説明

太陽電池モジュール

【課題】一段と簡易な構成により施工がし易い太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】基盤の第1の面に薄膜太陽電池セルが封止されてなる太陽電池モジュールにおいて、基盤101の第2の面の一方の端部近傍に、薄膜太陽電池セルの正極から引き出される引出し線を内部に収納する正極側端子箱103を配置し、基盤101の第2の面の他方の端部近傍に配置に、薄膜太陽電池セルの負極から引き出される引出し線を内部に収納する負極側端子箱104を配置し、正極側端子箱103と負極側端子箱104との間に母線ケーブル102を配線し、正極側端子箱103から第1の端部側に引き出され、他の太陽電池モジュールと接続される第1の接続用母線ケーブル106を配線し、負極側端子箱104から第2の端部側に引き出され、他の太陽電池モジュールと接続される第2の接続用母線ケーブル109を配線することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基盤上に薄膜太陽電池セルが封止されている太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば太陽電池モジュールを有する屋根瓦を多数屋根に配置した太陽電池システムがある。太陽電池モジュールの配線構造や施工方法としては、例えば、小型の太陽電池モジュールを直列及び並列に接続して直列ストリングを形成する方法が開示されている(特許文献1参照)。この方法では、各太陽電池モジュールに正極側端子と負極側端子を設け、直列接続が必要なモジュール間は3芯ケーブルの内の1芯を用いて直列接続しており、並列接続は3芯の残り2芯、あるいは2芯ケーブルで接続する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−185029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、太陽光発電システムにおいて使用される太陽電池モジュールには種々のものが提案されており、例えば、光発電素子を樹脂で封止し、受光面側にガラス板や耐候性フイルムを配置し、非受光面側に防水シートや鋼板、瓦材などを配置するものが知られている。
【0004】
特に、受光面側に耐候性フイルムを用いる太陽電池モジュールは、非常に軽量であることから、例えば鋼板屋根などに適用した場合には、太陽電池が付加されても、重量が大きく増加しないために、建屋の大きな設計変更は必要ではなく、しかも太陽電池付き屋根材は、通常の金属屋根材と同じ工程で、発電素子の配置されていないモジュールの周辺部分を折り曲げ加工するだけで成形でき、しかも配線作業を除けば、通常の鋼板屋根材と同じように施工できることから施工性に優れ、今後大きく市場が開くものと期待されている。
【0005】
このような太陽電池モジュールにおいては、通常の屋根施工作業と比較して、配線工事などが大きな追加工事にならないことが必要である。
【0006】
これらの薄膜太陽電池においては、内部に直列接続された複数の太陽電池セルを有することにより、必要な出力電圧を得ることができる。図7は、太陽電池モジュール10の非受光面側を示す下面図である。この太陽電池モジュール10では、内部に複数のセルが直列接続された太陽電池が鋼板11の一方の面に封止材により封止されている。鋼板11の他方の面には、正極側端子箱13及び負極側端子箱14が設けられている。正極側端子箱13では、鋼板11の一方の面に封止された太陽電池セルの正極から引き出された正極側引出し線と、母線ケーブル12の分岐箱15から引き出された正極側引出し線16とがコネクタ17、18及び接続ケーブル19を介して接続されている。また、負極側端子箱14では、鋼板11の一方の面に封止された太陽電池セルの負極から引き出された負極側引出し線と、母線ケーブル12の分岐箱15から引き出された負極側引出し線21とがコネクタ22、23及び接続ケーブル24を介して接続されている。母線ケーブル12は、2芯構成のケーブルであり、一方の電線は正極側電線として用いられ、分岐箱15において正極側引出し線16と接続され、他方の電線は負極側電線として用いられ、分岐箱15において負極側引出し線21と接続されている。
【0007】
このように、鋼板11の一方の面に太陽電池セルが封止されてなる太陽電池モジュール10においては、鋼板11の他方の面に太陽電池セルからの引出し線を引き出して、母線ケーブル12と接続されていることにより、太陽電池セルの封止工程に影響を与えずに母線ケーブル12を配線することができると共に、母線ケーブル12の交換等も容易に行うことができると考えられる。
【0008】
また、図7について上述したように、太陽電池のセルが内部で直列接続されてなる太陽電池モジュール10においては、2芯の母線ケーブル12と並列接続することができる。そして、例えば、図8に示すように、必要な数の太陽電池モジュール10を母線ケーブル12に並列接続してグループを構成すると共に、これらを並列接続用分岐部材27を介して2芯の共通母線ケーブル28に並列接続することにより、複数の太陽電池モジュール10を並列接続して屋根等に設置するようになされている。
【0009】
かかる構成の太陽電池モジュール10を屋根に設置する場合、まず、配線ガッターの中に予め用意した母線ケーブル12を敷設し、水下側(軒側)から順次太陽電池モジュール10との配線接続をしながら施工して行く。この場合、各母線ケーブル12からは太陽電池モジュール10と接続するための正極側引出し線16及び負極側引出し線21が引き出されており、これらの引出し線を太陽電池モジュール10の正極側端子箱13及び負極側端子箱14から引き出されている接続ケーブル19及び24に接続しながら施工を進めて行かなければならず、配線作業が煩雑になることを避け得なかった。また、単一の太陽電池モジュール10の出力電圧として、例えば産業用インバータの入力電圧である400Vを確保しようとすると、太陽電池モジュール10は長尺になる。この場合、太陽電池モジュール10の曲げ加工などを考慮して、このモジュールに取り付けられている正極側端子箱13及び負極側端子箱14から引き出される接続ケーブル19、21を長くすることは得策でなく、必然的に、母線ケーブル12の分岐箱15から分岐される正極側引出し線16及び負極側引出し線21の長さが長くなる。したがって、かかる構成の太陽電池モジュール10を複数配置しようとすると、これに応じて、母線ケーブル12から複数個所で長尺の引出し線(正極側引出し線16、負極側引出し線21)が引き出されることとなり、取り扱い難くなる問題があった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、一段と簡易な構成により施工がし易い太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の太陽電池モジュールは、基盤の第1の面に薄膜太陽電池セルが封止されてなる太陽電池モジュールであって、前記基盤の第2の面の一方の端部近傍に配置され、前記薄膜太陽電池セルの正極から引き出される正極側引出し線を内部に収納する正極側端子箱と、前記基盤の第2の面の他方の端部近傍に配置され、前記薄膜太陽電池セルの負極から引き出される負極側引出し線を内部に収納する負極側端子箱と、前記正極側端子箱に収納された前記正極側引出し線と接続される正極側電線と、前記負極側端子箱に収納された前記負極側引出し線と接続される負極側電線とを含み、前記正極側端子箱と前記負極側端子箱との間に配線される母線ケーブルと、前記正極側端子箱内において前記母線ケーブルと接続されると共に前記正極側端子箱から前記第1の端部側に引き出される第1の接続用母線ケーブルと、前記負極側端子箱内において前記母線ケーブルと接続されると共に前記負極側端子箱から前記第2の端部側に引き出される第2の接続用母線ケーブルと、を具備したことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、基盤の第2の面に母線ケーブル、第1の接続用母線ケーブル及び第2の接続用母線ケーブルが設けられることにより、基盤の第1の面に薄膜太陽電池セルを設ける工程に影響を与えることなくケーブル類を配置することができると共に、ケーブル類の交換等も可能となる。そして、かかる構成において、正極側端子箱と負極側端子箱との間に母線ケーブルを配線し、正極側端子箱内で薄膜太陽電池セルから引き出された正極側引出線と母線ケーブルの正極側電線とを接続し、また、負極側端子箱内で薄膜太陽電池セルから引き出された負極側引出線と母線ケーブルの負極側電線とを接続することにより、基盤の第2の面におけるケーブル類の配線構成を一段と簡単にすることができる。かくして、薄膜太陽電池セルを用いた軽量の太陽電池モジュールを、一段と簡単な配線構成で実現することができ、これにより、その設置施工を一段と容易にすることができる。
【0013】
また、本発明は、上記太陽電池モジュールにおいて、前記母線ケーブルは、正極側電線及び負極側電線を有する2芯ケーブルであることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、2芯ケーブルを用いることにより、太陽電池モジュールを簡単に並列接続することができる。
【0015】
また、本発明は、上記太陽電池モジュールにおいて、前記母線ケーブルと前記第1及び第2の接続用母線ケーブルとは、前記正極側電線、前記負極側電線及びアース用電線を有する3芯ケーブルであり、前記正極側端子箱又は前記負極側端子箱は、前記薄膜太陽電池セルから引き出されたアース用引出し線を内部に収納し、前記正極側端子箱又は前記負極側端子箱内において前記アース用引出し線と前記母線ケーブルのアース用電線とが接続され、前記アース用引出し線と前記第1又は第2の接続用母線ケーブルのアース用電線とが接続されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、3芯構成の母線ケーブルを用いることにより、薄膜太陽電池セルを母線ケーブルにアース接続することができる。
【0017】
また、本発明は、上記太陽電池モジュールにおいて、前記正極側端子箱と前記負極側端子箱との間に配線される前記母線ケーブルの少なくとも一部を前記基盤に固定する固定手段を具備することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、母線ケーブルの少なくとも一部が基盤に固定されることにより、太陽電池モジュールの取扱いが容易となり、一段と設置施工が簡単になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一段と簡易な構成により施工がし易い太陽電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態にかかる太陽電池モジュールの非受光面側を示す概略的な構成図である。
【0021】
太陽電池モジュール100において、その非受光面側に設けられた鋼板(基盤)101には、正極側端子箱103及び負極側端子箱104が異なる位置に設けられている。正極側端子箱103と負極側端子箱104との間には、鋼板101の表面に2芯の母線ケーブル102が配置されており、この母線ケーブル102の正極側電線とモジュール内部の薄膜太陽電池150(後述)の正極から引き出された正極側引出し線121(後述)とが、正極側端子箱103の内部において接続されている。また、母線ケーブル102の負極側電線とモジュール内部の薄膜太陽電池150の負極から引き出された負極側引出し線141(後述)とが、負極側端子箱104の内部において接続されている。これにより、母線ケーブル102に対して、太陽電池モジュール100の内部の薄膜太陽電池150が電気的に並列接続されている。
【0022】
また、正極側端子箱103においては、母線ケーブル102と接続用母線ケーブル106とが接続されており、接続用母線ケーブル106の先端部には、隣接する太陽電池モジュールと接続するためのコネクタ107が接続されている。また、負極側端子箱104においては、母線ケーブル102と接続用母線ケーブル108とが接続されており、接続用母線ケーブル108の先端部には、隣接する太陽電池モジュールと接続するためのコネクタ109が接続されている。
【0023】
なお、本実施の形態においては、非受光面側に設けられる鋼板101として、ガルバリウム鋼板を用いるが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばアルミニウム材等を用いることができる。
【0024】
図2に示すように、太陽電池モジュール100においては、鋼板101上にエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA:ethylene-vinyl acetate)でなる封止材160によってフィルム基板型の薄膜太陽電池150が直接ラミネートされている。この薄膜太陽電池150においては、プラスチックフィルム基板151の一方の面に複数のセル152が設けられており、各セル152は、正極を形成する透明電極153と負極を形成する金属電極154とによってアモルファスシリコン(a-Si)層155が挟まれた構成を有している。
【0025】
また、各セル152の透明電極153が設けられた受光面側においては、封止材160の表面に厚さ25μmのフッ素系フィルム(ETFE:ethylen tetrafluorethylen)からなる表面保護層161が設けられている。
【0026】
プラスチックフィルム基板151の他方の面には、複数の背面電極156が設けられている。この背面電極156とこれに対向するセル152との間には、スルーホール(図示せず)が形成されており、また、各セル152においては、透明電極153、アモルファスシリコン層155及び金属電極154の間にスルーホール(図示せず)が形成されている。これにより、スルーホールを介して各セル152が直列に接続されてSCAF(Series-Connection through Aperture Formed on Film Substrate)構造と呼ばれる直列接続構成の薄膜太陽電池150が構成される。因みに、太陽電池モジュール100の長さは約4mであり、直列接続された複数のセル152の合計出力電圧が約400Vとなるように構成されている。この出力電圧(約400V)は、太陽電池の電源供給先であるインバータの入力電圧と同じ電圧である。これら直列接続された複数のセル152のうちの最上流側のセルの背面電極156が薄膜太陽電池150の正極端子として用いられ、最下流側のセルの背面電極156が薄膜太陽電池150の負極端子として用いられる。正極端子からは、電線が引き出されて正極端子箱103において母線ケーブル102に接続される。また、負極端子からは、電線が引き出されて負極端子箱104において母線ケーブル102に接続される。
【0027】
図3は、正極側端子箱103及び負極側端子箱104の構成を示す断面図であり、正極側端子箱103の内部において、2芯構成の母線ケーブル102の正極側電線111と接続用母線ケーブル106の正極側電線112とが接続部113によって接続されている。また、母線ケーブル102の負極側電線115と接続用母線ケーブル106の負極側電線116とが接続部117によって接続されている。
【0028】
また、正極側端子箱103の内部において、鋼板101には、太陽電池モジュール100の内部と鋼板101の表面側(太陽電池モジュール100の非受光面側)とを連通させる貫通孔120が形成されている。モジュール内部の薄膜太陽電池150の正極に接続された正極側引出し線121は、この貫通孔120を介してモジュール外部に引き出されている。正極側引出し線121の先端部には、接続部122が設けられており、この接続部122と母線ケーブル102の接続部113との間には、逆流防止ダイオード125が接続されている。これにより、母線ケーブル102の正極側電線111と薄膜太陽電池150の正極とが逆流防止ダイオード125を介して接続されている。
【0029】
一方、負極側端子箱104の内部において、母線ケーブル102の正極側電線111と接続用母線ケーブル108の正極側電線132とが接続部133によって接続されている。また、母線ケーブル102の負極側電線115と接続用母線ケーブル108の負極側電線136とが接続部137によって接続されている。
【0030】
また、負極側端子箱104の内部において、鋼板101には、太陽電池モジュール100の内部と鋼板101の表面側(太陽電池モジュール100の非受光面側)とを連通させる貫通孔140が形成されている。モジュール内部の薄膜太陽電池150の負極に接続された負極側引出し線141は、この貫通孔140を介してモジュール外部に引き出されている。負極側引出し線141の先端部には、接続部142が設けられており、この接続部142と母線ケーブル102の接続部137との間は接続電線145によって接続されている。これにより、母線ケーブル102の負極側電線115と薄膜太陽電池150の負極とが接続されている。
【0031】
かくして、太陽電池モジュール100は、2芯構成の母線ケーブル102に対して並列接続され、太陽電池モジュール100の内部に直列接続されて配置された複数のセル152の合計出力電圧(約400V)が得られるようになされている。このように、2芯構成の母線ケーブル102を用いることにより、簡単に薄膜太陽電池150を母線ケーブル102に並列接続することができる。
【0032】
太陽電池モジュール100の製造工程においては、コネクタ107、接続用母線ケーブル106、正極側端子箱103、母線ケーブル102、負極側端子箱104、接続用母線ケーブル108及びコネクタ109からなる配線部品を太陽電池モジュール100とは別に制作しておき、一方の面に薄膜太陽電池150が設けられた鋼板101の他方の面に、これら配線部品が取り付けられる。母線ケーブル102は、粘着テープ165(図1)によって鋼板101の表面に固定されている。これにより、正極端子箱103及び負極端子箱104の内部の配線接続部分に余分な力が加わることが回避され、また、鋼板101の折り曲げ加工時においても母線ケーブル102の位置が動くことがなくなり、加工がし易くなる。また、母線ケーブル102が固定されることにより、建物の屋根に太陽電池モジュール100を施工する際に、母線ケーブル102が配線ガッターなどの部品に挟まれることが防止される。
【0033】
図4は、太陽電池モジュール100を屋根に配置する場合の接続状態を示し、例えば、5枚の太陽電池モジュール100を各々のコネクタ107、109によって順次接続することにより1つのグループ170が構成されている。そして、これと同一構成の複数のグループ170は、各々が並列接続用分岐部材171を介して2芯の共通母線ケーブル172に並列接続される。これにより、共通母線ケーブル172には、複数のグループ170が並列接続される。各グループ170においては、図3について上述したように、複数の太陽電池モジュール100が並列に接続されていることにより、全ての太陽電池モジュール100は、共通母線ケーブル172に対して並列に接続されることになる。かくして、共通母線ケーブル172には、各太陽電池モジュール100において得られる約400Vの電圧が供給されることになる。
【0034】
ここで、太陽電池モジュール100においては、非受光面側に設けられた鋼板101の薄膜太陽電池150が設けられた側の面とは反対側の表面にコネクタ107、接続用母線ケーブル106、正極側端子箱103、母線ケーブル102、負極側端子箱104、接続用母線ケーブル108及びコネクタ109からなる配線部品が取り付けられる。このように、太陽電池モジュール100の非受光面側である鋼板101の表面に配線部品を取り付ける構成としたことにより、例えば、鋼板101の薄膜太陽電池150が配置される側(すなわち太陽電池モジュール100の内部)に配線部品を配置する場合に比べて、製造がし易くなると共に、配線部品の取り付け、交換等の作業も容易になる。この点について、本実施の形態の太陽電池モジュール100のように、鋼板101に薄膜太陽電池150を封止材160により封止する構成においては、鋼板101の太陽電池取り付け側の面に配線部品を配置することが製造工程上煩雑になり、また、一度封止された後は、配線部品の交換を行うことが困難であった。本実施の形態の太陽電池モジュール100では、これらの問題点が解消され、製造工程及び配線部品の取り付け、交換等が容易になる。
【0035】
また、太陽電池モジュール100の非受光面側に配線部品が取り付けられた状態においては、正極側端子箱103及び負極側端子箱104の間に母線ケーブル102が接続され、さらに正極側端子箱103から接続用母線ケーブル106が引き出されると共に負極側端子箱104から接続用母線ケーブル109が引き出された状態となる。この場合、図7及び図8に示したように、各太陽電池モジュール10において、分岐箱15から長尺の正極側引出し線16及び負極側引出し線21が引き出される構成に比べて、太陽電池モジュール100の裏面側表面(鋼板101の表面)に配置されるケーブルが少なくなり、この分、太陽電池モジュール100の設置に係る施工がし易くなる。さらにこの場合、正極側端子箱103と負極側端子箱104の間に配線された母線ケーブル102が粘着テープ165によって鋼板101に固定されることにより、一段と施工がし易くなる。
【0036】
また、本実施の形態の太陽電池モジュール100によれば、鋼板101の薄膜太陽電池150が封止された面とは反対側の面に正極側端子箱103及び負極側端子箱104が設けられると共に、これらから比較的短いケーブル(接続用母線ケーブル106、109)が引き出されるという構成を変更することなく、取り付けられる配線ケーブルを一段と少なくすることができる。かくして、設置に係る施工を一段と容易にし得る太陽電池モジュール100を実現できる。
【0037】
かくして、鋼板101の一方の面に薄膜太陽電池150が封止されてなる軽量かつ施工のし易い太陽電池モジュール100を一段と簡易な構成により実現することができる。
なお、上述の実施の形態においては、正極側電線111及び負極側電線115からなる2芯の母線ケーブル102を用いる場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、太陽電池モジュール100にアース用の引出し線が設けられている場合には、このアース線を接続するためのアース用電線を含む3芯の母線ケーブルを用いることができる。
【0038】
例えば、図3との対応部分に同一符号を付して示す図5において、母線ケーブル202は、正極側電線111及び負極側電線115に加えて、アース用電線211を有する。太陽電池モジュール100の鋼板101には、太陽電池モジュール100の内部と鋼板101の表面側(太陽電池モジュール100の非受光面側)とを連通させる貫通孔220が形成されている。モジュール内部から引き出されたアース用引出し線221は、貫通孔220を介してモジュール外部に引き出されている。アース用引出し線221の先端部には、接続部222が設けられており、この接続部222において、アース用引出し線221と母線ケーブル202のアース用電線211とが接続されている。
【0039】
また、接続用母線ケーブル206もアース用電線212を有する3芯のケーブルであり、アース用電線212は、正極側端子箱103において、接続部222により母線ケーブル202のアース用電線211と、アース用引出し線221とに接続されている。接続用母線ケーブル206の先端部には、アース用電線212に接続されたアース端子を有するコネクタ207が設けられている。
【0040】
一方、負極側端子箱104においては、3芯構成の接続用母線ケーブル208が母線ケーブル202と接続されている。すなわち、母線ケーブル202のアース用電線211と接続用母線ケーブル208のアース用電線232とが接続部242を介して接続されている。接続用母線ケーブル208の先端部には、アース用電線232に接続されたアース端子を有するコネクタ209が設けられている。
【0041】
このように、太陽電池モジュール100からアース用引出し線221が引き出されている場合には、3芯構成の母線ケーブル202及び接続用母線ケーブル206、208を用いることにより、太陽電池モジュール100を母線ケーブル202に並列接続することができる。なお、図5に示した構成においては、正極側端子箱103においてアース用引出し線221を鋼板から引き出し、これを母線ケーブル202のアース用電線211及び接続用母線ケーブル206のアース用電線212に接続する場合について述べたが、これに代えて、負極側端子箱104において、鋼板からアース用引出し線を引き出し、これを母線ケーブル202のアース用電線212及び接続用母線ケーブル208のアース用電線232に接続するようにしてもよい。
【0042】
また、上述の実施の形態においては、太陽電池モジュール100の非受光面側において、鋼板101の表面に粘着テープ165を用いて母線ケーブル102を固定する場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、図6に示すように、鋼板101の表面に、円環形状の固定手段である固定部材301を例えば粘着剤によって固定し、この固定部材301によって母線ケーブル102を固定するようにしてもよい。固定部材301はアルミニウム板を曲げ加工して形成されたものである。この固定方法の場合、太陽電池モジュール100の鋼板101に正極側端子箱103及び負極側端子箱104を取り付けた後、母線ケーブル102を固定部材301に固定すると共に、この母線ケーブル102を正極側端子箱103及び負極側端子箱104に接続する。このように、固定部材301を用いて母線ケーブル102を固定することにより、母線ケーブル102を一段と確実に鋼板101に固定することができる。なお、3芯構成の母線ケーブル202を用いる場合においても、固定部材301を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば建物の屋根に設置される太陽電池モジュールに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる太陽電池モジュールの構成図
【図2】上記一実施の形態の太陽電池モジュールの内部構成を示す断面図
【図3】上記一実施の形態の太陽電池モジュールの正極側端子箱及び負極側端子箱の内部を示す断面図
【図4】上記一実施の形態の太陽電池モジュールを並列接続した構成を示す構成図
【図5】他の実施の形態にかかる太陽電池モジュールの正極側端子箱及び負極側端子箱の内部を示す断面図
【図6】他の実施の形態の太陽電池モジュールにかかる母線ケーブルの固定方法を示す斜視図
【図7】従来の太陽電池モジュールの構成図
【図8】従来の太陽電池モジュールを複数接続した状態を示す構成図
【符号の説明】
【0045】
100…太陽電池モジュール、101…鋼板(基盤)、102、202…母線ケーブル、103…正極側端子箱、104…負極側端子箱、106、108…接続用母線ケーブル、107、109…コネクタ、111、112…正極側電線、115、116…負極側電線、120、140、220…貫通孔、121…正極側引出し線、125…逆流防止ダイオード、141…負極側引出し線、172…共通母線ケーブル、211…アース用電線、221…アース用引出し線、301…固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤の第1の面に薄膜太陽電池セルが封止されてなる太陽電池モジュールであって、
前記基盤の第2の面の一方の端部近傍に配置され、前記薄膜太陽電池セルの正極から引き出される正極側引出し線を内部に収納する正極側端子箱と、
前記基盤の第2の面の他方の端部近傍に配置され、前記薄膜太陽電池セルの負極から引き出される負極側引出し線を内部に収納する負極側端子箱と、
前記正極側端子箱に収納された前記正極側引出し線と接続される正極側電線と、前記負極側端子箱に収納された前記負極側引出し線と接続される負極側電線とを含み、前記正極側端子箱と前記負極側端子箱との間に配線される母線ケーブルと、
前記正極側端子箱内において前記母線ケーブルと接続されると共に前記正極側端子箱から前記第1の端部側に引き出される第1の接続用母線ケーブルと、
前記負極側端子箱内において前記母線ケーブルと接続されると共に前記負極側端子箱から前記第2の端部側に引き出される第2の接続用母線ケーブルと、
を具備したことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記母線ケーブルは、前記正極側電線及び前記負極側電線を有する2芯ケーブルであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記母線ケーブルと前記第1及び第2の接続用母線ケーブルとは、前記正極側電線、前記負極側電線及びアース用電線を有する3芯ケーブルであり、
前記正極側端子箱又は前記負極側端子箱は、前記薄膜太陽電池セルから引き出されたアース用引出し線を内部に収納し、前記正極側端子箱又は前記負極側端子箱内において前記アース用引出し線と前記母線ケーブルのアース用電線とが接続され、前記アース用引出し線と前記第1又は第2の接続用母線ケーブルのアース用電線とが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記正極側端子箱と前記負極側端子箱との間に配線される前記母線ケーブルの少なくとも一部を前記基盤に固定する固定手段を具備することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−38216(P2009−38216A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201281(P2007−201281)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】