説明

太陽光集熱装置および太陽光集熱装置の太陽自動追尾方法

【課題】太陽光集熱装置にて、太陽光を集光し集熱する曲面鏡の方向の精密な制御と、太陽の位置の精密な検出を提供する。
【解決手段】太陽光集熱器10は、太陽光Lを反射して集光するコレクタ20と、このコレクタ20が集光した光を熱に変換する集熱管30と、日時と設置場所に基づいてコレクタ20が太陽の方向に正対する目標回転角度Θtを算出し、この目標回転角度Θtでコレクタ20を回転する駆動制御部と、集熱管30が集熱した熱量に基づいて、集熱効率を測定する集熱効率算出部とを有している。駆動制御部は、この目標回転角度Θtに所定のオフセット値ρを加えてコレクタ20を回転したのち、この所定のオフセット値ρにおける集熱効率を測定することを、この所定のオフセット値ρを変化させながら繰り返し、この所定のオフセット値ρと集熱効率との関係から、最適なオフセット値を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を集光して熱媒体を介して熱エネルギに変換し集熱する太陽光集熱装置、および、この太陽光集熱装置において太陽光を集光して集熱するための太陽自動追尾方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模での異常気象が問題となり、この異常気象の原因は温暖化現象であると考えられている。その為、温暖化現象の主原因である環境負荷の多い石油に代わり、環境負荷が少なく地球に優しい新エネルギが注目されている。その中で特に現実的に利用されているもののひとつが、太陽光エネルギである。
【0003】
太陽光を利用したクリーンエネルギシステムには、アモルファスや結晶シリコンによる太陽電池によって太陽光を電気エネルギに変換する形式と、太陽光を鏡によって集光し、熱媒体によって熱エネルギに変換する方式とがある。
【0004】
太陽光を集光して熱エネルギに変換する方式として、トラフ型、パラボラ型、タワー型等がある。トラフ型とは、雨樋状の曲面鏡を用いて、鏡の前に設置されたパイプに太陽光を集中させ、パイプ内を流れる熱媒体(水やオイル等)を加熱して、熱エネルギに変換する方式である。パラボラ型とは、パラボラアンテナと同様の形状の鏡を用いて、鏡の前に設置されたスターリングエンジン等に太陽光を集中させ、熱エネルギに変換する形式である。別名、ディッシュ/スターリング方式などとも呼ばれる。タワー型とは、複数の平面鏡を並べ、これら複数の平面鏡の中央に設置されたタワーに設けられた集熱器に太陽光を集光して熱エネルギに変換する方式である。
【0005】
特許文献1の図1〜図4と、特許文献2の図1には、それぞれトラフ型の太陽光集熱器が示されている。特許文献3には、パラボラ型の太陽光集熱器が示されている。特許文献4には、タワー型の太陽光集熱器が示されている。
特許文献5には、太陽光の反射損失を低下させることで光/電変換効率を向上させた太陽電池を利用した太陽光発電システムの発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/02780号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0139210号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19821137号明細書
【特許文献4】特開2010−144725号公報
【特許文献5】特開2010−003999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、トラフ式、バラボラ式、タワー式等の太陽光集熱装置において、太陽光の集熱を高効率で行うためには、太陽の位置にあわせて曲面鏡の位置を精密に制御し、集熱部に集熱しなければならない。
そこで、本発明は、太陽光集熱装置および太陽光集熱装置の太陽自動追尾方法において、曲面鏡の方向の精密な制御と、太陽の位置の精度の高い検出とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、本発明の目的を達成するために、以下のように構成した。
【0009】
すなわち、本発明の太陽光集熱装置は、太陽光を反射して集光する集光部と、前記集光部が集光した光を熱に変換する集熱部と、日時と設置場所に基づいて前記集光部が前記集熱部に太陽光を集光する所定角度を算出し、前記所定角度で前記集光部を回転する駆動制御部と、前記集熱部が集熱した熱量に基づいて集熱効率を測定し算出する集熱効率算出部とを有する太陽光集熱装置であって、前記駆動制御部が前記所定角度に所定のオフセットを加えて前記集光部を回転したのち、前記集熱効率算出部が前記所定のオフセットにおける集熱効率を測定することを、前記所定のオフセットを変化させながら繰り返して行い、変化させた前記所定のオフセットと前記集熱効率との関係から、最適なオフセットを求めることを特徴とする。
【0010】
本発明の太陽光集熱装置の太陽自動追尾方法は、太陽光を反射して集光する集光部と、
前記集光部が集光した光を熱に変換する集熱部と、日時と設置場所に基づいて前記集光部が前記集熱部に太陽光を集光する所定角度を算出し、前記所定角度で前記集光部を回転する駆動制御部と、前記集熱部が集熱した熱量に基づいて集熱効率を測定し算出する集熱効率算出部とを有する太陽光集熱装置の太陽自動追尾方法であって、前記駆動制御部が前記所定角度に所定のオフセットを加えて前記集光部を回転し、前記集熱効率算出部が前記所定のオフセットにおける集熱効率を算出する処理を、前記所定のオフセットを変化させながら繰り返す処理と、前記所定のオフセットと前記集熱効率との関係から、最適なオフセットを求める処理とを含むことを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽光集熱装置および太陽光集熱装置の太陽自動追尾方法において、曲面鏡の方向の精密な制御と、太陽の位置の精度の高い検出とを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る太陽光集熱器を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る太陽光集熱器の制御装置を示す図である。
【図3】太陽光の光軸ズレ角度と集熱効率との関係の例を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る太陽光集熱器の回転角度補正動作を示すフローチャートである。
