説明

太陽電池モジュールの製造方法

【課題】太陽電池ストリングを構成する太陽電池素子間の間隔を一定にすることができ、高い精度で位置合わせが可能な、美観に優れ所望の特性を維持した信頼性の高い太陽電池モジュールを安定して供給することが可能な太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】基板と、樹脂からなる第1充填材と、複数の太陽電池素子を配線材により接続してなる1以上の太陽電池ストリングと、をこの順で積層した太陽電池モジュールの製造方法であって、前記第1充填材に前記太陽電池素子ストリングを配置する工程と、前記第1充填材を前記第1充填材の融点以上でかつ架橋点未満または熱硬化点未満の温度に加熱する工程と、前記第1充填材に前記太陽電池ストリングを配置した積層体を前記第1充填材の融点未満の温度に冷却する工程と、前記積層体を前記基板の表面に沿って変形させる工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の太陽電池素子を配線してなる太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、例えば単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板等のように、単体で発電を行える半導体素子の複数枚を直列および/または並列に電気的に接続したものが、基板上にラミネート加工等により樹脂で封止された状態で構成される。
【0003】
このような太陽電池モジュールの製造工程において、例えば、太陽電池素子の複数を接続してなる太陽電池ストリングの1以上が、湾曲した基板に設けた樹脂シートの上に配置される際等に、太陽電池ストリングを構成する太陽電池素子の配置が所定位置からずれることがある。
【0004】
太陽電池素子の位置ずれが生じた状態で作製された太陽電池モジュールは、太陽電池素子どうしの接触等により発電効率が低下する等の問題を招来する。
【0005】
太陽電池素子の位置ずれを抑制するために、予め粘着材付きテープ等で太陽電池素子間を固定する方法が考えられる。また、平板状の基板に透光性接着剤で接着した後、ラミネート工程で基板を湾曲した型に合わせて加熱させ、変形させる方法が提案されている。(下記の特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平03−204979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、太陽電池素子間を粘着材付きテープで固定する方法では、テープの材質と厚みを太陽電池素子の種類および製造方法等を十分に考慮して決定するなどの煩雑な過程を経なければ、太陽電池素子の移動を効果的に抑制することはできない。
【0008】
また、特許文献1の方法では、ラミネート工程における樹脂シートの加熱・変形の際に、太陽電池素子が樹脂シートの変形に応じて所定位置からずれることがある。
【0009】
そこで本発明は、太陽電池ストリングを構成する太陽電池素子間の間隔を一定にすることができ、高い精度で位置合わせ等が可能な、美観に優れ所望の特性を維持できる信頼性の高い太陽電池モジュールを安定して供給することが可能な太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの製造方法は、基板と、樹脂からなる第1充填材と、複数の太陽電池素子を配線材により接続してなる1以上の太陽電池ストリングと、をこの順で積層したものを含んでなる太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第1充填材に前記太陽電池素子ストリングを配置する工程と、
前記第1充填材を前記第1充填材の融点以上でかつ架橋点未満または熱硬化点未満の温度に加熱する工程と、
前記第1充填材に前記太陽電池ストリングを配置した積層体を前記第1充填材の融点未満の温度に冷却する工程と、
前記積層体を前記基板の表面に沿って変形させる工程と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの製造方法は、基板と、第1充填材と、複数の太陽電池素子を配線材により接続してなる太陽電池ストリングと、樹脂からなる第2充填材と、をこの順で積層したものを含んでなる太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第2充填材に前記太陽電池素子ストリングを配置する工程と、
前記第2充填材を前記第2充填材の融点以上でかつ架橋点未満または熱硬化点未満の温度に加熱する工程と、
前記第2充填材に前記太陽電池ストリングを配置した積層体を前記第2充填材の融点未満の温度に冷却する工程と、
前記積層体を前記基板の表面に沿って変形させる工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの製造方法は、基板と、樹脂からなる第1充填材と、複数の太陽電池素子を配線材により接続してなる太陽電池ストリングと、樹脂からなる第2充填材と、をこの順で積層したものを含んでなる太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第1充填材と前記第2充填材との間に太陽電池素子ストリングを配置する工程と、
前記第1充填材および前記第2充填材を、これらの融点のいずれか高い方の融点以上でかついずれか低い方の架橋点未満または熱硬化点未満の温度で加熱する工程と、
前記第1充填材と前記第2充填材との間に太陽電池素子ストリングを配置した積層体を、前記第1充填材および前記第2充填材の融点のいずれか低い方の融点未満に冷却する工程と、
