説明

太陽電池用の導電性スラリーおよびその調製方法

本発明は、約2〜8μmのメディアン径D50を有する一級アルミニウム粉末と、約20〜100nmのメディアン径D50を有する二級粉末と、ガラス粉末と、有機担体と、を含有する太陽電池用の導電性スラリーを開示する。導電性スラリーは、スクリーンを通しての漏れなしで、スクリーン上で安定であり得て、長期間にわたる保管の間、凝集も沈降もない。本発明はさらに、一級アルミニウム粉末と、二級粉末と、ガラス粉末と、有機担体と、を混合して混合物を得る工程と、混合物をボールミルして導電性スラリーを得る工程と、を含む太陽電池用の導電性スラリーの調製方法を開示する。該方法は簡素かつ理解するのに容易であり、産業における大量生産に有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的には太陽電池用の導電性スラリーおよびその調製方法に関連し、具体的には太陽電池用のアルミニウム裏面電界スラリーおよびその調製方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
最近、自然エネルギーとしての太陽光発電がますます注目を集めるようになってきている。従来のシリコンベースの太陽電池は一般的に以下のように製造される。導電性金属粉末と、ガラス粉末と、有機担体とを含有する導電性スラリーを、シリコン基板上にプリントし、ついで、基板を乾燥・焼成して、電極を調製する。通常、シリコン基板の前面電極は負極であり、負極に被覆された導電性スラリーは通常銀導電性スラリーである。シリコン基板の背後電極は正極であり、正極に被覆される導線性スラリーはアルミニウム導電性スラリーである。
【0003】
アルミニウム導電性スラリーは、太陽電池の性能に大きな影響を及ぼす。アルミニウム導電性スラリーに関する研究は、主に以下の側面に焦点が当てられている:(1)光電変換効率を向上させること;(2)アルミニウム膜を焼結した後、いかなるアルミニウムの球(globules)も泡も伴わず、シリコン基板に対する強い接着力を有すること;(3)アルミニウム膜を焼結した後、曲がりを可能な限り少なくすること;(4)太陽電池およびEVA膜の他の構成要素の性能を保証すること。
【0004】
上述の課題を解決するために、太陽電池用のアルミニウム裏面電界スラリーも、その調製方法も、従来技術において提案されている。該方法は、
一定量のガリウム(Ga)、インジウム(In)またはタリウム(Ti)等の機能素子を元の硼ケイ酸鉛のガラス粉末に加え、その混合物を再溶解する工程と、
樹脂をスラリーに加え、アルミニウム膜の導電性を向上させる工程と、
ステアリン酸カルシウム(またはステアリン酸亜鉛)を潤滑剤として用い、スラリーのスクリーンプリント性能を向上させる工程と、
3〜5nmの導電性金属粉で被覆された表面を用いる工程と、
焼結された太陽電池プレートがいかなるアルミニウムの球を有さず、曲がりが少なくなるように、結晶シリコン太陽電池上に、上述の調製されたアルミニウムスラリーをスクリーンプリントする工程と、を含む。また、シリコン−アルミニウム化合物を形成する間、傷が形成されず、アルミニウム膜は滑らかである。単結晶シリコン太陽電池の平均光電変換効率は17.0%以上である。さらに、Ga、InまたはTiなどの機能素子を加えることによって、ガラス粉末の導電性が向上する。それと同時に、ガラス粉末の線膨張係数が変化するので、光電変換効率を向上させ、焼結後のシリコンプレートの曲がり度を低減することに一定の効果がある。
【0005】
それと同時に、合成によって太陽電池用のアルミニウム裏面電界導電性スラリーを調製する方法が従来技術において提案されている。この方法においては、調製されるスラリーは、約0.1〜5.0重量%のインジウム粉末を含有する。鉛を含むまたは含まないガラス粉末が化学的手法によって得られる。上記スラリーを焼結することによって得られる電池の極板は大きな光電変換効率および導電率を有し、被覆はシリコン基板に対する強い接着力を有する。シリコンプレートには、全くまたはほとんど曲がりがない。アルミニウム膜は、アルミニウムの球も泡も伴わない滑らかな表面を有する。
【0006】
しかしながら、上記方法によって調製されたアルミニウム裏面電界導電性スラリーは、プリントされる前にスクリーン上に置かれている間に、スクリーンから漏れることがあり、それが製品の品質に不利な影響を与えることがあり、保管中の凝集や沈降に至り、それゆえに導電性スラリーの塗布に不利かつ深刻な影響を与えることがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の一態様は、スクリーンを通しての漏れがなく、スクリーン上で安定的となり、長期間の保管の間に凝集や沈降を生じない導電性電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様においては、一級アルミニウム粉末と、二級アルミニウム粉末と、ガラス粉末と、有機担体と、を含有し、前記一級アルミニウム粉末のメディアン径D50が約2〜8マイクロメートルであり、前記二級アルミニウム粉末のメディアン径D50が約20〜100nmである、太陽電池用の導電性スラリーを提供する。
