説明

太陽電池セル及び太陽電池セルを備えた太陽電池モジュール

【課題】太陽電池セル製造の際の破損リスクを低減すること。
【解決手段】太陽電池セル100の裏面電極の周辺部には、ストライプ状の電極12とストライプ状の電極を有しない部分13とによる凹凸が形成されている。この凹凸が形成された領域は、ダイシングシートに接着・固定されている太陽電池セルの接着力が弱い部分となり、ダイシングシート上でダイシングされた太陽電池セルの安全且つ確実な取り出しが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セル及び該太陽電池セルを備えた太陽電池モジュールに関する。
【0002】
なお、太陽電池セルとは、表裏両面或いは一方の面のみに電極を有し、内部にPN接合、或いはショットキー接合等が形成された半導体素子であって、所定の形状で所定の大きさに切り出された単体の素子であり、太陽電池セルチップと呼ばれる場合もある。太陽電池セルは、太陽光等の光エネルギーを電気エネルギーに代えることができるものであり、前記電極を有する半導体素子は、単結晶の半導体であっても良く、また、多結晶の半導体であっても良い。
【0003】
また、太陽電池モジュールとは、前記太陽電池セルの複数個が並列或いは直列に接続され、前記太陽電池セルにより発生された電力を取り出すための端子等が設けられたものである。複数の太陽電池セルを並列或いは直列に接続するのは、所望の電圧、電流を取り出すことができるようにするためのものであり、従って、特定の用途では、一個の太陽電池セルによって太陽電池モジュールを構成することもできる。
【背景技術】
【0004】
最近、二酸化炭素の増大に伴う地球の温暖化が懸念され、二酸化炭素の発生が無いクリーンなエネルギー源として太陽電池が注目されている。これまでも、太陽電池は、大規模な太陽光発電所用の発電素子として、或いは、電卓用、腕時計用等の小容量の電源用発電素子として広く使われているが、無公害エネルギー源としての期待は大きく、近年、更に、その使用範囲が広げられている。
【0005】
太陽電池には、単結晶半導体或いは多結晶半導体のブロックから所望の大きさのチップを切り出して用いたもの、或いは所望の大きさの基板に半導体薄膜を形成したもの等種々のタイプがある。それら種々のタイプの太陽電池は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する変換効率の観点、或いは製造コストの観点等から夫々の特性があり、その特性に合わせた用途に使われている。
【0006】
単結晶半導体或いは多結晶半導体からなる太陽電池は、光エネルギーを電力エネルギーに変換する変換効率が高いところから、太陽電池を設置するための面積が限られているが、比較的大きい電力が要請されるような電子機器類への使用に適している。この場合、太陽電池を設置する場所に合わせて、前記単結晶半導体のブロック、或いは多結晶半導体のブロックから所望の大きさの太陽電池用半導体チップを切り出す必要がある。
【0007】
従来、所定の厚さに切り出された半導体の薄板(半導体ウエハ)から、IC等の半導体チップを切り出す方法が知られている。即ち、所定の厚さに切り出され、複数の回路等が形成された半導体の薄板(半導体ウエハ)に対して、ダイシングラインを入れて、所定の大きさの半導体チップ(IC)を切り出した後、個々の半導体チップ(IC)に分離して取り出す。
【0008】
特許文献1には、上記IC等の半導体チップの製造方法が記載されている。
【0009】
図13、14は、特許文献1に記載の半導体チップ(半導体装置)の製造方法を示す図である。図13、14において、130は所定の厚みで切り出された半導体ウエハであって、ダイシングシート132上にフィルム接着剤143(図14参照)などにより貼り付けられる。その後、この半導体ウエハ130は、図示しないダイシングブレードによりダイシングライン131に沿ってダイシングされ、多数の半導体素子134に分割される。なお、133は金属枠である。
【0010】
ダイシングが施された半導体ウエハは、図14に示すように、ダイシングシート132上に乗せられたままの状態で、台座140上にセットされる。次いで、ダイシングシート132は、周辺方向に引っ張られる。この引っ張り動作により、各半導体素子134間に僅かな間隙が形成される。次いで、ダイシングされダイシングシート上で互いに間隙が形成された状態に置かれた半導体素子134は、個別にピックアップされることになる。半導体素子134のピックアップには、ピックアップする予定の半導体素子のダイニングシート132裏面から突き上げ棒141によって突き上げることによってなされる。
【0011】
図14は、半導体素子134’をダイシングシートからピックアップする際の状態を示している。即ち、突き上げ棒141によって、ダイシングシート132の裏面を局所的に持ち上げることにより、ピックアップされる予定の半導体素子134’とダイシングシート132との接着を部分的に剥がして両者の接触面積を少なくする。これによって、半導体素子134’とダイシングシート132との接着強度を小さくした状態とし、半導体素子134’の表面側からコレット142を用いて吸着する。この特許文献1の技術の場合には、フィルム接着剤143が半導体素子134’の裏面に転写されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−241443号公報(平成16年8月26日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の図13、図14で説明した特許文献1に記載の従来技術を、太陽電池セルの製造に応用した場合、所望の大きさにダイシングされた太陽電池セルを、比較的容易に個別に取り出すことができるが、突き上げ棒によって、太陽電池セルを突き上げた際に、太陽電池セルが上手くダイシングシートから剥がれずに割れてしまう場合があり、製造上の歩留まりが低くなるという課題を有している。
【0014】
図12は、太陽電池セルを個別に取り出す際に起きる、太陽電池セルの破損の状況を示している。図12に示すとおり、台座120上のダイシングシート122に接着・保持されている太陽電池セル123を、突き上げ棒121によって上方向に突き上げると、太陽電池セル123は、ダイシングシートから剥がれずに割れてしまう場合がある。なお、既に述べたとおり、特許文献1に示された技術では、半導体素子の裏面にフィルム接着剤が転写された状態となっているが、太陽電池セルの場合は、フィルム接着剤が太陽電池セル側に転写されることは必須の要件ではない。図12の場合は、太陽電池セルの裏面に、フィルム接着剤が転写されていない場合を示している。
【0015】
半導体素子の場合に上手くピックアップできたにも拘らず、太陽電池セルの場合に破損してしまうことの原因についての本発明者等の分析結果は、後で詳細に述べるが、太陽電池セルの大きさが比較的大きく、また、薄いこともその原因の一つと考えられる。
【0016】
最近の太陽電池セルでは、その使用分野からの要請から、或いは使用材料の削減の必要性から更なる薄型化が進められており、この薄型化に伴ってダイシングシートからの取り出しに、より困難性が増している。
【0017】
本発明は、上述の課題に鑑みて成されたものであり、突き上げ棒による太陽電池セルのピックアップ時にも、破損することの無い太陽電池セル及び前記太陽電池セルを備えた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【0018】
本発明者等は、太陽電池セルの製造に際して起きる破損の原因を探り、その原因を取り除くことができる太陽電池セルの構造等を新規に見出したことに基づき、本発明を成したものであるが、太陽電池セルが破損する原因等については、後の「発明を実施するための形態」の項において詳細に述べる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、本願の発明に係る太陽電池セルでは、
薄い矩形状の半導体本体と、前記半導体本体の一方の面に形成された表面電極と、他方の面に形成された裏面電極とを備えた太陽電池セルであって、
前記半導体本体の裏面電極を形成する面において、前記半導体本体の少なくとも一つの辺を含む領域であって、前記一つの辺の少なくとも一部領域に凹凸が形成されており、前記凹凸が形成された領域における接着剤に対する剥離性が、その他の部分における接着剤に対する剥離性よりも高くなっていることを特徴としている。
【0020】
これによれば、ダイシングシート上に接着・保持させた大きな半導体基板から所望の大きさの太陽電池セルをダイシングにより切り出した場合に、前記ダイシングシートから前記太陽電池セルを破損することなく安全且つ容易に取り出すことができる。また、太陽電池セルの取り出しの際に、太陽電池セル自体に加わる力を小さくできるので、より薄い太陽電池セルの取り出しも安全且つ容易に行える。
【0021】
上記の課題を解決するために、本願の発明に係る別の太陽電池セルでは、
前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、前記半導体本体の対向する2つの辺を含む領域に形成されていることを特徴としている。
【0022】
これによれば、ダイシングシートからの取り出しがより安全・容易になる。また、長方形状の太陽電池セルの場合に、長辺方向端部の辺に凹凸を形成することにより、より効果的な取り出しが可能となる。
【0023】
上記の課題を解決するために、本願の発明に係る別の太陽電池セルでは、前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、前記半導体本体の4辺を含む領域に形成されていることを特徴としている。
【0024】
これによれば、ダイシングシートからの取り出しが、更に、より安全・容易になり、大面積の太陽電池セルの取り出しに適用できる。また、正方形状の太陽電池セルであっても安全な取り出しが可能となる。
【0025】
上記の課題を解決するために、本願の発明に係る別の太陽電池セルでは、前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、電極を設けた部分と電極を設けない部分とによって形成されていることを特徴としている。
【0026】
これによれば、裏面電極形成時に容易に凹凸を形成することができ、太陽電池セル製造のコストアップを避けることができる。
【0027】
上記の課題を解決するために、本願の発明に係る別の太陽電池セルでは、前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、厚い電極を設けた部分と薄い電極を設けた部分とによって形成されていることを特徴としている。
【0028】
これによれば、太陽電池セルの裏面電極を全面電極とすることが可能であり、電極を形成しない部分を形成することによる発電効率の低下を避けることができる。
【0029】
上記の課題を解決するために、本願の発明に係る別の太陽電池セルでは、前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、ストライプ状の電極とストライプ状の電極無しの領域によって形成されていることを特徴としている。
【0030】
これによれば、ダイシングシートから太陽電池セルを剥がす場合に、剥がす方向と一致したストライプとすることができ、ダイシングシートと太陽電池セルとの剥離がスムースに行える。
【0031】
上記の課題を解決するために、本願の発明に係る別の太陽電池セルでは、前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、厚いストライプ状の電極と薄いストライプ状の電極によって構成されていることを特徴としている。
【0032】
これによれば、ストライプ状の凹凸構成の裏面電極を全面電極とすることができ、高い発電効率の太陽電池セルが得られる。
【0033】
上記の課題を解決するために、本願の発明に係る別の太陽電池セルでは、前記太陽電池セルを構成する半導体本体が長方形状であることを特徴としている。
【0034】
