説明

太陽電池モジュール用保護フィルム

本発明は、太陽電池モジュール用保護フィルム、前記保護フィルムの製造方法、および前記保護フィルムを含む太陽電池モジュールに関する。本発明の保護フィルムは、パーフルオロポリエーテル(PFPE)ポリマー[ポリマー(F)]を含む少なくとも1つの層を含み、前記ポリマーは、組成物[組成物(C)]であって:a)少なくとも1種類の官能性パーフルオロポリエーテル化合物[化合物(E)]であって、(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R)]と、少なくとも1つの不飽和部分とを含み、組成物(C)に対して10%〜95重量%の範囲内に含まれる量で存在する化合物(E)と;b)少なくとも1つの不飽和部分を有する少なくとも1種類の非フッ素化化合物[化合物(M)]であって、ただし、化合物(E)が1つの不飽和部分を有する場合、前記非フッ素化化合物(M)が少なくとも2つの不飽和部分を有する化合物(M)と;c)少なくとも1種類の架橋開始剤とを含む組成物(C)を架橋させることによって得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年5月25日に出願された欧州特許第09160990.9号明細書に対する優先権を主張し、この出願の記載内容全体があらゆる目的で参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、太陽電池モジュール用保護フィルム、前記保護フィルムを含む太陽電池モジュール、前記保護フィルムの製造方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽電池は、大気中の二酸化炭素またはその他の危険な温室効果ガスを増加させることなくクリーンな再生可能エネルギーを発生させる事が可能であり、そのため大気中の気候バランスに対して非常に好ましい影響を与えるので、近年活発に研究されている。太陽電池は、常に有害なリスクを伴う原子力発電を部分的に代替することもできる。
【0004】
商業用および家庭用電気器具のための種々の太陽電池モジュールが提案されている。これらの太陽電池モジュールは、典型的には、太陽電池としても知られる光起電力要素の充填相互接続アセンブリを含む層状構造として構成される。前記層状構造は、たとえば金属またはガラスでできていてよい基体と、前記基体上に配置された半導体活性層と、前記半導体活性層上に配置された透明および/または伝導性層とを含む。太陽電池モジュールを熱、湿気、可能性のあるあらゆる環境曝露または輸送中の危険性から保護するために、太陽電池モジュールには保護手段も必要である。特に、基体が不透明である場合には、太陽電池モジュールの活性層まで太陽光が到達できるようにするために、前記保護フィルムが透明である必要がある。
【0005】
従来、前記保護手段は、フッ素樹脂またはフッ素樹脂含有組成物で構成される透明なフッ素含有ポリマーでできたトップコート層を含み;トップコート層の下には、光起電力要素と直接接触する封止層が使用されることが多い。
【0006】
コーティング組成物中にフルオロポリエーテル化合物を使用することは、すでに周知となっている。
【0007】
(特許文献1)(旭硝子株式会社)には、コーティング組成物中の潤滑剤、表面改質剤、または界面活性剤として有用なフルオロポリエーテル化合物が開示されている。
【0008】
(特許文献2)(ダイキン工業株式会社)には、潤滑剤、除酸剤、色素増感太陽電池の電解質、およびアクチュエータ材料として有用なイオン性液体芳香族材料が開示されている。このイオン性液体型機能性材料は、含フッ素エーテル鎖を有する芳香族化合物を含有する。
【0009】
(特許文献3)(LIQUIDIA TECHNOLOGIES INC)には、たとえば、好ましい光学特性、ガス透過性、耐引掻性、適合性液体材料を有するPFPEなどのエラストマー材料から製造された封止層を含む光起電力装置が開示されている。この封止層は、光起電力装置上に入射する光を操作し捕捉する目的を有する構造化表面をも含むことができる。
【0010】
しかし、光線に対する良好な透明性、化学物質および酸化に対する耐性、水不浸透性、異なる基体に対する完全な接着性を一度に保証すると同時に優れた機械的性質が得られる太陽電池モジュール用保護フィルムが非常に望まれている。
【0011】
実際のところ、当技術分野において周知のフルオロポリマーフィルムは、フィルム表面上の機械的応力によってヘイズ作用が生じ、それによってフィルムの透明性が低下し、それによって太陽電池の動作が損なわれるという欠点を有する。通常、太陽電池モジュールは自然環境に長時間曝露されるため、可能性のあるあらゆる事象、特に自然力(雨、ひょう、風、砂など)から保護フィルムによって太陽電池を保護できるように、保護フィルムを形成する材料が優れた硬度、耐摩耗性、および衝撃強度を有することが必須である。
【0012】
さらに、当技術分野において周知のフルオロポリマー保護フィルムの中には、それらを確実に太陽電池に結合するために、接着剤または特殊な処理のいずれかを使用する必要があるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0252910号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0179263号明細書
【特許文献3】国際公開第08/005327号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的の1つは、好適な絶縁容量と、化学物質および酸化に対する耐性と、光起電力要素に対する良好な接着性と、光起電力要素をあらゆる種類の機械的応力から長時間保護する優れた機械的性質とを有し、それによってあらゆる環境中で太陽電池モジュールの動作を保証することができる、太陽電池モジュール用保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による保護フィルムは、パーフルオロポリエーテル(PFPE)ポリマー[ポリマー(F)]を含む少なくとも1つの層を含み、前記ポリマーは:
少なくとも1種類の官能性パーフルオロポリエーテル化合物[化合物(E)]であって、(パー)フルオロポリアルキレン鎖[鎖(R)]と、少なくとも1つの不飽和部分とを含み、10%〜95重量%の量で存在する化合物(E)と;
少なくとも1つの不飽和部分を有する少なくとも1種類の非フッ素化化合物(M)であって、ただし、化合物(E)が不飽和部分を1つのみ含む場合には、前記非フッ素化化合物(M)が少なくとも2つの不飽和部分を有する、非フッ素化化合物(M)と;
少なくとも1種類の架橋開始剤と、
を含む組成物[組成物(C)]を架橋させることによって得ることができる。
【0016】
パーフルオロポリエーテル化合物(化合物(E))だけではなく、前記パーフルオロポリエーテル化合物と架橋した非フッ素化化合物(化合物(M))をも含む組成物(C)の特殊な配合によって、本発明による保護フィルムは、フルオロポリマーに典型的な性質である良好な透明性、化学物質および酸化に対する良好な耐性、防湿特性、および異なる基体に対する良好な接着性だけでなく、寿命全体にわたって太陽電池表面上にいかに激しい応力が作用しようともフィルムの透明性の低下が実質的に全く起こらないことを保証する優れた機械的性質をも有する。
【0017】
本発明の他の目的は、前記保護フィルムを含む太陽電池モジュール、前記保護フィルムの製造方法、およびその使用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
請求される範囲内でのみ、好適な機械的性質および光学特性を得ることが可能なため、化合物(E)および非フッ素化化合物(M)の量は特に重要である。
【0019】
したがって、化合物(E)は、硬化性組成物(C)中に、組成物(C)に対して10%〜95重量%の量で存在する。本発明の一実施形態によると、前記量は、20%〜85重量%の間で構成される。本発明の別の一実施形態によると、この量は、組成物(C)に対して30%〜75重量%の間で構成される。
【0020】
さらに、本出願人は、化合物(E)の鎖Rの分子量を適切に選択することによって、特に好都合な機械的性質を有する保護フィルムを得ることが可能なことを見いだした。
【0021】
したがって、本発明の目的では、鎖Rの分子量が500〜4000の間で構成されうることが分かった。本発明の一実施形態によると、前記分子量は1200〜3000の間で構成される。本発明の別の一実施形態によると、前記分子量は1500〜2500の間で構成される。
【0022】
本明細書において、用語「(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖(鎖R)」は、繰り返し単位(R1)を含む鎖を意味することを意図しており、前記繰り返し単位は、一般式:−(CF−CFZ−O−(式中、kは0〜3の整数であり、Zはフッ素原子およびC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基の間から選択される)で表される。
【0023】
鎖Rは好ましくは式:
−(CFO)(CFCFO)(CFYO)(CFCFYO)−(CF(CFCFO)
(式中、YはC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基であり、zは1または2であり;p、q、r、s、tは、前記鎖Rの分子量が前述の要件を満たすように選択することができる≧0の整数である)を満たす。
【0024】
本発明の一実施形態によると、鎖Rは式:
−(CFO)p’(CFCFO)q’
(式中、p’およびq’は、前記鎖Rの分子量が前述の要件を満たすように選択された≧0の整数である)を満たす。
【0025】
前記鎖Rの分子量は1200〜3500の間の範囲内であってよく;特定の一実施形態によると1200〜3000の間であってよく、別の一実施形態によると1500〜3000の間であってよく、さらに別の一実施形態によると1500〜2500の間であってよく;したがって、前に詳述したような対応する実施形態においては、p、q、r、s、t、p’、およびq’は、これらの分子量の要件を満たすように選択された整数を表すものと理解されたい。
【0026】
化合物(E)の不飽和部分は、硬化条件において好適な反応性を有するのであれば、特に制限されない。
【0027】
化合物(E)は式:
(T−J−R−J’−(T
のものから選択することができ、式中、Rは、前に詳述した鎖Rを表し;JおよびJ’は、互いに同じまたは異なるものであり、独立して、結合、あるいは二価、三価または四価の結合基であり;n、mは1〜3の整数であり;TおよびTは、互いに同じまたは異なるものであり:
−O−CO−CR=CH
−O−CO−NH−CO−CR=CH
−O−CO−R−CR=CH
からなる群から選択され、Rは、HまたはC〜Cアルキル基であり;Rは:
−NH−R−O−CO−
(jj)−NH−R−NHCOO−RB’−OCO−
からなる群から選択され、R、RB’は、互いに同じまたは異なるものであり、独立して、C〜C20脂肪族基、C〜C40脂環式基、C〜C50芳香族、アルキル芳香族または複素環式芳香族基からなる群から選択される二価、多価(たとえば三価または四価)の結合基である。
【0028】
基JおよびJ’は、いかなる直鎖状または分枝状の有機結合基であってのよい。一実施形態によると、このような基は、1〜10個の炭素原子を有する二価、三価または四価の(フルオロ)炭化水素エーテル基から選択され;さらなる特定の一実施形態によると1〜6個の炭素原子を有する。3または4の価数を有する結合基が存在すると、3〜6個の末端基TおよびTと、硬化反応に対応する数または反応性の部位とを有する分枝状化合物(E)が得られる。
【0029】
化合物(E)の中では、以下のものを挙げることができる:
式:
【化1】

