

【0242】
【表7】

【0243】
【表8】

【0244】
表V、VI、VII、及びVIIIに見られるように、試験したフルオロアクリレート非ウレタン添加剤はすべて、望ましい特性(例えばアセトン、トルエン、IPA、MIBK、EtOAc及びDMFに対する溶媒抵抗、及びスチールウッド研磨剤試験に対する良好な耐久性)を有するハードコート層を生成した。
【0245】
3.UV硬化可能なATOハードコートに対する添加剤としてのMeFBSE−MDI−HEA(FA−9)
ATO−1ナノ粒子ハードコートを1%D−1173の光重合開始剤(MEK中の10%溶液)と混合した後に、MEKで希釈して20%溶液にした。フルオロアクリレート添加剤を、ヒドロシリル化触媒、プラチナ−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(CAS#68478−92−2)(0.015重量%)とともに添加した後、ヘプタンで希釈して10%溶液にした。ATO/添加剤の〜20%溶液を、異なる重量比(下表Vに基づいて)で処方して、PETフィルム上に10番のワイヤロッドを用いてコーティングした。コーティングされたフィルムを、110℃オーブン中で5分間乾燥させた後、N中で、H−バルブ(100%パワー)を0.10m/s(20フィート/分)にした状態でUV硬化した。表IXに、詳細なコーティング配合物、コーティング品質を記録した。表X及びXIに、マーカー忌避剤、接触角データ、及び溶媒耐性の結果をまとめる。
【0246】
【表9】

【0247】
【表10】

【0248】
【表11】

【0249】
4.太陽光制御物品の特性
共押出成形プロセスを通して、連続した平坦フィルム製造ラインで、約446の層を含む多層フィルムを製造した。この多層のポリマーフィルムは、coPEN及びPETG(イーストマンケミカルズ(Eastman Chemicals)から販売される)から作製した。coPENを、90%PEN及び10%PETの開始モノマーを用いて重合した。フィードブロック法(例えば米国特許第3,801,429号によって記載されるもの)を用いて、押出物を通して層間でほぼ線形の層厚さ勾配を有する約223の光学層を生成する。
【0250】
coPENをフィードブロックへ、押出成形機を用いて約16.6g/s(132lb/hr)の速度で送出し、またPETGを約20.2g/s(160lb/hr)で送出した。PETGの一部を、約4.03g/s(32lb/hr)の全流量で、押出物の各側面上で保護境界層(PBL)として用いる。そして材料ストリームを、増倍器設計比が約1.25の非対称2倍増倍器に通す。増倍器の考え方及び機能は、米国特許第5,094,788号及び同第5,094,793号に記載されている。増倍器比率は、主導管内で生成される層の平均層厚さを、副導管内での層の平均層厚さで割ったものとして定義される。この増倍器比率は、2組の223の層によって形成される2つの反射率バンドの小さいオーバーラップが得られるように選択した。各組の223の層は、フィードブロックによって形成されるおおよその層厚さプロファイルを有しており、全体的な厚さ倍率は、増倍器及びフィルム押し出し速度によって決定される。増倍器の後に、第3の押出成形機から供給されるスキン層を約9.07g/s(72lbs/時間)(全体)で加えた。次に材料ストリームを、フィルムダイに通して、水冷式の鋳造ホイール上に送った。
【0251】
PETGメルトプロセス機器を、約260℃(500°F)に維持し、coPEN(光学及びスキン層の両方)メルトプロセス機器を約274℃(525°F)に維持し、フィードブロック、増倍器、スキン層メルトストリーム、及びダイを、約274℃(525°F)に維持した。
【0252】
この実施例に対するフィルムを作製するために用いたフィードブロックは、等温条件の下で最も厚い層と最も薄い層との比が1.3:1であるような線形層厚さ分布を与えるように設計した。この層プロファイルにおける誤差は、米国特許第6,827,886号(本明細書において参照により取り入れられている)に記載されるように軸方向のロッドヒータープロファイルを用いて補正する。鋳造ホイール速度を、最終的な膜厚、したがって最終的なバンドエッジ位置の正確な制御が行なわれるように調整した。
【0253】
鋳造ホイール上の入口水分温度は約摂氏7°であった。高電圧ピン留めシステムを用いて、押出物を鋳造ホイールにピン留めした。ピン留めワイヤは約0.17mmの太さであり、約6.5kVの電圧を印加した。ピン留めワイヤを、オペレータが手動で、鋳造ホイールに対する接触点でのウェブから約3〜5mmに配置して、鋳造ウェブに対して滑らかな外観を得た。鋳造ウェブを、従来の連続的な長さ配向機(LO)及び幅出機器によって連続的に配向した。ウェブを、約132℃(270°F)において約3.8の延伸比に長さ配向した。フィルムを、幅出機において約124℃(255°F)に約15秒間、予熱して、132℃(270°F)において約3.5の延伸比となるように横方向に引き出した。フィルムを、幅出機オーブン内で約238℃(460°F)の温度で約30秒間ヒートセットした。完成したフィルムの最終的な厚さは約0.009cm(0.0035インチ)であった。
【0254】
多層フィルムは、前述のように調製した後、上表Iで参照した「対照−2」配合物によってコーティングして、乾燥及び硬化を、前述の通りに行なった。物品の光学透過及び反射スペクトルを、ラムダ(Lambda)19分光光度計(パーキンエルマ(Perkin Elmer)、マサチューセッツ州ボストン(Boston))を用いて測定した。次にスペクトルを、オプティックス(Optics)4及びウィンドウズ(登録商標)5.2プログラムにインポートした。これらは、国立ローレンスバークレー研究所(Lawrence Berkeley National Laboratories)から入手される、グレージングシステムの熱及び光学特性の分析用である。プログラムは、http://windows(登録商標).lbl.gov/software/からダウンロードすることができる。
【0255】
太陽熱利得係数(「SHGC」)は、窓を通って入る入射太陽放射の割合であり、直接透過したもの及び吸収後に内部に放出されたものの両方である。SHGCは、0〜1の数として表現されている。窓のSHGCが低いほど、透過する太陽熱は小さい。表XIIに、物品の日射性能を示す。
【0256】
【表12】

