説明

太陽電池、集光型太陽光発電モジュール、集光型太陽光発電ユニット、および太陽電池製造方法

【課題】耐熱性を向上させ信頼性、耐候性を向上させた太陽電池、このような太陽電池を備える集光型太陽光発電モジュール、集光型太陽光発電ユニット、およびこのような太陽電池を製造する太陽電池製造方法を提供する。
【解決手段】太陽電池10は、集光レンズ42により集光された太陽光Ls(太陽光Lsb)を光電変換する太陽電池素子11と、太陽電池素子11が載置されたレシーバ基板20と、太陽電池素子11を樹脂封止する樹脂封止部33と、樹脂封止部33の集光レンズ42側の面を被覆する透光性被覆板32とを備える。透光性被覆板32の樹脂封止部33に対向する面にレシーバ基板20への太陽光Lsの照射を防止する反射部35を備える。反射部35には、集光された太陽光Lsbの光路範囲LRRに対応する領域に太陽電池素子11(有効受光面領域)と相似形に形成された光透過窓35wが形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追尾誤差などによる部材の損傷を防止する遮光部を設けた太陽電池、そのような太陽電池を備える集光型太陽光発電モジュール、集光型太陽光発電ユニット、およびそのような太陽電池を製造する太陽電池製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置としては、太陽電池素子を隙間無く敷き詰めて構成した太陽光発電モジュールを屋根の上などに設置した非集光固定型の平板式構造が一般的である。これに対し、太陽光発電装置を構成する部材(部品)の中で価格が高い太陽電池素子の使用量を減らす技術が提案されている。
【0003】
つまり、光学レンズや反射鏡などを用いて太陽光を集光し、小面積の太陽電池素子に照射することで、太陽電池素子の面積あたりの発電電力を大きくし、太陽電池素子のコスト(つまり、太陽光発電装置のコスト)を削減することが提案されている。
【0004】
素子特性として集光倍率を上げるほど太陽電池素子の光電変換効率は向上する。しかし、太陽電池素子の位置を固定したままでは太陽光が斜光となって入射することが多くなり、太陽光を有効に利用することができない。したがって、太陽を追尾して太陽光を常に正面で受光するように構成した高集光倍率の追尾集光型太陽光発電装置が提案されている。
【0005】
図6は、従来の追尾集光型太陽光発電装置に適用される集光型太陽光発電モジュールの構成を示す断面図である。
【0006】
従来例に係る集光型太陽光発電モジュール140mは、太陽光Ls(太陽光Lsv)を受光して集光する集光レンズ142と、集光レンズ142により集光された太陽光Ls(太陽光Lsb)を光電変換する太陽電池110とを備える。また、太陽電池110は、集光レンズ142により集光された太陽光Ls(太陽光Lsb)を光電変換する太陽電池素子111と、太陽電池素子111が載置されたレシーバ基板120とを備える。また、集光レンズ142は、太陽電池素子111の裏面側に焦点位置FPを有する構成としてある。
【0007】
従来の追尾集光型太陽光発電装置は、集光レンズ142の作用により高集光倍率とした集光型太陽光発電モジュール140mを適用していた。
【0008】
高集光倍率の追尾集光型太陽光発電装置では、太陽光Lsを集光することから太陽の追尾に対する精度要求が非常に高くなる。しかし、実際には、集光レンズ142と太陽電池素子111とのアライメント誤差、太陽光発電モジュール140mを構成する部材の温度特性の差による位置ズレなどが生じることから、太陽電池素子111に対する実質的な入射光量が減少し、太陽電池素子111の発電電力(出力)が低下するという問題があった。
【0009】
また、太陽電池素子111以外の領域に位置ズレをした太陽光Ls(太陽光Lss)が照射されると、位置ズレした太陽光Lssの熱エネルギーにより照射部分の部材(例えば、絶縁膜、配線など)が高温になり、場合によっては焼損(破損)することがあるという問題があった。
【0010】
このような問題を解決するために、集光レンズと太陽電池素子の間に、2次光学系を設けることが一般的に行われている。
【0011】
具体的には、太陽電池素子表面直上に2次光学系として凸レンズを用いた構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、凸レンズの他に、両凸レンズや平凸レンズ、あるいは菱形レンズが用いられる場合もある。
【0012】
さらに、1次光学系(集光レンズ)により集光した光を太陽電池素子の直上に配置された透光性材料からなる2次光学系の内部に取り込んで側面で全反射させ、太陽電池素子の表面に集める構造が開示されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。
【0013】
しかしながら、2次光学系に両凸レンズや、平凸レンズを用いた場合は、かえって色収差の問題が悪化する、あるいは、2次光学系での反射・透過損失によって太陽電池素子への入射光量が低下するといった問題が生じる。
【0014】
特許文献1に示されている方法では、太陽電池素子に入射する光はすべて2次光学系を透過していることから、2次光学系による反射・透過損失が存在し、太陽電池素子の入射光量が実質上低下するといった問題がある。
【0015】
特許文献2、特許文献3に示されている方法では、アライメント誤差、色収差、光強度分布の問題を解決するには有効であるが、2次光学系の側面で全反射させるために側面への入射角を大きくとる必要がある。したがって、1次光学系の焦点距離を長くし、併せて2次光学系と太陽電池素子を1次光学系から離して設置する必要があり、結果として太陽光発電モジュールの厚さが厚くなり全体の重量を増加させるという問題がある。
【0016】
太陽電池モジュールの厚さが増えて重量が増加することは、集光型太陽光発電モジュールを搭載して駆動する追尾機構部(追尾駆動システム)の大型化を招き、追尾集光型太陽光発電装置のコストアップ、取り扱いの困難性、メンテナンスの困難性などの不都合をもたらす。
【0017】
また、特許文献2、特許文献3に示されている方法では、2次光学系の入射・出射端面おける反射損失、2次光学系での透過損失により太陽電池素子に入射する光量が減少するといった特許文献1と同様な問題がある。
