説明

太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置

【課題】 本発明は、太陽熱のパッシブ利用による低温乾燥にて農業用ビニールハウスを改良して行う太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置を提供することを目的とする
【解決手段】 本発明の太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置は、農業用ビニールハウス枠に透明フイルム2を2重に張ってできた天井及び南側面に炭素繊維シート8を上張りしたフイルム6をもう一枚内側に張り、日射の半透過性の温室構造の大型乾燥室1と、該乾燥室1内に入射した日射による太陽熱ふく射乾燥及び太陽熱で温められた空気を乾燥室床上に送風する温風乾燥との複合で、桟積みされた木材等、木質材料の乾燥を行い、そこで生じた湿潤空気を強いドラフト力で吸引して排気する北側面の断熱円筒13と、曇天日や夜間など太陽不照時には、床暖房により太陽熱を補完するふく射乾燥を行う温水床暖房パネル12とから構成されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱を主とし、薪などの木質燃焼熱の床暖房で補充して、断熱円筒のドラフトで空気吸引する太陽熱パッシブ利用の木材及びおが粉乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材乾燥は、石油を用いた蒸気乾燥やヒーターを用いた電気乾燥で行われている。
従来の木材人工乾燥は、蒸気式、電気式等の方法による高温乾燥(100℃以上)、急速乾燥(乾燥日数3〜4日)で行われており、これによる乾燥材には曲がり、割れ、ひびなどの発生があって品質が良いとはいえない。
一方、太陽熱利用の木材乾燥は、強制循環式空気集熱器を設置してアクティブ利用による方法が試みられている(特許文献1を参照)。
この太陽熱乾燥技術は、図4に示すように炭素繊維シート(CFシート)を集熱材に使った面積120mの空気集熱器を屋根一杯に載せて、大型ファンで強力に集熱し、得られた温風を乾燥室に導き撹拌して行う太陽熱のアクティブ利用である。
これにより11mの針葉樹製材を9日間で水分20%以下まで乾燥した実績がある。
この方法は当時でもコスト的に引き合い、乾燥材の材質も良好とされたが、電力消費が大きく、その後のエネルギー情勢の緩和もあって普及に至らなかった。
【特許文献1】特開昭63−70048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、太陽熱のパッシブ利用による低温乾燥にて農業用ビニールハウスを改良して行う太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置は、農業用ビニールハウス枠に透明フイルムを2重に張ってできた天井及び南側面に炭素繊維シートを上張りしたフイルムをもう一枚内側に張り、日射の半透過性の温室構造の大型乾燥室と、該乾燥室内に入射した日射による太陽熱ふく射乾燥及び太陽熱で温められた空気を乾燥室床上に送風する温風乾燥との複合で、桟積みされた木材等、木質材料の乾燥を行い、そこで生じた湿潤空気を強いドラフト力で吸引して排気する北側面の断熱円筒と、曇天日や夜間など太陽不照時には、薪などの木質バイオマスを燃料とする燃焼熱を用いて床暖房により太陽熱を補完するふく射乾燥を行う温水床暖房パネルとから構成されるものである。
さらに、乾燥室内周囲には布製のベルトコンベヤーを4本走らせ、おが粉供給ホッパーから木質ペレット原料のおが粉をベルトコンベヤーに適宜薄層状に供給し、4本のベルトコンベヤーを超スローで進行させて乾燥室内周囲を巡回させ、木材と同様に乾燥を行い、乾燥おが粉受で回収するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置は、太陽熱を利用して低温(50〜60℃)で、7〜10日かけてゆっくり乾燥することにより、乾燥材の材質の向上がもたらされる。
本発明の太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置は木材以外に、例えば農産物の乾燥にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置を図面に基づいて、以下に説明する。
図1に温室構造の乾燥室内にベルトコンベヤー装置を設置して完成された太陽熱木材及びおが粉乾燥装置の概略側面図を示し、図2にその平面図を示す。
