説明

太陽電池用保護シートおよび太陽電池

【課題】透過率、バリア性、耐光性および密着性のいずれにも優れた太陽電池用保護シートを提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム上に、第一の無機層と、有機層と、第二の無機層を有し、前記第一の無機層と第二の無機層は、互い組成が異なっており、前記第一の無機層は、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タングステンおよびストロンチウムの少なくとも1種を含む酸化物または窒化物を含み、さらに、前記第二の無機層が設けられている側の最表層が、フッ素樹脂を塗布して得られる膜である、太陽電池用保護シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は太陽電池用保護シートおよび太陽電池に関する。特に、太陽電池用フロントシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池の表面を保護するための太陽電池用保護シートについて広く検討されている。太陽電池は、永年に渡って屋外に置かれることから、高いバリア性および高い耐光性が求められる。さらに、複数の層を積層した太陽電池用保護シートについては、これらの層間の密着性も求められる。加えて、太陽電池用保護シートを、フロントシートに用いる場合、高い透過率も求められる。そして、近年、このような保護シートの基材フィルムとしてプラスチックフィルムを用いたものが用いられている。そして、このようなプラスチックフィルムを保護するために、表面にフッ素樹脂膜を設けたフィルムが知られている(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−187825号公報
【特許文献1】特開2000−138388号公報
【特許文献1】特開2010−123682号公報
【特許文献1】特開2010−109239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者が上記文献を検討したところ、いずれも、高い透過率、高いバリア性、高い耐光性および高い密着性のいずれかに欠けることが分かった。特に、耐光性を高めるために、表面のフッ素樹脂塗布膜に無機系の紫外線吸収剤を添加したり、有機系紫外線吸収剤を含む層を設ける技術では、耐光性が十分ではないことが分かった。本願発明は、従来技術の問題点を解決することを目的とするものであって、透過率、バリア性、耐光性および密着性のいずれにも優れた太陽電池用保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者が鋭意検討を行った結果、表面のフッ素樹脂塗布膜に無機系の紫外線吸収剤を添加したり、有機系紫外線吸収剤を含む層を設ける技術では、耐光性だけでなく、バリア性や密着性なども劣る場合があることが分かった。
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、フッ素樹脂塗布膜とは別に、紫外線吸収能力を有する無機層を設けることに到達した。このような手段を採用することにより、耐光性が向上するだけでなく、密着性やバリア性も向上させることが可能になる。本願発明の手段は、太陽電池保護シートを構成する層の数が増えるため、当業者に避けられる手段である。しかしながら、このような構成を採用することにより、単に、耐光性を改善しただけでなく、バリア性や密着性も向上できた点に本願発明の大いなる意義がある。
【0006】
具体的には、以下の手段により、本願発明の課題は達成された。
(1)プラスチックフィルム上に、第一の無機層と、有機層と、第二の無機層を有し、前記第一の無機層と第二の無機層は、互い組成が異なっており、前記第二の無機層は、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タングステンおよびストロンチウムの少なくとも1種を含む酸化物または窒化物を含み、さらに、前記第二の無機層が設けられている側の最表層が、フッ素樹脂を塗布して得られる膜である、太陽電池用保護シート。
(2)第一の無機層が、珪素およびアルミの少なくとも1種と、酸素および窒素の少なくとも1種を含む、(1)に記載の太陽電池用保護シート。
(3)プラスチックフィルムの一方の面上に、第一の無機層、有機層、第二の無機層およびフッ素樹脂を塗布して得られる膜が設けられている、(1)または(2)に記載の太陽電池用保護シート。
(4)フッ素樹脂を塗布して得られる膜の厚さが、0.5〜100μmである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(5)全光線透過率が85%以上である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(6)プラスチックフィルムがポリエステル樹脂フィルムである、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(7)第二の無機層がフッ素樹脂を塗布して得られる膜と隣接している、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(8)有機層が、(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化してなる層である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(9)フッ素樹脂を塗布して得られる膜が、フッ素樹脂組成物を硬化してなり、該フッ素樹脂組成物の99重量%以上が、フッ素系樹脂、溶剤および顔料のいずれかである、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(10)第二の無機層が、実質的に、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タングステンおよびストロンチウムの少なくとも1種を含む酸化物または窒化物のみからなる、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(11)フロントシート用である、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