【0018】
さらに、上述した2次光学系を用いる方法では、2次光学系は、1次光学系によって高密度に集光された太陽光を直接受光することから、2次光学系を構成する部材(材料)に対して高い耐熱性が要求され、結果として装置のコストが高くなるといった問題がある。
【0019】
また、特に高集光倍率とした場合には、集光された光ビームのエネルギー密度が高くなり、追尾誤差などにより太陽電池素子以外の領域に集光された太陽光が照射されると太陽電池素子以外の部材(配線などの部品)が焼損し、光学部材として配置されたガラスの割れを生じる恐れがある。つまり、十分な信頼性を有する追尾集光型太陽光発電装置とすることができないという問題がある。また、これらに対する十分な放熱対策が未だ提案されていないという問題がある。
【特許文献1】米国特許第5167724号明細書
【特許文献2】特開2002−289897号公報
【特許文献3】特開2003−258291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、集光された太陽光を光電変換する太陽電池であって、位置ズレした太陽光を反射する反射部を設けることにより耐熱性を向上させ信頼性、耐候性を向上させた太陽電池を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、集光レンズを備える集光型太陽光発電モジュールであって、位置ズレした太陽光を反射する反射部を設けた太陽電池を備えることにより耐熱性を向上させ信頼性、耐候性を向上させた集光型太陽光発電モジュールを提供することを他の目的とする。
【0022】
また、本発明は、複数の集光型太陽光発電モジュールを備える集光型太陽光発電ユニットであって、位置ズレした太陽光を反射する反射部を設けた太陽電池を集光型太陽光発電モジュールに備えることにより耐熱性を向上させ信頼性、耐候性を向上させた集光型太陽光発電ユニットを提供することを他の目的とする。
【0023】
また、本発明は、集光された太陽光を光電変換する太陽電池を製造する太陽電池製造方法であって、位置ズレした太陽光を反射する反射部を金属膜で形成することにより、反射部を容易かつ高精度に形成して、耐熱性に優れた信頼性の高い太陽電池を生産性良く製造する太陽電池製造方法を提供することを他の目的とする。
【0024】
また、本発明は、集光された太陽光を光電変換する太陽電池を製造する太陽電池製造方法であって、位置ズレした太陽光を反射する反射部を金属板で形成することにより、工程を簡略化し、反射部を容易かつ高精度に形成して、耐熱性に優れた信頼性の高い太陽電池を生産性良く製造する太陽電池製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る太陽電池は、集光レンズにより集光された太陽光を光電変換する太陽電池素子と、該太陽電池素子が載置されたレシーバ基板と、前記太陽電池素子を樹脂封止する樹脂封止部と、該樹脂封止部の前記集光レンズ側の面を被覆する透光性被覆板とを備える太陽電池であって、前記透光性被覆板の前記樹脂封止部に対向する面に前記レシーバ基板への太陽光の照射を防止する反射部を備えることを特徴とする。
【0026】
この構成により、集光された太陽光が追尾誤差により位置ずれを生じて太陽電池素子の位置からずれた位置を照射する場合でも、レシーバ基板への太陽光の照射を防止してレシーバ基板の温度上昇を抑制(低減)できることことから、耐熱性を向上させた信頼性、耐候性の良い高効率で安価な太陽電池とすることができる。
【0027】
また、本発明に係る太陽電池では、前記反射部は、金属膜としてあることを特徴とする。
【0028】
この構成により、優れた反射性を有する反射部を容易かつ安価に量産性良く形成することが可能となる。
【0029】
また、本発明に係る太陽電池では、前記金属膜は、アルミニウムまたは銀を用いて形成してあることを特徴とする。
【0030】
この構成により、優れた反射性を有する反射部を容易かつ高精度に量産性良く安価に形成することが可能となる。
【0031】
また、本発明に係る太陽電池では、前記反射部は、金属板としてあることを特徴とする。
【0032】
この構成により、簡単な工程で優れた反射性を有する反射部を容易かつ安価に形成することが可能となる。
【0033】
また、本発明に係る太陽電池では、前記金属板は、アルミニウム板またはステンレス鋼板であることを特徴とする。
【0034】
この構成により、簡単な工程で容易かつ安価に反射部を形成することが可能となる。
【0035】
また、本発明に係る太陽電池では、前記反射部は、波長400nmないし1200nmに対する反射率が透光性被覆板の表面での測定値で60%以上としてあることを特徴とする。
【0036】
この構成により、確実に反射作用を生じさせることが可能となる。
【0037】
また、本発明に係る集光型太陽光発電モジュールは、太陽光を集光する集光レンズと、該集光レンズにより集光された太陽光を光電変換する太陽電池とを備える集光型太陽光発電モジュールであって、前記太陽電池は、本発明に係る太陽電池であることを特徴とする。
【0038】
この構成により、耐熱性を向上させた信頼性の高い集光型太陽光発電モジュールとすることができる。
【0039】
また、本発明に係る集光型太陽光発電ユニットは、長尺状フレームと、該長尺状フレームに沿って配置された複数の集光型太陽光発電モジュールとを備える集光型太陽光発電ユニットであって、前記集光型太陽光発電モジュールは、本発明に係る太陽電池モジュールであることを特徴とする。
【0040】
この構成により、耐熱性を向上させた信頼性の高い集光型太陽光発電ユニットとすることができる。
【0041】
本発明に係る太陽電池製造方法は、集光レンズにより集光された太陽光を光電変換する太陽電池素子と、該太陽電池素子が載置されたレシーバ基板と、前記太陽電池素子を樹脂封止する樹脂封止部と、該樹脂封止部を被覆する透光性被覆板と、前記透光性被覆板の前記樹脂封止部に対向する面に形成され前記レシーバ基板への太陽光の照射を防止する反射部とを備える太陽電池を製造する太陽電池製造方法であって、前記透光性被覆板を準備する透光性被覆板準備工程と、前記透光性被覆板の前記樹脂封止部に対向する面に金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記金属膜を熱処理して前記レシーバ基板への太陽光の照射を防止する反射部を形成する金属膜熱処理工程と、前記反射部を形成した前記透光性被覆板を前記太陽電池素子に対向させて配置した状態で前記樹脂封止部を形成する樹脂封止工程とを備えることを特徴とする。
【0042】
この構成により、反射部を容易かつ高精度に形成して、耐熱性に優れた信頼性の高い太陽電池を生産性良く製造することが可能となる。
【0043】
本発明に係る太陽電池製造方法は、集光レンズにより集光された太陽光を光電変換する太陽電池素子と、該太陽電池素子が載置されたレシーバ基板と、前記太陽電池素子を樹脂封止する樹脂封止部と、該樹脂封止部を被覆する透光性被覆板と、前記透光性被覆板の前記樹脂封止部に対向する面に形成され前記レシーバ基板への太陽光の照射を防止する反射部とを備える太陽電池を製造する太陽電池製造方法であって、前記透光性被覆板を準備する透光性被覆板準備工程と、前記反射部の形状を有する金属板を準備する金属板準備工程と、前記金属板を前記透光性被覆板に接着して前記反射部を形成する金属板接着工程と、前記反射部を形成した前記透光性被覆板を前記太陽電池素子に対向させて配置した状態で前記樹脂封止部を形成する樹脂封止工程とを備えることを特徴とする。
【0044】
この構成により、工程を簡略化し、反射部を容易かつ高精度に形成して、耐熱性に優れた信頼性の高い太陽電池を生産性良く安価に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る太陽電池によれば、透光性被覆板の樹脂封止部に対向する面にレシーバ基板への太陽光の照射を防止する反射部を設けることから、位置ズレした太陽光を反射することが可能となり、耐熱性を向上させ信頼性、耐候性を向上させることが可能となるという効果を奏する。
【0046】
また、本発明に係る集光型太陽光発電モジュールによれば、位置ズレした太陽光を反射する反射部を設けた太陽電池を備えることから、位置ズレした太陽光を反射することが可能となり、耐熱性を向上させ信頼性、耐候性を向上させることが可能となるという効果を奏する。
【0047】
また、本発明に係る集光型太陽光発電ユニットによれば、複数の集光型太陽光発電モジュールを備え、位置ズレした太陽光を反射する反射部を設けた太陽電池を集光型太陽光発電モジュールに備えることから、位置ズレした太陽光を反射することが可能となり、耐熱性を向上させ信頼性、耐候性を向上させることが可能となるという効果を奏する。
【0048】
また、本発明に係る太陽電池製造方法によれば、位置ズレした太陽光を反射する反射部を金属膜で形成することから、反射部を容易かつ高精度に形成して、耐熱性に優れた信頼性の高い太陽電池を生産性良く製造することができるという効果を奏する。
【0049】
また、本発明に係る太陽電池製造方法によれば、位置ズレした太陽光を反射する反射部を金属板で形成することから、工程を簡略化し、反射部を容易かつ高精度に形成して、耐熱性に優れた信頼性の高い太陽電池を生産性良く製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0051】
<実施の形態1>
図1に基づいて、実施の形態1に係る太陽電池、太陽電池製造方法、および集光型太陽光発電モジュールについて説明する。
【0052】
図1は、本発明の実施の形態1に係る太陽電池および集光型太陽光発電モジュールの構成を示す断面図である。
【0053】
本実施の形態に係る太陽電池10は、集光レンズ42により集光された太陽光Ls(太陽光Lsb)を光電変換する太陽電池素子11と、太陽電池素子11が載置されたレシーバ基板20と、太陽電池素子11を樹脂封止する樹脂封止部33と、樹脂封止部33に対向する面に反射部35を有する透光性被覆部32とを備える。
【0054】
太陽電池素子11は、例えばSi、GaAs、CuInGaSe、CdTeなどの無機材料で構成してある。また、太陽電池素子11の構造は、単一接合型セル、モノリシック多接合型セル、波長感度領域の異なる種々の太陽電池セルを接続したメカニカルスタック型など種々の形態の構造を適用することが可能である。
【0055】
なお、太陽電池素子11の外形サイズは、使用する太陽電池材料の削減、加工の安さ、工程の容易性、簡略化などの観点から、数mm程度から20mm程度までとすることが望ましい。
【0056】
また、太陽電池素子11の感度波長領域での光反射率を低減するために、太陽電池素子11の表面に適当な反射防止膜などを設けても良い。さらに、太陽電池素子11の感度波長領域以外の波長の光を反射するUV反射膜、赤外線反射膜などを設けても良い。
【0057】
レシーバ基板20は、例えばアルミニウム板、銅板などのベース基台に適宜の絶縁層を介して所望の配線(太陽電池素子11の電極(不図示)に接続され、外部への取り出しを行なう接続パターン。また、太陽電池10相互間を直列、あるいは並列に接続するための接続パターン。不図示)が形成してある。
【0058】
つまり、太陽電池素子11が発生した電流はレシーバ基板20に形成された配線により太陽電池10の外部へ適宜取り出す構成としてある。レシーバ基板20に形成された配線は、信頼性の高い絶縁性を確保する必要があることから、例えば、銅箔で形成された接続パターンを有機材料などの絶縁膜で被覆して絶縁する構成としてある。
【0059】
透光性被覆板32は、例えばガラス板で構成してあり、耐熱性および耐湿性を確保して耐候性を向上させる。また、透光性被覆板32の厚さは、集光レンズ42側の表面での太陽光Lsbの照射強度を抑制して例えば0.35kW/m2程度以下として耐熱性を確保できる構成とする。
【0060】
また、樹脂封止部33は、太陽電池素子11と透光性被覆板32との間に充填された絶縁樹脂で構成してあり、例えば透明なシリコーン樹脂を適用して透光性被覆板32を透過した太陽光Lsを太陽電池素子11に照射させるように形成してある。なお、本実施の形態では、透光性被覆板32および樹脂封止部33により、被覆部30を構成してある。
【0061】
集光レンズ42は、追尾機構(不図示)の作用により太陽に正対する構成としてある。したがって、太陽光Lsは、集光レンズ42の入射面に対して垂直方向(光学系の光軸Laxと平行な方向)の太陽光Lsvとして入射する。また、集光レンズ42は、太陽光Lsvを屈折させた太陽光Lsbを太陽電池素子11に集光する構成としてある。以下、太陽光Lsvと太陽光Lsbを区別する必要がない場合は、それぞれ単に太陽光Lsとすることがある。
【0062】
太陽電池10は、透光性被覆板32の樹脂封止部33に対向する面にレシーバ基板20への太陽光Lsの照射を防止する反射部35を備える。また、反射部35には、集光された太陽光Lsbの光路範囲LRRに対応する領域に太陽電池素子11(有効受光面領域)と相似形に形成された光透過窓35wが形成してある。したがって、集光レンズ42(太陽光Ls)の位置が正常な状態では、太陽光Lsbは確実に太陽電池素子11に集光される構成としてある。
【0063】
太陽光Lsは、追尾機構により太陽電池素子11に集光される構成としてあるが、例えば、追尾誤差の発生あるいは光学系のアライメント誤差により位置ズレを生じ集光スポットがずれることがある。つまり、位置ズレした太陽光Lssを太陽電池10へ照射することがある。なお、以下では、追尾誤差、アライメント誤差、光強度のバラツキなどによる集光スポットのズレを単に追尾誤差(追尾誤差など)によるものとして記載することがある。
【0064】
反射部35は、太陽電池素子11(有効受光面領域)に向けて集光された太陽光Lsbに対して設定された正規の光路範囲LRRの外側に対応させて配置してあることから、仮に太陽光Lssが生じた場合には、太陽光Lssを反射することが可能となる。以下、太陽光Lssと太陽光Lsv、太陽光Lsbを区別する必要がない場合は、太陽光Lssを単に太陽光Lsとする場合がある。
【0065】
したがって、集光された太陽光Ls(太陽光Lsb)が例えば追尾誤差などにより位置ずれを生じ、太陽電池素子11の位置(有効受光面領域)からずれた位置を太陽光Lssが照射することとなった場合でも、レシーバ基板20への太陽光Ls(太陽光Lss)の照射を防止することが可能となる。つまり、レシーバ基板20への太陽光Lsの照射を防止することが可能となることから、レシーバ基板20の表面の温度上昇を抑制してレシーバ基板20の表面に配置された部材の焼損を防止することができる。
【0066】
レシーバ基板20の表面に形成してある配線は、上述したとおり、耐熱性の低い有機部材などで構成してあることから、仮に太陽光Lssが照射されると有機部材の損傷、ひいては配線の損傷を生じ、また、太陽電池10の信頼性を低下させる恐れがある。しかし、反射部35を設けていることから、太陽光Lssがレシーバ基板20(配線)に直接照射されることを防止し、配線の損傷などを回避することが可能となる。
【0067】
したがって、反射部35を配置することにより、例えば600SUN(1SUN=100mW/cm2)以上の高集光倍率の場合でも、レシーバ基板20の配線(有機部材)などの焦げ、透光性被覆板32を構成するガラスの割れなどを防ぐことが可能となり、耐熱性を向上させた信頼性、耐候性の良い高効率で安価な太陽電池10とすることができる。
【0068】
反射部35は、例えば金属膜とすることにより、太陽光Lssを効果的に反射することが可能となる。金属膜で反射部35を構成することにより、優れた反射性を有する反射部35を容易かつ安価に量産性良く形成することが可能となる。
【0069】
反射部35は、透光性被覆板32の樹脂封止部33に対向する面に設けるだけで良く、その他の部材を必要としないことから、安価に形成することが可能であり、また、レシーバ基板20に対して過剰な太陽光Ls(太陽光Lss)を照射することがないから、太陽電池素子11の効率低下の原因となる温度上昇を抑制(低減)することが可能となる。つまり、温度上昇を低減してレシーバ基板20に配置された部材の焼損などを防止できることから、耐熱性を向上させ、発電量の低下を防止することとなる。
【0070】
次に、太陽電池10を製造する太陽電池製造方法について説明する。
【0071】
まず、透光性被覆板32(ガラス)を準備する(透光性被覆板準備工程)。次に、透光性被覆板32の樹脂封止部33に対向させる面に真空蒸着法を適用して例えばアルミニウム膜を形成する(金属膜形成工程)。つまり、反射部35は、アルミニウム膜として構成することができる。蒸着時の真空度は例えば1×10-6Torrとし、形成膜厚は約3μm程度とする。
【0072】
工程を簡略化して低コスト化し、透光性被覆板32(ガラス)との密着性を向上させるために、アルミニウム膜は単層膜とすることが望ましい。しかし、2層以上の多層膜として形成することも可能である。
【0073】
また、金属膜の形成方法としては、真空蒸着法の他に、スパッタ−法、メッキ法などを適用することが可能であるが、容易性、安全性、量産性などの観点から蒸着法とすることが望ましい。
【0074】
金属膜(アルミニウム膜)が形成された透光性被覆板32に対して窒素雰囲気(空気雰囲気とすることも可能である)を有するオーブンで450℃、30分間の熱処理を施し、金属膜の熱処理を行なうことにより、レシーバ基板20への太陽光Lsの照射を防止する反射部35を形成する(金属膜熱処理工程)。なお、熱処理後の冷却は、15℃/minの徐冷速度で熱処理温度から200℃まで徐冷し、さらに、室温まで冷却することにより、透光性被覆板32の割れなどを防止し、安定的に反射部35を形成することができる。
【0075】
金属膜の熱処理温度は、400℃未満では金属膜(反射部35)とガラス(透光性被覆板32)との付着強度を十分な状態にできないことから少なくとも400℃以上であることが望ましい。また、高温側では、ガラスの軟化点に近づくとガラス割れが発生する恐れがある。軟化点はガラスの種類にもよるが、一般的な値として800℃以下とすることが望ましい。つまり、金属膜の処理温度は、450℃以上800℃以下とすることが望ましい。
【0076】
また、熱処理時間も重要な制御要素である。5分未満の熱処理時間では熱容量の点から熱処理効果を得ることはできなかった。また、50分超の熱処理時間とした場合は、過重な熱処理となり、例えばアルミニウム膜の変色などを生じることがあり、無駄なエネルギー消費となる。したがって、熱処理時間は、5分以上50分以下とすることが望ましい。
【0077】
なお、熱処理後の冷却速度も重要な制御要素である。例えば石英ガラスのような特殊なガラスを除いて、急激な冷却はガラス割れを招く恐れがある。したがって、熱処理温度から200℃までの冷却は、20℃/min以下での徐冷速度とすることが望ましい。
【0078】
その後、光路範囲LRRと太陽電池素子11との関係からレシーバ基板20に対して透光性被覆板32の位置を決め、レシーバ基板20と透光性被覆板32との間に封止樹脂を充填して樹脂封止部33を形成し、太陽電池10を樹脂封止する(樹脂封止工程)。
【0079】
上述した製造方法により製造した太陽電池10で、反射部35(ガラス/アルミニウム膜構造)は、波長400nmないし1200nmに対する反射率が透光性被覆板32の表面(空気/ガラス界面)での測定値で65%以上であった。なお、反射率を60%以上とすることにより、確実に反射作用を生じさせることが可能となる。
【0080】
つまり、反射率が60%未満では、高集光倍率の場合に、太陽光Lsがレシーバ基板20などを加熱して温度を上昇させることとなり、温度上昇の影響を受けてレシーバ基板20の表面に配置された部材の焼損、ガラス割れなどが生じる恐れがあるのに対して、反射率を60%以上とすることにより、レシーバ基板20への太陽光Lsの照射を防止してレシーバ基板20の温度上昇を確実に防止することが可能となる。
【0081】
アルミニウムの代りに銀を同様な条件のもとで用いることも可能である。金属膜を、アルミニウムまたは銀を用いて形成することにより、優れた反射性を有する反射部35を容易かつ高精度に量産性良く安価に形成することが可能となる。
【0082】
光透過窓35wを形成するアルミニウム膜のパターニングは、金属膜形成工程(あるいは金属膜熱処理工程)の後に適宜のエッチング液により行なうことが可能である。また、金属膜形成工程で光透過窓35wに対応する適宜のマスクを用いて蒸着と同時にパターニングした金属膜を形成することも可能である。また、透光性被覆板32の平面寸法の加工(平面寸法形成)は、金属膜形成工程の前、金属膜熱処理工程の後など適宜行なうことが可能である。
【0083】
上述したとおり、本実施の形態に係る太陽電池10を製造する太陽電池製造方法は、集光レンズ42により集光された太陽光Lsを光電変換する太陽電池素子11と、太陽電池素子11が載置されたレシーバ基板20と、太陽電池素子11を樹脂封止する樹脂封止部33と、樹脂封止部33を被覆する透光性被覆板32と、透光性被覆板32の樹脂封止部33に対向する面に形成されレシーバ基板20への太陽光Lsの照射を防止する反射部35とを備える太陽電池10の製造方法に関し、次の工程を備える。
【0084】
つまり、透光性被覆板32を準備する透光性被覆板準備工程と、透光性被覆板32の樹脂封止部33に対向する面に金属膜を形成する金属膜形成工程と、金属膜を熱処理してレシーバ基板20への太陽光Lsの照射を防止する反射部35を形成する金属膜熱処理工程と、反射部35を形成した透光性被覆板32を太陽電池素子11に対向させて配置した状態で樹脂封止部33を形成する樹脂封止工程とを備える。
【0085】
この構成により、優れた反射性を有する反射部35を容易かつ高精度に量産性良く安価に形成することが可能となり、耐熱性に優れた信頼性の高い太陽電池10を生産性良く製造することが可能となる。
【0086】
また、本実施の形態に係る集光型太陽光発電モジュール40mは、太陽光Ls(太陽光Lsv)を受光して集光する集光レンズ42と、集光レンズ42により集光された太陽光Ls(太陽光Lsb)を光電変換する太陽電池素子11(太陽電池10)とを備える。
【0087】
この構成により、耐熱性に優れた太陽電池10を備えることから、耐熱性を向上させた信頼性の高い集光型太陽光発電モジュール40mを構成することが可能となる。
【0088】
なお、集光型太陽光発電モジュール40mに適用する太陽電池素子11としては、高効率性、実用性が特に求められることから、InGaP/GaAs/Geで構成した3接合型太陽電池素子、AlGaAs/Siで構成した太陽電池素子、モノリシック多接合型太陽電池素子を使用することが望ましい。
【0089】
集光レンズ42による集光を効果的に行なうために、太陽光Lsを光電変換する太陽電池素子11の表面は、集光レンズ42の入射面、透光性被覆板32の入射面、出射面と平行に配置してある。
【0090】
集光レンズ42は、光軸Lax上で太陽電池素子11の裏面側に焦点位置FPを有するように構成してある。なお、太陽光Lsの各波長に対する焦点位置FPは光軸Lax上に位置する。
【0091】
集光レンズ42としては、両凸レンズ、平凸レンズ、フレネルレンズなどが挙げられる。重量・コスト・使用環境での扱い易さなどの観点から、太陽光Ls(太陽光Lsv)を受光する入射面が平坦で、太陽光Ls(太陽光Lsb)を太陽電池素子11に照射する出射面が略三角断面を有するフレネルレンズの形状としてあることが望ましい。なお、集光レンズ42は、同じ光学系を複数並べて一体に成形し、アレイ状(図5参照。)とすることも可能である。
【0092】
集光レンズ42の材質としては、太陽電池素子11の感度波長光での透過率が高く、耐候性を有するものが良い。例えば、通常の太陽電池モジュール(太陽光発電システム)などに一般的に使用される薄板ガラス、耐候性グレードのアクリル、ポリカーボネートなどを適用することが可能である。なお、集光レンズ42の材料は、これらに限定されるものではなく、これら材料を複層構成としたものでも良い。また、これら材料に、集光レンズ42自体やその他の部材の紫外線劣化を防ぐ目的で、適当な紫外線吸収剤を添加することも可能である。
【0093】
<実施の形態2>
図2、図3に基づいて、実施の形態2に係る太陽電池および太陽電池製造方法について説明する。実施の形態1で示した太陽電池10の被覆部30、反射部35の変形例を実施の形態2として説明する。基本構成は実施の形態1と同様であるので、主に異なる点について説明する。
【0094】
図2は、本発明の実施の形態2に係る太陽電池の構成を示す説明図であり、(A)は集光レンズ側から見た平面図、(B)は(A)の矢符B−Bでの断面図である。
【0095】
太陽電池10は、太陽電池素子11、太陽電池素子11が載置されたレシーバ基板20、太陽電池素子11を被覆する被覆部30を備える。被覆部30は、封止枠31、透光性被覆板32、樹脂封止部33で構成してある。封止枠31は、透光性被覆板32の載置位置を画定すると共に樹脂封止部33の形成領域を画定する。
【0096】
図2の太陽電池10では、反射部35aは、封止枠31と透光性被覆板32とで挟む構成としてある。この構成により、広い反射部35aを形成することが可能となる。また、反射部35aの厚さ分だけ封止枠31の高さを低減することができる。
【0097】
太陽電池10の製造工程の概略を説明する。
【0098】
まず、レシーバ基板20に太陽電池素子11が接続される。接続はダイボンド、ワイヤボンド(図面の見易さを考慮して図示しない。)により、レシーバ基板20に形成された配線(図面の見易さを考慮して図示しない。)に対して行われる。
【0099】
次に、太陽電池素子11の周囲に、開口部31sの部分を残して封止枠31が形成される(封止枠形成工程)。封止枠31は、例えば、白色のシリコーン樹脂(接着剤)で形成してある。樹脂封止部33と同様の樹脂を適用することにより被覆部30の密着性を向上させている。また、白色とすることにより、封止枠31自体の温度上昇を防止することが可能となる。
【0100】
封止枠31に対して反射部35aを形成された透光性被覆板32が被覆され接着される(被覆板接着工程)。つまり、反射部35aは封止枠31に直接接着される。なお、透光性被覆板32を封止枠31に接着した後、例えば150℃で30分の加熱処理を施すことにより、封止枠31を硬化しておく。
【0101】
レシーバ基板20、封止枠31、透光性被覆板32で構成された空間に開口部31sを介して矢符RF方向から封止樹脂を充填し、樹脂封止部33を形成する(樹脂封止工程)。樹脂封止部33に充填される封止樹脂は、実施の形態1の場合と同様に、透明なシリコーン樹脂とする。封止樹脂を充填した後、例えば150℃で30分の加熱処理を施すことにより、樹脂封止部33を硬化しておく。
【0102】
上述した封止枠形成工程、被覆板接着工程、樹脂封止工程により、封止枠31、反射部35aを有する透光性被覆板32、樹脂封止部33で構成される信頼性の高い被覆部30を作業性良く、容易に形成することができる。
【0103】
図3は、本発明の実施の形態2に係る太陽電池の構成を示す説明図であり、(A)は集光レンズ側から見た平面図、(B)は(A)の矢符B−Bでの断面図である。
【0104】
太陽電池10の基本構成は図2の場合と同様であるので、図2の太陽電池10と異なる点を主に説明する。反射部35bは、封止枠31の内側に包囲されるように形成してあり、反射部35bは封止枠31に重畳して接着されることはない。つまり、封止枠31は透光性被覆板32と直接接着してあり、反射部35bは封止枠31に対して隣接して配置される。
【0105】
図2、図3で示したとおり、反射部35(35a、35b)は位置ズレをした太陽光Lssを反射できれば良いことから、反射部35(35a、35b)の形状は太陽電池10の仕様(光路範囲LRR。図1参照。)に応じて適宜変更することが可能である。なお、本実施の形態では、反射部35a、反射部35bは実施の形態1と同様に金属膜で形成してある。
【0106】
なお、本実施の形態に係る太陽電池10は、実施の形態1で説明した集光型太陽光発電モジュール40mにそのまま適用することができる。
【0107】
<実施の形態3>
図4に基づいて、実施の形態3に係る太陽電池および太陽電池製造方法について説明する。実施の形態1、実施の形態2で示した太陽電池10の被覆部30、反射部35(35a、35b)の変形例を実施の形態3として説明する。基本構成は実施の形態1、実施の形態2と同様であるので、主に異なる点について説明する。
【0108】
図4は、本発明の実施の形態3に係る太陽電池の構成を示す断面図である。
【0109】
本実施の形態に係る太陽電池10では、反射部35c(反射部35)を金属板で構成してある。金属板で反射部35cを構成することにより、簡単な工程で優れた反射性を有する反射部35cを容易かつ安価に形成することが可能となる。つまり、工程を簡略化し、反射部35cを容易かつ高精度に形成して、耐熱性に優れた信頼性の高い太陽電池10を生産性良く安価に製造することが可能となる。なお、金属板の形状は、実施の形態1、実施の形態2と同様に種々の形状とすることが可能である。反射部35cは、図3に示した反射部35bの形状と同様としてある。
【0110】
金属板の材料としては、生産性、安全性、信頼性を考慮してアルミニウム(アルミニウム板)、SUS(Steel Use Stainless:ステンレス鋼材。ステンレス鋼板)を適用することが望ましい。なお、アルミニウムにはアルミニウム合金を含ませることが可能である。金属板とすることにより、真空蒸着装置などの高価な設備を用いる必要がないことから、反射部35cを形成する工程を簡略化し、量産性を向上させることが可能となる。つまり、簡単な工程で容易かつ安価に反射部35cを形成することが可能となる。
【0111】
本実施の形態では、光沢面(鏡面)を有する厚さ0.5mm程度のアルミニウム板を適用した。なお、樹脂封止部35(ガラス/アルミニウム板構造)は、波長400nmないし1200nmに対する反射率が透光性被覆板32の表面(空気/ガラス界面)での測定値で60%以上であった。また、集光レンズ42に対向する面に対して鏡面仕上げを施すことにより、反射率を容易に向上させることが可能である。
【0112】
次に、本実施の形態に係る太陽電池10を製造する太陽電池製造方法について説明する。本実施の形態に係る太陽電池製造方法は、実施の形態1と基本的には同様である。
【0113】
つまり、本実施の形態に係る太陽電池10を製造する太陽電池製造方法は、集光レンズ42により集光された太陽光Lsを光電変換する太陽電池素子11と、太陽電池素子11が載置されたレシーバ基板20と、太陽電池素子11を樹脂封止する樹脂封止部33と、樹脂封止部33を被覆する透光性被覆板32と、透光性被覆板32の樹脂封止部33に対向する面に形成されレシーバ基板20への太陽光Lsの照射を防止する反射部35cとを備える太陽電池を製造する太陽電池製造方法に関し、次の工程を備える。
【0114】
すなわち、透光性被覆板32を準備する透光性被覆板準備工程と、反射部35cの形状を有する金属板を準備する金属板準備工程と、アルミニウム板(金属板)を透光性被覆板32に接着して反射部35cを形成する金属板接着工程と、反射部35cを形成した透光性被覆板32を太陽電池素子11に対向させて配置した状態で樹脂封止部33を形成する樹脂封止工程とを備える。
【0115】
この構成により、優れた反射性を有する反射部35cを簡単な工程で容易かつ高精度に形成し、安価に太陽電池10を製造することが可能となる。
【0116】
被覆部30(透光性被覆板32)に反射部35cを形成する工程(金属板準備工程、金属板接着工程)について、さらに説明する。
【0117】
まず、反射部35cの形状を有する金属板としてのアルミニウム板を準備する(金属板準備工程)。反射部35の形状は、例えば金型を用いて大面積のアルミニウム平板をプレスすることにより形成することが可能である。
【0118】
次に、透光性被覆板32の太陽電池素子11に対向する面にアルミニウム板(反射部35c)を接着させるための接着部36を形成する(接着剤塗布工程)。接着部36は、接着剤である透明樹脂を少なくとも反射部35c(アルミニウム板)に対応する領域に塗布して形成する。アルミニウム板を接着部36に載置し、温度80℃程度としたオーブンで熱処理することにより接着部36を固化する。接着部36の固化により反射部35cは接着部36に接着され、透光性被覆板32に一体化される(金属板接着工程)。
【0119】
なお、接着部36を構成する透明樹脂は、樹脂封止部33と同様な材質で構成することが望ましい。同様な材質で構成することにより、樹脂封止部33と接着部36との界面での密着性を向上させ、また界面での反射屈折を低減し、熱容量の差による歪みの発生を防止することが可能となる。
【0120】
金属板接着工程で反射部35を接着した透光性被覆板32を準備した後、実施の形態2で示したとおりの工程で被覆部30(樹脂封止部33)を形成する。つまり、封止枠形成工程により封止枠31を形成し、被覆板接着工程により反射部35cを形成した透光性被覆板32を封止枠31に接着し、樹脂封止工程により樹脂封止部33を形成する。
【0121】
したがって、本実施の形態では、反射部35cに対応する金属板としてのアルミニウム板を準備し、アルミニウム板を接着剤で透光性被覆板32に接着して反射部35cを形成することから、高価な装置である真空蒸着装置が不要となる。また、金属板準備工程、金属板接着工程は、比較的簡易な工程であることから、反射部35cを形成する工程を簡略化し、量産性良く安価に太陽電池10を製造することが可能となる。
【0122】
なお、本実施の形態に係る太陽電池10は、実施の形態1で説明した集光型太陽光発電モジュール40mにそのまま適用することができる。
【0123】
<実施の形態4>
図5に基づいて、実施の形態4に係る集光型太陽光発電ユニットについて説明する。本実施の形態に係る集光型太陽光発電ユニットは、実施の形態1ないし実施の形態3で説明した太陽電池10を備える集光型太陽光発電モジュール40mを複数配置して構成してある。
【0124】
図5は、本発明の実施の形態4に係る集光型太陽光発電ユニットの構成を概略的に示す斜視図である。
【0125】
本実施の形態に係る集光型太陽光発電ユニット40は、長尺状フレーム44と、長尺状フレーム44に沿って配置された複数の集光型太陽光発電モジュール40mとを備える。なお、集光型太陽光発電モジュール40mは、実施の形態1ないし実施の形態3のいずれか一つに記載した太陽電池10を備える。また、集光型太陽光発電モジュール40mは、長尺状フレーム44とは異なる個別のフレームに配置することにより独立した形態とすることも可能である。
【0126】
この構成により、集光型太陽光発電ユニット40は、耐熱性に優れた太陽電池10を備えることから、耐熱性を向上させ高い信頼性を実現することが可能となる。
【0127】
集光型太陽光発電モジュール40mは、例えば30cm角程度の集光レンズ42を備え、集光型太陽光発電ユニット40は、例えば5×1個(5個)の集光型太陽光発電モジュール40mを備える構成とすることが可能である。このとき、集光型太陽光発電ユニット40は、例えば30cm×150cm程度の受光面を構成することとなる。また、集光型太陽光発電モジュール40mは、必要な電力を発電するために、適宜の数で直列または並列に接続してある。図5では、例えば、集光型太陽光発電ユニット40を7個並置して集光型太陽光発電システム(集光型太陽光発電装置)を構成した形態としてある。
【0128】
複数の集光型太陽光発電ユニット40で構成された集光型太陽光発電システム(集光型太陽光発電装置)は、支柱81に支持されて、追尾機構部(不図示)により水平方向の回転Roth、垂直方向の回転Rotvにより太陽を追尾する方向へ自動的に駆動され、集光型太陽光発電モジュール40mの表面に配置された集光レンズ42〔入射面)を太陽光Lsに対して垂直方向へ向ける構成としてある。
【0129】
したがって、本実施の形態に係る集光型太陽光発電ユニット40は、高集光倍率の集光型太陽光発電システムに適用できる。つまり、本発明に係る集光型太陽光発電モジュール40mは信頼性・耐候性のよい高効率で安価な追尾集光型太陽光発電システムを構成することが可能となる。
【0130】
また、追尾誤差などによる追尾不良が発生した場合でも、太陽電池10を焼損する恐れがなく、信頼性の高い、追尾集光型太陽光発電システムとすることが可能である。
【0131】
なお、追尾機構部(追尾駆動システム)は、太陽の方位に集光レンズ42(入射面)を向けるための方位軸と、太陽の高度に集光レンズ42(入射面)を傾けるための傾倒軸との2軸別々の追尾駆動装置によって構成されていることから、太陽を高精度に追尾することが可能となる。
【0132】
追尾駆動システムの動力系としては、モーターと減速機を用いてギヤを所定の回転数回転させて所定の方向に駆動させる方法、油圧ポンプと油圧シリンダーを用いて所定の長さにシリンダーを調節することにより所定の方向に駆動させるといった方法があり、どちらの方法を用いても良い。
【0133】