前記積層体を前記基板の表面に沿って変形させる工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの製造方法によれば、太陽電池ストリングを第1充填材および/または第2充填材と一体的に移動可能な積層体とすることができる。これにより、このような積層体の移動等において、太陽電池素子が移動することが極力抑制され、美観に優れ所望の特性を維持した信頼性の高い太陽電池モジュールを安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの構造の例を説明する分解斜視模式図である。
【図2】(a),(b)のそれぞれは、太陽電池モジュールを構成する積層体の構造および製造方法の例を説明する斜視模式図である。
【図3】(a)〜(c)のそれぞれは、本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの構造および製造方法の例を説明する断面模式図である。
【図4】(a)〜(c)のそれぞれは、本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの構造および製造方法の例を説明する断面模式図である。
【図5】(a)〜(c)のそれぞれは、本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの構造および製造方法の例を説明する断面模式図である。
【図6】太陽電池モジュールを構成する積層体の構造および製造方法の例を説明する分解斜視模式図である。
【図7】搬送装置における太陽電池ストリングの載置位置について説明する平面模式図である。
【図8】積層体を構成する充填材に形成した突起部を説明する分解斜視模式図である。
【図9】(a)〜(c)のそれぞれは、本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの構造および製造方法の例を説明する断面模式図である。
【図10】(a)〜(c)のそれぞれは、本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの構造および製造方法の例を説明する断面模式図である。
【図11】(a)〜(c)のそれぞれは、本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの構造および製造方法の例を説明する断面模式図である。
【図12】本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの構造および製造方法の例を説明する斜視模式図である。
【図13】本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの構造および製造方法の例を説明する斜視模式図である。
【図14】一般的な太陽電池ストリングと配線材との関係を説明する断面模式図である。
【図15】(a),(b)のそれぞれは、本発明の一形態に係る積層体を構成する充填材に形成した突起部を説明する断面模式図である。
【図16】本発明の一形態に係る積層体を構成する充填材に形成した突起部を説明する分解斜視模式図である。
【図17】本発明の一形態に係る積層体を構成する充填材に形成した突起部を説明する斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの製造方法の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
<実施形態1>
図1に示すように、太陽電池モジュール20は、配線材10等を用いて複数の太陽電池素子2を直列および/または並列に接続して太陽電池マトリクスを形成し、所望の電圧値および電流値が得られるようにしている。この太陽電池モジュール20は、基板21と、樹脂からなる第1充填材である受光面側充填材22と、複数の太陽電池素子を配線材10により接続してなる1以上の太陽電池ストリングと、をこの順で積層したものを含んでなる。
【0017】
例えば、太陽電池ストリング4a〜4cは、それぞれ太陽電池素子2の複数が一列に並んだものであり、これらの太陽電池ストリング4a〜4cは、それぞれ太陽電池素子2が直列接続されて構成することができる。
【0018】
例えば平面視で方形の平板状で非水平に配置された基板上に、または、平面視して方形で湾曲した主面を有する透光性の基板21上に、太陽電池ストリング4a〜4cを配置して太陽電池モジュール20とする。すなわち、樹脂からなる第1充填材である受光面側充填材22および樹脂からなる第2充填材である裏面側充填材23で太陽電池ストリング4a〜4cを挟んで積層し、裏面側充填材23に耐候性、耐水性および耐電圧性に優れた裏面シート24を配して、ラミネータで加温して樹脂からなる部材を架橋して太陽電池モジュール20とする。
【0019】
ここで、太陽電池素子2は太陽電池素子2どうしを電気的に接続可能なものであり、充填材で基板に配置するものであればよく、また、太陽電池素子の発電領域に用いる材質は各種のものを適用することが可能である。なお、簡単のため、本実施形態および他の実施形態では太陽電池素子の発電領域の材質には主として多結晶質のシリコンを用いたものを例にとり説明をする。
【0020】
配線材10は太陽電池素子2の発電電力を取り出す導線であり、太陽電池素子2の+電極および−電極のそれぞれにハンダ付けを施すことができる。配線材10で太陽電池素子2どうしを直列または並列に半田付けを施すことにより、太陽電池素子2どうしが接続されひとつの太陽電池ストリングとなる。このようにして接続された各々の太陽電池ストリングが直列接続であるか並列接続であるかは、隣接する太陽電池素子の間を配線材10を介して+極と−極間で半田付けするか(直列接続)、−極どうしで半田付けするか(並列接続)で決まる。配線材10には、幅1〜3mm程度、厚み0.1〜0.8mm程度のリボン状の銅箔を半田メッキまたは半田コートしたものが用いられる。
【0021】
配線材10における太陽電池ストリング4a〜4cの終端に当たる箇所を、不図示の配線材で直列または並列に半田付けして太陽電池ストリングとし、この状態で搬送および載置される。
