説明

太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに、太陽電池モジュール

【課題】加熱圧着および/または湿熱経時に供されても反りにくく、かつ、ポリマー層が封止材および/または支持体から剥離しにくい太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに歩留まりの大きい太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池に用いられるバックシートであって、厚みが120μm〜350μmの支持体と、前記支持体の一方の面に塗布により形成され、ポリマーを含み、厚みが0.5μm〜12.0μmである第1ポリマー層と、前記ポリエステル支持体の前記第1ポリマー層が形成された面とは反対側の面に塗布により形成され、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂を含み、厚みが0.2μm〜15.0μmである第2ポリマー層と、を含む、バックシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池素子の太陽光入射側の反対側に設けられる太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、発電時に二酸化炭素の排出がなく環境負荷が小さい発電方式であり、近年急速に普及が進んでいる。
【0003】
太陽電池モジュールは、通常、太陽光が入射する側のオモテ面ガラスと、太陽光が入射する側とは反対側(裏面側)に配置される、太陽電池用バックシート(以下、単に「バックシート」とも称する)との間に、太陽電池素子(セル)が挟まれた構造を有している。太陽電池モジュールにおいて、オモテ面ガラスと太陽電池素子(セル)との間、及び太陽電池素子(セル)とバックシートとの間は、それぞれエチレン−ビニルアセテート(EVA)樹脂などで封止されている。
【0004】
バックシートは、太陽電池モジュールの裏面からの水分の浸入を防止する働きを有するもので、従来はガラスやフッ素樹脂等が用いられていたが、近年では、コスト低減の観点からポリエステルが用いられるようになってきている。
【0005】
近年、太陽電池モジュールの駆動電圧を上げることにより、太陽電池モジュールの装置の小型化や効率向上をはかることが行われている。
このため、太陽電池用のバックシートは、安全性の観点から、高い耐電圧が要求されるようになってきている。バックシートに要求される耐電圧は、近年は、600V以上、更には1000V以上となってきており、それに応じて、バックシートの厚みも125μm以上、更には250μm以上であることが要求されるようになってきている。
【0006】
バックシートは、単なるポリマーシートではなく、種々の機能が付与される場合がある。例えば、ポリマーシート(支持体)に、酸化チタン等の白色無機粒子を含む機能層を設けて、反射性能を持たせたバックシートが要求される場合がある。これは、モジュールのオモテ面から入射した太陽光のうち、セルを素通りした光を乱反射(以降、単に「反射」という)して、セルに戻すことで発電効率を上げるためである。
白色顔料を含有する白色インキ層を有する裏面保護シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、別の機能層として、フッ素含有樹脂を含む耐候性層を設けている太陽電池モジュール用保護シートが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献3には、ポリマー基材が少量の白色無機粒子を含有し、該ポリマー基材上に塗布形成される反射層に含まれるバインダーと白色無機粒子の割合が所定の範囲を満たすバックシートが開示されている。
特許文献4には、基質上で硬化したフルオロポリマーを含む層を含み、前記フルオロポリマーを含む層が疎水性シリカを含むバックシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−210557号公報
【特許文献2】特開2010−20601号公報
【特許文献3】特開2011−165967号公報
【特許文献4】国際出願公開2009/097024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バックシートを、高い耐電圧を発揮し得るよう厚くするには、上記のように、支持体を厚くする必要がある。一方、バックシートに設けられる機能層は、白色無機粒子を含有する白色シート、フッ素樹脂シートなどの部材シートを貼り合わせて形成されている。すなわち、従来のバックシートは、典型的には、ポリエステル支持体、白色シート、フッ素樹脂シートなどを貼り合わせることにより形成されている。しかし、機能層の貼り合わせにより設けたバックシートは、太陽電池モジュールの製造過程においてバックシートに与えられる熱により、機能層たるシートが熱収縮し反りを発生し得る。貼り合わされる複数の部材シートの熱収縮の度合いの差異に伴い、この反りはより顕著になり得る。
また、バックシートには大きな湿熱耐久性が求められている。部材シートの貼り合わせには、通常、ウレタン系の接着剤が用いられる。これらの接着剤は加水分解に弱いため、湿熱経時により部材シート間および/または部材シートと支持体とが剥離し得る。
さらに、前述の部材シートの熱収縮は、部材シートと支持体との界面に力学的な残留応力を発生させるので、これも湿熱経時した時の部材シート間および/または部材シートと支持体との剥離の一因になっていると考えられる。
【0009】
特開2006−210557号公報および特開2010−20601号公報は、一部の機能層を塗布形成するものの、バックシートの製造過程にシートの貼り合わせを含むため、太陽電池の製造過程における加熱処理時および太陽電池の湿熱経時において、部材シートの反りや部材シート間および/または部材シートと支持体との剥離を生じた。
【0010】
本発明は、加熱圧着および/または湿熱経時に供されても反りにくく、かつ、ポリマー層が封止材および/または支持体から剥離しにくい太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに歩留まりの大きい太陽電池モジュールを提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 太陽電池に用いられるバックシートであって、
厚みが120μm〜350μmの支持体と、
前記支持体の一方の面に塗布により形成され、ポリマーを含み、厚みが0.5μm〜12.0μmである第1ポリマー層と、
前記支持体の前記第1ポリマー層が形成された面とは反対側の面に塗布により形成され、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂を含み、厚みが0.2μm〜15.0μmである第2ポリマー層と、
を含む、バックシート。
<2> 前記支持体がポリエステルを含有する<1>に記載のバックシート。
<3> 前記第1ポリマー層を有する面の、波長550nmの光の反射率が、72%以上である、<1>または<2>に記載のバックシート。
<4> 前記支持体の厚みが160μm〜320μmである<1>〜<3>のいずれかに記載のバックシート。
<5> 前記第1ポリマー層の厚みが1μm〜10μmである<1>〜<4>のいずれかに記載のバックシート。
<6> 前記第2ポリマー層の厚みが0.5μm〜12μmである<1>〜<5>のいずれかに記載のバックシート。
<7> 前記支持体の厚みが160μm〜320μmであり、
前記第1ポリマー層の厚みが1μm〜10μmであり、
前記第2ポリマー層の厚みが0.5μm〜12μmである、<1>〜<6>のいずれかに記載のバックシート。
<8> 前記第1ポリマー層に含まれる前記ポリマーが、ビニルアルコール樹脂、オレフィン樹脂、および、アクリル樹脂から成る群のうち少なくとも1つを含む<1>〜<7>のいずれかに記載のバックシート。
<9> 前記第2ポリマー層が前記シリコーン系樹脂を含み、前記シリコーン系樹脂がシリコーン樹脂とアクリル樹脂との複合ポリマーである、<1>〜<9>のいずれかに記載のバックシート。
<10> 前記第1ポリマー層が、前記太陽電池の太陽電池素子を封止する封止材に対して10N/cm以上の接着力を有する、<1>〜<9>のいずれかに記載のバックシート。
<11> 前記太陽電池の太陽電池素子を封止する封止材が、エチレン−ビニルアセテートを含む、<10>に記載のバックシート。
<12> 前記支持体は、120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びの、前記保存前の破断伸びに対する比率が、50%以上である、<1>〜<11>のいずれかに記載のバックシート。