のアクリレート誘導体類(式中、nおよびmは1〜3の整数であり;AおよびA’は、互いに同じまたは異なるものであり、独立して、結合、あるいは二価、三価または四価の結合基であり;Rは前に詳述した鎖を表し、R、RH’は、互いに同じまたは異なるものであり、独立して、HまたはC〜Cアルキル基である);
(2)式:
【化2】

のアクリルアミド−尿素誘導体類(式中、nおよびm、AおよびA’、R、R、RH’、およびRは、前に詳述したのと同じ意味を有する);
(3)式:
【化3】

のアクリレート−ウレタン誘導体類(式中、nおよびm、AおよびA’、R、R、RH’は、前に詳述したのと同じ意味を有し;それぞれのRは、互いに同じまたは異なるものであり、C〜C20脂肪族基、C〜C40脂環式基、C〜C50芳香族、アルキル芳香族、または複素環式芳香族基からなる群から選択される二価、三価または四価の基であり;
(4)式:
【化4】

のウレタン−アミド−アクリレート誘導体類(式中、nおよびm、AおよびA’、R、R、RH’、Rは、前に詳述したのと同じ意味を有し;それぞれのRB’は、互いに同じまたは異なるものであり、C〜C20脂肪族基、C〜C40脂環式基、C〜C50芳香族、アルキル芳香族、または複素環式芳香族基からなる群から選択される二価、三価または四価の基である)。
【0030】
本発明の目的に特に有用であることが分かっている化合物(E)の非限定的な例は特に:
C=C(CH)COOCHCHNHCOOCHCHOCONHCHCHOCOC(CH)=CH
(式中、Rは−CFO(CFCFO)p’(CFO)q’CF−鎖である)、
【化5】

(式中、Rfは−CFO(CFCFO)p’(CFO)q’CF−鎖である)、
【化6】

(式中:
【化7】

である)
であり、上記式のそれぞれにおいて、前に詳述したように鎖Rの分子量が500を超え4000未満となり、好ましくは1200〜3000の間で構成され、より好ましくは1500〜2500の間で構成されるようにp’およびq’が選択される。
【0031】
化合物(M)は、ポリマー(F)が得られる硬化性組成物中に、5%〜90重量%の量で存在する。本発明の一実施形態によると、前記量は15%〜80重量%の間で構成され;別の一実施形態によると25%〜70重量%の間で構成される。
【0032】
化合物(M)は、化合物(E)と共硬化性である多種多様のモノマーまたはオリゴマーを含むことができる。共硬化性化合物(M)は、重合が可能な1つ、2つ、またはそれを超える数の重合性エチレン系不飽和結合を有する。典型的には、前記化合物(M)は、(メタ)アクリロイル官能基を1つ以上含むことができる。本明細書の説明および特許請求の範囲において、(メタ)アクリロイル官能基は、メタクリロイル官能基またはアクリロイル官能基を示すことを意図している。
【0033】
化合物(M)は、たとえば、次式:
−O−C(O)−CR=CR
(式中、R、R、およびRは、非フッ素化C〜C10脂肪族基、脂肪族C〜C10シラン基、C〜C14脂環式基、C〜C14脂環式シラン基、C〜C14芳香族またはアルキル芳香族基である)
で表される官能性部分を有する非フッ素化化合物から選択することができる。
【0034】
単官能性、二官能性、三官能性、または多官能性の誘導体を使用することができるが、化合物(E)と化合物(M)との間の架橋を好適な程度で確実に実現するためには、化合物(E)が不飽和部分を1つのみ有する場合に、化合物(M)が少なくとも2つの不飽和部分を含むことが必要であることに留意する必要がある。
【0035】
単官能性(メタ)アクリレート類の代表例は、(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)−トリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチル−(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル−(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシブチル−(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロ−フルフリル−(メタ)アクリレート、イソデシル−(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)−エチル−(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール−(メタ)アクリレート、およびイミド−アクリレートである。
【0036】
本発明において使用することができる二官能性(メタ)アクリレートは、エトキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレートであってよい。
【0037】
三官能性または多官能性の(メタ)アクリレートの例は、トリス[2−(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシドが付加されたトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである。
【0038】
以下の化合物(M)すなわち、1,6−エサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルリル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸、ジペンタエリトロール(dipentaerithrol)ヘキサアクリレートを使用すると、良好な結果が得られた。
【0039】
本発明による保護フィルムを得るために使用できる組成物(C)は、一般に架橋開始剤をも含有し、これは、光開始剤または熱開始剤であってよく、たとえば有機過酸化物であってよい。しかし、硬化剤は、好ましくは光開始剤であり、α−ヒドロキシケトン類;フェニルグリオキシレート類;ベンジルジメチル−ケタール類;α−アミノケトン類;およびビスアシル−ホスフィン類からなる群から選択することができる。
【0040】
α−ヒドロキシケトン類の中では、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン;および2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンを挙げることができる。
【0041】
フェニルグリオキシレート類の中では、メチルベンゾイルホルメート、オキシ−フェニル−酢酸2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、およびオキシ−フェニル−酢酸2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルを挙げることができる。
【0042】
ベンジルジメチル−ケタール類としては、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンを挙げることができる。
【0043】
α−アミノケトン類の中では、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、および2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンを挙げることができ;
ビスアシル−ホスフィン類の中では、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドを挙げることができる。
【0044】
光開始剤の中では、室温において液体である光開始剤が好ましい。
【0045】
特に良好な結果が得られた光開始剤の種類の1つは、α−ヒドロキシケトン類であり、特に2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンである。
【0046】
光開始剤の量は特に制限されない。一般に、組成物(C)の重量に対して0.01重量%〜3重量%の間に含まれる量で使用される。本発明の一実施形態によると、前記量は、0.5重量%〜1重量%の範囲内であってよい。
【0047】
また、光開始剤の残留物が、結果として得られるポリマー組成物を劣化させる場合があるので、光開始剤の量をできるだけ最小限にすることが一般に好ましい。したがって、前記光開始剤は、組成物(C)の重量に対して一般に最大10重量%、好ましくは最大7.5重量%、より好ましくは最大5重量%の量で使用される。
【0048】
組成物(C)は、光透過を妨害しないのであれば、場合によりさらなる添加剤および成分を含むことができる。
【0049】
光安定剤、たとえばHALS、UV吸収剤、レベリング剤、接着促進剤を使用することもできる。これらの添加剤が存在する場合の総量は、好ましくは5%〜10重量%の間で構成される。
【0050】
無機酸化物、たとえばシリカ、TiO、ITOなどのフィラーは、セルに対する接着性、水蒸気およびガスのバリア特性を改善することができる。典型的には、可視光波長の約5分の1以下の直径を有するフィラーの一次粒子(たとえば100nm未満の直径を有する粒子)は、光散乱に大きな影響を与えない。したがって、上記フィラーは、100nm未満の平均サイズを有する粒子として使用することができる。
【0051】
しかし、一般に、化合物(E)および化合物(M)は、組成物(C)の主成分であり;少量の他の成分は、前記化合物の性質を変更させない程度で存在することができることを理解されたい。
【0052】
本発明は、ポリマー(F)を含む少なくとも1つの層を含む保護フィルムの製造方法にも関する。
【0053】
この方法は:
前に詳述した組成物(C)を提供するステップと、
組成物(C)を基体上に堆積するステップと、
前記組成物(C)を架橋させるステップとを含む。
【0054】
本発明の組成物は、典型的には前述の架橋開始剤を含む。組成物(C)は、好適には、所望の厚さの保護フィルムを得るのに十分な量で使用される。本発明の一実施形態によると、本発明による保護フィルムは、少なくとも15μmの厚さを有し;別の一実施形態によると前記厚さは少なくとも20μmであり、さらに別の一実施形態によると少なくとも25μmである。本発明の一実施形態によると、前記フィルムは、最大250μmの厚さを有し、別の一実施形態によると前記厚さは最大200μmであり、さらに別の一実施形態によると最大150μmである。
【0055】
本発明の組成物を好適な基体上に堆積するステップは、キャスティング、スピンコーティング、押出成形、フィルムブローイングなどの任意の適切な堆積技術によって行うことができる。基体は、たとえば金属またはポリマーの基体であってよい。本発明の好ましい一実施形態によると、本発明の組成物は、保護すべき光起電力要素の表面上に直接堆積される。
