説明

太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム

【課題】耐久性に優れたポリエステルフィルムを提供する。詳しくは、太陽電池用バックシートとした際に環境変化による劣化が少なく、耐加水分解性、耐候性、耐熱性、ブリードアウト性に優れた太陽電池用バックシートを提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムは損失正接(tanδ)ピーク温度が120〜180℃であり、メタルハライドランプを用いて295〜450nmの紫外線を100mWで48時間照射後の黄色度(b値)の増加量(Δb値)が0〜15であることを特徴とする太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐加水分解性、耐熱性、耐候性、ブリードアウト性に優れた太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、優れた機械特性、熱特性、電気特性、表面特性および耐熱性などの性質を利用して、磁気記録媒体用、電気絶縁用、太陽電池用、コンデンサー用、包装用および各種工業用材料など種々の用途に用いられている。これらの用途の高品質化の中で、例えば、近年、半永久的で無公害の次世代のエネルギー源としてクリーンエネルギーである太陽電池の需要が伸びており、太陽電池の高寿命化として太陽電池用バックシートの耐久性(耐加水分解性、耐熱性、耐候性)向上の要求が高まっている。そのなかで耐久性の向上について、種々の検討が行われている。具体的に、カルボジイミド化合物を添加し、ポリエステル樹脂の耐加水分解性を向上させる技術が提案されている(特許文献1および特許文献2)。しかしながら、これらの提案ではフィルムについての詳細な記載はなく、樹脂の耐加水分解性向上がそのままフィルムでの耐加水分解性にはならない。また、他の耐熱性や耐候性などの向上も得られず要求特性を達成することは困難である。更に、フィルムの固有粘度(以下、IVと略すことがある)や面配向係数(以下、fnと略すことがある)を制御する技術が提案されている(特許文献3)。
【0003】
しかしながら、次世代の要求はさらに高まっており、この提案では要求特性を達成することは困難である。ポリエステルフィルムの耐候性向上のためには、紫外線吸収剤による紫外線劣化を抑える必要があり、二軸配向ポリエステルフィルムに紫外線吸収剤をブレンドする方法が提案されている(特許文献4および特許文献5)。しかし、ポリエステルフィルムの作製工程にて熱により昇華やブリードアウトし製膜機の汚染や表面汚染がおこり他部材との接着性が悪化するなど問題がある。また、耐加水分解性や耐熱性の向上が得られず要求特性を達成することは困難である。また、ポリイミドやカルボジイミド化合物を添加し、ポリエステルフィルムの耐加水分解性・耐熱性を向上させる技術が提案されている(特許文献6)。
【0004】
しかしながら、ポリイミドと混合する際のブレンドチップ内のポリエステルは一度加熱されているために、特に紫外線による劣化が起こりやすく耐候性が悪化する。また、カルボジイミド化合物はポリエステルの押出条件では熱分解を起こし、分解ガスの発生やブリードアウトなど問題がある。そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、ポリエステルフィルムの耐久性を向上させるには、損失正接(以下、tanδと略すことがある)ピーク温度と紫外線照射後の黄色度(以下、b値と略すことがある)の増加量(以下、Δbと略すことがある)値を制御することが重要であることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−34048号公報
【特許文献2】特表平11−506487号公報
【特許文献3】特開2007−70430号公報
【特許文献4】特開2009−188105号公報
【特許文献5】特開2004−161800号公報
【特許文献6】特開2003−160718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、太陽電池用バックシートとした際に環境変化による劣化が少なく、耐加水分解性、耐候性、耐熱性に優れたポリエステルフィルムを提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、次の(1)〜(8)を特徴とするものである。
(1)損失正接(tanδ)ピーク温度が120〜180℃であり、メタルハライドランプを用いて295〜450nmの紫外線を100mWで48時間照射後の黄色度(b値)の増加量(Δb値)が0〜15であることを特徴とする太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(2)ポリエステル(A)とポリイミド(B)を用いてなるポリエステルフィルムであることを特徴とする上記(1)に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(3)ポリイミド(B)の含有量が、フィルム全体に対して、2質量%〜30質量%であることを特徴とする上記(1)〜(2)に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(4)紫外線吸収剤の含有量が、フィルム全体に対して、0.01質量%以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(5)面配向係数fnが0.140〜0.280であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(6)200℃の熱処理72時間後における少なくとも一方向の破断伸度の保持率が10〜100%であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(7)125℃・100%RH72時間後における少なくとも一方向の破断伸度の保持率が10〜100%であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(8)波長360nmの光線透過率が0〜20%であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(9)以下の工程1〜3を、その順に経ることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムの製造方法。
工程1:ポリエステル(A)とポリイミド(B)とを、質量分率(A/B)が70/30〜30/70となるように溶融混練し、コンパウンド原料(AB)を得る工程。
工程2:コンパウンド原料(AB)を0.1kPa以下の減圧下にて210〜250℃の温度で1〜100時間加熱処理し、熱処理されたコンパウンド原料(ABH)を得る工程。
工程3:ポリエステル(A’)と熱処理されたコンパウンド原料(ABH)とを混合し、溶融押出しし、未延伸シートを得て、該未延伸シートを二軸延伸し、二軸配向ポリエステルフィルムを得る工程。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、太陽電池用バックシートとした際に環境変化による劣化が少なく、耐加水分解性、耐候性、耐熱性に優れたポリエステルフィルムを得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、ポリエステルフィルムとは、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分とジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマー(ポリエステル)で構成されたものである。
【0010】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1、4−ナフタレンジカルボン酸、1、5−ナフタレンジカルボン酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、6、6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、4、4’−ジフェニルジカルボン酸、4、4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸および4、4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸および2、6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。
【0011】