追尾駆動システムの動作を制御する追尾駆動システムの内部に搭載された時計によって、予め太陽の軌道を計算し、太陽の向きに集光型太陽光発電モジュール40m(集光型太陽光発電ユニット40)を向かせるように制御する方法、追尾駆動システムにホトダイオードなどからなる太陽センサーを取り付けて太陽方向を随時モニターし制御する方法などが太陽光追尾方法として知られており、いずれの方法を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の実施の形態1に係る太陽電池および集光型太陽光発電モジュールの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る太陽電池の構成を示す説明図であり、(A)は集光レンズ側から見た平面図、(B)は(A)の矢符B−Bでの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る太陽電池の構成を示す説明図であり、(A)は集光レンズ側から見た平面図、(B)は(A)の矢符B−Bでの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る太陽電池の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態4に係る集光型太陽光発電ユニットの構成を概略的に示す斜視図である。
【図6】従来の追尾集光型太陽光発電装置に適用される集光型太陽光発電モジュールの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0135】
10 太陽電池
11 太陽電池素子
20 レシーバ基板
30 被覆部
31 封止枠
31s 開口部
32 透光性被覆板
33 樹脂封止部
35 反射部
35w 光透過窓
36 接着部
40m 集光型太陽光発電モジュール
40 集光型太陽光発電ユニット
42 集光レンズ
44 長尺状フレーム
FP 焦点位置
LRR 光路範囲
Ls 太陽光
Lsb 太陽光
Lss 太陽光
Lsv 太陽光
Roth 水平方向回転
Rotv 垂直方向回転

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集光レンズにより集光された太陽光を光電変換する太陽電池素子と、該太陽電池素子が載置されたレシーバ基板と、前記太陽電池素子を樹脂封止する樹脂封止部と、該樹脂封止部の前記集光レンズ側の面を被覆する透光性被覆板とを備える太陽電池であって、
前記透光性被覆板の前記樹脂封止部に対向する面に前記レシーバ基板への太陽光の照射を防止する反射部を備えること
を特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記反射部は、金属膜としてあることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記金属膜は、アルミニウムまたは銀を用いて形成してあることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記反射部は、金属板としてあることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記金属板は、アルミニウム板またはステンレス鋼板であることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記反射部は、波長400nmないし1200nmに対する反射率が透光性被覆板の表面での測定値で60%以上としてあることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の太陽電池。
【請求項7】
太陽光を集光する集光レンズと、該集光レンズにより集光された太陽光を光電変換する太陽電池とを備える集光型太陽光発電モジュールであって、
前記太陽電池は、請求項1ないし請求項6のいずれか一つに記載の太陽電池であることを特徴とする集光型太陽光発電モジュール。
【請求項8】
長尺状フレームと、該長尺状フレームに沿って配置された複数の集光型太陽光発電モジュールとを備える集光型太陽光発電ユニットであって、
前記集光型太陽光発電モジュールは、請求項7に記載の集光型太陽光発電モジュールであることを特徴とする集光型太陽光発電ユニット。
【請求項9】
集光レンズにより集光された太陽光を光電変換する太陽電池素子と、該太陽電池素子が載置されたレシーバ基板と、前記太陽電池素子を樹脂封止する樹脂封止部と、該樹脂封止部を被覆する透光性被覆板と、前記透光性被覆板の前記樹脂封止部に対向する面に形成され前記レシーバ基板への太陽光の照射を防止する反射部とを備える太陽電池を製造する太陽電池製造方法であって、
前記透光性被覆板を準備する透光性被覆板準備工程と、
前記透光性被覆板の前記樹脂封止部に対向する面に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜を熱処理して前記レシーバ基板への太陽光の照射を防止する反射部を形成する金属膜熱処理工程と、
前記反射部を形成した前記透光性被覆板を前記太陽電池素子に対向させて配置した状態で前記樹脂封止部を形成する樹脂封止工程とを備えること
を特徴とする太陽電池製造方法。
【請求項10】
集光レンズにより集光された太陽光を光電変換する太陽電池素子と、該太陽電池素子が載置されたレシーバ基板と、前記太陽電池素子を樹脂封止する樹脂封止部と、該樹脂封止部を被覆する透光性被覆板と、前記透光性被覆板の前記樹脂封止部に対向する面に形成され前記レシーバ基板への太陽光の照射を防止する反射部とを備える太陽電池を製造する太陽電池製造方法であって、
前記透光性被覆板を準備する透光性被覆板準備工程と、
前記反射部の形状を有する金属板を準備する金属板準備工程と、
前記金属板を前記透光性被覆板に接着して前記反射部を形成する金属板接着工程と、
前記反射部を形成した前記透光性被覆板を前記太陽電池素子に対向させて配置した状態で前記樹脂封止部を形成する樹脂封止工程とを備えること
を特徴とする太陽電池製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−187157(P2008−187157A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22026(P2007−22026)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】