<13> 前記支持体を除くバックシートを構成する全ての層が塗布により形成されたものである、<1>〜<12>のいずれかに記載のバックシート。
<14> <1>〜<13>のいずれかに記載のバックシートを含む太陽電池モジュール。
<15> 厚みが120μm〜350μmの支持体の一方の面に、ポリマーを含む第1塗布液を塗布して、厚みが0.5μm〜15.0μmである第1ポリマー層を形成すること、および
前記支持体の前記第1ポリマー層が形成された面とは反対側の面に、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂を含む第2塗布液を塗布して、厚みが0.2μm〜15.0μmである第2ポリマー層を形成すること、
を含む<1>〜<13>のいずれかに記載のバックシートの製造方法。
<16> 前記支持体を除くバックシートを構成する全ての層を塗布により形成する、<15>に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱圧着時および湿熱経時に反りにくく、かつ、ポリマー層が封止材および/または支持体から剥離しにくい太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに歩留まりの大きい太陽電池モジュールを提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態である太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに太陽電池モジュールについて詳細に説明する。
本開示において「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない工程であっても、その工程の所期の作用を達成するものであれば、その範囲に包含する。
数値範囲の表示(「m以上n以下」または「m〜n」)は、当該数値範囲の下限値として表示される数値(m)を最小値として含み、当該数値範囲の上限値として表示される数値(n)を最大値として含む範囲を示す。
組成物中のある成分の量について言及する場合において、組成物中に当該成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に別途定義しない限り、当該量は、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
<太陽電池用バックシート及びその製造方法>
本開示のバックシートは、太陽電池に用いられるバックシートであって、
厚みが120μm〜350μmの支持体と、前記支持体の一方の面に塗布により形成され、ポリマーを含み、厚みが0.5μm〜12.0μmである第1ポリマー層と、前記ポリエステル支持体の前記第1ポリマー層が形成された面とは反対側の面に塗布により形成され、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂を含み、厚みが0.2μm〜15.0μmである第2ポリマー層と、を少なくとも有する。
バックシートを上記構成とすることで、加熱圧着時および湿熱経時に反りにくく、かつ、ポリマー層が封止材および/または支持体から剥離しにくいバックシートとなし得る。
ある実施形態においては、前記バックシートは、130℃以上で加熱圧着することによって製造する太陽電池に用いられ得るバックシートであって、厚みが120μm〜350μmのポリエステル支持体(以下、単に「支持体」とも称する)と、前記ポリエステル支持体の一方の面に塗布形成され、ポリマーを含み、厚みが0.2μm〜8.0μmであり、前記太陽電池の太陽電池素子を封止する封止材に対して10N/cm以上の接着力を有する第1ポリマー層と、前記ポリエステル支持体の他方の面に塗布形成され、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂を含み、厚みが0.5μm〜8.0μmである第2ポリマー層と、を有する。
【0015】
前記効果は、次の理由により得られるものと推察される。
太陽電池は、バックシートを、該太陽電池の太陽電池素子を封止する封止材と共に、130℃以上で加熱圧着することにより製造され得る。
ここでバックシートが、反射性等の機能性を持たせる機能層である部材シートを、支持体に貼り合わせた構成を有すると、太陽電池の製造過程における加熱圧着工程において、バックシートが反り、また、部材シートが封止材および/または支持体から剥離することがある。これは、支持体と、支持体上に形成されるポリマー層等の部材シートとの熱膨張係数が異なることによると考えられる。
支持体が120μm以上と厚く、加熱時に生じる膨張率が大きいものに対し、貼り合わせに用いられる部材シートも厚い(通常、100μm以上)ことから、加熱圧着により、部材シートが熱収縮を起こすと考えられる。すなわち、部材シートが熱収縮することにより、部材シートが封止材および/または支持体から剥離し、また、支持体に貼りあわされたまま熱収縮しようとするため、バックシートが反ると考えられる。
さらに、バックシートの基材となる支持体の厚みが120μm以上と厚い場合、支持体は蓄熱し易いことから、支持体上に貼り合わされている部材シートの熱収縮を促進させると考えられる。
【0016】
また、太陽電池は、一般に、屋根の上等の屋外に設置されるため、バックシートも直射日光により加熱され、雨曝しにされる。したがって、バックシートは、長期間の湿熱条件下(例えば、120℃、100%RHで50時間)でも使用に耐え得る必要がある。しかしながら、部材シートと支持体との貼り合わせにより構成された従来のバックシートは、上記のように、部材シートが加熱による熱収縮を起こして、部材シートの封止材および/または支持体からの剥離や、バックシートの反りを生じ易い。
【0017】
これに対し、本開示のバックシートにおいては、バックシートに機能性を持たせる機能層である第1ポリマー層および第2ポリマー層のいずれもが、塗布形成され、厚みが15.0μm以下であることから、機能層が熱の影響を受け難いと考えられる。そのため、バックシートは、130℃以上で加熱圧着されても、長期間の湿熱環境下(120℃、100%RHで50時間)におかれても、機能層が封止材および/または支持体から剥離しにくく、バックシートが反りにくいものと考えられる。
以下、バックシートが有する支持体、第1ポリマー層、及び第2ポリマー層について説明する。
【0018】
〔支持体〕
バックシートは、基材として、厚みが120μm〜350μmの支持体を有する。支持体はポリエステルを含んでもよく、含まなくてもよい。支持体がポリエステルを含有する場合、加熱圧着時および湿熱経時における反り耐性、およびポリマー層の封止材および/または支持体からの剥離の防止効果が、より顕著に奏され得る。
前記ポリエステルとしては、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルが挙げられる。かかるポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを挙げることができる。このうち、力学的物性やコストのバランスの点で、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
【0019】
前記ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、前記ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもなくてもよい。
【0020】
前記ポリエステルを重合する際には、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、Ti系の化合物を触媒として用いることが好ましく、中でも特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物を1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の割合が前記範囲内であると、末端カルボキシル基を下記範囲に調整し得、支持体の耐加水分解性を高く保ち得る。
【0021】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624号、特許第3335683号、特許第3717380号、特許第3897756号、特許第3962226号、特許第3979866号、特許第3996871号、特許第4000867号、特許第4053837号、特許第4127119号、特許第4134710号、特許第4159154号、特許第4269704号、特許第4313538号等に記載の方法を適用できる。