【0022】
なお、本実施形態では、太陽電池ストリング4a〜4cのそれぞれは、太陽電池素子2が3枚連結されたものとしている。合計で9枚の太陽電池素子で太陽電池モジュールが構成されたものを模式的に図示しているが、太陽電池素子の数および太陽電池モジュールの電気出力は、自由に決定できる。例えば、多結晶太陽電池を使用した電力用太陽電池アレイに使用される太陽電池モジュールでは、太陽電池素子を48〜56枚連結した太陽電池モジュールが製造される。この太陽電池モジュールの大きさは、例えば1.4m程度のものがある。
【0023】
受光面側充填材22は、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略す)(融点:50〜100℃、架橋点:110〜130℃のものが使用可能)、またはポリビニルブチラール(以下、PVBと略す)(融点:50〜100℃、熱硬化点:110〜130℃のものが使用可能)等の樹脂から成り、Tダイと押し出し機により厚さ0.4〜1mm程度のシート状に成形されたものを用いる。以下、受光面側充填材22としてEVAを用いた場合を例にとり説明する。
【0024】
図2(a)に示すように、太陽電池ストリングは吸着式の搬送装置等で受光面側充填材22上に搬送され、吸着解除により載置された後、太陽電池ストリングを受光面側充填材22の融点以上でかつ架橋点未満または熱硬化点未満の温度範囲である例えば60℃〜90℃に加熱して受光面側充填材22を太陽電池素子2に接着(もしくは粘着)させることができる。この加熱手段としては半田ごてまたはヒーター等で直接太陽電池素子2を加熱する方法、ホットエアーのように熱を吹きつける等の間接的な加熱方法、または後述する太陽電池ストリングに逆起電力を印加して太陽電池素子自体を発熱させる方法が好適である。
【0025】
図2(b)に示すように、前記の積層体を製造するための製造装置としては、例えば棒状のヒーター40が複数配置されたヒーター装置を用いる。ヒーター40を加熱した状態で太陽電池素子2上に降下させ、太陽電池素子2を90℃まで加熱して受光面側充填材22を融解させ、太陽電池素子2と接着させる。このとき、ヒーター40が太陽電池素子2を受光面側充填材22に少し押さえつけるようにしておくと、太陽電池素子2と受光面側充填材22との密着性が向上し熱伝導も良好に行われる。
【0026】
この際の加熱時間は、太陽電池素子2の面積と厚さにより異なるが、本発明者らの実験によれば、156mm角の多結晶シリコン型の太陽電池素子では、5〜7秒程度が好適であった。なお、太陽電池素子2の厚みが0.16〜0.18mmのように薄い場合では、ヒーター40を余熱状態で太陽電池素子2上に降下させてから10秒程度の本加熱を行うようにすると、太陽電池素子2への熱衝撃が少なくクラックが生じ難かった。
【0027】
太陽電池素子2と受光面側充填材22への加熱完了後、ヒーター40を上昇させて、太陽電池素子2と受光面側充填材22を融点未満に冷却させる。この冷却は自然に冷ましてもよいし、空冷ファン等で強制冷却してもよい。
【0028】
このようにして、太陽電池素子2が受光面側充填材22と一体となるので、搬送時は受光面側充填材22を動かせば太陽電池ストリングも一緒に動き、且つ、各太陽電池素子2は受光面側充填材22に精度よく位置固定された状態となる。これにより、太陽電池ストリングおよび太陽電池素子2の配置のずれが抑制される。
【0029】
したがって、吸着搬送以外にもローラーまたはコンベアー等を用いた多少の振動・衝撃を伴う搬送方法が利用可能となり、製造装置の搬送手段の自由度が増す。この時、受光面側充填材22と太陽電池素子2が接着(または粘着)する面積は必ずしも太陽電池素子2の面積と等しくする必要はない。例えば太陽電池素子の中心近傍の2〜4cm程度の範囲に限定してもよく、太陽電池素子2が受光面側充填材22から脱落しない程度の接着力を確保できればよい。
【0030】
太陽電池素子2と受光面側充填材22との積層体を、平板状または湾曲した面を有する基板上21に載置する。このとき、受光面側充填材22の温度はそれを構成する樹脂の融点未満である。ここで、基板21は、ガラスやポリカーボネート樹脂などからなる基板を用いる。ガラス板の場合、白板ガラス、強化ガラス、倍強化ガラス、熱線反射ガラスなどを用いるが、例えば厚さ3mm〜5mm程度の白板強化ガラスを使用する。他方、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂からなる基板を用いる場合には、厚みが5mm程度のものを使用する。
【0031】
そして、受光面側充填材22と同一材質の裏面側充填材23と裏面シート24を上記積層体の上にのせ、この積層状態でラミネート装置により減圧下にて加熱加圧を行う。これにより、受光面側充填材22と裏面側充填材23が軟化し融着して他の部材と一体化する。なお、裏面側充填材23は受光面側充填材22とは異なる材質のものを用いてもよい。
【0032】
このように、太陽電池素子2と受光面側充填材22との積層体を、基板上21に載置することで、受光面側充填材22が初期加熱時に熱膨張によって変形しても、太陽電池ストリングおよび太陽電池素子2が配線材10の張力でそれを抑制し、受光面側充填材22の融解まで位置を留めるので、太陽電池ストリングおよび太陽電池素子2が受光面側充填材22の熱膨張に応じて位置が移動するのを抑制できる。
【0033】
また、裏面側充填材23の熱膨張による太陽電池ストリングを移動させようとする力に対しては、太陽電池素子2が受光面側充填材22に固定されていることで影響を受けない。さらに架橋点以上の110〜130度に昇温することで受光面側充填材および裏面側充填材に含まれた架橋剤が反応して、いったん硬化させると、再度加熱しても充填材は軟化しにくくなる。
【0034】
なお、裏面側充填材24に用いるEVAおよびPVBは透明でも構わないし、太陽電池モジュールの設置される周囲の設置環境に合わせ酸化チタンや顔料等を含有させ白色等に着色してもよい。
