説明

太陽光検出装置

【課題】非長尺形状の光検出センサでも太陽光の捕捉角度を確実に確保することができる太陽光検出装置を提供する。
【解決手段】非長尺形状の光検出センサ20a、20b、21a、21bを用いたので、コスト的に有利である。光検出センサ20a、20b、21a、21bとボックス6の内面との間には、スポットPの径以上の間隔Dが確保されているため、内面で反射された不規則な反射光が悪影響を及ぼすことはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駆動型の太陽電池パネルを太陽に向けた状態のまま太陽に追従して回転させたり、或いは太陽を追尾した状態で太陽光を一定の位置に反射し続けるヘリオスタットの反射鏡を回転させるために太陽光検出装置が用いられている。
【0003】
この種の太陽光検出装置は、例えば円筒内面を有するボックスの一面に太陽光を導入する円形の導入孔を形成し、反対側の内部底面には十字状に直交する二方向でそれぞれ対向する一対の光検出センサが合計で4個設けられている。この光検出センサとしては一般的な太陽電池やフォトダイオードが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
太陽光検出装置により向きを制御するものが、例えば水平方向と高度方向の2軸制御の場合はそれらの方向に関連した方向性で光検出センサが配置される。光検出センサは太陽光を受光するために1つの受光領域を隙間のない4つの小領域に分割しそれぞれをカバーする大面積のセンサが採用されている。
【0005】
そして、導入孔から導入された太陽光のスポットが光検出センサの各対の中心を照らした場合には各対の光検出センサの受光量は等しくなり、光検出センサからの出力も等しいので、制御部から外部の駆動系に信号は出力されないが、太陽光のスポットが光検出センサの中心からずれようとすると対の光検出センサの受光量が相違するため、光検出センサからの出力も異なり、その状態を制御部が検知して、受光量が等しくなるように外部へ信号を出力する。従って、光検出センサは常に受光量が等しくなるように維持され、制御されるものが例えば駆動型の太陽電池パネルの場合は、太陽電池パネルが常に太陽を向いた状態で維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−243354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、大面積の光検出センサを採用しているためコストにおいて不利であった。すなわち大面積の光検出センサは高価であり、多数の太陽光検出装置を含むシステムの場合は、全体のコストにも影響していた。
【0008】
そこで発明者は鋭意研究の結果、大面積の光検出センサの場合にはその大部分がスポット内に位置しているためむしろセンサとして無駄な部分を含んでいることに着目し、光検出センサはその一部が太陽光のスポット内に位置する構成であってもスポットの位置が検出可能であることを見いだした。
【0009】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、小面積の光検出センサでも太陽光の捕捉角度を確実に確保することができる太陽光検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、ボックスの一面の中心に太陽光の導入孔を形成すると共に、ボックスの一面とは反対側の内部底面に十字状に直交する二方向でそれぞれ底面中心をはさんだ状態で対向する一対の光検出センサをそれぞれ配置し、導入孔から導入された太陽光のスポットにより各方向で対の光検出センサが受ける受光量が等しくなるように外部へ信号を出力する制御部を設けた太陽光検出装置であって、前記光検出センサが導入孔から導入された太陽光のスポットの外縁が通過する位置に設けられ、光検出センサとボックスの内面との間に太陽光のスポットの径以上の間隔が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、光検出センサの各方向における長さ寸法が幅寸法の2倍以内の非長尺形状であり且つ対向する光検出センサの間隔が太陽光のスポットの大きさに関連づけられて配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、ボックスが円筒状の内面を有する形状で、導入孔が円形であることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、光検出センサを配置する直交する二方向が、赤道儀式ヘリオスタットの赤緯方向に関する方向と、赤経方向に関連する方向であることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、導入孔から導入される太陽光はヘリオスタットの反射面で反射された太陽光であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、光検出センサが導入孔から導入された太陽光内側縁が通過する位置に設けられているため、小面積でもその内側縁の一部がほんの僅かでも含まれれば、センサとして制御可能である。