【0009】
もう一つの態様においては、約2〜8μmのメディアン径D50を有する一級アルミニウム粉末と、約20〜100nmのメディアン径D50を有する二級アルミニウム粉末と、ガラス粉末と、有機担体と、を混合して、混合物を得る工程と、前記混合物をボールミルして、導電性スラリーを得る工程と、を含む太陽電池用の導電性スラリーの調製方法を提供する。
【0010】
導電性スラリーの調整方法は簡素かつ理解するのに容易であってもよいので、それは産業における大量生産に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のこれらおよび他の態様、解決法および長所は、図面を参照する以下の記述によって、明確およびより容易に理解可能となる。
【0012】
本発明の一態様によれば、一級アルミニウム粉末、二級アルミニウム粉末、ガラス粉末、および有機担体を含有する太陽電池用の導電性スラリーが提供される。ここで、一級アルミニウム粉末のメディアン径D50は約2〜8μmであり、二級アルミニウム粉末のメディアン径D50は約20〜100nmである。上記組成物を含有する導電性スラリーは、スクリーンからの漏れなしに長期間保管され得る。
【0013】
いくつかの態様においては、二級アルミニウム粉末のメディアン径D50は約45〜80nmである。導電性スラリーに太陽電池においてより良い役割を果たさせるために、本発明のいくつかの態様においては、約5〜100m/g、より具体的には約25〜85m/gのBET表面積を有する二級アルミニウム粉末が用いられる。それと同時に、太陽電池の電極材料として、不純物が光電変換効率に大きな影響を及ぼす。不純物の不利な影響を低減するために、二級アルミニウム粉末の純度は約99.96%超過である。そのような二級アルミニウム粉末は市販のルートで購入されてもよく、それは、たとえば、SINONANO Companyによって製造された、約50nmのメディアン径D50を有する二級アルミニウム粉末であってもよい。
【0014】
本発明の態様における一級アルミニウム粉末のメディアン径D50は広範囲にわたって変化してもよく、たとえば、メディアン径D50が約2.0〜8.0μm、より具体的には約3.5〜7.0μmであってもよい。そのような一級アルミニウム粉末は市販のルートで購入されてもよく、たとえば、河南省のYuanyang Companyによって製造された約5.0μmのメディアン径D50を有する球状のアルミニウム粉末であってもよい。
【0015】
上記組成物を有する導電性スラリーは良好なチクソトロピー性および加工性を有してもよく、スクリーン上に静置された際にスクリーンを通して漏れにくい。完成した導電性スラリーは長期間の保管の間の凝集にも沈降にも至らない。それと同時に、本発明の発明者は、焼結された後の導電性スラリーが大きく低減された平方抵抗を伴うアルミニウム裏面電界を形成するので、シリコン太陽電池のオーム直列抵抗が低減され、曲線因子が増加し得て、それゆえに太陽電池の光電変換効率がさらに大きく向上し、そこで単結晶シリコン電池の平均光電変換効率が17.5%を超え得ることを見出した。
【0016】
いくつかの態様によれば、上述のガラス粉末は、PbO−B−SiO系、PbO−B−Al系、PbO−B−ZnO系、Bi−B−SiO系、またはBi−B−ZnO系等を含有し得る。環境基準を満たすため、および鉛の使用を最小限にするために、いくつかの態様においては、ガラス粉末はBi−B−SiO系であってもよい。本発明の態様におけるガラス粉末の直径には特定の要件はなく、当業者に知られている直径を有するいかなる適切なガラス粉末も使用され得る。いくつかの態様によれば、ガラス粉末のメディアン径D50は約0.05〜6.0μm、より具体的には約0.2〜3.5μmであってもよく、ガラス粉末は市販のルートで購入されてもよく、たとえば、Nanfang Ceramic Glaze Companyによって製造された約2.0μmのメディアン径D50を有するガラス粉末であってもよい。上記の範囲内のメディアン径D50を有するガラス粉末が接着力をさらに向上させ、電池の内部抵抗をさらに低減し得る。
【0017】
本発明のいくつかの態様においては、ガラス粉末のガラス転移点は、ガラス粉末が溶けて流れ始める温度である。太陽電池の導電性スラリー中のガラス粉末のガラス転移点は広範囲にわたり得る。いくつかの態様によれば、ガラス粉末のガラス転移点は約630〜730℃、より具体的には約650〜700℃であってもよい。本発明者は、太陽電池の導電性スラリーにおいては、ガラス粉末のガラス転移点が上述の範囲内である時には、それは光電変換効率だけではなく、焼結されたアルミニウム膜のシリコン基板に対する接着力を向上させるためにも有利であり得るということを見出した。