【0035】
以上のようにして、少なくとも基板21と、樹脂からなる第1充填材(本実施形態では受光面側充填材22)と、複数の太陽電池素子2を配線材10により接続してなる1以上の太陽電池ストリングと、をこの順で積層したものを含んでなる太陽電池モジュール20が完成する。
【0036】
本実施形態によれば、第1充填材に太陽電池素子ストリングを配置する工程と、第1充填材を第1充填材の融点以上でかつ架橋点未満または熱硬化点未満の温度に加熱する工程と、第1充填材に太陽電池ストリングを配置した積層体を第1充填材の融点未満の温度に冷却する工程と、積層体を基板の表面に沿って変形させる工程と、を含むので、太陽電池ストリングの位置合わせが容易で、搬送時の位置ずれが生じ難く、従来使用できなかったコンベアー等の搬送方法も利用可能とした自由度の高い太陽電池モジュールの製造方法および製造装置とできる。
【0037】
<実施形態2>
次に、特に湾曲した表面を有する基板に太陽電池ストリングを配置する実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態1と重複する工程および説明については省略する。
【0038】
図3(a)に示すように、積層体1aは、受光面側充填材22に太陽電池素子ストリング4の受光面側を実施形態1で説明したように熱融着したものである。基板21は断面において主なる2辺が円弧状に湾曲した形状をなす。
【0039】
ここで、積層体1aは基板21へそのまま降ろして積層体1aの端部から着面するようにしてもよい。また、図3(b)に示すように、積層体1aを基板21の湾曲した表面に合わせて曲げて着面するようにしてもよい。
【0040】
具体的な動作例について説明する。まず、製造装置のアーム部(不図示)で積層体1aの受光面側充填材22の平面視で対向する2辺の両端を持ち上げる。次に、これら2辺を持つ前記アーム部の間隔を狭めることで、積層体1aの中央部が端部よりも下がって湾曲した状態にする。基板21の湾曲以上になったら前記アーム部の移動を停止させ、積層体1aを基板21上に移動させる。
【0041】
そして、製造装置のアーム部を降下させて積層体1aを基板21に着面させる。その後、基板21に対する積層体1aの太陽電池ストリング4の配置位置を受光面側充填材22を動かして調整した後、前記アーム部の支持を解除するといった工程を行うことで太陽電池ストリング4の位置合わせを精度よく行うことができる。
【0042】
これにより、自動化が困難であった太陽電池ストリング4の位置合わせまたは位置直しを容易にするとともに、位置直し等のために太陽電池素子を動かしたことに起因する太陽電池素子の割れ・クラック等の発生を抑制できる。
【0043】
なお、積層体を曲げる動作は基板21上への移動中でも移動後でもよく、支持点も2辺以上または複数箇所でもよい。また、太陽電池ストリング4の位置合わせは、降下前でも降下中でもよく、積層体を降下させるのではなく基板21側を上昇させるのでもよく、工程内の順序は上述の例に限定されるものではない。
【0044】
太陽電池ストリング4は太陽電池素子2が受光面側充填材22に固定されているので曲げても配置がずれることはない。また、図3(c)のように、基板21に載置する際にも積層体1aとして基板21に対する位置合わせが容易にでき、しかも太陽電池ストリングの位置ずれは生じない。また、載置された後も、斜面上に位置する太陽電池素子(図中では太陽電池ストリング4aおよび4c)がずり落ちることが抑制され、この状態で移送等の振動・衝撃が加わっても太陽電池ストリングの配置がずれることが抑制される。最後に裏面側充填材23と裏面シート(不図示)を積層してラミネート工程へ搬送する。なお、基板の4辺が湾曲したすり鉢状のものであっても同様の効果が得られ、特に形状に限定されるものではない。
【0045】
以上のように、本実施形態においても実施形態1と同様に、少なくとも基板21と、樹脂からなる第1充填材(本実施形態では受光面側充填材22)と、1以上の太陽電池ストリング4と、をこの順で積層したものを含んでなる太陽電池モジュールが完成する。この実施形態においても、第1充填材に太陽電池素子ストリング4を配置する工程と、第1充填材を第1充填材の融点以上でかつ架橋点未満または熱硬化点未満の温度に加熱する工程と、第1充填材に太陽電池ストリング4を配置した積層体を第1充填材の融点未満の温度に冷却する工程と、積層体1aを基板21の表面に沿って変形させる工程と、を含む。
【0046】
従来では太陽電池ストリングを吸着搬送装置で基板上に搬送した後には、そのまま吸着を切って自由落下させる、または、吸着搬送装置の中央部が端部よりも下に降りるような昇降機構を設けるしかなく、位置ずれの発生や装置の複雑化の要因になっていた。本実施形態によれば、太陽電池ストリングを曲面状の基板に配置しようとした場合、第1充填材の端部を保持して中央部を湾曲させればよい。また、本実施形態では太陽電池ストリングの位置直しも可能であるので、太陽電池ストリングの配置精度を高めることが容易であり、外観がよく信頼性の高い太陽電池モジュールを容易に提供できる。
【0047】
<実施形態3>
さらに別の実施形態について説明する。図4(a)〜(c)に示す積層体1bは、第2充填材である樹脂からなる裏面側充填材23に太陽電池素子2の裏面側を熱融着したものである。ここで、裏面側充填材23をこれに用いる樹脂の融点以上でかつ架橋点未満または熱硬化点未満の温度に加熱して、積層体1bを作製する。また、予め基板21上に受光面側充填材22を積層しておき、その上に積層体1bを載置するとよい。積層体1bの製造装置による搬送、湾曲変形および位置合わせ等については、上述した実施形態1,2と同様の作業で行える。なお、太陽電池ストリング4から出力を取り出さすために、例えば、裏面側充填材23に切り目を入れて、その箇所から出力線(例えば銅箔)を介して出力を取り出すようにしてもよい。
