説明

太陽電池及びその製造方法

【課題】有機薄膜起電力層を有した太陽電池を容易に製造できるものとする。
【解決手段】太陽電池1は、複数の太陽電池単位セル2が各々の端部同士を重ね合わせるようにしてガラス基板10上に配列されたものである。単位セル2は、導電性基材3と、該導電性基材3上に積層された有機薄膜起電力層4と、該有機薄膜起電力層4上に積層された上部電極5と、上部電極5上に積層された補助電極6とを備えている。単位セル2をガラス基板10上に順次に配列し、この際、単位セル2の端部同士を重ね合わせる。その後、封止材料ですべての単位セル2を覆って封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単位セルを直列に接続してなる太陽電池に係り、特に単位セルを透明ガラス基板上に配列してなる太陽電池に関する。また、本発明は、この太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池セルはガラス基板、シリコンウェファ等の可撓性のない割れ易い材料を用いて作製されてきた。太陽電池モジュールは、所望の出力電圧を得る為に、複数の太陽電池セルを直列に接続して構成される。直列接続の方法としては、大きく次の2つが挙げられる。
【0003】
一つは、特開平5−160425にあるように、セル間をインターコネクタで接続する方法である。
【0004】
もう一つは、特開平5−183177にあるように、電極と光電変換層をレーザーによりパターニングすることによって、基材上で直列化する方法である。
【0005】
しかしながら、セル間をインターコネクタで接続する方法では、発電に寄与しない部分の面積が大きい為に発電効率が低下するという問題がある。そこで、特開平11−186577にあるように、インターコネクタの部品を省略して、セル同士を重ね合わせるようにして直列接続する方法も提案されているが、基材が割れ易い材料であるため、そのような構造にすると、一部に応力が集中してクラックが入り易いという問題がある。
【0006】
また、基材上で直列化する方法は、製造コストが高いという問題がある。
【0007】
特開平11−243224には、可撓性を有する基材上に太陽電池セルを作製することが提案されている。このような基材は割れにくいことから、太陽電池セルのモジュール構造の軽量化が可能であり、より安価な工事費で設置が可能になるという利点を有している。さらに、セル同士を重ね合わせるようにして直列接続しても応力の集中が起こらないため、クラック等の問題が起こらない。
【0008】
特開2008−201819には、太陽電池セルの光電変換層に有機半導体材料を塗布方法により成膜する製造法が提案されている。このような塗布による光電変換層作製技術を、可撓性のある基材上に適用することによって、安価で軽量な太陽電池モジュールを作製することが可能となる。有機半導体材料自体が柔軟性を有していると共に、有機半導体層の膜厚は非常に薄くすることが可能であり(数十〜100nm)、可撓性基材上への成膜に適している。ロール状に巻き取った基材を繰り出しながら連続的に成膜するという方法を採ることにより、非常に安価な製造コストを実現することが可能になる。
【0009】
特開2005−339863には、フィルム有機EL素子の発光機能層の全体を封止フィルムで封止することが記載されている。
【0010】
太陽電池セルを可撓性基材の上に作製することは製造コストを低減する上では有利であるが、実際に太陽電池として使用する際には問題も多い。特開2005−339863にあるように、一般に有機半導体材料は、水や酸素による劣化が問題となることから、十分な封止が必要になる。しかしながら、透明であり、かつ十分な封止性を有する材料としては、ガラス以外になく、可撓性を保ったまま封止することは極めて困難である。また、有機半導体材料以外にも、電気接続部等は水に濡れることによる劣化が顕著であり、耐水性と透明性を両立した封止技術が必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−160425
【特許文献2】特開平5−183177
【特許文献3】特開平11−186577
【特許文献4】特開2008−201819
【特許文献5】特開2005−339863
【特許文献6】特開平11−243224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、安価、軽量で寿命が長く、また製造も容易な太陽電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明(請求項1)の太陽電池は、透明ガラス基板上に複数の単位セルが配列された太陽電池であって、該単位セルは、可撓性を有する導電性基材上に少なくとも有機薄膜起電力層と光透過性の上部電極とが形成されたものであり、単位セルの導電性基材と、隣接する単位セルの上部電極とが導通されることによって該単位セルが直列に接続されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の太陽電池は、請求項1において、該単位セルは、該導電性基材とガラス基板との間に該有機薄膜起電力層が存在するように配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の太陽電池は、請求項1又は2において、単位セルの一端側の上部電極が、隣接する単位セルの端部の導電性基材上に重なるように配列されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4の太陽電池は、請求項1ないし3のいずれか1項において、ガラス基板上のすべての単位セルを覆うように封止材料が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明(請求項5)の太陽電池の製造方法は、請求項1ないし4のいずれか1項の太陽電池を製造する方法であって、前記ガラス基板の上に単位セルを順次に、かつ、配列しようとする単位セルの一端側の上部電極が、隣接する単位セルの端部の導電性基材上に重なるように配列する工程を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の太陽電池は、ガラス基板上に複数の有機薄膜単位セルを配列したものであり、安価、軽量で寿命が長い。この太陽電池は、ガラス基板上に単位セルを順次に配列することにより容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る太陽電池の断面図である。