また、光検出センサとボックスの内面との間には、スポットの径以上の間隔が確保されているため、光検出センサの端末に掛かるスポットがボックスの内面に掛かることなく、光検出センサによる制御時に内面で反射された不規則な反射光が悪影響を及ぼすことはない。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、光検出センサは長さ寸法が幅寸法の2倍以内の非長尺形状であるため、長尺形状に比べて安価である。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、ボックスが円筒状の内面を有する形状で、導入孔が円形であるため、太陽光のスポットがほぼ円形となり、光検出センサの配置が容易である。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、光検出センサを配置する直交する二方向が、赤道儀式ヘリオスタットの赤緯方向と赤経方向に関連する方向であるため、ヘリオスタットの制御を精度良く行うことができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、ヘリオスタットで現実に反射された太陽光を検出することができるのでより精度の高いヘリオスタットの制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る赤道儀式ヘリオスタットを示す斜視図。
【図2】ヘリオスタットのミラーの回転方向を示す概略説明図。
【図3】ボックスを示す斜視図。
【図4】図3中矢示SA−SA線に沿うボックスの断面図。
【図5】図3中矢示SB−SB線に沿うボックスの断面図。
【図6】光検出センサの制御部を示す図。
【図7】センサーミラーによる太陽光の制御前の反射状態を示す平面図。
【図8】センサーミラーによる太陽光の制御中の反射状態を示す平面図。
【図9】光検出センサの出力を示す説明図。
【図10】スポットPの位置と光検出センサの出力の関係を表す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図10は本発明の好適な実施形態を示す図である。この実施形態では、タワー型或いはビームダウン型の太陽熱発電等に使用されるヘリオスタット用の太陽光検出装置について説明する。
【0022】
<ヘリオスタット>
ヘリオスタット1は、ミラー要素としての4枚のミラー2に反射機能を分散させたマルチミラー型のものである。ヘリオスタット1のベース3にはバー4が立設され(地中立設でも可)、その上端に太陽光検出装置5のボックス6が斜めに固定されている。ボックス6がある方向が太陽光Lを反射したい方向であり、そのボックス6側の離れた位置に太陽光Lを集光するターゲットが存在する。
【0023】
ベース3のバー4とは反対側に支柱7が設けられ、その上端に第1駆動部8が設けられている。第1駆動部8には、地球の自転軸と平行で地面に対して所定の角度を有する第1軸9が設けられている。この第1軸9は第1駆動部8により軸心を中心に日周運動に関連した赤経方向A(図2参照)へ回転自在である。この第1軸9を有するため、このヘリオスタット1は赤道儀式である。
【0024】
第1軸9の先端にはコ字形のフレーム10が固定されている。このフレーム10の両側のフランジには第1軸9と直交する方向に第2軸11が貫通している。第2軸11は金属パイプで、フランジの外側へ両側が突出している。フレーム10と第2軸11との間には、第2軸11を季節運動に関連した赤緯方向B(図2参照)へ回転させる第2駆動部12が設けられている。
【0025】
フレーム10から外側へ突出した第2軸11の両端には別の支持パイプ13が直交方向に貫通している。第2軸11と支持パイプ13でH形を形成し、その四隅となる支持パイプ15端にミラー2がそれぞれ金具14により取り付けている。ミラー2は直径50cmの円形で、その表面はターゲットまでの焦点距離に応じた凹球面になっている。
【0026】
フレーム10の内側の第2軸11には一対のブラケット15を介してセンサーミラー16が設けられている。センサーミラー16は横長の長方形で、表面はフラットである。
【0027】