【0048】
図6は本実施形態に係る搬送装置における積層体1の搬送工程について示したものであり、図7は前記搬送装置による太陽電池ストリングの位置合わせ(載置位置の修正)の工程について示したものである。
【0049】
搬送装置41は積層体1を製造する工程の位置とラミネート工程の位置との間を移動する積層体1の搬送および載置を行う装置である。例えば、これら工程間を移動するレール41cと、積層体1を持上げる吸着アーム41a,挟持アーム41bとで構成される。レール41cはそれ自体が次の工程を行う位置まで延長したものでもよい。または、レール41cの長さは積層体を持上げるのに必要な長さだけとして、工程間の移動はレール41cを吊り下げた移動装置によって行われるのでもよい。
【0050】
吸着アーム41aと挟持アーム41bは、レール1cをその長辺方向に移動可能としており、積層体1に対して上下方向にアームが伸縮するように構成されている。例えば、図2において、積層体1はその状態では平坦であるため、積層体1の端部を持上げるために搬送装置41が積層体1に対して降下・接近し、吸着アーム41aをのばして先端の吸着部を積層体1に接触させる。
【0051】
次に、吸着アーム41aの吸着部内の空気を抜いて積層体1を吸引させ、吸着アーム41aもしくは搬送装置41全体を上昇させて積層体1を持上げる。この際、吸着アームの吸着箇所は、積層体1全体を持上げるようにするのであれば、多数(例えば太陽電池素子の数と同数)配置すればよいし、積層体の端部だけを持上げるのであれば、2〜4箇所のように少数でよく、持上げ方法に合わせて機器の構成を適応させればよい。
【0052】
次に、持上げられた積層体1の裏面側充填材23を挟持アーム41bの挟持部分(図中爪の部分)で掴み、吸着アーム41aと挟持アーム41bを図中の白矢印のようにレール41c上を互いに間隔を縮めるように動かす。
【0053】
このようにすることで、積層体1の中央部分が自重で垂れ下がり、基板21の湾曲度と同等の湾曲状態とすることができる。この状態で基板21と受光面側充填材22が積層された工程場所まで搬送する。このとき、積層体1の太陽電池ストリングの配置位置のずれが極力抑制され、安定した湾曲作業および搬送作業を行わせることができる。
【0054】
基板21上に搬送した後、搬送装置41は再び降下し、積層体1を基板21上に載置させる。ここで、積層体1の太陽電池ストリングの載置位置に問題がなければ、そのまま挟持アーム41bの挟持を解除し、吸着アーム41aの吸着も解除する。しかし、例えば図7に示すように、基板21に設けられた太陽電池ストリングの載置位置を指定する端部マーカー29と太陽電池ストリング4の位置がずれている場合には、そのまま吸着アーム41aおよび挟持アーム41bで積層体1の裏面側充填材23を基板21の表面に対して上下左右に移動させて、端部マーカー29と太陽電池ストリング4の位置を合わせる。
【0055】
図7の例では、太陽電池ストリング4は図示の右側に傾いているので、図示の左側に回転させて端部マーカー29に位置を合わせればよい。この際にも、裏面側充填材23を移動させても太陽電池ストリング4の太陽電池素子間の配置がずれることはない。しかも、端部マーカー29と位置を合わせる最中に、太陽電池ストリング4の太陽電池素子間の配置間隔が狭まったり広がったりするといった不具合を抑制できる。そして、端部マーカー29と太陽電池ストリング4の配置を合わせた後、積層体1を離して搬送装置41を上昇させる。
【0056】
なお、本例では挟持アームが積層体を掴み易いように吸着アームで端部を持上げて掴み部分を作るようにしているが、これに限定されない。例えば、吸着アームによる吸着だけ、もしくは挟持アームによる掴みだけを行ってもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の製造方法では、基板21と、第1充填材と、太陽電池ストリング4と、樹脂からなる第2充填材(裏面側充填材23)と、をこの順で積層したものを含んでなる太陽電池モジュールを完成させる。特に、本実施形態の製造方法は、第2充填材に太陽電池素子ストリング4を配置する工程と、第2充填材をこれを構成する樹脂の融点以上でかつ架橋点未満または熱硬化点未満の温度に加熱する工程と、第2充填材に太陽電池ストリング4を配置した積層体1bを第2充填材の融点未満の温度に冷却する工程と、積層体1を基板21の表面に沿って変形させる工程と、を含む。
【0058】
これにより、第2充填材である裏面側充填材23と太陽電池素子2を熱融着させる際に、太陽電池素子の出力線を裏面側充填材23に通しておくことができるので、基板21上に載置した後の配線引き出し作業が容易に行える。また、予め積層体1bの出力線を裏面シートに通しておき、裏面シートと積層体1bとを一緒に基板21上に載置するようにすれば、さらに後工程をやり易くすることができる。さらに、基板21と受光面側充填材22の積層を前工程として行えるので製造装置のタクトタイムを短縮することができる。
【0059】
<実施形態4>
さらに別の実施形態について説明する。図5(a)〜(c)に示す積層体1cは、樹脂からなる受光面側充填材22と太陽電池ストリング4と樹脂からなる裏面側充填材23を積層した後、両方の充填材に太陽電池素子2のそれぞれの面を熱融着したものである。積層体1cの製造装置による搬送、湾曲および位置合わせ等については上述した実施形態1〜3と同様の作業が可能であり、同様な効果を期待することができる。
【0060】
本実施形態の工程においては、太陽電池素子2の昇温には実施形態1〜3のように半田ごてまたはホットエアーによる加熱は用いない。そのかわりに、太陽電池ストリング4からの出力線に逆起電力を印加し、太陽電池素子2自身を発熱させる。
【0061】