【0056】
ステップ(c)において、上に組成物(C)が堆積された基体は、光開始剤が使用される場合にはUV線が照射され、熱開始剤が使用される場合には加熱される。
【0057】
使用可能なUV線源の中では、水銀ランプ、キセノンアークランプ(一般に太陽光シミュレーターとして使用される)、ジュウテリウムアークランプ、水銀−キセノンアークランプ、メタルハライドアークランプ、およびタングステン−ハロゲン白熱ランプを挙げることができる。
【0058】
放射線量は、光開始剤の種類および濃度に応じて当業者によって調節され;一般に、少なくとも2J/cm、好ましくは5J/cmの放射線量を使用すると良好な結果が得られる。
【0059】
硬化速度を改善し、分解反応を最小限にするために、実質的に酸素を含有しない雰囲気下で組成物(C)にUV放射線を照射することができる。典型的には、ステップ(c)は窒素雰囲気下で行われる。
【0060】
本発明は、少なくとも1つの光起電力要素と前に定義された保護フィルムとを含む太陽電池モジュールにも関する。
【0061】
本発明の太陽電池モジュールの光起電力要素は当業者には周知であり;前記光起電力要素は一般に、導電性基体と透明な伝導性層との間に挟まれた半導体光活性層(すなわち光電変換特性が付与された層)から形成される。
【0062】
導電性基体は、光起電力要素のベース部材および下側電極として機能する。その材料の例としては、ケイ素、タンタル、モリブデン、タングステン、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタン、炭素シート、鉛めっきされた鋼、および樹脂フィルム、ならびに導電性層が上に形成されたセラミックスおよびガラスが挙げられる。上記導電性基体の上に、裏面反射層を、金属層、金属酸化物層、またはそれらの積層体から形成することができる。金属層はTi、Cr、Mo、W、Al、Ag、Ni、Cuなどから形成することができる。金属酸化物層は、ZnO、TiO、SnO、In−SnO(ITO)などから形成することができる。金属層および金属酸化物層は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、または類似の方法によって形成することができる。
【0063】
半導体光活性層は、光電変換を行うことが意図されている。このような半導体光活性層を形成するために使用される具体的な材料としては、単結晶シリコン半導体、非単結晶シリコン半導体(たとえばアモルファスシリコン(a−Si)半導体または多結晶シリコン半導体)、化合物半導体および接合、たとえばCuInSe、CuInS、GaAs、CdS/Cu2S、CdS/CdTe、CdS/InP、およびCdTe/CuTe、ならびに有機半導体、たとえばポリマーおよび小分子化合物、たとえばポリフェニレンビニレン、銅フタロシアニン(青色または緑色の有機顔料)、および炭素フラーレン類が挙げられる。
【0064】
上記半導体のいずれかから形成された半導体光活性層は、一般に、「pn接合」、「pin接合」、またはショットキー接合を有する積層構造を有する。
【0065】
透明な導電性層は、上側電極(すなわち受光面)として機能する。したがって材料の具体例としては、In、SnO、In−SnO(ITO)、ZnO、TiO、CdSnO、高濃度の不純物がドープされた結晶性半導体層、たとえば特にフッ素ドープ酸化スズ(SnO:F、または「FTO」)、ドープされた酸化亜鉛(たとえばZnO:Al)、および可撓性有機導体、たとえば透明ポリマーマトリックス中に埋め込まれたカーボンナノチューブネットワークが挙げられる。
【0066】
これらの層は、抵抗加熱蒸着、スパッタリング、吹き付け、化学気相堆積(CVD)、不純物拡散、および類似の方法によって形成することができる。可撓性有機導体の場合には、積層、キャスティング、押出成形などの典型的なポリマー加工技術を利用することもできる。
【0067】
透明導電性層の上には、発生した電流を効率的に収集するためにグリッド型集電電極(グリッド)を設けることができる。集電電極の材料の具体例としては、Ti、Cr、Mo、W、Al、Ag、Ni、Cu、Sn、およびそれらの合金、ならびに銀ペーストなどの導電性ペーストが挙げられる。集電電極は、マスクパターンを使用したスパッタリング、抵抗加熱、およびCVD;金属膜蒸着の後にパターンのエッチング;光CVDによる直接グリッド電極パターン形成;グリッド電極のネガパターンマスクの形成後に金属めっき;導電性ペーストの印刷、金属線の接着、ならびに類似の方法によって形成することができる。導電性ペーストは、一般に、銀、金、銅、ニッケル、炭素などの粉末のポリマーバインダー中の分散体を含む。ポリマーバインダーとしては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ゴム、ウレタン樹脂、およびフェノール樹脂が挙げられる。別の方法では、Cuなどの金属でできた線を透明伝導性層上に設けることができる。
【0068】
太陽電池モジュールは、一般に、光起電力電流を抽出するための出力端子が取り付けられる。前記出力端子は典型的には、伝導性基体および集電電極のそれぞれと電気的に接続される。一般に、銅タブなどの金属片が、伝導性基体側の出力端子として使用され、スポット溶接またははんだ付けによって伝導性基体に接続される。他方、導電性ペーストまたははんだによって、金属を集電電極に電気的に接続することができる。
【0069】
前に詳述した複数の太陽電池モジュールを提供することができ、各光起電力要素は、所望の電圧または電流により直列または並列に接続することができる。
【0070】
裏面層は、光起電力要素の伝導性基体と外部との間の電気絶縁を維持することが意図されている。裏面層は、一般に、光起電力要素の伝導性基体との十分な電気的絶縁が保証される可撓性材料でできている。
【0071】
好ましくは、裏面層は、ポリマー(F)と相溶性のフルオロポリマーを含む、好ましくはそのフルオロポリマーから実質的になる。
【0072】
本発明による太陽電池モジュールの保護フィルムは、少なくとも50重量%のポリマー(F)を含むことができる。一実施形態によると、ポリマー(F)の前記量は少なくとも70重量%であり、別の一実施形態によると少なくとも90重量%である。
【0073】
しかし、保護フィルムは、ポリマー(F)から実質的になることができ、すなわち、他の層が存在するとしても、それらの層によって本発明による保護フィルムの有利な性質が実質的に変化することがない。
【0074】
好適な絶縁および機械的保護が光起電力要素に対して保証されるのであれば、保護フィルムの厚さは特に制限されない。
【0075】
本明細書において参照により援用されるいずれかの特許、特許出願、および刊行物の開示が、用語が不明瞭になりうる程度で本出願の説明と抵触する場合、本明細書の説明が優先されるものとする。
【0076】
これより、以下の実施例を参照しながら本発明を説明するが、これらの実施例の目的は単に説明的なものであり、本発明の範囲の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0077】
調製の実施例1:官能性PFPE化合物(E1)の合成
Solvay Solexisより商品名Fluorolink(登録商標)10−Hで販売されるHOCHCFO(CFCFO)p’(CFO)q’CFCHOH(分子量MW=1507;p’/q’=1.8 数平均官能基数1.96;156meq)(式中のp’およびq’は前に詳述した通り)を120.1gと;
ジブチルスズジラウレート(DBTDL)のメチルエチルケトン(MEK)溶液3mlと;
24.3gのメタクリル酸エチルイソシアネート(EIM)(MW=156;156mmol)とを、Macromol.Che.Phys.198,1893−1907(1997)中に報告される合成の説明に従って反応させる。
【0078】
19NMRおよびFTIR分析によって確認して、以下の予想された化合物(E1)が得られた:
C=C(CH)COOCHCHNHCOOCHCFO(CFCFO)p’(CFO)q’CFCHOCONHCHCHOCOC(CH)=CH
【0079】
化合物(E1)の物理化学的データを表1中に示す。
【0080】
調製の実施例2:官能性PFPE化合物(E2)の合成
Solvay Solexisより商品名Fomblin(登録商標)Z Tetraolで販売される(HO)CHCH(OH)CHOCHCFO(CFCFO)p’(CFO)q’CFCHOCHCH(OH)CHOH(MW=1827;p’/q’=1.9;数平均官能基数3.8;235meq)113.4gをヒドロキシルPFPE前駆体として使用し、36.6gのメタクリル酸エチルイソシアネート(EIM)(MW=156;235mmol)を使用したことを除けば、実施例1と同じ手順を使用した。19NMRおよびFTIR分析によって確認して以下の式(式中、p’およびq’は前に詳述した通りである)に適合する146.4gの官能性化合物(E2)が得られた。
【化8】