【0018】
ガラス粉末に太陽電池の導電性スラリーにおいてより良い役割を果たさせるために、本発明のいくつかの態様においては、ガラス粉末は、ビスマス酸化物、三酸化二ホウ素、二酸化ケイ素、カルシウム酸化物、アルミナ、亜鉛酸化物、マグネシア、ジルコニア、およびストロンチアを含有する。ガラス粉末の総重量を基準として、ビスマス酸化物の含有率は約20〜75重量%であってもよく、より好ましいのは約30〜65重量%であり、三酸化二ホウ素の含有率は約10〜50重量%であってもよく、より好ましいのは約20〜45重量%であり、二酸化ケイ素の含有率は約2.0〜10重量%であってもよく、よりこのましいのは約2.5〜8重量%であり、カルシウム酸化物の含有率は約2.0〜8.0重量%であってもよく、より好ましいのは約2.5〜5.0重量%であり、アルミナの含有率は約0.5〜4.5重量%であってもよく、より好ましいのは1.0〜4.0重量%であり、亜鉛酸化物の含有率は約0〜5.0重量%であってもよく、より好ましいのは約0.2〜4.0重量%であり、マグネシアの含有率は0〜2.0重量%であってもよく、ジルコニアの含有率は約0〜3.0重量%であってもよく、より好ましいのは約0〜2.0重量%であり、ストロンチアの含有率は0〜2.0重量%であってもよい。ガラス粉末の上述の組成物の含有率を変化させることによって、ガラス粉末のガラス転移点は調節され得る。たとえば、ガラス粉末の組成物の含有率を調節することによって調製が実行され、ガラス粉末を焼成することによってそのように調製されるガラス粉末のガラス転移点が測定され、ついで、ガラス粉末の組成物の含有率が再度調節され、ガラス転移点が再度測定され、ガラス転移点が要求を満たすまで上述のステップが繰り返される。ガラス粉末のガラス転移点の測定方法は当業者によく知られる方法が用いられてもよく、たとえば、シリコンカーバイドロッドを用いてガラス粉末を炉内に入れるステップと、ガラス粉末を加熱して、ガラス粉末が溶けて流れ始める温度を記録するステップとを含んでもよい。そこにおいて、記録された温度がガラス粉末のガラス転移点である。
【0019】
上述のガラス粉末は市販のルートで購入されてもよいし、発明者によって調製されてもよい。たとえば、含有率が上述のそれぞれの範囲内にある上述のさまざまな酸化物がそれぞれ均一に混合され、ついで、得られた混合物がセラミック製のるつぼに入れられる。るつぼは、シリコンカーバイドロッドによって炉内に入れられ、500〜600℃に予熱され、500〜600℃に0.5時間維持された。ついで、混合物は900〜1200℃にさらに熱せられ、0.5〜1時間溶かされる。ついで、混合物は水で急冷され、篩にかけられ、ガラス球を得る。ガラス球はボールミルタンク内に置かれる。ZrO球(ball):ガラス球(globules):脱イオン水=2:1:0.5である重量比に従い、毎分80〜120回転のタンクの回転速度において、ガラス球が72時間にわたって粉砕され、ついで、篩にかけられ、乾燥され、上述の要件を満たすガラス粉末を得る。ガラス粉末のメディアン径D50が0.2〜3.5μmの範囲内にあり、そのガラス転移点が630〜730℃の範囲内にあることを特徴とする。
【0020】
上述の得られたガラス粉末のメディアン径は、たとえばBT−9300レーザー粒径分析器のような既知の装置および方法を用いて測定され得る。
【0021】
本発明の一態様によれば、上述の有機担体は、エチルセルロース、溶媒、および変成フェノール樹脂または変成エポキシ樹脂を含有する。前記変成フェノール樹脂は、たとえば、Guandong Deqing Jixin Synthetic Resin Companyによって製造されたM210樹脂のようなロジン変成フェノール樹脂であってもよく、または、たとえば、Shanghai Nanda Chemical Companyによって製造された2402樹脂のような4−tert−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂であってもよい。前記変成エポキシ樹脂は、たとえば、Jiangsu Sanmu Groupによって製造されたSM618またはSM826のようなビスフェノールAエポキシ樹脂であってもよい。上述の有機担体のそれぞれの組成物の含有率は広範囲にわたって変化し得る。本発明の一態様においては、有機担体の総重量を基準として、前記エチルセルロースの含有率は約3.0〜15重量%であってもよく、前記変成フェノール樹脂または変成エポキシ樹脂の含有率は約0〜8.0重量%であってもよく、そして前記溶媒の含有率は約80〜97重量%であってもよい。本発明の他の態様においては、前記エチルセルロースは約5.0〜10重量%であってもよく、前記変成フェノール樹脂または変成エポキシ樹脂は約0〜5.0重量%であってもよく、そして前記溶媒は約85〜95重量%であってもよい。