本発明の太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置は、農業用ビニールハウスを改良した大型乾燥室内において行う太陽熱パッシブ利用の乾燥装置である。
図1に示すように、農業用ビニールハウス枠を改良した大型乾燥室1は、北側を頂点として南側に緩やかに傾斜した屋根構造を持ち、北側壁を除き、屋根と3側壁の東側壁、西側壁、南側壁は2重の透明ビニールフイルム2で被われている。
なお、北側壁は断熱性の不透明シート3で被われている。
乾燥室1の土間4及び保護壁5はコンクリート製で、外断熱構造となっている。
屋根と南側壁は2重の透明ビニールフイルム2の内側に所定空間を空けてもう1枚の透明フイルム6で被い、該透明フイルム6の上に炭素繊維シート8(CFシート)の載せ、半透過性にしてある。
すなわち、屋根と南側壁は2重の透明ビニールフイルム2で薄い空気層を作り断熱作用をもたせ、更に2重の透明ビニールフイルム2の下に所定空間を空けて透明フイルム6を張って3重とし、送風機9で送風される空気の空気通路7を形成する。
【0007】
3重とした透明フイルム6側の空気通路7に炭素繊維シート8(CFシート)を挿入し、炭素繊維シート8(CFシート)は日射に半透過性で、炭素繊維シート8(CFシート)をサンドイッチにした3重の透明フイルム6は入射光に半透明で、かつ室内からの赤外放射には不透明となり、室内は保温される。
なお、屋根両側面の棟部には多数並行の空気通路7に連通する送風機9が設けられ、外気を屋根の多数並行の空気通路7に均等に供給するようになっており、また空気通路7の南側壁の裾部には、空気吹出し口10が設けられて温風を乾燥室1内に排出するようになっている。
炭素繊維シート8(CFシート)はそれ自身で太陽光線を吸収して空気通路7を通過する空気を温め集熱し、乾燥室1内中央に桟積された木材の空気乾燥に用いられる。
炭素繊維シート8(CFシート)は太陽光を3割透過し、透過光は直接室内に照射され木材のふく射乾燥に用いられる。
これによって受光日射の90%が透過光と温風となって室内に取り込まれて、乾燥熱源として有効利用される。
【0008】
太陽不照時や夜間には木質燃料(おが粉、木質ペレット、バーク、間伐材等)燃焼熱によって補完する。
木質燃料を温水ボイラーで燃焼させて得られた温水(60〜70℃)を熱源とし、空気吹出し口10にファンコンベクター11を配置してファンコンベクター11のコイルとファンによる温風乾燥と温水床暖房パネル12を配置して床暖房によるふく射乾燥を行う。
図2に示すように北側壁側に設置された5本の断熱円筒13は、図1に示すように上中下の3箇所に送出口14を有し、断熱円筒13の強力なドラフトで乾燥室1内の湿潤空気を吸引し、乾燥室1内の湿潤空気は断熱円筒13から室外にパッシブ排気される。
図3に示すように、乾燥室1内周囲には布製のベルトコンベヤー15を4本走らせ、おが粉供給ホッパー16から木質ペレット原料のおが粉をベルトコンベヤー15に適宜薄層状に供給し、4本のベルトコンベヤー15を超スローで進行させて乾燥室1内周囲を巡回させ、木材と同様に乾燥を行い、乾燥おが粉受17で回収する。
木材の搬入、搬出及びおが粉の装填、回収など乾燥資材の出し入れの際には、図2に示すように東側壁のシャッター扉18を開閉して乾燥おが粉受17側のベルトコンベヤー15を移動させて行う。
【0009】
次に、本発明の太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置の操作動作を図面に基づいて、以下に説明する。
本発明の太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置は、農業用ビニールハウス枠に透明ビニールフイルム2を2重に張ってできた天井及び南側面に炭素繊維シート8を上張りした透明フイルム6をもう一枚内側に張り、日射の半透過性の温室構造の大型乾燥室1と、該乾燥室1内に入射した日射による太陽熱ふく射乾燥及び太陽熱で温められた空気を乾燥室1床上に送風する温風乾燥との複合で、桟積みされた木材等、木質材料の乾燥を行い、そこで生じた湿潤空気を強いドラフト力で吸引して排気する北側面の断熱円筒13と、曇天日や夜間など太陽不照時には、薪などの木質バイオマスを燃料とする燃焼熱を用いて床暖房により太陽熱を補完するふく射乾燥を行う温水床暖房パネル12とから構成されるものである。
農業用ビニールハウスを改良した大型乾燥室1に降り注ぐ日射量は夏期晴天時で140Mcal/m月(163Wh/m月)で、このうちの45%が室内に透過し、太陽熱によるふく射乾燥に供される。