【0022】
ポリエステル中のカルボキシル基含量は50当量/t以下が好ましく、より好ましくは35当量/t以下である。カルボキシル基含量が50当量/t以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。カルボキシル基含量の下限は、ポリエステルに形成される層(例えば着色層)との間の接着性を保持する点で、2当量/tが望ましい。
ポリエステル中のカルボキシル基含量は、重合触媒種、製膜条件(製膜温度や時間)により調整することが可能である。
【0023】
前記ポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましいカルボキシル基含量を達成し得る。固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固相重合には、特許第2621563号、特許第3121876号、特許第3136774号、特許第3603585号、特許第3616522号、特許第3617340号、特許第3680523号、特許第3717392号、特許第4167159号等に記載の方法を適用することができる。
【0024】
固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0025】
支持体がポリエステルを含む場合、ポリエステル支持体は、例えば、上記のポリエステルをフィルム状に溶融押出を行なった後、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸して形成された2軸延伸フィルムであることが好ましい。
さらに、必要に応じて180〜230℃で1〜60秒間の熱処理を行なったものでも行なわないものでもよい。
【0026】
支持体の厚みは、耐電圧の観点から、120μm以上である。ある実施態様においては、160μm以上であることが好ましく、180μm以上であることがより好ましく、250μm以上であることがさらに好ましい。支持体の厚みが大きいほど(厚いほど)耐電圧性に優れるが、取り扱い性の観点から、厚みが350μm以下である支持体を用いる。ある実施態様においては、支持体の厚みの上限は320μmであることが好ましい。
【0027】
支持体は、120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びの、前記保存前の破断伸びに対する比率(以下「破断伸び保持率」ともいう) が、50%以上であることが好ましい。破断伸び保持率が50%以上であることで、加水分解に伴う変化が抑えられ、長期使用の際に被着物との密着界面での密着状態が安定的に保持されることにより、経時での支持体からの機能層の剥離等が防止され得る。これにより、バックシートが、例えば屋外等の高温、高湿環境や曝光下に長期に亘り置かれる場合でも、支持体が高い耐久性能を示す。
ここで破断伸び保持率は、支持体がその上に第1ポリマー層と、第2ポリマー層と(必要に応じて設けられる他の層と)が設けられた形態で測定される破断伸びに基づいて算出される値である。
支持体の破断伸び保持率は、上記同様の理由から、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
前記破断伸び保持率[%]の測定方法の詳細は、後述する。
【0028】
〔第1ポリマー層〕
バックシートは、支持体の一方の面に塗布形成され、ポリマーを含み、厚みが0.5μm〜12.0μmであり、太陽電池素子を封止する封止材に対して10N/cm以上の接着力を有する第1ポリマー層を有する。
すなわち、第1ポリマー層は、封止材とバックシートの接着性を確保するための易接着性層として機能する。ある実施態様において、接着性を維持し得る湿熱耐性が得られやすいことから、封止材に対する第1ポリマー層の接着力が10N/cm以上であることが好ましく、20N/cm以上であることがより好ましい。
なお、バックシートは、エチレン−ビニルアセテート(EVA;エチレン−酢酸ビニル共重合体)を含む封止材に対して上記接着力を発現し易い。
【0029】
(ポリマー)
第1ポリマー層に含まれるポリマーとしては、ポリエステル、ウレタン樹脂(ポリウレタン)、アクリル樹脂(ポリアクリル)、オレフィン樹脂(ポリオレフィン)、ビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコール)、シリコーン樹脂等が挙げられる。第1ポリマー層は、これらの樹脂の少なくとも1つを含有すればよい。
耐久性の観点からは、アクリル樹脂、オレフィン樹脂が好ましい。
接着性の観点からは、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルアルコール樹脂、オレフィン樹脂、シリコーン樹脂、及び、アクリル樹脂から成る群のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
また、アクリル樹脂とシリコーン樹脂との複合ポリマー(シリコーン系樹脂)も好ましい。
【0030】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等が挙げられる。既述のポリエステル支持体に用いるポリエステルを用いてもよい。
ウレタン樹脂としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート又はトルエンジイソシアネートとエチレングリコール又はプロピレングリコールからなるポリマー等が挙げられる。
【0031】
アクリル樹脂の例としてジュリマーET−410、ジュリマーSEK−301(ともに商品名、日本純薬社製)などを挙げることができる。
シリコーン系樹脂の例としては、例えば、セラネートWSA1060、セラネートWSA1070(ともに商品名、DIC(株)製)、ポリデュレックスH7620、ポリデュレックスH7630、ポリデュレックスH7650(全て商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
オレフィン樹脂の例としてケミパールS−120、ケミパールS−75N(ともに商品名、三井化学社製)などを挙げることができる。
【0032】
ビニルアルコール樹脂は、ビニルアルコール単位を重合単位として有する高分子化合物(ポリビニルアルコール;PVA)であればよいが、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールであってもよい。中でもシラノール変性ポリビニルアルコールが好ましい。市販品としては、PVA−105、PVA R−1130(ともに商品名、クラレ社製)等が挙げられる。
【0033】
ポリマーの塗布量は、0.3g/m〜13g/mが好ましく、0.4g/m〜11g/mがより好ましい。バインダーの塗布量が、0.3g/m以上であると、第1ポリマー層の強度が充分に得られ、また13g/m以下であると、熱収縮しにくい。
【0034】
(架橋剤)
第1ポリマー層は、封止材とバックシートの接着性をより向上するため、上記ポリマーの他に、エポキシ系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系などの架橋剤を含有するものであることが好ましい。
これらのうち、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤が好ましい。
【0035】
前記カルボジイミド系架橋剤の具体例としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−エチルカルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−プロピルカルボジイミド、N−tert−ブチル−N’−エチルカルボジイミド等が挙げられる。
また、市販品として、カルボジライトV−02−L2(商品名、日清紡績(株)製)などが挙げられる。
【0036】
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。
また、市販品として、エポクロスWS−700、エポクロスK−2020E(いずれも登録商標、日本触媒(株)製)などを用いることができる。
【0037】
架橋剤の第1ポリマー層中における含有量は、第1ポリマー層を構成するポリマーの全質量に対して、0.5質量%〜100質量%が好ましく、0.5質量%〜50質量%がより好ましく、さらに好ましくは5.0質量%〜30.0質量%である。架橋剤の含有量が、0.5質量%以上であると、ポリマー層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、100質量%以下、特に50質量%以下であると、ポリマー層を形成するための塗布液を調製したときの塗布液のポットライフをより長く保つことができる。