【図2】実施の形態に係る太陽電池の積層方式を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1図及び第2図を参照して第1の実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る太陽電池の単位セル厚み方向の断面図、第2図は単位セル同士の重なり合い状況を模式的に示す斜視図である。
【0021】
第1図の通り、太陽電池1は、透明なガラス基板10と、該ガラス基板10上に配列された複数枚の太陽電池単位セル2とを有する。各単位セル2は、各々の端部同士を重ね合わせるようにして接続されている。単位セル2は、導電性基材3と、該導電性基材3上に積層された有機薄膜起電力層4と、該有機薄膜起電力層4上に積層された上部電極5と、該上部電極5上に積層された補助電極6とを備えている。なお、有機薄膜起電力層4及び上部電極5がガラス基板10と導電性基材3との間に位置している。発電用の光Lはガラス基板10を透過して単位セル2に入射される。
【0022】
1枚の単位セル2の一端側(図の右端側)の上に、隣接する右方の単位セル2の他端(左端側)側が重ね合わされ、各単位セル2の導電性基材3と右側に隣接する単位セル2の上部電極5とが接続され、導通されている。単位セル2,2の端部同士は導電性接着剤によって接続されるのが好ましい。その後、すべての単位セル2を覆うように封止材料で封止して太陽電池モジュールとする。
【0023】
このように構成された太陽電池1にあっては、各単位セル2をガラス基板10の上に順次に配列し、その後封止材料で封止するだけで製造することができ、製造が容易である。
【0024】
太陽電池1を製造するには、ガラス基板10の上にまず第1図の最も左側の単位セル2を重ね合わせ、それに隣接して左側から2枚目の単位セル2をその左端側が1枚目の単位セル2の右端側に重なるようにガラス基板10上に配列し、この重ね合わせ部分同士を好ましくは導電性接着剤で接着する。
【0025】
3枚目以降の単位セル2についても同様に配列する。単位セル2は、ガラス基板10に接着剤や粘着剤で貼り付けられてもよく、単にガラス基板10上に載置されるだけでもよい。その後、すべての単位セル2を封止するように封止材料を設ける。封止材料としては電気絶縁性の合成樹脂フィルムと、金属層との積層フィルムが好適であるが、ガラス板であってもよい。この積層フィルムやガラス板の周縁部は、耐水性の良好な接着剤によって、ガラス基板10の周縁部に接着されることが好ましい。
【0026】
第1図では5枚の単位セル2が示されているが、これに限定されない。出力端子は第1図の最も左側の単位セルの上部電極5と、最も右側の単位セルの導電性基材3からそれぞれ引き出される。
【0027】
ガラス基板10としては、窓ガラス等に用いられるホウ珪酸ガラス、ソーダガラスなどの珪酸系ガラス板が好適であるが、これに限定されない。ガラス基板10の厚さは、1〜10mm特に1〜5mm程度が好適である。ガラス基板10の可視光透過率は80%以上特に90%以上であることが好ましい。
【0028】
次に、単位セルの各部分を構成する材料の好適例及び厚さ等について説明する。
【0029】
[有機薄膜起電力層]
有機薄膜起電力層は、有機半導体により形成される。有機半導体は半導体特性により、p型、n型に分けられる。p型、n型は、電気伝導に寄与するのが、正孔、電子いずれであるかを示しており、材料の電子状態、ドーピング状態、トラップ状態に依存する。したがって、p型、n型は必ずしも明確に分類できない場合があり、同一物質でp型、n型両方の特性を示すものもある。
【0030】
p型半導体の例として、テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポルフィリン等のポルフィリン化合物;フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;ナフタロシアニン化合物;テトラセンやペンタセンのポリアセン;セキシチオフェン等のオリゴチオフェンおよびこれら化合物を骨格として含む誘導体が挙げられる。さらに、ポリ(3−アルキルチオフェン)などを含むポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリトリアリルアミン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール等の高分子等が例示される。
【0031】
n型半導体の例として、フラーレン(C60、C70、C76);オクタアザポルフィリン;上記p型半導体のパーフルオロ体;ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物;及び、これら化合物を骨格として含む誘導体などが挙げられる。
【0032】
少なくともp型の半導体およびn型の半導体が含有されていれば、有機半導体層の具体的な構成は任意である。単層の膜のみによって構成されていてもよく、2以上の積層膜によって構成されていてもよい。例えば、n型の半導体とp型の半導体とを別々の膜に含有させるようにしても良く、n型の半導体とp型の半導体とを同じ膜に含有させても良い。また、n型の半導体及びp型の半導体は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0033】