(12)(1)〜(11)のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シートを有する太陽電池素子。
【発明の効果】
【0007】
本願発明により、透過率、バリア性、耐光性および密着性のいずれにも優れた太陽電池用保護シートを提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本願発明の太陽電池用保護シートの実施形態の一例を示す図である。
【図2】図2は、本願発明の太陽電池用保護シートの実施形態の他の一例を示す図である。
【図3】図3は、本願発明の太陽電池素子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本願発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、本願発明における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。
【0010】
本願発明の太陽電池用保護シートは、プラスチックフィルム上に、第一の無機層と、有機層と、第二の無機層(以下、「無機系紫外線遮断層」ということがある)を有し、前記第一の無機層と第二の無機層は、互い組成が異なっており、前記第一の無機層は、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タングステンおよびストロンチウムの少なくとも1種を含む酸化物または窒化物を含み、さらに、前記第二の無機層が設けられている側の最表層が、フッ素樹脂を塗布して得られる膜(以下、「フッ素樹脂塗布膜」ということがある)であることを特徴とする。
【0011】
本願発明では、プラスチックフィルムの一方の面上に、第一の無機層(バリア層)、有機層、第二の無機層(無機系紫外線遮断層)およびフッ素樹脂塗布膜が設けられていることが好ましい。図1は、本願発明の太陽電池用保護シートの好ましい実施形態の一例を示したものであって、1は基材フィルム(バリア層)を、2は有機層を、3は第一の無機層を、4は第二の無機層(無機系紫外線遮断層)を、5はフッ素樹脂塗布膜をそれぞれ示している。通常は、有機層2とバリア層3が一体になってバリア能を向上させる。また、図2に示すように、本願発明においては、第一の無機層と第二の無機層の間にも有機層2を含んでいても良い。
本願発明では、無機系紫外線遮断層としての第二の無機層もバリア層としての役割を果たし、バリア性を相乗的に向上させる。
【0012】
図1では、フッ素樹脂塗布膜5と無機系紫外線遮断層4は隣接しているが、図2に示すように隣接していなくてもよい。図1に記載のように、フッ素樹脂塗布膜5と無機系紫外線遮断層4を隣接させることにより、太陽電池に設けた場合の、本願発明の太陽電池用保護フィルムに対する紫外線遮断能をより効果的に発揮させることができる。また、図2に示すように、フッ素樹脂塗布膜5と無機系紫外線遮断層4の間に有機層2を設ける構成も好ましい。この構成を採用することにより、無機系紫外線遮断層がバリア層としてより効果的に働くという利点がある。
このような構成とすることにより、透過率、バリア性、耐光性、密着性のいずれにも優れた太陽電池用保護シートを得ることができる。有機層と無機層を積層したガスバリアフィルムにおいて、バリア性や密着性を高める方法は種々検討されている。例えば、有機層に添加剤を添加したり、有機層や無機層の製膜方法を工夫したり、有機層および無機層の積層数を多くする等の方法である。これに対し、本願発明では、無機系紫外線遮断層を設けることにより、ガスバリアフィルム自身の性能をより向上させる手段を何ら採用しなくても、得られる太陽電池用保護シートのバリア性をより向上させることができるという利点がある。もちろん、本願発明の太陽電池用保護シートにおいても、従来から公知のバリア性を高める手段を併用してもよいことはいうまでもない。
また、本願発明の太陽電池用保護シートは、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の構成層を有していても良い。
以下に、本願発明の好ましい層構成を例示するが、本願発明は、これらに限定されるものではないことは言うまでもない。尚、/で区切られる層の間には、他の機能層を有していても良いが、他の機能層を有していない方が好ましい。
プラスチックフィルム/有機層/バリア層/無機系紫外線遮断層/フッ素樹脂塗布膜
プラスチックフィルム/有機層/バリア層/有機層/無機系紫外線遮断層/フッ素樹脂塗布膜
プラスチックフィルム/有機層/バリア層/有機層/無機系紫外線遮断層/有機層/フッ素樹脂塗布膜
プラスチックフィルム/バリア層/有機層/無機系紫外線遮断層/フッ素樹脂塗布膜
プラスチックフィルム/バリア層/有機層/バリア層/無機系紫外線遮断層/フッ素樹脂塗布膜
プラスチックフィルム/バリア層/有機層/バリア層/無機系紫外線遮断層/有機層/バリア層/フッ素樹脂塗布膜
【0013】
本願発明の太陽電池用保護シートは、シート全体としての厚みが、50μm以上となるように構成することが好ましく、100μm以上となるように構成することがより好ましい。上限値は特に定めるものではないが、例えば、2000μm以下とすることができる。