【0257】
本発明は、上に記載した特定の実施例に限られるとみなすべきではなく、添付の特許請求の範囲で明確に提示されている通り、本発明のあらゆる態様を網羅していると理解するべきである。様々な修正、同等の方法、及び、本発明を適用可能である多くの構造は、本発明が対象とする技術分野の当業者が本発明の明細書を検討することにより、容易に明らかになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、
多層フィルム上に配置されたハードコート層であって、前記ハードコート層はその内部に分散された赤外光吸収性ナノ粒子を含み、更に前記ハードコート層は70度を超える水の静的接触角と、50度を超えるヘキサデカンの静的接触角を有するハードコート層と、を備える物品。
【請求項2】
更に多層フィルム上に配置される感圧性接着剤層を備え、感圧性接着剤層は、ハードコート層とは反対側の多層フィルムの表面上に配置される請求項1に記載の物品。
【請求項3】
更に感圧性接着剤層上に配置される剥離ライナーを備え、感圧性接着剤層は剥離ライナーと多層フィルム層との間に配置される請求項2に記載の物品。
【請求項4】
剛性のポリエステル又はコポリエステルと延性のセバシン酸ベースのコポリエステルとの交互層を有する耐引裂性多層フィルムを更に備える請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記ハードコート層は90度を超える水の静的接触角を有する請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記ハードコート層は100度を超える水の静的接触角を有する請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記ハードコート層は60度を超えるヘキサデカンの静的接触角を有する請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記ハードコート層は、
フルオロ含有部分を含む少なくとも1種の硬化可能かつ架橋可能な化合物と、
少なくとも1種の硬化可能かつ架橋可能な非フッ素系化合物と、
赤外線吸収性材料と、
重合開始剤と、を含む混合物の反応生成物を含む請求項1に記載の物品。
【請求項9】
赤外線吸収性材料は金属酸化物ナノ粒子である請求項8に記載の物品。
【請求項10】
金属酸化物ナノ粒子は、酸化アンチモンスズ、酸化インジウムスズ、又はそれらの組み合わせである請求項9に記載の物品。
【請求項11】
第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、
多層フィルム上に配置されたハードコート層であって、
少なくとも1種の硬化可能かつ架橋可能なフルオロアクリレート含有化合物と、
少なくとも1種の硬化可能かつ架橋可能な非フッ素系化合物と、
赤外光吸収性ナノ粒子と、
重合開始剤と、を含む混合物の反応生成物を含むハードコート層と、を含む物品。
【請求項12】
フルオロ部分はフルオロアルキル部分又はパーフルオロポリエーテル部分である請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記フルオロ部分は、
a)F(RfcO)2d−又は−C2dO(RfcO)2d(ここで、各Rfcは独立に、1〜6の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基を表し、各xは独立に、2以上の整数を表し、C2dは直鎖又は分枝鎖とすることができ、dは1〜8の整数である)、又は、
b)C2d+1(ここで、dは1〜8である)、又は、
c)CFCFCFCHFCF−;CFCHFO(CF−;(CFNCFCF−;CFCFCFOCFCF−;CFCFCFOCHCF−;n−COCF(CF)−;H(CFCF−;又はn−COCF(CF)CFOCF−である請求項11に記載の物品。
【請求項14】
フルオロアクリレート含有化合物は、
(RQXC(O)NH))−R−(NHC(O)OQ(A)(化学式1)であり、
ここで、Rは多価イソシアネートの残基であり、
XはO、S、又はNRであり(ここで、RはH又は1〜4の炭素原子の低級アルキルであり)、
は、F(RfcO)2d−の化学式を含む基からなる一価のパーフルオロポリエーテル部分であり
(ここで、各Rfcは独立に、1〜6の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基を表し、
xは独立に、2以上の整数を表し、
2dは直鎖又は分枝鎖とすることができ、dは1〜8の整数である)、
Qは独立に、価数が少なくとも2の連結基であり、
Aは(メタ)アクリル官能基−XC(O)C(R)=CHであり(ここで、Rは、1〜4の炭素原子の低級アルキル又はH若しくはFであり、及びXは前述のように規定される)、
mは少なくとも1であり、
nは少なくとも1であり、
aは1〜6であり、
但し、m+nは2〜10であり、添え字m及びnによって参照される各単位は、R単位に結合される請求項11に記載の物品。
【請求項15】
フルオロアクリレート含有化合物は、
【化1】

