説明

太陽発電パネルのヒンジ式アセンブリおよび宇宙船

本発明は、太陽発電機に近接して配置される少なくとも2つのパネル4〜7を備える関節式アセンブリ1に関する。上記パネルは、対で関節式にされて、パネルが互いの上に重ね合わされたスタック構成と、パネルが本質的に1つ平面に配置されるアンスタックまたは展開構成との間で旋回することができ、前記パネルはヒンジで相互連結される。本発明によれば、ヒンジ要素は、以下の2つの機能、すなわち、i重ね合わされた構成および展開中に、継手がパネルをアンスタック構成に移動させる永続駆動トルクを生成する機能と、ii重ね合わされていない構成では、継手がパネルに機械的抑制を加える機能とを実行する、少なくとも1つのカルパンチェ継手11によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、地球の回りの軌道にある衛星など宇宙船(space vehicle)の太陽発電パネルの展開に関するが、これは、本発明を限定するものではない。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連して、表現「太陽発電パネル」とは、活性な光学、熱、または光起電力表面を有する太陽発電機の全ての平面構造体を指し、具体的には、
太陽エネルギーを電気エネルギーに変換するための同一または異なる光電池のアレイの支持パネル、
適した特性を有する被覆によって、太陽放射を上記パネルに集中させる反射パネル、
表面の熱光学特性(熱放散)のために使用されるパネルである。
【0003】
太陽発電機のパネルは、非常に多様な構成で配置されることができる。従来は、宇宙船の本体から離れる方向に平行の長手方向の連続部があり、その周囲で、発電機が太陽を追跡する方向に向くように構成されている。しかし、使用可能電力を増加するため、前述のパネルに追加して横方向のパネルを提供することが提案されている。パネルが、横断方向に、すなわち、発電機を宇宙船の本体に連結するヨークまたはスペーサーアームが延び、その周囲に発電機が太陽を追跡する方向に向くように構成された上記長手方向に対して横断方向に配置される構成も、当技術分野で知られている。
【0004】
打上げ中、発電機は折りたたまれ、そのパネルは、重ね合わされた構成、またはスタッキング構成として知られた構成で互いに重ね合わされる。
【0005】
たとえば、宇宙船がサービス軌道に配置された衛星である場合、発電機を運転可能にして、重ね合わされたパネルが展開される。これは、アンスタッキングと呼ばれる。
【0006】
スタッキング構成から、太陽電池パネルが実質的に同じ平面に配置される展開構成に至るようにするため、旋回軸の周りで蝶着する隣接する要素を有し、かつそれぞれ2つの隣接するパネルのうちの1つに締結された接合部によって、またはパネルの平行の縁部を連結する接合部によって、パネルに対でヒンジが付けられる。
【0007】
上記に記載した第1の接合部は、通常、上記の長手方向の連続部のパネル(直列のパネル)を連結するために使用され、上記の第2の接合部は、通常、直列のパネルに対して横方向のパネルを連結するために使用される。
【0008】
一般的に、現在、太陽電池パネルに使用されている接合部は、接触する部品の間に摩擦が存在する特徴がある。こうした接合部には潤滑が必要であるが、衛星が打上げ中および軌道に配置された後に受ける温度および真空の極限状態を考えると、潤滑の提供は非常に難しい。こうした条件下では、材料が自然発生的に共に溶接され、または結合される傾向があり、パネルが展開されない危険性が伴う。
【0009】
さらに、現在の接合部は、通常、特定の駆動システムによってパネルを展開している。接合部の摩擦は大きくかつ分散されているため、強力な駆動システムが必要である。
【0010】
また、直列のパネルを展開構成で係止するため、通常、パネルの接合部には、2つの隣接する要素の第1の要素に取付けられかつ2つの隣接する要素の第2の要素と協働する回転係止手段を含む係止機構が設けられて、対応する2つのパネルをその展開構成で係止するようになされている。この係止手段は、隣接する要素の第1の要素に回転可能に取付けられたラグと共に回転するように拘束され、2つの隣接する要素の第2の要素と共に回転するように拘束された要素の周囲面に対して衝合することによって、回転に対して一時的に係止される。周囲面は、対応する2つのパネルが展開構成に至った場合に、ラグが、周囲面から逃げ、かつ旋回して係止手段を2つの隣接する要素の第2の要素と接触状態にして、2つのパネルを展開構成で係止する構成を有する。
【0011】
こうした接合部は、衛星に質量の不利益をもたらすものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、保管および展開機能またはアンスタッキング構成でパネルの機械的強度を低下させることなく、機械的要素の数を最小限に抑えることによって太陽発電パネルの質量が任務に不利益を与えない、1組のヒンジ付き太陽発電パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的で、本発明は、パネルが互いに重ね合わされたスタッキング構成から、パネルが実質的に同じ平面に配置されるアンスタッキングまたは展開構成に旋回するように、対でヒンジが付けられた太陽発電機の少なくとも2つの隣接するパネルで形成され、2つのパネルが少なくとも1つのヒンジによってともに連結されている、ヒンジ付きアセンブリであって、
前記ヒンジが、
スタッキング構成および展開段階では、パネルをアンスタッキング構成に移動させる傾向がある連続する駆動トルクを生成する機能と、
アンスタッキング構成では、パネルをアンスタッキング構成に機械的に保持する機能との、二重の機能を有する少なくとも1つのカルパンチェ(Carpentier)リーフスプリング接合部で形成されることを特徴とする。
【0014】
したがって、本発明によるパネルのヒンジ付きアセンブリは、その質量に関して最適化された機械的パネルヒンジ構成を有する。
【0015】
したがって、運動学的条件下で直列および/または横方向のパネルを展開して、上記の、すなわちカルパンチェ接合部と呼ばれる利点を有する簡単で軽い機械装置によって、追加の駆動手段を使用せずに、パネルが自然発生的に開放されるようにすることができる。
【0016】
上記種類のシステムは、必要に応じて、たとえば互いに対して直列または横方向のパネルの展開に置き換えができることに留意することが重要である。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、2つの隣接するパネルの間の前記ヒンジは、カルパンチェ接合部だけで形成される。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記カルパンチェ接合部は、接合部が連結するパネルの下に延びる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、2つの隣接するパネル間の連結部を形成する複数のカルパンチェ接合部は、2つの隣接するパネルを折りたたんだ結果、逆方向の駆動トルクを生成するように構成されたカルパンチェ接合部の交差した連続部を特徴とするように構成される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、パネル間のパワー電流を送ることは、カルパンチェリーフスプリングと同じ機械的特性を有する材料を使用するワイヤリングハーネスによって実施される。
【0021】
パネルの展開は、通常、火工式剪断機(pyrotechnic shear)など火工装置を使用して、電気的に順序付けられ、パネルをスタッキング構成に保持するパレットを解放する。この目的で、適時に、火工装置が保持パレットを保持するタイロッドを破壊し、それによってパネルを解放して、スタッキング構成からアンスタッキング構成に移動させる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、宇宙船は、パネルをスタッキング構成に保持するためのパレットを備え、パネルが重ね合わされた構成の場合は、前記パレットが、パネルの平面に対して平行の平面に置かれ、各パレットは、パレットをパネルの展開空間の外に移動させる傾向がある駆動トルクを加えるように構成された少なくとも1つのカルパンチェ接合部によって、宇宙船の固定構造に連結される。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、パレットの幾何形状および領域は、重ね合わされた構成のとき、パレットが上部パネルの表面の一部だけを覆うように選択される。
【0024】
本発明は、また本発明によるヒンジ付きアセンブリを備えることを特徴とする宇宙船、特に衛星にある。
【0025】
次に本発明を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【0026】
本出願では、同様の機能を有する要素は、同一の参照符号が付けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1から図3は、太陽発電機の一部を形成する4つのパネルで形成されたヒンジ付きアセンブリ1の小部分を示す図である。
【0028】
図を見やすくするために、太陽発電機の残りのパネルおよび衛星自体の残りの部分は、図で示していない。
【0029】
ヒンジ付きアセンブリ1は、ヨーク3によってアセンブリを回転させるための機構2に連結されている。
【0030】
アセンブリ1は、図で番号4から7を付けた4つの剛直で展開可能なパネルを備える。
【0031】
パネルは対でヒンジが付けられて、パネルが、互いに重ね合わされた図2および図3で示したスタッキング構成から、パネルが実質的に同じ平面に配置される図1で示した展開構成に旋回できるようになされている。
【0032】
図1から図3を参照して説明する実施形態では、パネル4から7は、直列パネルの長手方向の連続部を形成するように構成されている。これらのパネルは、カルパンチェ接合部11によって共に対でヒンジが付けられ、それぞれ隣接するパネルの2つの平行の縁部のうちの1つに両側で締結されている。以下で説明するように、こうしたカルパンチェ接合部11は、接合部が連結するパネルを展開する「自動駆動」効果を有し、平行の縁部の各対に対して3つの接合部がある。
【0033】
当然、この接合部の数は、本発明を限定するものではない。
【0034】
当業者は、リーフスプリングに関連する機械的駆動および係止の原理を指すために、用語「カルパンチェ接合部」を使用する。したがって、用語「カルパンチェ接合部」を以下で使用することは、追加の機械的手段を全く使用せずに、リーフスプリングだけを使用することを指す。ただし、リーフスプリングをパネルまたは薄膜電池に固定する手段を使用する可能性は除外する。
【0035】
リーフスプリングは、2つのパネルを接合する唯一の要素であることを明確に理解されたい。本発明が有益な自己駆動型であり、係止機能が同じコンパクトな要素によって提供されるのは、この点においてである。
【0036】
図2および図3では、互いに重ね合わされたパネルは、パレット8によって重ね合わされた構成で保持され、パレット8自体は、衛星の固定構造体(図示せず)に固定されたタイロッド9によってこの位置に保持される。この後者の位置で、カルパンチェ接合部は、パレットの保持圧力によって圧縮されて、各屈曲部で肘形状110を形成する。したがって、カルパンチェ接合部10は、屈曲して働き、牽引力がパレットに加えられる。
【0037】
パネルの展開を開始させるには、タイロッドが、火工剪断機(図示せず)によって破壊される。その結果、パレットを構造に連結するカルパンチェ接合部10によって、パレットが、90°回転するように駆動され、パレットがパネルの展開領域外に移動される。
【0038】
この時点で、保持パレットが解放されたときに、図1で示したように、カルパンチェ接合部11に蓄えられた駆動トルクによって自動的にパネルが展開される。アンスタック構成になった後、カルパンチェ接合部は、好ましくは完全に真直ぐになり、パネルをこの位置に係止する。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、2つの隣接するパネルの間の連結部を形成する複数のカルパンチェ接合部は、2つの隣接するパネルが折りたたまれたときに、逆方向の駆動トルクが発生するようになされた、カルパンチェ接合部11および11’の交差した連続部を特徴とする。
【0040】
パレットの幾何形状および領域は、パレットが上部パネル4の表面の一部だけを覆うように選択されることを留意されたい。それによって、翼の慣性が大幅に低減される。
【0041】
パネルは、太陽電池を備えており、電池は、好ましくは、当業者に「薄膜」技術として知られた技術を使用するものである。本発明の有利な一態様によれば、パネルは、薄膜電池を備え、重ね合わされた構成で対面するパネルの間にインターリーブされた保護膜は存在しない。
【0042】
図1の斜影線で示した、本発明の非常に有利な変形形態によれば、3つのカルパンチェリーフスプリング111〜113は、翼の主展開軸に沿って翼を通過し、接合部11、11’で併合されている。それによって、ヒンジ11、11’でのカルパンチェ接合部の機能および「薄膜」可撓性基板を支持する追加の機能を提供する、上記で述べた利点が得られる。
【0043】
本発明の他の有利な実施形態によれば、電流は、カルパンチェリーフスプリングと同じ機械的特性を有する、CuBeタイプの銅合金を使用するワイヤリングハーネスによってパネルの間で一定の経路で送られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態による、アンスタッキング構成の1組のヒンジ付き太陽電池パネルを備える衛星の翼を示す図である。
【図2】重ね合わされた構成の衛星の翼を示す、図1の線A−Aに沿って切り取った断面図である。
【図3】衛星の翼を示す、図2の線C−Cに沿って切り取った断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルが互いに重ね合わされたスタッキング構成から、パネルが実質的に同じ平面に配置されるアンスタッキングまたは展開構成に、旋回するように対でヒンジが付けられた太陽発電機の少なくとも2つの隣接するパネル(4〜7)で形成され、2つのパネルが、少なくとも1つのヒンジによってともに連結されている、ヒンジ付きアセンブリ(1)であって、
前記ヒンジが、
スタッキング構成および展開段階では、パネルをアンスタッキング構成に移動させる傾向がある連続する駆動トルクを生成する機能と、
アンスタッキング構成では、パネルをアンスタッキング構成に機械的に保持する機能との、二重の機能を有するカルパンチェリーフスプリング接合部(11)だけで形成され、
前記カルパンチェリーフスプリング接合部が、該接合部が連結するパネルの下に延びて、パネルの支持構造体を形成することを特徴とするアセンブリ。
【請求項2】
2つの隣接するパネルの間の連結部を形成する複数のカルパンチェリーフスプリング接合部が、カルパンチェリーフスプリング接合部(11、11’)の交差した連続部を提供して、2つの隣接するパネルが折りたたまれるときに逆方向の駆動トルクを生成することを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
パワー電流が、カルパンチェリーフスプリング接合部と同じ機械的特性を有する材料を使用するワイヤリングハーネスによって、パネルの間で送られることを特徴とする、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
宇宙船が、パネルをスタッキング構成に保持するためのパレット(8)を備え、重ね合わされた構成では、前記パレットが、パネルの平面に対して平行の平面に置かれ、各パレットが、パレットをパネルの展開空間の外に移動させる傾向がある駆動トルクを加えるように構成された少なくとも1つの第2のカルパンチェリーフスプリング接合部(10)によって、宇宙船の固定構造に連結されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
パレットの幾何形状および領域が、重ね合わされた構成で、パレットが上部パネルの表面の一部だけを覆うように選択されることを特徴とする、請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のヒンジ付きアセンブリを備えることを特徴とする宇宙船、特に衛星。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−517487(P2006−517487A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501821(P2005−501821)
【出願日】平成15年10月17日(2003.10.17)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003065
【国際公開番号】WO2004/039673
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(391030332)アルカテル (1,149)
【Fターム(参考)】