【図5】オフセット値ρと集熱効率の関係の例を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係る回転角度補正後の太陽光集熱器の集熱動作を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態に係る太陽光集熱器を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る太陽光集熱器の制御装置を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る太陽位置検出器を示す図である。
【図10】第2の実施形態に係る太陽位置検出器の動作を示す図である。
【図11】第2の実施形態に係る太陽位置検出器の取付誤差の修正を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係る太陽光集熱器の取付誤差修正動作を示すフローチャートである。
【図13】フォトダイオード位置と集熱効率の関係の例を示す図である。
【図14】第2の実施形態に係る太陽光集熱器の集光動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、本発明を実施するための形態(「本実施形態」という)を、図等を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る太陽光集熱器を示す図である。
【0014】
太陽光集熱器10は、トラフ式の太陽光集熱装置であり、南北方向である長手方向の両端に設けられた2本の支柱40(=40−1,40−2)と、これらの支柱40(=40−1,40−2)に回転可能に支持されているコレクタ20を有している。第1の実施形態においては、南北方向は長手方向であり、東西方向は短手方向である。
【0015】
コレクタ20は、制御装置80によって制御されている駆動装置50によって、太陽の方向に正対するよう回転する。コレクタ20が太陽の方向に正対した状態とは、太陽光Lがコレクタ20に設けられた反射パネル21によって反射され、集熱管30を焦点として集光されている状態である。コレクタ20は、鏡面部である反射パネル21と、この反射パネル21を支える支持部材である5個の支持フレーム22と、この支持フレーム22の長手方向の両端と中央部とに配置されている3本の支持バー23とを有している。太陽と反対方向(図1の北方向)の支持バー23上には、太陽光エネルギ検出部である直立日射計29が設置されている。直立日射計29は、太陽光Lの単位面積あたりの熱エネルギを測定する機能を有し、コレクタ20と連動して回転する。更に、太陽と反対方向(図1の北方向)の支持バー23上に固定され、反射パネル21に対して影を落とさないようになっている。
【0016】
駆動装置50は、例えばサーボモータであり、コレクタ20を回転駆動する機能を有している。回転位置検出器70とは、例えばロータリーエンコーダであり、コレクタ20の回転角度Θを測定(実測)する機能を有している。制御装置80は、回転位置検出器70によって測定された実測の回転角度Θが目標回転角度Θtになるまで駆動装置50を回転駆動させ、コレクタ20を回転させる。
【0017】
反射パネル21は、短手方向に凹状の断面を有し、太陽光Lを集熱部である集熱管30に集光させる。この凹状の断面は集光曲率形状であり、例えば放物面である。更に、この3本の支持バー23には、それぞれ保持脚31が固定されており、筒状の集熱部である集熱管30を保持している。
【0018】
集熱管30は、太陽光Lを吸収して熱に変換する集熱部であり、例えば水などの熱媒体を内部に有している。集熱管30は、後述する熱媒体往路320−2(図2)と熱媒体復路320−1(図2)が接続され、これら熱媒体往路320−2(図2)と熱媒体復路320−1(図2)を介して空調システム200(図2)と接続されている。
【0019】
熱媒体である水は、集熱管30内において太陽光Lによって熱せられて熱水又は水蒸気となり、熱媒体往路320−2(図2)によって、空調システム200(図2)に導かれて熱源として用いられる。熱媒体は熱源として用いられることで、熱媒体である熱水または水蒸気は放熱して再び水となり、熱媒体復路320−1(図2)によって集熱管30に戻る。
【0020】
太陽光集熱器10は、駆動装置50と回転位置検出器70によって、コレクタ20を太陽の方向に正対するように回転する。太陽光Lは、集光部であるコレクタ20の反射パネル21によって反射して集熱部である集熱管30に焦点を結び、集熱管30内部の熱媒体の熱量に変換される。
図1のトラフ式太陽光集熱装置の太陽追尾動作は以下のものである。
【0021】
稼働状態において、後述するポンプ220(図2)は、集熱管30内に熱媒体である水を送水する。この状態において、制御装置80は、日時と設置場所(経度および緯度)に基づいて、太陽の位置を予測計算してコレクタ20の目標回転角度Θtを算出する。制御装置80は、回転位置検出器70によってコレクタ20の回転角度Θを検出(実測)しながら、実測の回転角度Θが目標回転角度Θtになるまで、駆動装置50によってコレクタ20を回転させる。この一連の動作を繰り返して、コレクタ20が有している反射パネル21で、太陽を常に追尾しながら集光し集熱する。
【0022】
このとき、コレクタ20の目標回転角度Θtを算出する際の算出誤差、太陽光集熱器10を構成する部品寸法の誤差、および太陽光集熱器10の設置位置の誤差、回転位置検出器70の検出誤差等によって、実測の回転角度Θが予測計算で決定した理論的な目標回転角度Θtになるように制御しても、集熱効率が最大にならない虞がある。そのため、集光効率が最大となる回転角度Θmaxと、理論的な目標回転角度Θtとの差を補正する必要がある。
【0023】
図2は、第1の実施形態に係る太陽光集熱器の制御装置を示す図である。
太陽光集熱器10は、制御装置80と、この制御装置80に接続された回転位置検出器70及び駆動装置50と、コレクタ20と、コレクタ20と連動して回転する直立日射計29と、集熱管30と、集熱管30の両端に設置された温度計212−1,212−2と、集熱管30の一端に設置された流量計211とを有している。制御装置80は更に、中央処理装置(以下、「CPU」という。)81と、計時部82と、駆動制御部83と、集熱効率算出部84と、記憶部85とを有し、記憶部85は太陽位置テーブル86を記憶している。