本願発明の太陽電池用保護シートは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることが好ましい。
本発明における反射率は、以下の方法に従って測定した場合、15%以下が好ましく、10%以下が好ましい。このような範囲とすることにより、太陽電池素子の発電効率が向上する傾向にある。
(反射率の測定方法)
島津UV2550を使用して、標準白色版を硫酸バリウムとして、拡散反射率の測定を行った。
【0014】
1.プラスチックフィルム
本願発明では、基材フィルムとして、好ましくは、ポリエステルフィルムを用いる。ポリエステル基材フィルムを用いることにより、バリア性能がより向上する傾向にある。
ポリエステル基材フィルムに用いられるポリエステルの種類は特に定めるものではないが、芳香族ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)がさらに好ましく、PETまたはPENがさらに好ましい。また、2種類以上のポリエステルの混合物であってもよい。
ポリエステルの数平均分子量は、13,000〜50,000であることが好ましく、15,000〜35,000であることがより好ましい。
ポリエステル基材フィルムの厚みは5μm〜1000μmが好ましく、10μm〜500μmであることがより好ましい。すなわち、本願発明におけるフィルムには、厚さが250μm未満のフィルムも、厚さが250μm以上のシートの両方を含む趣旨である。
このような厚さとすることにより、寸法安定性の向上とフィルムのクニックが起こりにくくなり、バリア能の安定した太陽電池用保護シートを供給できるようになる。
【0015】
2.有機層
本願発明における有機層は有機ポリマーを主成分とする、有機層であることが好ましい。ここで主成分とは、有機層を構成する成分の第一の成分が有機ポリマーであることをいい、通常は、有機層を構成する成分の80重量%以上が有機ポリマーであることをいう。
有機ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステルおよびアクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂、あるいはポリシロキサン等の有機珪素ポリマーなどが挙げられる。
本願発明における有機層は、ガラス転移温度(Tg)が100℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましい。下限値は特に定めるものではないが、−20℃以上であることが好ましい。
【0016】
本願発明における有機層は、好ましくは、重合性化合物を含む重合性組成物を硬化してなるものである。
(重合性化合物)
重合性化合物は、好ましくは、ラジカル重合性化合物および/またはエーテル基を官能基に有するカチオン重合性化合物であり、より好ましくは、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物、および/または、エポキシまたはオキセタンを末端または側鎖に有する化合物である。これらのうち、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物の例としては、(メタ)アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられ、(メタ)アクリレート系化合物および/またはスチレン系化合物が好ましく、(メタ)アクリレート系化合物がさらに好ましい。
【0017】
本願発明で用いることができる(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。
スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシスチレン等が好ましい。
【0018】
以下に、本願発明で好ましく用いられる(メタ)アクリレート系化合物の具体例を示すが、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【化1】

【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
(重合開始剤)
本願発明における有機層を、重合性化合物を含む重合性組成物を塗布硬化させて作成する場合、該重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤を用いる場合、その含量は、重合性化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。
【0024】
(有機層の形成方法)
有機層の形成方法としては、特に定めるものではないが、例えば、溶液塗布法や真空成膜法により形成することができる。溶液塗布法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法により塗布することができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましい。本願発明においてはポリマーを溶液塗布しても良いし、特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報に開示されているような無機物を含有するハイブリッドコーティング法を用いてもよい。
【0025】
本願発明では、通常、重合性化合物を含む組成物を、光照射して硬化させるが、照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.1J/cm2以上が好ましく、0.5J/cm2以上がより好ましい。重合性化合物として、(メタ)アクリレート系化合物を採用する場合、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0026】
有機層を構成する重合性化合物の重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とは重合性組成物中の全ての重合性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0027】
本願発明における有機層は、厚さが、0.3μm〜10μmの範囲であることが好ましく、5μm〜10μmの範囲であることがより好ましい。
有機層の平滑性は1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満が好ましく、0.5nm未満であることがより好ましい。有機層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
有機層の硬度は高いほうが好ましいがあまりに高すぎると、耐屈曲性等の問題が生じる。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は、0.03〜0.5GPaであり、0.03〜0.3Paであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、耐屈曲性が良化し耐傷性も実用上問題ないレベルまで向上させることが可能になる。
【0028】
3.第一の無機層(バリア層)
本願発明における第一の無機層は、バリア層としての役割を果たす層である。バリア層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。バリア層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。バリア層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、特に、珪素およびアルミの少なくとも1種と、酸素および窒素の少なくとも1種を含む化合物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。本願発明のバリア層は実質的にこれらの成分のみからなることが好ましい。ここで、実質的とは、例えば、意図的に添加される成分としては含まないことをいい、不純物等の成分までも排除するものではないことを意味する。例えば、99重量%以上がこれらの成分で構成されることをいう。
本願発明により形成されるバリア層の平滑性は、1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満であることが好ましく、0.5nm以下がより好ましい。バリア層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
【0029】
バリア層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmであり、好ましくは50〜400nmであり、さらに好ましくは100〜200nmである。
【0030】
(有機層とバリア層の積層)
有機層とバリア層の積層は、所望の層構成に応じて有機層とバリア層を順次繰り返し製膜することにより行うことができる。バリア層を、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などの真空製膜法で形成する場合、有機層も前記フラッシュ蒸着法のような真空製膜法で形成することが好ましい。バリア性積層体を作製する間、途中で大気圧に戻すことなく、常に1000Pa以下の真空中で有機層とバリア層を積層することが特に好ましい。圧力は100Pa以下であることがより好ましく、50Pa以下であることがより好ましく、20Pa以下であることがさらに好ましい。
本願発明では、プラスチックフィルムの表面に有機層またはバリア層を設けることが好ましい。また、該有機層またはバリア層の表面にバリア層または有機層を設けることが好ましい。さらに、これらの層の表面または層間に第二の無機層(紫外線遮断層)を設ける構成も好ましい。
有機層およびバリア層の積層数は特に定めるものではないが、通常は、3〜30層である。
【0031】
4.第二の無機層(無機系紫外線遮断層)
本願発明における第二の無機層は、無機系紫外線遮断層に該当する層である。無機系紫外線遮断層は、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タングステンおよびストロンチウムの少なくとも1種を含む酸化物または窒化物を含み、好ましくはセリウム、亜鉛およびチタンから選択される少なくとも1種を含む酸化物または窒化物を含み、さらに好ましくは、セリウム、亜鉛およびチタンから選択される少なくとも1種を含む酸化物である。無機系紫外線遮断層が2層以上設けられている場合、それぞれの無機系紫外線遮断層を構成する組成は同一であってもよいし、異なっていても良い。本願発明の無機系紫外線遮断層は実質的にこれらの成分のみからなることが好ましい。ここで、実質的とは、例えば、意図的に添加される成分としては含まないことをいい、不純物等の成分までも排除するものではないことを意味する。例えば、99重量%以上がこれらの成分で構成されることをいう。
無機系紫外線遮断層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。
本願発明により形成される無機系紫外線遮断層の平滑性は、1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満であることが好ましく、0.5nm以下がより好ましい。無機系紫外線遮断層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
【0032】
無機系紫外線遮断層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜1500nmであり、好ましくは50〜1000nmであり、さらに好ましくは200〜500nmである。
【0033】
5.フッ素樹脂塗布膜
本願発明におけるフッ素樹脂塗布膜は、無機系紫外線遮断層の表面にフッ素樹脂を塗布して得られる膜であり、本願発明の太陽電池用保護シートの最表層を構成する。本願発明におけるフッ素樹脂塗布膜は、通常、フッ素樹脂組成物を塗布して得られる。塗布は、一般的な塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法等によって行うことができる。フッ素樹脂塗布膜の製膜加工温度は250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。このような構成とすることにより、耐熱性の低いプラスチック基材にも応用できる。
【0034】
フッ素樹脂塗布膜を構成するフッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるポリフッ化ビニル系樹脂(PVF)やテトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)が特に好ましい。
【0035】
フッ素樹脂組成物は、フッ素樹脂組成物はフッ素樹脂のほか、添加剤、他の樹脂および添加剤を含んでいても良い。
他の樹脂としては、油類、架橋剤、硬化剤、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。
その他、塗布を安定させるために、他の添加剤を添加してもよい。
また、溶剤は、最終的な塗布膜には残らないが、一般的な有機溶剤や水が採用できる。
【0036】
本願発明におけるフッ素樹脂組成物は、その成分の99重量%以上が、フッ素系樹脂と、溶剤と、顔料によって構成されることが好ましい。
また、本願発明におけるフッ素樹脂塗布膜は、実質的に、紫外線吸収剤としての微粒子を含まない構成とすることができる。ここで、実質的とは、例えば、意図的に添加される成分としては含まないことをいい、不純物等の成分までも排除するものではないことを意味する。例えば、99重量%以上がこれらの成分で構成されることをいう。
本願発明では、フッ素樹脂フィルムに、紫外線吸収剤としての、無機微粒子を含めなくても、耐光性を高めることができるので、無機微粒子による耐傷性が問題となる場合においても、好ましく用いることができる。
本願発明におけるフッ素樹脂塗布膜は、厚さが、0.5μm〜100μmの範囲であることが好ましく、2μm〜20μmの範囲であることがより好ましい。
【0037】
(太陽電池)
本願発明の太陽電池素子は、太陽光を電気に変換するシステムをいう。その構造の一例を図3に示す。すなわち、太陽光が入射する側からフロントシート層6、充填接着樹脂層7、太陽電池素子要部8、充填接着樹脂層9、バックシート層10が基本構成になる。本願発明の太陽電池保護シートは、好ましくは、フロントシート層に用いられるが、バックシート層等に用いることも可能である。この太陽電池素子は、住宅の屋根に組み込まれたり、農池、牧場、排水や下水処理施設、火山や温泉地域、ビルや塀に設置されるものや電子部品に用いられるものもある。該太陽電池モジュールは採光型やシースルー型等と呼ばれる光を透過し窓や高速道路、鉄道等の防音壁に用いられるものもある。本願発明では、特にフレキシブルなタイプとすることができる。
【0038】
本願発明の太陽電池用保護シートが好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本願発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて本願発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本願発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本願発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0040】
(比較例1)
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート上(東洋紡績株式会社製、コスモシャインA4300)に下記に示した重合性化合物(合計14重量部)と重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社、IRGACURE907、1重量部)、2−ブタノン(185重量部)とからなる組成物をワイヤーバーにて塗布し、窒素100ppm雰囲気下、紫外線照射量0.5J/cm2で照射して硬化させ、有機層を作製した。有機層の膜厚は500nmであった。次に、有機層表面に膜厚が40nmとなるようにAl23を真空スパッタ(反応性スパッタリング)で製膜してフィルム(A)を得た。
【0041】
重合性化合物の組成
以下に示す化合物A〜Dを以下に示す割合で用いた。
【0042】
化合物A:共栄社化学(株)製、ライトアクリレート1,9−ND−A:50質量%
【化6】

化合物B:ダイセルサイテック(株)製、TMPTA:30質量%
【化7】

化合物C:ダイセルサイテック(株)製、IRR=214K:10質量%
【化8】

化合物D:日本化薬(株)製、KAYARAD、PM−21:10質量%
【化9】

【0043】
上記フィルム(A)のAl23層側にフッ素樹脂塗布液(旭硝子(株)製、ルミフロン)をワイヤーバーにて乾燥状態で膜厚10μmを形成しサンプル101を得た。
【0044】
(比較例2)
比較例1において、フッ素樹脂塗布液(旭硝子(株)製、ルミフロン)中に、ブタノール溶媒分散した粒径8nmのCeO2微粒子(水分散のCeO2懸濁液である多木化学製、ニードラールU−15を、ブタノール溶媒に置換した物)を、乾膜状態の吸光度(波長330nm)が3になるように添加した塗布液を用いた以外は、同様にしてサンプル102を得た。
【0045】
(比較例3)
比較例1において、フッ素樹脂塗布液を、フッ素樹脂塗布液(旭硝子(株)製、ルミフロン)にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF製、TINUVIN328)を乾膜状態の吸光度(波長330nm)が3になるように添加した以外は、比較例1と同様にしてサンプル103を得た。
【0046】
(比較例4)
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(東洋紡績株式会社製、コスモシャインA4300)上に膜厚が40nmとなるようにAl23を真空スパッタ(反応性スパッタリング)で製膜した。次に、このAl23上に、膜厚が300nmとなるようにCeO2を真空スパッタ(RFスパッタリング:ターゲットはCeO2)で成膜した。更に、その上にフッ素樹脂塗布液(旭硝子(株)製、ルミフロン)をバーコート法を用いて膜厚10μm(乾燥状態)を形成しサンプル104を得た。
【0047】
(実施例1)
比較例1において、フィルム(A)のAl23層上に膜厚が300nmとなるようにCeO2を真空スパッタ(RFスパッタリング:ターゲットはCeO2)した後に、フッ素樹脂塗布液(旭硝子(株)製、ルミフロン)をワイヤーバーにて乾燥状態で膜厚10μmを形成した以外は、同様にしてサンプル105を得た。
【0048】
(実施例2)
比較例1において、フィルム(A)のAl23層上に膜厚が300nmとなるようにTiO2を真空スパッタ(RFスパッタリング:ターゲットはTiO2)した後に、フッ素樹脂塗布液(旭硝子(株)製、ルミフロン)をワイヤーバーにて乾燥状態で膜厚10μmを形成した以外は、同様にしてサンプル106を得た。
【0049】
(実施例3)
比較例1において、フィルム(A)のAl23層上に膜厚が300nmとなるようにZnOを真空スパッタ(RFスパッタリング:ターゲットはZnO)した後に、フッ素樹脂塗布液(旭硝子(株)製、ルミフロン)をワイヤーバーにて乾燥状態で膜厚10μmを形成した以外は、同様にしてサンプル107を得た。
【0050】
(実施例4)
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート上(東洋紡績株式会社製、コスモシャインA4300)に比較例1で示した重合性化合物(合計14重量部)と重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社、IRGACURE907、1重量部)、2−ブタノン(185重量部)とからなる組成物をワイヤーバーにて塗布し、窒素100ppm雰囲気下、紫外線照射量0.5J/cm2で照射して硬化させ、有機層を作製した。有機層の膜厚は500nmであった。次に、有機層表面に膜厚が40nmとなるようにAl23を真空スパッタ(反応性スパッタリング)した。次に、Al23層上に、比較例1で示した重合性化合物(合計14重量部)と重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社、IRGACURE907、1重量部)、2−ブタノン(185重量部)とからなる組成物をワイヤーバーにて塗布し、窒素100ppm雰囲気下、紫外線照射量0.5J/cm2で照射して硬化させ、有機層を作成した。該有機層の上に、300nmとなるようにCeO2を真空スパッタ(RFスパッタリング:ターゲットはCeO2)した後に、フッ素樹脂塗布液(旭硝子(株)製、ルミフロン)をワイヤーバーにて乾燥状態で膜厚10μmを形成してサンプル108を得た。
【0051】
(比較例5)
フィルム(A)のAl23層上に膜厚が300nmとなるようにAg単体を電子ビーム蒸着(EB蒸着)した以外は、比較例1と同様にしてサンプル109を得た。
【0052】
得られたサンプルについて、以下の評価を行った。
[全光線透過率]
JIS K7361−1に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH 5000)を用いて、全光線透過率の測定を行った。
【0053】
[バリア性能]
G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERらSID Conference Record of the International Display Research Conference 1435-1438頁に記載の方法を用いて水蒸気透過率(g/m2/day)を測定した。このときの温度は40℃、相対湿度は90%とした。得られた結果を以下のように評価し、結果を下記表に示した。
(評価)
× :0.005g/m2/day以上
○ :0.001g/m2/day以上0.005g/m2/day未満
◎ :0.001g/m2/day未満
【0054】
[耐光性]
メタリングバーチカルウェザーメーター(スガ試験機製 MV3000)を用いて0.53kW/m2(波長:300〜400nm)、ブラックパネル温度63℃、槽内湿度50%で2000時間、試験用サンプルに対して紫外線暴露試験を実施した。紫外線照射前後のサンプルのUV−visを日立製の分光光度計(U-3200)で測定し、330nmの波長でのAbs.を測定し、照射前後のAbs.の比をT(abs.)とした。得られた結果は、以下のように評価し、結果を下記表に示した。
T(Abs.)=紫外線照射後Abs.(330nm)/紫外線照射前Abs.(330nm)
(評価)
× : T(Abs.) > 25
△ : 25 ≧ T(Abs.) ≧ 13
○ : 13 ≧ T(Abs.) ≧ 6
◎ : 6 > T(Abs.)
【0055】
[密着性評価]
保護フィルムの密着性評価は、JIS K5400に準拠した碁盤目試験により行なった。保護フィルムの表面にそれぞれカッターナイフで膜面に対して90°の切込みを1mm間隔で入れ、1mm間隔の碁盤目を100個作製した。この上に2cm幅のマイラーテープ[日東電工製、ポリエステルテープ(No.31B)]を貼り付け、テープ剥離試験機を使用して貼り付けたテープをはがした。保護フィルム上の100個の碁盤目のうち剥離せずに残存したマスの数(n)をカウントした。結果を表に示す。
残存数N=n/100
(評価)
× : N < 0.2
△ : 0.2 ≦ N ≦ 0.5
○ : 0.51 ≦ N ≦ 0.8
◎ : 0.81 < N
【0056】
【表1】

【0057】
上記表1から明らかなとおり、ガスバリアフィルムのバリア層側に、単に、フッ素樹脂塗布膜を設けた場合(比較例1)、バリア性にそれなりに優れたフィルムが得られるが、耐光性に劣ることが分かった。また、フッ素樹脂塗布膜に無機系の紫外線吸収剤を添加した場合(比較例2)、バリア性および耐光性にはそれなりに優れたフィルムが得られるが、密着性に劣ることが分かった。また、フッ素樹脂塗布膜に有機系の紫外線吸収剤を添加した場合(比較例3)、耐光性が劣ることが分かった。また、バリア層に隣接して有機層を設けない場合(比較例4)、バリア性能が顕著に劣ることが分かった。また、バリア層としての無機層に、特開2010−123682号公報に記載されているような、金属層を用いた場合(比較例5)、耐光性が劣るともに、全光透過率が著しく劣ってしまった。
これに対し、本願発明のように、フッ素樹脂塗布膜とは別に、無機系紫外線遮断層を設けることにより、全光透過率、バリア性能、耐候性および密着性のいずれにも優れた太陽電池モジュール用保護シートが得られることが分かった。
【0058】
(実施例5)太陽電池の作成
エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂フィルムを接着剤として用いて、上記実施例の構成のサンプル105〜108をフロントシートとして用い、特開2009−99973の実施例1に記載のCIS系の薄膜太陽電池のCIS膜の表面に貼り合わせ、太陽電池セルを作成した。太陽電池として作動することを確認した。
【符号の説明】
【0059】
1 プラスチックフィルム
2 有機層
3 第一の無機層(バリア層)
4 第二の無機層(無機系紫外線遮断層)
5 フッ素樹脂塗布膜
6 フロントシート層
7 充填接着樹脂層
8 太陽電池素子要部
9 充填接着樹脂層
10 バックシート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム上に、第一の無機層と、有機層と、第二の無機層を有し、前記第一の無機層と第二の無機層は、互い組成が異なっており、前記第二の無機層は、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タングステンおよびストロンチウムの少なくとも1種を含む酸化物または窒化物を含み、さらに、前記第二の無機層が設けられている側の最表層が、フッ素樹脂を塗布して得られる膜である、太陽電池用保護シート。
【請求項2】
第一の無機層が、珪素およびアルミの少なくとも1種と、酸素および窒素の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項3】
プラスチックフィルムの一方の面上に、第一の無機層、有機層、第二の無機層およびフッ素樹脂を塗布して得られる膜が設けられている、請求項1または2に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項4】
フッ素樹脂を塗布して得られる膜の厚さが、0.5〜100μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項5】
全光線透過率が85%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項6】
プラスチックフィルムがポリエステル樹脂フィルムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項7】
第二の無機層がフッ素樹脂を塗布して得られる膜と隣接している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項8】
有機層が、(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化してなる層である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項9】
フッ素樹脂を塗布して得られる膜が、フッ素樹脂組成物を硬化してなり、該フッ素樹脂組成物の99重量%以上が、フッ素系樹脂、溶剤および顔料のいずれかである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項10】
第二の無機層が、実質的に、セリウム、亜鉛、チタン、鉄、ジルコニウム、タングステンおよびストロンチウムの少なくとも1種を含む酸化物または窒化物のみからなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項11】
フロントシート用である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シート。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽電池用保護シートを有する太陽電池素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−15294(P2012−15294A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149851(P2010−149851)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】