説明

太陽電池の検査装置

【課題】 太陽電池に順方向の電流を流してEL発光させる検査装置であって、構造が簡単で安価な暗室を備えた太陽電池の検査装置を提供する。
【解決手段】 平らな上面111を備えた暗室110と、該暗室110の上面に設けられ、被測定物200となる太陽電池を載せる透明板112と、前記暗室110の内部に設けられ透明板に対して傾斜して設けられた反射板140と、カメラ120と、該カメラを前記暗室内で移動する移動機構130とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池セル、太陽電池セルを一列に接続したストリング、ストリングを平行に複数配置した太陽電池パネルなど、太陽電池一般の性能を検査する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの利用方法として、シリコン型の太陽電池が知られている。太陽電池の製造においては、太陽電池が目的の発電能力を有しているかどうかの性能評価が重要である。性能評価には、通常、出力特性の測定がされる。
【0003】
出力特性は、光照射下において、太陽電池の電流電圧特性を測定する光電変換特性として行われる。光源としては、太陽光が望ましいのであるが、天候により照射強度が変化することから、ソーラシミュレータが使用されている。ソーラシミュレータでは、太陽光に代えてキセノンランプやメタルハライドランプ等を使用している。また、これらの光源を長時間点灯していると、温度上昇などにより光量が変化する。そこで、これらのランプのフラッシュ光を用い、横軸を電圧、縦軸を電流として、収集したデータをプロットすることにより太陽電池の出力特性曲線を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ソーラシミュレータと異なる方法として、特許文献2では、シリコンの多結晶型の太陽電池素子に対して順方向に電圧を印加することで、エレクトロルミネッセンス(EL)を生じさせる方法を提案している。太陽電池素子から発光されるELを観察することによって、電流密度分布が分かり、電流密度分布の不均一から太陽電池素子の欠陥を知ることができる。すなわち、発光しない部分が欠陥部分と判断でき、この欠陥部分の面積が予め決められた量より少なければ、所定の発電能力を有するものと判断できることになる。
【0005】
図7は、特許文献2に記載された検査装置の構成を模式的に示す図である。検査装置10は、暗室11と、この暗室11の上部に設けられたCCDカメラ12と、暗室11の床面に載置された太陽電池セル13に電流を流す電源14と、CCDカメラ12からの画像信号を処理する画像処理装置15とから構成されている。
【0006】
暗室11には窓11aがあり、ここにCCDカメラ12のファインダー12aがあって、ここから肉眼で覗くことで、CCDカメラ12の撮影画像を確認することができる。画像処理装置15としては、パソコンを使用している。
【特許文献1】特開2007−88419
【特許文献2】WO/2006/059615
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7に示す検査装置10は、太陽電池セル13を下に置いて、上からカメラで撮影するのであるが、太陽電池セル13から発光されるELは、1,000nmから1,300nmの波長の微弱な光であり、暗室11でなければ検知できない。被測定物が1枚の太陽電池セルであれば、100mm平方程度なので、暗室11も小さいものでよい。
【0008】
しかし、太陽電池パネルになると、2m×1m程度の大きさとなり、暗室11もこれを収容できる大きさが必要となる。また、被測定物となる太陽電池パネルは、暗室内に入れなければCCDカメラ12で撮影できないので、暗室に太陽電池パネルの出し入れができる扉を設けなければならない。検査装置をこのような暗室内に搬入する構成とすると、設置した扉が閉じた場合の遮光性も確保しなければならない。また検査装置に搬入された太陽電池の位置決め部材や搬送ガイド部材も暗室内に設ける必要がある。さらに、太陽電池に電流を通すための通電手段も暗室内に設ける必要がある。という具合に構造的に複雑になり、高価なものとなる。
【0009】