【0024】
計時部82は、日付および時刻を取得する機能を有しており、例えば水晶発振器とクロックICで構成される。駆動制御部83は、駆動装置50によってコレクタ20を回転すると共に、回転位置検出器70によって実測の回転角度Θが所定の目標回転角度Θtとなったか否かを判断することにより、コレクタ20を所定の目標回転角度Θtまで回転する。集熱効率算出部84は、集熱部であるコレクタ20が集熱した熱量と、測定した太陽光Lの熱エネルギを測定し、これらに基づいて集熱効率を算出する機能を有している。具体的には、後述する温度計212−1,212−2と流量計211の測定結果に基づいて、集熱量を計算する。更に直立日射計29が測定した太陽光Lの熱エネルギと反射パネル21の投影面積にもとづいて、反射パネル21が集光した太陽光Lの熱エネルギを算出する。この集熱量を、反射パネル21が集光した太陽光Lの熱エネルギで除算することにより、集熱効率を計算する。
【0025】
記憶部85は、例えばハードディスクやフラッシュメモリであり、この太陽光集熱器10の制御に係る種々のデータを記録している。太陽位置テーブル86は、日付および時刻と、この太陽光集熱器10の設置位置(緯度と経度)における太陽位置との関係を示す情報である。
【0026】
制御装置80は、空調システム200から集熱管30への熱媒体復路320−1の流量を測定する流量計211と、熱媒体復路320−1の温度を測定する温度計212−1とに接続されている。更に、集熱管30から空調システム200への熱媒体往路320−2の温度を測定する温度計212−2に接続されている。
【0027】
集熱管30は、熱媒体往路320−2を介して空調システム200に接続されている。空調システム200から集熱管30への熱媒体往路320−2には更に、ポンプ220が接続されている。このポンプ220は、集熱管30内に熱媒体である水を送水する。
図3は、太陽光の光軸ズレ角度と集熱効率との関係の例を示す図である。縦軸は集光効率を%で示し、横軸は光軸ズレ角度を角度[°]で示している。
【0028】
集熱管30の直径Φ1〜Φ4の違いによって集熱効率は変化する。直径Φ1が最も細く、以降、直径Φ2から直径Φ4の順に太くなる。集熱管30の直径Φ1〜Φ4のいずれにおいても、反射パネル21の光軸ズレが1°近傍において集熱効率が悪化し始め、2°以上に傾くと集熱できなくなることがわかる。
【0029】
そのため、反射パネル21を備えたコレクタ20の目標回転角度Θtを算出する際の算出誤差、太陽光集熱器10を構成する部品寸法の誤差、および太陽光集熱器10の設置位置の誤差の累積によって、許容範囲以上の光軸ズレが発生しないよう、太陽光集熱器10を適切に設計しなければならない。
【0030】
(第1の実施形態の動作)
図4は、第1の実施形態に係る太陽光集熱器の回転角度補正動作を示すフローチャートである。
本実施形態に係る回転角度補正動作において、オフセット値ρの範囲は、図3に示した集熱管30の直径Φと光軸ズレ角度と集光効率の関係にもとづいて決定する。一例として、集熱管30の直径としてΦ1を選択した場合を考える。集熱効率が急激に低下するのは、光軸ズレ角度が±1°近傍の場合である。この場合には、オフセット値ρの範囲を−1.0°〜+1.0°として設定し、−1.0°から+0.1°ずつ、徐々に値を変更していく。
処理を開始すると、ステップS10〜S19において、制御装置80は、目標回転角度Θtのオフセット値ρの範囲を−1.0°から+1.0°まで+0.1°ずつ変更する処理を繰り返す。このオフセット値ρは、所定のオフセットであり、目標回転角度Θtを集光効率が最大となる回転角度Θmaxに補正するために用いられる。よって、オフセット値ρの範囲は、目標回転角度Θtと、集光効率が最大となる回転角度Θmaxとの差の最大値よりも、やや広く設定することが望ましい。
【0031】
ステップS11〜S16において、制御装置80は、学習時間の間、処理を繰り返す。この学習時間は、太陽光Lの集光状態の変化による過度状態に影響されることなく、集熱管30による集熱量を測定可能な期間であればよい。
【0032】
ステップS12において、制御装置80は、記憶部85から太陽位置テーブル86の情報を取得し、計時部82から日時を取得し、この日時と太陽位置テーブル86に基づいて、太陽位置を算出する。太陽位置は、例えば仰角と方位角で示されるものである。
【0033】
ステップS13において、制御装置80は、算出した太陽位置から、コレクタ20が太陽の方向に正対する目標回転角度Θtを算出する。この目標回転角度Θtは、理論計算値であり、実際に太陽の方向に正対する最適な値とは相違している虞がある。この目標回転角度Θtは、所定角度である。すなわち、駆動制御部83は、日時と設置場所に基づいて、集光部であるコレクタ20が太陽の方向に正対する所定角度を算出し、この所定角度で集光部であるコレクタ20を回転する
【0034】
ステップS14において、制御装置80の駆動制御部83は、コレクタ20を、算出した目標回転角度Θtにオフセット値ρを加算した角度である(Θt+ρ)で回転する。すなわち、駆動制御部83は、所定角度に所定のオフセットを加算して、集光部であるコレクタ20を回転する。
【0035】
ステップS15において、太陽光集熱器10は、集熱運転を行う。集熱運転中において、集熱効率算出部84は、集熱管30の入口側に設置した流量計211によって熱媒体の流量Fを測定している。更に、集熱管30の入口側に設置した温度計212−1によって入口側の熱媒体の温度Tinを測定し、集熱管30の出口側に設置した温度計212−2によって熱媒体の温度Toutを測定し、熱媒体の温度差(Tout−Tin)を算出する。この熱媒体の比熱αと流量Fと温度差(Tout−Tin)の積が集熱量となる。更に集熱効率算出部84は、直立日射計29によって直立日射量[kW/m]を測定する。直立日射量とは、太陽光Lが1平方メートルに垂直に降り注いたときの熱エネルギ量である。
【0036】
ステップS16において、所定の学習時間が経過していないならば、ステップS11の処理に戻る。所定の学習時間が経過したならば、ステップS17の処理に移行する。
【0037】
ステップS17において、所定の学習時間において曇りを検出したか否か、すなわち、太陽光Lの太陽光集熱器10への入射量が小さくなった場合を検出したか否かを判断する。直立日射計29による測定値が、日照の定義である120W/m未満の場合は、曇りを検出したと判断し、ステップS11の処理に戻って、オフセット値ρと集光効率のデータを破棄し、新たな集熱運転を実施してデータを取得する。