【0022】
本発明の態様の有機担体においては、溶媒は、いかなる種類の既知の有機溶媒であってもよい。本発明の一態様においては、溶媒は、テルピネオール、フタル酸ジ−n−ブチル(DBP)、ブチルカルビトール、テレピン、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、およびエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートのうち少なくとも2つからなる混合溶媒である。前記混合溶媒においては、混合溶媒の総重量が上述の範囲内である限り、それぞれの組成物の含有率はお互いに関連性を有しない。上述の溶媒は市販のルートで購入されてもよい。
【0023】
上述の有機担体は以下の方法によって調製されてもよい。エチルセルロースと、変成フェノール樹脂または変成エポキシ樹脂と、溶媒とを50〜80℃の温度で混合し、エチルセルロースおよび変成フェノール樹脂または変成エポキシ樹脂を十分に溶解させ、透明かつ均一な有機担体を得るために均一に混合する。
【0024】
本発明の態様によれば、少量の二級アルミニウム粉末は導電性スラリーのチクソトロピー性を向上させ、スクリーンを通してのスラリーの漏れをある程度低減し得る。本発明の一態様においては、導電性スラリーの総重量を基準として、一級アルミニウム粉末は約15〜50重量%であってもよく、二級アルミニウム粉末は約0.5〜40重量%であってもよく、ガラス粉末は約0.2〜15重量%であってもよく、および有機担体は約10〜35重量%であってもよい。本発明の他の態様においては、一級アルミニウム粉末は約30〜45重量%であってもよく、二級アルミニウム粉末は約10〜35重量%であってもよく、ガラス粉末は約2〜8重量%であってもよく、および有機担体は約15〜32重量%であってもよい。
【0025】
本発明のもう一つの態様においては、太陽電池用の導電性スラリーの調製方法が提供され、該方法は、上述の一級アルミニウム粉末と、二級アルミニウム粉末と、ガラス粉末と、有機担体とを混合して混合物を得るステップと、該混合物をボールミルするステップとを含む。
【0026】
本発明の一態様においては、一級アルミニウム粉末と二級アルミニウム粉末とが最初に混合され、混合アルミニウム粉末が得られる。ついで、混合アルミニウム粉末がガラス粉末および有機担体と混合されて混合物が得られ、最後に該混合物がボールミルされる。
【0027】
本発明の一態様においては、有機担体が高速攪拌機のステンレス鋼製の容器に入れられ、攪拌中にガラス粉末が容器内に加えられ、混合物が均一になるまで攪拌が続けられる。ついで、混合アルミニウム粉末が、有機担体とガラス粉末との混合物に、2〜3回加えられる。混合アルミニウム粉末を加えた後は毎回、混合物が均一に攪拌され、ついで、混合アルミニウム粉末がその次のために加えられる。全ての混合アルミニウム粉末が加えられた後で、混合物が高速で攪拌される。最後に、該混合物がφ150の3つのローラーを有するミ研磨機によって15〜20回研磨され、太陽電池用の導電性スラリーが得られる。
【0028】
導電性スラリーから上述の太陽シリコン基板を調製する方法も提供される。該方法は以下のステップを含む。単結晶シリコンプレートの一表面に上記の得られた導電性アルミニウムスラリーを被覆するステップ。ここで、単結晶シリコンは125×125mmの寸法を有し、エッチング前は200μmの厚さ、プリント前は180μmの厚さを有し、スクリーンのメッシュは280〜300であってもよく、プリントされたスラリーは0.9〜1.1gであってもよく、乾燥温度は250℃であってもよく、乾燥時間は5分であってもよい。ついで、単結晶シリコンプレートのもう一方の表面に銀ペーストを被覆し、被覆された銀ペーストを乾燥させた後、トンネル炉を用いてシリコンプレートを焼結するステップ。ここで、焼結温度は約810〜940℃であってもよく、分布勾配を示してもよく、焼結時間は2分であってもよく、ピーク温度は約2秒間維持されてもよい。このようにして太陽電池シリコンプレートを得る。
【0029】
本発明の態様に係る太陽電池用の導電性スラリーは、スクリーン上に静置された時にスクリーンを通しての漏れを有さないことが可能であり、凝集も沈降もなく長期間の保管に適し得る。それと同時に、該導電性スラリーから調製された太陽電池はよりよい光電変換効率を有する。
【実施例】
【0030】
本発明は以下の実施例を参照して、より詳細に説明される。
【0031】
(実施例1)
1.有機担体の調製
有機担体の総重量を基準として、39重量部のテルピネオールと45重量部のフタル酸ジ−n−ブチル(DBP)とが均一に混合された。ついで、16重量部のエチルセルロースが上記混合溶媒に加えられ、最終的に全溶液が45℃まで加熱されて、上記組成物は十分に溶解された。ついで、溶液が均一に混合された。このようにして均一かつ透明な有機担体A1を得た。