またこのような検査装置を太陽電池パネルの製造ラインの一装置として組み込む場合に以下のような問題が発生する。被測定物である太陽電池パネルの大型化により、太陽電池パネル全体をカメラで撮影して検査する場合に、そのカメラを太陽電池パネルより下方に設けた場合、太陽電池パネルとカメラとの間の距離を長く設定する必要がある。従って製造ラインにおける太陽電池パネルのパスライン(工場床面から太陽電池パネルを搬送する位置までの高さ寸法)を統一しようとすると、この検査装置を設置する場所のみ、工場床面を掘り下げて設置しなくてはならない。したがって装置を導入する場合の付帯コストが高価なものとなる。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたもので、太陽電池に順方向の電流を流してEL発光させる検査装置であって、構造が簡単で安価な太陽電池の検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明の太陽電池の検査装置は、平らな上面を備えた暗室と、該暗室の前記上面に設けられ、被測定物となる太陽電池を載せる透明板と、前記暗室の内部にあって前記透明板に対して傾斜して設けられた反射板と、該反射板に映った被測定物の像を写すカメラとを有することを特徴としている。
【0012】
また前記検査装置は、前記暗室内に、前記カメラを前記暗室内で、前記透明板と交差する面内で移動する移動機構を設けた構成とすることもできる。
【0013】
さらに前記暗室内の温湿度をほぼ一定に保つ温湿度調整装置を設けた構成としたり、前記反射板の支持具が、反射板の膨張による伸縮を吸収可能な構成としたり、前記反射板の反射面を清掃する自動清掃装置を設けた構成としたり、前記反射板の裏面に、反射板の温度をほぼ一定に保つために温度調整用のヒータなどの加熱手段や、ペルチェ素子などの加熱・冷却手段を設けた構成とすることもできるし、熱交換用の流体を流す温度調整用管路を設けた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の太陽電池の検査装置によれば、暗室の外側から暗室の上面の透明板の上に被測定物となる太陽電池を置くと、暗室の中にあるカメラが太陽電池の画像を撮影することができる。撮影時には、太陽電池に電流を流しておくので、太陽電池は、EL発光をしている。この発光状態をカメラで撮影し、カメラに接続された画像処理装置で分析することによって、太陽電池の欠陥の有無を知ることができる。
【0015】
太陽電池は、暗室の外から暗室の上面に載せることで検査でき、被測定物としての太陽電池を暗室に出し入れするための扉を設ける必要がない。そのため、暗室を小型化でき、その構造を簡単にすることができる。特に、前記透明板に対して傾斜して設けられた反射板を設けているので、カメラを暗室の側面に配置することができる。したがって被測定物である太陽電池パネルの大型化しても、暗室の高さを低くすることがでる。これにより製造ラインのパスラインを本発明の検査装置の前工程や後工程と統一することができる。
【0016】
さらに太陽電池パネルの場合、製造ライン(ラミネート装置などの製造装置など)では、受光面を下にして搬送される。したがって本発明の検査装置を暗室上面に透明板を設ける構成とすることにより、太陽電池パネルを反転することなく本検査装置に載せるとができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を添付の図面を参照して説明する。
【0018】
<1>被測定物(太陽電池パネル)
まず本発明の検査装置が扱う対象である被測定物200の例について説明する。図6は、本発明の検査装置にて測定する太陽電池の構成の説明図で、(a)は、太陽電池の内部の太陽電池セルが分かるように記載した平面図で、(b)はその断面図である。
【0019】
図6(a)の平面図に示す様に、被測定物200である太陽電池パネルは角型の太陽電池セル28がリード線29により複数個直列に接続されたストリング25を形成し、さらにそのストリングを複数列リード線29により接続した構成となっている。
【0020】
被測定物200である太陽電池としては、太陽電池セル28が1枚のみのものでもよく、太陽電池セル28を複数枚直線的につないだストリング25の状態でもよく、ストリング25を平行に複数列並べ、太陽電池セル28がマトリックス状に配置された太陽電池パネル30でもよい。
【0021】
また被測定物の断面構造は、図6(b)に示す様に、上側に配置された裏面材22と下側に配置された透明カバーガラス21の間に、充填材23、24を介して複数列のストリング25をサンドイッチした構成を有する。
【0022】
裏面材22は例えばポリエチレン樹脂などの材料が使用される。充填材23、24には例えばEVA樹脂(ポリエチレンビニルアセテート樹脂)などが使用される。ストリング25は、上記のように電極26、27の間に、太陽電池セル28をリード線29を介して接続した構成である。
【0023】
このような太陽電池パネルは、上記のように構成部材を積層しラミネート装置などにより、真空の加熱状態下で圧力を加え、EVAを架橋反応させてラミネート加工して得られる。
【0024】
また被測定物200としては、一般に薄膜式と呼ばれる太陽電池を対象とすることができる。
【0025】