残りの45%は、屋根両側面の棟部に設けられた2台の送風機9(400W×2)で送られる外気が炭素繊維シート8(CFシート)を挿入した空気通路7に送風される。
外気は屋根の空気通路7を通過する間に炭素繊維シート8(CFシート)が集熱した太陽熱を吸収して温風となり、南側壁の裾部の空気吹出し口10から乾燥室1内に送風され、乾燥室1内の桟積みした木材及びベルトコンベヤー15上のおが粉の乾燥に供される。
その際、南側壁の裾部の空気吹出し口10には5台のファンコンベクター11(コイル付きファン200W×5)を配置し、温風乾燥を促進する。
乾燥後の湿潤空気は、北側壁側に立てられた5本の断熱円筒13のドラフト力で吸引されて、外部に排気される。
このようにして、吸入された外気は太陽熱を集熱して温風となり、木質材を乾燥後、断熱円筒13のドラフトで大気に捨てられる(空気貫流方式)。
例えば、送風機9から速度7m/sで送られる吸入空気(20℃)は、湿潤空気(40℃)となり、断熱円筒13から3m/sで排気される。
【0010】
一方、木質燃料を用いて薪ボイラーで60〜70℃の温水を作り、この温水を床に敷いた温水床暖房パネル12に供給し、低温ふく射暖房により桟積木材及びおが粉の乾燥を行う。
温水床暖房パネル12は4系統(20m×4)に分流されカスケード式に利用される。
被乾燥材は主としてカラマツ材を対象に、室内中央に製材を床から浮かせて2〜3山の桟積みにして設置し、乾燥室1内に取り入れた日射のふく射熱と炭素繊維シート8(CFシート)が集熱した空気熱で低温乾燥によって10日程度で乾燥させる。
一方、図3に示すように、おが粉は乾燥室1周囲に設けられたベルトコンベヤー15に載せられてゆっくり移動する間に、30%から10%程度に乾燥されて、ベレット原料として取り出される。
乾燥対象物は、木材(針葉樹;主にカラマツ製材)のほか、木質ペレットの原料となるおが粉(おが屑)の乾燥を並行して行い、これにより木質材の循環利用サイクルが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置の概略側面図である。
【図2】本発明の太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置の概略平面図である。
【図3】本発明のベルトコンベヤーの(a)概略側面図、(b)概略平面図である。
【図4】従来の太陽熱木材乾燥装置の概略説明図である。
【符号の説明】
【0012】
1 乾燥室
2 透明ビニールフイルム
3 不透明フイルム
4 土間
5 保護壁
6 透明フイルム
7 空気通路
8 炭素繊維シート
9 送風機
10 空気吹出し口
11 ファンコンベクター
12 温水床暖房パネル
13 断熱円筒
14 送出口
15 ベルトコンベヤー
16 おが粉供給ホッパー
17 乾燥おが粉受
18 シャッター扉


【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ビニールハウス枠に透明フイルムを2重に張ってできた天井及び南側面に炭素繊維シートを上張りしたフイルムをもう一枚内側に張り、日射の半透過性の温室構造の大型乾燥室と、該乾燥室内に入射した日射による太陽熱ふく射乾燥及び太陽熱で温められた空気を乾燥室床上に送風する温風乾燥との複合で、桟積みされた木材等、木質材料の乾燥を行い、そこで生じた湿潤空気を強いドラフト力で吸引して排気する北側面の断熱円筒と、曇天日や夜間など太陽不照時には、薪などの木質バイオマスを燃料とする燃焼熱を用いて床暖房により太陽熱を補完するふく射乾燥を行う温水床暖房パネルとから構成されることを特徴とする太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置。
【請求項2】
乾燥室内周囲には布製のベルトコンベヤーを4本走らせ、おが粉供給ホッパーから木質ペレット原料のおが粉をベルトコンベヤーに適宜薄層状に供給し、4本のベルトコンベヤーを超スローで進行させて乾燥室内周囲を巡回させ、木材と同様に乾燥を行い、乾燥おが粉受で回収することを特徴とする請求項1に記載された太陽熱利用木材及びおが粉乾燥装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−71440(P2007−71440A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258204(P2005−258204)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(500103856)マルショウ技研 株式会社 (8)
【Fターム(参考)】