センサーミラー16で反射された太陽光Lは太陽光検出装置5により受光される。太陽光検出装置5は、センサーミラー16と図示せぬターゲットとの間に位置している。従って、センサーミラー16からの太陽光Lを常に太陽光検出装置5にて受光されるように反射すると、その太陽光Lは太陽光検出装置5の先のターゲットに必ず向かうことになる。4枚のミラー2は、センサーミラー16にて反射された太陽光Lを光軸として、その光軸上における焦点距離位置で1つの集光スポットとして完全に重なり合うように予め角度が調整されている。
【0028】
<太陽光検出装置>
次に、太陽光検出装置5の構造を説明する。太陽光検出装置5のボックス6は円筒状の内面を有する中空形状で、円形の導入面17と底面18を両端に有する。ボックス6の直径は45mmで、長さは60mmであり、導入面17を下に斜め状態で固定されている。
【0029】
導入面17の中央には円形でテーパー状の導入孔19が形成されている。導入孔19は外側から樹脂製の透明カバー24より覆われている。ボックス6の底面18には、直交する十字状に一対の光検出センサ20a、20b、21a、21bが離散配置されている。光検出センサ20a、20b、21a、21bは正方形の小面積サイズである。光検出センサ20a、20b、21a、21bの形状は正方形の他に、各方向X、Yにおける長さ寸法dが幅寸法の2倍以内の非長尺形状でも良い。
【0030】
2つの光検出センサ20a、20bはヘリオスタット1の赤経方向Aに関連する方向Xで対向しており、他の2つの光検出センサ21a、21bは、赤緯方向Bに関連する方向Yで対向している。
【0031】
ボックス6の底面18の中心には、真っ直ぐに導入孔19から導入された太陽光Lの円形状のスポットPが形成され、各光検出センサ20a、20b、21a、21bはこのスポットPの外縁を通過する位置に配置されている。本実施形態では相互に対向する光検出センサ20a(21a)と20b(21b)はその間隔がスポットPの大きさ(実効径)Rに関連づけられるように配置される。
【0032】
導入孔19が円形で、太陽光LのスポットPが実効径Rの円形のため、光検出センサ20a、20b、21a、21bの配置が容易である。光検出センサ20a、20b、21a、21bとボックス6の内面との間には、スポットPの実効径R以上の間隔Dが確保されている。
【0033】
スポットPが各光検出センサ20a、20b、21a、21bの中心(中立位置)にいる状態では、方向X及び方向Yのいずれにおいても、一対の光検出センサ20a、20b及び21a、21b同士の受光量は等しく、光検出センサ20a、20b、21a、21bからの出力は等しい。各光検出センサ20a、20b、21a、21bは所定の間隔をおいて離散的に配置することができ、図5に示すように、スポットPが中立位置にある状態でスポットPが全ての光検出センサ20a、20b、21a、21bの受光領域の一部に届くように配置されていることが好ましい(上限間隔)。
【0034】
光検出センサ20a、20b、21a、21bからの出力は制御部22、23にて検知され、一対の光検出センサ20a、20b、21a、21bの出力が等しい場合には相互の差動出力がゼロとなる。この場合には所定の方向に反射光が指向しているため、第1駆動部8及び第2駆動部12に駆動信号を出力しない。
【0035】
導入孔19のからの太陽光LのスポットPが中立位置からずれて、光検出センサ20a、20b、21a、21bの出力が異なる場合には、その状態を制御部22、23が検知して、第1駆動部8及び第2駆動部12に駆動信号を出力し、ヘリオスタット1のミラー2を回転させて、出力の不均等状態を是正するようにフィードバック制御する。
【0036】
図4に示すように、このスポットPはその外縁が光検出センサ20a、20b、21a、21bの内側の端末の一部にだけでも当たっていれば、太陽光Lを受光して制御可能である。各方向X、Yにおける両側の一番外側の端末に受光する太陽光L同士のなす角度が捕捉角度θである。スポットPの中立位置を検出するために必要な上限間隔が確保されていれば、光検出センサ20a、20b、21a、21bの外側の端末がより外側に位置するほど捕捉角度θを大きくすることができる。
【0037】
また、光検出センサ20a、20b、21a、21bの一番外側の端末に受光する場合も、光検出センサ20a、20b、21a、21bとボックス6の内面との間にスポットPの径以上の間隔Dが確保されているため、スポットPが内面に当たって不規則反射して、光検出センサ20a、20b、21a、21bの受光状態に悪影響を与えることない。
【0038】
以上の制御方法を、ヘリオスタット1の赤経方向Aに関連した方向Xを例にして説明する。図9は光検出センサの出力を示す説明図であり、図10(A)はスポットPの光学的重心のX方向の位置と光検出センサ20a,20bの出力の関係を模式的に表したものである。なお、光検出センサの受光面におけるスポットPの実効径をRとする。
【0039】
例えば図7に示すように、ヘリオスタット1の最初の制御スタート時において、センサーミラー16の向きが正規の位置からずれていた場合、センサーミラー16にて反射された太陽光Lは太陽光検出装置5の導入孔19から真っ直ぐに導入されず、図9(b)、(c)、(d)に示すように、スポットPはずれた状態になる。すると、光検出センサ20a、20bからの出力も不均等になり、スポットPのずれ方に応じて図10(A)の領域(b)、(c)、(d)に示すような出力が現れる。さらに2つの出力の差をとると図10(B)に示すように、中立位置近傍の領域(b)においてはずれに対して敏感である。なお、この領域の範囲dは各光センサ20a、20bのX方向の幅、光センサ間の距離、スポットPの実効径Rで定まる。
【0040】
スポットPのずれが大きい(c)(d)領域では光検出センサ20bにはスポットPが当たらない状態であるが光センサ20aがスポットPを検出することによりスポットPの大まかな位置を捉えることができる。
【0041】
したがって、それぞれの状態を光検出センサ20a、20bの出力や差動出力等に基づいて制御部22が検知して、第1駆動部8に信号を出し、ヘリオスタット1を回転させ、センサーミラー16を正しい位置まで回転させる。そうすると、図9(a)および図10(A)の領域(a)に示すように、各光検出センサ20a、20bからの出力は等しくなり、ヘリオスタット1で反射される太陽光Lが光検出センサ5を通過して、その先のターゲットに正しく導かれる。
【0042】
一度、光検出センサ20a、20bにて制御されると、スポットPが中立位置近傍にあるためずれの位置が高倍率で検出され、そのまま太陽を追尾して正しい状態が維持される。赤緯軸に関連したY方向についても同様に太陽を追尾することができる。また、スポットPが中立位置の近傍からはずれた場合であっても、上述したように光検出センサ20a、20b、21a、21bの出力やこれらの差動、加算演算等に基づいてスポットPを中立位置近傍に収束させ、維持するようにフィードバック制御することができる。
【0043】
本実施形態によれば、小面積の光検出センサ20a、20b、21a、21bを用いたので、コスト的に有利である。従って、多数のヘリオスタット1を用いて太陽熱発電所を建設する場合も全体コストの低減を図ることができる。また、本実施形態では赤道儀式のヘリオスタット1を例にしたが経緯台式のヘリオスタットでもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ヘリオスタット
5 光検出センサ
6 ボックス
18 底面
19 導入孔
20a、20b、21a、21b 光検出センサ
22、23 制御部
L 太陽光
A 赤経方向
B 赤緯方向
X 赤経方向に関連する方向
Y 赤緯方向に関連する方向
P スポット
D 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックスの一面の中央に太陽光の導入孔を形成すると共に、ボックスの一面とは反対側の内部底面に十字状に直交する二方向でそれぞれ底面中心をはさんだ状態で対向する一対の光検出センサをそれぞれ配置し、導入孔から導入された太陽光のスポットにより各方向で対の光検出センサが受ける受光量が等しくなるように外部へ信号を出力する制御部を設けた太陽光検出装置であって、
前記光検出センサが各方向における長さが導入孔から導入された太陽光のスポットの外縁が通過する位置に設けられ、
光検出センサとボックスの内面との間に太陽光のスポットの径以上の間隔が設けられていることを特徴とする太陽光検出装置。
【請求項2】
光検出センサの各方向における長さ寸法が幅寸法の2倍以内の非長尺形状であり且つ対向する光検出センサの間隔が太陽光のスポットの大きさに関連づけられて配置されることを特徴とする請求項1記載の太陽光検出装置。
【請求項3】
ボックスが円筒状の内面を有する形状で、導入孔が円形であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の太陽光検出装置。
【請求項4】
光検出センサを配置する直交する二方向が、赤道儀式ヘリオスタットの赤緯方向に関する方向と、赤経方向に関連する方向であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽光検出装置。
【請求項5】
導入孔から導入される太陽光はヘリオスタットの反射面で反射された太陽光であることを特徴とする請求項4記載の太陽光検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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