これによれば、各種の機器に最適な形状の太陽電池セルを破損することなく取り出すことが可能となり、従って、各種の機器に最適な太陽電池セルを安価に提供できる。
【0035】
上記の課題を解決するために、本願の発明に係る太陽電池モジュールでは、前記に記載の太陽電池セルを備えた太陽電池モジュールであることを特徴としている。
【0036】
これによれば、製造時に破損することの少ない太陽電池セルを使用しているため、太陽電池モジュールのコストアップを抑えることができる。
【発明の効果】
【0037】
以上に述べたとおり、本願の発明に従った太陽電池セルでは、
薄い矩形状の半導体本体と、前記半導体本体の一方の面に形成された表面電極と、他方の面に形成された裏面電極とを備えた太陽電池セルであって、前記半導体本体の裏面電極を形成する面において、前記半導体本体の少なくとも一つの辺を含む領域であって、前記一つの辺の少なくとも一部領域に凹凸が形成されており、前記凹凸が形成された領域における接着剤に対する剥離性が、その他の部分における接着剤に対する剥離性よりも高くなっていることを特徴としている。
【0038】
これによれば、太陽電池セルの製造時における歩留まりを高くすることができ、その結果として、太陽電池モジュールのコストアップを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に従った実施の形態1に係る太陽電池セルの裏面電極の構成を示す図である。
【図2】本発明に従った実施の形態1に係る太陽電池セルの裏面電極のその他の構成例を示す図である。
【図3】本発明に従った実施の形態2に係る太陽電池セルの裏面電極の構成を示す図である。
【図4】本発明に従った実施の形態2に係る太陽電池セルのピックアップ装置及びピックアップ方法を説明する図である。
【図5】本発明に従った実施の形態3に係る太陽電池セルの裏面電極の構成を示す図である。
【図6】本発明に従った実施の形態3に係る太陽電池セルのピックアップ装置及びピックアップ方法を説明する図である。
【図7】本発明に好適に用いることができる半導体基板の例を示す図である。
【図8】太陽電池モジュールの例を示す図である。
【図9】半導体基板から太陽電池セルを切り出す方法を説明するための図である。
【図10】ダイシングシートから太陽電池セルを取り出す方法を説明するための図である。
【図11】従来の太陽電池セルの裏面電極構成を示す図である。
【図12】従来の太陽電池セルを個別に取り出す場合に起きる、太陽電池セルの破損状況を示す図である。
【図13】半導体ウエハから半導体素子をダイシングする従来技術を示す図である。
【図14】ダイシングされた半導体素子を個々に取り出す従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明では本発明を実施するために好ましい種々の限定が付与されているが、本発明の技術的範囲は以下の実施例及び図面の記載に限定されるものではない。また、図面は、正しい縮尺で書かれているものではなく、説明の都合上、一部を誇張して記載している場合がある。
【0041】
本発明の実施の形態を説明する前に、最初に、図7〜図11を用いて、多結晶シリコン基板から太陽電池セルを作成する製造方法、太陽電池セルの構成、太陽電池モジュールの構成の概略を説明し、更に、本発明者等が見出した太陽電池セル製造時(個別の太陽電池セルのピックアップ時)の破損原因を説明する。
【0042】
図7(a)は、大面積の矩形状の半導体基板75に、複数の太陽電池セル70が形成されている様子を示しており、図7(b)は、1個の太陽電池セル70の表面側(太陽光を受ける側)からみた構成の概略を示しており、図7(c)は、太陽電池セル70の断面構造を示している。単結晶半導体、特に、シリコン単結晶の場合には、通常円柱形状の単結晶体から薄い基板が切り出されるため、半導体基板(半導体ウエハ)は円形になるが、図7の場合には、角部分が切り落とされた略直方体状の多結晶シリコンのブロックから切り出された略矩形状の半導体基板75が示されており、例えば、サイズ156×156mmの略正方形状となっている。
【0043】
このサイズの半導体基板75は、そのまま1個の太陽電池セルとして、屋根等に設置する大容量の太陽電池モジュールに組み立てられて用いられるが、小型の電子機器類例えば、携帯電話等の携帯機器用の太陽電池セルには適していない。
【0044】
太陽電池セル70は、小型の電子機器類に積載するための太陽電池セルであり、図7に示す例では、前記半導体基板75を、横方向に8分割し、縦方向に12分割して得えられたものである。この場合、1個の太陽電池セル70のサイズは、12.5×18.5mmである。
【0045】
半導体基板75は、個別の太陽電池セル70に分割される前に、図7(c)に示されるように、半導体本体73の表面(一方の面)に表面電極71が形成され、裏面(他方の面)には裏面電極74が形成される。また、半導体本体73の表面には適宜反射防止膜72が施されており、全体の厚さは、例えば、約250μmである。なお、本発明において、表面電極とは太陽光等の光が入射される側の電極を意味しており、通常、図7(b)に示すような櫛歯状の電極として構成されている。また、裏面電極74は全面電極として構成されている。これら表裏両面の電極はスクリーン印刷技術等で形成される。
【0046】
図8は、複数の太陽電池セル70が、適宜直並列に接続されて構成された太陽電池モジュール80を示している。図8では、10個の太陽電池セル70によって1個の太陽電池モジュール80が構成されているが、太陽電池セル70の個数は必要とする発電能力によって適宜決められることになる。また、図8では、太陽電池セル相互の接続状態が示されていないが、必要な電圧、電流容量などによって、適宜、直並列に接続されていて良い。
【0047】
図9は、多結晶シリコンブロックから板状に切り出され、複数の太陽電池セル70が形成された半導体基板75から、個別の太陽電池セル70を切り出す状況を示している。図9では、図示の都合上、半導体基板75から12個の太陽電池セルを切り出すように示されているが、この個数に限られないことは言うまでもない。
【0048】
先ず、個別の太陽電池セル70を切り出す前の半導体基板75を、ダイシングシート91上に載置する。半導体基板75は、太陽電池セル70の裏面電極側(全面電極側)がダイシングシート91に接するように載せられている。ダイシングシート91はICチップを切り出す際に用いられるダイシングシートと同様で良く、表面に接着性のフィルム等が貼り付けられている。そのため、太陽電池セル70が形成されている半導体基板75は、ダイシングシート91に接着・保持されることになる。また、ダイシングシート91は、周辺方向に引っ張られた際に伸張可能な部材から構成されている。ダイシングシート91上の半導体基板75は、ダイシングブレード92により、個別の太陽電池セル70に切断される。95は、ダイシングブレード92の回転方向を示している。
【0049】
図10(a)、(b)、(c)、(d)は、切断分離されたダイシングシート91上の太陽電池セル70を、個別にピックアップする際の状況を示している。
【0050】
図10(a)において、複数の太陽電池セル70−1、70−2、70−3が接着保持されているダイシングシート91は、周辺方向に引っ張られてステージ92上に固定されている。ダイシングシート91を引っ張った状態でステージ92上に固定する構造は、本願の発明とは直接関係していないため図示していない。ダイシングシート91が周辺方向に引っ張られているため、太陽電池セル70−1、70−2、70−3間には、僅かな隙間が生じている。
【0051】
ステージ92の一部には穴93が設けられており、この穴93を貫通して、プッシャー94が上下動可能に設けられている。ダイシングシート91は、ステージ92上を移動可能であり、太陽電池セル70−2をピックアップする際には、図示のとおり、穴93が太陽電池セル70−2の略中心部に来るように移動させられる。
【0052】
次いで、図10(b)に示すように、プッシャー94を上に動かし、太陽電池セル70−2を下から突き上げる。ある程度の高さまでプッシャー94を移動させると、図10(c)に示すように、太陽電池セル70−2の両端部は、ダイシングシート91から剥がれてくる。図10(c)の場合には、太陽電池セル70−2の左右の両端部から剥がれている様子が示されているが、プッシャー91が、太陽電池セル70−2の中心部のみを押している場合には、太陽電池セル70−2は、太陽電池セル70−2の図面前後の端部(紙面上下の端部)からも剥がれることとなり、結局、太陽電池セル70−2の周辺部(端部)が全体で剥がれることとなる。このため、太陽電池セル70−2とダイシングシート91との接着力は大幅に低下し、図10(d)に示すように、適宜の真空チャック95を用いることにより、容易にピックアップできることとなる。
【0053】
上述の方法によって、殆どの太陽電池セルを、破損することなく取り出すことができたが、一部の太陽電池セルでは、図12を用いて説明したとおり取り出しの際に破損してしまう。この原因は、ダイシングシートと太陽電池セルとの接着力が強すぎることに起因していることは明らかだが、接着力を弱めると、ダイシングブレードによるダイシング作業中に太陽電池セルが動いてしまって、ダイシング作業自体が上手くいかなくなる。
【0054】
本発明者らは、上手く剥がれる場合と上手く剥がれない場合の差を検証するため、ダイシングシート91に接着されることになる太陽電池セル70の裏面電極に注目した。図11は、太陽電池セル70の裏面電極の詳細を示している。裏面電極74は、多数の規則的な点状の凹部(ディンプル)76を有している。一個の太陽電池セル70は、12.5×18.5mmのサイズであり、凹部76、76間の間隙は約200μm、凹部76の深さは最大で約20μmであった。既に説明したとおり、裏面電極74は、スクリーン印刷によって形成されおり、前記凹部76は電極印刷の際に用いるスクリーンの網目に対応した箇所に形成されている。
【0055】
本発明者等は、この裏面電極74の状況によって上手く剥がれる場合と剥がれない場合があることを確認した。即ち、この裏面電極74の凹部76のバラツキ(深さ、或いは大きさ)によって生ずるダイシングシートとの接着力の差が、上手く剥がれる場合と剥がれない場合を分けており、従って、もし、半導体基板75の裏面全体に均質な凹部76を形成することができれば、接着力を調整することで、太陽電池セルのほぼ完全な取り出しが可能となると考えられる。しかしながら、スクリーン印刷を注意深く行っても、半導体基板75の裏面全体に、完全に均質な状態の凹部76を形成することは困難であった。
【0056】
そこで、本発明者等は、図10(c)に示されるように、太陽電池セル70−2のピックアップ時に、太陽電池セル70−2がダイシングシート91から最初に剥がれる箇所が、太陽電池セル70−2の裏面周辺部(端部)からであることに注目した。即ち、ダイシング時に必要な接着力の確保を、太陽電池セル70−2の裏面中心部分における接着力で確保し、太陽電池セル70−2の周辺部に予め接着力の弱い領域(接着剤に対する剥離性が高い領域)を作成すれば、接着力の弱い周辺部から容易に剥がれ始め、この剥離が太陽電池セル70−2の裏面における他の部分に広がり、最終的には裏面全体が剥がれるだろうという点に着目した。
【0057】
即ち、ダイシングシートに接着されることになる太陽電池セルの裏面電極の構造を工夫することによって、太陽電池セルの辺部(縁の部分)に接着力の弱い領域(即ち、接着剤に対する剥離性が高い領域)を作り、前記太陽電池セルの辺部からダイシングシートとの剥離をスタートさせ、順次中心部方向に剥離を拡大させる。一方、太陽電池セルの中心部の接着力を必要に応じて強くして、太陽電池セルをダイシングする際の太陽電池セルの移動による破損を抑える。これにより、太陽電池セルの破損を防止しつつ、太陽電池セルの容易なピックアップを実現するものである。
【0058】
以下、実施の形態の項において、本発明に従った辺部(縁の部分)に形成する接着力の弱い領域(即ち、接着剤に対する剥離性が高い領域)の例を説明する。
(実施の形態)
【0059】
〔実施の形態1〕
図1、図2を用いて、本発明の実施の形態1を説明する。
【0060】
図1(a)、(b)、(c)は、本発明に従った太陽電池セルの裏面電極構造の1例を示すものであり、図において、100は、本発明に従った実施の形態1における太陽電池セルを示している。
【0061】
図1(a)に示した太陽電池セル100では、中心部電極11と、太陽電池セル100の4辺部分に形成されたストライプ状(櫛歯状)の電極12とによって裏面電極10が構成されている。これにより、太陽電池セル100の裏面電極部分の周縁部分(或いは周辺部分)には、電極12と電極の無い部分13とによって凹凸が形成されることになる。
【0062】
実施の形態1における太陽電池セル100は、約18.5×12.5mmの大きさであり、電極10におけるストライプ状の電極12の長さは、約2mmである。また、電極12の幅は約800μm、電極の無い部分13の幅(スペース)は、約760μmにしている。また、太陽電池セル100の厚さは、電極を含めて約250μmのものである。
【0063】
太陽電池セル100の裏面電極10は、ストライプ状の電極12と電極の無い部分13とによってその周辺部において凹凸を有することになるが、この裏面電極10側を、ダイシングシートの接着面に載せると、凸部即ち電極(中心部電極11及びストライプ状の電極12)部分が接着剤と接触し、電極の無い部分13は接着剤に少なくとも完全には接触しないことになる。これにより、太陽電池セル100の周辺部に、意図的に中心部分に比較して接着力の弱い部分を形成できることになる。換言すれば、前記凹凸が形成された領域における接着剤に対する剥離性が、その他の部分の接着剤に対する剥離性よりも高くなっていることになる。
【0064】
電極の無い部分13の幅は、あまり広くすると接着剤と接触することになるので、接着力の低下が妨げられる場合がある。また、電極の無い部分13の面積が広くなると、太陽電池セルの発電効率が落ちることにもなる。従って、この電極の無い部分13の幅は、発電効率を考慮し、また、使用する接着剤の粘度等を考慮した上で、最適値が選択される。
【0065】
図1(a)に記載した実施の形態1の場合には、電極の無い部分13の幅として、電極12の幅よりも狭い300〜800μm程度とすることで、破損の起きないピックアップが可能であるという効果を確認しているが、この値に限定されるものではない。また、ストライプ状の電極12の長さは、この例では2mm程度にしているが、これに限定される訳ではない。あまりに短いと、この部分からの剥離の開始が上手く行かない場合があるが、少なくとも1mm程度以上であれば、その他の部分に比較して、剥離性を高めた領域とすることができる。ストライプ状の電極12の幅及びストライプ状の電極12の間隔を変えた場合に形成される凹凸の状況については、図1(d)、図1(e)を用いて後で詳細に述べる。
【0066】
図1(b)に示した太陽電池セル100では、周辺部分に、厚い電極14と薄い電極15とを形成し、それによって太陽電池セル100の周辺部分に凹凸を形成し、太陽電池セル100の中心部分に比較して剥離性の向上した(接着力の弱い)周辺部分を実現している。この場合には、周辺部分の電極は、全て電気的に接続されることになるため、太陽電池としての効率の面で優位になる。この場合の裏面電極10は、中心部電極11、厚い電極14、薄い電極15により構成される。
【0067】
厚い電極14と薄い電極15とをスクリーン印刷技術で形成するには、例えば、最初に薄い膜厚の電極を全面に形成しておき、更にその上に、例えば、同様な膜厚の電極を中心部電極11部分及び厚い電極14部分に形成すれば良い。即ち、スクリーン印刷を2度繰り返すことにより、容易に厚い電極14と薄い電極15を形成することができる。図1(b)に示した例では、最初に約30μmの電極を全面に形成し、次いで、同じく約30μmの厚さの電極を中心部電極11部分及び厚い電極14部分に印刷している。この例の場合にも、凹凸のサイズを図1(a)の場合と同様なサイズとすることによって、破損の無いピックアップが可能なことを確認している。
【0068】
図1(c)は、太陽電池セル100の周辺部に形成される凹凸の他の例を示している。この図1(c)に示したものでは、太陽電池セル100の周辺部に形成されるストライプ状の電極12は、太陽電池セル100の周辺部全域に渡って形成されていることが必須の要件ではなく、場合によっては、その一部16においてストライプが形成されていなくとも良いことを示している。
【0069】
要は、太陽電池セル100の周辺部におけるダイシングシートに対する剥離性が、太陽電池セル100の中心部分に比較して十分に高ければ良く、ダイシングシートの接着力等を勘案して決定される。換言すれば、前記凹凸は、太陽電池セル100の少なくとも一つの辺の少なくとも一部領域に形成されており、前記凹凸が形成された領域における接着剤に対する剥離性が、その他の部分における接着剤に対する剥離性よりも高くなっていれば良い。実際には、用いるダイシングシートと太陽電池セルを用いた実験によって決定することが好ましい。
【0070】
また、特に、詳細な説明は省くが、上記の「前記凹凸は、太陽電池セル100の少なくとも一つの辺の少なくとも一部領域に形成されており、前記凹凸が形成された領域における接着剤に対する剥離性が、その他の部分における接着剤に対する剥離性よりも高くなっていれば良い。」との考え方は、図2に示すような電極構成のものにも適用でき、更に、以下に説明する実施の形態2、実施の形態3においても同様に適用可能である。
【0071】
図1(d)は、ストライプ状の電極12の幅を変えた場合の状況を模式的に示した図である。図1(d)において、ストライプ状の電極12の幅が十分広い幅d−1の場合、或いは一定値より広い幅d−2である場合には、設計した厚み(高さ)の電極を形成できるが、狭い幅d−3になると、設計した厚み(高さ)より低い厚さ(高さ)h−1の電極になってしまう。本発明者等の実験では、電極の厚さ(高さ)を60μm程度に設定した場合、電極の幅が150μmを下回るようになると、設計値(60μm)より低くなるようであった。
【0072】
図1(e)は、ストライプ状の電極12のピッチを変えた場合に形成される凹凸の状況を模式的に示している。ストライプ状の電極12の幅を一定にした場合、ストライプ状の電極12を十分に広いピッチp−1で形成すると、ストライプ状の電極12間には、電極膜の形成されない領域が残り、十分な凹凸が形成されることになる。一方、一定値以下のピッチp−2で形成するとストライプ状の電極12間にも電極膜が埋まり始め、より狭いピッチpー3の場合には電極膜によって凹部が埋まってしまい、実効高さがh−2になってしまう。
【0073】
本発明者等の実験では、電極の厚さ(高さ)を60μm程度に設定した場合、ストライプ状の電極12の間隔が150μmを下回るようになると、凹部が埋まり始め実効高さが低くなるようであった。ストライプ状の電極12の形成された部分と形成されない部分とで構成される凹凸の高さがあまりに低くなると、凹部におけるダイシングシートとの間の接着力が強くなり、所期の目的を達成できなくなる。
【0074】
上記の値は、電極の厚さによって変わるものと思われることから、更には、ダイシングシートの接着力によって剥離の条件が変わるものと思われることから、ストライプ状の電極12の厚さ、幅、間隔、長さ等は、実際に使用するダイシングシートを用いた実験により定めることが好ましい。なお、ストライプ状の電極12の幅、ピッチ等は必ずしも均等である必要は無く、必要な剥離性が達成できる範囲で変更されていても良い。このことは、図2に示す電極構成の場合にも適用可能であり、実施の形態2、3においても同様である。
【0075】
図2(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、太陽電池セル100の周辺部に形成する接着力の弱い領域(剥離性が向上した領域)のその他の例を示している。何れも、太陽電池セル100の裏面電極部分の構成を示しており、裏面電極部分の周辺部に形成されている凹凸を、電極の有無によって形成し、或いは厚い電極と薄い電極とによって形成している。
【0076】
図2(a)は、太陽電池セル100の周辺部分に、三角形状電極21を設けたものである。先端部における電極の無い部分の幅が広くなりすぎると、この電極の無い部分とダイシングシートの接着剤とが接触してしまう場合がある。その結果、太陽電池セル100の周辺部分での剥離性の向上(接着力の低下)が妨げられるため、ダイシングシートの接着強度に合わせた電極サイズの調整が必要となる。なお、既に述べたとおり、中心部の電極及び三角形状電極21を厚い電極で構成し、その外の部分を薄い電極で構成しても良い。
【0077】
図2(b)は、図1に示した裏面電極の変形例であり、太陽電池セル100の周辺部にストライプ状の電極22を設けたものである。対角線方向に延びる電極22−1は、対角線部におけるストライプ状の電極22を接続するために設けられたものであるが、太陽電池の発電効率の多少の低下が許されるような場合には省略することもできる。また、太陽電池セル100の周辺部に形成されている凹凸を、厚い電極と薄い電極とによって形成しても良く、この場合は、電極22−1を設けなくとも良い。
【0078】
図2(c)は、太陽電池セル100の周辺部分に、複数の環状の電極23を設けたものである。対角線方向に延びる電極23−1は、周辺部分に形成された複数の環状の電極を中心部の電極に接続するためのものであるが、この場合も、太陽電池の用途によっては省略可能である。また、既に述べたとおり、太陽電池セル100の周辺部に形成されている凹凸を、厚い電極と薄い電極とによって形成しても良く、この場合は電極23−1を設けなくとも良い。
【0079】
図2(d)は、太陽電池セル100の周辺部分に、市松模様の電極24を形成したものである。市松模様の電極24の各電極部分が互いに電気的に接触していても良く、この場合には、発電効率の低下が防止できる。また、市松模様を、厚い電極と薄い電極とによって構成しても良い。
【0080】
図2(e)は、太陽電池セル100の周辺部分に、格子状の電極25を設けたものである。格子状の電極25の幅は、ダイシングシートの接着力等に応じて調整する。この場合も、格子状を、厚い電極と薄い電極とによって構成しても良い。
【0081】
図1、図2に示した太陽電池セル100は長方形状であるが、これに限られることは無く、例えば、正方形状等、一般的な矩形状あって良い。また、凹凸を形成する領域の大きさは、太陽電池セル100のサイズ、厚さ、更には、ダイシングシートの接着力等により、種々の値をとることができるが、簡単な実験によって最適な値に設定できる。
【0082】
以上のべたとおり、本発明の実施の形態1では、太陽電池セル100の裏面の全周辺部分に、凹凸が形成されており、前記凹凸が形成された領域におけるダイシングシートの接着剤に対する剥離性が、その他の部分の接着剤に対する剥離性よりも高くなっている。これにより、太陽電池セル100のピックアップ時における破損を防止している。
〔実施の形態2〕
図3、図4を用いて、本発明の実施の形態2を説明する。
【0083】
図3は、本発明の実施の形態2における太陽電池セル100の裏面電極構造を示す図であり、図4は、この場合の太陽電池セル100のダイシングシート41からのピックアップ時の状況を説明する図である。
【0084】
図3において、太陽電池セル100は、裏面電極30として、中央部分の電極31及び両端部35、36に形成されたストライプ状の電極32を有している。太陽電池セル100の両端部には、ストライプ状の電極32と電極無しの部分33により凹凸が形成されることとなる。この結果、この太陽電池セル100を接着性のあるダイシングシートに載せた場合、両端部35、36におけるダイシングシートへの接着力を弱くすることができる。即ち、前記凹凸が形成された領域における接着剤に対する剥離性が、その他の部分の接着剤に対する剥離性よりも高くなっている。
【0085】
図4は、このような太陽電池セル100を、ダイシングシートからピックアップする様子を示している。図4において、41はダイシングシートである。図4では、ダイシングシート41上に一個の太陽電池セル100のみが示されているが、実際には複数個の太陽電池セルが接着・保持されている。42、43は、ステージ(台座)であり、中央部にプッシャー44を通過させる開口が設けられている。図4では、プッシャー44は幅広に構成されているが、後で説明するとおり、太陽電池セル100のサイズによっては、単なる棒状であっても良い。
【0086】
太陽電池セル100をダイシングシート41からピックアップするには、ダイシングシート41上の太陽電池セル100の中央部分をプッシャー44に対向させ、次いで、プッシャー44を上方向に移動させる。これにより太陽電池セル100の両端部分がダイシングシート41から離れるように移動するが、太陽電池セル100の両端部はダイシングシート41との接着力が弱いため、容易に剥がれる。プッシャー44を更に上に移動させることにより太陽電池セル100の大部分をダイシングシート41から剥がすことができるので、その際に、図10(d)で説明した真空チャックによりピックアップすれば良い。
【0087】
プッシャー44の幅を、太陽電池セル100の幅とほぼ同じにしておけば、太陽電池セルを上方向に移動させた場合、太陽電池セルの短辺方向はプッシャー44によって下から保持されることとなるため、この短辺方向での破損は起きにくい。太陽電池セル100が長方形である場合には、元々、太陽電池セル100の短辺方向ではその長さが短いため、剥離時に太陽電池セル100の短辺方向にかかる力(回転モーメント)が小さく、破損が起きにくい。従って、太陽電池セルが長方形状である場合には、プッシャー44として棒状のものを用いることもできる。また、太陽電池セル100の厚さが厚い場合等にも、プッシャー44として棒状のものを用いることもできる。
【0088】
なお、以上の説明では、太陽電池セル100の両端部に、ストライプ状の電極32と電極無しの部分33によって凹凸を形成するものを説明したが、この構成に限られるものではない。即ち、中央部分の電極31とストライプ状の電極32を厚い電極で構成し、電極なしの部分33に薄い電極を設けておいても良い。この場合には、太陽電池セル100の裏面が全て電気的に接続された電極となり、太陽電池としての発電効率の低下を押えることができる。また、ストライプ状の電極32に代えて、図2(a)〜(e)に示したような構成の電極としても良い。
【0089】
図3、図4に示した太陽電池セル100は長方形状であるが、これに限られることは無く、例えば、正方形状等、一般的な矩形状であって良い。また、凹凸を形成する領域の大きさは、太陽電池セル100のサイズ、厚さ、更には、ダイシングシートの接着力等より、種々の値をとることができるが、簡単な実験によって最適な値に設定できる。
【0090】
以上のべたとおり、本発明の実施の形態2では、太陽電池セル100の裏面の両端部分に、凹凸が形成されており、前記凹凸が形成された領域におけるダイシングシートの接着剤に対する剥離性が、その他の部分の接着剤に対する剥離性よりも高くなっている。これにより、太陽電池セル100のピックアップ時における破損を防止している。特に、太陽電池セル100が長方形の場合には、短辺方向の破損は起きにくいため、この実施の形態2が最適に適用可能である。
〔実施の形態3〕
図5、図6を用いて、本発明の実施の形態3を説明する。
【0091】
図5は、本発明の実施の形態3における太陽電池セル100の裏面電極構造を示す図であり、図6は、この場合の太陽電池セル100のダイシングシート61からのピックアップ時の状況を説明する図である。
【0092】
図5において、太陽電池セル100は、裏面電極50として、裏面の大部分を覆う電極51及び1つの端部55に形成されたストライプ状の電極52を有している。太陽電池セル100の端部55には、ストライプ状の電極52と電極無しの部分53とにより凹凸が形成されることとなる。この結果、この太陽電池セル100を接着性のあるダイシングシートに載せた場合、端部55におけるダイシングシートへの接着力を弱くすることができる。
【0093】
図6は、このような太陽電池セル100を、ダイシングシートからピックアップする様子を示している。図6において、61はダイシングシートである。図6では、ダイシングシート61上に一個の太陽電池セル100のみが示されているが、実際には複数個の太陽電池セルが接着・保持されている。62、63は、ステージ(台座)であり、中央部にプッシャー64を通過させる開口が設けられている。図6では、プッシャー64は幅広に構成されているが、後で説明するとおり、太陽電池セル100のサイズによっては、単なる棒状であっても良い。
【0094】
太陽電池セル100をダイシングシート61からピックアップするには、ダイシングシート61上の太陽電池セル100の一端部分をプッシャー64に対向させ、次いで、プッシャー64を上方向に移動させる。これにより太陽電池セル100の端部55がダイシングシート61から離れるように移動するが、太陽電池セル100の端部55はダイシングシート61との接着力が弱いため、容易に剥がれる。プッシャー64を更に上に移動させることにより太陽電池セル100のかなりの部分をダイシングシート61から剥がすことができる。この状態で、図10(d)で説明した真空チャックによりピックアップすることも可能となる。
【0095】
ダイシングシート61と太陽電池セル100との接着力が真空チャックでピックアップできるほど弱くないときは、ダイシングシート61を更に矢印66方向に移動させる。これにより、太陽電池セル100をダイシングシートから更に剥がすことができ、ダイシングシート61と太陽電池セル100間の接着力を更に下げることができる。接着力を十分に下げた後に、真空チャックにより太陽電池セル100をピックアップする。プッシャー64の先端部に回転部65を設けておけば、ダイシングシート61の移動がよりスムースになる。
【0096】
また、図6に示すように、予め、プッシャー64の先端をステージ62、63から突出する位置に設定しておき、ダイシングシート61を矢印66方向に移動させても良い。ダイシングシート61を矢印66方向に移動させると、ダイシングシート61上に接着・保持された太陽電池セル100は、プッシャー64の位置に至り、プッシャー64の先端位置まで上昇する。
【0097】
ダイシングシート61を更に矢印66方向(プッシャー64の先端部より下方向)に引っ張ると、ダイシングシート61は、下方に移動することになるが、太陽電池セル100はそのまま上に向いて移動しようとし、従って、太陽電池セル100とダイシングシート61との間に剥離しようとする力が働く。太陽電池セル100の先端部には、接着力の弱い領域が設けられているので、その部分でダイシングシート61と太陽電池セル100の剥離が始まり、更に、ダイシングシート61の矢印66方向への移動に伴って、剥離が広がる。ダイシングシート61と太陽電池セルの接着力が小さくなった時点で真空チャックにより太陽電池セル100をピックアップする。より効果的にダイシングシート61から太陽電池セル100を剥離させるためには、例えば、ダイシングシート61を引っ張る方向(矢印66)を、直角に下方に向けても良い。
【0098】
図5、図6に示した太陽電池セル100は何れも長方形状であるが、これに限られることは無く、例えば、正方形状であって良い。また、凹凸を形成する領域の大きさは、太陽電池セル100のサイズ、厚さ、更には、ダイシングシートの接着力等より、種々の値をとることができるが、簡単な実験によって最適な値に設定できる。また、この場合も、ストライプ状の電極32に代えて、図2(a)〜(e)に示したような構成の電極としても良い。
【0099】
以上のべたとおり、本発明の実施の形態3では、太陽電池セル100の裏面の一端部分に、凹凸が形成されており、前記凹凸が形成された領域におけるダイシングシートの接着剤に対する剥離性が、その他の部分の接着剤に対する剥離性よりも高くなっている。これにより、太陽電池セル100のダイシングシートからのピックアップ時における太陽電池セルの破損を防止している。
【0100】
なお、本願の発明は、多結晶シリコン製の太陽電池セルに限られること無く、単結晶シリコン製、或いは化合物半導体製等の太陽電池セルに適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、無公害のエネルギー源として、種々の機器への適用が望まれている種々のサイズの太陽電池セルを破損することなく製造できるものであり、産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0102】
10 裏面電極
11 中心部電極
12 ストライプ状の電極
13 電極の無い部分
14 厚い電極
15 薄い電極
21、22、23、24,25 電極
30 裏面電極
31 中央部分の電極
32 ストライプ状の電極
35、36 接着力の弱い端部
41 ダイシングシート
42、43 ステージ
44 プッシャー
50 裏面電極
51 電極
52 ストライプ状の電極
53 電極無しの部分
55 接着力の弱い端部
61 ダイシングシート
62、63 ステージ
64 プッシャー
65 回転部
100 太陽電池セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄い矩形状の半導体本体と、前記半導体本体の一方の面に形成された表面電極と、他方の面に形成された裏面電極とを備えた太陽電池セルであって、
前記半導体本体の裏面電極を形成する面において、前記半導体本体の少なくとも一つの辺を含む領域であって、前記一つの辺の少なくとも一部領域に凹凸が形成されており、前記凹凸が形成された領域における接着剤に対する剥離性が、その他の部分における接着剤に対する剥離性よりも高くなっていることを特徴とする太陽電池セル。
【請求項2】
前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、前記半導体本体の対向する2つの辺を含む領域に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池セル。
【請求項3】
前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、前記半導体本体の4辺を含む領域に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池セル。
【請求項4】
前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、電極を設けた部分と電極を設けない部分とによって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池セル。
【請求項5】
前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、厚い電極を設けた部分と薄い電極を設けた部分とによって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池セル。
【請求項6】
前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、ストライプ状の電極とストライプ状の電極無しの領域によって形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池セル。
【請求項7】
前記一つの辺の少なくとも一部領域に形成された凹凸は、厚いストライプ状の電極と薄いストライプ状の電極によって構成されていることを特徴とする請求項1〜3、5のいずれか1項に記載の太陽電池セル。
【請求項8】
前記太陽電池セルを構成する半導体本体が長方形状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池セル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池セルを備えた太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−134805(P2011−134805A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291303(P2009−291303)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】