【0032】
2.太陽電池用のスラリーの調製
導電性スラリーの総重量を基準として、30重量部の有機担体A1が高速攪拌機のステンレス鋼製の容器内に入れられた。攪拌中に4重量部のガラス粉末(Guangdong Foshan Nanfang Ceramic Glaze Companyによって製造された、5μmのメディアン径D50と約750℃のガラス転移点とを有するガラス粉末)が加えられた。ついで、500ラジアン/分の回転速度で約10分間、高速攪拌機によって該混合物が攪拌された。
【0033】
52重量部の一級アルミニウム粉末(Henan Yuanyang Companyによって製造された高純度のアルミニウム粉末で、約3μmのメディアン径D50を有する)と、14重量部の二級アルミニウム粉末(SINONANO Companyによって製造された、約30nmのメディアン径D50および約110m/gのBET表面積を有するアルミニウム粉末)とが加えられた。
【0034】
該混合物は60分間攪拌され、ついで、3つのφ150のローラーを有する研磨機を用いて15回研磨された。このようにして、太陽電池用の導電性スラリーS1を得た。
【0035】
(実施例2)
1.有機担体の調製
有機担体の総重量を基準として、42重量部のブチルカルビトールと40重量部のグリコールブチルエーテルとが均一に混合された。ついで、12重量部のエチルセルロースと6重量部のp−tert−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂(たとえば、Shanghai Nanda Chemical Companyによって製造された2402型樹脂)とが上記混合溶媒内で溶解され、得られた混合物は最終的に45℃まで加熱されて、上記組成物は溶液内で十分に溶解され、該溶液は均一に攪拌された。このようにして均一かつ透明な有機担体A2を得た。
【0036】
2.太陽電池用の導電性スラリーの調製
太陽電池用に調製された導電性スラリーの総重量を基準として、20重量部の有機担体A2が高速攪拌機のステンレス鋼製の容器内に入れられた。攪拌中に10重量部のガラス粉末(Guangdong Foshan Nanfang Ceramic Glaze Companyによって製造された、4μmのメディアン径D50と約800℃のガラス転移点を有するガラス粉末)が加えられた。ついで、500ラジアン/分の回転速度で約10分間、高速攪拌機によって該混合物が攪拌された。
【0037】
40重量部の一級アルミニウム粉末(Henan Yuanyang Companyによって製造された高純度のアルミニウム粉末で、約6μmのメディアン径D50を有する)と、30重量部の二級アルミニウム粉末(SINONANO Companyによって製造された、約90nmのメディアン径D50および約20m/gのBET表面積を有するアルミニウム粉末)とが加えられた。
【0038】
該混合物は60分間攪拌され、3つのφ150のローラーを有する研磨機を用いて15回研磨された。このようにして、太陽電池用の導電性スラリーS2を得た。
【0039】
(実施例3)
1.有機担体の調製
有機担体の総重量を基準として、36重量部のテルピネオールと35重量部のフタル酸ジ−n−ブチル(DBP)と、23重量部のエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとが均一に混合された。ついで、4重量部のエチルセルロースと2重量部のロジン変成フェノール樹脂(たとえば、Guangdong Deqingjixin Synthetic Resin Companyによって製造されたM210樹脂)とが上記混合溶媒に加えられた。全溶液は最終的に45℃まで加熱されて、上記組成物は十分に溶解された。ついで、該溶液が均一に攪拌された。このようにして均一かつ透明な有機担体A3を得た。
【0040】
2.太陽電池用の導電性スラリーの調製
太陽電池用に調製された導電性スラリーの総重量を基準として、30重量部の有機担体A3が高速攪拌機のステンレス鋼製の容器内に入れられた。攪拌中に、6重量部のガラス粉末(Guangdong Foshan Nanfang Ceramic Glaze Companyによって製造された、3μmのメディアン径D50と約600℃のガラス転移点とを有するガラス粉末)が加えられた。ついで、500ラジアン/分の回転速度で約10分間、高速攪拌機によって混合物が攪拌された。
【0041】
44重量部の一級アルミニウム粉末(Henan Yuanyang Companyによって製造された高純度のアルミニウム粉末で、約5μmのメディアン径D50を有する)と、20重量部の二級アルミニウム粉末(SINONANO Companyによって製造された、約60nmのメディアン径D50および約40m/gのBET表面積を有するアルミニウム粉末)とが加えられた。