【0038】
(白色顔料)
第1ポリマー層は、白色顔料を含むことが好ましい。
第1ポリマー層が白色顔料を含むことで、第1ポリマー層は、反射層としての機能も発現し得る。
白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等の無機顔料を適宜選択して含有することができる。中でも二酸化チタンが好ましい。
白色顔料の平均粒径は、体積平均粒径で0.03μm〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15μm〜0.5μm程度である。白色顔料の平均粒径が前記範囲内であると、光の反射効率が高い。平均粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔商品名、堀場製作所社製〕により測定される粒径を基に算出される値である。
【0039】
バックシートは、第1ポリマー層を有する面の波長550nmの光の反射率が72%以上であることが好ましい。550nmにおける反射率が72%以上であることで、太陽電池素子を通過した日光等の入射光を効率よく太陽電池素子に返すことができ、発電効率を高めることができる。反射率は大きいほど良い。
なお、反射率とは、バックシート表面のうち、第1ポリマー層を有する側から入射した光が、第1ポリマー層、または第1ポリマー層および支持体で反射して出射した光量の入射光量に対する比率である。
第1ポリマー層を有する面の550nmにおける反射率を高める観点から、第1ポリマー層に含まれる白色顔料の割合は、第1ポリマー層中のポリマー及び白色顔料の合計質量に対し、30質量%〜90質量%であることが好ましい。
【0040】
第1ポリマー層は、必要に応じて、さらに、界面活性剤、フィラー等の各種成分を含んでも含まなくてもよい。また、既述の白色顔料に代えて、着色顔料を含んでも含まなくてもよい。
前記界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1mg/m〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5mg/m〜5mg/mである。界面活性剤の添加量が、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、15mg/m以下であると、接着を良好に行なうことができる。
また、上記の白色顔料とは別に、更に、シリカ等のフィラーなどを添加してもしなくてもよい。フィラーを添加する場合、その添加量は、第1ポリマー層中のポリマーの全質量に対して、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーの添加量が20質量%以下であると、反射率をより高め、支持体と第1ポリマー層との接着性をより向上することができる。
着色顔料としては、群青、カーボンブラック等が挙げられる。第1ポリマー層が既述の白色顔料に代えて、群青、カーボンブラック等の着色顔料を含むことで、第1ポリマー層は、反射性を有しにくくなるものの、太陽電池の見栄えや意匠性を向上することができる。着色顔料の含有量は、第1ポリマー層中のポリマー及び着色顔料の合計質量に対し、30質量%〜90質量%とすればよい。
【0041】
−第1ポリマー層の形成方法−
第1ポリマー層は、既述のポリマー、及びその他必要に応じて含まれる成分を既述の含有量となるように含有する第1ポリマー層形成用塗布液を、支持体の一方の面に塗布することにより形成される。第1ポリマー層に反射層としての機能を持たせる場合には、さらに、白色顔料を第1ポリマー層形成用塗布液に添加すればよい。
【0042】
塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーターなどの公知の塗布方法を利用することができる。
塗布液は、塗布溶媒として水を用いた水系でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒を用いた溶剤系でもよい。中でも、環境負荷の観点から、溶媒が水を含有することが好ましい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。好ましい塗布溶媒の例として、水、及び、水/メチルアルコール=95/5(質量比)の組成を有する混合物がある。
【0043】
バックシートにおいては、第1ポリマー層の厚みを0.5μm〜12.0μmとする。
第1ポリマー層の厚みが12.0μm以下であると、バックシートの加熱圧着時や、長期間の湿熱環境下においても第1ポリマー層が熱収縮し難い。0.5μm以上であると、封止材に対する接着力を強力(例えば、10N/cm以上)にし得る。ある実施態様においては、第1ポリマー層の厚みは1μm〜10μmであることが好ましい。
【0044】
なお、第1ポリマー層は1層のみの単層で構成されていてもよいし、2層以上の多層であってもよい。第1ポリマー層が多層である場合は、支持体に最も近い層の厚みが0.5μm〜12.0μmであればよいが、第1ポリマー層の熱収縮を抑制する観点から、多層で構成される第1ポリマー層の全厚みが0.5μm〜12.0μmであることが好ましく、1μm〜10μmであることがより好ましい。
【0045】
また、第1ポリマー層形成用塗布液の支持体への塗布にあっては、支持体の第1ポリマー層を形成する側の表面に、直にあるいは厚みが2μm以下の下塗り層を介して、第1ポリマー層形成用塗布液を塗布することができる。
【0046】
(下塗り層)
バックシートには、支持体と第1ポリマー層との間に下塗り層を設けて設けなくてももよい。下塗り層を設ける場合、下塗り層の厚みは、厚みが2μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm〜2μmであり、更に好ましくは0.1μm〜1.5μmである。厚みが2μm以下であると、面状を良好に保つことができる。また、厚みが0.05μm以上であることにより、必要な接着性を確保しやすい。
なお、支持体の表面のうち、第1ポリマー層を形成する側の面を「オモテ面」とも称し、支持体と第1ポリマー層との間に設ける下塗り層を「オモテ面下塗り層」とも称する。
【0047】
下塗り層は、バインダーを含有することができる。バインダーとしては、例えば、ポリエステル、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂等を用いることができる。また、下塗り層には、バインダー以外に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤、シリカ等のフィラーなどを添加してもしなくてもよい。
【0048】
下塗り層を塗布するための方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
塗布液に用いる溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
支持体が2軸延伸フィルムである場合は、2軸延伸した後の支持体に塗布液を塗布してもよいし、1軸延伸後の支持体に塗布液を塗布した後に初めの延伸と異なる方向に支持体を延伸してもよい。延伸前の支持体に塗布液を塗布した後に支持体を2方向に延伸してもよい。
【0049】
〔第2ポリマー層〕
バックシートは、支持体の他方の面に塗布形成され、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂を含み、厚みが0.2μm〜15.0μmである第2ポリマー層を有する。
第2ポリマー層が、バインダーとして、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂の少なくとも1種を含むことで、耐候性に優れたバックシートとすることができる。
【0050】
(フッ素系樹脂)
フッ素系樹脂としては、−(CFX−CX)−で表される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。なお、前記繰り返し単位において、X、X、及びXは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。
例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化3フッ化エチレン、ポリテトラフルオロプロピレンなどがある。
これらのポリマーは単独のモノマーを重合したホモポリマーでもよいし、2種類以上を共重合したものでもよい。さらに、これらのモノマーと他のモノマーを共重合したものでもよい。
これらのポリマーの例として、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンの共重合体、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体、テトラフルオロエチレンとプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレンとビニルエーテルの共重合体、テトラフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルの共重合体、クロロトリフルオロエチレンとビニルエーテルの共重合体、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルの共重合体等を挙げることができる。
【0051】
(シリコーン系樹脂)
シリコーン系樹脂は、主鎖又は側鎖にシロキサン結合を有するポリマーである。
シリコーン系樹脂としては、シリコーン樹脂、または、変性シリコーン樹脂、シロキサン結合を有するポリマーと他のポリマー(例えば、アクリル樹脂)とが共重合した複合ポリマーを挙げることができる。中でも、シリコーン樹脂とアクリル系樹脂との複合ポリマーが好ましい。
シリコーン系樹脂の例としては、例えば、セラネートWSA1060、セラネートWSA1070(ともに商品名、DIC(株)製)、ポリデュレックスH7620、ポリデュレックスH7630、ポリデュレックスH7650(全て商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0052】
これらの中でも、温湿度変化や高い湿熱環境に曝されたときの耐久性能をより向上させる観点から、シリコーン樹脂がより好ましい。
【0053】
フッ素系樹脂およびシリコーン系樹脂の第2ポリマー層中における含有量は、第2ポリマー層の全質量に対して、15質量%〜90質量%が好ましく、より好ましくは60質量%〜90質量%である。フッ素系樹脂およびシリコーン系樹脂の含有量が、15質量%以上であると、充分な耐久性が得られ、90質量%以下であると、充分な量の架橋剤や界面活性剤を添加できるので、膜強度や塗布面状の点で有利である。
【0054】
(各種成分)
第2ポリマー層は、効果を損なわない限度において、必要に応じて、第1ポリマー層が含有し得る既述の界面活性剤、フィラー等の各種成分と同様の成分を含有していてもいなくてもよい。この場合、各種成分の第2ポリマー層中の含有量は、界面活性剤については0.1mg/m〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5mg/m〜5mg/mである。フィラーの含有量は、第2ポリマー層中のフッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂の全質量に対して、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。
【0055】
−第2ポリマー層の形成方法−
第2ポリマー層は、既述のフッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂、及びその他必要に応じて含まれる成分を既述の含有量となるように含有する第2ポリマー層形成用塗布液を、支持体の第1ポリマー層を形成する側とは反対の面に塗布することにより形成される。
【0056】
塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーターなどの公知の塗布方法を利用することができる。
塗布液は、塗布溶媒として水を用いた水系でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒を用いた溶剤系でもよい。中でも、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。好ましい塗布溶媒の例として、水、及び、水/メチルアルコール=95/5(質量比)の組成を有する混合物等がある。
【0057】
バックシートにおいては、第2ポリマー層の厚みを0.2μm〜15.0μmとする。
第2ポリマー層の厚みが15.0μm以下であることで、バックシートの加熱圧着時や、長期間の湿熱環境下においても第1ポリマー層が熱収縮し難い。0.2μm以上であることで、耐候性を発現し得る。ある実施態様においては、第2ポリマー層の厚みは0.5μm〜12μmであることが好ましい。
【0058】
なお、第2ポリマー層は1層のみの単層で構成されていてもよいし、2層以上の多層であってもよい。第2ポリマー層が多層である場合は、支持体に最も近い層の厚みが0.2μm〜15.0μmであればよいが、第2ポリマー層の熱収縮を抑制する観点から、多層で構成される第2ポリマー層の全厚みが0.2μm〜15.0μmであることが好ましく、0.5μm〜12μmであることがより好ましい。
【0059】
第2ポリマー層形成用塗布液の支持体への塗布にあっては、支持体の第2ポリマー層を形成する側(第1ポリマー層を形成する側の反対側)の表面に、直にあるいは厚み2μm以下の下塗り層を介して、第2ポリマー層形成用塗布液を塗布することができる。
第2ポリマー層と支持体との間に設け得る下塗り層は、第1ポリマー層と支持体との間に設け得る下塗り層と同様の構成で、支持体上に塗布形成することができる。
【0060】
前記バックシートは、少なくとも第1ポリマー層と第2ポリマー層とを支持体上に塗布してなる。ある実施態様においては、前記バックシートは、支持体を除くバックシートを構成する全ての層を塗布により形成してなる。
【0061】
<太陽電池モジュール>
本開示の太陽電池モジュールは、前記バックシートを備える。
ある実施形態では、前記モジュールは、太陽電池素子と、前記太陽電池素子を封止する封止材と、前記封止材と接着し、受光面側を保護する表面保護部材と、前記封止材と接着し、前記受光面とは反対側を保護する裏面保護部材とを有し、前記裏面保護部材が前記バックシートである。より具体的には、例えば、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板(表面保護部材)と既述のバックシート(裏面保護部材)との間に配置し、該基板とバックシートとの間を封止材、好ましくはエチレン−ビニルアセテート(EVA)系封止材で封止して構成されている。
【0062】
太陽電池モジュール、太陽電池素子(セル)、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0063】
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する支持体から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0064】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。体積平均粒子径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔商品名、(株)堀場製作所製〕を用いて測定した。
【0066】
<支持体1(ポリエステル支持体)の作製>
−ポリエステルの合成−
高純度テレフタル酸〔三井化学社製〕100kgとエチレングリコール〔日本触媒(株)製〕45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
【0067】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してそれぞれ30ppm、15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。
【0068】
その5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。得られた低重合度重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし、常圧に戻し、重縮合反応を停止した。そして、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリマーのペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を作製した。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
【0069】
前記チタンアルコキシド化合物は、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]の実施例1で合成しているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44%)である。
【0070】
−固相重合−
上記で得られたペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行なった。
【0071】
−ベース形成−
固相重合後のペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約2.5mmの未延伸ベースを作成した。その後、未延伸ベースを90℃で縦方向に3倍に延伸(縦延伸)し、更に120℃で横方向に3.3倍に延伸(横延伸)した。次いで、横延伸したベースに横延伸の張力を与えたまま、215℃で1分間保持して熱固定をし、厚み250μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、「2軸延伸PET」と称する。)の支持体1を得た。
【0072】
<支持体2〜支持体4の作製>
上記ベース形成において、未延伸ベースの厚みを変更する以外は同様にして、別途、厚み125μmの2軸延伸PETの支持体2、厚み188μmの2軸延伸PETの支持体3、および厚み300μmの2軸延伸PETの支持体4を得た。
【0073】
〔実施例1〕
<層の形成>
−下塗り層形成用塗布液の調製−
下記下塗り層形成用塗布液の組成に示す各成分を混合し、下塗り層形成用塗布液を調製した。
【0074】
(下塗り層形成用塗布液の組成)
・ポリエステル(バインダー) ・・・48.0部
〔商品名:バイロナールMD−1245、東洋紡社製、固形分:30%〕
・カルボジイミド化合物(架橋剤) ・・・10.0部
〔商品名:カルボジライトV−02−L2、日清紡績社製、固形分:10%〕
・オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・3.0部
〔エポクロスWS−700(登録商標)、日本触媒社製、固形分:25%〕
・界面活性剤 ・・・15.0部
〔商品名:ナロアクティーCL−95、三洋化成工業社製、固形分:1%〕
・蒸留水 ・・・907.0部
【0075】
(下塗り層の形成)
得られた下塗り層形成用塗布液を、バインダー量が塗布量で0.1g/mになるように、支持体1の一方の面に塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚みが0.1μmの下塗り層(オモテ面下塗り層)を形成した。
【0076】
<第1ポリマー層の形成>
−二酸化チタン分散物1の調製−
下記二酸化チタン分散物1の組成に示す各成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施した。
【0077】
(二酸化チタン分散物1の組成)
・二酸化チタン(白色顔料、体積平均粒子径0.42μm) ・・・39.9%
〔商品名:タイペークR−780−2、石原産業社製、固形分:100%〕
・ポリビニルアルコール ・・・16.0%
〔商品名:PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10%〕
・界面活性剤〔商品名:デモールEP、花王(株)製、固形分:25%〕 ・・・0.5%
・蒸留水 ・・・51.6%
【0078】
−第1ポリマー層形成用塗布液の調製−
下記第1ポリマー層形成用塗布液の組成に示す各成分を混合し、第1ポリマー層形成用塗布液を調製した。
【0079】
(第1ポリマー層形成用塗布液の組成)
・二酸化チタン分散物1(白色顔料の分散物) ・・・80.0%
・シラノール変性ポリビニルアルコール(ポリマー) ・・・19.2%
〔商品名:PVA R−1130、クラレ社製、固形分:7%〕
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤) ・・・3.0%
〔商品名:ナロアクティーCL−95、三洋化成工業社製、固形分:1%〕
・オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・2.0%
〔エポクロスWS−700(登録商標)、日本触媒社製、固形分:25%〕
・蒸留水 ・・・7.8%
【0080】
−第1ポリマー層の形成−
得られた第1ポリマー層形成用塗布液を、2軸延伸PETの支持体1のオモテ面下塗り層が塗布形成された面に塗布し、180℃で1分間乾燥させて、白色顔料(二酸化チタン)の量が7.2g/m、厚みが3.5μmの第1ポリマー層を形成した。
【0081】
<第2ポリマー層の形成>
(第2ポリマー層下層(支持体に隣接する層))
−二酸化チタン分散物2の調製−
下記二酸化チタン分散物2の組成に示す各成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施した。
【0082】
(二酸化チタン分散物2の組成)
・二酸化チタン(白色顔料、体積平均粒子径0.42μm) ・・・40%
〔商品名:タイペークR−780−2、石原産業社製、固形分:100%〕
・ポリビニルアルコール水溶液 ・・・8.0%
〔商品名:PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10%〕
・界面活性剤〔商品名:デモールEP、花王(株)製、固形分:25%〕 ・・・0.5%
・蒸留水 ・・・51.5%
【0083】
−第2ポリマー層下層形成用塗布液の調製−
下記第2ポリマー層下層形成用塗布液の組成に示す各成分を混合し、第2ポリマー層下層形成用塗布液を調製した。
【0084】
(第2ポリマー層下層形成用塗布液の組成)
・アクリル/シリコーン系バインダー(シリコーン系樹脂、P−1)・・・362.3部
〔商品名:セラネートWSA−1070、DIC社製、固形分:40%〕
・カルボジイミド化合物(架橋剤、A−1) ・・・48.3部
〔商品名:カルボジライトV−02−L2、日清紡績社製、固形分:40%〕
・界面活性剤 ・・・9.7部
〔商品名:ナロアクティーCL−95、三洋化成工業社製、固形分:1%〕
・上記二酸化チタン分散物2 ・・・157.0部
・蒸留水 ・・・422.7部
【0085】
−第2ポリマー層下層の形成−
得られた第2ポリマー層下層形成用塗布液を支持体1の第1ポリマー層を形成した面の反対面に、シリコーン系樹脂(P−1)の量が塗布量で3.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚みが3μmの第2ポリマー層下層を形成した。
【0086】
(第2ポリマー層上層)
−第2ポリマー層上層形成用塗布液の調製−
下記第2ポリマー層上層形成用塗布液の組成に示す各成分を混合し、裏面ポリマー層形成用塗布液を調製した。
【0087】
(第2ポリマー層上層形成用塗布液の組成)
・アクリル/シリコーン系バインダー(シリコーン系樹脂、P−1)・・・362.3部
〔商品名:セラネートWSA−1070、DIC社製、固形分:40%〕
・カルボジイミド化合物(架橋剤、A−1) ・・・24.2部
〔商品名:カルボジライトV−02−L2、日清紡績社製、固形分:40%〕
・界面活性剤 ・・・24.2部
〔商品名:ナロアクティーCL−95、三洋化成工業社製、固形分:1%〕
・蒸留水 ・・・703.8部
【0088】
−第2ポリマー層上層の形成−
得られた第2ポリマー層上層形成用塗布液を、第2ポリマー層下層の上に、シリコーン系樹脂(P−1)の量が塗布量で2.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚み2.5μmの第2ポリマー層上層を形成した。
【0089】
こうして、支持体1の両面に、塗布形成された第1ポリマー層および第2ポリマー層を含むバックシート1を作成した。
得られたバックシート1について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
<評価>
−1.反射率−
分光光度計UV−2450(商品名、島津製作所社製)に、積分球付属装置ISR−2200(商品名、島津製作所社製)を取り付けた装置を用い、バックシート1の表面のうち、第1ポリマー層が形成された面側における550nmの光に対する反射率を測定した。但し、リファレンスとして硫酸バリウム標準板の反射率を測定し、これを100%としてバックシート1の反射率〔%〕を算出した。
【0091】
−2.接着性−
[A]湿熱経時前の接着性(Fr)
バックシート1をカットして、20mm幅×150mm長のサイズを有するサンプル片を2枚準備した。
この2枚のサンプル片を、互いに第1ポリマー層側が内側になるように重ねて配置し、この間に20mm幅×100mm長のサイズを有するEVAシート(商品名:SC50B、三井化学ファブロ社製)を挟みこんだ。サンプル片とEVAシートの長さが異なるので、ここで得られた積層試料の一端から50mmまでの領域にはEVAシートが存在しない。この積層試料を、真空ラミネータ〔日清紡社製〕を用いてホットプレスすることにより、EVAシートとサンプル片の第1ポリマー層とを接着させた。このときの接着条件は、以下の通りとした。
【0092】
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンで、150℃で30分間、本接着処理を施した。このようにして、互いに接着した2枚のサンプル片の一端から50mmまでの領域はEVAシートと未接着で、残りの100mmの部分にEVAシートが接着された接着評価用試料を得た。
【0093】
得られた接着評価用試料のEVA未接着部分を、テンシロン万能材料試験機〔商品名:RTC−1210A、ORIENTEC社製〕にて上下クリップに挟み、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分で引っ張りせん断試験を行ない、これにより測定された引張り剪断接着強さを接着力の指標とした。
接着力を、以下の評価基準にしたがって評価した。許容範囲はランク3以上であり、ランク4であることが好ましく、ランク5であることがより好ましい。
【0094】
<評価基準>
5:密着が非常に良好であった(60N/20mm以上)
4:密着は良好であった(30N/20mm以上60N/20mm未満)
3:密着がやや不良であった(20N/20mm以上30N/20mm未満)
2:密着不良が生じた(10N/20mm以上20N/20mm未満)
1:密着不良が顕著であった(10N/20mm未満)
【0095】
[B]湿熱経時後の接着性(PC)
得られた接着評価用試料を、120℃、100%RHの環境条件下で48時間保持(湿熱経時)した後、前記[A]と同様の方法にて接着力を測定した。
結果は、[A]湿熱経時前の接着性と同様の基準にて接着性を評価した。
【0096】
−3.反り−
300mm幅×600mm長で厚さ3.2mmの強化ガラスと、300mm幅×600mm長に裁断したEVAシート〔商品名:SC50B、三井化学ファブロ社製〕と、300mm幅×600mm長に裁断したバックシート1とをこの順に重ねた積層体1を、真空ラミネータ〔日清紡社製の真空ラミネート機〕を用いてホットプレスすることにより、強化ガラス、EVAシート、及びバックシート1を接着させた。このときの接着条件は、以下の通りとした。
【0097】
積層体1について、真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンで150℃/30分間、本接着処理を施した。
ただし、バックシート1は、第1ポリマー層がEVAシートに接するように重ねた。
【0098】
このようにして得られた、強化ガラス−EVAシート−バックシート1からなる積層体1を25℃/60%RHの雰囲気下で24時間保持した。
この温室度条件下でバックシート1の対角線を結ぶ直線と、中央部のバックシート1の表面との距離を測定した。測定された値をN1とした。N1の値が正の場合は、積層体1がバックシート1側を内側にして反ったことになる。
長方形の試料の2組の対角線について測定を行い、得られた値をN2とした。2つ(N1及びN2)の測定値の平均値を試料の「ソリ」とした。
【0099】
測定された反り耐性を元に以下の評価基準にしたがって評価した。このうち、ランク3実用上許容可能な範囲であり、ランク4であることが好ましい。
−評価基準−
4:反り耐性が非常に良好であった(0.5mm未満)
3:反り耐性は良好であった (0.5mm以上1.0mm未満)
2:反り耐性がやや不良であった (1.0mm以上2.0mm未満)
1:反り耐性が不良であった (2.0mm以上)
【0100】
−4.湿熱経時後の性状−
反り評価と同様にして作成した強化ガラス−EVAシート−バックシート1からなる積層体1を、120℃、100%RHの雰囲気で50時間湿熱処理した後、外観を目視観察した。
第1ポリマー層ないし第2ポリマー層(上層および下層の少なくとも一方)のEVAシートおよび/または支持体からの剥離が見られないものが実用上許容される。
【0101】
−5.破断伸び保持率−
バックシート1の支持体(支持体1)について、以下の測定方法により得られた破断伸びの測定値L及びLに基づいて、下記式にて示される破断伸び保持率(%)を算出した。実用上許容できるものは、破断伸び保持率が50%以上のものである。
破断伸び保持率(%)=(L/L)×100
【0102】
(破断伸びの測定方法)
支持体(支持体1)を、幅10mm×長さ200mmに裁断して、測定用の試料A及びBを用意した。
試料Aに対して、25℃、60%RHの雰囲気で24時間調湿した後、テンシロン万能材料試験機(商品名:RTC−1210A、ORIENTEC社製)で引っ張り試験を行った。なお、測定は試料の両端において端から50mmまでの領域をそれぞれチャッキングし、延伸される部分の長さを100mmとして行った。また、引っ張り速度は20mm/分とした。この評価で得られた試料Aの破断伸びをLとした。
別途、試料Bに対して、120℃、100%RHの雰囲気で50時間湿熱処理した後、試料Aと同様にして引っ張り試験を行った。この時の試料Bの破断伸びをLとした。
【0103】
〔実施例2、実施例3〕
実施例1のバックシート1の作成において、第1ポリマー層に用いた白色顔料(二酸化チタン)を、着色顔料である群青(実施例2)またはカーボンブラック(実施例3)に変更した以外は同様にして、実施例2のバックシート2および実施例3のバックシート3を作成した。
群青およびカーボンブラックの分散物は以下の方法で作成した。
【0104】
(群青分散物の調製)
下記群青分散物の組成に示す各成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理した。
【0105】
(群青分散物の組成)
・群青 ・・・39.9%
〔商品名:Ultramarine Blue Nubiflow、(株)尾関より入手可能〕
・ポリビニルアルコール ・・・8.0%
〔商品名:PVA−105、クラレ社製、固形分:10%〕
・界面活性剤〔商品名:デモールEP、花王(株)製、固形分:25%〕・・・0.5%
・蒸留水 ・・・51.6%
【0106】
(カーボンブラック分散物の調製)
下記カーボンブラック分散物の組成に示す各成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理した。
【0107】
(カーボンブラック分散物の組成)
・カーボンブラック(CB) ・・・39.9%
〔商品名:トーカブラック #8500F、東海カーボン社製〕
・ポリビニルアルコール ・・・8.0%
〔商品名:PVA−105、クラレ社製、固形分:10%〕
・界面活性剤〔商品名:デモールEP、花王(株)製、固形分:25%〕・・・0.5%
・蒸留水 ・・・51.6%
【0108】
得られたバックシート2およびバックシート3について、実施例1のバックシート1について行なった評価(1.反射率評価を除く)と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
〔実施例4〜実施例6〕
実施例1〜実施例3のバックシート1〜バックシート3の作成において、それぞれ、第2ポリマー層上層のシリコーン系樹脂(P−1、アクリル/シリコーン系バインダー、DIC社製、商品名:セラネートWSA−1070〕を、フッ素系樹脂〔P−2、AGCコーテック社製、商品名:オブリガートSSW0011F、固形分:39%〕に変更した以外は同様にして、実施例4〜実施例6のバックシート4〜バックシート6を作成した。
得られたバックシート4〜バックシート6について、実施例1のバックシート1について行なった評価と同様の評価を行った。ただし、第1ポリマー層に含まれる顔料が群青ないしカーボンブラックである実施例5および実施例6については、反射率評価を行なっていない。結果を表1に示す。
【0110】
〔比較例1〕
実施例1のバックシート1の作成において、支持体1上に第2ポリマー層下層および第2ポリマー層上層を塗布形成せずに、代わりに、厚さ40μmのフッ化ビニルシート(部材シート)を以下の条件で貼合する以外は同様にして、比較例1のバックシート101を作成した。
【0111】
<貼合方法>
接着剤としてLX−660(K)〔商品名、DIC(株)製〕に、硬化剤KW−75〔商品名、DIC(株)製〕を10部混合したものを用い、厚さ40μmのフッ化ビニルシート2枚を真空ラミネータ〔日清紡(株)製 真空ラミネート機〕でホットプレス接着した。
接着は80℃で3分の真空引き後、2分間加圧することで行い、その後40℃で4日間保持して反応を完了させた。
【0112】
得られたバックシート101について、実施例1のバックシート1について行なった評価と同様の評価を行った。なお、「4.湿熱経時後の性状」の評価においては、接着剤で貼合した部分の剥離が見られないものが実用上許容される。
結果を表1に示す。
【0113】
〔比較例2〕
実施例1のバックシート1の作成において、支持体1上にオモテ面下塗り層および第1ポリマー層を塗布形成しなかった以外は同様にして、比較例2のバックシート102を作成した。
得られたバックシート102について、実施例1のバックシート1について行なった評価と同様の評価(1.反射率評価を除く)を行った。結果を表1に示す。
【0114】
〔実施例7〜実施例9〕
実施例1のバックシート1の作成において、支持体1の代わりに、厚みの異なる支持体2〜支持体4を用いた他は同様にして、実施例7〜実施例9のバックシート7〜バックシート9を作成した。
得られたバックシート7〜バックシート9について、実施例1のバックシート1について行なった評価と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
〔実施例10〜実施例14、及び比較例3〜比較例8〕
実施例1のバックシート1の作成において、第1ポリマー層、第2ポリマー層下層および第2ポリマー層上層の各厚みを、表1に示す厚みに変更した以外は同様にして、実施例10〜実施例14のバックシート10〜バックシート14、及び、比較例3〜比較例8のバックシート103〜バックシート108を作成した。
得られたバックシート10〜バックシート14、及び、バックシート103〜バックシート108について、実施例1のバックシート1について行なった評価と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
前記表1に示す「評価」欄における「色」は、第1ポリマー層の色を示す。
前記表1に示すように、実施例では、加熱圧着後や湿熱環境下においても、ポリマー層の封止材および/または支持体からの剥離や、バックシートの反りがなかった。また、第1ポリマー層に白色顔料を含む実施例のバックシートは、反射性にも優れていることがわかった。
【0118】
〔実施例15〕
<太陽電池モジュールの作成>
厚さ3mmの強化ガラスと、EVAシート〔商品名:SC50B、三井化学ファブロ社製〕と、結晶系太陽電池素子(セル)と、EVAシート〔商品名:SC50B、三井化学ファブロ社製〕と、実施例1のバックシート1と、をこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ〔日清紡社製〕を用いてホットプレスすることにより、EVAと接着させた。ただし、バックシートはその易接着性層(第1ポリマー層)がEVAシートと接触するように配置した。また、EVAの接着条件は、以下の通りである。
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンにて150℃で30分間、本接着処理を施した。
このようにして、結晶系の太陽電池モジュール1を作製した。
【0119】
また、バックシート1に代え、バックシート2〜バックシート14のいずれかを用いることにより、結晶系の太陽電池モジュール2〜太陽電池モジュール14を作製した。
作製した太陽電池モジュール1〜太陽電池モジュール14について、発電運転をしたところ、いずれも太陽電池として良好な発電性能を示した。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、加熱圧着時および湿熱経時に反りにくく、かつ、ポリマー層が封止材および/または支持体から剥離しにくい太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに歩留まりの大きい太陽電池モジュールを提供し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池に用いられるバックシートであって、
厚みが120μm〜350μmの支持体と、
前記支持体の一方の面に塗布により形成され、ポリマーを含み、厚みが0.5μm〜12.0μmである第1ポリマー層と、
前記支持体の前記第1ポリマー層が形成された面とは反対側の面に塗布により形成され、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂を含み、厚みが0.2μm〜15.0μmである第2ポリマー層と、
を含む、バックシート。
【請求項2】
前記支持体がポリエステルを含有する請求項1に記載のバックシート。
【請求項3】
前記第1ポリマー層を有する面の、波長550nmの光の反射率が、72%以上である、請求項1または請求項2に記載のバックシート。
【請求項4】
前記支持体の厚みが160μm〜320μmである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のバックシート。
【請求項5】
前記第1ポリマー層の厚みが1μm〜10μmである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のバックシート。
【請求項6】
前記第2ポリマー層の厚みが0.5μm〜12μmである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のバックシート。
【請求項7】
前記支持体の厚みが160μm〜320μmであり、
前記第1ポリマー層の厚みが1μm〜10μmであり、
前記第2ポリマー層の厚みが0.5μm〜12μmである、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のバックシート。
【請求項8】
前記第1ポリマー層に含まれる前記ポリマーが、ビニルアルコール樹脂、オレフィン樹脂、および、アクリル樹脂から成る群のうち少なくとも1つを含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のバックシート。
【請求項9】
前記第2ポリマー層が前記シリコーン系樹脂を含み、前記シリコーン系樹脂がシリコーン樹脂とアクリル樹脂との複合ポリマーである、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のバックシート。
【請求項10】
前記第1ポリマー層が、前記太陽電池の太陽電池素子を封止する封止材に対して10N/cm以上の接着力を有する、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のバックシート。
【請求項11】
前記太陽電池の太陽電池素子を封止する封止材が、エチレン−ビニルアセテートを含む、請求項10に記載のバックシート。
【請求項12】
前記支持体は、120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びの、前記保存前の破断伸びに対する比率が、50%以上である、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のバックシート。
【請求項13】
前記支持体を除くバックシートを構成する全ての層が塗布により形成されたものである、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のバックシート。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のバックシートを含む太陽電池モジュール。
【請求項15】
厚みが120μm〜350μmの支持体の一方の面に、ポリマーを含む第1塗布液を塗布して、厚みが0.5μm〜12.0μmである第1ポリマー層を形成すること、および
前記支持体の前記第1ポリマー層が形成された面とは反対側の面に、フッ素系樹脂またはシリコーン系樹脂を含む第2塗布液を塗布して、厚みが0.2μm〜15.0μmである第2ポリマー層を形成すること、
を含む請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のバックシートの製造方法。
【請求項16】
前記支持体を除くバックシートを構成する全ての層を塗布により形成する、請求項15に記載の方法。

【公開番号】特開2012−119676(P2012−119676A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247870(P2011−247870)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】