具体的には、外部に直流電力源(交流電力源でも可)を用意する。そして、太陽電池ストリング4の正極に電力源の正極を、太陽電池ストリング4の負極に電力源の負極をそれぞれ接続し、太陽電池素子にその開放電圧以上の電圧を印加して逆起電力を印加する。逆起電力の電力は太陽電池素子の種類やストリングの直列数および/または並列数によって異なる。例えば156mm角の多結晶太陽電池素子を9直列にした太陽電池ストリングでは、受光面側充填材および裏面側充填材の融点が70℃である場合、印加電圧245V、電流20Aを逆起電力として印加するとよい。これにより、受光面側充填材22および裏面側充填材23を構成する樹脂の融点のいずれか高い方の融点以上で、かついずれか低い方の架橋点未満または熱硬化点未満の温度である70〜80℃に発熱し、これら充填材の融解が可能となる。なお、発明者の実験によればこの際に太陽電池素子に光が当たっても発熱量にほとんど変化は見られず、工程に問題は生じないので製造装置に遮光等の設備は不要である。
【0062】
これにより、半田ごてまたはヒーターの場合のように局所的に温度が高いところから熱伝導させる融解方法よりも太陽電池素子の端部まで熱を平均的に上昇させることができる。このため、端部まで融解可能温度まで到達する前に一部の温度が上がり過ぎて架橋剤が反応してしまうといった問題を回避できる。また、温度管理が容易なので製造装置の温度制御に必要な機器が少ない。さらに、太陽電池素子のみが温度上昇するので、ホットエアー等のように必要外の充填材まで過熱または融解させることがない。例えば、充填材の表面だけが融解する程度の発熱になるよう製造装置で制御していれば、充填材の熱膨張で太陽電池ストリングの位置がずれることもなく、太陽電池素子と充填材の融着が行える。
【0063】
さらに本実施形態では、製造装置は電力供給用の電源を備えればよく、機器構成が簡単でしかも過熱の制御・管理が容易にできる。
【0064】
なお、受光面側充填材22および裏面側充填材23の冷却工程および、積層体1cを基板21の表面に沿って変形させる工程は実施形態1〜3と同様であるので説明は省略する。
【0065】
本実施形態の製造方法では、基板と、樹脂からなる第1充填材と、複数の太陽電池素子を配線材により接続してなる太陽電池ストリングと、樹脂からなる第2充填材と、をこの順で積層したものを含んでなる太陽電池モジュールの製造方法である。そして、特に、第1充填材と第2充填材上との間に太陽電池素子ストリングを配置する工程と、第1充填材および第2充填材を、これらの融点のいずれか高い方の融点以上でかついずれか低い方の架橋点未満または熱硬化点未満の温度で加熱する工程と、第1充填材と第2充填材上との間に太陽電池素子ストリングを配置した積層体を、第1充填材および第2充填材の融点のいずれか低い方の融点未満に冷却する工程と、積層体を基板の表面に沿って変形させる工程と、を含む。
【0066】
これにより、実施形態1〜3よりも太陽電池素子の位置ずれが確実に抑制された太陽電池モジュールを提供することが可能となる。具体的には、長辺方向の曲率半径が1600mmで短辺方向の曲率半径が1900mmの硼珪酸ガラスからなる基板21(全体のサイズ:1000mm×500mm×70mm)にEVAからなる受光面側充填材22およびEVAからなる裏面側充填材23で挟んだ太陽電池ストリング4(150mm×75mm×0.2mmの多結晶結晶シリコン型の太陽電池素子を6直列接続したストリングを6平列した36直列(6行×6列)の太陽電池素子マトリクス)を配置して、ラミネート工程を施した例では、太陽電池素子間および基板21に対する太陽電池ストリングのずれは、最大でも1.5mm以内であった。
【0067】
一方、平板状の基板にエポキシ系の透光性接着剤で接着した後、上記基板と同様な湾曲面を有する型を用いてラミネート工程を施して湾曲させた例では、基板の湾曲に合せて太陽電池素子間の距離が詰まり、太陽電池素子を接続している接続導体や配線導体に押されて、載置位置がずれ、セル割れが発生した。
【0068】
<実施形態5>
さらに別の実施形態について説明する。特に図示しないが、基板21が例えば山と谷が波状に連続するような複雑な形状に湾曲している場合であってもよい。この場合においても、実施形態1〜4と同様な方法で、太陽電池ストリングの位置合わせおよび位置直しを容易に行うことができる。
【0069】
これにより、複雑な形状の太陽電池モジュールの製造においても、太陽電池素子の割れ・クラック発生が生じにくく、且つラミネート工程前に太陽電池ストリングの配置がすれることが抑制される。
【0070】
<実施形態6>
さらに別の実施形態について説明する。特に図示しないが、積層体とする工程は太陽電池ストリング上に受光面側充填材や裏面側充填材を積層することとしてもよい。
【0071】
このようにすれば、例えば太陽電池ストリング上に受光面側充填材を積層すればよいので、太陽電池素子を電気配線して太陽電池ストリングとした後に、太陽電池ストリングを動かさずに積層工程に移ることができる。
【0072】
これにより、太陽電池ストリングの搬送を省略して工程時間の短縮、および太陽電池素子への移動に伴う振動および衝撃をなくして太陽電池素子の破損を低減することができる。また、太陽電池素子を受光面側充填材または裏面側充填材重量で押さえるので、太陽電池素子の反りなどを伸ばして矯正する働きが得られ、太陽電池素子の反りがどのような向きであってもクラック発生を抑制することができる。
【0073】
<実施形態7>
さらに別の実施形態について説明する。樹脂からなる受光面側充填材および/または裏面側充填材を太陽電池素子に融着する際に、樹脂中に空気溜りを残してしまうとラミネート工程で真空引きをしても樹脂から空気が抜けなくなるため、融着の工程で空気が残らないように管理する必要がある。
【0074】
そこで、図8に示すように、受光面側充填材22や図示しない裏面側充填材の融着部に線状の突起12を設けて、空気が抜けるようにするとよい。
【0075】