【0042】
該混合物は60分間攪拌され、3つのφ150のローラーを有する研磨機を用いて15回研磨された。このようにして、太陽電池用の導電性スラリーS3を得た。
【0043】
(実施例4)
1.有機担体の調製
有機担体の総重量を基準として、36重量部のテレピンと、30重量部のフタル酸ジ−n−ブチル(DBP)と、29重量部のエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとが均一に混合された。ついで、4重量部のエチルセルロースと1重量部のビスフェノールAエポキシ樹脂(たとえば、Jiangsu Sanmu Corporationによって製造されたSM618樹脂)とが上記混合溶媒に加えられた。全溶液は最終的に45℃まで加熱されて、上記組成物は十分に溶解された。ついで、該溶液が均一に攪拌された。このようにして均一かつ透明な有機担体A4を得た。
【0044】
2.太陽電池用の導電性スラリーの調製
太陽電池用に調製された導電性スラリーの総重量を基準として、12重量部の有機担体A4が高速攪拌機のステンレス鋼製の容器内に入れられた。攪拌中に、5重量部のガラス粉末(Guandong Foshan Nanfang Ceramic Glaze Companyによって製造された、1μmのメディアン径D50と約620℃のガラス転移点を有するガラス粉末)が加えられた。ついで、500ラジアン/分の回転速度で約10分間、高速攪拌機によって該混合物が攪拌された。
【0045】
49重量部の一級アルミニウム粉末(Henan Yuanyang Companyによって製造された高純度のアルミニウム粉末で、約4μmのメディアン径D50を有する)と、34重量部の二級アルミニウム粉末(SINONANO Companyによって製造された、約50nmのメディアン径D50および約60m/gのBET表面積を有するアルミニウム粉末)とが加えられた。
【0046】
該混合物は60分間攪拌され、3つのφ150のローラーを有する研磨機を用いて15回研磨された。このようにして、太陽電池用の導電性スラリーS4を得た。
【0047】
(実施例5)
太陽電池の導電性スラリーの調製方法は実施例3と同様であり、唯一の相違はガラス粉末が自己調整されたことであり、該調製方法が以下に記載される。
【0048】
ガラス粉末の総重量を基準として、55重量部のビスマス酸化物、30重量部の三酸化二ホウ素、6重量部の二酸化ケイ素、4重量部のカルシウム酸化物、1重量部のアルミナ、1重量部の亜鉛酸化物、1重量部のマグネシア、1重量部のジルコニア、および1重量部のストロンチアが高速攪拌機に加えられ、約10分間混合された。
【0049】
得られた混合物は次にセラミック製のるつぼに加えられ、るつぼがシリコンカーバイドロッドによって炉内に入れられた。炉は550℃にまで予熱され、その温度は0.5時間維持された。温度が1000℃まで上昇し、得られた混合物が1時間にわたって溶解された後、該混合物は水で急冷され、篩にかけられ、得られたガラス球がボールミルの容器に入れられた。ジルコニア球:ガラス球:脱イオン水=2:1:0.5の重量比に従い、100ラジアン/分の容器の回転速度で、球(globules)は72時間にわたってボールミルされ、ついで、篩にかけられ、乾燥され、ガラス粉末B1を得た。
【0050】
測定されることによって、ガラス粉末B1のメディアン径は約4μmであり、ガラス転移点は約650℃であった。
【0051】
最終的に、太陽電池用の導電性スラリーS5が調製された。
【0052】
(実施例6)
太陽電池の導電性スラリーの調製方法は実施例4と同様であるが、唯一の相違はガラス粉末が出願人自身によって調整されたことであり、該調製方法が以下に記載される。
【0053】
ガラス粉末の総重量を基準として、45重量部のビスマス酸化物、30重量部の三酸化二ホウ素、7重量部の二酸化ケイ素、6重量部のカルシウム酸化物、5重量部のアルミナ、3重量部の亜鉛酸化物、1重量部のマグネシア、2重量部のジルコニア、および1重量部のストロンチアが高速攪拌機に加えられ、約10分間混合された。
【0054】
得られた混合物は、ついで、セラミック製のるつぼに加えられ、るつぼはシリコンカーバイドロッドによって炉内に入れられた。炉は550℃にまで予熱され、その温度は0.5時間維持された。温度が1000℃まで上昇し、得られた混合物が1時間にわたって溶解された後、該混合物は水で急冷され、篩にかけられ、得られたガラス球がボールミルの容器に入れられた。ジルコニア球:ガラス球:脱イオン水=2:1:0.5の重量比に従い、100ラジアン/分の容器の回転速度で、球(globules)は72時間にわたってボールミルされ、ついで、篩にかけられ、乾燥されて、ガラス粉末B2を得た。
【0055】