有機半導体層の具体的な構成例としては、p型半導体とn型半導体が層内で相分離した層(i層)を有するバルクヘテロ接合型、それぞれp型半導体を含む層(p層)とn型半導体を含む層(p層)が界面を有する積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型およびそれらの組合せが挙げられる。これらの中でもバルクへテロ接合型およびバルクへテロ接合型と積層型を組み合わせた(p−i−n接合型)が高い性能を示すことから好ましい。
【0034】
有機半導体層のp層、i層、n層各層の厚みに制限はないが、通常3nm以上、中でも10nm以上、また、通常200nm以下、中でも100nm以下とすることが好ましい。層厚を厚くすることで膜の均一性が高まる傾向にあり、薄くすることで透過率が向上する、直列抵抗が低下する傾向にある。
【0035】
[導電性基材及び上部電極]
導電性基材及び上部電極としては導電性を有する材料により形成することが可能であり、例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属あるいはそれらの合金;酸化インジウムや酸化錫等の金属酸化物、あるいはその合金(ITO);ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子;前記導電性高分子に、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、FeCl等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などのドーパントを含有させたもの;金属粒子、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性粒子をポリマーバインダー等のマトリクスに分散した導電性の複合材料などが挙げられる。なかでも、正孔を捕集する導電性基材又は電極には、Au、ITO等の深い仕事関数を有する材料が好ましい。一方、電子を捕集する導電性基材又は電極には、Alのような浅い仕事関数を有する材料が好ましい。仕事関数を最適化することにより、光吸収により生じた正孔及び電子を良好に捕集する利点がある。
【0036】
少なくとも受光面側の上部電極は、発電のために光透過性を有していることが好ましい。但し、電極が透明でなくても発電性能に著しく悪影響を与えない場合は必ずしも透明でなくてもよい。透明な電極の材料を挙げると、例えば、ITO、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の酸化物;金属薄膜などが挙げられる。また、この際、光の透過率の具体的範囲に制限は無いが、太陽電池素子の発電効率を考慮すると、光学界面での部分反射によるロスを除き、80%以上が好ましい。
【0037】
導電性基材及び上部電極の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0038】
なお、上部電極の形成方法に制限はない。例えば、真空蒸着、スパッタ等のドライプロセスにより形成することができる。また、例えば、導電性インク等を用いたウェットプロセスにより形成することもできる。この際、導電性インクとしては任意のものを使用することができ、例えば、導電性高分子、金属粒子分散液等を用いることができる。
【0039】
さらに、電極は2層以上積層してもよく、表面処理による特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
【0040】
[その他の層]
本発明の太陽電池は、バッファ層など、上記以外の層を備えてもよい。
【0041】
バッファ層は、有機半導体層側に面した電極界面に電気特性等の改良のために設ける層である。例えば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)、酸化モリブデン、フッ化リチウム、2,9ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0042】
1 太陽電池
2 太陽電池単位セル
3 導電性基材
4 有機薄膜起電力層
5 上部電極
6 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ガラス基板上に複数の単位セルが配列された太陽電池であって、
該単位セルは、可撓性を有する導電性基材上に少なくとも有機薄膜起電力層と光透過性の上部電極とが形成されたものであり、単位セルの導電性基材と、隣接する単位セルの上部電極とが導通されることによって該単位セルが直列に接続されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
請求項1において、該単位セルは、該導電性基材とガラス基板との間に該有機薄膜起電力層が存在するように配置されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項3】
請求項1又は2において、単位セルの一端側の上部電極が、隣接する単位セルの端部の導電性基材上に重なるように配列されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、ガラス基板上のすべての単位セルを覆うように封止材料が設けられていることを特徴とする太陽電池。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項の太陽電池を製造する方法であって、
前記ガラス基板の上に単位セルを順次に、かつ、配列しようとする単位セルの一端側の上部電極が、隣接する単位セルの端部の導電性基材上に重なるように配列する工程を有することを特徴とする太陽電池の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate