説明

太陽電池モジュール設置装置における固定金具装置

【課題】太陽電池モジュール設置装置における固定金具装置を提供する。
【解決手段】固定金具装置(15)は、架台(11)に搭載される太陽電池モジュール(M)の端部の上側に配置される押さえ金具(16)と、架台の上壁(14,14)の下側に配置されるナット金具(17)と、押さえ金具を挿通してナット金具に螺着される頭付きボルト(18)を備え、押さえ金具(16)と架台(11)の間に太陽電池モジュール(M)を挟持する構成とされ、架台(11)の上壁(14,14)と押さえ金具(16)の間に多機能金具(23)を介装している。多機能金具(23)は、頭付きボルトのネジ軸部(18b)を一側の開口部(27a)から切欠き通路(27)を介して挿通孔(26)に進入させ、爪片(28)をネジ軸部(18b)のネジ谷部に螺進自在に係止することにより、頭付きボルト(18)を架台(11)の上方に引き上げた任意の高さに起立保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電を行う太陽電池モジュールを屋根上に設置するための太陽電池モジュール設置装置における固定金具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根上に太陽電池モジュールを設置するための装置は、X方向に配置される架台を前記X方向に交差するY方向に間隔をあけて屋根上に列設した状態で、Y方向に隣り合う架台に太陽電池モジュールを架設状に搭載すると共に、複数の太陽電池モジュールを前記X方向に配置し、太陽電池モジュールのX方向の端部を前記架台に固定する固定金具装置を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−107518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に基づく比較例を図14に示すように、架台1は、底壁2と両側壁3、3を備え、両側壁の上端から内側に折曲された一対の上壁4、4を備えると共に、該上壁の間に前記X方向に延びるスリットSを形成している。これに対し、固定金具装置5は、太陽電池モジュールMの端部の上側に配置される押さえ金具6と、前記架台1の上壁4、4の下側に配置されるナット金具7と、前記押さえ金具6を挿通して前記ナット金具7に螺着される頭付きボルト8を備え、前記押さえ金具6と架台1の間に太陽電池モジュールMを挟持するように構成されている。
【0005】
太陽電池モジュールの設置作業は、前記架台1を屋根上に固定配置した後、図14(A)に示すように、頭付きボルト8を押さえ金具6に挿通させると共に、該頭付きボルト8のネジ軸部8bにナット金具7を螺合し、頭付きボルト8と押さえ金具6とナット金具7を組付けた状態で、前記ネジ軸部8bを架台1のスリットSに挿入し、所定の位置まで移動させてセットする。その後、架台1の上に太陽電池モジュールMを載せ、図14(B)に示すように、押さえ金具6を持ち上げつつ、太陽電池モジュールMの端部が押さえ金具6の下側に臨んで位置決めされる取付所定位置まで該太陽電池モジュールMを移動し、その状態から、レンチ等の工具で頭付きボルト8を回転し、ナット金具7を架台1の上壁4、4の下面に圧接することにより締結する。
【0006】
ところが、架台1の上に載せた太陽電池モジュールMを上述のような所定取付位置に移動する際、同時に、押さえ金具6を持ち上げなければならないので、少人数による作業が困難である。
【0007】
上記セット状態の固定金具装置5は、押さえ金具6が上壁4、4に載置され、頭付きボルト8がナット金具7を底壁2に当接するように自重で下降している。従って、上述のように押さえ金具6を持ち上げる作業は、先ず、押さえ金具6を頭付きボルト8の頭部8aに当接するまで引き上げ、引き続き、ナット金具7が上壁4、4の下面に当接するまで押さえ金具6と共に頭付きボルト8を引き上げる動作を要するため、作業者が片手で迅速に行うことは必ずしも容易でない。
【0008】
そして、押さえ金具6は、傘部6aの下側にストッパ面6bを備え、太陽電池モジュールMの端部の側面を当接可能に形成しているが、遊挿した頭付きボルト8に対して自由に傾くので、前記ストッパ面6bが傾斜した状態で締結されやすく、取付不良を生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決した太陽電池モジュール設置装置における固定金具装置を提供するものであり、その手段として構成したところは、X方向に配置される架台を前記X方向に交差するY方向に間隔をあけて屋根上に配設し、Y方向に隣り合う架台に太陽電池モジュールを架設状に搭載すると共に、複数の太陽電池モジュールを前記X方向に配置した状態で、前記太陽電池モジュールのX方向の端部を前記架台に固定する固定金具装置を設けており、前記架台は、底壁と両側壁を備え、両側壁の上端から内側に折曲された一対の上壁を備えると共に、該上壁の間に前記X方向に延びるスリットを形成し、前記固定金具装置は、前記太陽電池モジュールの端部の上側に配置される押さえ金具と、前記架台の上壁の下側に配置されるナット金具と、前記押さえ金具を挿通して前記ナット金具に螺着される頭付きボルトを備え、前記押さえ金具と架台の間に太陽電池モジュールを挟持する構成において、前記架台の上壁と押さえ金具の間に多機能金具を介装しており、前記多機能金具は、前記スリットを横断して架台の上壁に跨設される断面門形の保持部と、該保持部の両側から前記上壁に沿って延びる翼片部を備え、前記保持部に前記頭付きボルトのネジ軸部を挿通させる挿通孔を開設し、一方の翼片部に形成された開口部を前記挿通孔に連通する切欠き通路を形成すると共に、前記挿通孔に爪片を設けており、架台の上壁の下側に内装されたナット金具と、押さえ金具に挿通した頭付きボルトを相互に螺合した組付け状態で、前記切欠き通路を介してネジ軸部を挿通孔に位置させることにより、該多機能金具を押さえ金具と架台の間に設置すると共に、頭付きボルトを架台の上方に引き上げた任意の位置で前記爪片をネジ軸部のネジ谷部に螺進自在に係止するように構成して成る点にある。
【0010】
本発明に係る多機能金具の1実施形態は、前記固定金具装置により、X方向に隣接する太陽電池モジュールの相対向する端部を架台に固定する構成において、多機能金具の翼片部に太陽電池モジュールの下面と架台の上壁の少なくとも一方に圧接される突部を設け、該多機能金具によりアース金具を構成している。
【0011】
本発明に係る多機能金具の別の実施形態は、前記固定金具装置により、太陽電池モジュールのX方向の開放端部を架台に固定し、該開放端部に臨むカバー部材を設ける構成において、前記カバー部材を係止固定する起立係止片を多機能金具の一方の翼片部に折曲形成している。
【0012】
多機能金具は、前記保持部の側面に太陽電池モジュールの端部側面を当接させるストッパ面を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、押さえ金具16とナット金具17と頭付きボルト18を組付けて成るユニットUを架台11に取付セットした状態で、架台11と押さえ金具16の間に介装された多機能金具23により、頭付きボルト18を架台11の上方に所定高さとなるように起立保持することができるので、太陽電池モジュールMの端部を傘部20の下側の所定位置に移動する作業を容易にする。
【0014】
この際、多機能金具23は、開口部27aから挿通孔26に連通された切欠き通路27を設けているので、先に前記ユニットUを架台11に沿ってスライド移動することにより所定位置に取付セットした後、分離独立した多機能金具23を取付セット状態の頭付きボルト18に容易に装着することができ、この点においても作業が容易である。
【0015】
しかも、挿通孔26に設けた爪片28をネジ軸部18bのネジ谷部に螺進自在に係止する構成とされているので、頭付きボルト18を任意の高さに起立保持した状態で、前記爪片28に対する螺進を介して、頭付きボルト18をナット金具17に螺着し締結することを可能にする。
【0016】
そして、多機能金具23は、請求項2のように構成することにより、アース金具として提供することができ、請求項3のように構成することにより、カバー部材19a、19bの係止金具として提供することができ、多目的機能を具備させることができるという効果がある。
【0017】
更に、多機能金具23の保持部24にストッパ面29を形成することにより、太陽電池モジュールMの端面の下側を前記ストッパ面29に当接させ、上側を押さえ金具16のストッパ面16aに当接させることが可能になるので、移動時の太陽電池モジュールMの端面が押さえ金具16を押し込んでしまうことはなく、押さえ金具16が傾斜した偏位姿勢状態で固定される取付不良を生じないという実益がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る固定金具装置を使用した太陽電池モジュール設置装置の1例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る固定金具装置を使用した太陽電池モジュール設置装置の別の例を示す斜視図である。
【図3】太陽電池モジュール設置装置の前端部に使用される前端部用の固定金具装置の実施形態を示す分解斜視図である。
【図4】太陽電池モジュール設置装置の中間部に使用される中間部用の固定金具装置の実施形態を示す分解斜視図である。
【図5】太陽電池モジュール設置装置の後端部に使用される後端部用の固定金具装置の実施形態を示す分解斜視図である。
【図6】多機能金具の実施形態を示しており、(A)は中間部用の固定金具装置に使用される多機能金具の実施形態を示す斜視図、(B)は端部用の固定金具装置に使用される多機能金具の実施形態を示す斜視図、(C)は多機能金具の挿通孔とネジ軸部の関係を示す平面図である。
【図7】中間部用の固定金具装置の取付セットの方法を示す斜視図である。
【図8】架台に取付セットした中間部用の固定金具装置により太陽電池モジュールを固定する方法を示す断面図である。
【図9】架台に取付セットした端部用の固定金具装置により太陽電池モジュールを固定する方法を示す断面図である。
【図10】架台に複数の太陽電池モジュールを設置し、固定金具装置により取付固定した状態を示す断面図である。
【図11】中間部用の固定金具装置に使用される多機能金具の形状を示しており、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は背面図、(E)は右側面図、(F)はD−D断面図である。
【図12】端部用の固定金具装置に使用される多機能金具の形状を示しており、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は背面図、(E)は右側面図、(F)はE−E断面図である。
【図13】多機能金具の別の実施例を示しており、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は底面図である。
【図14】本発明に対する比較例を示しており、(A)は固定金具装置を架台に取付セットする方法を示す斜視図、(B)は固定金具装置により太陽電池モジュールを架台に取付固定した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0020】
[全体構成]
図1又は図2に示すように、太陽電池モジュールの設置装置は、X方向に配置される架台11を前記X方向に交差するY方向に間隔をあけて屋根上に列設すると共に、Y方向に隣り合う架台11、11にパネル形態とされた太陽電池モジュールMを架設状に搭載した状態で、前記太陽電池モジュールMのX方向の端部を前記架台11に固定する固定金具装置15を設けている。
【0021】
架台11を屋根上に固定設置するための手段は、従来公知の技術であり、本発明の特徴を構成するものではないから、詳細を説明するが、屋根が図例のような洋瓦を敷設している場合は、ボルトによる直接的な固設や、支持金具を介した間接的な固設等が可能であり、和瓦を敷設している場合は、該瓦に一体形成された取付部に対する直接的な固設や、支持金具を介した間接的な固設等が可能であり、その手段が限定されるものではない。
【0022】
前記架台11は、図3ないし図5に示すように、鋼板を折曲した概ね溝型の中空体を構成し、底壁12と両側壁13、13を備え、両側壁の上端から内側に折曲された一対の上壁14、14を備えると共に、該上壁の間に前記X方向に延びるスリットSを形成している。
【0023】
図1に示す実施形態の場合、架台11は、短尺の中空体により構成され、X方向に複数個の架台11を配置した1列を1組とする架台群を、Y方向に間隔をあけて列設するように構成している。これに対し、図2に示す実施形態の場合、架台11は、長尺の中空体により構成され、X方向に配置した長い1本の架台1をY方向に間隔をあけて列設するように構成している。従って、本発明の架台11は、このような短尺又は長尺の何れに形成しても良い。
【0024】
図示実施形態の場合、図1にAa、Ba、Caで示し、図2にAb、Bb、Cbで示すように、固定金具装置15は、X方向に隣接して配置される複数の太陽電池モジュールMのうち、前端部(屋根勾配の下り側の端部)に位置する太陽電池モジュールMの開放端部を架台11に固定する前端部用の固定金具装置15Aと、中間部に位置して隣接する太陽電池モジュールM、Mの対向端部を架台11に固定する中間部用の固定金具装置15Bと、後端部(屋根勾配の上り側の端部)に位置する太陽電池モジュールMの開放端部を架台11に固定する後端部用の固定金具装置15Cにより構成されており、X方向に関する架台11の前端部には前側カバー19aが配置され、後端部には後側カバー19bが配置される。尚、図1に示す短尺の架台11を使用した設置装置の場合は、前側及び後側カバー19a、19bも短尺に形成され、図2に示す長尺の架台11を使用した設置装置の場合は、前側及び後側カバー19a、19bも長尺に形成されているが、本発明を限定するものではない。
【0025】
[固定金具装置の構成]
図3ないし図5に示すように、前記固定金具装置15(15A、15B、15C)は、太陽電池モジュールMの端部の上側に配置される押さえ金具16と、前記架台11の上壁14、14の下側に配置されるナット金具17と、前記押さえ金具16を挿通して前記ナット金具17に螺着される頭付きボルト18を備え、前記押さえ金具16と架台11の間に太陽電池モジュールMを挟持するように構成されている。前記頭付きボルト18は、頭部18aからネジ軸部18bを延設している。前記押さえ金具16は、傘部20の下側に中空矩形断面のスペーサ部21を一体形成し、該スペーサ部21の両側面にストッパ面16aを形成し、前記傘部20及びスペーサ部21に前記ネジ軸部18bを遊挿させる遊挿孔22a、22bを貫設している。前記ナット金具17は、平板状の鋼板の両側に下向きリブ17a、17aを折曲形成すると共に中央部に雌ネジ孔17bを設けている。そして、本発明の固定金具装置15(15A、15B、15C)は、更に、前記架台11の上壁14、14と押さえ金具16の間に介装される多機能金具23を備えている。
【0026】
図示実施形態において、押さえ金具16とナット金具17と頭付きボルト18は、前記固定金具装置15A、15B、15Cの間において同一構成のものが共通部品として使用されるが、多機能金具20は、前端部用の固定金具装置15A及び後端部用の固定金具装置15Cに使用される端部用の多機能金具23aと、中間部用の固定金具装置15Bに使用される中間部用の多機能金具23bの2種類により構成されている。
【0027】
[多機能金具の構成]
図3ないし図6に示すように、多機能金具23は、薄い鋼板を折曲することにより形成されており、前記スリットSを横断して架台11の上壁14、14に跨設される頂壁24aと両側壁24b、24bを備えた断面門形の保持部24と、前記両側壁24b、24bの下端縁から前記上壁14、14に沿って延びる翼片部25、25を備え、前記頂壁24aに頭付きボルト18のネジ軸部18bを挿通させる挿通孔26を開設し、一方の翼片部25に形成された開口部27aから前記挿通孔26に連通する切欠き通路27を形成すると共に、前記挿通孔26に爪片28を設けている。この際、前記両側壁24b、24bは、後述するように太陽電池モジュールMの端面を当接可能とするストッパ面29を構成する。
【0028】
図6(C)に示すように、前記切欠き通路27は、ネジ軸部18bの直径よりも十分に広い幅Wを有するように形成され、頂壁24aに位置して挿通孔26に向かい次第に幅を減じるテーパ縁27bを形成している。挿通孔26は、ネジ軸部18bの直径よりも十分に大きい内径を有するが、少なくとも前記テーパ縁27bに連なるように爪片28を形成し、複数配置された爪片28の先端縁にネジ軸部18bのネジ谷部に沿う円弧縁28aを形成している。
【0029】
多機能金具23に関する上記構成は、端部用の多機能金具23aと中間部用の多機能金具23bに共通する構成であるが、端部用の多機能金具23aと中間部用の多機能金具23bは、次の点において相違している。即ち、中間部用の多機能金具23bは、図6(A)に示すように、前記翼片部25、25の隅部に位置して上向き又は下向きに突出する突部30を設けており、これにより後述するアース金具を構成する。尚、図6(A)の場合、翼片部25、25の隅部の近傍を上向き又は下向きにプレス成形することによりボス状の突部30を形成しているが、図13に示すように、翼片部25、25の隅部のコーナ部分を上向き又は下向きに折曲することにより三角片状の突部30を形成しても良い。
【0030】
上記の中間部用の多機能金具23bに対して、端部用の多機能金具23aは、図6(B)に示すように、開口部27aが設けられた一方の翼片部25の自由端部を上向きに折曲することにより起立係止片31、31を形成し、これによりカバー係止手段を構成する。
【0031】
[固定金具装置による太陽電池モジュールの固定方法]
(中間部用の固定金具装置15Bによる固定)
図7は、中間部用の固定金具装置15Bを架台11に取付セットする方法を示し、図8は、架台11に取付セットした中間部用の固定金具装置15Bにより太陽電池モジュールMを固定する方法を示している。
【0032】
図7に示すように、押さえ金具16とナット金具17と頭付きボルト18の3者は、上述のように組付けられたユニットUを構成し、この状態で屋根上に固設された架台11に装着される。図示の矢印F1で示すように、ネジ軸部18bを架台11のスリットSに挿入し、架台11の上壁14、14の下側にナット金具17を配置すると共に上側に押さえ金具16を配置した状態で、ユニットUを架台11の長手方向に移動させ、所定位置にセットする。次いで、押さえ金具16を持ち上げ、図示の矢印F2で示すように、多機能金具23aを押さえ金具16と架台11の上壁14、14の間に介装する。
【0033】
多機能金具23aは、開口部27aをネジ軸部18bに臨ませた状態で移動すると、ネジ軸部18bが切欠き通路27を通過して挿通孔26に至り、多機能金具23aの保持部24を押さえ金具16のスペーサ部21の下側に合致させられる。
【0034】
図6(C)に示すように、ネジ軸部18bは、切欠き通路27からテーパ縁27bに案内されつつ該ネジ軸部18bと挿通孔26の中心Qを一致するように進入し、進入と同時に、爪片28をネジ軸部18bのネジ谷部に係止する。この際、図例のように、少なくともテーパ縁27bに連設された爪片28、28を前記中心Qよりも切欠き通路27の側に偏位して設けておけば、ネジ軸部18bが切欠き通路27に向けて抜け出ることを防止できる。爪片28がネジ谷部に係止した状態で、頭付きボルト18を回転すると、ネジ軸部18bは爪片28に対して螺進螺退自在とされているので、図8に示すように、太陽電池モジュールMの上下厚さTを目安として、頭付きボルト18の頭部18aが前記厚さTよりもやや上方に位置するように調整し、これにより中間部用の固定金具装置15Bの取付セットが完了する。
【0035】
そこで、取付セットされた固定金具装置15Bにより太陽電池モジュールMを固定するに際しては、図8に示すように、多機能金具23aの保持部24に載置された押さえ金具16を頭付きボルト18の頭部18aに当接するまで持ち上げると共に、架台11に仮置きした太陽電池モジュールM、Mを図示の矢印Rで示すように、固定金具装置15Bに向けて移動させた後、押さえ金具16の傘部20を太陽電池モジュールMの端部上側に当接させた状態で、レンチ等の工具により頭付きボルト18をナット金具17に締結すれば、太陽電池モジュールMの端部が押さえ金具16と架台11の間に挟着され固定される。
【0036】
押さえ金具16を持ち上げるとき、頭付きボルト18は、多機能金具23aに係止固定されており、頭部18aを所定高さ位置とした状態で起立保持されているので、作業を容易とする。
【0037】
押さえ金具16を持ち上げた状態で、太陽電池モジュールMを矢印Rのように移動させたとき、該太陽電池モジュールMの端面は、下側を多機能金具23aのストッパ面29に当接し、上側を押さえ金具16のストッパ面16aに当接するので、押さえ金具16が頭付きボルト18に対して傾くことはなく、ストッパ面16aが傾斜した状態で取付けられるような取付不良は生じない。
【0038】
取付固定された太陽電池モジュールMと架台11の間には、多機能金具23aの翼片部25が挟着され、突部30を太陽電池モジュールM又は架台11に食込み状に係止するので、太陽電池モジュールMと架台11の間の導電性を確保し、太陽電池モジュールMのアースを良好とする。
【0039】
(端部用の固定金具装置15A、15Cによる固定)
端部用の固定金具装置15A、15Cにより太陽電池モジュールMの開放端部を固定する方法のうち、押さえ金具16とナット金具17と頭付きボルト18の3者を組付けたユニットUを架台11の所定位置にセットする方法は、上述の固定金具装置15Bの場合と同様であるから、説明を省略し、上述と異なる点を説明する。
【0040】
図9に示すように、図示実施形態の場合、前側カバー19a及び後側カバー19bは同一構成のものが使用され、それぞれカバー本体32の内側に中空筒部33を形成し、該中空筒部33の下面に下向きの凸形部34を形成すると共に、上面にリップ部35を形成している。
【0041】
そこで、上述と同様の方法で、架台11のX方向の前端部と後端部にそれぞれ固定金具装置15A、15Cを構成するユニットU、U(押さえ金具16とナット金具17と頭付きボルト18のアセンブリユニット)を取付セットする。この際、図示省略しているが、軒先側の架台11の端部には、該架台11と一体に形成した爪により形成されたストッパ手段、又は該架台11の端部に装着したキャップにより形成されたストッパ手段が設けられており、軒先側に向けて下り勾配で傾斜した架台11に対してスライド可能なユニットUのナット金具17を受止めるように構成することが好ましい。
【0042】
前記ユニットUを取付セットした状態で、各ユニットUにおける押さえ金具16と架台11の間に多機能金具23bが介装される。それぞれの多機能金具23bは、開口部27aと起立係止片31を有する一方の翼片部25をX方向の外側(それぞれ前後方向)に向かう姿勢として、同方向に移動することにより、頭付きボルト18のネジ軸部18bを挿通孔26に位置させると共に、爪片28をネジ谷部に係止させ、頭付きボルト18の頭部18aが所定高さとなるように起立保持する。
【0043】
太陽電池モジュールMは、上述と同様に、端部側面を多機能金具23bのストッパ面29と押さえ金具16のストッパ面16aに当接される。
【0044】
前側カバー19a及び後側カバー19bは、それぞれの凸形部34をそれぞれの多機能金具23bの起立係止片31と側壁24bの間に嵌入され、リップ部35を押さえ金具16の傘部20の下側に位置させられる。
【0045】
この状態から、レンチ等の工具により頭付きボルト18をナット金具17に締結すれば、太陽電池モジュールMの開放端部と前側カバー19a及び後側カバー19bのそれぞれが押さえ金具16と架台11の間に挟着され固定される。多機能金具23bは、起立係止片31を前側カバー19a及び後側カバー19bの凸形部34に外側から係止し、これにより該カバー19a、19bが強風等に煽られて脱落することを防止する。
【0046】
上記の結果、図10に示すように、太陽電池モジュールM、Mは、固定金具装置15A、15B、15Cにより、架台11の上に、堅固に取付けられ、前後端部を前側カバー19a及び後側カバー19bにより好適に被われる。
【符号の説明】
【0047】
M 太陽電池モジュール
S スリット
11 架台
12 底壁
13 側壁
14 上壁
15、15A、15B、15C 固定金具装置
16 押さえ金具
16a ストッパ面
17 ナット金具
17b 雌ネジ孔
18 頭付きボルト
18a 頭部
18b ネジ軸部
19a 前側カバー
19b 後側カバー
20 傘部
21 スペーサ部
22a、22b 遊挿孔
23、23a、23b 多機能金具
24 保持部
24a 頂壁
24b 側壁
25 翼片部
26 挿通孔
27 切欠き通路
27a 開口部
27b テーパ縁
28 爪片
28a 円弧縁
29 ストッパ面
30 突部
34 凸形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向に配置される架台(11)を前記X方向に交差するY方向に間隔をあけて屋根上に配設し、Y方向に隣り合う架台に太陽電池モジュール(M)を架設状に搭載すると共に、複数の太陽電池モジュール(M)(M)を前記X方向に配置した状態で、前記太陽電池モジュールのX方向の端部を前記架台(11)に固定する固定金具装置(15)を設けており、
前記架台(11)は、底壁(12)と両側壁(13,13)を備え、両側壁の上端から内側に折曲された一対の上壁(14,14)を備えると共に、該上壁の間に前記X方向に延びるスリット(S)を形成し、
前記固定金具装置(15)は、前記太陽電池モジュール(M)の端部の上側に配置される押さえ金具(16)と、前記架台の上壁(14,14)の下側に配置されるナット金具(17)と、前記押さえ金具を挿通して前記ナット金具に螺着される頭付きボルト(18)を備え、前記押さえ金具(16)と架台(11)の間に太陽電池モジュール(M)を挟持する構成において、
前記架台(11)の上壁(14,14)と押さえ金具(16)の間に多機能金具(23)を介装しており、
前記多機能金具(23)は、前記スリット(S)を横断して架台(11)の上壁(14,14)に跨設される断面門形の保持部(24)と、該保持部(24)の両側から前記上壁(14,14)に沿って延びる翼片部(25,25)を備え、前記保持部(24)に前記頭付きボルトのネジ軸部(18b)を挿通させる挿通孔(26)を開設し、一方の翼片部(25)に形成された開口部(27a)を前記挿通孔(26)に連通する切欠き通路(27)を形成すると共に、前記挿通孔(26)に爪片(28)を設けており、
架台(11)の上壁(14,14)の下側に内装されたナット金具(17)と、押さえ金具(16)に挿通した頭付きボルト(18)を相互に螺合した組付け状態で、前記切欠き通路(27)を介してネジ軸部(18b)を挿通孔(26)に位置させることにより、該多機能金具(23)を押さえ金具(16)と架台(11)の間に設置すると共に、頭付きボルト(18)を架台(11)の上方に引き上げた任意の位置で前記爪片(28)をネジ軸部(18b)のネジ谷部に螺進自在に係止するように構成して成ることを特徴とする太陽電池モジュール設置装置における固定金具装置。
【請求項2】
前記固定金具装置(15B)により、X方向に隣接する太陽電池モジュール(M)(M)の相対向する端部を架台(11)に固定する構成において、
前記多機能金具(23b)の翼片部(25)に太陽電池モジュール(M)の下面と架台(11)の上壁の少なくとも一方に圧接される突部(30)を設け、該多機能金具(23b)によりアース金具を構成して成ることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール設置装置における固定金具装置。
【請求項3】
前記固定金具装置(15A,15b)により、太陽電池モジュール(M)のX方向の開放端部を架台(11)に固定し、該開放端部に臨むカバー部材(19a,19b)を設ける構成において、
前記カバー部材を係止固定する起立係止片(31)を前記多機能金具(23a)の一方の翼片部(25)に折曲形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール設置装置における固定金具装置。
【請求項4】
前記多機能金具(23)は、前記保持部(24)の側面に太陽電池モジュール(M)の端部側面を当接させるストッパ面(29)を形成して成ることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の太陽電池モジュール設置装置における固定金具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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