この薄膜式の代表的な構造例では、下側に配置された透明カバーガラスには、予め透明電極、半導体、裏面電極からなる発電素子が蒸着してある。そして、このような薄膜型太陽電池パネルを、透明カバーガラスを下向きに配置し、ガラス上の太陽電池素子の上に充填材を被せ、更に、充填材の上に裏面材を被せた構造で、同じようにラミネート加工することにより得られる。
【0026】
このように被測定物200としての薄膜式の太陽電池パネルは、結晶系セルが蒸着された発電素子に変わるだけで、基本的な封止構造は前記した結晶系セルの場合と同じである。
【0027】
<2>検査装置の全体構造
図1は本発明の検査装置の構成を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。これらの図に示す本発明の太陽電池の検査装置100は、四角の箱形の暗室110およびその平らな上面111に、アクリル樹脂などの合成樹脂製又はガラス製の透明板112が取り付けられている。暗室内には、側面に被測定物200である太陽電池を検査測定するカメラ120と、その移動機構130が設けられている。ただし、カメラ120の移動機構130については用途に応じて設けない場合もある。
【0028】
暗室110は、上面111の透明板112以外は、暗室110内に光を入れないような遮光性の素材からなる構成にしている。もっとも、上面111に被測定物200として太陽電池を載せた後、被測定物200を含む上面111の全体を、遮光手段にて覆うことにすれば、上面111全体を透明板にしてもよい。また、上面以外の4つの側面と底面は全て遮光性の部材としている。
【0029】
上面111には、被測定物200の搬送をガイドする一対のガイド部材114が設けられている。ガイド部材114、114間の距離は、被測定物200のサイズに合わせて変更可能である。
【0030】
<3>被測定物の搬送ガイドおよび位置決め
ガイド部材114は、矩形断面の細長いレール状で、本発明の検査装置100の上面に、被測定物200の流れ方向に沿って一対設けられている。各ガイド部材114の内側側面には、複数個のローラ115が配置され被測定物200は、このローラ115上を移動搬送される。したがって被測定物200を搬送中および測定中に下面のカバーガラス21が検査装置100の上面の透明板112に接触することはない。またこのガイド部材114は、装置の被測定物200の搬入側および搬出側に配置された移動用レール116、送りネジ117およびハンドル118により被測定物200の幅寸法に応じて調整が可能な構成となっている。すなわち、送りネジ117は、一方が右ネジで他方が左ネジとなっており、ハンドル118を回転することで、ガイド部材114、114は、中心位置が一定の状態で、相互に接近・離反するようになっている。また、搬入側および搬出側の送りネジ117は、傘歯車を備えたクロスシャフト113により連結され、ハンドル118を回転することで、両方の送りネジ117を傘歯車によって同時に回転することができる。
【0031】
一方の搬送ガイド114の側面には、アクチュエーター等により出し入れ可能な位置決め金具119があり、搬送された被測定物200は、この位置決め金具119を突出させることにより搬送方向の位置決めがされる。位置決め金具119は、ガイド部材114の側面から出し入れする構成ではなく、ガイド部材の上方から上下させる方法またガイド部材から旋回下降させるなどの構成とすることも可能である。
【0032】
<4>撮影用カメラ
被測定物200から発するEL発光は、1,000nmから1,300nmの波長の微弱な光であり、暗室内で発光させ、撮影用カメラ120でこの微弱な光を撮影する。このため、撮影用カメラ120としては微弱な光に対する感度の良いCCDカメラを用いる必要がある。
【0033】
<5>暗室内部のカメラの移動機構
移動機構130は、z軸ガイド部131と、一対のx軸ガイド部132,132とから構成されている。カメラ120はz軸ガイド部131に取り付けられ、z軸方向に昇降可能で、このz軸ガイド部131がx軸ガイド部132によってx軸方向に進退自在になっている。
z軸ガイド部131およびx軸ガイド部132としては、各種のリニアアクチュエータや、モータとボールネジ機構等を使用することができる。
【0034】
<6>暗室内部の反射板
暗室内部には、透明板112に対して傾斜するように設けられたアルミニウム製の反射板140がある。この反射板140の反射面は鏡面状に仕上げられており、透明板112に対して傾斜していることによって、暗室の側面に取り付けられたカメラ120が透明板112の上に載置された被測定物200の像を写すことができる。実施例では、傾斜角はほぼ45゜としているが、この角度に限定されるものではない。
【0035】
移動機構130によって、カメラ120を、z−x平面内の任意の位置に移動し、被測定物200の隅から隅までの全面を撮影することが可能となっている。実施例では、移動機構130は、透明板112に対して直角の面内でカメラ120を移動しているが、直角に限定されるものではない。
【0036】
<7>その他機器
上記の他に、図示を省略するが、図7の従来例で示した電源14やパソコンを利用した画像処理装置15が設けられている。さらに、パソコンを利用して、移動機構130を制御し、被測定物200としての太陽電池パネル全体を1枚の写真に撮影したり、ここの太陽電池セル28毎に撮影したりすることができる。
【0037】
<8>検査装置の使用方法
被測定物200として太陽電池パネルを例にして、本発明の太陽電池の検査装置の使用方法を説明する。
【0038】
ラミネート装置などで製造され搬出された太陽電池パネルは、次に、コンベアなどで本発明の太陽電池の検査装置の前まで搬送される。搬送されてきた太陽電池パネルは、一対のガイド部材114、114の間でガイドされガイド部材の内側に設けられたローラ115上を移動して暗室110の上に達する。その後ガイド部材114の側面にアクチュエーター等により出し入れ可能に設けられた位置決め金具119を突出させることにより搬送方向の位置決めがされる。
【0039】
この後、遮光カバーなどによって、透明板112と被測定物200との間の隙間等から、光が暗室110内に入らないように遮光する。
【0040】
暗室110の所定の位置に達した被測定物200である太陽電池パネルは、透明なカバーガラス板を下に向けて暗室110の透明板112の上で停止し、図示しない電源との間で接続がされる。被測定物200の方が透明板112より小さいので、周囲から暗室内に光が入るから、被測定物200の上から暗室110の上面全体を後述する遮光カバーで覆う。次に被測定物200に電源から順方向の電流を流す。これにより被測定物200がEL発光するので、カメラ120で撮影する。
【0041】
本検査装置100により被測定物200の全体を撮影し、その画像により検査する場合は、移動機構を設けることなく、または移動機構を使用することなくカメラ120を暗室110の例えば図1の位置に固定して撮影することができる。この場合の被測定物200としては、太陽電池セル28、太陽電池セルを複数個リード線で接続したストリング25、さらにストリング25を複数列リード線で接続したマトリックス状の太陽電池パネル30のいずれでもよい。
【0042】
本検査装置100により太陽電池パネル30にマトリックス状に配置された太陽電池セルを1枚ずつ撮影してその画像により検査する場合は、暗室内でカメラを移動できるように移動機構130が必要となる。
【0043】
図示しないパソコンを利用した制御装置によって、移動機構130を駆動し、カメラ120は、太陽電池パネル30にマトリックス状に配置されている太陽電池セル28を1枚ずつ撮影し、パソコンなどからなる画像処理装置に画像データを送る。画像処理装置は、各太陽電池セルの画像から発光しない部分を取り出して分析し、太陽電池セル28ごとの合否を判断し、全ての太陽電池セルについての合否の結果から、太陽電池パネル30全体としての合否を判断する。
【0044】
なお、カメラ120による撮影も、カメラを移動し太陽電池セル1枚ごとでもよいし、数枚ずつでもよく、カメラの移動をせずに固定し太陽電池パネル30全体としてもよい。
【0045】
上記遮光カバーは、暗室の上面110の上部全てを覆うものである。しかし太陽電池パネル30の場合、樹脂製の裏面材22は、不透明であり、遮光性が十分である。また、暗室110の上面111も、透明板112以外を遮光性の部材で構成されている。したがって暗室110の上面と被測定物200との間の隙間部分のみを遮光部材でカバーすれば十分である。被測定物200が透明板112に密着し、かつ、透明板112より大きくて、透明板112の全体が被測定物200で覆われる場合には、遮光手段は不要である。
【0046】
また本発明のように暗室110内に反射板を設けカメラにより被測定物である太陽電池パネルを検査する構成とすることにより次のような問題が発生する。
【0047】
暗室110の周囲の雰囲気温度は、本発明の検査装置を恒温室に設置しないかぎり変化する。また暗室110内は、密閉されているので、ラミネート加工が完了し加熱された多数の被測定物について、繰り返し撮影をしていると、暗室110内にその熱が伝わり温度が上昇する。この温度上昇によって大きな反射板140が熱膨張する。このような状態で反射板が通常のボルトなどにより固定されているとひずむことになる。このような反射板のひずみにより反射板に反りが発生する。また、反射板140は上を向いているので、埃やごみが付着して汚れ、反射面を曇らせてしまうおそれもある。さらに暗室内の湿度も変化することもありその場合は、反射板の反射面に結露が発生することがある。これらの反射板に関する問題は、被測定物200の撮影画像の歪や不鮮明などの原因になり太陽電池パネルの欠陥検査の精度の低下をもたらす。
【0048】
本発明は、そのような問題の具体的な解決手段も提供するものでもあり、以下にその実施形態について述べる。
【0049】
図2は、暗室110内の空気を浄化し、かつ、暗室110内を一定の温度に保つ構成を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。暗室110の外側には、温湿度調整器150(エアープロセッサ)を設けている。温湿度調整器150は、空気の温度と湿度を一定に保つことができるものである。温湿度調整器150の吐出管151が、暗室110の一方に接続され、フィルター152を通して温湿度調整器150からの空気を暗室110内に供給する。空気は暗室110内を冷却し、温湿度を一定に保ってからフィルター153を通過して吸入管154に吸引され、温湿度調整器150に回収され、循環する。フィルター152で温湿度調整器150からの空気内の風塵を除去した状態で暗室110内に供給し、フィルター153で暗室110内の空気から風塵を除去して温湿度調整器150へと送る。これによって、暗室110内の空気を清浄にして反射板140やカメラ120への塵埃の付着を防止する。
【0050】
なお、集塵機能だけで、温室度を一定に保つ必要がない場合は、フィルター152と153とを設けて温湿度調整器150のところに集塵機を設置してもよい。
【0051】
図3は、反射板140の反射面の埃を除去する自動清掃装置160を取り付けた状態を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。反射板140の両側に支持枠161を固定し、左右の支持枠161間にスクレーパ162を架設している。スクレーパ162は、支持枠161上などに設けた図示しないリニアアクチュエータなど、適当な移動手段によって、支持枠161上を昇降し、反射板140の上を間欠的に掃除して埃を払うことができる。また、寒冷時には、反射板140上に結露することがあるが、スクレーパ162で払拭することで、結露も除去することができる。スクレーパ162は、アルミニウム製の反射板140の表面を傷つけないようなものが望ましい。このようなものとしては、たとえば、樹脂板や細い毛状のブラシ、結露除去には、先端にスポンジ状のものを取り付けたものなどが考えられる。
【0052】
図4は、反射板140の取り付け構造を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。反射板140は、暗室110の壁面等に支持された4つの支持具170で四隅を支持されている。ところで、反射板140のサイズは被測定物200の大きさと同じ程度に大きいので、少しの温度変化でも熱膨張する。四隅が固定されていると、反りとなって表れ、反射面に映る被測定物200の形状が歪む。そこで、支持具170は、溝170aが反射板140の長さ方向(図4(a)の左右方向)に長く形成されている。これによって、反射板140が膨張したり収縮した場合、その長さ方向の伸縮は、溝170aで吸収できるようにしている。次に、幅方向の伸縮の吸収であるが、これは、支持具170が暗室110にスライド可能な状態で取り付けられていることで吸収することになっている。または、上側の支持具170の溝170aの深さを深くして、反射板140の幅方向の伸縮を吸収させてもよい。
【0053】
図5は、反射板140の温度を一定に保つ別の実施例を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。この実施例では、反射板140の裏面に、蛇行した温度調整用の電気式ヒータ180を取り付け、温度調整用の電気式ヒータ180に、一定の電流を流し発熱させるようにしたものである。反射板140の温度は、電気式ヒータからの発熱により一定に保たれ、熱膨張などによる変形や反りを防止することができる。また、図示のように温度調整用の電気式ヒータ180は、反射板140の長手方向を適宜分割し、複数の蛇行した電気式ヒータとして取り付け、個別に温度制御すると、反射板140の全体を同じ温度に保つことができるので、望ましい。また、図示の実施例のように温度調整用の電気式ヒータ180を反射板140の全面に貼りつけることが望ましいが、反射板140の両端だけにしてもよい。
【0054】
また図5における温度調整用の電気式ヒータは、ペルチェ素子などの加熱・冷却機器でもよいし、さらに配管とし温度調整用の気体や水などの流体を流す構成としても良い。
【0055】
本発明の太陽電池の検査装置100では、被測定物200としての太陽電池を暗室の外側に載置すればよいので、暗室には被測定物200を出し入れするためのドアは不要となる。また、太陽電池に電流を流す電源や配線も暗室110の外でよく、暗室内には一切不要である。そのため、暗室110の構造を簡単にすることができる。特に、反射板140を被測定物200に対して傾斜させて取り付けているので、暗室110の高さを低くすることができ、装置の小型化を実現することができる。さらに製造ラインのパスラインを統一するために装置を設置する部分を掘り下げるなどの付帯工事が不要となる。