である請求項14に記載の物品。
【請求項16】
フルオロアクリレート含有化合物は、
f2−[Q−(XC(O)NHQOC(O)C(R)=CH(化学式2)であり、
ここで、Rf2は、化学式F(RfcO)2d−を含む基からなる一価のパーフルオロポリエーテル部分か、又は化学式−C2dO(RfcO)2d−を含む基からなる二価のパーフルオロポリエーテル部分であり
(ここで、各Rfcは独立に、1〜6の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基を表し、
xは独立に、2以上の整数を表し、
2dは直鎖又は分枝鎖とすることができ、dは1〜8の整数である)、
Qは独立に、価数が少なくとも2の連結基であり、
XはO、S、又はNRであり(ここで、RはH又は1〜4の炭素原子の低級アルキルであり)、
は、1〜4の炭素原子の低級アルキル又はH若しくはFであり、
aは1〜6であり、
gは1又は2である請求項11に記載の物品。
【請求項17】
フルオロアクリレート含有化合物は、HFPO−C(O)NHCOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH2、HFPO−C(O)NHC(C)(CHOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−[C(O)NHCOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−[C(O)NHC(C)(CHOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−C(O)NHCHCH[OC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH]CHOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、HFPO−C(O)NHC(C)(CHOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH、CH=C(CH)C(O)OCNHC(O)OCNHC(O)−HFPO−C(O)NHCOC(O)NHCOC(O)C(CH)=CH
HFPO−C(O)NH(CN(C(O)NHCOC(O)C(CH)=CHNHC(O)−HFPO、又はそれらの組み合わせである請求項16に記載の物品。
【請求項18】
フルオロアクリレート含有化合物は、
【化2】