【0081】
化合物(E2)の物理化学的データを表1中に示す。
【0082】
調製の実施例3:官能性PFPE化合物(E3)の合成
機械的撹拌装置、滴下漏斗、および冷却カラムを取り付けた500mlの丸底フラスコ中に、不活性雰囲気で以下の試薬を投入し、温度を40℃まで上昇させる:
1.100.5gのHOCHCFO(CFCFO)p’(CFO)q’CFCHOH Fluorolink(登録商標)10−H(MW=1458;p’/q’=1.7 数平均官能基数1.96;135meq);および
2.28.6gのトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)(当量EW=106.270meq)
【0083】
次に、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)の酢酸エチル中の5%溶液3mlを加え、反応温度が65℃を超えないことを確認することによって、反応混合物を2時間撹拌した。変換の程度は、19NMR分析により、末端直前のCF炭素原子シグナルが、−CHOH基に結合された場合の−81.3および−83.3ppmから、ウレタン部分に結合された場合の−77.5および−79.5ppmへのシフトを観察することによって監視した。反応混合物を約50℃に冷却し、反応混合物の温度が60℃を超えない速度で15.7gのアクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)(MW=116.135mmol)をゆっくりと滴下した。滴下完了後、反応混合物をさらに6時間撹拌し、FTIR分析によって2250cm−1イソシアネート吸収帯の消失を監視することによって変換の程度を監視し、これは反応終了時は分析限界となった。次に、この結果得られた生成物に、200ppmの2,6−ジ−tert−ブチル(buthyl)−4−メチルフェノール(BHT)安定剤を加え、減圧(1mBar)下60℃において約30分間ストリッピングを行った。142.8gの官能性化合物(E3)を回収し、これは19NMRおよびFTIR分析によって確認されるように、本明細書の以下の式に適合することが分かった:
【化9】

