説明

太陽熱発電用反射装置

【課題】昼と夜の寒暖差が大きい過酷な条件下でもミラーへの結露がしにくい太陽熱発電用反射装置を提供することにあり、特に、砂漠のような気温の変化が激しく夜間、冷え込んで湿度が上がっても、ミラーへの結露がしにくい太陽熱発電用反射装置を提供すること。
【解決手段】樹脂基材上に銀反射層を有するフィルムミラーと該フィルムミラーを支持する支持体とを有する太陽熱発電用反射装置において、前記支持体が、前記フィルムミラー背面1mあたり90kJ/K以上の熱容量と50W/(m・K)以上の熱伝導率を有することを特徴とする太陽熱発電用反射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽熱発電用反射装置に関し、詳しくは結露防止機能を有する太陽熱発電用反射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油、天然ガス等の化石燃料エネルギーを利用した際に排出される二酸化炭素による温暖化問題が国際上の共通認識となっており、二酸化炭素削減が急務になっている。二酸化炭素を削減するには、化石燃料から自然エネルギーへのシフトが重要であり、その中でも、化石燃料の代替エネルギーとして最も安定しており、総エネルギー量の多い太陽エネルギーが注目されている。太陽エネルギーの利用技術として、多数の鏡を利用して光を集光し、焦点で得られる高密度の熱エネルギーを用いた発電(太陽熱発電)が、ヨーロッパやアメリカなどの各国で活発化している。
【0003】
しかし、太陽熱発電に用いるミラーに起こる問題点として、汚れによる反射率低下が挙げられる。太陽熱発電に適した地域は、年間太陽エネルギー総量の多い地域であり、これらには砂漠地帯や、乾燥地帯が多い。これらの国では砂埃のミラーへの付着による汚れが起き易い。
【0004】
特にミラーへの汚れ付着を助長するものとして、結露がある。太陽熱発電に適した砂漠地帯、乾燥地帯では、放射冷却が強く、昼夜の構造物の温度差が大きい。したがってしばしば空気の露点温度を下回る。空気の露点温度を下回った構造物によって冷やされた空気は、含有される水蒸気が凝集し構造物に付着する、これが結露である。結露によって生じた水滴は、空気中の塵埃を吸着し、太陽の日射によって水分が蒸発する際に、塵埃が構造物表面に残留する。これが結露による汚れの原因である。この汚れによって鏡の反射率が低下すると発電プラント自体の効率低下につながる。そのためプラントのメンテナンスのためにミラーの清掃が行われているが、プラントが大規模になるほど、ミラー総面積が増大するため、メンテナンスが困難になる。そこで、ミラーへの結露を防止することで、汚れの付着頻度を低減する技術が開発されてきた。
【0005】
例えば特許文献1には夜間のミラーの温度低下を防ぐために、ヒーターを取り付ける技術が開示されている。電気を流すことにより発熱体を発熱させ、結露を防止する技術は従来から知られているが、結露防止のために電力を消費することは好ましくなく、また太陽熱発電用の反射ミラーが砂漠地帯等に設置されることが多いことを考慮すると、電源の確保が難しく、解決手段としては好ましくない。また、数千から数万にわたるミラーそれぞれに取り付けるのは現実的ではない。
【0006】
別の方法として、特許文献2には蓄熱材として水を用いミラー自身の熱容量を増大させて、放射冷却による温度低下を防ぐという方法が開示されている。この先行例では、ステンレス製のカーブミラーの裏面に熱容量の大きい水の入った袋を設置している。この場合、ミラーから放射冷却による冷却が行われるが、ステンレスは熱伝導率が高いため、裏面の水からの熱量の供給を受け易く、急激な温度の低下がない。この公知例は、熱伝導性の良いミラーが必要となる。この例ではカーブミラーに適用されるため、ミラーの位置は固定されているが、太陽熱発電用のミラーは太陽追尾が必要なために、ミラーの方向が変化する。したがって、液体の蓄熱材を用いた場合、ミラーが天頂方向を向くと蓄熱材とミラーが接触しなくなってしまう。また従来の太陽熱発電では、ガラス裏面に銀金属層を裏うちした裏面ミラーが使われているが、ガラスの熱伝導率は低く、水からの熱供給が伝わらずにガラス表面で結露が生じてしまう。金属銀は反射率・熱伝導率共に高い優れた反射材ではあるが、耐候性がなく銀をそのままミラーとしてそのまま適用することはできない。
【0007】
また特許文献3及び4には、送風装置を道路反射鏡に併設し、センサー感知方式で閾値を検知して送風を送り、外気と鏡表面との温度差を少なくして、結露を防止する方法が開示されている。この場合も電源が必要となり、解決手段としては好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−5090号公報
【特許文献2】特許第4157867号公報
【特許文献3】特開2008−88644号公報
【特許文献4】特開2009−167782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、昼と夜の寒暖差が大きい過酷な条件下でもミラーへの結露がしにくい太陽熱発電用反射装置を提供することにあり、特に、砂漠のような気温の変化が激しく夜間、冷え込んで湿度が上がっても、ミラーへの結露がしにくい太陽熱発電用反射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.樹脂基材上に銀反射層を有するフィルムミラーと該フィルムミラーを支持する支持体とを有する太陽熱発電用反射装置において、前記支持体が、前記フィルムミラー背面1mあたり90kJ/K以上の熱容量と50W/(m・K)以上の熱伝導率を有することを特徴とする太陽熱発電用反射装置。
【0012】
2.前記フィルムミラーの厚さが50μm以上200μm以内であることを特徴とする前記1に記載の太陽熱発電用反射装置。
【0013】
3.前記支持体は、太陽光入射面以外が0.10W/(m・K)以下の熱伝導率を持つ断熱材で覆われていることを特徴とする前記1または2に記載の太陽熱発電用反射装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、昼と夜の寒暖差が大きい過酷な条件下でもミラーへの結露がしにくい太陽熱発電用反射装置を提供することとができた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、樹脂基材上に銀反射層を有するフィルムミラーと該フィルムミラーを支持する支持体とを有する太陽熱発電用反射装置において、前記支持体が、前記フィルムミラー背面1mあたり90kJ/K以上の熱容量と50W/(m・K)以上の熱伝導率を有することを特徴とする太陽熱発電用反射装置により、昼間の高温時、支持体に蓄熱された熱が、夜間低温になってもフィルムミラーを露点以下になることを防ぐため、ミラーへの結露がしにくい太陽熱発電用反射装置を実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0017】
(太陽熱発電用反射装置の構成概要)
本発明の太陽熱発電用反射装置は少なくともフィルムミラーと支持体から構成される。前記ミラーは、樹脂基材と銀反射層を有するフィルムミラーであり、支持体は高い蓄熱性と高い熱伝導率を有している。
【0018】
[フィルムミラー]
前記フィルムミラーは、樹脂基材上に、構成層として、接着層、銀反射層、及び上部隣接層、保護層がこの順に設けられたフィルムミラーであることが好ましい。該構成層として、さらに、ガスバリア層、傷防止層等の特別な機能層を設けることができる。
【0019】
上記したフィルムミラーの厚さは50μm以上200μm以内であることが好ましい。
【0020】
好ましくは80μm以上150μmである。50μmより厚い場合は強度や、後述する支持体に貼り付ける際の操作性に優れ、また200μmより薄い場合は特に樹脂基材が反射層と支持体の間にあるとき、支持体に蓄熱した熱が、フィルム表面に伝わり易くなり、結露防止効果が良好である。
【0021】
[樹脂基材層]
本発明に係る樹脂基材層としては、従来公知の種々の樹脂フィルムを用いることができる。例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム等を挙げることができる。中でも、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、及びセルロースエステル系フィルムが挙げられる。
【0022】
特にポリエステル系フィルム、セルロースエステル系フィルムを用いることが好ましく、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
【0023】
当該樹脂基材の厚さは、10〜300μmの範囲内で好ましく使用できるが、更に好ましくは50〜195μm、特に好ましくは80〜145μmである。
【0024】
また、樹脂基材層には、その目的に応じて、後述のような腐食防止剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
【0025】
[反射層]
前記反射層は金属を蒸着またはメッキすることにより設けることが出来る。中でも銀を蒸着またはメッキすることにより作製される銀反射層は、反射率が高く太陽熱発電用反射装置の反射層として特に好ましい。前記銀反射層の形成法としては、湿式法及び乾式法のどちらも使用することができる。
【0026】
湿式法とは、めっき法の総称であり、溶液から金属を析出させ膜を形成する方法である。具体例をあげるとすれば、銀鏡反応などがある。
【0027】
一方、乾式法とは、真空成膜法の総称であり、具体的に例示するとすれば、抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム加熱式真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト真空蒸着法、スパッタ法などがある。とりわけ、本発明には連続的に成膜するロールツーロール方式が可能な蒸着法が好ましく用いられる。すなわち、本発明のフィルムミラーを製造するフィルムミラーの製造方法としては、当該銀反射層を銀蒸着によって形成する工程を有する態様の製造方法であることが好ましい。
【0028】
当該銀反射層の厚さは、反射率等の観点から、10〜200nmが好ましく、より好ましくは30〜150nmである。
【0029】
本発明において、銀反射層は支持体に対して光線入射側にあっても、その反対側にあっても良いが、支持体が樹脂であることから、光線による樹脂劣化を防止する目的から、光線入射側に位置する方が好ましい。
【0030】
[上部隣接層]