図8の例では、突起12は十字線状としているが、平行な2本線状にして線に対し平行な方向への抜けをよくしてもよいし、アルファベットの「C」の形状のように一部だけに空気の抜け道を作って太陽電池素子の一部に押圧力が集中してクラックを発生させないようにしてもよい。また、3本以上の線状の突起を設けて、太陽電池素子との接着面積を増やして太陽電池素子が脱落しないようにしてもよく、目的に合わせて線の形状と数量と配置等を適宜変更してよい。
【0076】
突起12の形成は、例えばEVA等の充填材を製造する際に成型で形成したり、または線状の突起を別体で作って充填材に貼り付けて一体化させてもよい。発明者の実験によれば、突起12の高さは高すぎても空気が残り易くなるので、例えば充填材に厚さ1mmのEVA樹脂を用いる場合に、0.3mm〜1mmの高さとすると良好な結果が得られた。
【0077】
<実施形態8>
さらに別の実施形態について説明する。前述した実施形態3(図4)の積層体を用い、平面視した際の方形における主たる2辺が円弧状に湾曲した形状をなす基板に太陽電池ストリングを配置してもよい。
【0078】
図9(a)に示すように、積層体1bは、裏面側充填材23に太陽電池素子ストリング4の裏面側を実施形態1において説明したように熱融着したものである。載置台42は樹脂または金属を、基板21の湾曲面に合せて載置部を断面円弧状に成型したものであり、太陽電池モジュールを載置させたままラミネート工程が行える耐熱性を有する。
【0079】
図9(b)に示すように、載置台42上に裏面シート24を敷いて、その上に積層体1bを搭載すると、最初に積層体1bの中央部が支持され、その後、載置台42の湾曲に沿って積層体1bの裏側が支持されるようになる。
【0080】
次に、図9(c)に示すように、積層体1bの上に受光面側充填材22および基板21とを順次積層する。
【0081】
この方法によれば、太陽電池ストリング4は裏面側充填材23からずり落ちない程度の融着強度で固定されていればよく、融着面積を少なくして加熱に要する時間およびそのエネルギーを削減できる。
【0082】
また、図6に示すような積層体を湾曲させる装置を簡素化できる。また、基板21に対する積層体1bの位置合わせも基板21側を動かす、もしくは載置台42全体を動かすなどして行うことが可能である。これにより、太陽電池ストリング4を極力動かさないようにして、ストレスを低減し、工程内でのセル割れ、クラックの発生、および配線材の半田付け剥がれ等の発生を抑制できる。
【0083】
<実施形態9>
さらに別の実施形態について説明する。前述した実施形態2(図3)の積層体を用い、断面において主たる2辺が断面円弧状に湾曲した形状をなす湾曲した表面を有する基板に太陽電池ストリングを配置してもよい。
【0084】
図10(a)に示すように、積層体1aは、受光面側充填材22に太陽電池素子ストリング4の受光面側を熱融着したものである。これを図10(b)に示すように、載置台42上に裏面シート24および裏面側充填材23の順に積層したものの上に載置する。
【0085】
本実施形態によれば、実施形態8と同様に最初に積層体1bの中央部が支持され、その後、積層体1bの裏面側は載置台42の湾曲面に沿って支持される。そして、図10(c)に示すように、これらの上に基板21を積層する。
【0086】
この方法によれば、積層体1a上に積層する工程を最小限にできる。このため、太陽電池ストリング4へのストレスを減らし、工程内でのセル割れ、クラックの発生、および配線材の半田付け剥がれ等の発生を抑制できる。
【0087】
<実施形態10>
さらに別の実施形態について説明する。前述した実施形態4(図5)の積層体を用い、断面において主たる2辺が円弧状に湾曲した形状をなす湾曲した表面を有する基板に太陽電池ストリングを挟んで配置して両面受光面の太陽電池モジュールとしてもよい。
【0088】
図11(a)に示すように、積層体1cは、受光面側充填材22と太陽電池素子ストリング4と裏面側充填材23とを熱融着したものである。まず、載置台42に裏面側基板27を載置する。裏面側基板27は基板21と同質のものでもよいし、異なる材質としてもよい。次に、積層体1cを図11(b)に示すように載置台42の裏面側基板27上に載置する。
【0089】
この方法によれば、まず裏面側基板27に対する積層体1cの載置位置を修正した後に、基板21との位置合わせができる。これにより、基板21の自重によりすべての積層に対して押力を加えることにより、積層がずれ難いので、移動に伴う振動等で積層の位置ずれを抑制することができる。
【0090】
<実施形態11>
さらに別の実施形態について説明する。太陽電池ストリングと受光面側充填材(もしくは裏面側充填材)の融着を第3の樹脂によって行うようにしてもよい。
【0091】
例えば、図12に示すように、裏面側充填材23上に太陽電池ストリング4を載置し、樹脂注入器43を用いて融解させた第3の樹脂25を配線材10の上に落下させて、配線材10と裏面側充填材23とを融着させる。ここで、第3の樹脂25は受光面側充填材や裏面側充填材と同じ組成の樹脂であることが好ましいが、例えば裏面側充填材23がEVA樹脂とした場合、第3の樹脂をPVBとして異なる組成の樹脂を使用することもできる。
【0092】
また、第3の樹脂25で裏面側充填材23へ融着する場所、は配線材10以外にも図13に示すように太陽電池ストリング4であってもよく、いずれの方法においても、太陽電池ストリング4の一部(例えば両端部の2箇所のみ)に対して固定を行えば太陽電池ストリング4全体の位置固定ができる、しかも太陽電池素子への加熱を最小限にして熱ストレスを減らして、セル割れ、クラックの発生、および配線材の半田付け剥がれ等の発生を抑制できる。特に図12に示すように配線材10を固定する方法であれば、太陽電池ストリング4の太陽電池素子はフリーな状態にできる。これにより、ラミネート工程時の裏面側充填材の熱膨張に太陽電池素子が直接引きずられることがなくセル割れおよびクラックが特に発生し難くなる。
【0093】
<実施形態12>
さらに別の実施形態について説明する。、受光面側充填材または裏面側充填材のいずれかに、太陽電池ストリング4と融着させる部分に突起を設けるようにしてもよい。