【0038】
ステップS18において、制御装置80の集熱効率算出部84は、学習時間中に求めた集熱量を、曲面鏡の投影面積の1平方メートルあたりの熱量[kW]に換算し、学習時間中に直立日射計29で測定した直立日射量に対する比率を求める。この比率を集熱効率とする。集熱効率算出部84は、オフセット値ρと集熱効率との関係を、記憶部85に記憶する。
【0039】
ステップS19において、制御装置80は、オフセット値ρを+0.1°ずつ変更し、オフセット値ρが+1.0°以下ならば、ステップS10の処理に戻り、オフセット値ρが+1.0°を超えていたならば、ステップS20の処理に移行する。
【0040】
ステップS20において、制御装置80は、オフセット値ρの最適値であるオフセット最適値ρ0を求める。オフセット最適値ρ0とは、集熱効率を安定かつ最大とする最適なオフセット値である。ステップS20の処理が終了すると、図4の処理は終了する。
【0041】
図5(a),(b)は、オフセット値ρと集熱効率の関係の例を示す図である。横軸はオフセット値ρを示し、縦軸は集光効率を示している。
【0042】
図5(a)は、集熱効率が明確なピークを描く場合を示している。例えば、所定の集熱効率以上のデータが1点のみである場合である。この場合、ピーク値におけるオフセット値ρを最適値とすればよい。
【0043】
図5(b)は、集熱効率が明確なピークを描かない場合を示している。例えば、所定の集熱効率以上のデータが複数個存在する場合である。このような場合には、所定の集熱効率以上の複数のデータから、オフセット値が両端である2点のデータを取り、これら2点のオフセット値ρの中間値を最適値とすればよい。
図6は、第1の実施形態に係る回転角度補正後の太陽光集熱器の集熱動作を示すフローチャートである。
処理を開始すると、ステップS31において、太陽光集熱器10の制御装置80は、記憶したオフセット最適値ρ0を読込む。
【0044】
ステップS32において、制御装置80は、記憶部85から太陽位置テーブル86の情報を取得し、計時部82から取得した日時と太陽位置テーブル86に基づいて、太陽位置を算出する。太陽位置は、例えば仰角と方位角で示されるものである。
【0045】
ステップS33において、制御装置80は、算出した太陽位置から、コレクタ20が太陽の方向に正対する目標回転角度Θtを算出する。この目標回転角度Θtは、理論計算値であり、最適な回転角度値とは相違している虞がある。
【0046】
ステップS34において、制御装置80は、コレクタ20を、算出した目標回転角度Θtにオフセット最適値ρ0を加算した角度である(Θt+ρ0)で回転する。
【0047】
ステップS35において、太陽光集熱器10は、集熱運転を所定時間にわたり実施したのち、ステップS32の処理に戻って繰り返す。この所定時間は、太陽位置テーブル86を構成する日時の最小単位である。これにより、制御装置80の計算処理を最小化することが可能である。
【0048】
(第1の実施形態の効果)
以上説明した第1の実施形態では、次の(A)〜(C)のような効果がある。
(A) コレクタ20の目標回転角度Θtを算出する際の算出誤差、太陽光集熱器10を構成する部品寸法の誤差、および太陽光集熱器10の設置位置の誤差、回転位置検出器70の検出誤差等によって、予測計算で決定した理論的な目標回転角度Θtで制御しても集熱効率が最大にならない場合がある。この場合においても、集光効率が最大となる回転角度Θmaxと、理論的な目標回転角度Θtとの差を学習し、目標回転角度Θtを補正することが可能である。
【0049】
(B) 太陽光集熱器10が自ら目標回転角度Θtの誤差を学習し、その誤差を補正するオフセット最適値ρ0を加えて集熱運転するので、太陽の位置を検出する装置等が不要である。
【0050】
(C) 直立日射計29は、コレクタ20と連動して回転し、且つ反射パネル21上に影を落とさないように、太陽と反対方向(図の北方向)の支持バー23上に設置されている。これにより、太陽光集熱器10の集熱効率の悪化を抑止している。
【0051】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る太陽光集熱器を示す図である。
本実施形態の太陽光集熱器10Aは、第1の実施形態の太陽光集熱器10に加えて、太陽の方向を検出する太陽位置検出部である太陽位置検出器90を備えているほかは、第1の実施形態の太陽光集熱器10と同様の構成を有している。この太陽位置検出器90は、コレクタ20と連動して回転する。更に、太陽と反対方向(図1の北方向)の支持バー23上に設置され、反射パネル21上に影を落とさないようになっている。
図8は、第2の実施形態に係る太陽光集熱器の制御装置を示す図である。
【0052】
本実施形態の太陽光集熱器10Aは、第1の実施形態の太陽光集熱器10に加えて、太陽の方向を検出する太陽位置検出器90を備え、制御装置80のCPU81に接続されているほかは、第1の実施形態の太陽光集熱器10と同様の構成を有している。
図9(a),(b)は、第2の実施形態に係る太陽位置検出器を示す図である。
【0053】
太陽位置検出器90は、筐体であるケーシング91を有し、このケーシング91の上部には、光を所定方向に取り入れるための隙間であるスリット92が設けられている。このケーシング91の内側底面には、スリット92の方向に並列接続されているフォトダイオード93(=93−1〜93−21)を、スリット92と垂直な方向に複数列設置している。これら複数列の中心は、フォトダイオード93−11である。フォトダイオード93の一列分の幅は、スリット92の開口幅と、ほぼ同等である。このフォトダイオード93は、それぞれ異なった方向の光を検出する複数の光方向検出手段である。
【0054】
太陽位置検出器90は、太陽光集熱器10Aのコレクタ20の端部に、スリット92が南北方向となり、フォトダイオード93−1が東端となり、フォトダイオード93−21が西端となるよう固定され、コレクタ20と連動して回転する。これにより太陽光Lは、スリット92から入射して、複数列のフォトダイオード93のうち1〜2列に照射される。図9(a)では、中央列のフォトダイオード93−11に照射されている。太陽光Lが照射されたフォトダイオード93−11は電流を発生し、この電流により太陽の位置を判断可能である。