測定されることによって、ガラス粉末B2のメディアン径は約2μmであり、ガラス転移点は約700℃であった。
【0056】
最終的に、太陽電池用の導電性スラリーS6が調製された。
【0057】
(実施例7)
太陽電池用の導電性スラリーの調製方法は実施例5と同様であり、相違は、有機担体とガラス粉末とが混合され、10分間攪拌されたことである。
【0058】
他の容器内で、一級アルミニウム粉末と二級アルミニウム粉末とが混合され、30分間にわたって攪拌され、混合アルミニウム粉末を得た。
【0059】
有機担体とガラス粉末とが攪拌されるという条件下で、混合アルミニウム粉末は平均して3つの部分に分割された。アルミニウム粉末の3つの部分は、2分間隔で、混合中の有機担体およびガラス粉末に、別々に加えられた。
【0060】
最終的に、太陽電池用の導電性スラリーS7が得られた。
【0061】
(比較例1)
比較例1の太陽電池用の導電性スラリーの調製方法は実施例5と同様であるが、相違は、一級アルミニウム粉末のメディアン径D50が約5μmであり、二級アルミニウム粉末のメディアン径D50が約1μmであることである。
【0062】
最終的に、太陽電池用の導電性スラリーD1が調製された。
【0063】
(比較例2)
比較例2の太陽電池用の導電性スラリーの調製方法は実施例5と同様であるが、唯一の相違は二級アルミニウム粉末が含有されていなかったことであり、一級アルミニウム粉末の含有率は64重量部であった。
【0064】
最終的に、太陽電池用の導電性スラリーD2が調製された。
【0065】
(性能測定)
導電性スラリーS1〜S7、D1およびD2に対して、以下のような性能測定が実行された。
【0066】
1.スラリーの粘性
GB/T17473.5−1998の方法に従い、25℃で、75ラジアン/分の速度で、NDJ−79回転粘度計を用いて測定が実行された。
【0067】
2.保管安定性
導電性スラリーが封止され、25℃で保管された。3ヶ月後、沈降があるかどうかを調べるために、導電性スラリーの下部における粘度が測定され、アルミニウム粉末が観察された。
【0068】
3.スクリーンを通っての漏れ
280メッシュを有する金属スクリーン上に導電性スラリーが均一に広げられた。スラリーの厚さは20mmまでに維持された。ついで、スラリーが5分間静置された。漏れがあるかどうかを調べるために、スクリーンの裏面が観察された。
【0069】
4.外観
スクリーンの痕があるかどうかを調べるために、アルミニウム膜の表面が観察された。
【0070】
5.接着力
アルミニウム膜が25℃で7日間、流水中に置かれた。ついで、亀裂があるかどうかを調べるためにアルミニウム膜が確認された。
【0071】
6.光電変換効率
上述の得られた導電性アルミニウムスラリーが製造ライン上で測定された。単結晶シリコンプレートは125×125mmの寸法を有し、腐食前は約200μmの厚さを有し、プリントされる前は約180μmの厚さを有した。スクリーンのメッシュ数は280〜300であった。それぞれのプレートにプリントされたスラリーの重量は約0.9〜1.1gであった。約5分間にわたって約250℃の温度で乾燥が行われた。シリコンプレートのもう一方の表面に前面銀スラリーが被覆された。ついで、約810〜940℃の焼結温度で、被覆されたプレートがトンネル炉内で乾燥され、焼結された。温度は分布勾配を示す。焼結時間は約2分であった。ピーク温度は約2秒間にわたって維持された。ついで、焼結されたプレートが取り出され、測定された。
【0072】
電池の極板の変換効率は、太陽電池プレート用の単一閃光刺激装置(single flash stimulator)のような特別な測定装置によって測定された。測定条件は、標準測定条件(STC)であった。
光強度:1000W/m
スペクトル:AM1.5
温度:25℃
測定方法はIEC904−1に従った。
測定結果を表1に示した。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から以下のことが理解され得る。スクリーンプリントの間、本発明によって調製されたスラリーにはスクリーンを通しての漏れはなかった。導電性スラリーの保管安定性は大きい。完成されたアルミニウムスラリーの3ヶ月間の保管の間、重大な沈降は起こっていない。単結晶太陽電池プレート上にアルミニウムスラリーが被覆し、約810〜940℃の焼結温度、約2分間の焼結時間、ピーク温度で約2秒間維持されると、得られたアルミニウム膜は良好な表面条件を有する。用いられたガラス粉末が630〜730℃のガラス転移点を有する時は特に、アルミニウム膜の接着力が大きく、表面は球(globules)もなく滑らかであり、アルミニウム膜に亀裂はなく、単結晶電池は17.50%を超える平均光電変換効率を有する。
【0075】
説明のための態様が示され、述べられてきたが、本発明の精神および原理から外れることなく、請求項およびそれと同等なものの範疇にある全ての変形、代替、および修正が実施態様においてなされ得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0076】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年5月27日に中華人民共和国国家知識産権局に出願された中国特許出願番号第200910107759.9号の優先権および利益を主張し、その内容の全てが参照によって本明細書に取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一級アルミニウム粉末と、二級アルミニウム粉末と、ガラス粉末と、有機担体と、を含有し、
前記一級アルミニウム粉末のメディアン径D50が約2〜8μmであり、
前記二級アルミニウム粉末のメディアン径D50が約20〜100nmである、
ことを特徴とする太陽電池用の導電性スラリー。
【請求項2】
前記二級アルミニウム粉末のBET表面積が約5〜100m/gである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用の導電性スラリー。
【請求項3】
前記一級アルミニウム粉末の前記メディアン径D50が約3.5〜7μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用の導電性スラリー。
【請求項4】
前記ガラス粉末がBi−B−SiO系であり、前記ガラス粉末のメディアン径D50が約0.05〜6.0μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用の導電性スラリー。
【請求項5】
前記ガラス粉末のガラス転移点が約630〜730℃である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用の導電性スラリー。
【請求項6】
前記ガラス粉末の総重量を基準として、前記ガラス粉末が、約20〜75重量%のビスマス酸化物と、約10〜50重量%の三酸化二ホウ素と、約2.0〜10重量%の二酸化ケイ素と、約2.0〜8.0重量%のカルシウム酸化物と、約0.5〜4.5重量%のアルミナと、約0〜5.0重量%の亜鉛酸化物と、約0〜2.0重量%のマグネシアと、約0〜3.0重量%のジルコニアと、約0〜2.0重量%のストロンチアと、を含有する、
ことを特徴とする請求項1、4、または5に記載の太陽電池用の導電性スラリー。
【請求項7】
前記有機担体が、エチルセルロースと、溶媒と、変性フェノール樹脂または変性エポキシ樹脂と、を含有し、
前記有機担体の総重量を基準として、前記エチルセルロースが約3.0〜15重量%であり、前記変性フェノールホルムアルデヒド樹脂または変性エポキシが約0〜8.0重量%であり、前記溶媒が約80〜97重量%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用の導電性スラリー。
【請求項8】
前記導電性スラリーの総重量を基準として、前記一級アルミニウム粉末は約15〜50重量%であり、前記二級アルミニウム粉末は約0.5〜40重量%であり、前記ガラス粉末は約0.2〜15重量%であり、前記有機担体は約10〜35重量%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用の導電性スラリー。
【請求項9】
約2〜8μmのメディアン径D50を有する一級アルミニウム粉末と、約20〜100nmのメディアン径D50を有する二級アルミニウム粉末と、ガラス粉末と、有機担体と、を混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物をボールミルして、前記導電性スラリーを得る工程と、
を含む、太陽電池用の導電性スラリーの調製方法。
【請求項10】
最初に、前記一級アルミニウム粉末と前記二級アルミニウム粉末とが混合されて混合アルミニウム粉末を得て、ついで、前記混合アルミニウム粉末が前記ガラス粉末および前記有機担体と混合されて前記混合物を得て、最終的に、前記混合物がボールミルされる、
ことを特徴とする請求項9に記載の太陽電池用の導電性スラリーの調製方法。

【公表番号】特表2012−527739(P2012−527739A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512186(P2012−512186)
【出願日】平成22年5月8日(2010.5.8)
【国際出願番号】PCT/CN2010/072545
【国際公開番号】WO2010/135950
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(505327398)ビーワイディー カンパニー リミテッド (52)
【氏名又は名称原語表記】BYD COMPANY LIMITED
【Fターム(参考)】