本発明のフィルムミラーに用いられる上部隣接層は、銀反射層の樹脂基材から遠い側に隣接し、銀の腐食劣化を防ぐとともに、銀反射層の傷防止及び、上部隣接層の外側に形成されるバリア層や傷防止層との接着力向上に寄与するものである。最上層に用いて、保護層とすることもできる。
【0031】
当該上部隣接層に使用するバインダーとしての樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の単独またはこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、さらにイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。
【0032】
イソシアネートは、TDI(トリレンジイソシアネート)系、XDI(キシレンジイソシアネート)系、MDI(メチレンジイソシアネート)系、HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系等の従来から使用されてきた各種イソシアネートが使用可能であるが、耐候性の点から、XDI系、MDI系、HMDI系のイソシアネートを使用するのが好ましい。
【0033】
上部隣接層の厚さは、密着性、耐候性等の観点から、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0034】
上部隣接層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【0035】
また、上記隣接層には、目的に応じて、後述のような腐食防止剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
【0036】
[接着層]
接着層は樹脂基材(樹脂フィルム)上に設けて樹脂基材と反射層との接着性を高める機能を有する。該接着層は樹脂からなることが好ましい。従って、当該接着層は、樹脂基材(樹脂フィルム)と金属反射層とを密着する密着性、金属反射層を真空蒸着法等で形成する時の熱にも耐え得る耐熱性、及び金属反射層が本来有する高い反射性能を引き出すための平滑性が必要である。
【0037】
該接着層に使用するバインダーとしての樹脂は、上記の密着性、耐熱性、及び平滑性の条件を満足するものであれば特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂等の単独またはこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂が好ましく、さらにイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。
【0038】
該接着層の厚さは、密着性、平滑性、反射材の反射率等の観点から、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0039】
該接着層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【0040】
また、該接着層には、その目的に応じて、後述のような腐食防止剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
【0041】
(腐食防止剤)
本発明のフィルムミラーには反射層の腐食防止剤を用いても良い。該腐食防止剤は大別して、金属反射層に対する吸着性基を有する腐食防止剤と酸化防止剤を用いることが出来る。
【0042】
ここで、「腐食」とは、金属(特に銀)がそれをとり囲む環境物質によって、化学的または電気化学的に浸食されるか若しくは材質的に劣化する現象をいう(JIS Z0103−2004参照)。
【0043】
本発明のフィルムミラーは、前記接着層が酸化防止剤を含有し、かつ前記上部隣接層が銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤を含有している態様であってもよい。
【0044】
なお、腐食防止剤の含有量は、使用する化合物によって最適量は異なるが、一般的には、0.1〜1.0/mの範囲内であることが好ましい。
【0045】
(銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤)
銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤としては、アミン類およびその誘導体、ピロール環を有する化合物、トリアゾール環を有する化合物、ピラゾール環を有する化合物、チアゾール環を有する化合物、イミダゾール環を有する化合物、インダゾール環を有する化合物、銅キレート化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する化合物、ナフタレン系の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
【0046】
アミン類およびその誘導体としては、エチルアミン、ラウリルアミン、トリ−n−ブチルアミン、O−トルイジン、ジフェニルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アセトアミド、アクリルアミド、ベンズアミド、p−エトキシクリソイジン、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメイト、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレート等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
ピロール環を有する物としては、N−ブチル−2,5−ジメチルピロール、N−フェニル−2,5−ジメチルピロール、N−フェニル−3−ホルミル−2,5−ジメチルピロール、N−フェニル−3,4−ジホルミル−2,5−ジメチルピロール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
トリアゾール環を有する化合物としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4,5,6,7−テトラハイドロトリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
ピラゾール環を有する化合物としては、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリジン、ピラゾリドン、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ヒドロキシピラゾール、4−アミノピラゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
チアゾール環を有する化合物としては、チアゾール、チアゾリン、チアゾロン、チアゾリジン、チアゾリドン、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、P−ジメチルアミノベンザルロダニン、2−メルカプトベンゾチアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
イミダゾール環を有する化合物としては、イミダゾール、ヒスチジン、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−フォルミルイミダゾール、4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
インダゾール環を有する化合物としては、4−クロロインダゾール、4−ニトロインダゾール、5−ニトロインダゾール、4−クロロ−5−ニトロインダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
銅キレート化合物類としては、アセチルアセトン銅、エチレンジアミン銅、フタロシアニン銅、エチレンジアミンテトラアセテート銅、ヒドロキシキノリン銅等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
チオ尿素類としては、チオ尿素、グアニルチオ尿素等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
メルカプト基を有する化合物としては、すでに上記に記載した材料も加えれば、メルカプト酢酸、チオフェノール、1,2−エタンジオール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、グリコールジメルカプトアセテート、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
ナフタレン系としては、チオナリド等が挙げられる。
【0057】
(酸化防止剤)
本発明のフィルムミラーに用いられる銀反射層の腐食防止剤としては、酸化防止剤を用いることもできる。
【0058】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤およびホスファイト系酸化防止剤を使用することが好ましい。
【0059】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス−〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−2,4,8,10−テトラオキオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。特に、フェノール系酸化防止剤としては、分子量が550以上のものが好ましい。
【0060】
チオール系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)等を挙げられる。
【0061】
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4′−ビフェニレン−ジホスホナイト、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0062】
なお、本発明においては、上記酸化防止剤と下記の光安定剤を併用することもできる。
【0063】
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、1−メチル−8−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2、6,6−テトラメチルピペリジン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタン−テトラカルボキシレート、トリエチレンジアミン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン等が挙げられる。
【0064】
その他ニッケル系紫外線安定剤として、〔2,2′−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)〕−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル・リン酸モノエチレート、ニッケル・ジブチル−ジチオカーバメート等も使用することが可能である。
【0065】
特にヒンダードアミン系の光安定剤としては、3級のアミンのみを含有するヒンダードアミン系の光安定剤が好ましく、具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、または1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール/トリデシルアルコールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸との縮合物が好ましい。
【0066】
(紫外線吸収剤)
本発明においては、太陽光や紫外線による劣化防止の目的で、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。前記樹脂基材上に設けられた構成層のうちいずれか一層に、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0067】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、トリアジン系等が挙げられる。
【0068】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0069】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0070】
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤としては、フェニルサルチレート、2−4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。ヒンダードアミン系紫外線吸収剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
【0071】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0072】
紫外線吸収剤としては、上記以外に紫外線の保有するエネルギーを、分子内で振動エネルギーに変換し、その振動エネルギーを、熱エネルギー等として放出する機能を有する化合物が含まれる。さらに、酸化防止剤あるいは着色剤等との併用で効果を発現するもの、あるいはクエンチャーと呼ばれる、光エネルギー変換剤的に作用する光安定剤等も併用することができる。但し、上記の紫外線吸収剤を使用する場合は、紫外線吸収剤の光吸収波長が、光重合開始剤の有効波長と重ならないものを選択する必要がある。
【0073】
通常の紫外線防止剤を使用する場合は、可視光でラジカルを発生する光重合開始剤を使用することが有効である。
【0074】
紫外線吸収剤の使用量は、0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。20質量%よりも多いと密着性が悪くなり、0.1質量%より少ないと耐候性改良効果が小さい。
【0075】
[粘着層]
太陽熱発電用反射装置の支持体とフィルムミラーを接着するための粘着層を設けることが好ましい。粘着剤としては、特に制限されず、例えばドライラミネート剤、ウエットラミネート剤、粘着剤、ヒートシール剤、などのいずれもが用いられる。
【0076】
例えばポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ニトリルゴムなどが用いられる。
【0077】
ラミネート方法は特に制限されず、例えばロール式で連続的に行うのが経済性及び生産性の点から好ましい。
【0078】
粘着層の厚さは、粘着効果、乾燥速度等の観点から、通常5〜50μm程度の範囲であることが好ましい。この厚みでは全体の熱伝導については問題はないが、粘着剤自身に熱伝導性(1W/(m・K)以上)があるとより好ましい。
【0079】
具体的な粘着層としては、ADY社のHS80−S、綜研化学社製「SKダインシリーズ」、東洋インキ社製Oribain BPWシリーズ、BPSシリーズ」、荒川化学社製「アルコン」「スーパーエステル」「ハイペール」、スリーボンド社製1225B等の粘着剤が好適に用いられる。熱伝導性のあるものとしては、これらの中でもADY社のHS80−Sが好ましい。
【0080】
また熱伝達の観点から、できるだけ支持体とフィルムミラーを密着させることが重要である。本発明ではフィルムミラー背面の95%以上が密着していることが好ましい。好ましくは98%〜100%密着していることである。
【0081】
[支持体]
本発明の支持体は、フィルムミラーの温度低下を低減させるための高い熱容量と熱伝導性を持つ蓄熱体であることが必要とされる。フィルムミラー背面に位置する支持体に、昼間の高温時はフィルムミラーを介して外部の大気からの熱量が流入する。このとき、外部の熱量は支持体に蓄えられる。夜間、熱輻射が減少し、フィルムミラー自身から熱放射のみになったとき、フィルムミラーには支持体から熱量が供給され、急激な温度低下が起きず、露点温度以下になることを防ぐことが可能になる。
【0082】
本発明では支持体は蓄熱性を有し、本発明の効果を奏すにはフィルムミラー背面1mあたり90kJ/K以上の熱容量が必要であることがわかった。120kJ/K以上材料の熱容量があることが好ましい。熱容量は支持体の材料の比熱容量にその質量を乗じた値である。比熱容量が高い場合は、支持体の質量は少なくて良く、且つ体積も大きくならないため好ましい。支持体の比熱容量は材料で決まるが、100J/(kg・K)以上であることが好ましい。上限に特に制限はないが、材料の性質上から1000J/(kg・K)程度が限度である。
【0083】
支持体の熱伝導率は50W/(m・K)以上であることが必要である。この値が低い場合は、熱が効率的に移動しない。好ましくは100W/(m・K)以上であることである。この値も材料の性質できまり、400W/(m・K)程度が上限である。
【0084】
このような比熱容量と熱伝導率をみたす支持体の材料としては、純アルミニウム、アルミニウム合金、純銅、黄銅、純鉄、タングステン鋼(W含有率5%以下)、クロム鋼(Cr含有率2%以下)、炭素鋼(C含有率0.5%以下)マンガン鋼(Mn含有率1%以下)を挙げることができる。比重が2.7g/cmであり、耐食性に優れるアルミニウム合金5000系、6000系、7000系が、質量の点からより好ましい。
【0085】
また、支持体はフィルムミラーの面精度を保つための剛体でもあり、支持体のフィルムミラー側の表面の表面粗さは15〜100nmの範囲であることが好ましい。この範囲にあると、支持体の表面の僅かな凹凸は粘着層で吸収され、フィルムミラーの平面性や、フィルムミラーと支持体の密着性が影響されることが少なくなる。
【0086】
上記の特性値は一般的な方法で測定することができる。
【0087】
表面粗さは一般的な方法で測定することができる。例えば、Veeco社製 Wyko NT9300 オプティカル プロファイラや、パナソニック社製超高精度三次元測定機(UA3P)などで行うことができる。
【0088】
金属の熱容量の値は周知であり、また例えばBrukerAXS社製 示差走査熱量計(DSC3000SA シリーズ)などで測定できる。
【0089】
金属の熱伝導率も周知であり、またJISR1650−3等などに準じて測定できる。
【0090】
[断熱材]
支持体は断熱材により、太陽光入射面以外の部分を覆われていることが好ましい。断熱材層の厚みは特に限定されず、所望の断熱性に応じて適宜設定できるが、好ましくは10〜50mm、更に好ましくは20〜40mm程度である。
【0091】
断熱材層の熱伝導率としては0.10W/(m・K)以下が好ましく、より好ましくは0.06W/(m・K)以下である。熱伝導率の下限については、熱伝導率は低いほど好ましいが、そのためにはコストや厚みの増大を伴うことなどから、0.02W/(m・K)以上が好ましい。
【0092】
用いることができる断熱材は、公知の断熱材から選択すればよい。例えば、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリエチレン系などのプラスチック製発泡体を用いることができる。これらは、形状に対する加工性がよく、取り扱いやすく、また、周辺環境中の水分が、比較的に断熱材中に浸透しにくいためである。特に好ましいのはポリスチレン系の発泡体である。
【0093】
また周辺環境の空気中の水分が断熱材を浸透して結露するのを極力防止するため、水分の透過性が低いポリ塩化ビニリデン製のラテックスをコーティングしたり、同様のフィルムやアルミニウム箔などを断熱材の外側に接着剤などで貼り付けたりしてもよい。
【0094】
また、断熱材は、支持体できるだけ密着するように型決めされている。これは、周辺に空間があると、その空間に含まれる水分が冷却に伴い結露するためである。従って、断熱材の加工が複雑になりすぎない範囲で、周辺空間はできるだけ小さくし、断熱材が支持体に密着するようにするのがよい。
【0095】
断熱材の配置は、フィルムミラー支持体から空気への放熱を防ぐために裏面に固定するのが良いが、さらには側面も覆っているとなお望ましい。また突然の降雨を想定して、内部に水が浸透しないような構造、例えば表面を樹脂などで防水保護するとより好ましい。
【0096】
断熱材の固定法は、断熱材の吹き付け、あるいはシート状断熱材の接着剤による貼り付け、ビス止めなどでも良い。
【実施例】
【0097】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0098】
(フィルムミラーの作製)
樹脂基材として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ100μm)を用いた。
【0099】
該ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ポリエステル樹脂(ポリエスター SP−181 日本合成化学製)、メラミン樹脂(スーパーベッカミンJ−820 DIC製)、TDI系イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート)、HDMI系イソシアネート(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)を樹脂固形分比率で20:1:1:2に、固形分濃度10%となるようにトルエン中に混合した溶液中に、更に腐食防止剤としてグリコールジメルカプトアセテートを塗布後に0.2μmの膜厚となるよう調整した量を添加し、グラビアコート法によりコーティングして接着層を形成した。
【0100】
更に接着層上に、銀反射層として、真空蒸着法により厚さ80nmの銀反射層を形成し、銀反射層上に、ポリエステル系樹脂(ポリエスター SP−181 日本合成化学製)とTDI系イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート)を樹脂固形分比率で10:2に混合した樹脂中に、更にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、Tinuvin 928(BASFジャパン社)を塗布後に0.3μmの膜厚となるよう調整した量を添加し、グラビアコート法によりコーティングして保護層を形成し、これを縦横45cm×45cmの大きさに断裁しフィルムミラー1を得た。
【0101】
実施例1:(太陽熱発電用反射装置1の作製)
上記フィルムミラー1を、縦横45cm×45cm、厚さ45mmのアルミニウム合金5056番(住友軽金属工業株式会社製)支持体の片面に、粘着剤として綜研化学株式会社製SKダイン1717を用いて貼り付けた。
【0102】
(断熱材の作成)
ビーズ発泡用ポリスチレン(ハイビーズ、日立化成社製)を使用し、型内成形法により45cm×45cmのサイズに収まるよう加熱成形して、肉厚20mm、成形品密度35kg/mの断熱箱1を作製した。作製した断熱箱1の熱伝導率は0.0082W/(m・K)(0℃の値)であった。
【0103】
これを、フィルムミラー1を貼り合わせたアルミニウム合金5056番支持体に、側面と背面(フィルムミラーが貼り付けられていない側)が密着するように、及び高さはフィルム面と断熱材面が同一になるように取り付けて太陽熱発電用反射装置1を作成した。
【0104】
実施例2:(太陽熱発電用反射装置2の作製)
実施例1と同様にして、但し支持体の材料のみを表1のように銅に代えて、太陽熱発電用反射装置2を作成した。
【0105】
比較例1〜4:(太陽熱発電用反射装置3〜6の作製)
実施例1と同様にして、但し支持体の材料とその厚みを表1のように代えて、及びフィルム面と断熱材面の高さが同一になるように断熱材の高さを調節して太陽熱発電用反射装置3〜6を作成した。
【0106】
(結露試験)
太陽熱発電装置設置場所のモデルとして日射量の多いアブダビを選択した。
【0107】
実験を簡略化するために、湿度が高い日を選択し、現地での結露試験を行った。
【0108】
日中、平均気温40℃露点温度20℃、夜間:平均気温15℃、露点温度10℃となる砂漠地帯において、地表から1mの位置にフィルムミラー構造体太陽熱発電用反射装置1〜6を設置し、晴天時の夜18時から朝4時まで水平状態で設置し、朝4時における表面の結露を観察した。このときの気温は10℃であった。
【0109】
以下の様にランク分けをして評価した。
【0110】
○ :結露が生じなかった
△ :微細な結露の水滴がフィルムミラーの縁部に生じた
× :結露に覆われ、水滴同士が成長して結合し、大きな水滴となっていた
各反射装置の構成と結露試験結果を表1にまとめた。
【0111】
なお表中熱容量は、支持体の材料の熱容量に質量を乗じた値(kJ/K)であり、フィルムミラー背面1mあたりの熱容量を表す。
【0112】
【表1】

【0113】
表1より、熱容量と熱伝導率が共に本発明の範囲にある実施例1、2の試料の太陽熱発電用反射装置については、熱容量のみ本発明の範囲内であると比較例3や、熱伝導率のみ本発明の範囲内であると比較例1,2の試料に比べ、フィルムミラー上に結露が生じにくいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材上に銀反射層を有するフィルムミラーと該フィルムミラーを支持する支持体とを有する太陽熱発電用反射装置において、前記支持体が、前記フィルムミラー背面1mあたり90kJ/K以上の熱容量と50W/(m・K)以上の熱伝導率を有することを特徴とする太陽熱発電用反射装置。
【請求項2】
前記フィルムミラーの厚さが50μm以上200μm以内であることを特徴とする請求項1に記載の太陽熱発電用反射装置。
【請求項3】
前記支持体は、太陽光入射面以外が0.10W/(m・K)以下の熱伝導率を持つ断熱材で覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽熱発電用反射装置。

【公開番号】特開2012−48102(P2012−48102A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191903(P2010−191903)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】