図9(b)は、フォトダイオード位置Xと出力電流との関係を示す図である。横軸はフォトダイオード位置Xを示し、縦軸は位置Xにおけるフォトダイオード93の出力電流を示している。
【0055】
フォトダイオード位置Xは、フォトダイオード93のうちの1列、すなわち、フォトダイオード93−Xの位置を示している。フォトダイオード位置Xにおける出力電流は、フォトダイオード93−Xからの出力電流を示している。図9(a)において、フォトダイオード93−11に太陽光Lが照射されているので、フォトダイオード位置X=11における出力電流は、他のフォトダイオード位置X=1〜10,X=12〜21における出力電流と比べて最も高くなる。フォトダイオード位置Xと出力電流との関係において、最も高い出力電流を検出したフォトダイオード位置Xを検知することにより、スリット92から入射した太陽光Lが入射したフォトダイオード位置Xを検知することが可能である。
【0056】
(第2の実施形態の動作)
図10(a),(b)は、第2の実施形態に係る太陽位置検出器の動作を示す図である。
図10(a)は、太陽位置検出器90の取付誤差がなく、且つコレクタ20が正常に太陽を追尾している場合を示す図である。このとき太陽光Lは、スリット92から垂直に入射し、中央列のフォトダイオード93−11に照射され、フォトダイオード93−11は、フォトダイオード93−1〜93−21のうち最も高い電流を出力する。太陽光Lは、太陽位置検出器90が固定されているコレクタ20の反射パネル21によって反射し、集熱管30に集光する。
【0057】
図10(b)は、太陽位置検出器90の取付誤差がなく、且つコレクタ20の太陽の追尾が遅れている場合を示す図である。このとき太陽光Lは、スリット92から斜めに入射し、中央列から1列分だけ東側のフォトダイオード93−10に照射される。このフォトダイオード93−10は、フォトダイオード93−1〜93−21のうち最も高い電流を出力する。太陽光Lは、太陽位置検出器90が固定されているコレクタ20の反射パネル21によって反射するが、集熱管30には集光しない。このとき、中央列のフォトダイオード93−11に光が照射されるよう、目標回転角度Θtを調整する制御が必要になる。
【0058】
すなわち、太陽位置検出器90は、最も高い電流を出力するフォトダイオード位置Xを検出することによって、集光部であるコレクタ20と太陽の相対方向とのズレ量を検出する機能を有している。
図11(a),(b)は、第2の実施形態に係る太陽位置検出器の取付誤差の修正を示す図である。
【0059】
図11(a)は、太陽位置検出器90の取付誤差があり、且つ取付誤差修正前を示す図である。このとき太陽光Lは、スリット92から垂直入射し、中央列のフォトダイオード93−11に照射され、中央列のフォトダイオード93−11は、フォトダイオード93−1〜93−21のうち最も高い電流を出力する。太陽光Lは、太陽位置検出器90が固定されているコレクタ20の反射パネル21によって反射するが、集熱管30を焦点として集光しない。以降、中央列のフォトダイオード位置をXmと定義する。
【0060】
図11(b)は、太陽位置検出器90の取付誤差があり、且つ取付誤差修正後を示す図である。このとき太陽光Lは、スリット92から斜めに入射し、フォトダイオード93−10に照射され、フォトダイオード93−10は、フォトダイオード93−1〜93−21のうち最も高い電流を出力する。太陽光Lは、太陽位置検出器90が固定されているコレクタ20の反射パネル21によって反射し、集熱管30を焦点として集光する。
【0061】
すなわち、駆動制御部83は、集熱効率のピーク値における最適な光方向検出手段であるフォトダイオード93の位置Xを測定している。更に、駆動制御部は、複数の光方向検出手段であるフォトダイオード93の列のうち1つを選択し、太陽位置検出器90が、前記選択された光方向検出手段である選択されたフォトダイオード93によって光を検出するように集光部であるコレクタ20を回転し、集熱管30による集熱を行っている。
図12は、第2の実施形態に係る太陽光集熱器の取付誤差修正動作を示すフローチャートである。
【0062】
取付誤差修正動作において、駆動制御部83は、フォトダイオード93の列のうち1つを選択し、選択したフォトダイオード93の列の電流出力が最大となるようコレクタ20の目標回転角度Θtを調整して集熱運転を行い、集熱効率を求める。このとき、選択したフォトダイオード93の列の位置のことを、目標ダイオード位置Xtという。そして目標ダイオード位置Xtを、フォトダイオード93−1〜93−21の位置それぞれに設定して集熱効率を求める処理を繰り返し行う。それぞれの集熱効率を求めることにより、フォトダイオード位置Xと集熱効率との関係を調査する。そして、集熱効率が最大となる最適な光方向検出手段の位置である基準ダイオード位置X0を求める。
【0063】
具体的には、処理を開始すると、制御装置80は、ステップS51〜S65において、目標ダイオード位置Xtを、フォトダイオード位置Xの東端から西端まで順に設定して繰り返す。すなわち、フォトダイオード93−1からフォトダイオード93−21まで、それぞれ目標ダイオード位置Xtに設定して順に繰り返す。
ステップS52において、制御装置80は、オフセット値Ψを0に設定する。
ステップS53〜S62において、制御装置80は、所定の学習時間の間、繰り返す。
【0064】
ステップS54において、制御装置80は、記憶部85から太陽位置テーブル86の情報を取得し、計時部82から日時を取得し、この日時と太陽位置テーブル86に基づいて、太陽位置を算出する。太陽位置は、例えば仰角と方位角で示されるものである。
【0065】
ステップS55において、制御装置80は、算出した太陽位置から、コレクタ20が太陽の方向に正対する目標回転角度Θtを算出する。この目標回転角度Θtは、理論計算値であり、最適な値とは相違している虞がある。
ステップS56において、制御装置80は、コレクタ20を、算出した目標回転角度Θtにオフセット値Ψを加算した角度である(Θt+Ψ)で回転する。
ステップS57において、制御装置80は、太陽位置検出器90のフォトダイオード93(=93−1〜93−21)のそれぞれの電流値を測定する。
【0066】
ステップS58において、制御装置80は、電流出力が最大となるフォトダイオード93(=93−1〜93−21)の位置を判定する。すべての出力が所定値よりも小さかったならばステップS61の処理を行う。目標ダイオード位置Xt以外が最大出力であったならば、ステップS59の処理を行う。目標ダイオード位置Xtが最大出力であったならば、ステップS60の処理を行う。