【0094】
図14は一般的な突起の無い裏面側充填材23上に太陽電池ストリング4を載置した様子を示したものである。太陽電池素子間を接続する配線材10は太陽電池素子の表面側の負電極と裏面側の正電極を繋ぐために大きく折れ曲がっている。この折れ曲がり箇所は太陽電池モジュールの熱膨張・収縮による断線を起こし易い。
【0095】
本実施形態では、図15(a)に示すように、裏面側充填材23上に突起部26を設け、この部分で太陽電池ストリング4を融着させるようにしている。これにより、突起部26の高さ分だけ太陽電池素子に傾きを持たせることが可能となり、配線材10の折れ曲がり(または、湾曲)角度を軽減させることができる。そして、配線材と電極の半田付け剥がれ等の不具合発生を抑制でき、信頼性の高い太陽電池モジュールを提供できる。また、熱融着の工程においても樹脂を融解させる体積が少ないので、融着にかかる時間が短くて済み、工程の時間短縮が可能となる。
【0096】
また、図15(b)に示すように、突起部26を増やして、融着部としての突起部26a、または融着時に太陽電池ストリング4がズレないようにするストッパーとしての突起部26bを設け、融着工程時の作業性を良好にするようにしてもよい。
【0097】
<実施形態13>
さらに別の実施形態について説明する。図16に示すように、裏面側充填材(もしくは受光面側充填材)の突起部26の形状を、太陽電池ストリング4の太陽電池素子が入り込んで固定されるように、例えばL字およびT字状を組み合わせるようにしてもよい。
【0098】
この方法によれば、図中の矢印で示すように、太陽電池ストリング4に設けた配線材10が突起部26の上に載るようにして、この部分で熱融着を行い固定できる。これにより、裏面側充填材23に対する太陽電池ストリング4の位置合わせが自動的に行え、しかも移動時の衝撃等で太陽電池ストリング4のズレが生じにくく、融着も最小限の強度があればよいので融着時間も短縮できる。
【0099】
<実施形態14>
さらに別の実施形態について説明する。図17に示すように、裏面側充填材23(もしくは受光面側充填材)の突起部26を太陽電池ストリング4の端部側面をガイドするように配置したものとしてもよい。この場合、予め裏面側充填材23へ突起部26を生成されたものであってもよいし、太陽電池ストリング4の載置後に配置・融着してもよい。
【0100】
この方法によれば、太陽電池ストリング4の太陽電池素子の端部側面と突起部26が融着固定される。これにより、太陽電池素子への押圧ストレスが最も耐性のある側面方向となり、太陽電池ストリング4を固定したことによるセル割れおよびクラック等が発生し難くなる。
【符号の説明】
【0101】
1、1a〜1c:積層体
2:太陽電池素子
4、4a〜4c:太陽電池ストリング
10:配線材
12:突起
20:太陽電池モジュール
21:基板
22:受光面側充填材
23:裏面側充填材
24:裏面シート
25:第3の樹脂
26:突起部
27:裏面側基板
29:端部マーカー
40:ヒーター
41:搬送装置
41a:吸着アーム
41b:挟持アーム
41c:本体レール42:載置台
43:樹脂注入器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、樹脂からなる第1充填材と、複数の太陽電池素子を配線材により接続してなる1以上の太陽電池ストリングと、をこの順で積層したものを含んでなる太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第1充填材に前記太陽電池素子ストリングを配置する工程と、
前記第1充填材を前記第1充填材の融点以上でかつ架橋点未満または熱硬化点未満の温度に加熱する工程と、
前記第1充填材に前記太陽電池ストリングを配置した積層体を前記第1充填材の融点未満の温度に冷却する工程と、
前記積層体を前記基板の表面に沿って変形させる工程と、
を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
基板と、第1充填材と、複数の太陽電池素子を配線材により接続してなる太陽電池ストリングと、樹脂からなる第2充填材と、をこの順で積層したものを含んでなる太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第2充填材に前記太陽電池素子ストリングを配置する工程と、
前記第2充填材を前記第2充填材の融点以上でかつ架橋点未満または熱硬化点未満の温度に加熱する工程と、
前記第2充填材に前記太陽電池ストリングを配置した積層体を前記第2充填材の融点未満の温度に冷却する工程と、
前記積層体を前記基板の表面に沿って変形させる工程と、
を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
基板と、樹脂からなる第1充填材と、複数の太陽電池素子を配線材により接続してなる太陽電池ストリングと、樹脂からなる第2充填材と、をこの順で積層したものを含んでなる太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第1充填材と前記第2充填材との間に太陽電池素子ストリングを配置する工程と、
前記第1充填材および前記第2充填材を、これらの融点のいずれか高い方の融点以上でかついずれか低い方の架橋点未満または熱硬化点未満の温度で加熱する工程と、
前記第1充填材と前記第2充填材との間に太陽電池素子ストリングを配置した積層体を、前記第1充填材および前記第2充填材の融点のいずれか低い方の融点未満に冷却する工程と、
前記積層体を前記基板の表面に沿って変形させる工程と、
を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記基板は、湾曲した表面を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate