説明

太陽電池用バックシート、太陽電池用積層体及び太陽電池モジュール並びにそれらの製造方法

【課題】封止材との密着力が良好である太陽電池用バックシートの提供。
【解決手段】基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の表面側に配置された、白色顔料とバインダーを含む白色層とを有し、前記バインダーが高分子樹脂とタッキファイヤーを含むことを特徴とする太陽電池用バックシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用バックシート、太陽電池用積層体及び太陽電池モジュール並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、発電時に二酸化炭素の排出がなく環境負荷が小さい発電方式であり、近年急速に普及が進んでいる。
太陽電池モジュールは、通常、太陽光が入射する側のオモテ面ガラスと、太陽光が入射する側とは反対側(裏面側)に配置される、いわゆるバックシート(裏面保護シートなどとも呼ばれる)との間に、太陽電池セルが挟まれた構造を有しており、オモテ面ガラスと太陽電池セルとの間、及び太陽電池セルとバックシートとの間は、それぞれEVA(エチレン−ビニルアセテート)樹脂などの封止材で封止されている。
【0003】
太陽電池モジュールは、屋外をはじめとする苛酷な環境において長期間使用するため、耐湿熱性、耐候性において高い信頼性が求められている。バックシートは、太陽電池モジュールの裏面からの水分の浸入を防止する働きを有するもので、従来はガラスやフッ素樹脂等が用いられていたが、近年では、コストの観点からポリエステルシートが用いられるようになってきている。そして、バックシートは、単なる単層のポリエステルシートからなるポリマーシートではなく、ポリエステルシートを基材フィルムとして用いて以下に示すような種々の機能が付与された単層または複数層のポリマーシートとする場合がある。
【0004】
前記機能として、特に、バックシートに酸化チタン等の白色顔料である無機微粒子を添加し、光反射性能を持たせたものが要求されている。これは、モジュールのオモテ面から入射した太陽光のうち、セルを素通りした光を乱反射して、セルに戻すことで発電効率を上げるためである。この点について、白色無機微粒子が添加された白色ポリエチレンテレフタレートフィルムの例が開示されている(例えば、特許文献1および2参照)。また、白色顔料を含有する白色インキ層を有する裏面保護シートの例も開示されている(例えば、特許文献3参照)。また、バックシートに耐可水分解性などの機能を付与する耐候性層を設ける例も知られている(特許文献2および3参照)。
【0005】
しかし、これらのポリマーシートであるバックシートは、EVAなどの封止材との間の密着性が不十分であり、長期間運転したときに封止材からのバックシートの剥がれが生じて水分が侵入してしまう問題が知られている(特許文献1参照)。封止材からのバックシートの剥がれが生じてしまうと、バックシートに耐候性層が積層されていてもそもそも性能を発揮し得ないため、ポリマーシートであるバックシートの分野では耐候性層自体の性能よりも、結果としてバックシートとEVA封止材との間の強固な接着が維持されることが耐候性の観点からは第一に求められている。
【0006】
この問題に対し、バックシートとEVA封止材との間の強固な接着を得るために、バックシートの最表層に易接着性層を設ける方法が知られている。例えば特許文献1には、白色のポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、スチレン・オレフィン共重合体樹脂を有機溶剤に希釈して塗布した形成した熱接着層(易接着層とも呼ばれる)を設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−060218号公報
【特許文献2】特開2002−100788号公報
【特許文献3】特開2006−210557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らが特許文献1〜3に記載の太陽電池バックシートについて、封止材として用いられるEVAシートとの密着力を検討したところ、そもそも密着力が不十分であることがわかった。
発明が解決しようとする課題は、封止材との密着力が良好である太陽電池用保護シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来、低分子化合物をバックシートに添加すると、太陽電池用バックシートを太陽電池モジュールに貼り付けたときに、一般的に耐久性にマイナスの影響を与えると考えられていた。そのため、バックシートの最外層には低分子化合物の含有量を減らすことが一般的に検討されていた。
これに対し、本発明者らが上記課題を解決することを目的として鋭意検討した結果、白色層と封止材の間に別途に易接着層を設けず、白色顔料を含む白色層に低分子化合物であるタッキファイヤーを添加することで、バックシートの最外層である白色層とEVAなどの封止材の密着力が良好となることを見出すに至った。
すなわち、前記課題を解決するための具体的手段である本発明の構成は以下のとおりである。
【0010】
[1] 基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の表面側に配置された、白色顔料とバインダーを含む白色層とを有し、前記バインダーが高分子樹脂とタッキファイヤーを含むことを特徴とする太陽電池用バックシート。
[2] 前記白色顔料が酸化チタン微粒子であることを特徴とする[1]に記載の太陽電池用バックシート。
[3] 前記白色層中の前記白色顔料と前記バインダーとの体積分率が、30:70〜80:20の範囲であることを特徴とする[1]または[2]に記載の太陽電池用バックシート。
[4] 前記バインダー中において、前記高分子樹脂に対する前記タッキファイヤーの含有量が1〜30質量%であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[5] 前記バインダー中の前記高分子樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[6] 前記バインダー中の前記高分子樹脂の最低造膜温度が25℃以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[7] 前記タッキファイヤーがロジン誘導体からなることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[8] 前記タッキファイヤーの分子量が200〜1000であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[9] 基材フィルム上の少なくとも一方の表面側に、白色顔料とバインダーを含む白色層形成用組成物を積層して白色層を形成する工程を含み、前記白色層形成用組成物の前記バインダーが高分子樹脂とタッキファイヤーとを含有することを特徴とする太陽電池用バックシートの製造方法。
[10] 前記白色層形成用組成物が白色顔料とバインダーを含む樹脂エマルションの水性塗料である白色層用塗布液であり、該白色層用塗布液を基材フィルムまたは該基材フィルム上に任意に設けられていてもよいその他の層上に塗布する工程を含むことを特徴とする[9]に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
[11] 前記バインダー中の前記高分子樹脂の最低造膜温度が25℃以上であることを特徴とする[9]または[10]に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
[12] [9]〜[11]のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシートの製造方法で製造されたことを特徴とする太陽電池用バックシート。
[13] [1]〜[8]および[12]のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシートと、該太陽電池用保護シートの少なくとも前記白色層側の面に直接接着されており、かつ、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むポリマー層と、を有することを特徴とする太陽電池用積層体。
[14] 太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、太陽電池素子と、前記太陽電池素子を封止する封止材と、前記封止材の前記フロント基板とは反対側に配置され、前記封止材と接着する太陽電池用バックシートとを有し、前記太陽電池用バックシートが[1]〜[8]および[12]のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシートを含み、かつ、前記太陽電池用バックシートの前記白色層が前記封止材と直接接着していることを特徴とする太陽電池モジュール。
[15] 太陽電池素子と、該太陽電池素子を封止材により封止する工程と、前記封止材の一方の面に太陽光が入射する側の透明性のフロント基板を接着する工程と、前記封止材の前記フロント基板とは反対側に[1]〜[8]および[12]のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシートを接着する工程を有し、前記太陽電池用バックシートの前記白色層と前記封止材とを直接接触させて180℃以下の温度で接着させる工程を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、封止材との密着力が良好である太陽電池用バックシートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの構成の一例を概略的に示す断面概略図である。
【図2】本発明の太陽電池用バックシートの構成の一例を概略的に示す断面概略図である。
【図3】本発明の太陽電池用バックシートの構成の他の一例を概略的に示す断面概略図である。
【図4】本発明の太陽電池用バックシートの構成の他の一例を概略的に示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の太陽電池用バックシートやそれに用いる材料などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[太陽電池用バックシート]
本発明の太陽電池用バックシートは、基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の表面側に配置された、白色顔料とバインダーを含む白色層とを有し、前記バインダーが高分子樹脂とタッキファイヤーを含むことを特徴とする。
以下、本発明の太陽電池用バックシートの構成、各構成部材、製造方法などについて好ましい態様の詳細を記載する。
【0015】
<太陽電池用バックシートの構成>
図2〜図4に本発明の太陽電池用バックシートの構成の一例を、図1にこの太陽電池用バックシートを用いた太陽電池モジュールの構成の一例を示す。図2の太陽電池用バックシート20は、基材フィルム18の一方の面に白色層16が設けられている。このような耐候性層なしの態様として本発明の太陽電池用バックシートを用いる場合、太陽電池用バックシート部材とも呼ばれることがある。さらに、図3のように基材フィルム18と白色層16の間にその他の層として下塗り層14が設けられていてもよい。
本発明の太陽電池用バックシートは、図4のように基材フィルム18の他方の面には耐候性層が設けられていることが好ましい。基材フィルム18には、耐候性層第1層11と、耐候性層第2層12の2つの耐候性層が設けられていることが好ましい。
図1に、太陽電池モジュールにおける本発明の太陽電池用バックシートの好ましい配置位置を示す。本発明の太陽電池用バックシート20は、その前記白色層16の、太陽電池モジュール10の太陽電池素子20を封止する封止材22との密着性が良好である。したがって、本発明の太陽電池用バックシート20の前記白色層16と、前記太陽電池モジュール10の封止材22の間には、密着性の観点からは接着剤層を設ける必要がない。本発明の太陽電池モジュール10は、前記封止材22の本発明の太陽電池用バックシートとは反対側に、透明性のフロント基板26を配置されていることが好ましい。
【0016】
<太陽電池用バックシートの各構成部材>
以下、本発明の太陽電池用バックシートを構成する各構成部材について好ましい態様を説明する。
【0017】
(基材フィルム)
本発明の太陽電池用バックシートは、基材フィルムを有する。
前記基材フィルムの材質は、特に制限されず、例えば、ポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン、またはポリフッ化ビニルなどのフッ素系ポリマー等が用いられる。
中でも、前記基材フィルムの材質はコストや機械強度などの点から、ポリエステルが好ましい。
【0018】
前記ポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体と、から合成される線状飽和ポリエステルであることが好ましい。
かかる線状飽和ポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを挙げることができる。
このうち、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートが、力学的物性およびコストのバランスの点で特に好ましい。
【0019】
前記ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、前記ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよい。
【0020】
前記ポリエステル中のカルボキシル基含量は、前記ポリエステルに対して50当量/t以下が好ましく、より好ましくは35当量/t以下である。カルボキシル基含量が50当量/t以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。カルボキシル基含量の下限は、ポリエステルに形成される層(例えば白色層)との間の接着性を保持する点で、2当量/tが望ましい。
前記ポリエステル中のカルボキシル基含量は、重合触媒種、製膜条件(製膜温度や時間)により調整することが可能である。
【0021】
前記ポリエステルを重合する際の重合触媒としては、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、及びTi系の化合物を用いることが好ましいが、特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物を1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の割合が前記範囲内であると、末端カルボキシル基を下記範囲に調整することが可能であり、ポリマー基材の耐加水分解性を低く保つことができる。
【0022】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624、特許第3335683、特許第3717380、特許第3897756、特許第3962226、特許第3979866、特許第3996871、特許第4000867、特許第4053837、特許第4127119、特許第4134710、特許第4159154、特許第4269704、特許第4313538等に記載の方法を適用できる。
【0023】
前記ポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましいカルボキシル基含量を達成することができる。前記固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固層重合には、特許第2621563、特許第3121876、特許第3136774、特許第3603585、特許第3616522、特許第3617340、特許第3680523、特許第3717392、特許第4167159等に記載の方法を適用することができる。
【0024】
前記固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0025】
前記基材フィルムは、例えば、上記のポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをガラス転移温度Tg℃〜(Tg+60)℃で長手方向(縦方向とも言う)に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後、Tg℃〜(Tg+60)℃で幅方向(横方向とも言う)に倍率が3〜5倍になるように延伸した2軸延伸フィルムであることが好ましい。
さらに、必要に応じて180℃〜230℃で1秒間〜60秒間の熱処理を行ったものでもよい。
【0026】
前記基材フィルムの厚みは、25μm〜300μmであることが好ましく、120μm以上300μm以下であることがより好ましい。厚みが25μm以上であることで、十分な力学強度が得られ、300μm以下とすることで、コスト上、有利である。
特にポリエステル基材は、耐加水分解性を高めて湿熱環境下で長期使用に耐えられる傾向にあり、本発明において、前記基材フィルムは、厚みが120μm以上300μm以下であって、かつポリエステル中のカルボキシル基含量が2〜50当量/tである場合に、より湿熱耐久性の向上効果が奏される。
【0027】
(白色層)
本発明の太陽電池用バックシートは、前記基材フィルムの少なくとも一方の表面側に配置された、白色顔料とバインダーを含む白色層とを有し、前記バインダーが高分子樹脂とタッキファイヤーを含むことを特徴とする。
以下、白色層に含まれる成分と、白色層の形成方法について順に説明する。
【0028】
(1)白色層に含まれる成分
白色層に含まれる成分としては、白色顔料、バインダー(該バインダー中に少なくとも高分子樹脂とタッキファイヤーを含む)、その他の添加剤などを挙げることができる。
【0029】
−白色顔料−
白色層の第一の機能は、入射光のうち太陽電池セルで発電に使われずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げることである。第二の機能は太陽電池モジュールを表面側から見た場合の外観の装飾性を向上することである。一般に太陽電池モジュールを表面側から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに白色層を設けることにより装飾性を向上させて見栄えを改善することができる。
【0030】
前記白色層に用いられる前記白色顔料は特に限定されず、要求される反射性、意匠性等に応じて選択すればよく、無機顔料でも有機顔料でもよいが無機顔料であることが好ましく、無機微粒子であることがより好ましい。
前記白色顔料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等が挙げられ、反射性、コスト等の観点から酸化チタン微粒子が好ましい。
【0031】
前記白色層は、太陽電池モジュールのオモテ面から入射した太陽光のうち、セルを素通りした光を乱反射して、セルに戻すことで発電効率を上げる機能を有する。
基材フィルムの、白色層が配置されている面(最外表面)の波長550nmにおける光反射率は、白色層中の白色顔料の含有量や層厚を前記または後述の数値範囲で制御することにより反射率を高める方向に調整することができる。
【0032】
前記白色顔料の体積平均粒径としては0.03μm〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15μm〜0.5μmである。白色顔料の体積平均粒径をこの範囲とすることで、光の反射効率低下を抑制することができる。
前記白色顔料の体積平均粒径は、ハネウェル社製、マイクロトラックFRAにより測定される値である。
【0033】
前記白色層における前記白色顔料の好ましい含有量は、用いる白色顔料の種類や平均粒径によって異なるが、前記白色層における白色顔料の含有量が少な過ぎなければ、反射性、意匠性が十分発揮でき、多過ぎなければ封止材との接着性の観点から好ましい。これらの機能を十分発揮させる観点から、本発明の太陽電池用バックシートでは、前記白色層における前記白色顔料の含有量は好ましくは3g/m2〜20g/m2、より好ましくは5g/m2〜17g/m2である。
【0034】
本発明の太陽電池用バックシートでは、同様の観点から、前記白色層中の前記白色顔料と前記バインダーとの体積分率が、30:70〜80:20の範囲であることが好ましく、30:70〜70:30の範囲であることがより好ましく、40:60〜60:40の範囲であることが特に好ましい。
【0035】
−バインダー−
本発明では、前記白色層の前記バインダーが高分子樹脂とタッキファイヤーを含むことを特徴とする。以下、前記バインダーに含まれる高分子樹脂およびタッキファイヤーについて説明する。
【0036】
(高分子樹脂)
前記バインダー中の高分子樹脂としては、本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はない。
【0037】
また、本発明に用いられる前記バインダーの最低造膜温度は、25℃以上であることが好ましく、25〜120℃であることがより好ましく、30〜100℃であることが特に好ましい。本明細書中、エマルションの粒子が融着して被膜を造膜するのに必要な最低温度を最低造膜温度(Minimum Film forming Temperature)と呼ぶ。MFTはガラス転移温度やエマルションの粒子径と密接な関係がある。
【0038】
前記高分子樹脂の形状や使用態様についても、ポリマー層を形成できれば特に制限はない。例えば、水分散可能な高分子樹脂であっても、溶融可能な高分子樹脂であってもよい。また、結晶性の高分子樹脂であっても、非結晶性の高分子樹脂であってもよい。
本発明ではその中でも、溶媒に分散可能な高分子樹脂を用いることが、塗布により前記白色層を形成でき、より封止材との湿熱経時後の密着性を改善できる観点から好ましい。前記高分子樹脂は、水に分散可能であることがより好ましい。
【0039】
前記白色層のバインダーとして用いられる前記高分子樹脂は単独で用いてもよく、複数の前記高分子樹脂を混合して用いてもよい。
【0040】
前記白色層のバインダーとして用いられる前記高分子樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができる。その中でも、本発明では、ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。
【0041】
ポリオレフィン樹脂の主鎖骨格の種類としては、例えば、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、エチレン−ブテン−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、エチレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、プロピレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体などが挙げられる。
【0042】
本発明に用いられる前記ポリオレフィン樹脂の弾性率は320MPaであることが好ましく、前記ポリオレフィン樹脂の弾性率は10〜250MPaであることがより好ましく、20〜150MPaであることが特に好ましく、30〜100MPaであることがより特に好ましい。
【0043】
前記ポリオレフィン樹脂の入手方法についても特に制限はなく、商業的に入手してもよく、合成してもよい。また、添加剤を加えて前記ポリオレフィン樹脂の弾性率の範囲に制御してもよい。
【0044】
商業的に入手できる、本発明に用いられる前記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、アローベースSE−1010、ユニチカ(株)製、SE−1013N、SD−1010、TC−4010、TD−4010、ハイテックS3148、S3121、S8512(東邦化学(株)製)、ケミパールS−120、S−75N、V100、EV210H(ともに三井化学(株)製)、などを挙げることができる。その中でも、本発明ではアローベースSE−1013N、ユニチカ(株)製を用いることが好ましい。
【0045】
前記白色層のバインダーは、本発明の趣旨に反しない限り、前記ポリオレフィン樹脂以外のその他のバインダーを含んでいてもよい。
前記その他のバインダーとしては、例えばポリウレタン系のバインダーを挙げることができる。前記ポリウレタン系のバインダーとしては、例えば、スーパーフレックス110、460、いずれも第一工業製薬(株)製などを挙げることができる。
前記ポリオレフィン樹脂と前記その他のバインダーの割合(質量比)は50:50〜100:0であることが好ましく、80:20〜100:0であることがより好ましい。
【0046】
−タッキファイヤー−
前記タッキファイヤーは、前記バインダーに使用する前記高分子樹脂に粘着性を付与できるものであれば、特に限定されない。
【0047】
本発明に用いられる前記タッキファイヤーの軟化点は、50〜180℃であることが好ましく、60〜 170℃であることがより好ましく、80〜150℃であることが特に好ましい。ここで、本明細書中、タッキファイヤーの軟化点とは、加重に対して熱変形が起きるの温度のことを言う。
【0048】
本発明に用いられる前記タッキファイヤーの分子量は200〜1000であることが封止材との密着性の観点から好ましく、200〜800であることがより好ましく、300〜700であることが特に好ましい。
【0049】
前記バインダー中において、前記高分子樹脂に対する前記タッキファイヤーの含有量が1〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることが特に好ましい。特に前記高分子樹脂に対する前記タッキファイヤーの含有量が前記下限値以上であることが、粘着性付与の効果を前記白色層に十分に与える観点から好ましい。
【0050】
前記白色層のバインダーに用いられる、前記タッキファイヤーは単独で用いてもよく、複数の前記タッキファイヤーを混合して用いてもよい。
【0051】
本発明のバックシートに用いられるタッキファイヤーの好ましい例としては、ロジン誘導体および石油樹脂が使用できる。前記ロジン誘導体としては、例えばロジンエステル、重合ロジンエステル、不均化ロジンエステル、水添ロジンエステル、ロジンフェノールが使用できる。また、前記石油樹脂も使用可能であり、水添石油樹脂も使用できる。
本発明では、前記タッキファイヤーがロジン誘導体であることが好ましい。
【0052】
前記タッキファイヤーの入手方法についても特に制限はなく、商業的に入手してもよく、合成してもよい。
【0053】
商業的に入手できる、本発明に用いられる前記タッキファイヤーとしては、例えば、ハリエスターSK−385NS、ハリエスターSK−816E(いずれもロジンエステル、ハリマ化成(株)製)、スーパーエステルE−720(ロジンエステル、荒川化学工業(株)製)、エマルションAP−1100−NT(石油樹脂、荒川化学工業(株)製)などを挙げることができる。その中でも、本発明ではハリエスターSK−816Eを用いることが好ましい。
【0054】
−その他の添加剤−
前記白色層は、さらに、界面活性剤、前記白色顔料以外の微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を含有することができ、特に、白色層を形成するための白色層形成用組成物は、着色顔料の分散安定性のため、界面活性剤を用いて調製することが好ましい。
【0055】
前記界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤を利用することができ、具体的には、デモールEP〔花王(株)製〕、ナロアクティーCL95〔三洋化成工業(株)製〕等を挙げることができる。前記界面活性剤は、単独種を用いても複数種を用いてもよい。
【0056】
前記白色顔料以外の微粒子としては、シリカ、酸化マグネシウム、酸化錫等の無機酸化物フィラーが挙げられる。中でも、湿熱雰囲気に晒された時の接着性の低下が小さいことから、酸化錫またはシリカが好ましい。
前記無機酸化物フィラーの体積平均粒径は10nm〜700nmであることが好ましく、20nm〜300nmがより好ましい。平均粒径がこの範囲の無機酸化物フィラーを用いることにより、白色層と隣接する層との良好な易接着性を得ると共に、特に湿熱環境下(例えば、85℃、相対湿度85%)での隣接層(より特に好ましくは太陽電池モジュールの封止材、例えばEVAを含む封止材層)との密着性を発現することができる。なお、前記無機酸化物フィラーの体積平均粒径は、ハネウェル社製マイクロトラックFRAにより測定された値である。
前記白色顔料以外の微粒子の形状は特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のものを用いることができる。
【0057】
前記白色顔料以外の微粒子の白色層中の含有量は、白色層のバインダー樹脂の全質量に対して、5質量%〜400質量%であることが好ましく、50質量%〜300質量%であることがより好ましい。微粒子の含有量が5質量%以上であることで、湿熱雰囲気に晒された時の接着性および湿熱環境下で経時させたときの太陽電池モジュールの封止材との密着性が良好であり、400質量%以下であることで白色層の面状悪化を防止することができる。
なお、前記無機酸化物フィラー以外の微粒子として、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を含んでもよい。
【0058】
(2)白色層の形成方法
本発明の太陽電池用バックシートの製造方法は、基材フィルム上の少なくとも一方の表面側に、白色顔料とバインダーを含む白色層形成用組成物を積層して白色層を形成する工程を含み、前記白色層形成用組成物の前記バインダーが高分子樹脂とタッキファイヤーとを含有することを特徴とする。
前記白色層は公知の方法で形成することができ、特に制限はない。例えば、前記基材フィルムを支持体として用いて溶液製膜または溶融製膜して積層してもよく、白色層をあらかじめ他の支持体上で溶液製膜または溶融製膜しておいたものと前記基材フィルムとを接着剤などを介して積層してもよい。
また、積層された白色層の膜厚についても特に制限はないが、1〜20μmであることが好ましく、2〜18μmであることがより好ましく、3〜15μmであることが特に好ましい。
【0059】
その中でも、本発明の太陽電池用バックシートは、前記基材フィルムを支持体として用いて溶液製膜することが好ましい。前記溶液製膜の方法としては特に制限はなく、流延製膜であっても塗布であってもよいが、本発明の太陽電池用バックシートでは、前記白色層が、塗布により製膜されてなることが好ましい。
前記白色層は、基材フィルムの片面のみならず両面に設けられていてもよく、その場合も基材フィルムの両面に塗布することが好ましい。
また、前記白色層は、前記基材フィルムとの間に後述するその他の層を有する場合は、前記白色層を基材フィルム上に直接又は前記その他の層の上に、塗布して形成することができる。
【0060】
さらに、本発明では、前記白色層形成用組成物が白色顔料とバインダーを含む樹脂エマルションの水性塗料である白色層用塗布液であり、該白色層用塗布液を基材フィルムまたは該基材フィルム上に任意に設けられていてもよいその他の層上に塗布する工程を含むことがより好ましい。
【0061】
前記白色層形成用組成物の基材フィルム上への塗布は、たとえばグラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。
前記白色層形成用組成物は、反射性能と膜強度の観点から、バインダー樹脂に対する白色顔料の体積分率が30:70〜80:20であることが好ましい。また、同様の観点から、該白色層形成用組成物を、前記基材フィルム上に、乾燥後の塗布厚が1〜20μm以下となるように塗布することが好ましい。また、前記白色顔料の塗工量が3g/m2〜20g/m2となるように塗布することが好ましい。
【0062】
以下、白色層を形成するときに白色層形成用組成物に含まれることが好ましい成分について、上記にて白色層に含まれる成分として説明した以外の成分について説明する。
【0063】
−溶媒−
前記白色層形成用組成物が白色層用塗布溶液である場合、塗布溶媒としては、前記白色層を構成する各成分が分散又は溶解し、塗布後、除去することができることができれば特に限定されないが、水が好ましく用いられ、前記白色層形成用組成物に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。このような水系組成物は、環境に負荷をかけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性および安全性の点で有利である。前記白色層形成用組成物中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0064】
−架橋剤−
前記白色層形成用組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。
前記白色層形成用組成物が架橋剤を含有することで、前記白色層形成用組成物に含まれるバインダーを架橋し、接着性及び強度のある着色層を形成することができ、好ましい。
前記架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。太陽電池モジュールの封止材との湿熱経時後の密着性を確保する観点から、このなかで特にオキサゾリン系架橋剤が好ましい。
【0065】
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等がある。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。
また、オキサゾリン系架橋剤は、市販品を用いてもよく、例えば、エポクロスK2010E、K2020E、K2030E、WS500、WS700〔いずれも日本触媒化学工業(株)製〕等を用いることができる。
【0066】
前記白色層形成用組成物の全固形分質量に対する架橋剤の含有量は、水系バインダー全質量に対し5質量%〜50質量%であることが好ましく、20質量%〜40質量%であることがより好ましい。架橋剤含有量が5質量%以上であることで、充分な架橋効果が得られ、前記白色層の強度低下や接着不良を抑制することができる。一方、50質量%以下であることで、前記白色層形成用組成物のポットライフ低下を防止することができる。
【0067】
(その他の層)
本発明の太陽電池用バックシートは、基材フィルムの少なくとも一方の表面側に前記白色層を有するが、前記白色層と前記基材フィルムとの間に少なくとも1層のその他の層を含んでもよい。
一方、前記白色層と前記基材フィルムが直接接触している態様も、製造コスト低減の観点や、より薄膜化を目指す観点からは、好ましい。
前記基材フィルムと前記白色層との間に前記その他の層を有することで、基材フィルムと前記白色層との間の密着性をより高めることができる。
本発明の太陽電池用バックシートでは、前記その他の層が下塗り層であることが好ましく、すなわち、前記その他の層が塗布により形成されてなることが好ましい。
一方、本発明の太陽電池用バックシートでは、前記その他の層が、無機酸化物以外の無機物または有機物からなる層のみである態様も好ましい。すなわち、前記その他の層が無機酸化物を含まない態様も好ましい。例えば前記その他の層を無機酸化物の蒸着以外の方法、例えば塗布により形成することが好ましい。また、前記その他の層を塗布により形成する場合、無機酸化物微粒子などを含まない態様も好ましい。
以下、前記その他の層の好ましい態様である、本発明の太陽電池用バックシートが下塗り層を含む場合について説明する。
【0068】
前記下塗り層は、基材フィルム上に下塗り層形成用組成物を塗布して形成することができる。
前記下塗り層形成用組成物は、少なくとも水系バインダーを含有することが好ましい。
水系バインダーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。本発明の太陽電池用バックシートでは、前記その他の層の主成分が、ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
さらに、水系バインダー以外にエポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤、シリカ等のフィラーなどを含有していてもよい。これらの添加剤などの好ましい範囲は、前記白色層におけるこれらの添加剤などの好ましい範囲と同様である。
前記下塗り層形成用組成物の全固形分質量に対する水系バインダーの含有量は、50質量%〜100質量%であることが好ましく、70質量%〜100質量%であることがより好ましい。
【0069】
前記下塗り層は、後述する無機酸化物フィラー及び無機酸化物フィラー以外の微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤等の種々の添加剤を含有していてもよい。
【0070】
前記下塗り層形成用水系組成物を塗布するための方法は、特に制限はない。
塗布方法としては、たとえばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
前記下塗り層形成用水系組成物の塗布量は、接着性および面状の観点から、乾燥後の層厚が好ましくは10μm未満、より好ましくは0.05μm〜2μm、特に好ましくは0.1μm〜1.5μmとなるように、基材フィルムに塗布することが好ましい。
【0071】
前記下塗り層形成用水系組成物の塗布溶媒としては水が用いられ、下塗層形成用水系組成物に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。水系組成物は、環境に負荷かけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性、および安全性の点で有利である。
前記下塗り層形成用水系組成物中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0072】
(耐候性層)
本発明の太陽電池用バックシートは、前記基材フィルムの、前記白色層が配置されている面とは反対側の面に、さらに、フッ素系樹脂およびシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層を有することが好ましい。
【0073】
前記耐候性層を形成するための、耐候性層形成用組成物が含有するフッ素系樹脂としては、例えば、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が挙げられる。中でも、溶解性、および耐候性の観点から、ビニル系化合物と共重合させたクロロトリフルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体が好ましい。
【0074】
前記耐候性層形成用組成物が含有するフッ素系樹脂としては、オブリガートSW0011F〔AGCコーテック(株)製〕が挙げられる。
前記耐候性層形成用組成物の全固形分質量に対するフッ素系樹脂の含有量は、耐候性と膜強度の観点から、40質量%〜90質量%であることが好ましく、50質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0075】
前記耐候性層形成用組成物が含有するシリコーン−アクリル複合樹脂としては、セラネートWSA1060、WSA1070〔共にDIC(株)製〕とH7620、H7630、H7650〔共に旭化成ケミカルズ(株)製〕が挙げられる。
前記耐候性層形成用組成物全固形分質量に対するシリコーン−アクリル複合樹脂の含有量は、耐候性と膜強度の観点から、40質量%〜90質量%であることが好ましく、50質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0076】
前記耐候性層形成用組成物の塗布量は、耐候性および基材フィルムとの密着性の観点から、0.5g/m2〜15g/m2とすることが好ましく、3g/m2〜7g/m2とすることがより好ましい。
【0077】
前記耐候性層形成用組成物を形成するための方法は、特に制限はないが、塗布により形成することが好ましい。
塗布方法としては、たとえばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
前記耐候性層形成用組成物の塗布溶媒としては好ましくは水が用いられ、耐候性層形成用組成物に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。水系組成物は、環境に負荷かけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性、および安全性の点で有利である。
前記耐候性層形成用組成物中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0078】
前記耐候性層は、前記無機酸化物フィラー及び無機酸化物フィラー以外の微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤等の種々の添加剤を含有していてもよい。
【0079】
前記耐候性層の層厚は、0.5μm〜15μmであることが好ましく、3μm〜7μmであることがより好ましい。膜厚を0.5μm以上とすることで、耐候性を十分に発現することができ、15μm以下とすることで面状悪化を抑制することができる。
なお、前記耐候性層は、単層でもよいし、2層以上を積層した構成としてもよい。本発明の太陽電池用バックシートは、前記耐候性層を2層積層した構成であることが好ましい。
【0080】
<太陽電池用バックシートの特性>
(光反射率)
本発明の太陽電池用バックシートの前記白色層が配置されている面(最外表面)は、波長550nmにおける光反射率が70%以上であることが好ましい。光反射率が70%以上であることで、太陽電池のセルを素通りした光を充分にセルに戻すことができ、発電効率を上げる上で好ましい。前記光反射率は75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0081】
[太陽電池用積層体]
本発明の太陽電池用積層体は、本発明の太陽電池用バックシートと、該太陽電池用保護シートの少なくとも前記白色層側の面に直接接着されており、かつ、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むポリマー層と、を有することを特徴とする。
本発明の太陽電池用保護シートは、前記白色層側の面が太陽電池モジュールに用いられる封止材(例えばEVA、PVB。特にEVA)との密着性が良好であるため、接着剤層などを介さずに、両者と貼りあわせることができる。また、このような太陽電池用保護シートの少なくとも前記白色層側の面にチレン−酢酸ビニル共重合体などの封止材が直接接着されている太陽電池用積層体は、湿熱環境下で経時しても、両者の密着性が長期間にわたって良好である。
このような太陽電池積層体は、そのまま太陽電池素子を封止する封止材そのものとして用いてもよく、太陽電池モジュールの封止材の一部として用いてもよい。
【0082】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池用保護シートは、太陽電池モジュールの製造に好適である。
太陽電池モジュールは、例えば、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と既述の本発明の太陽電池用バックシートとの間に配置し、該基板とバックシートとの間をエチレン−酢酸ビニル共重合体などの封止材で封止して構成される。
【0083】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
本発明の太陽電池モジュールは、太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、太陽電池素子と、前記太陽電池素子を封止する封止材と、前記封止材の前記フロント基板とは反対側に配置され、前記封止材と接着する太陽電池用バックシートとを有し、前記太陽電池用バックシートが本発明の太陽電池用バックシートを含み、かつ、前記太陽電池用バックシートの前記白色層が前記封止材と直接接着していることを特徴とする。
一方、本発明の積層体を用いる場合は、太陽電池モジュールは、太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、太陽電池素子と、前記太陽電池素子を封止する封止材と、前記封止材の前記フロント基板とは反対側に配置され、前記封止材と接着する太陽電池用バックシートとを有し、前記太陽電池用バックシートおよび前記封止材として本発明の太陽電池用積層体を含むことが好ましい。
好ましくは、太陽電池素子と、太陽電池素子を封止する封止材と、封止材と接着し、受光面側を保護する表面保護部材と、封止材と接着し、受光面とは反対側を保護する裏面保護部材とを有し、封止材がエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を含み、裏面保護部材が本発明の太陽電池用バックシートであって、該太陽電池用バックシートの着色層が封止材と直接接着した構成とすることができる。このような太陽電池モジュールであれば、太陽電池用バックシートがEVAと湿熱環境下であっても長期にわたって密着し、長寿命の太陽電池モジュールとすることができる。
【0084】
前記透明性のフロント基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0085】
前記太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【0086】
[太陽電池モジュールの製造方法]
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、太陽電池素子と、該太陽電池素子を封止材により封止する工程と、前記封止材の一方の面に太陽光が入射する側の透明性のフロント基板を接着する工程と、前記封止材の前記フロント基板とは反対側に本発明の太陽電池用バックシートを接着する工程を有し、前記太陽電池用バックシートの前記白色層と前記封止材とを直接接触させて180℃以下の温度で接着させる工程を含むことを特徴とする。
本発明の太陽電池用バックシートは、従来公知のEVA封止材との接着性を改良するようないわゆる易接着層を設けずとも、バックシートと封止材との接着性が良好である。ここで、従来公知の易接着層は、EVA封止材と封止するときに、高温でラミネートする必要があった。これに対し、本発明の太陽電池用バックシートの好ましい態様では、バックシートの白色層と封止材とを上記範囲の温度で接着させることができ、製造コストを低減することができる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
なお、体積平均粒子径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕を用いて測定した。
【0088】
[実施例1]
<基材フィルムの作製>
−ポリエステルの合成−
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
【0089】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3質量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してそれぞれ30ppm、15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。その5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし、常圧に戻し、重縮合反応を停止した。そして、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリマーのペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を作製した。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
【0090】
但し、前記チタンアルコキシド化合物には、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]の実施例1で合成しているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44質量%)を用いた。
【0091】
−固相重合−
上記で得られたペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行なった。
【0092】
−ベース形成−
以上のように固相重合を経た後のペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約3mmの未延伸ベースを作成した。その後、90℃で縦方向に3倍に延伸し、更に120℃で横方向に3.3倍に延伸した。こうして、厚み250μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体(以下、「PET支持体」と称する。)を得た。PET支持体のポリエステル中のカルボキシル基含量は、前記ポリエステルに対して14当量/tであった。
【0093】
<下塗り層及び白色層の形成>
−下塗り層用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、下塗り層用塗布液を調製した。
<下塗り層用塗布液の組成>
・ポリエステル樹脂水分散物 48重量部
[バイロナール1245、東洋紡(株)製、固形分:30質量%;バインダー]
・PMMA樹脂微粒子 0.5重両部
[MP−1000、綜研化学(株)製、固形分:100質量%;マット材]
・オキサゾリン化合物 3質量部
[エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%;架橋剤]
・カルボジイミド化合物 17質量部
[カルボジライトV−02−L2、日清紡(株)製、固形分:40質量%;架橋剤]
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル 0.15質量部
[ナロアクティーCL−95、三洋化成工業(株)製、固形分:100質量%]
【0094】
−白色無機微粒子分散物1の調製−
下記組成中の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施した。
<白色無機微粒子分散物1の組成>
・二酸化チタン(体積平均粒子径=0.42μm) 36.3質量部
[タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分:100質量%;白色顔料]
・ポリビニルアルコール 1.81質量部
[PVA−105、(株)クラレ製、固形分:100質量%;分散樹脂]
・界面活性剤 0.114質量部
[デモールEP、花王(株)製、固形分:100質量%;分散剤]
・蒸留水 46.8質量部
【0095】
−白色層用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、白色層用塗布液を調製した。
<白色層用塗布液の組成>
・上記にて得られた白色無機微粒子分散物1 635質量部
・ポリオレフィン樹脂水分散液 127質量部
[ケミパールS120、三井化学(株)製、固形分:27質量%;高分子樹脂]
・ロジンエステル 10.2質量部
[ハリエスターSK−385NS、ハリマ化成(株)製、固形分:50.6質量%;タッキファイヤー]
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル 0.22質量部
[ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:100質量%;塗布助剤]
・オキサゾリン化合物 30質量部
[エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%;架橋剤]
・シリカ微粒子 1.8質量部
[アエロジルOX−50、日本アエロジル(株)製、固形分:100質量%;添加剤]
・蒸留水 163.4質量部
【0096】
−下塗り層、及び白色層の形成−
PET支持体の片面を、搬送速度80m/分で搬送し、730J/m2の条件でコロナ放電処理を行った後、上記下塗り層塗布液をバーコート法により乾燥重量が124mg/m2となるように塗布した。そして、これを180℃で1分乾燥して下塗り層を形成した。続けて下塗り層の上に乾燥重量が10.5g/m2となるように上記白色層塗布液をバーコート法により塗布した後、170℃で1分乾燥することにより、前記PET支持体の片面に下塗り層と白色層とが積層された白色PETフィルムを得た。
【0097】
<耐候性層の形成>
上記白色PETフィルムの白色層が塗布された面とは反対面に、下記の耐候性層第1層と耐候性層第2層を形成した。
−白色無機微粒子分散物2の調製−
下記白色無機微粒子分散物2の組成に示す各成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施した。
【0098】
<白色無機微粒子分散物2の組成>
・二酸化チタン(白色顔料、体積平均粒子径0.42μm) 40質量部
〔タイペークR−780−2、石原産業社製、固形分100%〕
・ポリビニルアルコール水溶液 8.0質量部
〔PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10%〕
・界面活性剤〔デモールEP、花王(株)製、固形分:25%〕 0.5質量部
・蒸留水 51.5質量部
【0099】
−耐候性層第1層形成用塗布液の調製−
下記耐候性層第1層形成用塗布液の組成に示す各成分を混合し、耐候性層第1層形成用塗布液を調製した。
【0100】
<耐候性層第1層形成用塗布液の組成>
・アクリル/シリコーン系バインダー(シリコーン系樹脂、P−1) 362.3質量部
〔セラネートWSA−1070、DIC社製、固形分:40%〕
・カルボジイミド化合物(架橋剤、A−1) 48.3質量部
〔カルボジライトV−02−L2、日清紡績社製、固形分:40%〕
・界面活性剤 9.7質量部
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業社製、固形分:1%〕
・上記にて得られた白色無機微粒子分散物2 157.0質量部
・蒸留水 422.7質量部
【0101】
−耐候性層第1層の形成−
上記白色PETフィルムの白色層が塗布された面とは反対面を、搬送速度80m/分で搬送し、730J/m2の条件でコロナ放電処理を行った後、上記耐候性層第1層形成用塗布液を、シリコーン系樹脂(P−1)の量が塗布量で3.0g/m2になるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚みが3μmの耐候性層第1層を形成した。
【0102】
−耐候性層第2層層形成用塗布液の調製−
耐候性層第2層層形成用塗布液の組成に示す各成分を混合し、耐候性層第2層層形成用塗布液を調製した。
【0103】
<耐候性層第2層層形成用塗布液の組成>
・アクリル/シリコーン系バインダー(シリコーン系樹脂、P−1) 362.3質量部
〔セラネートWSA−1070、DIC社製、固形分:40%〕
・カルボジイミド化合物(架橋剤、A−1) 24.2質量部
〔カルボジライトV−02−L2、日清紡績社製、固形分:40%〕
・界面活性剤 24.2質量部
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業社製、固形分:1%〕
・蒸留水 703.8質量部
【0104】
−耐候性層第2層の形成−
得られた耐候性層第2層形成用塗布液を、耐候性層第1層の上に、シリコーン系樹脂(P−1)の量が塗布量で2.0g/m2になるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚み2.5μmの耐候性層第2層を形成した。
【0105】
こうして、PET支持体の片面に、下塗り層、白色層を設け、その反対面に耐候性層1層、耐候性層2層を設けた実施例1の太陽電池用バックシートを作成した。
【0106】
この実施例1の太陽電池用バックシートについて、破断伸び保持率、接着性、湿熱経時後の接着性(接着耐久性)、反射率の評価を以下に示す方法により行なった。また、実施例1の太陽電池用バックシートの製造適性に関わる剪断凝集テストの評価を以下に示す方法により行なった。結果は、下記表1に示す。
【0107】
<評価>
−1.破断伸び保持率−
上記のようにして作製した太陽電池用バックシートについて、以下の測定方法により得られた破断伸びの測定値L0及びL1に基づいて、下記式にて示される破断伸び保持率(%)を算出した。実用上許容できるものは、破断伸び保持率が50%以上のものである。
破断伸び保持率(%)=L1/L0×100%
【0108】
<破断伸びの測定方法>
ポリマーシートを、幅10mm×長さ200mmに裁断して、測定用の試料A及び試料Bを用意する。
試料Aに対して、25℃、相対湿度60%の雰囲気で24時間調湿した後、テンシロン(ORIENTEC製 RTC−1210A)で引っ張り試験を行う。なお、延伸される試料の長さは10cm、引っ張り速度は20mm/分である。この評価で得られた試料Aの破断伸びをL0とする。
別途、試料Bに対して、120℃、相対湿度100%の雰囲気で50時間湿熱処理した後、試料Aと同様にして引っ張り試験を行う。この時の試料Bの破断伸びをL1とする。
【0109】
−2.湿熱経時前の接着性−
上記のようにして作製した太陽電池用バックシートを20mm巾×150mmにカットして、試料片を2枚準備した。この2枚の試料片を、白色層同士が対面するように配置し、この間に20mm巾×100mm長にカットしたEVAシート(三井化学ファブロ(株)製のEVAシート:SC50B)を挟み、真空ラミネータ(日清紡(株)製の真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、EVAと接着させた。このときの接着条件は、以下の通りとした。
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンで、150℃で30分間、本接着処理を施した。このようにして、互いに接着した2枚のサンプル片の一端から20mmの部分はEVAと未接着で、残りの100mmの部分にEVAシートが接着された接着評価用試料を得た。
【0110】
得られた接着評価用試料のEVA未接着部分(試料片の一端から20mmの部分)を、テンシロン(ORIENTEC製 RTC−1210A)にて上下クリップに挟み、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分で引っ張り試験を行ない、接着力を測定した。
測定された接着力をもとに以下の評価基準にしたがってランク付けした。このうち、ランク4、5が実用上許容可能な範囲である。
<評価基準>
5:密着が非常に良好であった(60N/20mm以上)
4:密着は良好であった (30N/20mm以上60N/20mm未満)
3:密着がやや不良であった (20N/20mm以上30N/20mm未満)
2:密着不良が生じた (10N/20mm以上20N/20mm未満)
1:密着不良が顕著であった (10N/20mm未満)
【0111】
−3.湿熱経時後の接着性−
太陽電池用バックシートを、120℃、相対湿度100%の環境条件下で48時間保持(湿熱経時)した後、前記−2.湿熱経時前の接着性−と同様の方法にて接着力を測定し、同じ評価基準にしたがってランク付けした。なお、湿熱経時後の接着性については、ランク3以上が実用上許容可能な範囲であり、ランク4、5が実用上より好ましい範囲である。
【0112】
−4.反射率−
上記のようにして作製した太陽電池用バックシートについて、分光光度計UV−2450((株)島津製作所製)に積分球付属装置ISR−2200を取り付けた装置を用いて、550nmの光に対する反射率を測定した。但し、リファレンスとして硫酸バリウム標準板の反射率を測定し、これを100%として太陽電池用バックシートの反射率を算出した。
【0113】
−5.剪断凝集テスト−
上記にて太陽電池用バックシートの作製に用いた白色層用塗布液の剪断凝集性を調べるために、マーロン試験機(熊谷理機工業社製)にて、白色層用塗布液1kgに加重10kg、1200rpm、液温25℃、10分間の条件で剪断負荷をかけた後、白色層用塗布液中の凝集物をフィルターでろ過し、その重量を測定した。
<評価基準>
凝集物重量2mg以下:製造適性非常に良好。
凝集物重量2mgを超え、3mg以下:製造適性良好。
凝集物重量3mgを超え、10mg以下:製造適性有り。
凝集物重量10mg超え:製造適性無し。
【0114】
[実施例2〜9、比較例1〜4]
実施例1において、白色層のバインダー中の高分子樹脂とタッキファイヤーの種類、及び高分子樹脂に対するタッキファイヤーの比率を高分子樹脂の固形分量が同一になるようにして下記表1に示すようにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9の太陽電池用バックシート、比較例1〜4の太陽電池用バックシートを作製した。
【0115】
各実施例および比較例で用いたバインダーは以下のものである。
P1:ケミパールS120(ポリオレフィン樹脂、三井化学(株)製、固形分濃度27質量%)
P2:ケミパールS75N(ポリオレフィン樹脂、三井化学(株)、固形分濃度24質量%)
P3:アローベースSE1013N(ポリオレフィン樹脂、チッソ(株)、固形分濃度20質量%)
P4:バイロナールMD1245(ポリエステル樹脂、東洋紡(株)、固形分濃度30質量%)
また、各実施例および比較例で用いたタッキファイヤーは以下のものである。
T1:ハリエスターSK−385NS(ロジンエステル、ハリマ化成(株)、固形分濃度50.6質量%)
T2:スーパーエステルE−720(ロジンエステル、荒川化学工業(株)、固形分濃度50.9質量%)
T3:ハリエスターSK−816E(ロジンエステル、ハリマ化成(株)、固形分濃度54質量%)
T4:エマルションAP−1100−NT(石油樹脂、荒川化学工業(株)、固形分濃度50.8質量%)
【0116】
得られた各実施例および比較例の太陽電池用バックシートについて、実施例1と同様にして、評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
上記表1より、各実施例の太陽電池用バックシートは封止材との接着性が良好であることがわかった。また、湿熱経時後も封止材との接着性が良好であることもわかった
一方、比較例1〜4はいずれもタッキファイヤーを添加していない態様であり、いずれも湿熱経時前の接着性が悪かった。また、比較例1および4については、湿熱経時後の接着性も悪かった。
また、本発明の製造方法によれば、各実施例の太陽電池用バックシートを製造適性よく製造できることがわかった。
【0119】
[実施例10〜18]
<太陽電池用モジュールの作製>
厚さ3mmの強化ガラスと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、結晶系太陽電池セルと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、実施例1〜9で得られた太陽電池用バックシートと、をこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ(日清紡(株)製、真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、バックシートとEVAシートとを接着させた。
このとき、バックシートは、前記白色層を設けた面(耐候性層が設けられていない面)が、EVAシートと接触するように配置した。また、EVAの接着条件は、以下の通りである。
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンにて150℃で30分間、本接着処理を施した。
このようにして、実施例1〜9で得られた太陽電池用バックシートをそれぞれ備えた結晶系の太陽電池モジュールである、実施例10〜18の太陽電池モジュールを作製した。
作製した実施例10〜18の太陽電池モジュールを用いて発電運転をしたところ、いずれの太陽電池モジュールについても、太陽電池として良好な発電性能を示した。
また、実施例10〜18の太陽電池モジュールを、120℃、相対湿度100%の雰囲気下に48時間保持した後も、バックシートの剥離は見られず、良好な外観を保っていた。
【符号の説明】
【0120】
10 太陽電池モジュール
11 耐候性層第1層
12 耐候性層第2層
14 下塗り層
16 白色層
18 基材フィルム
20 太陽電池用バックシート
22 太陽電池素子
24 封止材
26 透明性の基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、
該基材フィルムの少なくとも一方の表面に配置された、白色顔料とバインダーを含む白色層とを有し、
前記バインダーが高分子樹脂とタッキファイヤーを含むことを特徴とする太陽電池用バックシート。
【請求項2】
前記白色顔料が酸化チタン微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項3】
前記白色層中の前記白色顔料と前記バインダーとの体積分率が、30:70〜80:20の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項4】
前記バインダー中において、前記高分子樹脂に対する前記タッキファイヤーの含有量が1〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項5】
前記バインダー中の前記高分子樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項6】
前記バインダー中の前記高分子樹脂の最低造膜温度が25℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項7】
前記タッキファイヤーがロジン誘導体からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項8】
前記タッキファイヤーの分子量が200〜1000であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項9】
基材フィルム上の少なくとも一方の表面側に、白色顔料とバインダーを含む白色層形成用組成物を積層して白色層を形成する工程を含み、
前記白色層形成用組成物の前記バインダーが高分子樹脂とタッキファイヤーとを含有することを特徴とする太陽電池用バックシートの製造方法。
【請求項10】
前記白色層形成用組成物が白色顔料とバインダーを含む樹脂エマルションの水性塗料である白色層用塗布液であり、
該白色層用塗布液を基材フィルムまたは該基材フィルム上に任意に設けられていてもよいその他の層上に塗布する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
【請求項11】
前記バインダー中の前記高分子樹脂の最低造膜温度が25℃以上であることを特徴とする請求項9または10に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシートの製造方法で製造されたことを特徴とする太陽電池用バックシート。
【請求項13】
請求項1〜8および12のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシートと、
該太陽電池用保護シートの少なくとも前記白色層側の面に直接接着されており、かつ、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むポリマー層と、を有することを特徴とする太陽電池用積層体。
【請求項14】
太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、
太陽電池素子と、
前記太陽電池素子を封止する封止材と、
前記封止材の前記フロント基板とは反対側に配置され、前記封止材と接着する太陽電池用バックシートとを有し、
前記太陽電池用バックシートが請求項1〜8および12のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシートを含み、かつ、前記太陽電池用バックシートの前記白色層が前記封止材と直接接着していることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項15】
太陽電池素子と、該太陽電池素子を封止材により封止する工程と、
前記封止材の一方の面に太陽光が入射する側の透明性のフロント基板を接着する工程と、
前記封止材の前記フロント基板とは反対側に請求項1〜8および12のいずれか一項に記載の太陽電池用バックシートを接着する工程を有し、
前記太陽電池用バックシートの前記白色層と前記封止材とを直接接触させて180℃以下の温度で接着させる工程を含むことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−222227(P2012−222227A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88200(P2011−88200)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】