上記の6、6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分としては、炭素数2〜10のアレキレンが好ましく、具多的に6、6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6、6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸および6、6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸などが挙げられる。
【0012】
脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0013】
6、6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分は主成分として用いることもできるが、他の芳香族ポリエステル成分と共重合させることが好ましい。6、6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の好ましい共重合量は、5〜50モル%であり、より好ましくは10〜40モル%、さらに好ましくは15〜30モル%である。
【0014】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1、2−プロパンジオール、1、3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、2−シクロヘキサンジメタノール、1、3−シクロヘキサンジメタノール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコールおよび2、2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノールおよびジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明におけるポリエステルには、ラウリルアルコールやイソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトールおよび2、4−ジオキシ安息香酸等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分とジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸および2、6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸、およびp−アミノフェノールやp−アミノ安息香酸などを、本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合させることができる。ポリマーの共重合割合は、NMR法(核磁気共鳴法)や顕微FT−IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
【0016】
本発明のポリエステル(A)としては、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートが好ましく用いられる。また、ポリエステルはこれらの共重合体、変性体でもよい。結晶性の観点からポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが主成分であることが好ましく、特に90%以上がポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートであることが好ましい。また、他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイでもよい。ここでいうポリマーアロイとは高分子多成分系化合物のことであり、共重合によるブロックコポリマーであってもよいし、混合などによるポリマーブレンドでもよい。
【0017】
本発明のポリエステルフィルムは、耐加水分解性・耐熱性・耐候性向上の点から、ポリエステル(A)とポリイミド(B)を含むことが特に好ましい。ポリイミド(B)はポリエステルの耐熱性を向上させ、紫外線を吸収するためポリエステルの耐候性も向上させる。
【0018】
本発明でいうポリイミド(B)とは、環状イミド基を含有する溶融成形性のポリマーであり、本発明の目的に適応出来るものであれば特に限定されないが、脂肪族、脂環状または芳香族のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリエーテルイミド(以下、PEIと略すことがある)が好ましい。例えば米国特許第4141927号明細書、特許第2622678号、特許第2606912号、特許第2606914号、特許第2596865号、特許第2596566号、特許第2598478号各公報に記載のポリエーテルイミド、特許第2598536号、特許第2599171号各公報、特開平9−48852号公報、特許第2565556号、特許第2564636号、特許第2564637号、特許第2563548号、特許第2563547号、特許第2558341号、特許第2558339号、特許第2834580号各公報に記載のポリマー等が挙げられる。
【0019】
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ポリイミドの主鎖に環状のイミド、エーテル単位以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されていても良い。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ポリエーテルイミドの主鎖に環状のイミド、エーテル単位以外の構造単位、例えば芳香族、脂肪族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されていても良い。
ポリイミド(B)としては、例えば、下記一般式で示されるような構造単位を含有するものが好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
ただし、式中のRは、
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれた一種もしくは二種以上の基を表している。また、式中のRは、
【0025】
【化4】

【0026】
などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれた一種もしくは二種以上の基を表している。
【0027】
溶融成形性やポリエステルとの親和性などの点から、下記一般式で示されるような、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有するポリエーテルイミドが特に好ましい。
【0028】
【化5】

【0029】
(ただし、上記式中Rは、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、Rは6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
上記R、Rとしては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
【0030】
【化6】

【0031】
本発明では、ポリエステルとの親和性、コスト、溶融成形性等の観点から、2、2−ビス[4−(2、3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい
【0032】
【化7】

【0033】
または
【0034】
【化8】

【0035】
(nは2以上の整数、好ましくは20〜50の整数)
このポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商品名で、SABICイノベーティブプラスチック社より入手可能である。
【0036】
本発明のポリエステルフィルムにおける、ポリイミド(B)の含有量は2〜30質量%であることが好ましい。ポリイミド(B)が2質量%より小さいと損失正接(tanδ)ピーク温度が低温になり、耐熱性、耐加水分解性が向上しにくくなる。また、ポリイミドは紫外線を吸収するため、紫外線が照射された時にポリエステルへの影響が小さく耐候性が向上するが、ポリイミド(B)の含有量が2質量%より小さいとその効果が小さく耐候性が向上しない。また、ポリイミド(B)が30質量%を超えると、フィルムの製膜性が悪く面配向係数を高めにくく耐熱性、耐加水分解性が向上しにくくなる。また、コスト、加工特性で問題になる。ポリイミド(B)の含有量のより好ましい下限値は5質量%であり、さらに好ましい下限値は7質量%である。ポリイミド(B)の含有量のより好ましい上限値は20質量%であり、さらに好ましい上限値は15質量%である。
【0037】
本発明のポリエステルフィルムは、損失正接(tanδ)ピーク温度が120〜180℃であることが必要である。損失正接(tanδ)ピーク温度が120℃より小さいとポリエステルの分子鎖が120℃より低温で運動を始めるため、耐熱性や耐加水分解性が大きく低下する。また、損失正接(tanδ)ピーク温度が180℃以上を超えると、分子の運動性が低いため延伸が難しくフィルムの高配向化が行えない問題がある。損失正接(tanδ)ピーク温度のより好ましい下限値は130℃であり、さらに好ましい下限値は140℃である。また、損失正接(tanδ)ピーク温度のより好ましい上限値は170℃であり、さらに好ましい上限値は160℃である。損失正接(tanδ)ピーク温度のより好ましい範囲は130〜170℃であり、さらに好ましい範囲は140〜160℃である。
【0038】
損失正接(tanδ)ピーク温度は、分子鎖の運動性を表す指標であり、ポリイミド(B)の含有量が大きくなれば高くなり、小さくなれば低くなる。
【0039】
本発明のポリエステルフィルムは、メタルハライドランプを用いて295〜450nmの紫外線を100mWで48時間照射後の黄色度(b値)の増加量(Δb値)が0〜15である必要がある。Δb値とは色味の変化であり、ポリエステルフィルムの劣化の度合いを示す。Δb値が0とは紫外線による劣化がほとんどないので最も好ましい。Δb値が15より大きいと、色味の変化が大きく耐候性が悪化する。Δb値のより好ましい上限値は10であり、さらに好ましい上限値は5である。Δb値の好ましい範囲は0〜10であり、さらに好ましい範囲は0〜5である。
【0040】
Δb値は、ポリイミド(B)の含有量が多ければ小さくなり、少なければ小さくなる。また、ポリエステル(A)とポリイミド(B)からなるコンパウンド原料(AB)の固有粘度(IV)が大きいほど小さくなる。
【0041】
本発明のポリエステルフィルムは、紫外線吸収剤の含有量が、フィルム全体に対して、0.01%以下であることが必要である。紫外線吸収剤とは、次の分子構造を持つ(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系)添加剤が挙げられる。前記ベンゾフェノン系添加剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、n−ヘキシル−2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート等が挙げられる。前記ベンゾトリアゾール系添加剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]が挙げられる。前期ヒドロキシフェニルトリアジン系添加剤としては、2−[(2−ヒドロキシ−4−n−ヘキシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニルトリアジン、2,4−[ジ[2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシルオキシ)]フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)トリアジン等が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量が0.01質量%よりも多いとフィルム表面にブリードアウトし太陽電池バックシートとして使用する際に他部材との密着性が悪化する。
【0042】
なお、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、本発明のポリエステルフィルムは、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、難燃剤、難燃助剤、顔料および染料などが添加されてもよい。
【0043】
本発明のポリエステルフィルムは、面配向係数が0.140〜0.280であることが好ましい。面配向係数が0.14より小さいと分子鎖の配向が小さく耐加水分解性や耐熱性が低下する傾向がある。また、面配向係数が0.280より大きいフィルムは極度に配向させる必要があるため製膜時にフィルム破れが多発し安定して製膜できない。より好ましい面配向係数の下限値は0.150であり、さらに好ましい下限値は0.155である。より好ましい面配向係数の上限値は0.180であり、さらに好ましい上限値は0.165である。面配向係数のより好ましい範囲は0.150〜0.180であり、さらに好ましい範囲は0.155〜0.165である。
【0044】
面配向係数は、ポリエステルフィルムの延伸条件によって制御することができる。特に、本発明のポリエステルフィルムは、ポリイミドの含有量が大きくなると面配向係数を高めにくい。また、原料のIVが高いとフィルムのIVも高くなるため面配向係数を高めにくくなる。面配向係数を上記のような範囲内にするには、最初に低温で機械方向(以下、MDと略すことがある)延伸を行い、その後温度を上げてMD延伸する2段階MD延伸を行うことが好ましい。面配向係数は延伸倍率が高いほど高くなるが、倍率が高すぎると製膜性が悪くなるため、最適な延伸倍率がある。
【0045】
本発明のポリエステルフィルムは、200℃72時間の熱処理後における少なくとも一方向の破断伸度の保持率が10〜100%であることが好ましい。また、125℃、100%RHで72時時間後における少なくとも一方向の破断伸度の保持率が10〜100%であることが好ましい。破断伸度の保持率が10%より小さいと、太陽電池用バックシートとして使用した際に耐久性が悪化する傾向を示す。また、破断伸度の保持率が100%であることは、125℃の温度、100%RHの湿度で72時間の処理では変化しないことを表し、最も好ましい態様である。破断伸度の保持率が100%より大きいとポリエステルフィルムが配向緩和し易いことを表すため、機械物性が低く取扱が困難となる。より好ましい破断伸度の保持率の下限値は20%であり、さらに好ましい下限値は30%である。破断伸度の保持率のより好ましい範囲は20〜100%であり、さらに好ましい範囲は30〜100%である。破断伸度の保持率は二軸配向ポリエステルフィルムの面配向係数が高いほど良好になり、さらに、損失正接(tanδ)が高く、フィルムIVが高いほど良好になる。
【0046】
本発明のポリエステルフィルムは、波長360nmの光線透過率が0〜20%であることが好ましい。波長360nmの光線透過率が20%よりも大きいと紫外線吸収性が小さいため耐候性が悪化しやすい。また波長360nmの光線透過率が0%であることはすべてを吸収することを意味し最も好ましい態様である。より好ましい範囲は0〜15%であり、さらに好ましい範囲は0〜10%である。光線透過率はポリイミド(B)の含有量が大きいほど小さくなる。
【0047】
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(PET)をポリエステルとして用いた例を代表例として説明する。本発明のポリエステルフィルムは、以下の工程1から3を、その順に経る事が好ましい。
工程1:ポリエステル(A)とポリイミド(B)とを、質量分率(A/B)が70/30〜30/70となるように溶融混練し、コンパウンド原料(AB)を得る工程。
ポリエステル(A)とポリイミド(B)の質量分率(A/B)は好ましくは65/35〜35/65であり、更に好ましくは60/40〜40/60である。70/30よりもポリエステル(A)の比率が大きくなると、ポリイミド(B)の溶融粘度が高すぎるために、溶融粘度の低いポリエステル(A)にポリイミド(B)が分散しにくくなり、分散不良物が発生する。分散不良物はポリエステルフィルム作製工程にて、押出トラブルや延伸不良の原因となり、耐熱性や耐加水分解性の向上が難しくなる。逆に、30/70よりもポリイミド(B)の比率が大きくなると全体の溶融粘度が高くなるためコンパウンド時に剪断発熱が発生し、ポリエステル(A)の劣化がおこる。ポリエステル(A)の劣化はポリエステルフィルム作製工程にて、延伸不良の問題や熱や湿度で劣化しやすく、耐熱性や耐加水分解性の向上が難しくなる。
工程2:コンパウンド原料(AB)を0.1kPa以下の減圧下にて210〜250℃の温度で1〜100時間加熱処理し、熱処理されたコンパウンド原料(ABH)を得る工程。加熱温度は、より好ましくは215〜245℃、さらに好ましくは220〜230℃である。加熱処理する時間は、より好ましくは10〜80時間、さらに好ましくは20〜50時間である。工程2を実施しないとコンパウンド原料(AB)は溶融押出時の熱によってIVが低下しているため、そのまま用いるとポリエステルが劣化しやすく、耐熱性・耐加水分解性・耐候性が低下しやすい。特に耐候性が低下し、紫外線照射によってΔb値が大きくなる。加熱処理温度が210℃よりも低いと固相重合がほとんどおこらず、熱処理による効果が得られない。加熱処理温度が250℃よりも高いとポリエステルが溶融してしまいチップ形状が得られず、ポリエステルフィルム作製の原料として用いることができない。加熱処理時間が1時間よりも短いと固相重合の効果が小さく耐熱性・耐加水分解性・耐候性が向上しない。逆に加熱時間が100時間よりも長いとIVが高くなりすぎるため延伸が行えず、耐熱性・耐加水分解性・耐候性の向上が難しくなる。