【0067】
ステップS59において、制御装置80は、最大出力側のダイオード位置が、フォトダイオード位置X側に近づくよう、オフセット値ΨをΔΨだけ変更し、ステップS56の処理に戻る。
【0068】
ステップS60において、太陽光集熱器10Aは、集熱運転を実施する。集熱運転中において、集熱効率算出部84は、集熱管30の入口側に設置した流量計211によって熱媒体の流量Fを測定している。更に、集熱管30の入口側に設置した温度計212−1によって入口側の熱媒体の温度Tinを測定し、集熱管30の出口側に設置した温度計212−2によって熱媒体の温度Toutを測定し、これらの測定値から熱媒体の温度差(Tout−Tin)を測定する。この熱媒体の比熱αと流量Fと温度差(Tout−Tin)の積が集熱量となる。更に集熱効率算出部84は、直立日射計29によって直立日射量[kW/m]を測定する。直立日射量とは、太陽光Lが1平方メートルに垂直に降り注いたときの熱エネルギ量である。
ステップS61において、制御装置80は、曇りを検出したと判断して、その旨を記録する。
【0069】
ステップS62において、所定の学習時間が経過していないならば、ステップS53の処理に戻る。所定の学習時間が経過したならば、ステップS63の処理に移行する。
【0070】
ステップS63において、所定の学習時間において曇りを検出したか否か、すなわち、太陽光Lの太陽光集熱器10Aへの入射量が小さくなった場合を検出したか否かと、前述したステップS61の処理を実行していたか否かを判断する。直立日射計29による測定値が、日照の定義である120W/m未満の場合や、ステップS61の処理を実行していた場合には、曇りを検出したと判断し、ステップS53の処理に戻って、オフセット値ρと集光効率のデータを破棄し、再度の集熱運転を実施してデータを取得する。
【0071】
ステップS64において、制御装置80の集熱効率算出部84は、学習時間中に求めた集熱量を、曲面鏡の投影面積の1平方メートルあたりの熱量[kW]に換算し、学習時間中に直立日射計29で測定した直立日射量に対する比率をもとめる。この比率を集熱効率とする。集熱効率算出部84は、学習した目標ダイオード位置Xtと集熱効率との関係を、記憶部85に記録する。
【0072】
ステップS65において、制御装置80は、目標ダイオード位置Xtを一列ずつ変更する。全てのフォトダイオード位置Xについて処理を繰り返していないならば、ステップS51の処理に戻り、全てのフォトダイオード位置Xについて処理を繰り返していたならば、ステップS66の処理に移行する。
【0073】
ステップS66において、制御装置80は、最適な光方向検出手段である基準ダイオード位置X0を求める。ステップS66の処理が終了すると、図12の処理は終了する。
【0074】
以後、太陽光集熱器10Aは、この基準ダイオード位置X0が出力最大となるよう目標回転角度Θtを補正しながら、集熱運転する。本実施形態の学習時間は、第1の実施形態の学習時間と同様に、集熱量を測定できる時間であればよい。
【0075】
このように、コレクタ20の目標回転角度Θtの設定値や、太陽位置検出器90の取付誤差補正を行うことで、常に高効率で太陽光Lからの集熱が可能となる。太陽光集熱器10Aの設置位置を変更する場合においても、集熱効率が最大値となるフォトダイオード位置Xを記録することで、常に集熱効率が最大値となるように設置誤差を自ら学習することが可能になる。
図13(a),(b)は、フォトダイオード位置と集熱効率の関係の例を示す図である。横軸はフォトダイオード位置Xを示し、縦軸は集光効率を示している。
【0076】
図13(a)は、集熱効率が明確なピークを描く場合を示している。例えば、スリット92の幅とフォトダイオード93の列とが広く、フォトダイオード93の1列がコレクタ20の0.5〜1°の回転に相当し、よって所定の集熱効率以上のデータが1点となる場合である。この場合には、ピーク値におけるフォトダイオード位置Xを基準ダイオード位置X0とすればよい。
【0077】
図13(b)は、集熱効率が明確なピークを描かない場合を示している。例えば、スリット92の幅とフォトダイオード93の列とが狭く、フォトダイオード93(=93−1〜93−21)列がコレクタ20の1〜2°の回転に相当し、よって所定の集熱効率以上のデータが複数個存在する場合である。このような場合には、所定の集熱効率以上の複数のデータから、両端であるフォトダイオード位置X1,X2の2点のデータを取り、それらフォトダイオード位置X1,X2の中間値を基準ダイオード位置X0とすればよい。本実施形態において、所定の集熱効率とは、予め定められた値であり、例えば80%である。
図14は、第2の実施形態に係る太陽光集熱器の集光動作のフローチャートである。
処理を開始すると、ステップS71において、太陽光集熱器10Aの制御装置80は、学習された基準ダイオード位置X0を読込む。
ステップS72において、制御装置80は、オフセット値Ψを0に設定する。
【0078】
ステップS73において、制御装置80は、記憶部85から太陽位置テーブル86の情報を取得し、計時部82から取得した日時と太陽位置テーブル86に基づいて、太陽位置を算出する。太陽位置は、例えば仰角と方位角で示されるものである。
【0079】
ステップS74において、制御装置80は、算出した太陽位置から、コレクタ20が太陽の方向に正対する目標回転角度Θtを算出する。この目標回転角度Θtは、理論計算値であり、最適な値とは相違している虞がある。
ステップS75において、制御装置80は、コレクタ20を、算出した目標回転角度Θtにオフセット値Ψを加算した角度である(Θt+Ψ)で回転する。
ステップS76において、制御装置80は、太陽位置検出器90のフォトダイオード93(=93−1〜93−21)のそれぞれの電流値を測定する。
【0080】
ステップS77において、制御装置80は、電流出力が最大となるフォトダイオード93(=93−1〜93−21)の位置を判定する。すべての出力が所定値よりも小さかったならば、ステップS72の処理に戻る。基準ダイオード位置X0以外が最大出力であったならば、ステップS78の処理を行う。基準ダイオード位置X0が最大出力であったならば、ステップS79の処理を行う。
【0081】
ステップS78において、制御装置80は、最大出力側のダイオード位置が、基準ダイオード位置X0側に近づくよう、オフセット値ΨをΔΨだけ変更し、ステップS75の処理に戻る。