(式中、Rfは−CFO(CFCFO)p’(CFO)q’CF−鎖であり、p’およびq’は前に詳述した通りである)。
【0084】
化合物(E3)の物理化学的データを表1中に示す。
【0085】
調製の実施例4:官能性PFPE化合物(E4)の合成
機械的撹拌装置、滴下漏斗、および冷却カラムを取り付けた500ml丸底フラスコ中に、不活性雰囲気下で95gの酢酸エチルと、Evonik−Degussaより商品名Vestanat(登録商標)1890/100で販売されるイソホロンジイソシアネート(EW=245;408meq)100.1gとを投入し、温度を50℃まで上昇させた。透明な溶液が得られるまで撹拌を続けた。次に、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)の酢酸エチル中の5%溶液3mlを加え、反応混合物の温度が60℃を超えないような速度で34.2mlのアクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)(MW=116.292mmol)をゆっくりと滴下した。滴下完了後、反応混合物を60℃においてさらに1時間撹拌し、NCO滴定によって反応をチェックした。残留NCO値が、投入したVestanat 1890/100の当量の約28%となったときに、この第1の反応が完了したとみなした。
【0086】
次に、85.5gのHOCHCFO(CFCFO)p’(CFO)q’CFCHOH Fluorolink(登録商標)10−H(MW=1458;p’/q’=1.7 数平均官能基数1.96;115meq)を反応混合物に加え、約20時間激しく撹拌した。FTIR分析により2250cm−1イソシアネート吸収帯の消失を監視し、これが反応終了時には分析値未満となることと、および19NMR分析により末端直前のCF炭素原子のシグナルが、−CHOH基に結合した場合の−81.3および−83.3ppmから、ウレタン部分に結合した場合の−77.5および−79.5ppmへのシフトを観察することによることの両方によって、変換率を監視した。次に、得られた生成物に、200ppmの2,6−ジ−tert−ブチル(buthyl)−4−メチルフェノール(BHT)安定剤を加え、反応溶媒を減圧(0.1mBar)において60℃で蒸留することによって単離した。207.9gの官能性化合物(E4)を回収し、これは19NMRおよびFTIR分析によって確認されるように、本明細書の以下の式に適合することが分かった:
【化10】

(式中:
【化11】

であり、p’およびq’は前に詳述した通りである)。
【0087】
化合物(E4)の物理化学的データを表1中に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
次に、上記の調製の実施例1〜4で得られた官能性PFPE化合物E1〜E4を異なる非フッ素化化合物(M)と配合した。以下の化合物を非フッ素化化合物(M)として使用した:
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)
アクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFA)
3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasilan memo)
アクリル酸
【0090】
実施例5:組成物C1の調製
機械的撹拌装置を取り付けた暗色ガラス容器中に、15gのE3、3gの1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、および2gのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を記載の順序で加え、均一溶液が得られるまで40℃で約10分間撹拌した。次に、Cibaより商品名Darocur(登録商標)1173で販売される2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンを0.5%(w/w)加え、均一な組成物が得られるまで約30分間撹拌した。
【0091】
実施例6〜12:組成物C2〜C8の調製
実施例5に記載の手順と同じ手順により組成物C2〜C8を調製した。使用した官能性PFPE化合物E1〜E4および非フッ素化化合物(M)の量を以下の表2中に示している。
【0092】
実施例13:クロムアルミニウム基体(Q−パネル)上での組成物C1からのフィルムF1の作製。
自動フィルムアプリケーターのElcometer 4340 Applicatorに30μmのバーを使用することによって、組成物C1をQ−パネル上に堆積し、350nmにおける発光極大および240w/cmの最大出力を有する13mmHランプ(Fusion UV system Model VPS/1600)を使用してUV処理した。FTIR−ATRによって1636cm−1におけるアクリル二重結合吸収帯の消失を観察することによってフィルムの架橋の完了を監視し、フィルム厚さをExacto厚さ計(Elektro Physik)でチェックする。
【0093】
実施例14〜20:クロムアルミニウム基体上での組成物C2〜C8からのフィルムF2〜F8の作製。
実施例13と同じ手順を使用して、組成物C2〜C8を堆積し架橋させた。
【0094】
実施例21〜28:PET基体上での組成物C1〜C8からのフィルムF1〜F8の作製。
PET基体を使用したことを除けば実施例13と同じ手順を使用して組成物C1〜C8を堆積し架橋させた。
【0095】
比較例1:クロムアルミニウム基体上でのフィルムCF9の作製。
機械的撹拌装置を取り付けた暗色ガラス容器中で、国際公開第2005/101466号パンフレットの実施例1により合成した30gのパーフルオロポリエーテルジメタクリレート(PFPE DMA)に、0.15gのDarocur(登録商標)1173を加え、均一な比較例組成物Comp.C9が得られるまで約30分間撹拌した。
【0096】
自動フィルムアプリケーターのElcometer 4340 Applicatorに30μmのバーを使用することによって組成物Comp.C9のサンプルをQ−パネル上に堆積し、350nmにおける発光極大および240w/cmの最大出力を有する13mmHランプ(Fusion UV system Model VPS/1600)を使用してUV処理した。FTIR−ATRによって1636cm−1におけるアクリル二重結合吸収帯の消失を観察することによってフィルムの架橋の完了を監視し、フィルム厚さをExacto厚さ計(Elektro Physik)でチェックする。
【0097】
比較例2:PET基体上でのフィルムCF9の作製。
PET基体を使用したことを除けば比較例2と同じ手順を使用して組成物Comp.C9を調製し、堆積し、架橋させた。
【0098】
比較例3:クロムアルミニウム基体上でのフィルムCF10の作製。
機械的撹拌装置を取り付けた暗色ガラス容器中で、30gの組成物E1および0.15gのDarocur(登録商標)1173を投入し、均一な比較例組成物Comp.C10が得られるまで約30分間撹拌した。
【0099】
自動フィルムアプリケーターのElcometer 4340 Applicatorに30μmのバーを使用することによって組成物Comp.C10のサンプルをQ−パネル上に堆積し、350nmにおける発光極大および240w/cmの最大出力を有する13mmHランプ(Fusion UV system Model VPS/1600)を使用してUV処理した。FTIR−ATRによって1636cm−1におけるアクリル二重結合吸収帯の消失を観察することによってフィルムの架橋の完了を監視し、フィルム厚さをExacto厚さ計(Elektro Physik)でチェックする。
【0100】
比較例4:PET基体上でのフィルムCF10の作製
PET基体を使用したことを除けば比較例3と同じ手順を使用して組成物Comp.C10を調製し、堆積し、架橋させた。
【0101】
以下の表2は、組成物C1〜C8ならびに比較例組成物Comp.C9およびC10の構成をまとめている。
【0102】
【表2】

【0103】
実施例29:PET基体上のフィルムF1のTaber試験ASTM D1044
実施例21において組成物C1をPET基体上で架橋させることによって得たフィルムについて、Spherical Hazameterによって方法ASTM D 1003に準拠したヘイズ測定を行った。次に、PET基体によって支持されたフィルムに対して、砥石車CS10を使用して1000gの負荷を10サイクル与え、次に再びヘイズ測定を行った。表3は、摩耗処理の前後のフィルムのヘイズ値を示している。
【0104】
実施例30〜36:PET基体上のフィルムF2〜F8のTaber試験ASTM D1044
実施例22〜28において組成物C2〜C8をPET基体上で架橋させることによって得たフィルムF2〜F8に対して、実施例29と同じ手順によりTaber試験を行った。表3は、摩耗処理の前後のフィルムのヘイズ値を示している。
【0105】
比較例5:PET基体上のフィルムCF9のTaber試験ASTM D1044
比較例2において組成物C9をPET基体上で架橋させることによって得たフィルムCF9に対して、実施例29と同じ手順によりTaber試験を行った。表3は、摩耗処理の前後のフィルムのヘイズ値を示している。
【0106】
比較例6:PET基体上のフィルムCF10のTaber試験ASTM D1044
比較例4において組成物C10をPET基体上で架橋させることによって得たフィルムCF10に対して、実施例29と同じ手順によりTaber試験を行った。表3は、摩耗処理の前後のフィルムのヘイズ値を示している。
【0107】
比較例7:フィルムCF11のTaber試験ASTM D1044
Solvay Solexisより商品名Halar(登録商標)300LCで販売される市販のエチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマーから作製した100μmのフィルム(以降CF11と記載)について、方法ASTM E 1300に準拠してSpherical Hazameterによってヘイズ測定を行った。フィルムを硬質ゴム支持体上に配置して固定し、次に、砥石車CS10を使用して1000gの負荷を10サイクル与えた。次に、この結果得られたフィルムに対して、再度ヘイズ測定行う。表3は、摩耗処理の前後のフィルムのヘイズ値を示している。
【0108】
比較例8〜11:フィルムCF12〜15のTaber試験ASTM D1044
Solvay Solexisより販売される市販のポリマーから作製した100μmのフィルムであって、商品名Hyflon(登録商標)PFA M640から作製したフィルム(以降CF12と記載)、商品名Hyflon(登録商標)MFA 1041から作製したフィルム(以降CF13と記載);商品名Hyflon(登録商標)MFA F1540から作製したフィルム(以降CF14と記載)、およびDu Pont(商標)より商品名Tefzel(登録商標)で販売されるエチレン−テトラフルオロエチレンから作製した100μmのフィルム(以降CF15と記載)に対して、比較例7に記載される方法によりTaber試験を行う。表3は、摩耗処理の前後のフィルムのヘイズ値を示している。
【0109】
【表3】

【0110】
Taber試験の結果は、本発明によるフィルムF1〜F8は、比較例のフルオロポリマーよりも特に耐摩耗性が増加していることを示している。架橋したパーフルオロポリエーテル化合物(M)のみを含むフィルムCF10の性能と比較することによって示されるように、本発明のフィルムの良好な性能が、架橋した成分(E)および(M)両方の存在によることは明らかである。
【0111】
実施例37:F1フィルムの鉛筆硬度試験
実施例13において得たクロムアルミニウム基体上のフィルムF1に対して、「Paint Testing Manual」,Gardner,Sward editor ASTM Special Technical Publication 500,p 283に説明される手順によりGardco(登録商標)試験機を使用した鉛筆硬度試験を行った。この試験は3回繰り返し、表4に得られた結果を示しており、試験したフィルム上に跡を残す最も硬い鉛筆の硬度として示している。
【0112】
実施例38〜44:F2〜F8フィルムの鉛筆硬度試験
実施例14〜20において得たクロムアルミニウム基体上のフィルムF2〜F8に対して、実施例37に記載の手順に従って鉛筆硬度試験を行う。表4は得られた結果を示している。
【0113】
比較例12:CF9フィルムの鉛筆硬度試験
比較例1において得たクロムアルミニウム基体上のフィルムCF9に対して、実施例37に記載の手順に従って鉛筆硬度試験を行う。表4は、試験したフィルム上に跡を残す最も硬い鉛筆の硬度として得られた結果を示している。
【0114】
比較例13:CF10フィルムの鉛筆硬度試験
比較例3において得たクロムアルミニウム基体上のフィルムCF10に対して、実施例37に記載の手順に従って鉛筆硬度試験を行う。表4は、試験したフィルム上に跡を残す最も硬い鉛筆の硬度として得られた結果を示している。
【0115】
【表4】

【0116】
鉛筆硬度試験の結果から、本発明のフィルムF1〜F8が比較例のフィルムよりも高い硬度を有することが分かる。
【0117】
実施例45:フィルムF1の水接触角測定
実施例13において得たクロムアルミニウム基体上のフィルムF1に対して、装置DSA G10 Krussにより、方法ASTM D5725−99−2003に準拠して水接触角測定を行った。表5は得られた値を示している。
【0118】
実施例46〜52:フィルムF2〜F8の水接触角測定
実施例14〜20において得たクロムアルミニウム基体上のフィルムF2〜F8に対して、装置DSA G10 Krussにより、方法ASTM D5725−99−2003に準拠して水接触角測定を行った。表5は得られた値を示している。
【0119】
【表5】