であり、
ここで、Rは多価イソシアネートの残基であり、
XはO、S、又はNRであり(ここで、RはH又は1〜4の炭素原子の低級アルキルであり)、
は、化学式F(RfcO)2d−を含む基からなる一価のパーフルオロポリエーテル部分であり
(ここで、各Rfcは独立に、1〜6の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基を表し、
xは独立に、2以上の整数を表し、
dは1〜8の整数である)、
Qは独立に、価数が少なくとも2の連結基であり、
Aは(メタ)アクリル官能基−XC(O)C(R)=CHであり(ここで、Rは、1〜4の炭素原子の低級アルキル又はH若しくはFである)、
Gはアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル基、置換アルキル/アリール基であり、
mは少なくとも1であり、
nは少なくとも1であり、
oは少なくとも1であり、
aは2〜6である請求項11に記載の物品。
【請求項19】
フルオロアクリレート含有化合物は、
【化3】

であり、
ここで、Rは多価イソシアネートの残基であり、
XはO、S、又はNRであり(ここで、RはH又は1〜4の炭素原子の低級アルキルである)、
は、化学式F(RfcO)2d−を含む基からなる一価のパーフルオロポリエーテル部分であり
(ここで、各Rfcは独立に、1〜6の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基を表し、
xは独立に、2以上の整数を表し、
2dは直鎖又は分枝鎖とすることができ、dは1〜8の整数である)、
Qは独立に、価数が少なくとも2の連結基であり、
Aは、(メタ)アクリル官能基−XC(O)C(R)=CHである(ここで、Rは、1〜4の炭素原子の低級アルキル又はHもしくはFである)。
mは少なくとも1であり、
nは少なくとも1であり、
aは1〜6であり、
Dは二価又はq価のイソシアネート反応性残基である請求項11に記載の物品。
【請求項20】
フルオロアクリレート含有化合物は、
(Rf2)−[(W)−(R(化学式5)であり、
ここで、Rf2は、化学式F(RfcO)2d−を含む基からなる一価のパーフルオロポリエーテル部分か、又は化学式−C2dO(RfcO)2d−を含む基からなる二価のパーフルオロポリエーテル基であり
(ここで、各Rfcは独立に、1〜6の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基を表し、
xは独立に、2以上の整数を表し、
2dは直鎖又は分枝鎖とすることができ、dは1〜8の整数である)、
Wは連結基であり、
はフリーラジカル反応性基であり、
aは1〜6であり、
gは1又は2である請求項11に記載の物品。
【請求項21】
フルオロアクリレート含有化合物は、HFPO−[C(O)NHCHCHOC(O)CH=CH1〜2、HFPO−[C(O)NHCHCHOCHCHOCHCHOC(O)CH=CH1〜2、HFPO−[C(O)NH−(CHOC(O)CH=CH]1〜2、HFPO−[C(O)NHC(CHOC(O)CH=CH1〜2、HFPO−[C(O)N(CHCHOC(O)CH=CH1〜2、HFPO−[C(O)NHCHCHN(C(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH1〜2、HFPO−[C(O)NHC(CHOC(O)CH=CHH]1〜2、HFPO−[C(O)NHC(CHOC(O)CH=CHCH1〜2
HFPO−[C(O)NHC(CHOC(O)CH=CHCHCH1〜2、HFPO−[C(O)NHCHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH1〜2、HFPO−[C(O)NHCHCHCHN(CHCHOC(O)CH=CH1〜2、HFPO−[C(O)OCHC(CHOC(O)CH=CH1〜2、CH=CHC(O)OCHCH(OC(O)HFPO)CHOCHCH(OH)CHOCHCH(OC(O)HFPO)CHOCOCH=CH、HFPO−CHO−CHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH2;HFPO−[CHO−CHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH2;HFPO−C(O)N(H)CHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH2、(ArO)CHCH(OAr)CHNHC(O)−HFPO−C(O)NHCHCH(OAr)CHOAr、HFPO−C(O)N(H)CHCHOC(O)C(CH)=CH、CH=CHC(O)OCHCFO(CFCFO)x1(CFO)x2nCHOC(O)CH=CH
HFPO−[C(O)NHCHCHOC(O)CHSH]1〜2、HFPO−[C(O)NHCHCH=CH1〜2、HFPO−[C(O)NHCHCHOCH=CH1〜2、HFPO−CHOC(O)CH=CH、HFPO−CHCHOC(O)CH=CH、HFPO−CHCHOC(O)C(CH)=CH、HFPO−CHCHOCHCHOC(O)CH=CH、又はそれらの組み合わせである請求項20に記載の物品。
【請求項22】
フルオロアクリレート含有化合物は、
【化4】