ステップS79において、太陽光集熱器10Aは、集熱運転を実施したのち、ステップS73の処理に戻る。
【0082】
(第2の実施形態の効果)
以上説明した第2の実施形態では、次の(D)〜(F)のような効果がある。
(D) コレクタ20に太陽位置検出器90を設けて、集熱運転中に、常にコレクタ20の目標回転角度Θtを太陽光Lにあわせて補正するように制御している。これにより、太陽位置テーブル86の精度によらず、常に最適な集熱効率が得られる。
【0083】
(E) 太陽位置検出器90の取付誤差を学習によって補正するように構成している。これにより、太陽位置検出器90の取付精度によらず、常に最適な集熱効率が得られる。
【0084】
(F) 太陽位置検出器90は、コレクタ20と連動して回転する。更に、太陽と反対方向(図の北方向)の支持バー23上に設置され、反射パネル21上に影を落とさないようになっている。これにより、太陽光集熱器10Aの集熱効率の悪化を抑止している。
【0085】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(k)のようなものがある。
【0086】
(a) 第1および第2の実施形態では、予め設置位置ごとに計算されている太陽位置テーブル86を設け、日時と太陽位置テーブル86によって太陽位置を求めている。しかし、これに限られず、日時、ならびに、設置位置の緯度および経度にもとづいて、太陽位置を求めても良い。これにより、太陽位置テーブル86の量子化誤差を解消することが可能である。
【0087】
(b) 第1および第2の実施形態は、トラフ型の太陽光集熱装置の例である。しかし、これに限られず、パラボラアンテナと同様の形状の鏡を用いて、鏡の前に設置されたスターリングエンジン等に太陽光Lを集中させ、熱エネルギに変換する形式であるパラボラ型の太陽光集熱装置であってもよい。この場合には、太陽位置から東西方向の目標回転角度Θ1tと南北方向の目標回転角度Θ2tを求め、東西方向のオフセット値ρ1を東西方向の目標回転角度Θ1tに加え、南北方向のオフセット値ρ2を南北方向の目標回転角度Θ2t加える。パラボラ形状の反射鏡を東西方向に目標回転角度(Θ1t+ρ1)で回転させると共に、南北方向に目標回転角度(Θ2t+ρ2)で回転させる。そして、ρ1−ρ2平面における集熱効率のピークを求めて、この集熱効率のピークにおけるオフセット値ρ1とρ2とを最適値とする。
(c) 第1及び第2の実施形態は、熱媒体として水を使用している。しかし、これに限られず、油やその他の物質であっても良い。
【0088】
(d) 第2の実施形態において、太陽位置検出器90の部品としてフォトダイオード93を使用している。しかし、これに限られず、太陽光Lを受光して電気を発生する光電効果を有する部品であれば良い。
【0089】
(e) 第2の実施形態において、太陽位置検出器90内への入射にスリット92を利用している。しかし、これに限られず、他の開口形状であっても、太陽位置検出器90が太陽に正対した状態において、太陽光Lがフォトダイオード93の中心に照射できる形状であれば良い。
【0090】
(f) 第1および第2の実施形態において、直立日射計29によって、直立日射量[kW/m]を測定している。しかし、これに限られず、オフセット値等が未調整の太陽光集熱器10−1の集熱量を、オフセット値等が調整済の他の太陽光集熱器10−2の集熱量で除算し、これを太陽光集熱器10−1の集熱効率としても良い。これにより、直立日射計29が不要となる。
【0091】
(g) 第1および第2の実施形態において、直立日射計29は、コレクタ20と連動して回転する。更に、太陽と反対方向(図1および図7の北方向)の支持バー23上に設置され、反射パネル21上に影を落とさないようになっている。しかし、これに限られず、太陽と反対方向(図1および図7の北方向)の保持脚31または支持フレーム22に設置されていても良い。更に、反射パネル21の短手方向(図の東西方向)の横に設置されていても良い。
【0092】
(h) 第2の実施形態において、太陽位置検出器90は、コレクタ20と連動して回転し、且つ反射パネル21上に影を落とさないように、太陽と反対方向(図7の北方向)の支持バー23上に設置されている。しかし、これに限られず、太陽と反対方向(図7の北方向)の保持脚31または支持フレーム22に設置されていても良い。更に、反射パネル21の短手方向(図の東西方向)の横に設置されていても良い。
【0093】
(i) 第2の実施形態において、直立日射計29によって、直立日射量[kW/m]を測定している。しかし、これに限られず、太陽位置検出器90によって、直立日射量を測定しても良い。これにより、直立日射計29が不要となる。
【0094】
(j) 第1および第2の実施形態において、ピーク値を検出する際に用いている所定の集熱効率は、予め定められた値である。しかし、これに限られず、例えば、集熱効率の最大値を計算し、計算した最大値の所定の割合を、所定の集熱効率としても良い。
【0095】
(k) 第1および第2の実施形態では、回転位置検出器70を設け、コレクタ20の回転角度Θを測定(実測)しながら、所定の目標回転角度Θtになるようにサーボモータである駆動装置50を制御している。しかし、これに限られず、例えば、回転位置検出器70を設けず、駆動装置50をステッピングモータで構成し、このステッピングモータによって、コレクタ20を目標回転角度Θtに回転するように制御しても良い。
【符号の説明】
【0096】
10,10A 太陽光集熱器
20 コレクタ(集光部)
21 反射パネル
22 支持フレーム
23 支持バー
24 枠フレーム
29 直立日射計
30 集熱管(集熱部)
31 保持脚
40 支柱
50 駆動装置
70 回転位置検出器
80 制御装置
81 CPU
82 計時部
83 駆動制御部
84 集熱効率算出部
85 記憶部
86 太陽位置テーブル
90 太陽位置検出器(太陽位置検出部)
91 ケーシング
92 スリット
93 フォトダイオード(光方向検出手段)
200 空調システム
211 流量計
212−1,212−2 温度計
220 ポンプ
320−1 熱媒体復路
320−2 熱媒体往路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を反射して集光する集光部と、
前記集光部が集光した光を熱に変換する集熱部と、
日時と設置場所に基づいて前記集光部が前記集熱部に太陽光を集光する所定角度を算出し、前記所定角度で前記集光部を回転する駆動制御部と、
前記集熱部が集熱した熱量に基づいて集熱効率を測定し算出する集熱効率算出部と、
を有する太陽光集熱装置であって、
前記駆動制御部が前記所定角度に所定のオフセットを加えて前記集光部を回転したのち、前記集熱効率算出部が前記所定のオフセットにおける集熱効率を測定することを、前記所定のオフセットを変化させながら繰り返して行い、変化させた前記所定のオフセットと前記集熱効率との関係から、最適なオフセットを求めること
を特徴とする太陽光集熱装置。
【請求項2】
前記最適なオフセットとは、前記集熱効率のピーク値における前記所定のオフセットであること
を特徴とする請求項1に記載の太陽光集熱装置。
【請求項3】
前記最適なオフセットとは、前記集熱効率が所定値以上である前記所定のオフセットの範囲の中間値であること
を特徴とする請求項1に記載の太陽光集熱装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の太陽光集熱装置は、前記最適なオフセットを求めたのち、前記駆動制御部が前記所定角度に前記最適なオフセットを加えて前記集光部を回転して、前記集熱部による集熱を行うこと
を特徴とする太陽光集熱装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の太陽光集熱装置は更に、太陽光の熱エネルギを測定する太陽光エネルギ検出部を有し、
前記集熱効率算出部は、前記集熱部が集熱した熱量と、前記測定した太陽光の熱エネルギと、前記集熱部の投影面積とに基づいて、集熱効率を測定し算出すること
を特徴とする太陽光集熱装置。
【請求項6】
前記太陽光エネルギ検出部は、前記集熱部に固定され、且つ前記集熱部の太陽と反対方向の箇所に設置されていること
を特徴とする請求項5に記載の太陽光集熱装置。
【請求項7】
前記駆動制御部が前記所定角度に前記所定のオフセットを加えて前記集光部を回転したのち、前記集熱効率算出部が前記所定のオフセットにおける集熱効率を測定しているとき、前記測定した太陽光の熱エネルギが所定値以下であったことを検出した場合、前記測定した集熱効率を破棄し、新たに前記集熱効率算出部が前記所定のオフセットにおける集熱効率を測定すること
を特徴とする請求項5または請求項6に記載の太陽光集熱装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の太陽光集熱装置は更に、
それぞれ異なった方向の光を検出する複数の光方向検出手段を備え、且つ前記集光部に固定されている太陽位置検出部を有し、
前記駆動制御部は、前記複数の光方向検出手段のうち1つを選択し、前記太陽位置検出部が前記選択された光方向検出手段によって光を検出するように前記集光部を回転したのち、前記集熱効率算出部が前記選択された光方向検出手段における集熱効率を測定することを、前記選択された光方向検出手段を変更しながら繰り返して行い、前記選択された光方向検出手段の位置と前記集熱効率との関係から、最適な光方向検出手段を求めること
を特徴とする太陽光集熱装置。
【請求項9】
前記最適な光方向検出手段とは、前記集熱効率のピーク値における前記選択された光方向検出手段であること
を特徴とする請求項8に記載の太陽光集熱装置。
【請求項10】
前記最適な光方向検出手段とは、前記集熱効率が所定値以上である前記選択された光方向検出手段の範囲の中間に位置していること
を特徴とする請求項8に記載の太陽光集熱装置。
【請求項11】
請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の太陽光集熱装置は、前記最適な光方向検出手段を求めたのち、前記駆動制御部は、前記太陽位置検出部が前記最適な光方向検出手段を検出するよう前記集光部を回転し、前記集熱部による集熱を行うこと
を特徴とする太陽光集熱装置。
【請求項12】
前記太陽位置検出部は、前記集熱部における太陽と反対方向の箇所に設置されていること
を特徴とする請求項11に記載の太陽光集熱装置。
【請求項13】
前記駆動制御部は、前記複数の光方向検出手段のうち1つを選択し、前記太陽位置検出部が前記選択された光方向検出手段によって光を検出するように前記集光部を回転したのち、前記集熱効率算出部が前記選択された光方向検出手段における前記集熱効率を測定しているとき、前記測定した太陽光の熱エネルギが所定値以下であったことを検出したならば、
前記集熱効率算出部は、前記測定した集熱効率を破棄し、新たに前記選択された光方向検出手段における前記集熱効率を測定すること
を特徴とする請求項8ないし請求項12のいずれか1項に記載の太陽光集熱装置。
【請求項14】
太陽光を反射して集光する集光部と、
前記集光部が集光した光を熱に変換する集熱部と、
日時と設置場所に基づいて前記集光部が前記集熱部に太陽光を集光する所定角度を算出し、前記所定角度で前記集光部を回転する駆動制御部と、
前記集熱部が集熱した熱量に基づいて集熱効率を測定し算出する集熱効率算出部と、
を有する太陽光集熱装置の太陽自動追尾方法であって、
前記駆動制御部が前記所定角度に所定のオフセットを加えて前記集光部を回転し、前記集熱効率算出部が前記所定のオフセットにおける集熱効率を測定する処理を、前記所定のオフセットを変化させながら繰り返す処理と、
前記所定のオフセットと前記集熱効率との関係から、最適なオフセットを求める処理と、
を含むことを特徴とする太陽光集熱装置の太陽自動追尾方法。
【請求項15】
請求項14に記載の太陽光集熱装置は更に、
それぞれ異なった方向の光を検出する複数の光方向検出手段を有し、且つ前記集光部に固定されている太陽位置検出部を有し、
前記駆動制御部は、前記複数の光方向検出手段のうち1つを選択し、前記太陽位置検出部が前記選択された光方向検出手段によって光を検出するように前記集光部を回転したのち、前記集熱効率算出部が前記選択された光方向検出手段における集熱効率を測定することを、前記選択された光方向検出手段を変更しながら繰り返す処理と、
前記選択された光方向検出手段の位置と前記集熱効率との関係から、最適な光方向検出手段を求める処理
を含むことを特徴とする太陽光集熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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