【0120】
これらの試験結果は、本発明による保護フィルムが良好な疎水性を有し、したがって、太陽電池モジュールの防湿バリアとしての機能に適していることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーフルオロポリエーテル(PFPE)ポリマー[ポリマー(F)]を含む少なくとも1つの層を含む太陽電池モジュール用保護フィルムであって、前記ポリマーが、組成物[組成物(C)]であって:
a)少なくとも1種類の官能性パーフルオロポリエーテル化合物[化合物(E)]であって、(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R)]と、少なくとも1つの不飽和部分とを含み、組成物(C)に対して10%〜95重量%の範囲内に含まれる量で存在する化合物(E)と;
b)少なくとも1つの不飽和部分を有する少なくとも1種類の非フッ素化化合物[化合物(M)]であって、ただし、化合物(E)が不飽和部分を1つのみ含む場合、前記非フッ素化化合物(M)が少なくとも2つの不飽和部分を含む化合物(M)と;
c)少なくとも1種類の架橋開始剤と
を含む組成物(C)を架橋させることによって得ることができる、保護フィルム。
【請求項2】
前記化合物(E)が、組成物(C)に対して20%〜85重量%の範囲内に含まれる量で存在する、請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
前記化合物(E)が、組成物(C)に対して30%〜75重量%の範囲内に含まれる量で存在する、請求項1または2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
化合物(E)が、式
(T−J−R−J’−(T
(式中、Rは(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖を表し;JおよびJ’は、互いに同じまたは異なるものであり、独立して、結合、あるいは二価または多価の結合基であり;n、mは1〜3の整数であり;T、Tは、互いに同じまたは異なるものであり:
(A) −OCO−CR=CH
(B) −OCO−NH−CO−CR=CH
(C) −OCO−R−CR=CH
からなる群から選択され、RはHまたはC〜Cアルキル基であり、Rは:
(j) −NH−R−OCO−
(jj) −NH−R−NHCOO−RB’−OCO−
からなる群から選択され、R、RB’は、互いに同じまたは異なるものであり、独立して、C〜C20脂肪族基、C〜C40脂環式基、C〜C50芳香族、アルキル芳香族、または複素環式芳香族基からなる群から選択される二価または多価の結合基である)
で表される化合物から選択される、請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項5】
前記鎖Rが式:
−(CFO)(CFCFO)(CFYO)(CFCFYO)−(CF(CFCFO)
(式中、YはC〜Cパーフルオロ(オキシ)アルキル基であり、zは1または2であり;p、q、r、s、tは、前記鎖Rの分子量が500を超え4000未満となるように選択された≧0の整数である)
に適合する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項6】
化合物(E)が:
(1)式:
【化1】

(式中、nおよびmは1〜3の整数であり;AおよびA’は、互いに同じまたは異なるものであり、独立して、結合、あるいは二価、三価、または四価の結合基であり;Rは前に詳述した鎖を表し、R、RH’は、互いに同じまたは異なるものであり、独立してHまたはC〜Cアルキル基を表す)
のアクリレート誘導体類;
(2)式:
【化2】

(式中、nおよびm、AおよびA’、R、R、RH’、およびRは前に詳述したのと同じ意味を有する)
のアクリルアミド−尿素誘導体類;
(3)式:
【化3】

(式中、nおよびm、AおよびA’、R、R、RH’は前に詳述したのと同じ意味を有し;それぞれのRは、互いに同じまたは異なるものであり、C〜C20脂肪族基、C〜C40脂環式基、C〜C50芳香族、アルキル芳香族、または複素環式芳香族基からなる群から選択される二価、三価、または四価の基である)
のアクリレート−ウレタン誘導体類;
(4)式:
【化4】

(式中、nおよびm、AおよびA’、R、R、RH’、Rは前に詳述したのと同じ意味を有し;それぞれのRB’は、互いに同じまたは異なるものであり、C〜C20脂肪族基、C〜C40脂環式基、C〜C50芳香族、アルキル芳香族、または複素環式芳香族基からなる群から選択される二価、三価、または四価の基である)
ウレタン−アミド−アクリレート誘導体類からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項7】
化合物(E)が式:
C=C(CH)COOCHCHNHCOOCHCFO(CFCFO)p’(CFO)q’CFCHOCONHCHCHOCOC(CH)=CH
(式中、p’およびq’は、前記鎖Rの分子量が500を超え4000未満となり、好ましくは1200〜3000の間で構成され、より好ましくは1500〜2500の間で構成されるように選択される)
の化合物である、請求項6に記載の保護フィルム。
【請求項8】
化合物(E)が式:
【化5】

(式中、p’およびq’は、前記鎖Rの分子量が500を超え4000未満となり、好ましくは1200〜3000の間で構成され、より好ましくは1500〜2500の間で構成されるように選択される)
の化合物である、請求項6に記載の保護フィルム。
【請求項9】
化合物(E)が式:
【化6】

(式中、Rfは−CFO(CFCFO)p’(CFO)q’CF−鎖であり、p’およびq’は、前記鎖Rの分子量が500を超え4000未満となり、好ましくは1200〜3000の間で構成され、より好ましくは1500〜2500の間で構成されるように選択される)
の化合物である、請求項6に記載の保護フィルム。
【請求項10】
化合物(E)が式:
【化7】

(式中、
【化8】

であり、p’およびq’は、前記鎖Rの分子量が500を超え4000未満となり、好ましくは1200〜3000の間で構成され、より好ましくは1500〜2500の間で構成されるように選択される)
請求項6に記載の保護フィルム。
【請求項11】
前記少なくとも1種類の化合物(M)が1つ以上の(メタ)アクリロイル官能基を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項12】
架橋開始剤が、以下の種類:
−α−ヒドロキシケトン類;
−フェニルグリオキシレート類;
−ベンジルジメチル−ケタール類;
−α−アミノケトン類;
−ビスアシル−ホスフィン類
からなる群から選択される光開始剤である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の保護フィルムの製造方法であって:
(a)組成物(C)を提供するステップと、
(b)前記組成物(C)を基体上に堆積するステップと、
(c)前記組成物(C)を架橋させるステップとを含む、方法。
【請求項14】
太陽電池モジュールを保護するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の保護フィルムの使用。
【請求項15】
少なくとも1つの太陽電池と、請求項1〜12のいずれか1項に記載の保護フィルムとを含む、太陽電池モジュール。

【公表番号】特表2012−528217(P2012−528217A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512316(P2012−512316)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057022
【国際公開番号】WO2010/136392
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・スペシャルティ・ポリマーズ・イタリー・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】