であり、
ここで、Rf3は、C2d+1(ここで、dは1〜8である)又はCFCFCFCHFCF−、CFCHFO(CF−、(CFNCFCF−、CFCFCFOCFCF−、CFCFCFOCHCF−、n−COCF(CF)−、H(CFCF−、又はn−COCF(CF)CFOCF−であり、
Jは、
【化5】

であり
(ここで、RはH又は1〜4の炭素原子のアルキル基であり、
hは2〜8であり、
jは1〜5である)、
yは0〜6であり、
Kは、非分岐対称アルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を有するジイソシアネートの残基であり、
bは1〜30であり、
yは1〜5であり、
vは1〜3であり、
はH、CH3、又はFである請求項11に記載の物品。
【請求項23】
フルオロアクリレート含有化合物は、CSON(CH)CO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(MeFBSE−MDI−HEA)、CSON(CH)CO−C(O)NH(CHNHC(O)−OCOC(O)Me=CH(MeFBSE−HDI−HEMA)、CSON(CH)CO−C(O)NH(CHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(MeFBSE−HDI−BA)、CSON(CH)CO−C(O)NH(CHNHC(O)−OC1224OC(O)CH=CH(MeFBSE−HDI−DDA)、CFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CFCHOH−MDI−HEA)、CCHCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CCHCHOH−MDI−HEA)、C13CHCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(C13CHCHOH−MDI−HEA)、CCHFCFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CCHFCFCHOH−MDI−HEA)、CFCHFO(CFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(CFCHFO(CFCHO−MDI−HEA)、COCHFCFCHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(COCHFCFCHOH−MDI−HEA)、COCF(CF)CHO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCOC(O)CH=CH(COCF(CF)CHOH−MDI−HEA)、CSONMeCO−C(O)NHCCHNHC(O)−OCHC(CHOC(O)CH=CH(MeFBSE−MDI−(SR−444C))、又はそれらの組み合わせである請求項22に記載の物品。
【請求項24】
更に多層フィルム上に配置される感圧性接着剤層を備え、感圧性接着剤層は、ハードコート層とは反対側の多層フィルムの表面上に配置される請求項11に記載の物品。
【請求項25】
更に感圧性接着剤層上に配置される剥離ライナーを備え、感圧性接着剤層は剥離ライナーと多層フィルム層との間に配置される請求項24に記載の物品。
【請求項26】
更に耐引裂性ポリマーフィルムを備える請求項11に記載の物品。
【請求項27】
赤外光源からの赤外光を阻むための光制御物品であって、
第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、
多層フィルム上に配置されたハードコート層であって、
硬化可能かつ架橋可能なフルオロアクリレート含有化合物と、
硬化可能かつ架橋可能な非フッ素化有機化合物と、
赤外光吸収性ナノ粒子と、
重合開始剤と、を含む混合物の反応生成物を含むハードコート層と、
赤外光反射性多層フィルムに隣接して配置される基材と、を備える光制御物品。
【請求項28】
更に赤外光反射性多層フィルムとガラス基材との間に配置される感圧性接着剤層を備える請求項27に記載の光制御物品。
【請求項29】
更に耐引裂性ポリマーフィルムを備える請求項27に記載の光制御物品。
【請求項30】
ハードコート層の厚さが1〜20マイクロメートルの範囲である請求項27に記載の光制御物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−504872(P2010−504872A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530529(P2009−530529)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/079010
【国際公開番号】WO2008/039683
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】