工程3:ポリエステル(A’)と熱処理されたコンパウンド原料(ABH)とを混合し、溶融押出しし、未延伸シートを得て、該未延伸シートを二軸延伸し、二軸配向ポリエステルフィルムを得る工程。
以上の1〜3の工程を経ることにより耐熱性、耐加水分解性、耐候性、低ブリードアウト性を兼ね備えた太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムを得ることが出来る。
【0048】
もちろん、本発明は、PETフィルムを用いたポリエステルフィルムに限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものでもよい。例えば、ガラス転移温度や融点の高いポリエチレン−2、6−ナフタレンジカルボキシレートなどを用いてポリエステルフィルムを構成する場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
【0049】
まず、ポリエチレンテレフタレートを準備する。ポリエチレンテレフタレートは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、および(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウムおよびチタン等の化合物を触媒に用いてエステル化を進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、その反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加する場合もある。得られたPETペレットを回転型真空重合装置を用いて0.1kPaの減圧下、210〜250℃の温度で1〜100時間加熱処理し、固有粘度を高めることが好ましい。
【0050】
次に、このポリエチレンテレフタレートのペレットとSABICイノベーティブプラスチック社から入手したポリエーテルイミドのペレットを、所定の割合で混合して、270〜300℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、溶融押出する。このときの剪断速度は50〜300sec−1が好ましく、より好ましくは100〜200sec−1であり、滞留時間は0.5〜10分が好ましく、より好ましくは1〜5分の条件である。さらに、上記混練条件で相溶しない場合は、得られたチップを再び2軸押出機に投入し相溶するまで混練押出を繰り返してもよい。得られたPET/PEIブレンドチップは溶融押出時の熱によってIVが低下しているため、そのまま用いるとポリエチレンテレフタレートが劣化しやすく、耐熱性・耐加水分解性・耐候性が低下しやすい。特に耐候性が低下し、紫外線照射によってΔb値が大きくなる。そのため得られたPET/PEIブレンドチップを回転型真空重合装置を用いて0.1kPaの減圧下、210〜250℃の温度で1〜100時間加熱処理し、固有粘度を高めることが好ましい。好ましい固有粘度IVは0.6〜1.2であり、より好ましくは0.7〜1.1、さらに好ましくは0.8〜1.0である。
【0051】
次に、得られたPETのペレットとPET/PEIブレンドチップを所望の割合で混合し、180℃の温度で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、265〜280℃の温度に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンドおよび金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。フィルムを積層する場合には、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層する。
【0052】
次に、このようにして得られた未延伸フィルムを、数本のロールの配置された縦延伸機を用いて、ロールの周速差を利用して縦方向に延伸し(MD延伸)、続いてステンターにより横延伸を行う(以下、横方向をTDと略すことがある)二軸延伸方法について説明する。
【0053】
まず、未延伸フィルムをMD延伸する。本発明のポリエステルフィルムは損失正接(tanδ)を制御するためにPEIを含むことが好ましい。ポリエステルにPEIが含まれると配向結晶化が起こりにくくなる。そこで、MD延伸では最初に低温で延伸を行い、その後温度を上げて2段階延伸すると配向結晶化が起こり配向を高めることができる。最初の低温での延伸(MD1延伸)は(Tg−20)〜(Tg+10)℃の範囲、さらに好ましくは(Tg−10)〜(Tg+5)℃の範囲にある加熱ロール群で加熱し、長手方向に好ましくは1.1〜3.0倍、より好ましくは1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.5〜2.0倍に延伸し、次にMD延伸1温度より高温(Tg+10)〜(Tg+50)でMD延伸2を行う。より好ましい温度は(Tg+15)(〜Tg+30)である。MD延伸2の好ましい延伸倍率は1.2〜4.0倍であり、より好ましくは1.5〜3.0倍である。MD延伸1とMD延伸2の合わせたMD延伸倍率は、好ましくは2.0〜6.0倍であり、より好ましくは3.0〜5.5倍であり、さらに好ましくは3.5〜5.0倍である。延伸後、20〜50℃の温度の冷却ロール群で冷却することが好ましい。
【0054】
次に、ステンターを用いて、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。その延伸倍率は、好ましくは2.0〜6.0倍であり、より好ましくは3.0〜5.5倍であり、さらに好ましくは3.5〜5.0倍である。また、温度は好ましくは(Tg)〜(Tg+50)℃の範囲であり、さらに好ましくは(Tg)〜(Tg+30)℃の範囲で行う。TD延伸後、熱固定処理を行う。熱固定処理はフィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら(弛緩率0〜10%)、好ましくは(Tm−70)〜(Tm)℃の温度、より好ましくは(Tm−50)〜(Tm−10)℃の温度、さらに好ましくは(Tm−40)〜(Tm−20)℃の温度の範囲で熱処理する。熱処理時間は0.5〜20秒の範囲で行うことが好ましい。その後、25℃に冷却後、フィルムエッジを除去し、本発明のポリエステルフィルムを得ることができる。
【0055】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)損失正接(tanδ)ピーク温度
エスアイアイナノテクノロジー(株)製動的粘弾性装置DMS6100型を用い、下記条件にて損失正接(tanδ)を測定し、そのピークの最大高さにおける温度をtanδピーク温度とした。ピークが複数存在あるいはショルダーを有する場合は最も高いピークで評価する。サンプルおよび測定装置の設定は下記の通り。
サンプル長:20mm
サンプル幅:10mm
温度範囲:25〜200℃
昇温速度;2℃/分
歪振幅:10mN
圧縮力ゲイン:1.5
力振幅初期値:100mN。
【0056】
(2)黄色度(b値)の増加量(Δb値)
分光式色差計CM−3600d(KONICA−MINOLTA製)を用い、JIS−K−7105(1981)に従って透過法で三刺激値X,Y,Zを測定した。そこから、下記式にてハンターLab表色系の黄色度(b値)を算出した。
b値=7.0×(Y−0.847×Z)/Y1/2
さらに、Δb値は下記の式にて算出した。紫外線照射は紫外線劣化促進試験機(SUV−W131:岩崎電気(株)製UV照度:100mW/cm、UV波長:295nm〜450nm、ランプ種:メタルハライド、温湿度:60℃×50%RH)を用いて行った。
Δb値=(紫外線48時間照射後のb値)―(照射前の初期b値)。
【0057】
(3)フィルム中の樹脂の含有量の測定
フィルムを秤量後、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)/クロロホルム(質量比50/50)の混合溶媒に溶解する。不溶な成分がある場合は、この不溶成分を遠心分離で分取した後、質量を測定し、元素分析、FT−IR、NMR法により該成分の構造と質量分率を測定する。上澄み成分についても同様に分析すれば、ポリエステル成分および他成分の質量分率と構造が特定できる。詳しくは、この上澄み成分から溶媒を留去した後にHFIP/重クロロホルム(質量比50/50)混合溶媒に溶解した後、1H核のNMRスペクトルを測定する。得られたスペクトルで、各成分に特有の吸収(例えば、PETであればテレフタル酸の芳香族プロトン、PEIであればビスフェノールAの芳香族のプロトン)のピーク面積強度を求め、その比率とプロトン数よりブレンドのモル比を算出する。さらにポリマーの単位ユニットに相当する式量より質量比を算出する。このようにして各成分の質量分率と構造が特定できる。
【0058】
(4)面配向係数
面配向係数は、JIS−K7142(1996)に準拠して測定する。ナトリウムD線を光源として、アッベ屈折率計を用いてMD、TDおよび厚み方向(ZD)方向の屈折率を測定した。マウント液はヨウ化メチレンを用い、温度25℃、湿度65%RHの条件下で測定した。
・試料幅:25mm
・試料長:30mm
・測定装置:アッベ屈折率計 NAR−1T (株)アタゴ社製
・マウント液:ヨウ化メチレン(ポリエチレンナフタレートの場合は、硫黄ヨウ化メチレン)
・測定環境:温度23℃湿度65%RH。
・算出式:面配向係数fn=(nMD+nTD)/2−nZD
ここで、nMDはMD方向屈折率、nTDはTD方向屈折率、nZDはZD方向屈折率。
【0059】
(5)伸度保持率(温度200℃、72時間)
破断伸度E0は、ASTM−D882(1997)に基づいて、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度を測定した。測定は、5サンプルについて測定を実施しその平均値でもって破断伸度E0とした。次いで、試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、エスペック(株)製STPH−102にて、温度200℃にて72時間処理を行った後、処理後のサンプルの破断伸度をASTM−D882(1997)に基づいて、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minで測定した。測定は、5サンプルについて測定しその平均値を破断伸度E1とした。得られた破断伸度E0とE1を用いて、下記式により伸度保持率(温度200℃、72時間)を算出した。
・伸度保持率(温度200℃、72時間)(%)=(E1/E0)×100。
【0060】
(6)伸度保持率(温度125℃、湿度100%RH、72時間)
破断伸度E0は、上記(5)と同様にして求める。次いで、試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、(株)平山製作所製プレッシャークッカーPC304R8Dにて、温度125℃、湿度100%RHの条件下で72時間処理を行った後、処理後のサンプルの破断伸度をASTM−D882(1997)に基づいて、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minで測定した。測定は、5サンプルについて測定しその平均値を破断伸度E2とした。得られた破断伸度E0とE2を用いて、下記式により伸度保持率(温度125℃、湿度100%RH、72時間)を算出した。
・伸度保持率(温度125℃、湿度100%RH、72時間)(%)=(E2/E0)×100。
【0061】
(7)光線透過率測定
日立製作所製分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)で光線透過率を測定した。光波長範囲は240〜800nmとし、360nmの透過率を評価した。
【0062】
(8)固有粘度(IV)
オルトクロロフェノール中、25℃の温度で測定した溶液粘度から、下式に基づいて計算する。
ηsp/C=[η]+K[η]×C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー質量(g/100ml、通常1.2)であり、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度と溶媒粘度は、オストワルド粘度計を用いて測定する。
【0063】
(9)耐加水分解性
本発明の太陽電池バックシート用フィルムを第1層として用い、接着層として“タケラック”(登録商標)A310(三井武田ケミカル(株)製)90質量部と“タケネート”(登録商標)A3(三井武田ケミカル(株)製)を塗布し、その上に第2層として厚さ125μmの二軸延伸ポリエステルフィルム“ルミラー”(登録商標)S10(東レ(株)製)を貼り合わせた。次に、上記の第2層上に上述の接着層を塗布し、厚さ12μmのバリアロックス“HGTS”(登録商標)(東レフィルム加工(株)製のアルミナ蒸着PETフィルム)を蒸着層が第2層と反対側になるように貼り合わせ、厚さ188μmのバックシートを形成した。得られたバックシートの破断伸度E0は、上記(5)と同様にして求める。次いで、試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、恒温恒湿槽(エスペック(株)製恒温恒湿槽KH−60A)を用いて、温度85℃、湿度85%RHの雰囲気下で3000時間放置した後、処理後のサンプルの破断伸度をASTM−D882(1997)に基づいて、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minで測定した。測定は、5サンプルについて測定しその平均値を破断伸度E3とした。得られた破断伸度E0とE3を用いて、下記式により伸度保持率(温度85℃、湿度85%RH、3000時間)を算出した。
・伸度保持率(温度85℃、湿度85%RH、3000時間)(%)=(E3/E0)×100
その伸度保持率を下記の基準で判定し、耐加水分解性を評価した。
◎:伸度保持率が70%以上 非常に良好
○:伸度保持率が50%以上70%未満 良好
△:伸度保持率が30%以上50%未満 やや良好
×:伸度保持率が30%未満 不良。
【0064】
(10)耐熱性
(9)と同様にバックシートを作製し破断伸度E0を測定した。次いで、試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、エスペック(株)製高温恒温器STPH−102を用いて、温度150℃の雰囲気下で3000時間放置した後、処理後のサンプルの破断伸度をASTM−D882(1997)に基づいて、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minで測定した。測定は、5サンプルについて測定しその平均値を破断伸度E4とした。得られた破断伸度E0とE4を用いて、下記式により伸度保持率(温度150℃、3000時間)を算出した。
・伸度保持率(温度150℃、3000時間)(%)=(E4/E0)×100
その伸度保持率を下記の基準で判定し、耐熱性を評価した。
◎:伸度保持率が70%以上 非常に良好
○:伸度保持率が50%以上70%未満 良好
△:伸度保持率が30%以上50%未満 やや良好
×:伸度保持率が30%未満 不良。
【0065】
(11)耐候性
(9)と同様にバックシートを作製し破断伸度E0を測定した。次いで、試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、屋外の暴露試験で3000時間放置した後、処理後のサンプルの破断伸度をASTM−D882(1997)に基づいて、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minで測定した。測定は、5サンプルについて測定しその平均値を破断伸度E5とした。得られた破断伸度E0とE5を用いて、下記式により伸度保持率(屋外、3000時間)を算出した。
・伸度保持率(屋外、3000時間)(%)=(E5/E0)×100
伸度保持率を下記の基準で判定し、耐候性を評価した。
◎:伸度保持率が70%以上 非常に良好
○:伸度保持率が50%以上70%未満 良好
△:伸度保持率が30%以上50%未満 やや良好
×:伸度保持率が30%未満 不良。
【0066】
(12)ブリードアウト性
本発明の太陽電池バックシート用フィルムを第1層として用い、接着層として“タケラック”(登録商標)A310(三井武田ケミカル(株)製)90質量部と“タケネート”(登録商標)A3(三井武田ケミカル(株)製)を塗布し、その上に第2層として厚さ125μmの二軸延伸ポリエステルフィルム“ルミラー”(登録商標)S10(東レ(株)製)を貼り合わせた。23℃、50%RH雰囲気下において、JIS−Z0237(2009)に準じて、上下のクリップに貼り合わせたフィルムの未接着部を挟み、剥離角180°、引張速度100mm/分でブリードアウトを測定した。添加剤がブリードアウトすると接着性が悪化し接着力が低下する。
○:10N/20mm以上、20N/20mm未満・・・接着性良好
△:5N/20mm以上、10N/20mm未満・・・接着性やや良好
×:5N/20mm未満・・・接着性不良
【実施例】
【0067】
(参考例1)
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール64質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃の温度に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら、酢酸カルシウム0.09質量部および三酸化アンチモン0.03質量部を加え、140〜230℃の温度でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、酢酸リチウム0.18質量部とリン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を4.8質量部(リン酸トリメチルとして0.24質量部)添加した。
【0068】
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると、反応内容物の温度が低下する。そこで、余剰のエチレングリコールを留出させながら、反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達したら、反応内容物を重合装置に移行した。
【0069】
反応内容物を重合装置に移行後、反応系を230℃から290℃の温度にまで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度290℃と最終圧力0.1kPa到達までの時間はともに60分とした。最終温度と最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置で固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を、窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングして、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートのPETペレットA(3mm立方)を得た。
【0070】
(参考例2)
回転型真空重合装置を用いて、上記の参考例1で得られたPETペレットAを0.1kPaの減圧下230℃の温度で長時間加熱処理し、固相重合を行った。加熱処理時間が長いほど固有粘度は高くなる。処理時間20時間で固有粘度は0.80である。
【0071】
(参考例3)
参考例2で得た固有粘度0.8のポリエチレンテレフタレート(PET)50質量部とSABIC社製のポリエーテルイミド(PEI)“ウルテム”1010を50質量部、150℃で5時間除湿乾燥した後、320〜290℃に加熱された(スクリューゾーン、押出ヘッド部で温度勾配を設定)2軸三段タイプのスクリュー(PETとPEIの混練可塑化ゾーン/ダルメージ混練ゾーン/逆ネジダルメージによる微分散相溶化ゾーン)と具備したベント式二軸押出機(L/D=40、ベント孔の減圧度は200Paとした)に供給して、滞留時間3分にて溶融押出し、PEIを50質量%含有したPET/PEIブレンドチップを得た。このチップをブレンドチップAとした。
【0072】
(参考例4)
回転型真空重合装置を用いて、上記の参考例3で得られたブレンドチップAを0.1kPaの減圧下230℃の温度で長時間加熱処理し、固相重合を行った。加熱処理時間が長いほど固有粘度は高くなる。処理時間40時間で固有粘度は0.90である。処理時間90時間で固有粘度は1.2である。処理時間110時間で固有粘度は1.3である。
【0073】
(実施例1)
280℃の温度に加熱された押出機Eには、参考例2で得られた固有粘度0.8のPETペレット80質量部と、参考例4で得られた固有粘度0.9のブレンドチップA20質量部を180℃の温度で3時間減圧乾燥した後に供給し、窒素雰囲気下Tダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金内から、シート状に押出して溶融単層シートとし、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸単層フィルムを得た。
【0074】
続いて、得られた未延伸単層フィルムを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに110℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで220℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに220℃の温度で4%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、厚さ50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0075】
得られたポリエステルフィルムを評価したところ、表1と表2に示すように、耐加水分解性、耐熱性、耐候性、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0076】
(実施例2)
参考例2で得られた固有粘度0.8のPETペレット96質量部と、参考例4で得られた固有粘度0.9のブレンドチップA4質量部を使用すること、82℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに102℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の87℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に92℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸したこと以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐熱性、耐加水分解性、耐候性、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0077】
(実施例3)
参考例2で得られた固有粘度0.8のPETペレット40質量部と、参考例4で得られた固有粘度0.9のブレンドチップA60質量部を使用すること、110℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに130℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の115℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に120℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸したこと以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐加水分解性、耐熱性、耐候性、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0078】
(実施例4)
参考例2で得られた固有粘度0.8のPETペレット84質量部と、参考例4で得られた固有粘度0.9のブレンドチップA16質量部を使用すること、88℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに108℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の93℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に98℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸したこと以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐加水分解性、耐熱性、耐候性、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0079】
(実施例5)
参考例2で得られた固有粘度0.8のPETペレット60質量部と、参考例4で得られた固有粘度0.9のブレンドチップA40質量部を使用すること、100℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに120℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の105℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸したこと以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐加水分解性、耐熱性、耐候性、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0080】
(実施例6)
参考例2で得られた固有粘度0.8のPETペレット40質量部と、参考例3で得られた固有粘度0.59のブレンドチップA60質量部を使用すること、110℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに130℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の115℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に120℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸したこと以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐加水分解性、耐熱性、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0081】
(実施例7)
参考例2で得られた固有粘度0.8のPETペレット80質量部と、回転型真空重合装置を用いて、参考例3で得られたブレンドチップAを0.1kPaの減圧下230℃で1時間処理後し固有粘度は0.60としたブレンドチップA20質量部を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐加水分解性、耐熱性、ブリードアウト性優れた特性を有していた。
【0082】
(実施例8)
参考例2で得られた固有粘度0.8のPETペレット80質量部と、参考例4で得られた固有粘度ブレンドチップA(固有粘度1.2)20質量部を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐加水分解性、耐熱性、耐候性、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0083】
(実施例9)
実施例1で得られた未延伸単層フィルムを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに110℃の温度で2.5倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.5倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.3倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで220℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに220℃の温度で2%幅方向に弛緩処理を行ったこと以外は実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐加水分解性、耐熱性、耐候性、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0084】
(実施例10)
実施例1で得られた未延伸単層フィルムを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに110℃の温度で2.1倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に3.8倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に3.8倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで220℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに220℃の温度で5%幅方向に弛緩処理を行ったこと以外は実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐候性、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0085】
(実施例11)
参考例2で得られた固有粘度0.8のPETペレット90質量部と、参考例4で得られた固有粘度0.9のブレンドチップA10質量部を使用すること、85℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに105℃の温度で2.1倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に3.8倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の90℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に95℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に3.8倍延伸したこと以外は、実施例10と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0086】
(実施例12)
参考例1で得られた固有粘度0.65のPETペレット80質量部と、参考例4で得られた固有粘度0.9のブレンドチップA20質量部を使用すること以外は、実施例10と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐候性、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0087】
(実施例13)
参考例1で得られた固有粘度0.65のPETペレット80質量部と、参考例3で得られた固有粘度0.59のブレンドチップA20質量部を使用し、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系アデカスタブLA−51)を0.02質量%添加する事以外は実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐加水分解性、耐候性、耐熱性に優れた特性を有していた。
【0088】
(実施例14)
2、6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100質量部とエチレングリコール60質量部の混合物に、酢酸マンガン・4水和物塩0.03質量部を添加し、150℃の温度から240℃の温度に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024質量部を添加した。また、反応温度が220℃に達した時点で3、5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042質量部(2mmol%に相当)を添加した。その後、引き続いてエステル交換反応を行い、トリメチルリン酸0.023質量部を添加した。次いで、反応生成物を重合装置に移し、290℃の温度まで昇温し、30Paの高減圧下で重縮合反応を行い、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置で固有粘度0.65のポリエチレン−2、6−ナフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで、反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングして固有粘度0.65のポリエチレン−2、6−ナフタレートペレットX’を得た。
【0089】
回転型真空重合装置を用いて、得られたPENペレットを0.1kPaの減圧下、250℃の温度で20時間固相重合を行い固有粘度0.80のPENペレットX”を得た。上記で得た固有粘度0.80のPENペレットX”50質量部とSABIC社製のポリエーテルイミド(PEI)“ウルテム”1010を50質量部、150℃で5時間除湿乾燥した後、320〜290℃に加熱された(スクリューゾーン、押出ヘッド部で温度勾配を設定)2軸三段タイプのスクリュー(PENとPEIの混練可塑化ゾーン/ダルメージ混練ゾーン/逆ネジダルメージによる微分散相溶化ゾーン)と具備したベント式二軸押出機(L/D=40、ベント孔の減圧度は200Paとした)に供給して、滞留時間3分にて溶融押出し、PEIを50質量%含有したPEN/PEIブレンドチップを得た。このチップをブレンドチップBとした。
【0090】
さらに、回転型真空重合装置を用いて、上記で得られたブレンドチップBを0.1kPaの減圧下250℃の温度で40時間固相重合を行い固有粘度0.90のブレンドチップB’を得た。
【0091】