【0056】
また、本発明の太陽電池の検査装置100は、太陽電池パネルなどの製造ラインに配置して使用するが、このとき、暗室110の上面111に太陽電池の受光面を下側にして載置している。太陽電池パネルのラミネート加工など、通常の加工工程では、太陽電池の受光面を下にして搬送しているので、検査装置100に載置するとき、反転する必要がないので製造工程を簡略化できる。
【0057】
温湿度調整器150で暗室110内を一定の温度にしたり、温度調整用の電気式ヒータ180を設けることで、反射板140を一定の温度に保って変形や反りを防止することができる。また、フィルター152、153を設けたり、自動清掃装置160を設けることで、反射板140の反射面が汚れるのを防止し、被測定物200を鮮明に映すことができる。これにより太陽電池パネルの欠陥検査の精度を高精度に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の太陽電池の検査装置を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図2】暗室内の空気を浄化し、かつ、暗室内を一定の温度に保つ構成を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】反射板に埃を除去する自動清掃装置を取り付けた状態を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】反射板の取り付け構造を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図5】反射板の温度を一定に保つ別の実施例を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図6】本発明の検査装置にて測定する太陽電池の構成の説明図で、(a)は、太陽電池の内部の太陽電池セルが分かるように記載した平面図で、(b)はその断面図である。
【図7】従来の太陽電池の検査装置の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0059】
28 太陽電池セル
30 太陽電池パネル
100 太陽電池の検査装置
110 暗室
111 上面
112 透明板
114 ガイド部材
115 ローラ
116 移動用レール
117 送りネジ
118 ハンドル
119 位置決め金具
120 カメラ
130 移動機構
140 反射板
150 温湿度調整器
160 自動清掃装置
162 スクレーパ
170 (反射板の)支持具
180 温度調整用の電気式ヒータ(またはペルチェ素子、配管)
200 被測定物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平らな上面を備えた暗室と、該暗室の前記上面に設けられ、被測定物となる太陽電池を載せる透明板と、前記暗室の内部にあって前記透明板に対して傾斜して設けられた反射板と、該反射板に映った被測定物の像を写すカメラとを有することを特徴とする太陽電池の検査装置。
【請求項2】
前記暗室内に、前記カメラを前記暗室内で、前記透明板と交差する面内で移動する移動機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項3】
前記暗室内の温湿度をほぼ一定に保つ温湿度調整装置を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項4】
前記反射板の支持具が、反射板の膨張による伸縮を吸収可能な構成であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。
【請求項5】
前記反射板の反射面を清掃する自動清掃装置を設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。
【請求項6】
前記反射板の裏面に、反射板の温度をほぼ一定に保つために温度調整用の機器を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。
【請求項7】
前記反射板の裏面に、反射板の温度をほぼ一定に保つために熱交換用の流体を流す温度調整用管路を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−198411(P2009−198411A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42386(P2008−42386)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】