300℃の温度に加熱された押出機Eに、固相重合で得られた固有粘度0.80のPENペレットX”80質量部と、固有粘度0.9のブレンドチップB’20質量部を180℃の温度で3時間減圧乾燥した後に供給し、窒素雰囲気下Tダイ口金に導入した。次いで、Tダイ口金内から、シート状に押出して溶融単層シートとし、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸単層フィルムを得た。
【0092】
続いて、得られた未延伸単層フィルムを加熱したロール群で予熱した後、115℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに135℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の135℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に145℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに230℃の温度で4%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、厚さ50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0093】
得られたポリエステルフィルムを評価したところ、耐加水分解性、耐熱性、耐候性、ブリードアウト性に優れた特性を有していた。
【0094】
(比較例1)
参考例2で得られた固有粘度0.80のPETペレット100質量部で、ブレンドチップAを用いず、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系アデカスタブLA−51)を0.1質量%添加すること、80℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに100℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の85℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸したこと以外は実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、損失正接(tanδ)が本発明の範囲外であったため、耐加水分解性、耐熱性、ブリードアウト性に劣る特性を有していた。
【0095】
(比較例2)
参考例2で得られた固有粘度0.8のPETペレット20質量部と、参考例4で得られた固有粘度0.9のブレンドチップA80質量部を使用すること、120℃の温度で1.7倍MD延伸1を行い、さらに140℃の温度で2.1倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に3.6倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の125℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に130℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に3.6倍延伸したこと以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、損失正接(tanδ)が本発明の範囲外であったため、耐加水分解性、耐熱性に劣る特性を有していた。
【0096】
(比較例3)
参考例2で得られた固有粘度0.8のPETペレット80質量部と、参考例3で得られた固有粘度0.59のブレンドチップA20質量部を使用すること以外は、実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、Δb値が本発明の範囲外であったため、耐加水分解性、耐熱性、耐候性に劣る特性を有していた。
【0097】
(比較例4)
参考例2で得られた固有粘度0.80のPETペレット100質量部を使用すること、80℃の温度で1.8倍MD延伸1を行い、さらに100℃の温度で2.3倍MD延伸2を行った。トータルで長手方向(MD方向)に4.1倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の85℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に4.0倍延伸したこと以外は実施例1と同様の方法で二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、損失正接(tanδ)とΔb値が本発明の範囲外であったため、耐加水分解性、耐熱性、耐候性に劣る特性を有していた。
【0098】
(比較例5)
300℃の温度に加熱された押出機Eに、実施例14で得られた固有粘度0.80のPENペレットX”100質量部を使用しブレンドチップBを使用せず、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系アデカスタブLA−51)を0.1質量%添加すること以外は実施例14と同様の方法にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを評価したところ、Δb値が本発明の範囲外であったため、耐候性、ブリードアウト性に劣る特性を有していた。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2−1】

【0101】
【表2−2】

【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムは環境変化による劣化が少なく、耐加水分解性、耐候性、耐熱性、ブリードアウト性に優れたバックシートを提供することができる。そのため、耐久性の高い太陽電池を得るために利用される可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
損失正接(tanδ)ピーク温度が120〜180℃であり、メタルハライドランプを用いて295〜450nmの紫外線を100mWで48時間照射後の黄色度(b値)の増加量(Δb値)が0〜15であることを特徴とする太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステル(A)とポリイミド(B)を含むポリエステルフィルムである請求項1に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
ポリイミド(B)の含有量が、フィルム全体に対して、2質量%〜30質量%である請求項2に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
紫外線吸収剤の含有量が、フィルム全体に対して、0.01質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
面配向係数fnが0.140〜0.280である請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
200℃の熱処理72時間後における少なくとも一方向の破断伸度の保持率が10〜100%である請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項7】
125℃・100%RHの熱処理72時間後における少なくとも一方向の破断伸度の保持率が10〜100%である請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項8】
波長360nmの光線透過率が0〜20%である請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムの製造方法であって、以下の工程1〜3をその順に経ることを特徴とする太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムの製造方法。
工程1:ポリエステル(A)とポリイミド(B)とを、質量分率(A/B)が70/30〜30/70となるように溶融混練し、コンパウンド原料(AB)を得る工程。
工程2:コンパウンド原料(AB)を0.1kPa以下の減圧下にて210〜250℃の温度で1〜100時間加熱処理し、熱処理されたコンパウンド原料(ABH)を得る工程。
工程3:ポリエステル(A’)と熱処理されたコンパウンド原料(ABH)とを混合し、溶融押出しし、未延伸シートを得て、該未延伸シートを二軸延伸し、二軸配向ポリエステルフィルムを得る工程。

【公開番号】特開2011−204841(P2011−204841A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69764(P2010−69764)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】